JP3523859B2 - 苗の接木方法 - Google Patents

苗の接木方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食用園芸品種植物の
苗と、観賞用園芸品種植物の苗とを接木して、生育後に
一本の木で実を収穫し、花を楽しむことができるように
した苗を提供することを目的とする。この場合、植物栽
培用トレイ、例えばプラグトレイに育苗された食用園芸
品種植物の苗の台木に、プラグトレイ或いは他の箇所に
育苗された観賞用園芸品種の植物の苗の穂木を接木する
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】輸入されているプラグ苗生産(セル苗、
成形苗)が定着して約20年になる。元々、花壇苗の大
量流通方法として開発された技術が日本へ導入されてか
ら、切り花苗生産や野菜苗生産、更に接木苗生産といっ
たように日本の農業生産者の要望を取り入れて需要が拡
大されてきた。
【0003】プラグ苗(株式会社ティ・エム・ボール研
究所の登録商標)を接木する場合は、プラグトレイに植
えたプラグ苗を台木とし、他のプラグトレイに植えたプ
ラグ苗を穂木として接いでいる。プラグトレイは一つの
トレイにプラグ形状の細長縦穴が多く形成されたもので
ある。プラグトレイの外形サイズ(トレイ部分の縦横の
サイズ)には各種あり、大別すると水稲育苗箱に合った
大きさ(30×60cm)のものと、アメリカなどで使
用されていたインチサイズ(28×54cm)のものに
分けられ、夫々のトレイに形成されている穴数によって
規格が分けられている。一枚のプラグトレイの穴数は1
8穴から800穴程度まであり、72穴、128穴、2
00穴、288穴、406穴などが一般の流通規格にな
っている。現在は72穴や128穴のプラグトレイで育
苗された台木に穂木を接木した接木苗が流通の主力とな
っている。この種の接木苗として流通している主な作物
はトマト、ナス、キュウリ、スイカ等であり、大別する
とナス科、ウリ科の作物である。72穴や128穴が主
流となっている理由は特に見当たらないが、次の様な理
由によるものと思われる。
【0004】1.なるべく小さなサイズのトレイに多数
の穴が形成されたプラグトレイを使用することにより、
輸送性を向上させ、コストを低減させて植物一本当たり
価格を安価にする。それには72穴や128穴のプラグ
トレイが適する。 2.プラグトレイは外形サイズが同じであれば穴数が多
くなると穴間隔が狭くなる。このため台木が大きくなっ
てから接木したのでは接木後の苗同士が接触して苗の生
育に好ましくない。それを避けるためには72穴や12
8穴のプラグトレイが適する。 3.台木が小さいうちに接木すればトレイの穴数が多く
ても接木後の苗同士が接触しにくくなるが、台木が小さ
いうちに接木する技術が開発されていないため72穴や
128穴が適する。
【0005】野菜苗の接木を行う場合、どんな土壌病害
を回避するのかを確認し、適応品種を選定している。現
状の接木苗の生産理由は、土壌病害の回避や連作障害の
回避という点が最大の目的であり、前記障害を回避し、
増収、生産の安定化を図っている。野菜苗の接木目的
は、前述したものがほとんどであり、一部に観賞を目的
にして赤色トマトと黄色トマトを一本のトマトに接木し
て同時に着果させるものがみられる。
【0006】近年、大規模では環境保全目的の屋上緑
化、小規模では身近な緑化の目的で、ベランダのコンテ
ナ植栽などが注目を集めている。これら植栽は単一種類
の植物が植栽されることは少なく、幾つかの植物を組み
合わせた混植や寄せ植えなどが大きなシェアを占めてい
る。ベランダ栽培等では寄せ植えを行ったり、複数のコ
ンテナを設置した栽培を行ったりしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】寄せ植えの場合は植物
選択の制約発生や、コンテナの大型化が要求され、複数
のコンテナを設置する場合はベランダの耐荷重の制約等
が発生する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本件発明の目的は、一つ
の植物によって食料提供と観賞という目的を同時に満足
させ、コンテナの小型化やコンテナを複数使用せずに複
数の植物を同時に生育可能とするものである。また、他
の目的は、穴数の多いプラグトレイ(穴の容積が小さ
く、穴間隔が狭いプラグトレイ)を使用して、一枚のプ
ラグトレイでより多くの苗を接木することができる接木
方法を提供することにある。
【0009】本件発明の請求項1の苗の接木方法は、
菜苗を花芽分化前に第二本葉の下で切断し、その下の
葉またはその本葉の腋芽を残して台木とし、その台木の
切断箇所に、花卉観賞用園芸品種植物の花物苗を切断し
て取り出した穂木を接合し、接合部分を接合クリップで
挟着保持する方法である。
【0010】本件発明の請求項2の苗の接木方法は、
求項1記載の苗の接木方法において、野菜苗を花芽分化
前に第二本葉の下で25°を基本に切断する方法であ
る。
【0011】本件発明の請求項3の苗の接木方法は、
菜苗の生長点直下の腋芽部分を除去して台木 とし、その
除去部分に穴を開け、その穴に花卉観賞用園芸品種植物
花物苗を切断して取り出した穂木を差し込み、差し込
み箇所を接合クリップで挟着保持して固定する方法であ
る。
【0012】本件発明の請求項4の苗の接木方法は、請
求項1乃至請求項3のいずれかに記載の苗の接木方法に
おいて、台木となる食用園芸品種植物の種子を接木予定
日の数十日前後に播種し、穂木となる観賞用園芸品種植
物の種子を接木予定日の数十日前後に播種し、播種後に
履土して温度約25℃、湿度約95%以上の定温庫内で
数十時間前後養成して発芽させ、更に19℃前後〜25
℃前後に保たれた温室にて育苗し、育苗した食用園芸品
種の苗の台木と穂木とを接合して接合部分を接合クリッ
プにより挟着保持し、接合した苗を温度約25℃、湿度
約95%以上の定温庫にて約48時間接合養成し、直射
日光を約2万ルクス以下に抑えた温室にて48時間前後
養成し、19℃前後〜25℃前後に保たれた温室にて数
日前後育苗する方法である。
【0013】本件発明の請求項5の苗の接木方法は、請
求項1乃至請求項4のいずれかに記載の苗の接木方法に
おいて、食用園芸品種植物の種子を200穴トレイまた
は72穴トレイに播種、発芽、育苗したものを台木とし
て使用する方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】(実施の形態1) 本発明の苗の接木方法の第一の例として、トマト(食用
園芸品種植物)と、ツクバネアサガオ(観賞用園芸品種
植物)とを接木する場合について以下に説明する。
【0015】ツクバネアサガオは接木予定日の70日前
に播種し、育苗した苗を鉢上げしておく。ツクバネアサ
ガオは播種後無覆土とし、温度25℃、湿度95%以上
の定温庫にて72時間前後養生し発芽させ、更に19℃
〜25℃に保たれた温室にて育苗を行う。生育50日を
経た後に直径9cmの鉢に鉢上げする。
【0016】200穴もしくは72穴トレイ1にトマト
を接木予定日の35日前に播種し、細粒バーミキュライ
トにて均一に覆土し、温度25℃、湿度95%以上の定
温庫にて72時間前後養生し発芽させ、更に19℃〜2
5℃に保たれた温室にて育苗を行う。
【0017】トマトの花芽分化前(本葉が1.5枚〜2.
5枚以下のとき)に、図1、2のように第二本葉の直下
を25°を基本に切断して台木2とし、ツクバネアサガ
オの穂を台木と同じように切断して穂木3とし、トマト
の台木の切断面4にツクバネアサガオの穂木の切断面5
を接合し、接合部分を接合クリップ6にて挟着保持して
固定する。接木作業の行われた苗は、温度25℃、湿度
95%以上の定温庫にて48時間接合養生し、直射日光
を2万ルクス以下に抑えた温室にて48時間養生し、1
9℃〜25℃に保たれた温室にて14日前後育苗して需
要者に出荷する。
【0018】前記接合クリップ6には例えば図3に示す
ものを使用するのが適する。これは透明な樹脂により成
型されており、2枚の板部7がV字状に成型され、その
外側角部に丸穴状の縦溝8が成型されており、2枚の板
部7を指でつまんで互いに接近させると縦溝8が広が
り、2枚の板部7の接近を解除して元に戻すと縦溝8も
元に戻って丸穴の径が縮まるようにしてある。縦溝8を
広げたときに縦溝8内に台木と穂木の接合部を挟み、縦
溝8が元に戻ることにより接合部を挟着保持する。接合
クリップの寸法としては板部7の幅7mm前後、高さ1
0mm前後が適する。これら寸法は他の寸法でもよい。
樹脂も透明でなくともよい。例えば半透明なものとか、
不透明なものもよい。透明であれば、その内側の苗の接
合状態(接木の状態)をその外部から透視して確認する
ことができるため便利である。
【0019】(実施の形態2) 本発明の苗の接木方法の第二の例として、食用園芸品種
植物であるトウガラシ(ピーマン、パプリカ)と、観賞
用園芸品種植物であるツクバネアサガオとを接木する場
合について以下に説明する。
【0020】ツクバネアサガオは接木予定日の70日前
に播種し、それを育苗して鉢上げしておく。ツクバネア
サガオは、播種後無覆土とし、温度25℃、湿度95%
以上の定温庫にて72時間前後養生し発芽させ、更に1
9℃〜25℃に保たれた温室にて育苗を行う。生育50
日を経た後に直径9cmの鉢に鉢上げする。
【0021】200穴もしくは72穴トレイにトウガラ
シを接木予定日の50日前に播種し、細粒バーミキュラ
イトにて均一に覆土し、温度25℃、湿度95%以上の
定温庫にて72時間前後養生し発芽させ、更に19℃〜
25℃に保たれた温室にて育苗を行う。
【0022】トウガラシの第二本葉の直下を25°を基
本に切断して台木2とし、同じように切断したツクバネ
アサガオの穂を穂木3とする。トウガラシの台木の切断
面4にツクバネアサガオの穂木の切断面5を接合し、接
合クリップ6にて固定する。接木作業の行われた苗は、
温度25℃、湿度95%以上の定温庫にて48時間接合
養生し、直射日光を2万ルクス以下に抑えた温室にて4
8時間養生し、19℃〜25℃に保たれた温室にて14
日前後育苗して需要者に出荷する。
【0023】(実施の形態3) 本発明の苗の接木方法の第三の例として、サツマイモ
(食用園芸品種植物)と、アサガオ(観賞用園芸品種植
物)とを接木する場合について以下に説明する。
【0024】サツマイモの苗木を接木予定日の30〜5
0日前に72穴トレイに挿し穂する。30日育苗のもの
はそのまま台木として使用し、50日育苗のものは台木
の挿し穂として使用する。
【0025】200穴トレイにアサガオを接木予定日の
14日前に播種し、細粒バーミキュライトにて均一に覆
土し、温度25℃、湿度95%以上の定温庫にて48時
間前後養生し発芽させ、更に19℃〜25℃に保たれた
温室にて育苗を行う。
【0026】サツマイモの生長点直下の腋芽部分を除去
し、穴を開け、アサガオの穂をサツマイモに開けた穴に
挿して接合する。もしくは、サツマイモの生長点を切断
して茎を半割に切断し、半割にした茎の間にアサガオの
穂を挟んで接合クリップ6で固定する。接木作業の行わ
れた苗は、温度25℃、湿度95%以上の定温庫にて4
8時間接合養生し、直射日光を2万ルクス以下に抑えた
温室にて48時間養生し、19℃〜25℃に保たれた温
室にて14日前後育苗して需要者に出荷する。
【0027】
【発明の効果】本発明の請求項1、2記載の苗の接木方
法は、食用園芸品種植物の苗と、観賞用園芸品種植物の
苗を第二本葉の下で切断した台木と穂木とを接木するの
で次のような効果がある。 1.台木の食用園芸品種植物からは食用園芸品種植物が
生長して果菜が結実し、穂木の観賞用園芸品種植物から
は観賞用園芸品種植物が生長して花が咲くので、一本の
木から果菜を収穫しながら花を観賞することができ、一
石二鳥である。 2.台木が食用園芸品種植物であるため、丈夫で、生長
し易く、果菜が結実し、成熟し易い。 3.台木と穂木の接合箇所をクリップで挟着保持するの
で固定し易く、固定が確実になり、活着率が高まる。
【0028】本発明の請求項3記載の苗の接木方法は、
食用園芸品種植物の苗の生長点直下の腋芽部分を除去
し、穴を開けて台木とし、穴に観賞用園芸品種植物の苗
の穂を差し込み、差し込み箇所を接合クリップで挟着保
持して固定するので、接木された植物は請求項1、2の
接木の場合と同様の効果がある。
【0029】本発明の請求項4記載の苗の接木方法は、
台木となる食用園芸品種植物の種子を接木予定日の数十
日前後に播種し、穂木となる観賞用園芸品種植物の種子
を接木予定日の数十日前後に播種し、播種後に履土して
温度約25℃、湿度約95%以上の定温庫内で数十時間
前後養成して発芽させ、更に19℃前後〜25℃前後に
保たれた温室にて育苗し、育苗した食用園芸品種の苗の
台木と穂木とを接合して接合部分を接合クリップにより
挟着保持し、接合した苗を温度約25℃、湿度約95%
以上の定温庫にて約48時間接合養成し、直射日光を約
2万ルクス以下に抑えた温室にて48時間前後養成し、
19℃前後〜25℃前後に保たれた温室にて数日前後育
苗するので、接木後の苗の生長が良好になる。
【0030】本発明の請求項5記載の苗の接木方法は、
食用園芸品種植物の種子を200穴トレイまたは72穴
トレイに播種、発芽、育苗したものを台木として使用す
るので、請求項1〜4の発明と同様の効果の他に、一枚
のプラグトレイで多くの苗を接木して、取扱いが容易
で、輸送性が向上し、接木養生施設の縮小化も可能で、
安価な接木苗を提供することができるという効果もあ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の接木方法の説明図。
【図2】本発明の接木された苗の説明図。
【図3】本発明の接木方法に使用される接合クリップの
一例を示す斜視図。
【符号の説明】
1 トレイ 2 台木 3 穂木 4 台木の切断面 5 穂木の切断面 6 接合クリップ

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】野菜苗を花芽分化前に第二本葉の下で切断
    し、その下の本葉またはその本葉の腋芽を残して台木と
    し、その台木の切断箇所に、花卉観賞用園芸品種植物の
    花物苗を切断して取り出した穂木を接合し、接合部分を
    接合クリップで挟着保持することを特徴とする苗の接木
    方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の苗の接木方法において、野
    菜苗を花芽分化前に第二本葉の下で25°を基本に切断
    することを特徴とする苗の接木方法。
  3. 【請求項3】野菜苗の生長点直下の腋芽部分を除去して
    台木とし、その除去部分に穴を開け、その穴に花卉観賞
    用園芸品種植物の花物苗を切断して取り出した穂木を
    し込み、差し込み箇所を接合クリップで挟着保持して固
    定することを特徴とする苗の接木方法。
  4. 【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の
    苗の接木方法において、台木となる食用園芸品種植物の
    種子を接木予定日の数十日前後に播種し、穂木となる観
    賞用園芸品種植物の種子を接木予定日の数十日前後に播
    種し、播種後に履土して温度約25℃、湿度約95%以
    上の定温庫内で数十時間前後養成して発芽させ、更に1
    9℃前後〜25℃前後に保たれた温室にて育苗し、育苗
    した食用園芸品種の苗の台木と穂木とを接合して接合部
    分を接合クリップにより挟着保持し、接合した苗を温度
    約25℃、湿度約95%以上の定温庫にて約48時間接
    合養成し、直射日光を約2万ルクス以下に抑えた温室に
    て48時間前後養成し、19℃前後〜25℃前後に保た
    れた温室にて数日前後育苗することを特徴とする苗の接
    木方法。
  5. 【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の
    苗の接木方法において、食用園芸品種植物の種子を20
    0穴トレイまたは72穴トレイに播種、発芽、育苗した
    ものを台木として使用することを特徴とする苗の接木方
    法。
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