JP3503940B2 - 中空型材の継手構造およびその接合方法 - Google Patents

中空型材の継手構造およびその接合方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車両の構体等に用い
るアルミニウム合金製のトラス形状の上下の表板で構成
する中空型材、すなわち上下の表板を傾斜ウェブで繋い
だ中空型材を所定の長さに摩擦撹拌接合するための接合
部構造および接合方法に関するもので、上記中空型材の
端部接合部を上表板を互いに突き合わせたとき、上表板
の端部間に開口部ができるように上表板を下表板よりも
引っ込めた構造にし、且つ、上記開口部に上表板を繋ぐ
継手板を嵌めてこれを上表板に接合するものにおいて、
継手板と上表板とを仮溶接することなく突き合せ接合で
きるようにすることにより、中空型材相互の接合工数を
低減することができるものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、車両の構体を構成する骨組み構
造体は、車両重量の軽量化を図るためにアルミニウム合
金製のトラス形状の中空パネル構造体が多く使われてい
る。しかし、これらアルミニウム合金製の中空パネル構
造体は、押し出し型材として製作するためにその長さが
比較的短く、これを車両の構体に用いる場合にはこれを
繋ぎ合わせて使わざるを得ず、従来はその接合がMIG
溶接やTIG溶接で行われていた。最近では、これらの
接合を摩擦撹拌接合によって行うようになっており、こ
の場合の摩擦撹拌接合による接合は、図3に示すよう
に、先ず下表板を摩擦撹拌接合機で接合し、次いで上表
板の接合を行うものである(例えば、特開平9−309
164号公報)。この場合、中空パネル構造体の下表板
34,34aは互いに突き合わされた状態で摩擦撹拌接
合装置にセットされる。このとき上表板33,33aは
下表板34,34aよりも引っ込んでおり、この間に開
口部ができた状態で下表板34,34aは摩擦撹拌接合
装置のベットに載せられている。そして、上表板33,
33aの端部間の開口部から摩擦撹拌接合工具を挿入し
て下表板34,34aの突合せ面を接合し、その後に平
板状の継手部材60を上方から嵌めて上表板33,33
aの段付きの棚部35,35aに載せ、上表板の肩部と
継手部材60の端部とを仮付けして固定し、その後に上
表板の棚部35,35aと継ぎ手部材60の端部、すな
わち、上表板と継手部材60との平面な重合部を上から
摩擦撹拌接合するものである。
【0003】
【解決しようとする課題】しかし、上記従来のパネル構
造体の接合方法では、上表板33,33aを接合する際
に、平板状の継手部材60を上表板の上記棚部35,3
5aに載置したままで、継手部材60と上記棚部35,
35aとの重合面を摩擦撹拌接合するとすれば、摩擦撹
拌接合時に様々な大きな力が作用するので、接合面の位
置ズレが生じ、このために適正に接合することができな
い。このために、継手部材60と上表板とを仮接合して
おくことが不可欠であり、この仮接合のための作業工数
が製造コストを高くする原因の一つである。この発明
は、上記従来技術の問題点を解消しようとするもので、
アルミニウム合金製のトラス形状の中空型材の下表板を
突き合わせ接合し、上表板の端部間に継手板を嵌めて開
口部を塞ぎ、上表板の棚部と上記継手板の重合部とを摩
擦撹拌接合する中空型材の継手構造について、上記継手
板と上表板とを仮接合することなしに、上表板と継手板
とを摩擦撹拌接合できるように、上記継手構造を工夫す
ることをその課題とするものである。
【0004】
【問題を解決するための手段1】上記課題を解決するた
めに講じた手段1は、アルミニウム合金製のトラス形状
の中空型材の下表板を突き合わせ接合し、上表板の端部
間に継手板を嵌め、上表板の棚部と上記継手板の重合部
とを摩擦撹拌接合する中空型材の継手構造を前提とし
て、次の(イ)(口)(ハ)によって構成されるもので
ある。 (イ)上表板の棚部と上表板表面との間の段部を傾斜面
として、上記段部と棚部との間にV形溝を形成したこ
と、 (口)上記継手板の突き合わせ端部を上記V形溝と嵌り
合う断面V形にしたこと、 (ハ)上表板の上記V形溝に継手板の突き合わせ端部を
嵌合させて、上表板で継手板を締め付けて固定した状態
上表板の棚部と継手部材の重合部とを摩擦撹拌接合す
る構造であること。
【0005】
【作用】上表板の棚部と上表板表面との間の段部を傾斜
面として、上記段部と棚部との間にV形溝を形成し、こ
れに継手板の断面V形の突き合わせ端部を上表板の上記
V形溝に嵌合させ、上表板で継手板を締め付けて固定し
た状態で上記重合部を摩擦撹拌接合すると、摩擦熱で継
手板が膨脹し、その断面V形の端部が上表板の上記V形
溝に強力に押し付けられるので、継手板端部の上表板に
対する固定が一層強固になる。したがって、摩擦撹拌接
合中に継手板端部が上表板に対してずれることはなく、
適正に接合される。したがって、継手板を上表板に仮接
合する必要はなく、継手板を上表板の端部間に嵌め込み
上表板で締め付けるだけであるから、それだけ作業工数
が低減される。なお、上記のV形溝は、当該V形溝に嵌
め込まれ、締め付けられた継手板の端部を押さえてその
浮き上がりを阻止するものであるから、段部端面が若干
傾斜していればよく、したがって、当該V形溝の角度は
90度に近い角度であってもよい。
【0006】
【問題を解決するための手段2】上記課題を解決するた
めに講じた手段2は、アルミニウム合金製のトラス形状
の中空型材を請求項1の継手構造によって摩擦撹拌接合
する接合方法を前提として、次の(イ)(口)(ハ)に
よって構成されるものである。 (イ)中空型材の下表板を突き合わせ接合すること、 (口)次いで上表板の端部の棚部と段部とによって成形
したV形溝間に、当該V形溝に嵌り合う端部を断面V形
に形成した継手板を嵌め込み、上表板端部間の開口部を
塞いだあと継手板を上表板で押しつけて締め付けるこ
と、 (ハ)その後上表板の棚部と継手板の平面状の重合部と
上方から摩擦撹拌接合したこと。
【0007】
【作用】上記下表板の接合を行った後に上表板端部間に
継手板を嵌め込み、この上表板を互いに押しつけて締め
付け固定したままで、継手板と棚部とを接合するという
手順にしたことにより、余計な準備作業が無くなり接合
作業時間が大幅に短縮される。
【0008】
【実施の形態】この発明を押し出し成形されたアルミニ
ウム合金製のトラス形状の中空型材の端部の接合部構造
に適用した、実施形態について図面を参照して説明す
る。押し出し成形したアルミニウム合金製のトラス形状
の中空型材を突き合わせ、下表板の突き合さった端部
を、上表板間にできる開口部より摩擦撹拌接合機を挿入
して下表板の突き合さった端部を接合する状態を図1に
概念的に示している。図1において、トラス形状の中空
型材1は、上表板2と下表板3と両部材間に取付られる
ウェブ4で構成されている。そして、この上表板2は下
表板3よりも引っ込められており、このような中空型材
の端部を互いに突き合わせた際に、下表板3,3aが互
いに突き合され、上表板2,2a間に開口部5が形成さ
れる。そして、これらの上下両表板2,2a、3,3a
の端部のうち、上表板の棚部6と上表板表面10との間
の段部7の端面を傾斜面7aにして段部7と棚部6との
間にV形溝11を形成している。なお、上記棚部6,6
a及びその段部7は、押し出し成形の際に上表板2,2
aの端部に形成するものである。そして、これら中空型
材1,1の接合は、上表板2,2a間の開口部5に摩擦
撹拌接合機8を入れて下表板3,3aの突き合わせ面を
上方から摩擦撹拌接合する。
【0009】図2に下表板3,3aを摩擦撹拌接合した
後、上表板2,2aの棚部6,6aの上面の段部7,7
間に継手板9を嵌め込んで、継手板9を棚部6に摩擦撹
拌接合した状態を示している。上記上表板2,2aの端
部に設けた棚部6,6aの段部7の端面が傾斜面7aに
なっているので、継ぎ手板9を開口部5に上方から密に
嵌め込むことはできないが、側方から挿入して嵌め込
み、その後、上表板2,2aで締め付けることで、継手
板9のVエッジを上記V形溝に固定することができる。
そして、上表板2,2aの端部間の開口部5を継手板9
で塞いだ後、摩擦撹拌接合機8により、継手板9と棚部
6の重ね部を上方から接合する。
【0010】
【効果】鉄道車両の構体等の骨組みとして使用するアル
ミニウム合金製のトラス形状の中空型材の上下両表板の
端部の接合部構造は、その下表板の端部を突き合わせた
とき、上表板の端部間に開口部ができるように上表板を
下表板よりも引っ込め、また、その上表板の端部に継手
板を接合する棚部を形成し、且つ、その棚部と段部の端
面との間にV形溝を形成したので、継手板を嵌め込んだ
後上表板を両側より押し締め付けることで継手板を容易
に固定することができるから、継ぎ手板を棚部や上表板
に仮接合する必要がない。したがって、仮接合作業や仮
接合面の仕上げ加工が省略されるので、接合作業工数が
大幅に削減でき製造コストが低減されるものである。ま
た、下表板の突き合わせ端部を摩擦撹拌接合し、その
後、上表板端部間の開口部に継手板を嵌め込んで上表板
の両側より締め付けて固定し、継手板と棚部とを摩擦撹
拌接合するから、接合のための準備作業が簡素化され、
作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】はこの発明の実施の形態に係るトラス形状の中
空型材の下表板相互を接合する状態を示す概念的な側面
図である。
【図2】はその上表板端部間の継手板を棚部に摩擦撹拌
接合した状態を示す概念的な側面図である。
【図3】は従来のトラス形状の中空型材相互を摩擦撹拌
接合した状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
1:中空型材 2a;上表板 3a:下表板 4:ウェブ 5:開口部 6,6a:棚部 7:段部 7a:傾斜面 8:摩擦撹拌接合機 9:継手板 10:上表板の表面 11:上表板の表面と棚部とで形成したV形溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開2001−205458(JP,A) 特開 平11−90654(JP,A) 特開2001−162383(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 20/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム合金製のトラス形状の中空型
    材の下表板を突き合わせ接合し、上表板の端部間に継手
    板を嵌め、上表板の棚部と上記継手板の重合部とを摩擦
    撹拌接合する、中空型材の継手構造において、 上表板の棚部と上表板表面との間の段部を傾斜面とし
    て、上記段部と棚部との間にV形溝を形成し、 上記継手板の突き合わせ端部を上記V形溝と嵌り合う断
    面V形にし、 上表板の上記V形溝に継手板の突き合わせ端部を嵌合さ
    せて、上表板で継手板を締め付けて固定した状態で上表
    板の棚部と継手部材の重合部とを摩擦撹拌接合する、中
    空型材の継手構造。
  2. 【請求項2】アルミニウム合金製のトラス形状の中空型
    材の下表板を突き合わせ接合し、 次いで上表板の端部間の開口部に継手板を嵌めて上表板
    の棚部に支持させ、棚部と段部間のV形溝に、継手板の
    V形側端部を嵌め込み、 その後、この継手板を上表板で締め付けて上表板の棚部
    と継手板の重合部とを摩擦撹拌接合する、請求項1の継
    手構造による中空型材の接合方法。
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