JP3522318B2 - 眼用多焦点レンズ - Google Patents

眼用多焦点レンズ

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、眼用レンズ、特に１個
を超える光学能すなわち焦点長を有するコンタクトレン
ズに関する。
【０００２】
【従来の技術】個人の年齢が進むにつれて、眼は、調節
機能、すなわち比較的観察者に近い対象に焦点を合わせ
るために眼の水晶体を曲げる機能が衰えることが周知で
ある。この状態は老眼と称されており、老眼になった者
は、過去において、異なる光学能を有するいくつかの異
なる領域を含む眼鏡またはその他のレンズ類に頼ってき
た。このようなレンズによれば、観察者が焦点を合わせ
たいと望む対象に対して適切な光学能の領域に装着者が
視野をシフト可能である。
【０００３】眼鏡を用いたこの過程では、典型的には上
方の遠方能領域から他の近接能領域まで自己の視野を移
動させることが行われている。しかし、コンタクトレン
ズでは、この方法は、満足できるにはほど遠い。コンタ
クトレンズは、水晶体と協同して、異なる視野角からの
角膜の各部分に入射した光を網膜の各部分に焦点を合わ
せて像を形成することによって、眼の網膜に像を形成す
る。このことは、より明るい光線に反応して瞳孔が収縮
しても、網膜上の像が縮むことはなく、レンズの面積が
小さくなってもレンズから入る光は、全体像を形成する
という事実によって明らかとされている。
【０００４】同様に、水晶体を白内障のために摘出され
かつ代わりに眼内レンズを挿入されたヒトでは、見よう
としている対象の距離にレンズを調節する（適応させ
る）能力が全く欠けている。この場合、提供されたレン
ズは、通常、単一の無限距離焦点能に設定されており、
近景に焦点を合わせるのに必要な追加の正の光学能を付
与するために眼鏡が着用される。このような患者にとっ
て、機能的な多焦点レンズは、特に有用である。
【０００５】当技術分野においては、脳がある状況にお
いて焦点の合った像を受容しかつ焦点の外れた像を拒絶
することによって別々の競合する像を識別できることが
公知である。
【０００６】近接および遠方視力を同時に提供すること
によって老眼を矯正するために使用されるこの種のレン
ズの１例が、エリクソン（Ｅｒｉｃｋｓｏｎ）の米国
４，９２３，２９６に記載されている。この中に記載さ
れているのは、それぞれが等しい面積の近接および遠方
光学能の領域を有しているコンタクトレンズ対からなる
レンズ系であり、一方の眼に対するレンズは、上半分が
近見用で下半分が遠見用であり、他方の眼に対するレン
ズは、上半分が遠見用で下半分が近見用である。これら
は共に、少なくとも部分的には明瞭な像を両方の眼に付
与すると言われており、ぼんやりした像を脳が抑制する
ことによって、明瞭な像を整合し、焦点の合った像を形
成する。
【０００７】デ カルレ（ｄｅ Ｃａｒｌｅ）の米国特許
第４，８９０，９１３号は、異なる光学能を有するいく
つかの環状領域からなる２焦点コンタクトレンズを記載
している。この設計のレンズにおける目的は、瞳孔直径
にかかわらず常に近接および遠方能のほぼ等しい配分を
維持することであり、レンズ上に全部で６乃至１２個の
領域を必要としている。
【０００８】２焦点コンタクトレンズを提供するもうひ
とつの試みが、デ カルレ（ｄｅ Ｃａｒｌｅ）の米国特
許第４，７０４，０１６号に記載されている。このレン
ズでも、瞳孔直径にかかわらず、常に近接および遠方能
のほぼ等しい配分を維持しょうとしている。
【０００９】もうひとつの多焦点矯正眼用レンズを製造
する試みでは、回折光学軸を使用することを要する。本
法の欠点のひとつは、低光線レベルにおいて視力が不足
することであった。回折設計において、レンズに入射し
た光線の約４０％しか近接視力に使用されておらず、も
う４０％が、遠方視力に使用されている。残りの２０％
は、近接または遠方のいずれの視力にも使用されておら
ず、むしろ、高次の回折および分散効果のために損失し
ている。これは最善の理論的ケースを示しており、現実
の製造の際には、製造上困難であることが理由で利用で
きる光線がはるかに少ない。製造上困難であることは、
一般に、回折表面は光線波長の程度の誤差しか許されて
いないので、回折レンズのもうひとつの欠点を示してい
る。
【００１０】複雑なレンズ製造を行うことなく老眼を補
償する方法を提供するための当技術で公知のもうひとつ
の試みは、”モノビジョン”として公知である。モノビ
ジョンシステムでは、患者は、一方の眼において遠方視
力のために１個のコンタクトレンズを装着し、片方の眼
において近接視力のための第２のコンタクトレンズを装
着する。モノビジョンによって患者は遠方および近接対
象を両者ともに容認できるほど識別できることが見いだ
されているが、両眼性を大幅に欠く（すなわち、深さの
認知に欠ける）。
【００１１】これらの理由のため、モノビジョンのよう
な単純なシステムは幾分理解されてはいるが、多焦点屈
折レンズのためのより複雑なシステムは主に理論上のも
のである。
【００１２】セイドナー（Ｓｅｉｄｎｅｒ）に両者とも
に発行された米国特許第５，００２，３８２および５，
０２４，５１７は、正反対な構造の２個以上の矯正光学
能を有するコンタクトレンズの相補的な対を開示してい
る。記載されたレンズ対の両者ともに、モノビジョンの
概念に極めて関連している。この対は、レンズ間で中央
部の屈折力が異なっており、照度の相関要素として屈折
力の比率を調節することができない。
【００１３】ホ（Ｈｏ）らによる欧州特許出願公報第０
２０１ ２３１ Ａ２は、レンズ間で補償機能を持つよ
うに複数の光学領域を有する、すなわち、近接および遠
方能の交互の反対領域を有する両眼用コンタクトレンズ
の対を記載している。
【００１４】多焦点眼用レンズを提供するためのより実
用的でかつ改善された方法のひとつが、９２年１月２８
日出願の米国特許出願第７／８２７，１９９に記載され
ている。この出願において、多焦点領域のひとつがレン
ズ中央領域を含んでいることを特徴とする多焦点眼用レ
ンズが開示されている。領域間の境界は、半円状のよう
な弓形経路によって画定されており、弧状の経路の両側
は近見用および遠見用の領域であり、領域境界を中心の
光軸から外してある。
【００１５】
【発明が解決しようとする課題】上記記載の出願により
製造されたレンズは機能的でありかつその中に記載され
た製造技術は眼用レンズを成形する実用的方法でありな
がら、種々の光線条件下で適切な多焦点視力を付与する
という重要な面には適合していない。
【００１６】現実世界の条件下では、１個のみに焦点が
合った２個以上の像を識別するための脳の能力は、も
し、唯一の焦点が合った部分が像の中央部分にあれば強
く増強される。また、高レベルの照明は通常遠見視力を
増強する結果を伴うことが見いだされた。
【００１７】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、従っ
て、特に、高強度光線条件下における通常視力鮮鋭度が
改善された老眼用１対の眼用レンズを提供することであ
る。さらに本発明の目的は、このようなレンズを患者に
装着する方式を決定するための方法を提供することであ
り、特に高照明状況に必要な光学能を適合させることに
よって所望の視力改善をもたらすことである。
【００１８】上記の目的は、両者ともに少なくとも２種
の光学能（ひとつは近接視力用およびひとつは遠方視力
用）を有する１対の眼用レンズを提供することによって
達成される。ただし、両方のレンズは、レンズ中央部分
において遠方能を有している。好適な態様においては、
レンズの残り部分は、それぞれが１個以上の光学領域か
らなる環状部分からなり、近接焦点長領域の合計および
遠方焦点長領域の合計の所望の比率を各瞳孔直径で付与
する。
【００１９】このように視力中央部分は単一の光学能を
有し、その結果、視力鮮鋭度が改善される。中央におけ
るこの遠方視能力部分は、特に、高照明状況下において
遠方視力を必要とする現実の状況に極めて適している。
【００２０】
【実施例】当技術分野で周知であるように、ヒトは、き
き眼を有している。きき眼は、穴をその中に有する乳白
色のシートを患者に見させることによって見つけること
ができる。患者は、この穴から遠くの対象を見るように
言われる。適切に配置されると、シートの穴、穴の大き
さおよび患者の眼からの距離によって、一度に１個の眼
でシートの穴を通して遠方の対象を見ることができるよ
うにする。患者がこの穴を通して対象を見た後、眼を交
互に覆い、どちらの眼を用いて対象を見たかを決定す
る。対象を見た眼が、きき眼である。ほとんどのヒトで
は、右目がきき眼である。
【００２１】視力鮮鋭度を達成するために必要な多焦点
眼用レンズの構造で重要な特徴は、中央部分の焦点長を
単一にすることおよび中央視覚領域における左右の不均
衡を避けることである。単一レンズにおいてこのことが
重要であることは本発明者の先行上記引用特許出願（単
一の多焦点レンズの中央領域が、異なる光学能領域間の
境界または結合点のないことにより単一の光学能を維持
している）で認められているが、患者の眼に配置された
２個のレンズについて単一の光学能を確立することが重
要であることが現在わかった。
【００２２】米国特許出願、”瞳孔調整多焦点眼用レン
ズ（Ｐｕｐｉｌ−Ｔｕｎｅｄ Ｍｕｌｔｉｆｏｃａｌ Ｏ
ｐｈｔｈａｌｍｉｃ Ｌｅｎｓ）”（本出願の基礎米国
出願と同時に出願された（出願番号 ９８８０８８ １９
９２年１２月９日出願））に記載されているように、現
実の状況においては高強度の照明の下では、一般に遠方
に焦点を合わせる必要性があることがわかった。なお、
この米国特許出願と本発明とで好適な態様を導き出すこ
とが可能である。
【００２３】この理由のため、本発明のレンズ対は、両
方のレンズのその中央部分において患者が必要とする遠
方光学能を含んでいる。
【００２４】図１に関して述べると、本発明に従って製
造された眼用レンズ対の光学領域が示されている。典型
的コンタクトレンズは、通常、総径１４ｍｍの光学表面
外部に非光学レンズ領域（示さず）を有するように製造
されている。
【００２５】２個のレンズの環状領域の比較から、本発
明の重要な側面がわかる。第１に、両方のレンズは、患
者のための遠方光学能を有する中央領域を含んでいる。
第２に、両方のレンズの残りの領域の近接光学能と遠方
光学能の合計により、所望の比率の近接能と遠方能を提
供する。
【００２６】下記の表１は、光学軸の中央部分を通る直
径の関数として、近接および遠方能の分布の実際の仕様
を示したものである。 （表１） 両眼設定−領域遷移 瞳孔直径 きき眼 非きき眼 遠方 近接 遠方 近接 0.00 100 0 100 0 0.50 100 0 100 0 1.00 100 0 100 0 1.50 100 0 100 0 2.00 100 0 0 100 2.35 0 100 0 100 2.5 0 100 0 100 3.00 0 100 0 100 3.05 0 100 100 0 3.50 0 100 100 0 4.00 100 0 0 100 4.50 100 0 0 100 4.65 100 0 100 0 4.70 0 100 100 0 5.00 0 100 100 0 5.15 100 0 100 0 5.25 100 0 0 100 5.50 100 0 0 100 6.00 100 0 0 100 6.50 100 0 100 0 7.00 100 0 100 0 7.50 100 0 100 0 8.00 100 100 100 0
【００２７】上記設計に従って製造されたレンズの利点
は、第２図から容易にわかる。前記対の両方のレンズで
は、遠方視力に役立つ光学領域（ほとんどの現実条件下
で遠方視に必要であると決定された屈折力を有する）が
中央部分にあるが、第２図に示すように、瞳孔直径が増
加するに伴い、瞳孔を透過する光線が近接光学能の領域
および遠方光学能の領域に等しい配分で分けられる。利
用可能な光線が減少するにともない、瞳孔直径が増加す
るので、適切な近接視力および遠方視力が付与される。
【００２８】下記の表２は、きき眼レンズおよび非きき
眼レンズについて、遠方焦点長と近接焦点長に役立つ表
面の比率を数字で示している。
【００２９】さらに、本表の第３の部分は、百分率で、
前記対中両方のレンズの遠方および近接表面領域の総計
を示している。 （表２） 焦点長比率 きき眼 非きき眼 両眼総計 集積領域(mm)2 総計に対する％ 直径 遠方 近接 遠方 近接 遠方 近接 1 0.8 0.0 0.8 0.0 100 0 2 3.1 0.0 3.0 0.2 97.5 2.5 3 4.2 2.9 3.0 4.1 50.5 49.5 4 4.5 8.1 8.2 4.4 50.3 49.7 5 8.9 10.8 11.2 8.4 51.1 48.9 6 16.7 11.5 12.8 15.5 52.5 47.8 7 26.9 11.5 18.6 19.9 59.2 40.8 8 38.7 11.5 30.4 19.9 68.7 31.3
【００３０】レンズの遠方光学能領域および近接光学能
領域を通過して眼の瞳孔に実際に入る利用可能な光線を
比較すると、高照明レベルでは（眼の瞳孔が収縮するこ
とにより利用可能な光線のうちわずかな割合しか眼の瞳
孔を通過することができない時）、利用可能な光線のほ
とんど全てがレンズ対の遠方光学領域を通過する。
【００３１】光線が減少して瞳孔直径が増加するに伴
い、瞳孔直径約３ｍｍ以上では、近接焦点領域の合計に
対する遠方焦点領域の合計の比率をみると、瞳孔を実際
に透過して眼に入る光線について遠方光学能領域および
近接光学能領域が大体等しくなる。
【００３２】同心の環状光学領域を使用する代わりに、
１９９２年１月２８日に出願の本発明者の米国特許出願
第７／８２７，１９９号に見られる設計概念を用いるこ
とによって、環状部分が遠方焦点長および近接焦点長の
必要比率を有するようにしてもよい。この設計方法で
は、環状部分を横断する方向に異なる光学能を有するが
連続的に連なった放射状領域を用いている。
【００３３】本レンズ設計の具体的実施におけるさらな
る改善点として、非きき眼用レンズの周縁領域の表面設
計に、本発明者の先の米国特許第５，５０５，９８１号
の教示を取り入れることが好適である。すなわち、周縁
近接光学領域を含むレンズ近接視力部分に非球状レンズ
設計を取り入れることである。
【００３４】特許請求の範囲に記載された本発明の範囲
から逸脱することなく、他のレンズ面を非球状にした
り、非球状および球状の組み合わせにしたりすることに
より、上記記載の発明に関して他の改変も可能である。
【００３５】次に、この発明の実施態様について説明す
る。 （１）前記レンズ対の各レンズが環状の同心構造を有す
ることを特徴とする請求項２記載の一対のレンズ。 （２）各レンズにおいて、中央領域を除く領域では、遠
方光学能領域と近接光学能領域が相補的に配置されてい
ることを特徴とする請求項２記載の一対のレンズ。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の方針に従って作製された１対の眼用レ
ンズの光学領域を示す図。
【図２】第１図の眼用レンズの近接焦点長および遠方焦
点長について、瞳孔に入射する利用可能な光線の割合を
瞳孔直径の相関要素として比較した棒グラフ。
フロントページの続き (72)発明者 テモシィー・アール・ポリング アメリカ合衆国、32223 フロリダ州、 ジャクソンビル、レムラー・ドライブ・ ウェスト 12434 (72)発明者 ミッチェル・ギリョン イギリス国、エスダブリュー １ ヴィ ３ イーワイ、ロンドン、ラパス・ス トリート 53 (72)発明者 エドガー・メネゼス アメリカ合衆国、32216 フロリダ州、 ジャクソンビル、チコラ・ウッド・プレ イス 3951 (56)参考文献 特開 平４−227258（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−146020（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−293819（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−272717（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−217818（ＪＰ，Ａ) 米国特許5002382（ＵＳ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) G02C 7/04 G02C 7/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 患者に対して多焦点視力矯正を付与する
    方法であって、 患者のきき眼を決定する工程と、 患者に必要な近接光学能を決定する工程と、 患者に必要な遠方光学能を決定する工程と、 前記患者に対して、光学表面を有する１対のレンズを付
    与する工程とを有しており、 両レンズは、近接光学能および遠方光学能の両者を含
    み、遠方光学能領域が両レンズの中央にあり、きき眼用
    のレンズは前記レンズ光学表面の５０％を超える面積を
    持つ前記決定された遠方光学能の領域を有しており、非
    きき眼用のレンズが前記レンズ光学表面の５０％を超え
    る面積を持つ前記決定された近接光学能の領域を有する
    ことを特徴とする方法。
  2. 【請求項２】 光学表面を有する１対の眼用レンズであ
    って、両レンズは、近接光学能および遠方光学能の両者
    を含み、遠方光学能領域が両レンズの中央にあり、前記
    対のひとつのレンズがレンズ光学表面の５０％を超える
    面積を持つ前記遠方光学能の領域を有しており、前記対
    の他方のレンズがレンズ光学表面の５０％を超える面積
    を持つ前記近接光学能の領域を有することを特徴とする
    レンズ。
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