JP3516688B6 - トランスフェリン受容体遺伝子 - Google Patents

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発明の名称
本発明は、トランスフェリン受容体をコードする遺伝子の分子クローニングに関するものであり、詳細には、インフルエンザ菌からのトランスフェリン受容体遺伝子のクローニングに関するものである。
発明の背景
被包性インフルエンザ菌b型株は、若年小児における細菌性髄膜炎および他の侵襲性感染の主要な原因となっている。しかしながら、非被包性または分類できないインフルエンザ菌(NTHi)が、中耳炎、喉頭蓋炎、肺炎および気管気管支炎などの広範囲のヒト疾患の原因となっている。ジフテリアトキソイド(Berkowitz et al.,1987。本願においては、各種参考文献を括弧内に示して、本発明が関係する最新技術についてより詳細に説明するようにしている。各引例についての完全な文献情報は明細書末尾で請求の範囲の直前にある。それによって、これら参考文献の開示は、本開示に引用によって含まれるものである。)、破傷風トキソイド(Classon et al.,1989および米国特許449638号)または髄膜炎菌外膜蛋白(Black et al.,1991)に接合したインフルエンザ菌b型莢膜多糖に基づくワクチンが、インフルエンザ菌b型誘発髄膜炎の低減に有効であったが、NTHi誘発疾患には効果はなかった(Bluestone,1982)。
中耳炎は若年小児において最も一般的な疾病であり、2歳未満の小児全体の60〜70%が1〜3回の耳感染を経験している。慢性中耳炎は、小児における聴覚、言語および認識力の障害の原因となっている。急性中耳炎の患者の約30%および慢性中耳炎の約60%の原因が、インフルエンザ菌であるとされる。米国のみで見ると、中耳炎治療の費用は、抗生物質ならびに扁桃摘除術、咽頭扁桃摘出術および鼓膜切開管の挿入などの外科的手術に対して、年間で10〜20億ドルとなっている。さらに、中耳炎の原因となる微生物の多くが、抗生物質治療に対して耐性である。そこで、中耳炎に対して有効な予防ワクチンが望まれる。分類できないインフルエンザ菌株は、高齢者および他の呼吸系感染に対して特に感受性の高い者における肺炎の原因ともなっている。そこで、多くの血清型のインフルエンザ菌に対する保護を提供する免疫原性製剤中での成分として有用なインフルエンザ菌からの抗原が必要とされている。
鉄は、多くの細菌の成長において必須の栄養素である。インフルエンザ菌、カタル球菌、髄膜炎菌、淋菌および非病原性の共生ナイセリア菌株などのいくつかのヒト病原菌は、鉄源としてヒトトランスフェリンを利用することができる(Schryvers,1988;Schryvers and Lee,1989;Mickelsen and Sparling,1981)。細菌トランスフェリン受容体(TfR)は、2つの鎖Tbp1およびTbp2から成る。インフルエンザ菌株では、Tbp1の分子量は約100000であるのに対して、Tbp2の分子量は60000〜90000の範囲で変動し、菌株ごとに異なる(Schryvers and Gray−Owen,1992;Holland et al.,1992)。インフルエンザ菌トランスフェリン受容体の発現は、鉄および/またはヘミン調節性であると考えられ(Morton et al.)、tbp2の上流で、fur結合部位(Braun and Hantke,1991)が確認されている。この配列は、髄膜炎菌TfR(Legrain et al.,1993)などの鉄による負の調節を受ける遺伝子のプロモータ領域で認められる。そのプロモータの次には、tbp2遺伝子およびtbp1遺伝子が来て、その配置は他のTfRオペロンで認められるものである(Legrain et al.,1993;Wilton et al.,1993)。トランスフェリン受容体の鉄源への接近を遮断する抗体は、細菌の成長を防止することができる。さらに、オプソニン作用性または殺細菌性であるTfRに対する抗体も、別途の機序によって保護を行うことができる。そこで、トランスフェリン受容体、それの断片、それの構成鎖またはそれから誘導されるペプチドは、インフルエンザ菌疾患に対する予防を行う上でのワクチン候補となる。フロイントアジュバントで髄膜炎菌TfR蛋白によって免疫感作されたマウスは、同種攻撃から保護され、抗TfR抗血清は受身伝達アッセイにおいて殺細菌性であり、予防効果があった(Danve et al.,1993)。組換え牛肺疫菌Tbp2によって免疫感作されたブタは、同種攻撃に対して保護されたが、異種攻撃については保護されなかった(Rossi−Campos et al.,1992)。これらのデータは、疾患からの保護におけるTfRに基づくワクチンの効力を示すものである。診断、免疫感作および診断・免疫感作試薬の生成において、トランスフェリンの一部に相当するトランスフェリン受容体およびペプチドをコードするDNA分子の配列ならびにそのような配列を有するベクターを提供することが望ましいものと考えられる。
ポリオウィルスは、ピコルナウイルス科の属であるエンテロウィルスである。そのウィルスには3つの異なる血清型があり、各血清型には複数の株がある。病毒性株は、麻痺性灰白髄炎の病原体である。麻痺性疾患を起こす能力を低下させた弱毒化株および失活させた病毒性株は、ワクチンとして有用である。そのウィルスに感染すると、長期間の保護的な粘膜の免疫が誘発される。不活化ポリオウィルスワクチンの接種によっても、粘膜免疫応答を誘発することができる。
ポリオウィルスの構造は公知であり、菌株および血清型間で非常に高い保守性がある。いくつかの他のピコルナウィルス(ピコルナウィルス科の属に属するウィルス)の構造も決定されており、ポリオウィルスの構造と近い関係にあることが明らかになっている。ポリオウィルスのカプシドにおいて異種エピトープを発現することは可能であり(Murdin et al,1992)、その研究は他のピコルナウィルスに拡張されている。これまで発現されたエピトープは通常は、短く、明瞭で近接したエピトープであり、ほとんどが、ポリオウィルス中和抗原性部位I(NAg I)または他のピコルナウィルスの等価な部位内で発現されたものである。この部位には、ポリオウィルスカプシド蛋白VP1のβ鎖BおよびCを連結するループ(BCループ)がある。VP1のBCループは、アミノ酸9個の表面露出ループであり、それらのアミノ酸は25個以上の異種アミノ酸によって置換および延長され得るものである(Murdin et al.,1991)。高力価まで成長し、免疫原性であるトランスフェリン受容体エピトープを発現するハイブリッドまたはキメラのポリオウィルスは、ワクチンとして、さらには免疫原性試薬製造の手段として有用であると考えられる。
本発明者らのWO 95/13370では、ヘモフィルス株のトランスフェリン受容体蛋白をコードする精製・単離核酸分子の提供が記載されており、具体的には、インフルエンザ菌b型DL63株、MinnAおよびEaganのトランスフェリン受容体遺伝子についての核酸配列と、分類できないインフルエンザ菌株であるPACK12085、SB12、SB29、SB30、SB32およびSB33についての核酸配列、ならびにコードTpb1およびTpb2蛋白の誘導アミノ酸配列を提供している。組換えによるものおよび細菌からのものの両方のTbp1およびTbp2蛋白の製造について記載されている。WO 95/13370からのある種の記載および図面を本明細書においても繰り返してある。
発明の概要
全長のTbp2蛋白少量を、大腸菌で産生させる。本発明者らは、遺伝子の3'末端の切断によってTbp2の収量を高くできること、ならびにある種のそのような切断によって、菌血症の幼若ラットモデルで動物を保護する能力が保持されることを認めている。
本発明は、ヘモフィルス株のトランスフェリン受容体の免疫原性切断類縁体をコードする精製・単離核酸分子を提供することを目的とする。本発明で提供される核酸分子は、ヘモフィルス株の特異的検出、ならびにヘモフィルスによる感染の診断に有用である。DNAなどの本発明で提供される精製・単離核酸分子は、組換えDNA手段によって切断TfR遺伝子を発現することで、経済的な形で、トランスフェリン受容体蛋白の精製・単離切断類縁体を提供する上でも有用である。トランスフェリン受容体蛋白の切断類縁体、ならびにそれをコードする核酸分子およびそのような核酸分子を有するベクターは、ヘモフィルスによって起こる疾患に対する免疫原性組成物、ヘモフィルスによる感染の診断において、さらには免疫試薬の形成手段として有用である。本発明の態様に従って産生されるトランスフェリン受容体蛋白の切断類縁体に対して形成されたモノクローナル抗体または単一特異的抗血清(抗体)は、ヘモフィルスによる感染の診断、ヘモフィルスの特異的検出(例えば、in vitroおよびin vivoでのアッセイで)およびヘモフィルスによって生じる疾患の治療において有用である。
本発明の1態様によれば、ヘモフィルス株、詳細にはインフルエンザ菌株、具体的にはインフルエンザb型DL63株、EaganもしくはMinnAまたはインフルエンザ菌株PAK12085、SB33、SB12、SB29、SB30もしくはSB32などの分類できないインフルエンザ菌株のトランスフェリン受容体蛋白の免疫原性切断類縁体をコードする精製・単離核酸分子、あるいは該トランスフェリン受容体蛋白の断片もしくは類縁体が提供される。
本発明の好ましい1実施態様において、核酸分子は、C末端から切断されたトランスフェリン受容体蛋白の切断類縁体、特にはヘモフィルス株の切断Tbp2蛋白をコードすることができる。そのようなコードされた切断Tbp2蛋白は、インフルエンザ菌b型のEagan株について図31に示したものまたは別のヘモフィルス株からの等価なTbp2蛋白のいずれかであることができる。
本発明の別の態様においては、ヘモフィルス株のトランスフェリン受容体蛋白の免疫原性切断類縁体をコードする精製・単離核酸分子であって、該核酸分子が、(a)図3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11に示したDNA配列(配列番号:1、2、3、4、105、108、110、112、114)のいずれかまたは前記配列のいずれかの相補的DNA配列;(b)図3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは31に示したアミノ酸配列(配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、106、107、109、111、113、115)のいずれかをコードするDNA配列またはそれに対する相補的DNA配列;ならびに(c)厳しい条件下に(a)もしくは(b)で定義されたDNA配列のいずれかに対してハイブリッド形成するDNA配列からなる群から選択される切断型のDNA配列である分子が提供される。(c)で定義されるDNAは好ましくは、(a)および(b)で定義されるDNA配列のいずれかと配列が約90%以上同一である。
別の態様において本発明には、宿主の形質転換に使用される発現ベクターであって、本発明で提供される核酸分子ならびにトランスフェリン受容体蛋白の免疫原性切断類縁体の宿主による発現を行うための核酸分子に効果的に結合された発現手段とを有してなるベクターが含まれる。発現手段は、トランスフェリン受容体蛋白の切断類縁体の宿主からの分泌のためのリーダー配列をコードする核酸部分を含むことができる。発現プラスミドは、免疫原性切断類縁体を発現する表8のクローンのいずれかから選択することができる。宿主は、例えば大腸菌、桿菌、ヘモフィルス、真菌、酵母またはバキュロウィルスから選択することができ、Semiliki forestウィルス発現系を使用することができる。
本発明のさらに別の態様では、本発明で提供される発現ベクターを有する形質転換宿主が提供される。本発明にはさらに、形質転換された宿主によって産生可能なトランスフェリン受容体蛋白の組換え免疫原性切断類縁体も含まれる。
本発明は、さらに別のその態様において、ヘモフィルス株の免疫原性切断Tbp2蛋白を提供するものである。Tbp2蛋白は、そのC末端から切断することができ、特にはインフルエンザ菌b型のEagan株について図31に示した切断蛋白のいずれか、または別のヘモフィルス株からの等価なTbp2蛋白であることができる。
本発明のさらに別の態様によれば、本発明で提供される1以上の核酸分子、本発明で提供される1以上の組換え蛋白、本発明で提供されるヘモフィルス株の1以上の免疫原性切断Tbp2蛋白および本発明で提供される生ベクターから選択される1以上の活性成分と、該活性成分の担体または該活性成分のベクターを有してなる免疫原性組成物が提供される。その1以上の活性成分は、宿主に投与した際に、免疫応答を生じるものである。
本発明で提供される免疫原性組成物は、in vivoで投与して、トランスフェリン受容体を産生する病原菌によって起こる疾患に対する保護を行うワクチンとして製剤することができる。そのような目的で、組成物は、微粒子、カプセルまたはリポソーム製剤として製剤することができる。別法として、免疫系の特異的細胞または粘膜表面への運搬のためのターゲティング分子との併用で組成物を提供することができる。免疫原性組成物は、複数の活性成分を含有して、複数種のトランスフェリン受容体産生細菌によって起こる疾患に対する保護を提供することができる。免疫原性組成物にはさらに、アジュバントを含有させることができる。
本発明のさらに別の態様によれば、トランスフェリン受容体蛋白を産生するヘモフィルスその他の病原菌によって生じる感染もしくは疾患に対する保護を行う方法であって、ヒトなどの感受性宿主に、有効量の上記のような免疫原性組成物を投与する段階を有する方法が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、組換え切断蛋白、切断Tbp2蛋白または免疫原性組成物に対して特異的な抗血清または抗体が提供される。
さらに別の態様では、宿主へのトランスフェリン受容体の運搬のための生ベクターであって、上記のような核酸分子を含むベクターを有してなる生ベクターが提供される。そのベクターは、サルモネラ、BCG、アデノウィルス、ポックスウイルス、牛痘およびポリオウィルスから選択することができる。
さらに別の態様において本発明は、ヘモフィルス株の免疫原性切断Tpb2蛋白を製造する方法であって、制御配列に対して有効に結合したヘモフィルス株の免疫原性切断Tbp2蛋白をコードする核酸分子を有する発現ベクターを構築する段階;前記発現ベクターを宿主に導入する段階;ならびに免疫原性切断Tbp2蛋白を宿主から発現させる段階を有してなる方法を提供するものである。使用される発現ベクターは、表8に示した発現ベクターのいずれかであることができる。
【図面の簡単な説明】
図面を参照しながら、以下の説明によって、本発明についての理解を深めることができる。
図1Aは、インフルエンザ菌b型DL63株のトランスフェリン受容体オペロンの2個のプラスミドクローン(pBHT1およびpBHT2)の制限マップを示す図である。
図1Bは、インフルエンザ菌b型Eagan株からのTfR遺伝子を含むクローンS−4368−3−3およびJB−901−5−3の制限マップを示す図である。
図1Cは、インフルエンザ菌b型MinnA株からのトランスフェリン受容体遺伝子を含むクローンDS−712−1−3の制限マップを示す図である。
図1Dは、分類できないインフルエンザ菌株PAK12085からのトランスフェリン受容体遺伝子を含むクローンJB−1042−7−6の制限マップを示す図である、
図2は、クローニングされたTbp1およびTbp2遺伝子の構造および制限マップと、単一プロモータの転写調節下にオペロンを形成する縦列での2個の遺伝子(tbp1およびtbp2)を有するTfRオペロンの遺伝子構造を示し、ヘモフィルス株からのTfR遺伝子についてのライブラリを調べるのに使用されるpBHIT2の3.0kb DNA断片を描いた図である。
図3は、インフルエンザ菌b型DL63株からのトランスフェリン受容体遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:1)とその推定アミノ酸配列(配列番号:5−Tbp1および配列番号:6−Tbp2)を示す図である。下線を施してあるアミノ酸配列は、アミノ酸配列決定によって確認されたTbp1のペプチドに相当する。推定信号配列は二重上線で示してあり、Tbp2では1〜17の残基およびTbp1では1〜23の残基に相当する。
図4は、インフルエンザ菌b型Eagan株からのトランスフェリン受容体遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:2)とその推定アミノ酸配列(配列番号:7−Tbp1および配列番号:8−Tbp2)を示す図である。推定の−35、−10およびリボソーム結合部位配列には上線が施してある。
図5は、インフルエンザ菌b型Minn株からのトランスフェリン受容体遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:3)とその推定アミノ酸配列(配列番号:9−Tbp1および配列番号:10−Tbp2)を示す図である。推定の−35、−10およびリボソーム結合部位配列には上線が施してある。
図6は、分類できないインフルエンザ菌株PAK12085からのトランスフェリン受容体遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:4)とその推定アミノ酸配列(配列番号:11−Tbp1および配列番号:12−Tbp2)を示す図である。推定の−35、−10およびリボソーム結合部位配列には上線が施してある。
図7は、分類できないインフルエンザ菌株SB33からのトランスフェリン受容体遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:105)とその推定アミノ酸配列(配列番号:106−Tbp1および配列番号:107−Tbp2)を示す図である。
図8は、分類できないインフルエンザ菌株SB12からのTbp2遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:108)とその推定アミノ酸配列(配列番号:109−Tbp2)を示す図である。
図9は、分類できないインフルエンザ菌株SB29からのTbp2遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:110)とその推定アミノ酸配列(配列番号:111−Tbp2)を示す図である。
図10は、分類できないインフルエンザ菌株SB30からのTbp2遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:112)とその推定アミノ酸配列(配列番号:113−Tbp2)を示す図である。
図11は、分類できないインフルエンザ菌株SB32からのTbp2遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:114)とその推定アミノ酸配列(配列番号:115−Tbp2)を示す図である。
図12Aは、インフルエンザ菌株Eagan、MinnA、PAK12085およびSB33からのプロモータ領域のヌクレオチド配列とtbp2遺伝子の5'末端を示す図である(それぞれ、配列番号:116、117、118および119)。PCRによってtbp2遺伝子を増幅するのに使用されるコード鎖プライマーには下線が施してある(配列番号:120)。
図12Bは、インフルエンザ菌株Eagan、MinnA、Dl63、PAK12085、SB12、SB29、SB30およびSB32からの遺伝子間領域とtbp1遺伝子の5'末端を示す図である(それぞれ、配列番号:121、122、123、124、125、126、127および128)。PCRによってtbp2遺伝子を増幅するのに使用される非コード鎖プライマーには下線が施してある(配列番号:129)。
図13は、分類できないインフルエンザ菌株SB12、SB29、SB30、SB32およびSB33からのPCR増幅tbp2遺伝子のアガロースゲル分析を示す図である。列1はSB33であり、列2はSB12であり、列3はSB29であり、列4はSB30であり、列5はSB32である。
図14は、インフルエンザ菌株Eagan、DL63、PAK12085およびSB33から、髄膜炎菌株B16B6およびM982から、ならびに淋菌株FA19からのTbp1のアミノ酸配列を比較した図である(それぞれ、配列番号:7、5、11および106;配列番号:94および95;配列番号:96)。
図15は、インフルエンザ菌株Eagan、DL63、PAK12085、SB12、SB29、SB30およびSB32から(配列番号:8、6、12、109、110、112、114)、髄膜炎菌株B16B6およびM982(配列番号:97および98)から、淋菌株FA19ならびにアクチノバチルス牛肺疫菌株AP205およびAP37(配列番号:99および100)からのTbp2のアミノ酸配列を比較した図である。
図16Aは、インフルエンザ菌Tbp1蛋白の予想2次構造を示す図であり、図16Bは、インフルエンザ菌Tbp2蛋白の予想2次構造を示す図である。
図17は、大腸菌からのインフルエンザ菌b型Eagan Tbp1を発現するプラスミドJB−1468−29の構築図式を示す図である。
図18は、大腸菌からのインフルエンザ菌b型Eagan Tbp2を発現するプラスミドJB−1424−2−8の構築図式を示す図である。
図19は、プラスミドJB−1424−2−8の構築に使用されるオリゴヌクレオチド対(配列番号:130および131)を示す図である。
図20は、Tbp1およびTbp2発現プラスミドを構築するためのオリゴヌクレオチド対A(配列番号:86および87)、B(配列番号:88および89)、C(配列番号:90および91)およびD(配列番号:92および93)の配列を示す図である。
図21は、大腸菌からのインフルエンザ菌SB12 Tbp2を発現するプラスミドJB−1600−1の構築図式を示す図である。
図22は、大腸菌からのヘモフィルスb型Eagan Tbp1蛋白、Eagan Tbp2蛋白および分類できないインフルエンザ菌SB12 Tbp2蛋白の発現からの生成物のSDS−PAGEゲルを示す図である。列1はtoでのJB−1476−2−1(T7/Eagan Tbp1)であり、列2はt=4h誘発でのJB−1476−2−1であり、列3は、200kDa、116kDa、97.4kDa、66kDa、45kDaおよび31kDaの分子量マーカーであり、列4はtoでのJB−1437−4−1(T7/Eagan Tbp2)であり、列5はt=4h誘発でのJB−1437−4−1であり、列6はtoでのJB−1607−1−1(T7/SB12 Tbp2)であり、列7はt=4h誘発でのJB−1607−1−1である。
図23は、大腸菌から発現された組換えTbp1およびTbp2の精製図式を示した図である。
図24は、図23の図式によって精製した組換えTbp1およびTbp2の純度分析を示す図である。列1には分子量マーカーがあり(106、80,49.5、32.5、27.5および18.5kDa)、列2は大腸菌全細胞溶解物である。列3は、可溶化封入体である。列4は精製Tbp1またはTbp2である。
図25は、マウスにおけるrTbp1(上図)およびrTbp2(下図)の免疫原性を示す図である。
図26は、ウェスタンブロッティングでの各種インフルエンザ菌株との抗Eagan rTbp1抗血清の反応性を示す図である。列1はBL21/DE3であり、列2はSB12−EDDAであり、列3はSB12+EDDAであり、列4はSB29−EDDAであり、列5はSB29+EDDAであり、列6はSB33−EDDAであり、列7はSB33+EDDAであり、列8はEagan−EDDAであり、列9はEagan+EDDAであり、列10はカタル球菌4223−EDDAであり、列11はカタル球菌4223+EDDAであり、列12は髄膜炎菌608−EDDAであり、列13は髄膜炎菌608+EDDAであり、列14は組換えEagan Tbp1を発現する誘発JB−1476−2−1であり、列15は分子量マーカーである。特異的な約95kDaの帯域は、インフルエンザ菌株SB12、SB29、SB33およびEaganに相当する列3、4、5、7、8および9で抗Tbp1抗血清と反応し、約110kDaの帯域は、カタル球菌株に相当する列10および11で反応し、約80kDaの帯域は、髄膜炎菌608に相当する列12および13で反応した。
図27は、ウェスタンブロッティングにおける各種インフルエンザ菌株との抗Eagan rTbp2抗血清の反応性を示す図である。列1は分子量マーカーであり、列2は組換えEagan Tbp2を発現する誘発JB−1437−4−1であり、列3はSB12−EDDAであり、列4はSB12+EDDAであり、列5はSB29−EDDAであり、列6はSB29+EDDAであり、列7はSB30−EDDAであり、列8はSB30+EDDAであり、列9はSB32−EDDAであり、列10はSB33−EDDAであり、列11はSB33+EDDAであり、列12はPAK−EDDAであり、列13はPAK+EDDAであり、列14はEagan−EDDAであり、列15はEagan+EDDAである。60〜70kDaの特異的帯域は、列3、6、7、8、13、14および15、すなわち株SB12、SB29、SB30、PAKおよびEaganでの抗Tbp2抗血清と反応性であった。
図28は、トランスフェリン受容体を産生しないインフルエンザ菌株を得るのに使用されるプラスミドpUHIT1KFHおよびpUHIT1KFPの構築を示した図である。
図29は、トランスフェリン受容体蛋白を産生する細菌間で保存されるトランスフェリン受容体蛋白由来のエピトープを発現するキメラのポリオウィルスをコードするプラスミドの構築を示す図である。
図30は、トランスフェリン受容体蛋白を産生する細菌間で保存されるトランスフェリン受容体蛋白由来のエピトープを発現するポリオウィルスキメラによるウサギの免疫感作によって産生される抗血清の反応性を示すウェスタンブロッティングである。A図は大腸菌で発現されたインフルエンザ菌株SB12からの精製組換えTbp2(列1)、カタル球菌株4223からの精製Tbp2(列2)、鉄制限カタル球菌株4223の全細胞溶解物(列3)、非鉄制限条件下に成長させた大腸菌JM109の全細胞溶解物(列5)を示すクマシー・ブリリアント・ブルー染色ゲルを示す図である。B図は、PV1TBP2Aで免疫感作したウサギから第27日に採取した血清蓄積液を用いた複製ゲルのウェスタンブロッティングの結果を示す図である。C図は、同じものからの採血前血清の蓄積液についての結果であって、最小の特異的反応性を示したものの図である。
図31は、トランスフェリン受容体蛋白Tbp2の多くの切断類縁体を示す図である。
図32は、トランスフェリンに対する切断Tbp2蛋白の結合を示す図である。
上記の図の一部においては、以下の略称を用いて、特定部位特異的な制限エンドヌクレアーゼを称している。すなわち、RはEco R Iであり、PsはPst Iであり、HはHind IIIであり、BgはBg1 IIであり、NdeはNde Iであり、EarはEar Iであり、SauはSau3A Iである。
図28において、以下の略称を用いて、特定部位特異的な制限エンドヌクレアーゼを称している。すなわち、AはAcc Iであり、BはBam H Iであり、EはEco R Iであり、OはXho Iであり、HはHind IIIであり、PsはPst Iであり、VはEco R Vであり、XはXba Iであり、GはBgl IIであり、SはSal Iであり、KはKpn Iであり、SはSac Iである。
発明の詳細な説明
ヘモフィルス株を適切に使用して、本発明の実施態様を代表とするトランスフェリン部分をコードする核酸の少なくとも一部を有してなるDNA分子の形態であることができる精製・単離核酸を提供することができる。そのような菌株は一般に、臨床的入手源および細菌培養収集(例:American Type Culture Collection)から入手することができる。
本発明の1態様によれば、トランスフェリン受容体蛋白は、既報の方法(Schryvers(1989)、ogunnaviwo and Schryvers(1992)および米国特許5141743号(これのテーマは引用によって本明細書に含まれるものである))によってヘモフィルス株から単離することができる。適切な方法の詳細は米国特許5141743号に記載されているが、そのような方法の簡単な要旨を以下に説明する。トランスフェリン受容体の単離は、トランスフェリン結合活性を発現する細菌株から膜分画を単離し、膜分画中のトランスフェリン受容体に対してトランスフェリンを予め結合させる段階、膜を可溶化する段階、トランスフェリンを固定化する段階および固定化トランスフェリンからトランスフェリン受容体を分離する段階という一連の段階が関与するアフィニティ法によってトランスフェリン受容体を精製することで行われる。別法として、受容体蛋白は、予め結合させる段階を省略し、高濃度の塩を可溶化緩衝液に含有させて、既報の方法(Ogunnariwo and Schryvers(1992))に従って固定化トランスフェリンによる直接単離を可能とする、上記の方法の変法によって単離することができる。
本願において、「トランスフェリン受容体蛋白の切断類縁体」という用語は、全長蛋白と比較して切断されたTbp1および/またはTbp2蛋白類を定義するために用いられ、例えばヘモフィルスなどの各種菌株における天然のものなどの、それら蛋白のアミノ酸配列が変わったものも含まれる。トランスフェリン受容体の他の細菌源としては、ナイセリア属、ブランハメラ属、パストレラ属およびアクチノバチルス属などがあるが、これらに限定されるものではない。
特定の実施態様において、トランスフェリンはインフルエンザ菌b型DL63株から単離され、既報の方法(例:Schryvers(1989)、Ogunnariwo and Schryvers(1992)および米国特許5141743号)に従ってアフィニティクロマトグラフィー法にて精製した。単離・精製トランスフェリン受容体を用いて、ウサギにおいて抗Tf抗R血清を得た。インフルエンザ菌b型DL63株からの染色体DNAを機械的に剪断し、EcoR Iリンカーを加え、λZAP発現ライブラリを構築した。このライブラリを抗TfRウサギ抗血清でスクリーニングし、重複する制限マップを有する2つの陽性クローン(pBHIT1およびpBHIT2)を得た(図1Aおよび図2)。これらのクローンについて配列決定を行い、2つの大きい転写解読枠を確認した(図2)。インフルエンザ菌DL63からのトランスフェリン受容体遺伝子Tbp1およびTbp2のヌクレオチド配列(配列番号:1)ならびにそれらの推定アミノ酸配列(配列番号:5−Tbp1および配列番号:6−Tbp2)を図3に示してある。配列分析から、TfRオペロンが、縦列に配置され、単一のプロモータから転写された2個の遺伝子(Tbp1およびTbp2)から成ることが明らかとなった(特には、図2および図3に示したもの)。Tbp2蛋白は、菌種に応じて分子量が変動する傾向があるが、Tbp1蛋白はそれより安定した分子量を持つ傾向があり、TfR遺伝子を有する各種細菌でわずかに変動し得る。Tbp1の分子量は通常、94〜106000の範囲であるのに対して、Tbp2の分子量は58〜98000までかなり変動する。
インフルエンザ菌DL63からのトランスフェリン受容体のN末端および臭化シアン断片のアミノ酸配列決定を行った。Tbp2のN末端は遮断したが、Tbp1の配列決定によってアミノ酸配列を確認し、それを図3の蛋白配列で下線を施して示してある。これらのペプチド配列は、Glu Thr Gln Ser Ile Lys Asp Thy Lys Glu Ala Ile Ser Ser Glu Val Asp Thr(図3に示した通り、配列番号:101)およびLeu Gln Leu Asn Leu Glu Lys Lys Ile Gln Gln Asn Trp Leu Thr His Gln Ile Ala Phe(図3に示した通り、配列番号:102)である。Tbp1の信号配列およびTbp2の推定信号配列を図3で二重上線によって示してある。Tbp1の推定信号配列は、Met Thr Lys Lys Pro Tyr Phe Arg Leu Ser Ile Ile Ser Cys Leu Leu Ile Ser Cys Tyr Val Lys Ala(配列番号:103)である。Tbp2の推定信号配列は、Met Lys Ser Val Pro Leu Ile Ser Gly Gly Leu Ser Phe Leu Leu Ser Ala(配列番号:104)である。Tbp2のN末端領域の所望のアミノ酸配列は、それがリポ蛋白であることを示している。
インフルエンザ菌b型Eagan株からの染色体DNAを得て、ライブラリを形成した。第1のライブラリは、Sau3A Iで部分的に消化し、約5〜10kb断片についての分子量分別を行い、pUCに基づくプラスミドにクローニングしたDNAから構築した。第2のライブラリは、λZAPにクローニングしたEco R I制限染色体DNA断片から構築した。いずれのライブラリも、図2に示したようにpBHITクローンの5'断片で調べ、S−4368−3−3およびJB−901−5−3と称されるインフルエンザ菌のTfR遺伝子の部分クローンを得た。そこで図1Bおよび2について説明すると、本発明の別の態様によって、インフルエンザ菌b型Eagan株からのTbp1およびTbp2をコードするプラスミドクローンS−4368−3−3およびJB−901−5−3が示してある。インフルエンザ菌b型Eagan株からのTbp1およびTbp2遺伝子のDNA配列(配列番号:2)ならびにそれらの推定アミノ酸配列(配列番号:7および8)を図4に示してあり、Tbp2配列がオペロンの最初の遺伝子となっている。図4において、推定−35、−10およびリボソーム結合部位配列には上線が施してある。
インフルエンザ菌b型MinnA株からの染色体DNAを得て、そのDNAをSau3A Iで部分的に消化し、10〜20kb断片についての分子量分別を行い、EMBL3のBamH I部位にクローニングした。そのライブラリを、pBHITクローンの5'断片で調べ(図2)、TfRをコードする全長クローン(DS−712−1−3)を得た。図1Cおよび2について説明すると、本発明の別の態様によって、インフルエンザ菌b型MinnA株からのTbp1およびTbp2をコードするプラスミドクローンDS712−1−3が示してある。インフルエンザ菌b型MinnA株からのTbp1およびTbp2のDNA配列(配列番号:3)ならびにそれらの推定アミノ酸配列(配列番号:9−Tbp1および配列番号:10−Tbp2)を図5に示してあり、この場合Tbp2配列がオペロンの最初の遺伝子となっている。図5において、推定−35、−10およびリボソーム結合部位配列には上線が施してある。
分類できないインフルエンザ菌株PAK12085からの染色体DNAを得た。そのDNAをSau3A Iで部分的に消化し、10〜20kb断片についての分子量分別を行い、EMBL3のBamH I部位にクローニングした。そのライブラリを、pBHITクローンの断片で調べ(図2)、TfRをコードする全長クローン(JB−1042−7−6)を得た。図1Dおよび2に、クローンJB−1042−7−6の制限マップを示してあり、図6にはインフルエンザ菌PAK12085からのTbp1およびTbp2遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:4)ならびにそれらの推定アミノ酸配列が示してあり(配列番号:11および12)、この場合Tbp2配列が最初である。図6において、推定−35、−10およびリボソーム結合部位配列には上線が施してある。
中耳炎由来の分類できないインフルエンザ菌株SB33からの染色体DNAを得た。そのDNAをSau3A Iで部分的に消化し、10〜20kb断片についての分子量分別を行い、EMBL3のBamH I部位にクローニングした。そのライブラリを、pBHITクローンの断片で調べ(図2)、TfRをコードする全長クローン(JB−1031−2−9)を得た。図2に、クローンJB−1031−2−9の制限マップを示してあり、図7にはインフルエンザ菌SB33からのTbp1およびTbp2遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号:105)ならびにそれらの推定アミノ酸配列が示してあり(配列番号:106および107)、この場合Tbp2配列が最初である。SB33tbp2遺伝子は1個の塩基欠失を有し、そのために残基126でのフレームシフトおよび残基168での得られた蛋白の早期切断が生じる。
中耳炎由来のNTHi株SB12、SB29、SB30およびSB32からのtbp2遺伝子のPCR増幅を行って、遺伝子の配列決定を行った。
分類できないインフルエンザ菌SB12株(配列番号:105)、SB29(配列番号:108)、SB30(配列番号:110)およびSB32(配列番号:112)からのtbp2遺伝子のヌクレオチド配列を図8、9、10および11にそれぞれ示してある。
増幅tbp2遺伝子はいずれも全長Tbp2蛋白をコードすることが認められ、菌株SB33の欠陥tbp2遺伝子が非定型であることを示している。
3つのインフルエンザ菌b型株はいずれもtbp2とtbp1の間にわずか13bpの同じ短い遺伝子間配列を持つが、NTHi株PAK12085およびSB33は27bpのそれより長い遺伝子間配列を持っていた(図12)。
株SB12は、インフルエンザ菌b型株で認められるものと同じ13bpの遺伝子間配列を持っていたが、株SB29、SB30およびSB32は、他のNTHi株PAK12085およびSB33で認められたものと同様のそれより長い遺伝子間配列(27〜30bp)を持っていた(図2B)。これら9種類の株のいずれも、そのtbp2遺伝子とtbp1遺伝子の間に共通の核が保存された13bpの配列を持っている。
インフルエンザ菌Tbp1のアミノ末端近くのペンタペプチド配列は同一であり(図12)、TonBボックスと同様であった。インフルエンザ菌のtonB遺伝子は、最近クローニングされ、配列決定されている(Jarosik et al.,1994)。
インフルエンザ菌株Eagan/MinnA、DL63、PAK12085およびSB33からのTbp1のアミノ酸配列を図14で比較してある。EaganおよびMinnAのTbp1蛋白は同一であって長さは912アミノ酸であり、DL63のものは914残基を持ち、PAK12085のものは914残基を持ち、SB33のものは911残基を持つ。インフルエンザTbp1蛋白は、配列の一致率95〜100%でかなり保存されている。インフルエンザ菌株Eagan/MinnA、DL63、PAK12085、SB12、SB29、SB30およびSB32からのTbp2のアミノ酸配列を図15で比較してある。EaganおよびMinnAのTbp2蛋白は同一であって660アミノ酸を持ち、DL63のものは644残基を持ち、PAK12085のものは654残基を持つ。SB33のtbp2遺伝子には1個の欠失があり、そのために残基126でのフレームシフトおよび残基168での得られた蛋白の早期切断が生じている。失われた塩基は、PCR増幅染色体DNAの直接配列決定によって確認した。同一であるEaganおよびMinnAを例外として、Tbp2蛋白配列は一致率わずか66〜70%と比較的保存率が低いが、図15で確認することができるいくつかの短い保存配列部分がある。菌株SB12、SB29、SB30およびSB32からのPCR増幅tbp2遺伝子はいずれも、全長Tbp2蛋白をコードすることが認められた。推定Tbp2蛋白間で配列および大きさの不一致があり、SB12は648アミノ酸を持ち、SB29は631残基を持ち、SB30は630残基を持ち、SB32は631残基を持つ。EaganTbp1およびTbp2の推定二次構造を決定した(図16Aおよび16B)。いずれの蛋白も、いくつかの膜横断ドメインを持ち、Tbp1は膜を20回横断し、Tbp2はそれを12回横断している。Tbp1アミノ末端領域では、3つの露出した保存エピトープが同一であり(DNEVTGLGK−配列番号:43、EQVLN/DIRDLTRYD−配列番号:139および140、GAINEIEYENVKAVEISK−配列番号:141)、C末端領域では一つであった(GI/VYNLF/LNYRYVTWE−配列番号:142および143)。ヒト病原体のTbp2蛋白では、一致していたのはわずか3つの小さい保存領域であった。すなわち、N末端でCS/LGGG(G)SFD−配列番号:75、144および145であり、内部でLE/SGGFY/FGP−配列番号:74および146であり、C末端でVVFGAR/K−配列番号:83および84であった。
Tbp2アミノ酸配列がヘモフィルス株間で変わるという発見から、ヘモフィルスを同じTbp2アミノ酸配列によって定義される小群に分けることができる。この発見によって、ヘモフィルス種からのTbp1およびTbp2と配列の類似性を有するトランスフェリン受容体を産生するヘモフィルスその他の細菌によって生じる疾患に対する免疫感作などのための免疫原性組成物で使用されるヘモフィルス株におけるそのようなサブタイプが共有するエピトープを代表する最少数のTbp1および/またはTbp2配列または合成ペプチドの合理的選択を行うことができる。そこで、最少数のトランスフェリン受容体、類縁体、断片および/またはペプチドを用いて、トランスフェリン受容体を産生するヘモフィルスおよび他の病原菌の多くまたは全ての菌株に対する免疫感作を行うことができる。
さらに、広範囲の病原菌(インフルエンザ菌b型、分類できないインフルエンザ菌、髄膜炎菌、淋菌およびアクチノバチルス(ヘモフィルス)牛肺疫菌)からのトランスフェリン受容体のアミノ酸配列を図14および15に示したように比較した。この分析から、これら細菌のいずれの間でも保存されているTbp1およびTbp2の領域が明らかになった。そのような保存配列の一部が、表2および表3のペプチドにある。詳細には、配列DNEVTGLGK(配列番号:43)EQVLNIRDLTRYDPGI(配列番号:44)、EQVLNIRDLTRYDPGISVVEQGRGASSGYSIRGMD(配列番号:45)、GAINEIEYENVKAVEISKG(配列番号:46)およびGALAGSV(配列番号:48)がTbp1で保存されている(表1および図14)。Tbp1における特定の保存配列には、LEGGFYGP(配列番号:74)、CSGGGSFD(配列番号:75)、YVYSGL(配列番号:76)、CCSNLSYVKFG(配列番号:77)、FLLGHRT(配列番号:78)、EFNVOF(配列番号:79)、NAFTGTA(配列番号:80)、VNGAFYG(配列番号:81)、ELGGYF(配列番号:82)、VVFGAR(配列番号:83)およびVVFGAK(配列番号:84)がある(表2および図15)。
広範囲の病原菌のトランスフェリン受容体で保存される配列の発見により、特定のアミノ酸配列を有する最少数の抗原(合成ペプチドの形のものを含む)を選択して、トランスフェリン受容体を有する病原体によって生じる疾患に対して免疫感作を行うことができる。上記のもの以外のそのような細菌には、淋菌などのナイセリア属およびカタル球菌などのブランハメラ属などがある。多くの病原菌間でのそのような保存アミノ酸により、全てではなくともほとんどのトランスフェリンを認識するモノクローナル抗体などのTfR特異的抗体を形成することができる。トランスフェリン受容体の保存部分に相当するペプチドに対して抗血清を形成した。この抗血清は、カタル球菌におけるトランスフェリン受容体を認識した。そのような抗血清は、全てではなくともTfR蛋白を産生するほとんどの細菌の検出および中和に有用であり、そのような病原体によって生じる疾患に対する受動免疫にも有用である。そのような保存アミノ酸配列を用いる診断アッセイおよびキットは、全てではなくともトランスフェリン受容体を産生する多くの細菌を検出するのに有用である。
上記のアミノ酸配列を有するエピトープは、そのような配列を有する合成ペプチドの使用によって、またはそのような配列を発現する生ベクターの使用によって、またはそのアミノ酸配列をコードする核酸分子の直接投与によって免疫系の細胞に運搬することができる。
インフルエンザ菌b型株Eagan、MinnA、DL63および分類できない株PAL12085のTbp1蛋白内での保存アミノ酸配列を有するいくつかのペプチドを表2に示してある。これらのペプチドの一部に対する抗体をモルモットで形成した(表4)。インフルエンザ菌b型株Eagan、MinnA、DL63および分類できない株PAK12085のTbp2蛋白内の保存アミノ酸配列を有するペプチドを表3に示してある。これらのペプチドの一部に対する抗体をモルモットで形成した(表4)。
Tbp1およびTbp2遺伝子のコード配列を適切な発現ベクターにクローニングすることで、組換え蛋白を産生することができる。組換え蛋白Tbp1およびTbp2を、T7発現系を用いて、大腸菌から発現させた。成熟Eagan Tbp1蛋白をコードするtbp1遺伝子を、図17に示したように、プラスミドJB−1468−29を形成するT7プロモータの背後でフレーム内でクローニングした。BL21/DE3細胞に導入され、IPTGまたは乳糖で誘発された場合、Eagan Tbp1蛋白は図22に示すように発現された。
成熟Tbp2蛋白をコードするtbp2遺伝子を、図18に示したように、プラスミドJB−1424−2−8を形成するT7プロモータの背後でフレーム内でクローニングした。大腸菌細胞に導入され、上記のように誘発された場合、Tbp2蛋白は図22に示すように発現された。
株NTHi SB12からのtbp2遺伝子をPCRによって増幅した。得られた増幅DNAは、成熟蛋白前に真正のインフルエンザTbp2信号配列がある。その信号配列および成熟蛋白をコードするSB12 tbp2遺伝子を、図21に示すように、pT7−7発現系にクローニングした。得られたプラスミド(JB−1600−1)を大腸菌BL21/DE3細胞に導入し、誘発した場合、SB12 Tbp2は図22に示すように発現された。
封入体として大腸菌で産生される組換え蛋白Tbp1およびTbp2を図23に示した図式によって精製した。精製蛋白は図24に示したように、約70%以上の純度であった。精製組換えTbp1およびTbp2蛋白を用いて、マウスにおける免疫原性試験を行った。いずれの蛋白も、3〜10μgの用量で、良好な免疫応答を引き起こした(図25)。
一つのインフルエンザ菌株由来の組換えTbp1またはTbp2に対して形成された抗血清は他の菌株と交差反応性であることから、有用な診断試薬となり得る(図26および27)。
図28に示したプラスミドpUHIT1KFHおよびpUHITKFPは、トランスフェリン受容体オペロン内でクローニングされた選択可能な抗生物質抵抗性マーカーを有し、トランスフェリン受容体オペロンを挿入によって失活させるよう構築されたものである。これらのプラスミドを用いてヘモフィルスの形質転換を行って、実施例19に記載した方法に従って、トランスフェリンTbp1および/またはTbp2を産生しない菌株を形成した。そのような菌株は、in vitroおよびin vivoでの検出および診断の実施態様において陰性対照として有用である(それらがTfRを産生しないことから)。そのような菌株はさらに、in vivo成長のために弱毒化されることが期待され、ヘモフィルスによって生じる疾患に対する保護を提供する生ワクチンとして有用である。
以上述べたように、トランスフェリン受容体蛋白のエピトープは、アミノ酸配列などを発現する生ベクターを使用することで免疫系の細胞に運搬することができ、生ベクターはポリオウィルスとすることができる。図29について説明すると、Tbp2からの保存エピトープLEGGFYGP(配列番号:74)を含むトランスフェリン受容体蛋白のエピトープを発現するハイブリッドポリオウィルスの構築を図示してある。そのようなウィルスは、アミノ酸配列LEGGFYGP(配列番号:74)を組み込んだペプチドに対して形成された抗体によって認識され(表5)、ウィルスが、抗原的に認識可能な形でこの配列を発現したこと示している。PV1TBP2AおよびPV1TBP2Bも、インフルエンザ菌株DL63 tbp2に対して形成されたウサギ抗血清によって中和することができ、少なくともこれら2つのウィルスが、蛋白に対して形成された抗体に対して認識可能な形でその配列を発現したことを示していた。いずれのウィルスも、抗PV1血清によって中和可能であって、ポリオ中和抗原部位Iにおける変化はウィルスにおける他の抗原部位に対してほとんど影響しなかったことを示している。さらに、ポリオウィルスキメラPV1TBP2AまたはPV1TBP2Bによる免疫感作によって産生されたウサギ抗血清は、アミノ酸配列LEGGFYGP(配列番号:74)を組み込んだペプチドを認識した。これは、PV1TB2AおよびPV1TBP2Bによって発現される配列が免疫原性で、合成ペプチドの文脈で同じ配列を認識することができる抗体を誘発することを示している。
図30について説明すると、A図には、大腸菌で発現されたインフルエンザ菌株SB12からの精製組換えtbp2(列1)、カタル球菌株4223からのtbp2(列2)、鉄制限カタル球菌株4223の全細胞溶解物(列3)、鉄制限大腸菌JM109の全細胞溶解物(列4)、ならびに非鉄制限条件下で成長させた大腸菌JM109の全細胞溶解物(列5)を示すSDS PAGEゲルを示してある。B図には、PV1TBP2Aで免疫感作したウサギからの血清の蓄積液を用いた複製ゲルのウェスタンブロッティングの結果を示してある。列1および2では、精製トランスフェリン結合蛋白との強力な反応があり、列3では同様の大きさの帯域があった。大腸菌蛋白とほとんど反応はなかった(列4および5)。C図は、最少の特異的反応を示した同じウサギからの採血前血清の蓄積液についての結果を示してある。これらの結果から、PV1TBP2Aが、インフルエンザ菌およびカタル球菌からのトランスフェリン結合蛋白に特異的な抗血清を誘発できること、ならびにその抗血清が、等価な蛋白を発現しない大腸菌からのカタル球菌を識別できることが明らかである。
モルモットの抗Eagan rTbp1、抗Eagan rTbp2および抗SB12 rTbp2抗血清を用いて、Tbp1およびTbp2蛋白の抗原性保存について、一群のインフルエンザ菌のスクリーニングを行った。抗Eagan rTbp1抗血清を用いたウェスタンブロッティングによってスクリーニングした33の株のうち、全てが約100kDaの反応性帯域を持っていた。抗Eagan rTbp2抗血清を用いたウェスタンブロッティングによってスクリーニングした89の株のうち、85の株が、60〜90kDaの反応性帯域を持っていた。抗SB12 rTbp2抗血清を用いたウェスタンブロッティングによってスクリーニングした86の株のうち、82の株が、60〜90kDaの反応性帯域を持っていた。抗Eagan rTbp2抗血清および抗SB12 rTbp2抗血清のいずれによっても認識されなかった株が1株だけあり、それは欠陥tbp2遺伝子を有するNHTi株SB33であった。これらのデータは、トランスフェリン受容体蛋白はインフルエンザ菌株で非常に高い率で保存されることを示しており、これら蛋白が抗原として、さらにはインフルエンザ菌によって生じる疾患に対する免疫感作およびそれの診断のためのワクチンなどの免疫原性組成物においてのこれら蛋白の使用を支持するものである。
菌血症の幼若ラットモデル(Loeb et al,1987)を用いて、抗Eagan rTbp1抗血清および抗Eagan rTbp2抗血清の保護能力を評価した。ウサギまたはモルモットのいずれかで形成した抗Eagan rTbp1抗血清はこのモデルでは保護効果を示さなかったが、ウサギまたはモルモットのいずれかで形成した抗Eagan rTbp2抗血清には保護効果があった(表7)。これらのデータは、インフルエンザ菌によって生じる疾患に対する保護抗原としてのrTbp2の使用を示すものである。
中耳炎のチンチラモデル(Barenkamp et al.,1986)を用いて、SB12 rTbp2の保護能力を評価した。データは、対照群と比較して、免疫感作した動物の疾患の重度が軽いことを示していた。
本発明によれば、表8および図31に示したようなトランスフェリン受容体蛋白Tbp2の多くの切断類縁体、ならびにそれをコードする核酸分子が提供される。そのような切断類縁体の中には、組換え発現系(例:大腸菌)で非常に強く発現され、本発明の診断および予防接種の実施態様で適切な抗血清および免疫原を提供するものもある。
本明細書に記載の実施態様を代表的なものとするヘモフィルス株のトランスフェリン受容体蛋白の免疫原性切断類縁体をコードする精製・単離DNA分子は、次のものとして有利である。
−in vitroまたはin vivoでのヘモフィルス株の特異的識別のための核酸プローブ
−DNA分子によってコードされる免疫原性切断生成物は、ヘモフィルス株によって生じる疾患に対する予防接種および(例えば)ヘモフィルスによる感染の検出用のヘモフィルス特異的抗血清の製造のための診断試薬、抗原として有用である。
本発明の核酸分子によってコードされるトランスフェリン受容体蛋白の切断類縁体は、トランスフェリン受容体を産生する細菌株によって生じる疾患の診断およびその疾患に対する免疫感作において有用である。そのような細菌には、ヘモフィルス属、ナイセリア属(髄膜炎菌および淋菌など)およびブランハメラ属(例:カタル球菌)の株などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明の各種実施態様が、例えばヘモフィルス感染およびトランスフェリン受容体を産生する他の病原菌による感染の予防接種、診断、治療の分野および免疫試薬形成の分野で多くの利用場面を有することは当業者には明らかである。そのような用途についてのさらに詳細な考察を以下に行うが、これらに限定されるものではない。
1.ワクチンの製造および使用
ワクチンとしての使用に好適な免疫原性組成物を、トランスフェリン受容体蛋白の免疫原性切断類縁体から製造することができる。このワクチンは、抗トランスフェリン受容体抗体およびオプソニン作用性または殺細菌性である抗体などの抗体を産生する免疫応答を誘発する。予防接種対象者をヘモフィルスその他のトランスフェリン受容体を産生する細菌が攻撃したとしても、抗体がトランスフェリン受容体に結合し、それによって、生存のために必要な鉄源への細菌の接近が防止される。さらに、オプソニン作用性または殺細菌性の抗TfR抗体は、別の機序によって保護を与える可能性もある。
ペプチドを含むワクチンは、いずれも引用によって本明細書に含まれる米国特許4601903号、4599231号、4599230号および4596792号などのように、当業界では公知である。ワクチンを含む免疫原性組成物は、液剤や乳剤などの注射剤として製剤することができる。免疫原は、その免疫原と適合性である医薬的に許容される賦形剤と混合することができる。そのような賦形剤としては、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノールおよびそれらの組み合わせたものなどがあり得る。免疫原性組成物およびワクチンは、湿展剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤またはアジュバントなどの補助物質をさらに含有して、その有効性を高めることができる。免疫原性組成物およびワクチンは、皮下注射もしくは筋肉注射によって、非経口的に投与することができる。別法として、本発明によって得られる免疫原性組成物を、粘膜表面での免疫応答を誘発するような形で製剤および運搬することができる。そこで、免疫原性組成物を、例えば鼻腔または経口(胃内投与)投与によって粘膜表面に投与することができる。免疫原性組成物は、免疫系の特異的細胞または粘膜表面への運搬のためのターゲティング分子との併用で提供することができる。そのようなターゲティング分子には、WO 92/17167(Biotech Australia Pty.Ltd.)に記載のようなB12株および細菌毒素の断片、ならびに米国特許5194254号(Barber et al)に記載のようなモノクローナル抗体などがある。別法として、坐剤および経口製剤などの他の投与形態が望ましい場合がある。坐剤の場合、結合剤および担体には、例えばポリアルカレングリコールまたはトリグリセリドなどがあり得る。経口製剤には、例えば医薬用のサッカリン、セルロースおよび炭酸マグネシウムなどの通常使用されるインシピエント(incipient)などがあり得る。これらの組成物は、液剤、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤または粉剤の形態を取り、免疫原を10〜95%含有する。
ワクチンは、その製剤に適合する方法にて、治療上有効で、保護効果があり、免疫原性であるような量で投与される。投与量は、治療を受ける対象者によって決まるものであり、例えば、抗体を合成し、必要に応じて細胞介在性免疫応答を生じるその対象者における免疫系の能力によって決まる。投与に必要な有効成分の正確な量は、医師の判断によって決まる。しかしながら、好適な用量範囲は、当業者であれば容易に決定し得るものであり、トランスフェリン受容体、それの類縁体および断片および/またはペプチドをμg単位とすることになると考えられる。初期投与および追加免疫投与における好適な投与法も変動し得るものであるが、初期投与とそれに続く投与を行うことになると考えられる。ワクチンの用量は投与経路によっても決まるものであり、宿主の大きさに応じて変動する。
本発明の核酸分子は、例えば遺伝的免疫感作を行う注射によって、あるいはサルモネラ、BCG、アデノウィルス、ポックスウィルス、ワクチニアまたはポリオウィルスなどの生ベクターを構築することによって、直接DNAを投与することで直接免疫感作を行うのに使用することもできる。免疫系に異種抗原を運搬するのに使用されているいくつかの生ベクターについての考察が行われている文献がある(例:O'Hagan,1992)。被験対象者へのDNAの直接注射による遺伝的免疫感作の方法については報告がある(例:Ulmer et al.,1993)。
通常は0.05〜1.0%のリン酸緩衝生理食塩水溶液として使用される、アジュバントと抗原を同時投与すれば、免疫原性を大幅に向上させることができる。アジュバントは、抗原の免疫原性を高めるが、必ずしもそれ自体が免疫原性とは限らない。アジュバントは、抗原を投与部位付近に局所的に保持することで、免疫系の細胞への抗原の緩やかな徐放を促進する貯蔵効果を生じることで作用し得るものである。アジュバントはさらに、免疫系の細胞を抗原貯蔵部まで引き寄せ、そのような細胞を刺激して免疫応答を誘発することができる。
免疫刺激剤またはアジュバントは、例えばワクチンに対する宿主の免疫応答を改善するために、長年にわたって使用されている。リポ多糖類などの内在性アジュバントは通常、ワクチンとして使用される死菌または弱毒化細菌の成分である。外因性アジュバントは、代表的には非共有結合的に抗原に結合する免疫調節剤であり、宿主の免疫応答を促進するよう製剤されている。そうして、非経口的に運搬される抗原に対する免疫応答を促進するアジュバントが確認されている。しかしながら、そのようなアジュバントの一部は有毒であり、望ましくない副作用を起こし得るものであることから、ヒトや多くの動物で使用するには不適なものとなっている。実際、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム(総称して通常は、ミョウバンと称される)のみがヒトワクチンおよび動物ワクチンにおけるアジュバントとして常用される。ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドに対する抗体応答上昇におけるミョウバンの効力は明らかになっており、HBsAgワクチンにミョウバンがアジュバントとして使用されている。ミョウバンの有用性は一部の利用分野で明らかになっているが、それには制限がある。例えば、ミョウバンはインフルエンザ予防接種には無効であり、必ずしも細胞介在性免疫応答を誘発するとは限らない。ミョウバンをアジュバントとする抗原によって誘発される抗体は、マウスにおいては主としてIgG1アイソタイプであり、一部のワクチン剤による保護には最適ではない可能性がある。
広範囲の外因性アジュバントが抗原に対して強力な免疫応答を起こし得る。本発明での使用に好適なアジュバントには、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、QS21、QuilA、それらの誘導体および成分、ISCOM基材、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、糖脂質類縁体、アミノ酸のオクタデシルエステル、ムラミルジペプチド、ポリホスファゼン、ISCOPREP、DC−chol、DDBAおよびリポ蛋白などがあるが、これらに限定されるものではない。アジュバントの有利な組み合わせについては、1994年6月16日出願の同時係属中の米国特許出願08/261194号(WO 95/34308)に記載されている。
体液性免疫応答(HIR)および細胞介在性免疫(CMI)を効果的に誘発するためには、免疫原をアジュバント中で乳化させる。多くのアジュバントが有毒であり、症状としては、肉芽腫、急性および慢性の炎症(完全フロイントアジュバント、FCA)、細胞崩壊(サポニンおよびプルロニックポリマー)および発熱性、関節炎および前部ブドウ膜炎(LPSおよびMDP)などがある。FCAは優れたアジュバントであり、研究で広範囲に使用されているが、その毒性のために、ヒトワクチンや動物ワクチンでの使用には特許されていない。
理想的なアジュバントの望ましい特性には次のものがある。
(1)毒性がないこと
(2)長期間の免疫応答を刺激する能力
(3)製造が簡単で、長期保存において安定であること
(4)必要に応じて、各種経路で投与される抗原に対してCMIとHIRの両方を誘発できること
(5)他のアジュバントとの相乗作用
(6)抗原提供細胞(APC)の群との選択的相互作用を行う能力
(7)適切なTH1またはTH2細胞特異的免疫応答を特異的に誘発する能力
(8)抗原に対して適切な抗体アイソタイプ濃度(例:IgA)を選択的に上昇させる能力
ロックホッフ(Lockhoff)らに対して1989年8月8日に与えられた米国特許4855283号(引用によって本明細書に含まれる)には、N−グリコシルアミド、N−グリコシル尿素およびN−グリコシルカーバメート(これらはそれぞれ、免疫調節剤またはアジュバントとしてのアミノ酸によって糖残基が置換されている)などの糖脂質類縁体が開示されている。そこで、ロックホッフらの報告(1991年)では、糖スフィンゴ脂質およびグリセロ糖脂質などの天然糖脂質と構造的に類似しているN−糖脂質類縁体が単純疱疹ウィルスワクチンおよび偽性狂犬病ウィルスワクチンの両方において強力な免疫応答を誘発できることが報告されている。糖脂質の中には、アノマー炭素原子を介して糖と直接結合する長鎖のアルキルアミンおよび脂肪酸から合成されて、天然脂質残基の機能を模倣するものもある。
モロニー(Moloney)に対して与えられ、本願の譲受人に対して譲渡され、引用によって本明細書に含まれる米国特許4258029号には、オクタデシルチロシン塩酸塩(OTH)が、破傷風トキソイドならびにホリマリンで失活させたI型、II型およびIII型小児麻痺ウィルスワクチンと複合させた場合に、アジュバントとして機能することが開示されている。さらに、ニクソン−ジョージら(Nixon−George et al,1990)は、組換えB型肝炎表面抗原と複合させた芳香族アミノ酸のオクタデシルエステルがB型肝炎ウィルスに対する宿主の免疫応答を促進したと報告している。
2.イムノアッセイ
本発明の免疫原性切断類縁体は、免疫原として、酵素結合抗体免疫アッセイ(ELISA)、RIAおよび他の非酵素結合抗体結合アッセイなどのイムノアッセイまたは抗細菌性ヘモフィルスTfR抗体の検出に関して当業界で公知の方法の抗原として有用である。ELISAアッセイでは、免疫原性切断類縁体を、選択された表面、例えばポリスチレン微量定量プレートのウェルなどの蛋白もしくはペプチドと結合することができる表面に固定化する。洗浄によって、吸着が不完全な切断類縁体を除去した後、被験サンプルに関して抗原的に中性であることが知られているウシ血清アルブミン(BSA)またはカゼインの溶液などの非特異的蛋白をその選択された表面に結合させることができる。これによって、固定化表面での非特異的吸着部位を遮断して、その表面での抗血清の非特異的結合によって生じるバックグラウンドを低減させることができる。
固定化表面を次に、免疫複合体(抗原/抗体)形成を起こすような形で、検査対象の臨床材料または生物材料などのサンプルと接触させる。これには、BSA、ウシγ−グロブリン(BGG)および/またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tweenなどの希釈剤によるサンプルの希釈などがあり得る。次にサンプルを室温(約25℃〜37℃のレベル)で約2〜4時間インキュベーションする。インキュベーション後、サンプルと接触する表面を洗浄して、免疫複合体形成していない材料を除去する。洗浄法には、PBS/Tweenなどの溶液またはホウ酸緩衝液による洗浄などがある。
被験サンプルと結合した切断類縁体との間の特異的免疫複合体の形成とそれに続く洗浄後、第1の抗体に対する特異性を有する第2の抗体に対して免疫複合体を曝露することで、免疫複合体形成の発生とその量も測定することができる。被験サンプルがヒト起源のものである場合、第2の抗体は、ヒト免疫グロブリン(一般的にはIgG)に対する特異性を有する抗体である。検出手段を提供するためには、第2の抗体は、例えば適切な発色性物質とともにインキュベーションすることで発色する酵素活性などの関連する活性を有することができる。次に、例えば可視スペクトルの分光光度計を用いて発色の程度を測定することで定量を行うことができる。
3.ハイブリッド形成プローブとしての配列の使用
そこで、トランスフェリン受容体遺伝子の配列を有する本発明のヌクレオチド配列により、トランスフェリン受容体遺伝子を有するヘモフィルスおよび他の細菌種からのトランスフェリン受容体遺伝子の確認およびクローニングが可能である。
本発明のトランスフェリン受容体遺伝子の配列を有して成るヌクレオチド配列は、他のTfR遺伝子の相補的延長部とともに選択的に二重鎖分子を形成する能力があることで有用である。利用分野に応じて、各種のハイブリッド形成条件を用いて、他のTfR遺伝子に対するプローブの各種程度の選択性を得ることができる。高い選択性を得るには、比較的厳しい条件を用いて、二重鎖を形成する。その条件としては例えば、約50℃〜70℃の温度での約0.02M〜0.15MのNaClのような低塩および/または高温条件などがある。利用分野によっては、約20℃〜55℃という範囲の温度で約0.15M〜0.9Mの塩のような、それより緩やかなハイブリッド形成条件が必要となる場合がある。ホルムアミドの添加量を増やしてハイブリッド形成条件をさらに厳しくすることで、ハイブリッド二重鎖を不安定化させることができる。そこで、特定のハイブリッド形成条件を容易に操作することができ、所望する結果に応じた選択法となる。通常、50%ホルムアミド存在下での適切なハイブリッド形成温度は、標的断片に対して95〜100%相同性であるプローブの場合には42℃であり、90〜95%相同性の場合には37℃であり、85〜90%相同性の場合には32℃である。
臨床的診断の実施態様においては、本発明の核酸配列を、標識などの適切な手段と併用して、ハイブリッド形成の測定を行うことができる。広範囲の適切な指示手段が当業界で公知であり、それには検出可能な信号を提供することができるアビジン/ビオチンなどの放射能、酵素その他のリガンドなどがある。一部の診断の実施態様では、放射能タグに代えて、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼもしくはペロオキシダーゼなどの酵素タグを用いることができる。酵素タグの場合、ヒトの肉眼による観察または分光測光法的に見ることができる手段を提供して、TfR遺伝子配列を有するサンプルによる特異的ハイブリッド形成を確認するのに使用可能である比色指示物質が知られている。
本発明の核酸配列は、溶液ハイブリッド形成および固相法を用いる実施態様でハイブリッド形成プローブとして有用である。固相法が関与する実施態様においては、滲出液、体液(例:血清、羊水、中耳滲出液、痰、細気管支肺胞洗浄液)または組織などの臨床検体のようなサンプルからの被験DNA(またはRNA)を、選択された基材または表面に吸着その他の方法で固定する。次に、固定化した1本鎖核酸に対して、望ましい条件下に、本発明の核酸配列を有してなる特定のプローブで特異的ハイブリッド形成を行う。選択される条件は、例えばG+C含有量、標的核酸の種類、核酸の入手源、ハイブリッド形成プローブの大きさなどによって決まる必要な特定の基準に基づく特定の環境によって決まるものである。ハイブリッド形成表面を洗浄して特異的に結合していないプローブ分子を除去した後、標識によって、特異的ハイブリッド形成を検出するか、もしくは定量も行う。
4.トランスフェリン受容体遺伝子の発現
宿主細胞と適合性の菌種由来のレプリコンおよび制御配列を有するプラスミドベクターを用いて、トランスフェリン受容体遺伝子の発現および発現系における本発明によるそれの切断を行うことができる。通常ベクターは、複製部位と、形質転換細胞において表現型選択を行うことができる標識配列を有する。例えば、アンピシリンおよびテトラサイクリン抵抗性の遺伝子を有することで、形質転換細胞識別の簡単な手段を提供するpBR322を用いて、大腸菌を形質転換することができる。pBR322プラスミドまたは他の微生物プラスミドもしくはファージも、宿主細胞が使用してそれ自体の蛋白を発現させることができるプロモータを有するか、あるいはそれを有するように変性させることができる。
さらに、宿主と適合するレプリコンおよび制御配列を有するファージベクターは、その宿主との関係で絵形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λ−GEM(登録商標)−11におけるファージを、組換えファージベクターの形成に使用し、そのベクターを使用して大腸菌LE392などの宿主細胞の形質転換を行うことができる。
組換えDNA構築で通常使用されるプロモータには、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)および乳糖プロモータ系(Chang et al.,1978;Itakura et al.,1977;Goeddel et al.,1979;Goeddel et al.,1980)ならびにT7プロモータ系(米国特許4952496号)などの他の微生物プロモータなどがある。プロモータのヌクレオチド配列に関する詳細については公知であり、当業者であればそれを効果的に遺伝子に結びつけることができる。使用される特定のプロモータは通常、所望の結果によって決まる選択事項である。本発明で行われる切断などのトランスフェリン受容体遺伝子の発現に適した宿主には、大腸菌、バチルス菌、ヘモフィルス、真菌、酵母などがあり、あるいはバキュロウィルス発現系を用いることができる。
本発明によれば、トランスフェリン受容体蛋白の切断類縁体は組換え法によって得られる。異種系で組換え的に産生された切断類縁体は、精製物における汚染物の量を低減するような形で、宿主から単離することができる。この点で発現に特に望ましい宿主には、LPSを持たず、従ってエンドトキシンを持たないグラム陽性菌などがある。そのような宿主には、バチルス菌などがあり、トランスフェリン受容体蛋白の非発熱性の切断類縁体の製造に特に有用である。
生物寄託
本明細書に記載および言及されているインフルエンザ菌株からのトランスフェリン受容体をコードする部分を少なくとも有するある種のプラスミドを、本願出願に先だって、ブダペスト条約に従って寄託した(American Type Culture Collection(ATCC),Rockville,Maryland,USA)。寄託プラスミドのサンプルは、本米国特許出願に基づく特許が賦与された時点で一般に入手可能となり、その入手可能性に対する全ての制限がその時点でなくなる。寄託した実施態様は本発明の例示を目的としたものであるに過ぎないことから、本明細書に記載および特許請求されている本発明は、寄託したプラスミドによる範囲に限定されるものではない。本願に記載のものと類似または等価な抗原をコードする等価もしくは類似のプラスミドは、本発明の範囲に含まれるものである。
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ヘモフィルス株
Hib株Eaganは市販されている(Connaught Laboratories Limited,1755 Steeles Ave.W.,Willowdale,Ontario,Canada M2R 3T4)。
Hib株MinnAは収集品から入手した(Dr.Robert Munson,Department of Microbiology and Immunology,Washington University School of Medicine,Children's Hospital,St.Louis,Missouri 63110)。
Hib株DL63は収集品から入手した(Dr.Eric Hansen,Department of Microbiology,University of Texas Southwestern Medical Center,5323 Harry Hines Boulevard,Dallas,Texas 75235−9048)。
PAK12085も上記の収集品から入手した(Dr.Robert Munson)。
SB12、29、30、32および33は、収集品から入手した(Dr.Stephen Barenkamp,Department of Pediatrics,School of Medicine,Saint Louis University Medical Centre,St.Louis,Missouri 63104)。
実施例
上記の開示内容は、本発明の全般を説明するものであるので、以下の具体的な実施例を参照することで、より完全な理解を得ることができる。これら実施例は単に説明を目的として記載されているものであって、本発明の範囲を限定するものではない。状況から見て示唆されるかあるいは好都合なものとなる可能性がある場合、等価なものの形態および置換に対して変更を加えることは想到されるものである。本明細書においては具体的な用語を用いているが、そのような用語は説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
本開示およびこれらの実施例において使用されているが明瞭には説明されていない分子遺伝学、蛋白生化学、免疫学および発酵の技術は、科学文献に広く報告されているものであり、十分に当業者の能力の範囲内のものである。
実施例1
本実施例は、インフルエンザ菌株DL63、Eagan、MinnAおよびPAK12085ならびにSB33からの染色体DNAの製造を説明するものである。
インフルエンザ菌株は、ハルクネスらの方法に従って(Harkness et al.,1992)、ミュラー−ヒントン寒天(Mueller−Hinton agar)または脳心臓灌流肉汁で成長させた。
A.インフルエンザ菌b型DL63からの染色体DNA抽出
染色体DNAを以下のようにして得た。ベックマンJ14ローターで8000rpmにて15分間遠心することで、培地250mLをペレット状とした。ペレットを50mMトリス−HCl(pH8.0)200mLで洗浄し、前述のように遠心し、50mMトリス−HCl、50mM EDTA(pH8.0)12.5mLに再懸濁させ、−20℃で冷凍した。次に、10mg/mLのリゾチームの0.25Mトリス−HCl(pH8.0)溶液1.25mLを冷凍細胞ペレットに加えた。ペレットを解凍し、氷上で45分間インキュベーションした。次に、1mg/mLのプロテイナーゼKの0.5%SDS、0.4M EDTA、50mMトリス−HCl(pH7.5)溶液2.5mLを加え、混合物を時々攪拌しながら50℃で1時間インキュベーションした。溶解物をトリス緩衝フェノール15mLで1回抽出し、次に3M酢酸ナトリウム1.5mLおよびエタノール30mLを加えて、DNAを沈殿させた。DNAをガラス棒に巻き付け、終夜振盪することで、0.2mg/mLのRNAseAを含む50mMトリス−HCl、1mM EDTA(pH7.5)12.5mLに溶かした。サンプルを同量のクロロホルムで1回抽出し、上記と同様に沈殿・巻き付けを行った。DNAを50mMトリス−HCl、1mM EDTA(pH7.5)2mLに溶かし、4℃で保存した。
B.インフルエンザ菌b型Eaganからの染色体DNAの抽出
培地50mLを遠心によってペレットとし、ペレットをTE(10mMトリス、1mM EDTA、pH7.5)25mLに再懸濁させ、5mLずつの少量サンプル2つを染色体DNA製造に用いた。各少量サンプルに、10%サルコシル(sarkosyl)0.6mLおよび20mg/mLプロテイナーゼK0.15mLを加え、サンプルを37℃で1時間インキュベーションした。溶解物をトリス飽和フェノールで1回およびクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で3回抽出した。水相を蓄積して、最終容量7mLとした。次に、3M酢酸ナトリウム(pH5.2)0.7mLおよびイソプロパノール4.3mLを加えてDNAを沈殿させ、それを巻き付け、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、水1mLに再懸濁させた。
C.インフルエンザ菌株Eagan、MinnA、PAK12085およびSB33からの染色体DNAの抽出
4℃で15〜20分間にわたり、5000rpmでの遠心を行うことで、培地50mLから細胞をペレット化した。細胞ペレットをTE(10mMトリス、1mM EDTA、pH7.5)10mLに再懸濁させ、プロナーゼおよびSDSを加えて最終濃度をそれぞれ500μg/mLおよび1%とした。サンプルを37℃で4時間インキュベーションして、透明溶解物を得た。溶解物を、トリス飽和フェノールで1回、トリス飽和フェノール/クロロホルム(1:1)で1回およびクロロホルムで1回抽出した。最終水相を、緩衝液を1回換えながら4℃で1M NaCl500mLに対して2回24時間透析し、緩衝液を1回換えながら4℃でTE500mLに対して2回24時間透析した。最終透析液を小分けして使用に供した。
実施例2
本実施例は、染色体ライブラリの製造について説明するものである。
A.インフルエンザ菌DL63−λZAPライブラリ
インフルエンザ菌DL63染色体DNAのTE液100μgをゲージ25の針を有する1mL注射器中で機械的に剪断した。剪断されたDNAに水を加えて最終容量405μLとし、10×S1ヌクレアーゼ緩衝液(2M NaCl、500mM NaOAc、pH4.5、10mM ZnSO4、5%グリセロール)45μLおよび100U/μLのS1ヌクレアーゼ1.7μLを加え、37℃で15分間インキュベーションすることで平滑末端とした。サンプルをフェノール/クロロホルムで1回およびクロロホルムで1回抽出し、エタノール1mLを加えてDNAを沈殿させた。サンプルを氷上で10分間または−20℃で終夜インキュベーションし、微量遠心装置で30分間遠心することで、DNAを回収した。DNAを70%エタノールで洗浄し、乾燥した。DNA配列のEcoR I部位を標準的な方法を用いてメチル化した。このメチル化DNAに、100mM MgCl25μL、dNTP混合液(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTPを各2.5mM)8μLおよび5U/μLのクレノウ(Klenow)4μLを加えた。混合物を12℃で30分間インキュベーションした。STE(0.1M NaCl、10mMトリス−HCl、1mM EDTA、pH8.0)450μLを加え、混合物をフェノール/クロロホルムで1回、クロロホルムで1回抽出し、エタノール1mLを加えてDNAを沈殿させた。サンプルを氷上で10分間または−20℃で終夜インキュベーションした。微量遠心装置で30分間遠心することで、DNAを回収し、70%エタノールで洗浄し、乾燥した。
DNAをTE 7μLに再懸濁させ、その液にリン酸化EcoR Iリンカー(200ng/μL)14μL、10×連結緩衝液3μL、10mM ATP3μL、T4 DNAリガーゼ(4U/μL)3μLを加えた。サンプルを4℃で終夜インキュベーションし、68℃で10分間インキュベーションして、リガーゼを失活させた。この混合物に、H2O 218μL、10×ユニバーサル緩衝液(Universal buffer)45μLおよび30U/μLのEcoR I 7μLを加えた。37℃で1.5時間インキュベーションした後、0.5M EDTA 1.5μLを加え、混合物を氷冷した。
DNAをショ糖勾配で分子量分別し、6〜10kbのDNAを含む分画を蓄積した。蓄積DNAをエタノールで沈殿させ、TE緩衝液5μLに再懸濁させた。挿入DNA200ngを、最終容量5μLでZAP IIベクター1μgで、4℃にて2〜3日間連結反応させた。連結混合物をパッケージ化し(Gigapack II Gold(Stratagene)使用)、NZYプレートの大腸菌SURE細胞で平板培養した。ライブラリの力価測定を行い、増幅し、0.3%クロロホルム下に4℃で保管した。
B.インフルエンザ菌Eagan−pUCライブラリ
実施例1Cの方法によってインフルエンザ菌Eaganから得た染色体DNAをSau3A Iによって2分間、5分間および10分間消化し、サンプルについて分取アガロースゲルで電気泳動を行った。長さ約3〜10kbのDNA断片を有するゲルスライスを切り取り、標準的冷凍−解凍法によってDNAを抽出した。pUC8:2(多重クローニング部位での別のBgl IIおよびXba I制限酵素部位を有するpUC8)からのプラスミドDNAをBamH IおよびBgl IIで消化し、ウシアルカリホスファターゼ(CAP)で脱リン酸化を行った。インフルエンザ菌Eagan DNAの断片をpUCに連結し、その混合物を用いて、大腸菌JM109細胞の形質転換を行った。
C.インフルエンザ菌Eagan−λZAPライブラリ
実施例1Bに記載の方法に従って得られたインフルエンザEaganからの染色体DNAを、EcoR Iによって消化し、分取アガロースゲルで分子量分割を行った。7〜23kbのDNA断片に相当するゲルスライスを切り取り、DNAを、TAE(40mMトリス酢酸塩、1mM EDTA)3mLの入った透析管中、14Vで終夜電気泳動を行った。連結混合物をパッケージ化し(Gagapack II包装キット(Stratagene))、大腸菌XL1−Blue細胞で平板培養した。そのライブラリの力価を測定し、増幅し、0.3%クロロホルム下に4℃で保存した。
D. EMBL3ライブラリ
実施例1Cの方法によってインフルエンザ菌MinnA染色体DNA(10μg)を得て、それをSau3A I(40単位)によって2分間、4分間および6分間消化し、TNE(20mMトリス−HCl、5mM NaCl、1mM EDTA、pH8)緩衝液中10〜30%ショ糖勾配で分子量分別を行った。5kbより大きいDNA断片を有する分画を蓄積し、沈殿させた。第2の実験で、染色体DNA(2.6μg)をSau3A I(4単位)によって1分間、2分間および3分間消化し、分取アガロースゲル電気泳動で分子量分別を行った。10〜20kbのDNA断片を有するゲルスライスを切り取り、DNAを、標準的な冷凍/解凍法によって抽出した。これら2つの実験からの分子量分別DNAを蓄積して、EMBL3(Promega)のBamH Iアーム(arm)による連結に供した。連結混合物をパッケージ化し(Gagapack IIパッケージキット(Stratagene)使用)、大腸菌LE392細胞で平板培養した。そのライブラリの力価を測定し、増幅し、0.3%クロロホルム下に4℃で保存した。
実施例1Cの方法によって得たインフルエンザ菌PAK12085またはSB33からの染色体DNAをSau3A I(0.5単位/10μgDNA)によって37℃で15分間消化し、アガロースゲル電気泳動によって分子量分別を行った。15〜23kbのDNA断片に相当するゲルスライスを、14Vで、TAE3mLの入った透析管中で、終夜電気溶離した。DNAを2回沈殿させ、水に再懸濁してから、EMBL3 BamH Iアーム(Promega)で終夜連結を行った。連結混合物を、製造業者の説明に従ってラムダ(Lambda)in vitroパッケージキット(Amersham)を用いてパッケージ化し、大腸菌NM539細胞で平板培養した。そのライブラリの力価を測定し、増幅し、0.3%クロロホルム存在下に4℃で保存した。
実施例3
この実施例は、ライブラリのスクリーニングについて説明するものである。
A.インフルエンザDL63−λZAP発現ライブラリ
Tbp1およびTbp2蛋白を、固相ヒトトランスフェリン(hTf)でアフィニティ精製した。すなわち、20mLのhTf−セファロースカラムを、CNBr活性化セファロース(Sigma)への蛋白リガンドの結合についての製造業者のプロトコールに従って得た。得られた基材を、カラムの3倍容量の50mMトリス−HCl、1M NaCl、6Mグアニジン−HCl(pH8.0)で洗浄して、共有結合的に結合していないhTfを除去した。カラムを50mMトリス−HCl(pH8.0)で平衡とし、クエン酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムをそれぞれ100mMで含有するpH8.6の緩衝液に入った10mg/mLのFeCl31mLと、次に2倍カラム容量の50mMトリス−HCl、1M NaCl(pH8.0)を用いて、結合したhTfに鉄負荷を行った。総細菌膜(総蛋白300mg)を、前述のような(Schryvers et al.,1989)鉄欠乏培地で成長させたインフルエンザ菌株DL63から得た。膜を50mMトリス−HCl、1M NaCl(pH8.0)で2mg/mLまで希釈し、EDTAを15mMまで、サルコシルL97を1.5%まで加えることで可溶化した。40000×gで1時間遠心した後、上清をhTfカラムに負荷し、カラムを10倍カラム容量の50mMトリス−HCl、1M NaCl、10mM EDTA、0.5%サルコシル(pH8.0)で洗浄した。受容体蛋白を2M GnHClの同じ緩衝液の溶液を用いて溶離し、溶出分画を25mM重炭酸アンモニウム緩衝液に対して強力に透析し(緩衝液を5回交換)、凍結乾燥し、−20℃で保存した。単離した蛋白を用いて、標準的方法にて、ニュージーランドホワイトラビットでトランスフェリン受容体特異的抗血清を得た。すなわち、最初の注射では完全フロイントアジュバントを用い、次の注射では不完全フロイントアジュバントを用いて、2週間の間隔を設けて、皮下注射にてウサギを3回免疫感作した。
DL63λZAPライブラリを大腸菌SURE細胞で平板培養し、溶菌斑を、10mM IPTGに予め浸漬しておいたニトロセルロース膜に移して、pBluescript lacZプロモータからの発現を誘発した。0.5%スキムミルクの50mMトリス−HCl、150mM NaCl(pH7.5)溶液を用いてフィルターを遮断してから、ポリクローナル抗TfR抗血清および西洋ワサビペルオキシダーゼ接合ヤギ抗ウサギIgGで調べた。溶菌斑を3回のスクリーニングによって精製し、組換えpBluescriptプラスミド(pBHIT1およびpBHIT2;図1Aおよび2)を、in vivo切除法(Short et al.,1988)によって回収した。
B. Eagan、MinnAおよびPAK12085非発現ライブラリ
(i)インフルエンザ菌Eagan−pUCライブラリのスクリーニング
標準的方法を用いて、ニトロセルロース上のコロニー回収を行い、図2に示したトランスフェリン受容体遺伝子の5'pBHIT2プローブを用いてフィルターを調べた。プローブは製造業者の説明に従って、ジゴキシゲニン(dig、Boehringer Mannheim)によって標識した。いくつかの推定クローンをニトロセルロース上にドットブロッティングし、同じ5'pBHIT2プローブを用いて2回目のスクリーニングを行った。第2回の推定物を、制限酵素マッピングによって分析し、クローンS−4368−3−3(図1B、図2)を配列分析用に選択した。
(ii)インフルエンザ菌Eagan−λZAPライブラリのスクリーニング
標準的方法により、LBプレートおよび0.7%アガロース被覆層を用いて、ファージライブラリをXLI Blue細胞(Stratagene)で平板培養した。溶菌斑を、標準的なプロトコールを用いてニトロセルロースに取り、フィルターを減圧下に80℃で2時間加熱して、DNAを固定した。トランスフェリン受容体遺伝子(図2)の5'pBHIT2プローブをジゴキシゲニンで標識し、フィルターを42℃で4時間予備ハイブリッド形成し、42℃で標識プローブで終夜ハイブリッド形成した。フィルターを68℃で洗浄し、オートラジオグラフィー後に、いくつかの溶菌斑を選択して、第2のスクリーニングに供した。第2回の推定物からのプラスミドDNAのin vivoでの切り取りを、λZAP系(Promega)に添付のプロトコールに従って行った。同じ約2.5kbのEcoR I挿入物との4つのクローンを得た。そのうちのJB−901−5−3の例が図2の図Bにある。推定溶菌斑は増幅も行い、ファージDNAを培地500mLから精製した。挿入物DNAを、Xba Iによる消化によって切り取り、Xba Iで消化し、脱リン酸化しておいたpUC8:2(多重クローニング部位に別のBgl IIおよびXba I部位を有するpUC8)にクローニングした。クローンJB−911−3−2(図17)には、インフルエンザ菌Eagan TfRオペロンの3'側半分を有する。
(iii)EMBLの3つのライブラリのスクリーニング
インフルエンザ菌MinnAライブラリを、0.7%上層アガロースを含むNZCYMを被覆として用いて、NZCYMプレートのLE392細胞で平板培養した。ニトロセルロースフィルター上の溶菌斑回収を、標準法に従って行い、フィルターを処理し、ジゴキシゲニンで標識した5'pBHIT2プローブ(図2)を用いて調べた。推定溶菌斑を平板培養し、同じ手順を用いて第2回のスクリーニングを行った。ファージDNAを標準的方法によって培地500mLから得て、DNA挿入物をSal Iによる消化によって切り取り、pUCにクローニングして、クローンJB−1042−7−6(図1Dおよび2)を得た。
インフルエンザ菌SB33ライブラリを、0.7%アガロースを含むNZCYMを被覆として用いて、NZCYMプレートのLE392細胞で平板培養した。溶菌斑をニトロセルロースフィルターで回収し、フィルターを処理し、ジゴキシゲニン標識5'pBHIT2プローブ(図2)を用いて調べた。推定溶菌斑を平板培養し、同じ手順を用いて第2回のスクリーニングを行った。ファージDNAを標準的方法によって培地500mLから得て、DNA挿入物をSal Iによる消化によって切り取り、pUCにクローニングして、クローンJB−1031−2−9(図2)を得た。
実施例4
本実施例は、TfRオペロンのTbp1およびTbp2遺伝子の配列決定を説明するものである。
クローンpBHIT1、pBHIT2、S−4368−3−3、JB−901−5−3、DS−712−1−3、JB−1042−7−6およびJB−1031−2−9からのプラスミドDNAを、標準的方法を用いて得た。長さ17〜25塩基のオリゴヌクレオチド配列決定プライマーを、ABI380B型DNA合成装置で合成し、OPCカートリッジ(Applied Biosystems Inc.から入手。製造業者のプロトコールに従って使用)を用いるクロマトグラフィーによって精製した。DL63株からのTfRオペロンの配列を図3に示してあり、Eagan株のものを図4に、MinnA株からのものを図5に、PAK12085株のものを図6に、SB33のものを図7に示した。
実施例5
この実施例は、分類できないインフルエンザ菌株SB12、SB29、SB30およびSB32からのtbp2遺伝子のPCR増幅を説明するものである。
上記の方法に従って、インフルエンザ菌株SB12、SB29、SB30およびSB32からの染色体DNAを得た。tbp2とそれに続いてtbp1(図12Aおよび12B参照)を有するオペロンとしてTfR遺伝子を配置した。tbp2の5'末端およびtbp1コード配列の5'末端の逆補体にオリゴヌクレオチドを合成した。プライマーは、Tbp2のリーダー配列からのMKSVPLISGS(配列番号:147)に相当するGGATCCATATGAAATCTGTACCTCTTATCTCTGGT(配列番号:120)およびTbp1のリーダー配列MTKK(配列番号:138)の逆補体であって遺伝子間配列の一部であるTCTAGAAGCTTTTTTAGTCATTTTTAGTATTCCAT(配列番号:137)であった(図12Aおよび12B)。10mMトリス/HCl(pH8.3)、50mM塩化カリウムおよび1.5mM塩化マグネシウムを含む緩衝液でPCR増幅を行った。反応混合物各100μLには、染色体DNA5ng、各プライマー1μg、アンプリタク(amplitaq)DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)5単位および0.4mMのdNTP(Perkin Elmer Cetus)を含有させた。繰り返し条件は、94℃で1.0分、45℃で2.0分間、72℃で1.5分間を25回とした。特異的2kb断片を各サンプルについて増幅した(図13)。Tbp2遺伝子の増幅に使用した染色体DNAは、列1がSB33、列2がSB12、列3がSB29、列4がSB30、列5がSB32であった。断片をTAクローニングベクター(Invitrogen)にクローニングし、そのヌクレオチド配列を求めた。株SB12(配列番号:108)、SB29(配列番号:110)、SB30(配列番号:112)およびSB32(配列番号:114)からのTbpの核酸配列をそれぞれ、図8、9、10および11に示してある。
実施例6
本実施例は、トランスフェリンのアミノ酸配列の比較と、二次構造分析によるトランスフェリン受容体蛋白の露出エピトープの確認について説明するものである。
図14について説明すると、インフルエンザ菌b型Eagan、DL63、分類できないインフルエンザ菌株PAK12085およびSB33、髄膜炎菌株B16B6およびM982(Legrain et al.,1993)および淋菌FA19(Cornelissen et al.,1992)からのTbp1のアミノ酸配列の比較を示してある。この分析から、これら全ての細菌で保存されているTbp1の領域が明らかになった。
図15について説明すると、インフルエンザ菌b型Eagan、DL63、分類できないインフルエンザ菌株PAK12085、SB12、SB29、SB30およびSB32、髄膜炎菌株B16B6およびM982、淋菌FA19ならびにアクチノバチルス(ヘモフィルス)牛肺疫菌(Gerlach et al.,1992)205および37からのTbp2のアミノ酸配列の比較を示してある。この分析から、これら全ての細菌で保存されているTbp2の領域が明らかになった。
蛋白の二次構造分析を、チョウ(Chou)およびファスマン(Fasman)のアルゴリズム(1978)を用いて行い、親水性/疎水性プロットを、ホップ(Hopp)のアルゴリズム(1986)を用いて行った。値は、ヘプタペプチドウィンドウの平均から誘導し、各断片の中間点でプロットした。図16Aには、インフルエンザ菌b型EaganからのTbp1の予想二次構造を示してあり、図16Bには、インフルエンザ菌b型EaganからのTbp2の予想二次構造が示してある。図16Aおよび16Bに描いた予想二次構造は、上記の方法を用いて得られたものである。しかしながら本発明者らは、二次構造がこれらの図によって正確に描けているかどうかを検証できていない。
いくつかの異なる細菌からのTbp1およびTbp2蛋白の保存エピトープを、それぞれ図14および図15に示したような配列の位置合わせによって確認した。
そのような保存エピトープの一部として以下の挙げたものがある。
Figure 0003516688
さらに、予想二次構造と組み合わせて、4つの保存露出エピトープがTbp1で確認され、2つがTbp2で確認された。これらは以下の通りである。
Figure 0003516688
上記の保存アミノ酸配列を有する蛋白、ポリペプチドまたはペプチドは、診断実施態様における検出手段として、ならびにトランスフェリン受容体蛋白を産生する細菌によって生じる疾患の検出もしくはその疾患からの予防のための免疫原として特に有用である。免疫感作を行うために、特に指定されたアミノ酸配列を、蛋白もしくはペプチドなどの免疫系に提供することができるか、あるいはサルモネラ、BCG、アデノウィルス、ポックスウィルス、ワクチニアまたはポリオウィルスなどの生運搬媒体を使用することができる。
実施例7
本実施例は、大腸菌からのEagan Tbp1を発現するプラスミドJB−1468−29の構築を説明するものである。
プラスミドS−4368−3−3(図1Bおよび2)およびJB−911−3−2(図17)は、それぞれEagan tbp1遺伝子の5'部分および3'部分を有する。図17は、プラスミドJB−1468−29の構築図式を示してある。JB−1468−29の構築で使用されるオリゴヌクレオチド配列を図20に示してある(配列番号:86および87)。プラスミドJB−1468−29をエレクトロポレーションによって大腸菌株BL21/DE3に導入して、JB−1476−2−1株を得た。
JB−1476−2−1株をYT培地で成長させ、標準的プロトコールに従ってIPTGで誘発した。免疫原性および他の試験のためのTbp1を得るために、JB−1476−2−1株を、3%グルコースを含むNZCYM培地で終夜成長させた。グルコースを含まない新鮮なNZCYM培地に1:40の接種物を加え、培地をA578=0.3まで成長させた。乳糖を1%まで加え、培地を4時間誘発した。JB−1476−2−1の全細胞溶解物のSDS−PAGE分析を図22に示してある。列1はtoでのJB−1476−2−1(T7/Eagan Tbp1)であり、列2はt=4h誘発でのJB−1476−2−1であり、列3は、200kDa、116kDa、97.4kDa、66kDa、45kDaおよび31kDaの分子量マーカーであり、列4はtoでのJB−1437−4−1(T7/Eagan Tbp2)であり、列5はt=4h誘発でのJB−1437−4−1であり、列6はtoでのJB−1607−1−1(T7/SB12Tbp2)であり、列7はt=4h誘発でのJB−1607−1−1である。
実施例8
本実施例は、大腸菌からのEagan Tbp2を発現するプラスミドJB−1424−2−8の構築を説明するものである。
図18について説明すると、インフルエンザ菌b型Eaganからの全tbp2遺伝子を有するプラスミドS−4368−3−3が示してある。図18はプラスミドJB−1424−2−8を示しており、図19は使用したオリゴヌクレオチドを示している。プラスミドJB−1424−2−8をエレクトロポレーションによって大腸菌株BL21/DE3に導入して、大腸菌株JB−1437−4−1を得た。IPTGまたは乳糖による誘発で、図22に示したように、Tbp2を大腸菌JB−1437−4−1によって発現した。列1はtoでのJB−1476−2−1(T7/Eagan Tbp1)であり、列2はt=4h誘発でのJB−1476−2−1であり、列3は、200kDa、116kDa、97.4kDa、66kDa、45kDaおよび31kDaの分子量マーカーであり、列4はtoでのJB−1437−4−1(T7/Eagan Tbp2)であり、列5はt=4h誘発でのJB−1437−4−1であり、列6はtoでのJB−1607−1−1(T7/SB12 Tbp2)であり、列7はt=4h誘発でのJB−1607−1−1である。
実施例9
本実施例は、Tbp2配列前にリポ蛋白リーダー配列をコードするプラスミドの構築を説明するものである。
Tbp2の前にある大腸菌lpp(配列番号:88および89)、rlbB(配列番号:90および91)およびpal(配列番号:92および93)由来のリポ蛋白リーダー配列を有するプラスミドの構築に使用したオリゴヌクレオチドを図20に示してある。構築したプラスミドおよび得られた相当する菌株を以下の表1に示してある。
実施例10
本実施例は、大腸菌からのSB12 Tbp2を発現するプラスミドJB−1600−1の構築を説明するものである。
プラスミドDS−1047−1−2(図21)は、PCR増幅SB12 tbp2遺伝子を有する。このtpb2遺伝子は、EcoR I制限断片に対するNde Iとして切り取られ、pT7−7発現ベクターに挿入されて、プラスミドJB−1600−1を形成している。BL21/DE3細胞へのエレクトロポレーションによって、SB12 Tbp2を発現する大腸菌株JB−1607−1−1が得られた。IPTGまたは乳糖による誘発で、図22に示したように、SB12 Tbp2を発現させた。列1はtoでのJB−1476−2−1(T7/Eagan Tbp1)であり、列2はt=4h誘発でのJB−1476−2−1であり、列3は、200kDa、116kDa、97.4kDa、66kDa、45kDaおよび31kDaの分子量マーカーであり、列4はtoでのJB−1437−4−1(T7/Eagan Tbp2)であり、列5はt=4h誘発でのJB−1437−4−1であり、列6はtoでのJB−1607−1−1(T7/SB12 Tbp2)であり、列7はt=4h誘発でのJB−1607−1−1である。
実施例11
本実施例は、Tbp1およびTbp2の抽出および精製を説明するものである。
Tbp1およびTbp2の精製図式を図23に示してある。いずれの組換え蛋白も、大腸菌における封入体として発現され、精製図式は同じである。Tbp1については実施例7で、Tbp2については実施例8で記載した方法に従って得られた培地500mLからの細胞を、50mMトリス−HCl(pH8.0)50mLに懸濁させ、超音波照射によって粉砕した(10分間3回、70%全体効率(duty circle))。抽出物を20000×gで30分間遠心し、95%未満で可溶性の大腸菌蛋白を含む取得上清は廃棄した。
得られたペレット(図23、PPT1)をさらに、0.5%トリトンX−100および10mM EDTAを含む50mMトリス(pH8.0)50mLに抽出した。20000×gで30分間遠心した後、残留する可溶性蛋白および膜蛋白の大部分を含む上清を廃棄した。上記の抽出後に得られた取得ペレット(図23、PPT2)は、封入体を含んでいた。Tbp1およびTbp2蛋白を、0.1%SDSおよび5mM DTTを含む50mMトリス(pH8.0)に溶解させた。遠心後、得られた上清をさらに、0.1%SDSおよび5mM DTTを含む50mMトリス(pH8.0)で平衡としたスーパーデックス(Superdex)200ゲル濾過カラムで精製した。得られた分画をSDS PAGEで分析し、精製Tbp1またはTbp2を含む分画を、50mMトリス(pH8.0)に対して4℃で終夜透析し、20000×gで30分間遠心した。蛋白はこの条件で可溶性を保っており、精製Tbp1およびTbp2を−20℃で保存した。
精製工程のSDS−PAGE分析を図24に示してある。列1は、予め染色した分子量蛋白マーカーであり(106、80、49.5、32.5、27.5および18.5kDa)、列2は大腸菌全細胞溶解物であり、列3は、可溶化封入体であり、列4は精製Tbp1またはTbp2である。
組換えrTbp1およびrTbp2の抽出および精製の別法においては、Tbp1について実施例7で、Tbp2について実施例8で記載した方法に従って得られた培地500mLからの細胞を、5mM AEBSF(4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド)を含む50mMトリス−HCl(pH8.0)40mLに懸濁させ、超音波照射によって粉砕した(10分間3回、70%全体効率(duty circle))。抽出物を20000×gで30分間遠心し、得られたペレットをさらに、10mM EDTAおよび0.5%トリトンX−100を含む50mMトリス(pH8.0)40mLに室温で1時間抽出した。上記の方法に従って遠心した後、得られたペレットはrTbp1またはrTbp2封入体を含んでいた。次に、rTbp1またはrTbp2を、6Mグアニジンおよび5mM DTTを含む50mMトリス(pH8.0)に溶解させた。遠心後、得られた上清をさらに、2Mグアニジンおよび5mM DTTを含む50mMトリス(pH8.0)で平衡としたスーパーデックス200ゲル濾過カラムで精製した。得られた分画をSDS PAGEで分析し、精製rTbp1またはrTbp2を含む分画を蓄積した。蓄積液にトリトンX−100を加えて最終濃度を0.1%とし、溶液を50mMトリス−HCl(pH8.0)に対して4℃で終夜透析した。蛋白はこの条件で可溶性を保っており、精製rTbp1およびrTbp2を4℃で保存した。
実施例12
本実施例は、マウスにおける組換えTbp1およびTbp2の免疫原性試験を説明するものである。
Balb/cマウス5匹ずつの群に、AlPO4存在下で(用量当たり1.5mg)、実施例11に記載の方法で得られたrTbp1またはrTbp2(1μg〜10μg)を、第1日、第29日および第43日に皮下(s.c.)注射した。EIAによる抗rTbp1および抗rTbp2抗体力価の分析のために、第14日、第28日、第42日および第56日に採血を行った。免疫原性試験の結果は図25に示してある。
実施例13
本実施例は、マスウ血清における抗rTbp1および抗Tbp2抗体の測定のためのEIA開発について説明するものである。
抗rTbp1および抗rTbp2の抗体力価は基本的に、パネズッチら報告の方法(Panezutti et al.,1993)に従って求めた。微量定量ウェルを、室温で実施例11の方法に従って得られたrTbp1またはrTbp2 0.5μgにて16時間被覆し、0.1%(重量/容量)BSAのPBS液で遮断した。血清を連続希釈し、ウェルに加え、室温で1時間インキュベーションした。西洋ワサビペルオキシダーゼに接合したヤギ抗マウスIgG(Fc特異的)のアフィニティ精製したF(ab')断片を第2の抗体として用いた。テトラメチルベンジジン(TMB/H2O2)を用いて反応を展開し、450nmで吸光度を測定した(参照波長として540nmを使用。Flow Multiskan MCC微量平板読取装置)。抗血清の反応性力価は、免疫前血清サンプルで得られた値に対して吸光度に常に2倍の上昇を示す希釈度の逆数として定義した。
実施例14
本実施例は、組換えEagan Tbp1による免疫感作によって得られた抗Tbp1抗血清と各種インフルエンザ菌株との交差反応性を説明するものである。
NADおよびヘム(Harkness et al.,1992)±EDDAを補給したBHI培地で成長させたインフルエンザ菌株の全細胞溶解物を、SDS PAGEゲルによって分離し、ニトロセルロース膜に移し、精製組換えEagan Tbp1に対して形成したモルモット抗Tbp1抗血清で調べた(図26)。列1はBL21/DE3であり、列2はSB12−EDDAであり、列3はSB12+EDDAであり、列4はSB29−EDDAであり、列5はSB29+EDDAであり、列6はSB33−EDDAであり、列7はSB33+EDDAであり、列8はEagan−EDDAであり、列9はEagan+EDDAであり、列10はカタル球菌4223−EDDAであり、列11はカタル球菌4223+EDDAであり、列12は髄膜炎菌608−EDDAであり、列13は髄膜炎菌608+EDDAであり、列14は組換えEagan Tbp1を発現する誘発JB−1476−2−1であり、列15は分子量マーカーである。特異的な約95kDaの帯域は、インフルエンザ菌株SB12、SB29、SB33およびEaganに相当する列3、4、5、7、8および9で抗Tbp1抗血清と反応し、約110kDaの帯域は、カタル球菌株に相当する列10および11で反応し、約80kDaの帯域は、髄膜炎菌608に相当する列12および13で反応した。
実施例15
本実施例は、組換えEagan Tbp2による免疫感作によって得られた抗Tbp2抗血清と各種インフルエンザ菌株との交差反応性を説明するものである。
NADおよびヘム(Harkness et al.,1992)±EDDAを補給したBHI培地で成長させたインフルエンザ菌株の全細胞溶解物を、SDS PAGEゲルによって分離し、ニトロセルロース膜に移し、精製組換えEagan Tbp2に対して形成したモルモット抗Tbp2抗血清で調べた(図27)。列1は分子量マーカーであり、列2は組換えEagan Tbp2を発現する誘発JB−1437−4−1であり、列3はSB12−EDDAであり、列4はSB12+EDDAであり、列5はSB29−EDDAであり、列6はSB29+EDDAであり、列7はSB30−EDDAであり、列8はSB30+EDDAであり、列9はSB32−EDDAであり、列10はSB33−EDDAであり、列11はSB33+EDDAであり、列12はPAK−EDDAであり、列13はPAK+EDDAであり、列14はEagan−EDDAであり、列15はEagan+EDDAである。約60〜70kDaの特異的帯域は、インフルエンザ菌株SB12、SB29、SB30、PAKおよびEaganに相当する、列3、6、7、8、13、14および15における抗Tbp2抗血清と反応性であった。
実施例16
本実施例は、Tbp2およびTbp1における保存領域に相当する合成ペプチドの合成について説明するものである。
Tbp1およびTbp2の推定アミノ酸配列をそれぞれ、図14および15に示してある。この比較は、上記のトランスフェリン受容体内でのアミノ酸配列保存の領域を確認するものであり、表2および表3に示したように、トランスフェリン受容体の一部を有するペプチドを合成した。そのような合成は、前記ペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターの好適な宿主における発現または標準的なペプチド合成によって行うことができる。
すなわち、ABI430Aペプチド合成装置と、製造業者推奨の条件を用いる至適化t−Boc化学を用いてペプチドを合成し、フッ化水素酸(HF)を用いて樹脂からペプチドを剥離させた。流量2mL/分で40分間にわたって15〜55%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)の勾配溶離による展開を用いて、Vydac C4半分取カラム(1×30cm)での逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって、ペプチドを精製した。生化学試験および免疫学試験で使用した合成ペプチドはいずれも、分析HPLCによる測定で、95%を超える純度のものであった。アミノ酸組成分析を、ウォーターズPico−Tagシステムで行い、論理的組成と良好な一致があった。
実施例17
本実施例は、被験動物における合成ペプチドの免疫原性について説明するものである。
第0日に、実施例16に記載の方法で精製し、フロイントの完全アジュバントに乳濁させたペプチド100μgを筋肉注射してモルモットを免疫感作し、次に、フロイントの不完全アジュバントに乳濁させた同量のペプチドを用いて第14日および第28日に追加免疫を行った。第42日に血清検体を得て、抗体力価を酵素結合抗体免疫アッセイ(ELISA)によって測定した。すなわち、微量定量ウェル(Nunc−Immunoplate,Nunc,Denmark)を、特定のペプチド500ngのコーティング緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.6)(50μL)溶液で室温にて16時間被覆した。プレートを、0.1%(重量/容量)BSAのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)液で、室温にて30分間遮断した。抗血清を連続希釈し、ウェルに加え、室温で1時間インキュベーションした。抗血清除去後、0.1%(重量/容量)Tween−20および0.1%(重量/容量)BSAを含むPBSでプレートを5回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(Jacjson ImmunoResearch Labs Inc.,PA)に接合したヤギ抗モルモットIgG抗体からのF(ab')を、洗浄緩衝液で希釈し(1/8000)、微量定量プレートに加えた。室温で1時間インキュベーションした後、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄した。基質テトラメチルベンジジン(TMB)のH2O2液(ADI,Toronto)を用いてプレートを展開し、1N H2SO4で反応を停止し、450nmで光学密度を測定した(Titretek Multiskan II,Flow Labs.,Virginiaを使用)。これらのELISAでは、陰性対照として、32アミノ酸残基の2つの無関係なペプチドを含有させた。アッセイは3連で行い、各抗血清の反応性力価は、陰性対照から得られた値に対して吸光度値に常に2倍の上昇を示す希釈度として定義した。モルモットにおいて形成した抗血清は、免疫感作で使用したペプチドについて単一特異的であった。免疫感作後に得られた血清の力価を表4に示してある。
本発明のペプチドは、表2および表3に示したものの1個のコピーまたはそれらの類縁体の複数のコピーを有するペプチドを有して成るものである。ペプチドはさらに、表2および表3に示したものから選択される異なるペプチドまたはそれらの類縁体を複数有することができ、好適な担体分子を含む。免疫その他の種類の結合アッセイを用いていくつかの種類のヘモフィルスを検出できることから、保存される領域からのペプチドを用いて抗体を形成することが好ましい。従って、表2および3には、診断、免疫感作および医学的治療において有用であると考えられる他のペプチドを確認するためのトランスフェリン受容体の他のいくつかの保存領域を示してある。
モルモット抗Eagan rTbp1、抗Eagan rTbp2および抗SB12 rTbp2抗血清を用いて、Tbp1およびTbp2蛋白の抗原性保存について、インフルエンザ菌株群のスクリーニングを行った。抗Eagan rTbp1抗血清を用いたウェスタンブロッティングによってスクリーニングした33の株のうち、全てが約100kDaの反応性帯域を持っていた。抗Eagan rTbp2抗血清を用いたウェスタンブロッティングによってスクリーニングした89の株のうち、85の株が、60〜90kDaの反応性帯域を持っていた。抗SB12 rTbp2抗血清を用いたウェスタンブロッティングによってスクリーニングした86の株のうち、82の株が、60〜90kDaの反応性帯域を持っていた。抗Eagan rTbp2抗血清および抗SB12 rTbp2抗血清のいずれによっても認識されなかった株が1株だけであり、それは欠陥tbpB遺伝子を有するNHTi株SB33であった。これらのデータは、トランスフェリン受容体蛋白はインフルエンザ菌株で非常に高い率で保存されることを示しており、これら蛋白が抗原として、さらにはインフルエンザ菌によって生じる疾患に対する免疫感作およびそれの診断のためのワクチンなどの免疫原性組成物においてのこれら蛋白の使用を支持するものである。
実施例18
本実施例は、トランスフェリン受容体の保存部分に相当するペプチドに対して形成された抗血清が、カタル球菌のトランスフェリン受容体を認識する能力について説明する。
トランスフェリン受容体の保存部分に相当するペプチドでモルモットを免疫感作し、得られた抗血清については実施例17に記載してある。カタル球菌の全細胞抽出物を、この細菌からのトランスフェリン受容体を特異的に認識するペプチド特異的抗血清で免疫ブロッティングした。Tbp2 N末端ペプチドおよびペプチドTBP2−25で免疫感作したモルモットからの抗ペプチド抗血清は、カタル球菌からのTbp2蛋白および大腸菌のプラスミドクローンpBHIT2によって発現された組換えTbp2を特異的に認識した。クローンpBHIT2は、アミノ酸80で開始するTbp2の切断したもの(すなわち、NKKFYSG配列番号:105)を発現する。従って、pBHIT2からのTbp2蛋白は、第2のエピトープLEGGFYGP(TBP2−25)に対して形成された抗体によってのみ認識することができる。この分析から、トンラスフェリン受容体間での保存配列に相当するペプチドは、全てではないが、トランスフェリン受容体を産生するほとんどの細菌を検出する上で有用であり、トランスフェリン受容体に対する免疫応答を生じさせ、そのような細菌によって生じる疾患に対する予防を行うワクチンなどの免疫原性組成物における成分として有用である。
これらウサギからの血清を、配列LEGGFYGP(配列番号:74)を組み込んだペプチドまたはインフルエンザ菌株DL63 Tbp2に対するELISAによって調べた。ELISAプレートをペプチドまたは蛋白で被覆し、次に5%スキムミルクで遮断した。リン酸緩衝生理食塩水、0.05%Tween−20および1%乾燥ミルクでの血清の連続2倍希釈液を、プレートで37℃にて2時間インキュベーションし、その後プレートを、0.05%Tween−20を含むリン酸緩衝生理食塩水で5回洗浄した。洗浄したプレートを、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)接合ロバ抗ウサギIgGで室温にて30分間調べ、次に0.05%Tween−20を含むリン酸緩衝生理食塩水で5回洗浄した。HRPO基質を全てのウェルに加えて、暗所にて室温で30分間経過させ、次に、1M硫酸50μLを加えて発色を停止させた。450nmでの吸光度を測定することで、色を測定した。
実施例19
本実施例は、トランスフェリン受容体を産生しないインフルエンザ菌株の形成について説明するものである。
pBHIT1からの挿入物の2.55Eco R I断片を、pUC4KのEcoR I部位にサブクローニングし、このベクターからTn903カナマイシン耐性(kan)カセットを取り出した。いずれもこの構築において特有の部位であって、pUHIT1KFHおよびpUHIAT1KFP(図28)を産生することから、このサブクローニング段階により、kanカセットを有するHinc IIまたはPst I pUC4K断片のいずれかのその後のpUHIT1のHind IIIまたはPst I部位への挿入が容易となった。EcoR Iによる消化によって中断された遺伝子配列を除去した後、既報の方法(Barcak et al..,1991)に従ってM−IV培地を用いる形質転換によって構築物をインフルエンザ菌野生型ゲノムに導入し、20μg/mLカナマイシンを含有するBHINH寒天で、形質転換体を選抜した。
実施例20
本実施例は、トランスフェリン受容体のエピトープを発現するポリオウィルスの構築を説明するものである。
ポリオウィルス1型マホーニー(Mahoney)株(PV1−M)ゲノムの塩基1175〜2956のcDNAクローンを、制限酵素Sau IおよびHind IIIで切断した。これらの酵素は、塩基2754〜2786を有する断片を切り取り、その断片は図29に示したように、PV1−Mアミノ酸1094〜1102をコードしている。本願において本発明者らは、ポリオウィルスアミノ酸に対して4文字の符号を用いている。例えば、1095は、カプシド蛋白VP1のアミノ酸95である。切り取った断片をインフルエンザ菌Tbp2からのアミノ酸をコードする合成オリゴヌクレオチドに代えることで、ポリオウィルスおよびトランスフェリン受容体の両方のアミノ酸配列をコードする新たなハイブリッドcDNAクローンを構築した。その新たなハイブリッドcDNAクローンを制限酵素Nhe IおよびSnaB Iで切断した。これらの制限酵素は、ポリオウィルス塩基2471〜2956からトランスフェリン受容体DNA配列などのハイブリッド断片を切り取るものである。PV1−Mの全ゲノムの例えばpT7XLDまたはpT7CMCBのようなcDNAクローンを、Nhe IおよびSnaB Iで切断して、ポリオウィルス塩基2471〜2956からの断片を切り取った。次にこれを、トランスフェリン受容体DNA配列を有するハイブリッド断片に代えて、図29に示したように、トランスフェリン受容体アミノ酸を有するハイブリッドBCループをコードする塩基によって置換された塩基2754〜2786を有するPV1−MのゲノムのハイブリッドcDNAクローンを得た。
プラスミドpT7XLDpypのpT7CMCBなどのpT7XLD由来のクローンは、PV1−McDNAの5'末端に酵素T7 RNAポリメラーゼのプロモータ配列を有する。既報の方法(van der Werf et al)に従って、T7 RNAポリメラーゼを用いて、トランスフェリン受容体アミノ酸をコードする塩基などのPV1−McDNAのRNA転写体を得た。これらRNA転写体によるベロ細胞のトランスフェクションによって、PV1TBP2A、PV1TBP2B、PV1TBP2CおよびPV1TBP2Dと称される4つの生ハイブリッドウィルスが得られた。pT7CMCBの転写物によるトランスフェクションによって、PV1XLDと称されるトランスフェクション由来の野生型ポリオウィルスが得られた(図29)。
PV1TBP2A、PV1TBP2B、PV1TBP2CおよびPV1TBP2Dの抗原特性を表5に示してある。これらはいずれも、配列LEGGFYGP(配列番号:74)を組み込んだペプチドに対して形成されたモルモット抗血清によって中和され、ウィルスが抗原的に認識できる形でこの配列を発現したことを示している。この抗血清を得るために、雌モルモットを、リン酸アルミニウム(3mg/mL)で製剤してペプチド200μgを含む容量500μLのIMで免疫感作した。動物は第1日、第14日、第28日および第42日に免疫感作し、第0日、第28日、第42日および第56日に採血した。血清は第56日の採血からのものとした。PV1TBP2AおよびPV1TBP2Bも、インフルエンザ菌DL63株Tbp2に対して形成したウサギ抗血清によって中和され、少なくともこれら2つのウィルスはその蛋白に対して生じた抗体に対して認識可能な形で配列を発現していることが示された。全てのウィルスが抗PV−1血清によって中和可能であり、ポリオ中和抗原部位Iにおける変化がウィルスにおける他の抗原性部位にはほとんど影響しなかったことを示している。
実施例21
本実施例は、ポリオウィルスハイブリッドを用いたTbp2に対する高力価抗血清の誘発について説明するものである。
ウサギに、CsCl精製PV1TBP2Aを接種した(ウサギ番号40、41および42)。使用したウィルスは生存ウィルスであったが、ポリオウィルスははウサギでは複製せず、認められる反応は実際には失活抗原に対する反応であることは留意すべき点である。第1日に、ウサギの背中に、ウィルスの不完全フロイントアジュバント液1μgを皮下注射にて接種し、第14日に、ウサギの背中に、ウィルスの不完全フロイントアジュバント液1μgを皮下注射して追加免疫を行った。第0日(接種前採血)および第27日にウサギから採血した。接種当たりのウィルスの用量は、2.5×108pfuであり、これはA260値から求めたところ約3.0×1011ビリオンであった。各ビリオンはエピトープ60コピーを発現することから、これはウィルス0.5pmolまたはLEGGFYG(配列番号:74)エピトープ30pmolに相当する。
実施例22
本実施例は、インフルエンザ菌によって生じる疾患からの関連する動物モデルの予防について説明するものである。
菌血症の幼若ラットモデル(Loeb et al,1987)を用いて、抗Eagan rTbp1および抗Eagan rTbp2抗血清の予防能力を評価した。ウサギまたはモルモットのいずれかに対して形成した抗Eagan rTbp1抗血清はこのモデルでは予防効果を示さなかったが、ウサギまたはモルモットのいずれかに対して形成した抗Eagan rTbp2抗血清には予防効果があった(表7)。これらのデータは、保護抗原としてのrTbp2蛋白の使用を示すものである。
組換えTbp2(rTbp2)の鼻咽頭コロニー形成防止能力をチンチラで求めた。インフルエンザ菌株12を、ストレプトマイシン10〜100μg/mL含む補足ミュラー・ヒントン寒天(Mueller Hinton agar)で成長させて、自然strRコロニーを得た。100μg/mLのストレプトマイシンに対して耐性の菌株12をコロニー形成で使用して、鼻洗浄液からのインフルエンザ菌の特異的培養を行うことができた。
ミョウバン中のrTbp2 30μg、またはミョウバン中の2×109cfuの失活菌株12全細胞、またはミョウバン単独のいずれかによって、第0日、第14日および第28日にチンチラ(3〜4ヶ月齢または1〜2歳)の免疫感作を行った。第44日に、ケタミンHClを用いて動物に軽く麻酔を施した。ヘミンおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を補給したBHI培地に入った培養したばかりのストレプトマイシン耐性NTHi株12の受動吸入(鼻孔当たり50μL、動物当たりの総量0.1mL)によって鼻腔内接種を行った。細菌負荷の用量は、動物当たり1×108cfuとした。
鼻咽頭洗浄を、接種後第5日および第9日に実施した。無菌希釈液(希釈液:BHI 50mL、生理食塩水100mL、NAD 200μgおよび1%ヘミン25μL)1mLで鼻咽頭を洗浄し、反対側の鼻孔から出てくる液体を回収することで、麻酔を施したチンチラから分泌物を得た。通常は、各動物から液体500μLを回収し、サンプル25μLを、ストレプトマイシン1mg存在下にチョコレート寒天平板で平板培養した。結果を表10に示してある。負荷後第5日および第9日の両方について、未希釈の鼻洗浄液を、ストレプトマイシン存在下に平板培養した。2つの陽性対照群(全細胞免疫感作および回復期)の数匹の動物が負荷後第5日に鼻咽頭コロニー形成が陽性であったが、第9日までにはこれら動物で、いずれの細菌も消失し、これら2群の動物において耳感染を起こした動物はなかった。そこで、rTbp2が、NTHiコロニー形成に対してチンチラを部分的に保護したことが明らかである。
実施例23
本実施例は、本発明の1実施態様によるトランスフェリン受容体蛋白Tbp2の切断類縁体の形成について説明する。
大腸菌によって、インフルエンザ菌Tbp2を少量得る。塩基消去キット(Erase−a−base kit)を用いて、Eagan tbpB遺伝子をその3'末端から切断した。切断遺伝子を、T7プロモータからの大腸菌BL21(DE3)で発現させた。図31および表8に示したようなTbp2の多くの切断類縁体が得られた。残っている成熟Eagan rTbp2のパーセントを示してあり、切断クローンの発現レベルを、全長Eagan rTbp2クローンのものと比較した(表8)。ヒトトランスフェリン(Tf)への切断クローンの結合を、モートンらの報告(Morton and Williams,1990)に記載のアッセイを用いて測定した。データは、蛋白のカルボキシ領域の切断によって、Eagan rTbp2の収量を大幅に向上させることができることを示している。そのデータはさらに、トランスフェリン結合部位が、成熟Eagan Tbp2蛋白の残基348および446の間にある可能性のあることを示している(表3および図32)。しかしながら、切断rTbp2におけるTf結合部位の保存は、それを保護免疫原として使用する上で必要ではないと考えられる。
菌血症の幼若ラットモデル(Loeb et al.,1987)を用いて、モルモットおよびウサギで形成された抗血清のトランスフェリン受容体蛋白Tbp2の切断類縁体に対する保護能力を評価し、結果を表9に示した。動物が血液2μL中に<10cfuを有している場合、その動物は保護されたものと考えられる。
開示の要旨
本開示内容をまとめると、本発明は、トランスフェリン受容体蛋白の免疫原性切断類縁体をコードする精製・単離核酸分子およびその切断類縁体、特にはTbp2を提供するものである。その核酸分子および切断類縁体は、診断、免疫感作および診断・免疫感作試薬の形成において有用である。発現組換え切断Tbp2に基づくワクチンを製造して、トランスフェリン受容体を産生する病原菌によって生じる疾患の予防を行うことができる。本発明の範囲内においての変更は可能である。
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モルモットおよびウサギにおいて、Eagan rTb1およびEagan Tbp2蛋白に対して抗血清を形成した。幼若ラットを抗血清0.1mLで皮下注射にて免疫感作し、24時間後にインフルエンザ菌b型MinnA株350cfuを腹腔内投与にて負荷した。負荷後20時間で採血を行い、チョコレート寒天で平板培養を行った。
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米国特許4601903号
米国特許5141743号
米国特許4596792号
米国特許4952496号
米国特許5194254号
WO 92/17167

Claims (14)

  1. ヘモフィルス株のトランスフェリン受容体蛋白の防護免疫原性C末切断型類縁体をコードする精製・単離核酸分子であって、
    前記C末切断型類縁体は、該トランスフェリン受容体蛋白の全アミノ酸配列長の少なくとも54%を保持するものであることを特徴とする核酸分子。
  2. コードされる前記C末切断型類縁体が基とする、全アミノ酸配列長のヘモフィルス株のトランスフェリン受容体蛋白は、ヘモフィルス株のTbp2蛋白であることを特徴とする請求項1に記載の核酸分子。
  3. 前記C末切断型類縁体が基とする全アミノ酸配列長のヘモフィルス株のTbp2蛋白は、その全アミノ酸配列を図31に示されるインフルエンザ菌b型のEagan株由来のTbp2蛋白、または、該インフルエンザ菌b型のEagan株由来のTbp2蛋白と等価な別のヘモフィルス株由来のTbp2蛋白であり、
    前記C末切断型類縁体の保持する、該ヘモフィルス株のTbp2蛋白全アミノ酸配列長に対する比率は、
    表8中に、その保持比率を示し、対応するアミノ酸配列を図31中に表示する、アミノ酸番号18−637のクローンDS−1461−8−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率98%、
    アミノ酸番号18−537のクローンDS−1466−1−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率83%、
    アミノ酸番号18−529のクローンDS−1466−1−14として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率80%、
    アミノ酸番号18−463のクローンDS−1466−2−6として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率69%、
    アミノ酸番号18−425のクローンDS−1466−3−4として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率63%、
    アミノ酸番号18−417のクローンDS−1466−3−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率62%、
    アミノ酸番号18−411のクローンDS−1644−7−9として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率61%、
    アミノ酸番号18−404のクローンDS−1466−1−4として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率60%、
    アミノ酸番号18−365のクローンDS−1457−3−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率54%
    のいずれかを選択することを特徴とする請求項2に記載の核酸分子。
  4. ヘモフィルス株のトランスフェリン受容体蛋白の防護免疫原性C末切断型類縁体をコードする精製・単離核酸分子であって、
    前記核酸分子は、
    (a) 図3に示した配列番号:1のDNA配列、図4に示した配列番号:2のDNA配列、図5に示した配列番号:3のDNA配列、図6に示した配列番号:4のDNA配列、図7に示した配列番号:105のDNA配列、図8に示した配列番号:108のDNA配列、図9に示した配列番号:110のDNA配列、図10に示したの配列番号:112のDNA配列もしくは図11に示した配列番号:114のDNA配列のいずれかDNA配列;
    (b) 図3に示した配列番号:5のアミノ酸配列、図4に示した配列番号:6のアミノ酸配列、図5に示した配列番号:7のアミノ酸配列、図6に示した配列番号:8のアミノ酸配列、図7に示した配列番号:9のアミノ酸配列、図8に示した配列番号:10のアミノ酸配列、図9に示した配列番号:10のアミノ酸配列、図10に示した配列番号:11のアミノ酸配列、図11に示した配列番号:12のアミノ酸配列、もしくは図31に示した配列番号:106、配列番号:107、配列番号:109、配列番号:111、配列番号:113または配列番号:115のアミノ酸配列、このいずれかのアミノ酸配列をコードするDNA配列;および
    (c) 前記(a)または(b)に定義されるDNA配列のいずれかに対して厳しい条件下にハイブリッド形成するDNA配列
    から成る群から選択されるDNA配列の切断形であり、
    前記類縁体は、該トランスフェリン受容体蛋白の全アミノ酸配列長の少なくとも54%を保持するものであることを特徴とする核酸分子。
  5. 前記(c)に定義されるDNA配列が、(a)または(b)に定義されるDNA配列のいずれかと少なくとも90%の配列一致率を有することを特徴とする請求項4に記載の核酸分子。
  6. 宿主の形質転換を行うための発現ベクターであって、
    前記請求項1〜5のいずれか一項に記載される核酸分子と
    前記核酸分子によって、コードされる該ヘモフィルス株のトランスフェリン受容体蛋白の防護免疫原性切断型類縁体を宿主から発現させるために、前記核酸分子と有効に結合した発現手段とを含んでなる発現ベクター。
  7. 請求項6に記載の発現ベクターを保持する形質転換宿主。
  8. 前記発現ベクターが発現する該ヘモフィルス株のトランスフェリン受容体蛋白の防護免疫原性切断型類縁体は、
    表8中に、その保持比率を示し、対応するアミノ酸配列を図31中に表示する、アミノ酸番号18−637のクローンDS−1461−8−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−537のクローンDS−1466−1−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−529のクローンDS−1466−1−14として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−463のクローンDS−1466−2−6として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−425のクローンDS−1466−3−4として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−417のクローンDS−1466−3−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−411のクローンDS−1644−7−9として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−404のクローンDS−1466−1−4として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−365のクローンDS−1457−3−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体
    のいずれかから選択される、
    その全アミノ酸配列を図31に示されるインフルエンザ菌b型のEagan株由来のTbp2蛋白に基づく、C末切断型類縁体であることを特徴とする請求項7に記載の形質転換宿主。
  9. 前記請求項7または8に記載の形質転換宿主により産生可能なトランスフェリン受容体蛋白の組み換え型の防護免疫原性C末切断型類縁体。
  10. 基となるヘモフィルス株のTbp2蛋白全アミノ酸配列長の少なくとも54%を保持する、該ヘモフィルス株の防護免疫原性C末切断型Tbp2蛋白。
  11. 前記C末切断型類縁体が基とする全アミノ酸配列長のヘモフィルス株のTbp2蛋白は、その全アミノ酸配列を図31に示されるインフルエンザ菌b型のEagan株由来のTbp2蛋白、または、該インフルエンザ菌b型のEagan株由来のTbp2蛋白と等価な別のヘモフィルス株由来のTbp2蛋白であり、
    前記C末切断型類縁体の保持する、該ヘモフィルス株のTbp2蛋白全アミノ酸配列長に対する比率は、
    表8中に、その保持比率を示し、対応するアミノ酸配列を図31中に表示する、アミノ酸番号18−637のクローンDS−1461−8−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率98%、
    アミノ酸番号18−537のクローンDS−1466−1−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率83%、
    アミノ酸番号18−529のクローンDS−1466−1−14として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率80%、
    アミノ酸番号18−463のクローンDS−1466−2−6として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率69%、
    アミノ酸番号18−425のクローンDS−1466−3−4として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率63%、
    アミノ酸番号18−417のクローンDS−1466−3−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率62%、
    アミノ酸番号18−411のクローンDS−1644−7−9として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率61%、
    アミノ酸番号18−404のクローンDS−1466−1−4として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率60%、
    アミノ酸番号18−365のクローンDS−1457−3−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体の比率54%
    のいずれかを選択することを特徴とする請求項10に記載の切断型Tbp2蛋白。
  12. (A) 請求項1〜5のいずれか一項に記載の精製・単離核酸分子;
    (B) 請求項9に記載のトランスフェリン受容体蛋白の組み換え型防護免疫原性C末切断型類縁体;および
    (C) 請求項10または11に記載の少なくとも1つのヘモフィルス株の防護免疫原性切断Tbp2蛋白
    から構成される群から選択される少なくとも1つの活性成分と
    前記活性成分用の医薬的に許容される担体とを含んでなり、
    前記の少なくとも1つの活性成分は宿主への投与時に免疫応答を起こすものである免疫原性組成物。
  13. ヘモフィルス株の防護免疫原性C末切断型Tbp2蛋白の製造方法であって、
    該C末切断型類縁体は、前記Tbp2蛋白の全アミノ酸配列長の少なくとも54%を保持するものであり、
    制御配列に有効に結合した該ヘモフィルス株の防護免疫原性C末切断型Tbp2蛋白をコードする核酸分子を含んでなる発現ベクターを構築する工程;
    前記発現ベクターを宿主に導入する工程;および
    前記宿主から前記防護免疫原性C末切断型Tbp2蛋白を発現させる工程
    とを有することを特徴とする方法。
  14. 前記発現ベクターが発現する該ヘモフィルス株のTbp2蛋白の防護免疫原性切断型類縁体は、
    表8中に、その保持比率を示し、対応するアミノ酸配列を図31中に表示する、アミノ酸番号18−637のクローンDS−1461−8−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−537のクローンDS−1466−1−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−529のクローンDS−1466−1−14として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−463のクローンDS−1466−2−6として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−425のクローンDS−1466−3−4として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−417のクローンDS−1466−3−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−411のクローンDS−1644−7−9として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−404のクローンDS−1466−1−4として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体、
    アミノ酸番号18−365のクローンDS−1457−3−1として表記する成熟型Tbp2蛋白のC末切断型類縁体
    のいずれかから選択される、
    その全アミノ酸配列を図31に示されるインフルエンザ菌b型のEagan株由来のTbp2蛋白に基づく、C末切断型類縁体であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
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