JP3504169B2 - イオン注入装置及びイオン注入方法 - Google Patents

イオン注入装置及びイオン注入方法

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JP3504169B2 JP35337698A JP35337698A JP3504169B2 JP 3504169 B2 JP3504169 B2 JP 3504169B2 JP 35337698 A JP35337698 A JP 35337698A JP 35337698 A JP35337698 A JP 35337698A JP 3504169 B2 JP3504169 B2 JP 3504169B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】イオン発生装置及びイオン発
生方法、並びに金属やセラミック等からなるワーク(被
イオン注入体)の表面にイオンを注入するイオン注入装
置及びイオン注入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、金属やセラミック等からなるワ
ーク(被イオン注入体)の表層に金属イオンを注入する
と、長寿命化、耐磨耗性の向上、硬度の増加、濡れ性の
改善、表面改質などの新たな機能を持たせることができ
る。従来の金属イオン注入装置では、反応室内にワーク
と金属イオン源を配置し、反応室内を真空状態や低ガス
圧状態とした上で、金属イオン源に連続的にアーク電流
を流すことでプラズマを連続発生させて、金属イオン源
から金属イオンを連続的に放出させながら、ワークに高
圧のパルス電圧を印加し、金属イオンを電気的に誘引
し、ワークの表面に、引き付けることにより、ワークの
表面を金属イオンでコーティングしたり、コーティング
膜の付着強度を増大したり、或いはワークの表層に金属
イオンを注入している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
イオン注入装置では、イオン源にアーク電流を連続に流
し続けてプラズマを維持しながら、ワークに高圧のパル
ス電圧を印加しているので、イオンがワークの表層に注
入され難い。これは、金属のプラズマを維持したままで
あると、金属イオンがワーク表層に付着・堆積してコー
ティング膜となり、ここでパルス電圧の印加によりワー
クがイオンを誘引しても、イオンがワークの表面のコー
ティング膜内に次々に注入される留まり、ワークの表層
までイオンが進入し難いからである。しかも、コーティ
ング膜はワーク表面との結合力が弱いため剥がれ易い上
に、金属イオンが必要以上に放出されるので、金属イオ
ン源が無駄になる。
【0004】本発明は、かかる問題に鑑み、導電性のイ
オン源にパルス電流を流すことによりシャンティングア
ーク放電(パルス放電)を発生させて、イオンをワーク
の表層に確実に注入できるようにし、さらにシャンティ
ングアークから誘起されるプラズマに着目して、従来に
ないイオン発生装置等を実現することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成すべく、以下の技術的手段を講じた。すなわち、本発
明に係るイオン発生装置は、反応室と、当該反応室内に
配置された導電性のイオン源と、当該イオン源にパルス
状のアーク電流を流すアーク電源と、前記反応室内に窒
素・メタン等の反応性ガスを供給するガス供給手段を備
えていることを特徴とする。
【0006】イオン源にパルス電流を流すとシャンティ
ングアークが発生し(詳細は後述)イオン源を構成する
材料がイオンとなってプラズマを形成する。さらに反応
性ガスからはガス粒子の電離や励起がもたらされ、プラ
ズマが誘起されるしたがって、イオン源と反応性ガスか
ら同じイオンが発生する場合には、1回のプロセスで高
密度のプラズマが生成され、異なるイオンが発生する場
合には、1回のプロセスで複数種のイオンが発生する。
【0007】また本発明に係るイオン発生方法は、窒素
・メタン等の反応性ガスの雰囲気下で、導電性のイオン
源にパルス状のアーク電流を流すことによって、シャン
ティングアーク放電により前記イオン源からイオンを発
生させると共に、前記シャンティングアークからプラズ
マを誘起して反応性ガスからイオンを発生することを特
徴とする。
【0008】また本発明に係るイオン注入装置は、反応
室と、当該反応室内に設置された導電性イオン源と、前
記イオン源にパルス状のアーク電流を流すアーク電源
と、前記反応室内に配置される被イオン注入体に負のパ
ルス電圧を印加するパルス電圧発生源と、前記反応室内
に窒素・メタン等の反応性ガスを供給するガス供給手段
を備えていることを特徴とする。
【0009】この場合、被イオン注入体にパルス電圧を
印加することにより、イオンが引き込まれ注入が行なわ
れる。ここで、シャンティングアークによるイオン源か
らのイオンと、それにより電離・励起されたガスイオン
とは、その生成時間に差があるため(ガスイオンの方が
長い)、前記パルス電圧発生源は、前記アーク電源のパ
ルスと同期し、かつ遅延したパルス電圧を発生するもの
とするのが好適である。
【0010】さらに、前記パルス電圧発生源は、イオン
の発生時間内においてパスル電圧又はパルス幅を制御す
る制御手段を備えているものとすれば、成膜とイオン注
入を制御することが可能となる。また本発明に係るイオ
ン注入方法は、被イオン注入体にイオンを注入する方法
において、窒素・メタン等の反応性ガスの雰囲気下で、
導電性のイオン源にパルス状のアーク電流を流すことに
よって、イオン源からイオンを発生させると共に、前記
シャンティングアークからプラズマを誘起して反応性ガ
スからイオンを発生させ、前記被イオン注入体に負のパ
ルス電圧を印加することにより、前記イオン注入体に前
記イオンを注入することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1は、本発明のイオン注入装置
1を示している。このイオン注入装置1は、反応室とし
て円筒状の放電チャンバ3と、放電チャンバ3内に配置
された導電性のイオン源5と、イオン源5にパルス状の
アーク電流を流すアーク電源7と、放電チャンバ3内に
設置される被イオン注入体(ワーク)9に負のパルス電
圧を印加するパルス電圧発生源11とを備えている。な
お、このイオン注入装置1は本発明におけるイオン発生
装置でもある。
【0012】前記放電チャンバ3には、放電チャンバ3
内を真空状態にする真空ポンプ13と、放電チャンバ3
内に窒素又はメタン等の反応性ガスを供給するガス供給
手段15がそれぞれバルブ17を介して接続されてい
る。なお、前記真空ポンプ13には、ロータリーポンプ
RPとターボ分子ポンプTMPとが用いられている。前
記アーク電源7は、その端子間に接続されたイオン源5
にパルス高電流を流すことにより、シャンティングアー
ク(shunting arc)を発生させるためのものである。こ
のシャンティングアークの発生は、ガス供給手段15に
よってチャンバ3内に注入された反応性ガスの雰囲気下
で行なわれる。
【0013】シャンティングアークの発生は、コンデン
サC(全容量20μF、4μFを5個並列接続、耐電圧
6.2kV)に蓄積されたエネルギによって行なわれ
る。また、パルスを発生させるためのスイッチング素子
としては、トリガトロン19が用いられている。このト
リガトロン19の動作は以下の通りである。信号発生器
SGからの信号によってトリガトロンドライバTDから
高電圧パルス電圧(出力電圧10kV、幅約2μs)を
トリガピンに入力し、微小アークによる予備放電の後主
放電に移行し、コンデンサCからの電荷の放出、イオン
源5の加熱、アーク形成に至る。
【0014】前記パルス電圧発生源4は、ワーク9に高
電圧パルスを印加し、プラズマからのイオン引き出しを
行なうものであって、信号発生器SGからの信号が遅延
パルス発生器DPG2に入力され、その出力電圧は所定
時間の経過の後、パルスモジュレータ21に入力され、
フィードスルー23を通して放電チャンバ3内のワーク
9にパルス電圧を印加する。すなわち、ワーク9に印加
されるパルスはイオン源5に印加されるパルスと同期
し、かつ所定時間遅延したものである。
【0015】以下に、シャンティングアーク放電の発生
原理について説明する。低圧力におかれた線や箔状等の
素材(イオン発生源5)を電極間に固定して、パルス電
流を流すと、加熱により温度が上昇し、素材の周囲には
蒸発に伴う粒子雲が形成される。素材が金属などの場合
には表面から熱電子放出等による電子も存在すると考え
られる。
【0016】温度の増加により素材の抵抗は高くなり、
電極間に加わる電圧は増加する。電極間に生ずる電圧降
下が周囲の媒質(反応性ガス)の放電開始電圧になる
と、媒質中で放電が発生し、元の素材のイオンを含むプ
ラズマが生成され、通常アークである。これがシャンテ
ィング放電であり、プラズマ中には多量の素材の成分が
存在する。
【0017】シャンティングアークはイオン化したい材
料の細線や箔を加熱する事により、それらの周囲で発生
するアークを指す。シャンティングアークによるパルス
イオン注入は、プラズマ中に浸されたワーク9にパルス
高電圧を印加し、その周囲から均一にイオン注入を行な
う点で有用である。
【0018】シャンティングアークの放電維持は、素材
面でのアークスポット(陰極点など)に依存しない機構
であるので、素材からのマクロパーティクルは発生しな
い利点があり、従来の金属アークによる薄膜の生成など
で大きな問題となるドロップレット(液滴)も少ない蒸
着法といえる。プラズマに至るプロセスは単体の電源で
あり、装置構成は簡素化され、かつ、放電の発生が蒸気
などに依存するため低気圧動作ができる。さらに従来の
プラズマ生成で苦手とされる高融点材料での発生が容易
である特徴を有している。
【0019】シャンティングアークを用いたイオン注入
は以下の特徴を有する。第1に複雑形状物の内面へのイ
オン注入を行うことができる。第2に固体の蒸発化など
のために新たな電源を設けることなく、プラズマの形成
をもたらすことができる。すなわち、一つの電源により
プラズマ形成に至る点に大きな特徴を有し、繰り返し放
電も可能である。第3としてアーク電流値が容易に10
00A以上に達することがあげられる。従来数十Aのア
ーク電流値からのイオン引き出されることを考えると、
短時間の内に高いドーズ量のイオン注入が可能である。
これらの事柄は従来にないパルスイオン源の特徴を持
ち、かつ簡便でコストパフォーマンスに優れた方式であ
る。
【0020】ここで、シャンティングアークの特性を、
図2のシャンティングアーク電圧・電流波形に基づいて
説明する。図2の波形は、シャンティングアーク及び初
期のカーボンロッド(イオン源5)に流れる電流・電圧
波形であって、図1中の電流変成器CT1と、同じく図
1中の高電圧プローブVP1とを用いてオシロスコープ
で波形観測をしたものである。ここで、コンデンサCの
充電電圧Vcは1200Vとし、チャンバー3内のガス
(空気)圧力Pは8×10-4Torrである。
【0021】トリガトロン19がオン(図中の時刻
“0”)して電流が流れ始める。図2(b)よりかるよ
うに3μs程度まではほぼ20Aの一定値を維持する。
電圧波形も次第に増加を初め、約1μsにおいて約11
00Vの値に達する。その後ロッド5の周囲が絶縁破壊
を起こし、アークの開始と共に大電流が流れ、図2
(a)に示すように減衰振動をしながら約65μsで電
流は流れなくなる。
【0022】図3は、ワーク9の位置におけるCII:
391.898nmのスペクトルの強度の時間推移を示
している。このスペクトルの観測は、チャンバー3内で
発生した光をスペクトロスコープ(Spectroscope)又は
CCDカメラ25によって受光することによって行なわ
れる。具体的には、チャンバー3内で発光した光を光フ
ァイバーで受光する。その出力光は分光器の回折格子に
入射され、イメージインテンシファイヤ27にて光増倍
させ、CCD素子による検出、デジタル信号への変換の
後、データとして計算機に取り込むことによって行なわ
れる。
【0023】イメージインテンシファイヤ27は、ゲー
ト付きであって任意の時間より所定の遅れ時間での分光
測光が可能である。すなわち、シャンティングアーク電
流を前記電流変成器CT1により検知し、その信号を遅
延パルス発生器DPG1に入力しTTLレベルの信号パ
ルスに変換された後にゲートパルス発生器に入力され、
イメージインテンシファイヤ27のゲートが開く。
【0024】図3より、アーク発生後約5μsから発生
しているのがわかる。ここで、ワーク9はカーボンロッ
ド5から100mmの位置に配置されており、この時間
は、カーボンロッド5から100mmの位置にアークの
先端が到達する時間を示す。光強度は約7.8μsで最
大となり、その後時間の経過と共に減少し約10.5μ
sあたりで非常に弱くなる。以上より、本条件ではシャ
ンティングアークは発生後約5μsにおいて発生地点か
ら100mmの位置にある基材の所にまで到達する。従
ってアークの平均膨張速度は20km/s程度の高速で
あることがわかる。
【0025】プラズマの高速移動はアーク自身の電流密
度と自己磁界によって生ずる駆動とプラズマ自身がチャ
ンバー3に対して負の電位を持つことが理由として考え
られる。後者の現象は以下の通りと考えられる。シャン
ティングアークの発生により、図1の電源用コンデンサ
Cのプラス側が接地され、プラズマはチャンバー3に対
し負の電位を持つ。この結果、シャンティングアークプ
ラズマからチャンバー3に向かう電子のドリフトと両極
性拡散的な作用によるイオンの駆動も加わり、プラズマ
の膨張が促進される。
【0026】図4はワーク9位置でのアークプラズマの
分光の時間変化を表す。観測時間はアーク発生後約26
μsから約210μs、波長範囲は640mm〜680
mmである。一連の観測より、以下の点がわかる。大電
流のシャンティングアークが観測される時間範囲ではカ
ーボンイオンと共に窒素プラズマが認められ、放電の終
了以降の時間範囲では窒素スペクトルのみであることが
わかる。
【0027】シャンティングアーク中はターゲットであ
るワーク9へのDLC(Diamond Like Carbon)の堆積
も可能な程カーボン粒子が豊富にある。プラズマの駆動
により、媒質のガス粒子(ここでは窒素)の電離や励起
がもたらされる。図4においてアークの発生後約26μ
sにおいてターゲットの位置に多くの窒素(N)スペク
トルが観測されるのはアーク膨張による電離作用である
といえる。約65μs以前のシャンティングアーク電流
の多くはカーボンロッド5間を橋絡して流れるが、一部
はチャンバー3壁に向かうプラズマの流れとなり、媒質
を電離する。
【0028】約65μsにおいてコンデンサCの残留電
圧がアーク放電の再点弧電圧以下となり、シャンティン
グアークは消滅する。一方、チャンバー3壁に向かうア
ーク(以下、誘起プラズマと称する)は抵抗の大きいプ
ラズマと考えられ、コンデンサCの電荷の反転は起こら
ず、ほぼ直流アークに近い一方向に流れる電流となるた
め、消滅することはなく継続して流れると考えられる。
【0029】従ってシャンティングアーク消滅以降の時
間領域でカーボンスペクトルではなく、チャンバー内に
存在する媒質ガス成分である窒素(N)のスペクトルが
現れる。おおむね200μsの長時間にわたってプラズ
マが継続するのは誘起プラズマの抵抗が大きく直流的な
電流の流れとなっているためと考えられる。このように
大電流の主放電が終了の後、直流的な電流の形成に至る
現象は、発生の要因は異なるが、エキシマレーザの励起
放電の終了近くで発生するアーク放電と類似する。
【0030】以上より、シャンティングアークは高速で
膨張し、その間放電媒質に新たなプラズマを誘起し、元
の素材(ここでは加熱に用いたカーボンロッド5)のみ
でなく、媒質の成分も含むプラズマと考えられ、電流の
流れはカーボンロッド5を橋絡する流れと容器3壁に向
かう電流の流れの2種から成ると考えられ、カーボンロ
ッド5を橋絡するアークが消滅するとロッド5と容器3
壁間のプラズマのみとなり、インピーダンスが高く、長
時間継続して発生する。プラズマ種は媒質の成分が主で
ある。
【0031】このように、本発明のイオン注入装置1
(イオン発生装置)によれば、シャンティングアークと
そこから誘起されるプラズマが発生する。このことは、
プラズマのイオン種が1回のプラズマの生成〜消滅過程
で変化が起こることを意味する。図5は、ワーク(ター
ゲット)9に印加されるパルス電圧Vp の波形を示して
いる。この電圧は図1中の高電圧プローブVP2を用い
てオシロスコープで測定したものである。図5に示すよ
うに、印加パルスの立ち上がりは約2.5μs、パルス
幅は約10μsである。
【0032】図6は、パルス電圧の印加時刻を変化させ
たときのターゲット9を流れる電流波形である。この電
流は、図1中の電流変成器CT2を用いてオシロスコー
プで観測される。図6の電流は正イオン電流であるが、
一部イオンがターゲット9に衝突することによる2次電
子放出電流も含まれている。印加時刻はアーク発生後4
0〜200μsであり、時刻が遅れるにつれて、電流が
現象するのがわかる。電流の減少はプラズマの膨張によ
るプラズマ密度の低下によるためと考えられる。アーク
継続中(図中40〜60μs)と窒素(N)スペクトル
のみが観測されるとき(図中200μs)のターゲット
電流を比べると後者は前者の20〜30%程度であり。
いずれにしてもシャンティングアーク及びその誘起プラ
ズマ中にあるターゲットにパルス電圧を印加するとイオ
ン電流が引き出されることが確認された。
【0033】
【実施例】(実施例1):DLC膜の形成 図1の装置において、コンデンサCの充電電圧1200
V、シャンティングアーク発生のための最大電流は約
0.5kA、半波の放電持続時間は約25μsec、イオ
ン源5としては長さ35mm・直径2mmのカーボンロ
ッド、チャンバー3に注入される反応性ガスとしてはカ
ーボン系気体であるメタンCH4 (アセチレンでも
可)、チャンバー圧力は8×10-4Torr、放電発生の繰
返しは5■、成膜時間は90min 、形成膜はDLC膜、
の条件下で運転を行なう。
【0034】媒質としてカーボン系の気体が用いると、
カーボンシャンティングアーク中に誘起プラズマによる
カーボン成分が加わることとなり、より多くのカーボン
イオンが生成される。すなわち、低気圧でシャンティン
グアークの持つ本来のプラズマ密度より、さらに高いカ
ーボンプラズマを発生し、生成が難しいカーボンプラズ
マの高密度化を容易に達成できる。したがって、効率の
良い成膜が可能である。
【0035】(実施例2):DLC膜の形成 実施例1の条件に加えて、ターゲット9に出力電圧10
kV、パルス幅約2μsec ( シャンティングアークと同
期) のパルス電圧を印加する。この場合、密着力の高い
DLC膜の形成が可能で、しかも一回のプロセスで行な
うことができる。
【0036】(実施例3):CN膜の形成 図1の装置において、コンデンサCの充電電圧1200
V、シャンティングアーク発生のための最大電流は約
1.4kA、半波の放電持続時間は約20μsec、イオ
ン源5としては長さ35mm・直径2mmのカーボンロ
ッド、チャンバー3に注入される反応性ガスとしては窒
素、チャンバー圧力は8×10-4Torr、放電発生の繰返
しは5■、ターゲット9に印加するパルス電圧は出力電
圧−5kV、パルス幅約10μse(シャンティングアー
クと同期)、成膜時間は90min 、形成膜はCN膜、の
条件下で運転を行なう。
【0037】この場合、シャンティングアークによりカ
ーボンイオンが発生し、誘起プラズマの発生により窒素
イオンが発生する。すなわち、異なるイオンの発生を1
つの装置による1回のプラズマ生成により行なうことが
できる。図7は、上記のようなプラズマの生成化でター
ゲット9にイオン注入を行なうためのパルス電圧の印加
例を示している。
【0038】図7においてターゲット電流(Target cu
rrent)の変化は、カーボンイオンが豊富に含まれている
シャンティングアーク(Carbon-rich plasma)に続い
て、継続時間の長い誘起窒素プラズマ(Nitorogen-rich
plasma)が存在することを示している。図7(a)
は、カーボンと窒素のプラズマが存在する時間領域で、
ターゲットに負のパルス電圧−V0 を全放電時間にわた
って印加した場合である。この場合、ターゲット9に
は、カーボンイオンの注入と窒素イオンの注入が1回の
プロセスで起こることになる。
【0039】また1回のプロセスにおいてカーボンプラ
ズマと窒素プラズマにおいてパルス電圧の値を変えるこ
とによりそれぞれのイオン注入量が制御できる。また、
印加する電圧を短パルスとして連続して加えることによ
り、ターゲット9周囲のイオンシース量を変えることが
でき、いろいろな形のターゲットへの均一なイオン注入
への適用性が高まる。このようにパルス電圧発生源11
に、プラズマの発生時間領域内でパルス幅やパルス電圧
を制御する制御手段(パルスモジュレータ21)を具備
することで、様々なイオン注入を行なうことができる。
【0040】図7(b)は、カーボンプラズマが発生し
ている間でターゲット9に電圧を印加しない場合であっ
て、ターゲットにはカーボン材の堆積作用をもたらすこ
とができ、しかる後にターゲット9にパルス電圧を印加
することにより窒素イオンが注入可能である。そして、
この場合、1回のプロセスでCN膜を形成することがで
きる。
【0041】(実施例4):TiN膜の形成 実施例3の条件において、イオン源5にチタンTiを採
用すると、シャンティングアークによりチタンイオン
が、誘起プラズマにより窒素イオンが生成され、ターゲ
ット9にTiN膜を形成することができる。また、ター
ゲット9に−10〜−200Vのパルス電圧を印加する
と、密着力が向上する。
【0042】なお、本発明は、上記実施例に限定される
ものではなく、媒質のガス質やイオン源の素材を適宜変
更することにより、他の炭化物(TiC、WCなど)、
窒化物(TiCN、ZrNなど)を形成することもでき
る。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、異なる種類のプラズマ
の発生を1回のプロセスから装置構成を変えることなく
でき、装置を簡素化することができる。また誘起プラズ
マによってイオン化される媒質のガス種やイオン源の素
材を変えることにより、様々な膜形成を行なうことがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオン注入装置の全体図である。
【図2】シャンティングアーク電圧・電流波形である。
【図3】ターゲット付近の時間経過によるスペクトル強
度推移図である。
【図4】スペクトル観測図である。
【図5】ターゲットへのパルス印加電圧波形図である。
【図6】放電開始後に印加する電圧の時刻を変化させた
ときの電流波形図である。
【図7】ターゲット電流・印加電圧波形図である。
【符号の説明】
1 イオン注入装置(イオン発生装置) 3 放電チャンバ(反応室) 5 イオン源 7 アーク電源 9 被イオン注入体(ワーク、ターゲット) 11 パルス電圧発生源 13 真空ポンプ 15 ガス注入手段 21 パルスモジュレータ(制御手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−222177(JP,A) 特開 昭64−42574(JP,A) 特開 平11−260276(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 27/08 H01J 37/08

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反応室と、当該反応室内に設置された導
    電性のイオン源と、前記イオン源にパルス状のアーク電
    流を流してシャンティングアーク放電を発生させること
    でイオン源からイオンを発生させるアーク電源と、前記
    シャンティングアーク放電によりイオン化する窒素・メ
    タン等の反応性ガスを反応室内に供給するガス供給手段
    とを備えており、前記イオン源から発生したイオンと反
    応性ガスから発生したイオンとの両方を被イオン注入体
    に1回のプロセスで注入させるべく、反応室内に配置さ
    れた被イオン注入体に負のパルス電圧を印加するパルス
    電圧発生源と、を備えていることを特徴とするイオン
    装置。
  2. 【請求項2】 前記パルス電圧発生源は、前記アーク電
    源のパルスと同期し、かつ遅延したパルス電圧を発生す
    るものであることを特徴とする請求項1記載のイオン
    入装置
  3. 【請求項3】 前記パルス電圧発生源は、イオンの発生
    時間内においてパスル電圧又はパルス幅を制御する制御
    手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載
    イオン注入装置。
  4. 【請求項4】 前記パルス電圧発生源は、イオン源から
    発生したプラズマと反応性ガスから発生したプラズマと
    が存在する時間領域で、被イオン注入体に負のパルス電
    圧を全放電時間にわたって印加することを特徴とする請
    求項1〜3のいずれかに記載のイオン注入装置。
  5. 【請求項5】 被イオン注入体にイオンを注入するイオ
    ン注入方法において、 窒素・メタン等の反応性ガスの雰囲気下で、導電性のイ
    オン源にパルス状のアーク電流を流すことによりシャン
    ティングアーク放電を発生させることで、イオン源から
    イオンを発生させると共に、前記シャンティングアーク
    からプラズマを誘起して反応性ガスからイオンを発生さ
    せ、前記被イオン注入体に負のパルス電圧を印加するこ
    とにより、前記被イオン注入体に前記イオン源からのイ
    オンと前記反応性ガスからのイオンとを1回のプロセス
    で注入することを特徹とする イオン注入方法
  6. 【請求項6】 前記パルス電圧は、前記アーク電源のパ
    ルスと同期し、かつ遅延したものであることを特徴とす
    る請求項5に記載のイオン注入方法
  7. 【請求項7】 前記パルス電圧は、イオンの発生時間内
    においてパスル電圧又はパルス幅が制御されるものであ
    ることを特徴とする請求項5又は6記載のイオン注入方
  8. 【請求項8】 前記パルス電圧は、イオン源から発生し
    たプラズマと反応性ガスから発生したプラズマとが存在
    する時間領域で、全放電時間にわたって被イオン注入体
    に印加されることを特徴とする請求項5〜7のいずれか
    に記載のイオン注入方法。
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