JP3499888B2 - 拡散アルミナイド被覆をもつニッケル基超合金基体の安定化 - Google Patents

拡散アルミナイド被覆をもつニッケル基超合金基体の安定化

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はニッケル基超合金、特に
アルミナイド被覆を施すことにより周囲環境に起因する
劣化に対する耐性を改善されたニッケル基超合金に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】航空機用ガスタービン(ジェット)エン
ジンにおいては、空気をエンジンの前面から吸引し、圧
縮機によって圧縮しそして燃料と混合する。この圧縮さ
れた混合物を燃焼室中で燃焼させそして熱い燃焼ガスを
タービンを通じて流動させて圧縮機を回転させる。熱ガ
スはついでエンジンの後部から流出させる。
【0003】タービンは熱ガスを横方向へ偏向させる固
定タービン翼(静翼)及び熱ガス流の衝突の結果として
回転するタービンホイール上に取付けられたタービン翼
(動翼)を包含する。これらのタービン静翼及び動翼は
エンジンの始動及び停止時の高温熱サイクルの極限状
態、酸化及び腐食等及び動翼の場合にはさらに高剪断及
び疲労負荷等の苛酷な条件を受ける。熱い燃焼ガスの温
度が高くなるほどエンジンの効率は増大する。したがっ
て、より高温及び高負荷に適合するエンジン材料の開発
は技術的に常に要請されている。
【0004】ニッケル基超合金はガスタービン静翼及び
動翼の製造用材料として広く使用されている。これらの
超合金はニッケルを主成分としかつコバルト、クロム、
タングステン、アルミニウム、タンタル、レニウム、ハ
フニウム及びその他の金属のような種々の合金用元素を
ガスタービンエンジンが受ける作動条件の両極限にわた
って良好な機械的及び物理的性質を与えるように注意深
く選定された種々の割合で含有する。
【0005】タービン用部材に使用するに適する合金の
開発においては、現在までのところ、良好な機械的性質
及び酸化及び高温腐食のような周囲環境に起因する劣化
に対する良好な抵抗性の最適の組合せをもつ超合金は全
く発見されていないことが認められている。この認識に
基づいて展開された主なる解決法はタービン動翼又は静
翼の基本構造体として良好な機械的性質をもつ超合金を
使用しかつ該超合金を周囲環境に耐性の別の物質の被膜
層で被覆してこれらタービン翼を酸化及び腐食による劣
化から保護する方法である。
【0006】かゝる被覆の一例はアルミナイド被覆であ
る。これはアルミニウムをニッケル基超合金物品の表面
中に拡散させてニッケル−アルミナイド層を形成させる
ものであり、このアルミナイド層はついでその後の処理
又は使用中に酸化して酸化アルミニウム表面被覆を形成
するものである。(場合によっては、この表面中に白金
を拡散させることもできる。)酸化アルミニウム表面被
覆はかく被覆されたニッケル基超合金物品に、望ましく
はその機械的性質を損なうことなしに、酸化及び腐食に
対するより良好な耐性を付与する。タービン動翼及び静
翼のアルミナイド被覆は当該技術において周知でありか
つ工業的に広く実用されており、たとえば米国特許第
3,415,672号及び同第3,540,878号明
細書に記載されている。
【0007】最近になって、ある種の進歩したニッケル
基超合金をアルミナイド被覆で被覆し、ついで使用条件
又は模擬使用条件下に置く場合、第二の反応帯域(以下
SRZという)が該被覆の下の超合金中に生ずることが
認められた。このSRZ帯域はアルミナイド被覆で被覆
される当初の超合金表面の下約50ないし約250μm
(約0.002−0.010インチ)の深さで観察され
る。このSRZで存在するとSRZ中の物質は脆くかつ
弱くなり、したがってその影響を受ける領域の機械的性
質の低下を招く。
【0008】SRZの形成はある種のタービン部材にお
いては重要な問題である、というのはかゝるタービン部
材の表面下約750μm(約0.030インチ)の位置
には冷却用流路が配置されているからである。エンジン
の作動中、冷却用空気をこの冷却用流路に通送して構造
部材を冷却する。SRZが部材表面と冷却用流路との間
の領域に生成する場合には、SRZは該領域をかなり弱
化しそして物品の強度及び疲労抵抗の低下をもたらし得
る。
【0009】現在に至るまで、第二の反応帯域の生成を
回避し又はかゝる帯域の悪影響を減少する手段は何等提
案されていない。SRZの影響を受ける超合金を、SR
Zを生成し得るような長期の使用期間にわたって、ガス
タービン動翼及び静翼に使用し得るようにするためには
SRZ問題に対するかゝる解決策が必要である。本発明
はこの要求を満たしかつさらに関連する利益を提供する
ものである。
【0010】
【発明の概要】本発明は進歩した高温超合金中に第二の
反応帯域が生成するのを回避する手段を提供するもので
あり、それはかゝる超合金の全体の組成を変えることな
しに達成し得るものである。したがって、超合金は最適
の性能を与えるように選定することができ、ついでその
表面帯域をSRZの生成を阻止、安定化するように処理
し得る。この安定化に必要な処理は目的物品の製造工程
を増加するが、大規模のバッチ処理で達成し得るので追
加のコストは僅かである。
【0011】今般、本発明者は、SRZはある種の合金
中に見出される“P−相”と呼ばれる相のような位相的
に密に充填された(以下TCPという)相を含み、それ
はより広く知られているシグマ相に類似しかつ表面に近
いアルミナイド化帯域をアルミニウムに富む周囲条件中
で高温に暴露する際に形成されることを認めた。耐火性
元素がP−相のようなTCP相を選択的に形成する。こ
れらは特にレニウム、クロム及びタングステンである。
TCP相の出現は超合金の表面下の領域の炭素含量を増
加させ、TCP相形成性元素の有効性を減少させかつそ
れによって該構造体をTCP相の形成を阻止するように
安定化させることによって減少せしめ得る。
【0012】本発明に従う超合金物品はTCP相形成性
元素を含むニッケル基超合金基体を含みかつさらに基体
内にあって基体の表面より下の炭化物域の深さまで延び
る炭化物沈殿物含有帯域を含む。この基体上に基体の表
面から基体の表面下のアルミナイド域の深さにまで延び
るアルミニウムに富む拡散層が存在する。たゞし、その
際炭化物沈殿物含有帯域が延びている炭化物域の深さは
少なくともアルミニウムに富む拡散層が延びているアル
ミナイド域の深さと同等又はそれ以上であるものとす
る。より特定された場合には、超合金物品はレニウム、
クロム、タングステン及びそれらの組合せのような耐火
性元素を含むニッケル基超合金基体及び該基体内にあっ
て該基体の表面近くに存在する炭化物沈殿物含有帯域を
含んでなる。
【0013】ある種の合金中に存在することが認められ
るP−相のようなTCP相はアルミナイド化処理の結果
として超合金の表面近くのアルミニウムに富む帯域中に
沈殿する。P−相のようなTCP相の形成にはかなり高
含量のレニウム及びタングステンが必要である。ある特
定のニッケル基超合金のみがTCP−相の形成を受ける
に十分な高含量でこれらの元素を含有し、特にある特定
の進歩したニッケル基超合金、たとえば本出願人自身の
米国特許出願第07/459,400号(米国特許第5
151249号)明細書に詳細に記載される“レネ(R
ene)”162、はTCP型P−相の形成を受け易い
ことが認められた。
【0014】本発明の解決手段によれば、超合金の表面
近くの帯域の局部的組成が有害な相の形成に利用され得
るTCP−相形成性元素の量を減ずるように変えられ
る。もっとも有効な手段はTCP−相形成性元素を炭素
と反応させて炭化物を形成させ、それによって有害相の
形成に利用し得るTCP−相形成性元素の量を減少させ
ることである。すなわち、超合金の表面に炭素を与える
とTCP−相形成性元素、主としてレニウム、タンタル
及びタングステン、に富む炭化物の沈殿を生ずる。した
がって、これらの元素はもはやTCP−相の形成のため
に利用し得ないものであり、TCP−相の形成は抑制さ
れる。別の言い方をすれば、アルミナイド化超合金の表
面近くの帯域はTCP−相の形成に対し安定化される。
【0015】それ故、より一般的にいえば、超合金物品
はアルミナイド化処理中第二の反応帯域の形成を可能に
するニッケル基超合金基体を含むが、その際該基体はそ
こに含まれるTCP−相の形成に利用し得るTCP−相
形成性元素が該基体の表面下のある深さの減損帯域まで
減損された状態で存在する。すなわち、TCP−相形成
性元素はなお存在するが、それは炭化物のような安定
な、すでに反応された状態で存在するので、該元素は長
時間のTCP−相形成性条件下でもTCP相の形成に利
用し得ない。基体上を覆ってアルミニウムに富む拡散層
が基体の表面下に存在するアルミナイド域の深さまで延
びて存在する。こゝで前記したTCP−相の形成に利用
し得るTCP−相形成性元素の減損された帯域の深さ、
すなわちTCP−相形成性元素がすでに結合されてTC
P−相の形成のために利用し得ない状態にある帯域の深
さは前記アルミナイド域の深さと少なくとも同等又はそ
れ以上である。
【0016】本発明はさらに超合金の表面近くの帯域を
有害な帯域の形成に対して安定化する好ましい一方法を
提供するものである。本発明に従う被覆物品の製造法は
レニウム、クロム、タングステン及び随意に他の耐火性
元素を含むニッケル基超合金基体を供給し;この基体の
表面上に炭素含有層、好ましくは純粋な炭素から構成さ
れる層、を沈着させ;そして該炭素含有層からの炭素を
基体中に炭化物の沈殿物を形成するに足る温度で基体中
に拡散させる工程を包含する。炭化物が形成された後、
さらに基体の表面上にアルミナイド被覆を沈着させそし
て基体を加熱して基体の表面にアルミニウム及びニッケ
ルを含む保護層を形成させる工程を行なう。炭素含有層
を沈着させる工程は任意の許容し得る方法、たとえば炭
素含有ガス相からの化学的蒸着法、によって達成し得
る。
【0017】拡散工程における時間及び温度の範囲は炭
化物沈殿物が沈着及び加熱工程によって形成される表面
下のアルミニウムに富む帯域の侵入深さと少なくとも同
等又はそれ以上の深さまで基体の表面の下に延びるよう
に調整されることが望ましい。これらのパラメーターは
拡散パラメーターを確定するための実験を最初に行なう
ことによって決定することができる。場合によっては白
金又は他の貴金属、たとえばロジウム又はパラジウムの
層を、拡散工程の後、たゞしアルミナイド被覆の沈着工
程の前に、基体の表面上に沈着させることができる。
【0018】本発明の方法はアルミナイド化表面処理に
よって保護されるべきある特定の進歩した超合金を高温
での用途に使用する技術において重要な進歩を与えるも
のである。本発明のその他の利点は本発明の技術思想を
実例によって具体的に説明する好ましい実施態様につい
ての以下の記載と添付図面とから当業者には明らかであ
ろう。
【0019】
【発明の詳細な開示】以下、本発明の安定化法を図面を
参照しつつ説明する。本発明の安定化法はニッケル基超
合金、たとえば図1に例示されるジェットエンジン用ガ
スタービン動翼10(又はこれと同等のものとみなされ
るガスタービン静翼)のような用途に用いられるニッケ
ル基超合金について適用される。この動翼はアルミナイ
ド化処理中及び処理後に表面下に第二の反応帯域を形成
する傾向をもつ任意のニッケル基超合金から構成し得
る。かゝるニッケル基超合金の一例は“レネ(Ren
e)”162であり、これは重量%で表わして約12.
5%のコバルト、4.5%のクロム、6.25%のレニ
ウム、7%のタンタル、5.74%のタングステン、
6.25%のアルミニウム、0.15%のハフニウム、
0.5%のイットリウム、少量の他の元素そして残部の
ニッケルからなる組成をもつ。
【0020】動翼10は板翼(エアフオイル)部分12
を含み、該部分に向けてエンジンの作動中は熱い燃焼ガ
スが吹付けられ、そして該部分12の表面は使用中苛酷
な酸化及び腐食の作用を受ける。板翼部分12はシャン
ク又はルート部14によってタービンディスク(図示せ
ず)に固定されている。ある場合には、冷却用通路16
を板翼12中に存在させ、それを通じて冷ブリード空気
を流動させて動翼10から熱を除去する。動翼10は通
常当業者に周知の鋳込及び固化法、たとえばインベスト
メント鋳造法、方向性凝固法又は単結晶成長法によって
製造される。
【0021】図2及び図3は慣用のアルミナイド化処理
の結果を示すための動翼10を貫通する断面図である。
基体24として働く板翼部分12の表面22上にアルミ
ニウム含有層20が形成される。ある場合には、アルミ
ニウム含有層20の形成前に、随意に白金含有層26の
ような貴金属の薄層を表面22上に沈着させることがで
きる。表面22上に層20を施した後、動翼10を高温
に加熱して矢印28によって概略的に示されるごとく層
20(及び随意の層26)と基体24との間に相互拡散
を生起させる。相互拡散の型、割合及び程度は本発明の
実施可能性にとって臨界的ではなくて、時間、温度、基
体合金、及びアルミニウム源の活性のような多数の因子
に関係する。この工程の実施中又は実施後に、その上面
30を酸化許容条件に置いて酸化アルミニウム層(図示
せず)を形成させる。
【0022】図3は上記相互拡散工程の結果として得ら
れる冶金的ミクロ組織を示す。二種類の拡散帯域が形成
されている。βマトリックス又はβ′マトリックス中に
シグマ相を含む第一の(主要な)拡散帯域32が層20
のすぐ下に形成される。さらに、第二の(副次的)反応
帯域(以下SRZともいう)34が第一の拡散帯域32
と基体24との間に生成する。SRZ34は、特にそれ
が表面22と表面下の冷却用通路16(図2参照)との
間に存在する物質の実質的部分を占める場合には、動翼
10の機械的性質の低下をもたらすことが認められた。
【0023】冶金学的検討の結果はSRZがγマトリッ
クス及びγ′マトリックス中に、レネ(Rene)16
2合金の場合にはP−相と呼ばれていた針状の位相的に
密に充填された(TCP)相を含むことを示した。γマ
トリックス及びγ′マトリックスの存在は望ましいが、
TCP相の存在は望ましくない。TCP相の存在全般、
又はレネ162合金のP−相のような特定種のTCP相
の存在は、第二の反応帯域の形成を生起しやすい合金か
ら製造された物品の望ましくない機械的性質及び長期に
わたる冶金学的不安定性をもたらす。本発明の方法はT
CP−相を排除し又はその量を減ずるものである。
【0024】レネ162合金のTCP型P−相の化学的
微量分析を行ない、それがレニウム、クロム及びタング
ステンに富むものであることを認めた。また半定量的分
析の結果、SRZ中のレネ162合金のP−相は約50
%のレニウム、15%のタングステン、15%のニッケ
ル、10%のコバルト、9%のクロム、残部は微量元素
からなる組成(%は重量%である)をもつことが認めら
れた。正確な組成は重要ではない。しかしながら、この
TCP相が超合金の全組成におけるレニウム、クロム及
びタングステン含量−レネ162の場合にはレニウム
約6.25%、クロム約4.5%及びタングステン約
5.75%である−と比較してレニウム、クロム及び
タングステンをかゝる高い含量で含むことは重要であ
る。
【0025】多数の過去の及び現在使用されている超合
金はレネ162及び現在関心がもたれている若干の他の
超合金について認められているごとく、かゝる高含量の
レニウム及びタングステンを使用しないものである。S
RZ現象はこれらの他の合金においては観察されず、こ
のことはTCP−相は高いレニウム及びタングステン含
量をもちかつ典型的には高いクロム含量も有する超合金
のアルミニウムに富む表面帯域(アルミナイド化処理に
よって形成されるごとき)に生ずるとの仮説を確証する
ものである。したがって、本発明の方法は表面に近いア
ルミニウムに富む帯域中にTCP−相を形成するために
利用し得るレニウム、クロム、タンタル及びタングステ
ンのような耐火性元素反応剤の利用可能量を、これらの
元素反応剤を安定な化合物に結合することによって減少
させ、しかも該表面から離れた他の帯域中のレニウム、
クロム及びタングステン含量は低下させないという作用
を果すものである。
【0026】レニウム、クロム及びタングステンのよう
なTCP−相の形成に利用し得る耐火性元素反応剤の量
を減少させるための好ましい方法を図4に示す。レニウ
ム、クロム、タンタル及びタングステンを含有するレネ
162のような物質から製造された超合金物品をまず供
給する。この合金はアルミナイド化処理するとTCP−
相の一種であるP−相を、かゝるTCP−相の形成を避
けるための処理を行なわない限り、形成するであろう。
この物品の表面に炭素層を沈着させる。炭素層の沈着に
先立って、該表面を注意深く清浄化する。これは好まし
くはまずグリットブラスト仕上げ処理によって存在する
酸化物を除去し、ついでアルカリ性又は溶剤型クリーナ
ーで処理して汚れを除去するという方法で行なうことが
でき、それによって炭素を基体の表面中に拡散させるこ
とができる。
【0027】炭素層は任意の実施可能な方法によって沈
着せしめ得る。メタン−水素混合物のような炭素含有ガ
スを用いて高温で行なう化学蒸着法が、すべての暴露表
面(意図的にマスクされた表面を除く)を供給源からの
透視線のアクセスなしに被覆し得る点で好ましい。この
好ましい方法では、約1−5μm(約0.00004−
0.0002インチ)厚みの炭素層を形成するための蒸
着は約2100°F(1149℃)で15−60分であ
る。炭素は拡散被覆を通じて基体に到達する必要はない
ので、該炭素は拡散被覆を沈着させる前に沈着させるこ
とが好ましい。炭素はその沈着期間を通じて及びもっと
後で行なわれるアルミナイド化処理及びそれに続く暴露
処理の期間を通じて基体中に拡散する。所要ならば、追
加の拡散処理を行なうこともできる。炭素の導入が完了
した後、残留するすべての炭素を表面から、好ましくは
グリットブラスト処理によって除去する。
【0028】ついで拡散被覆を沈着させる。該拡散被覆
が白金アルミナイド被覆であるべき場合には、約5ミク
ロン厚みの白金層を表面上に任意の実施可能な方法、た
とえば電気めっき、によって沈着させる。(この随意に
行なわれる工程は図4中に断続線で囲った工程として示
されている。)アルミニウム含有層20は表面22上
に、又は白金被覆を施した場合には該白金被覆の上に、
沈着させる。アルミニウム含有層20は任意の実施可能
な方法、たとえばアルミニウム又はアルミニウム合金を
その蒸気相から析着させる方法又は化学蒸着法のような
当該技術において周知の方法、によって沈着せしめ得
る。アルミナイド被覆を沈着させる別の方法はパックセ
メンテーションと呼ばれる方法である。この方法はこゝ
に参考文献として引用する米国特許第3,415,67
2号及び同第3,540,878号明細書に記載されて
いる。概略的にいえば、記載される方法によって製造さ
れた基体を酸化アルミニウムのような不活性粉末(米国
特許第3,540,878号明細書に記載されるごとき
アルミニウム源合金として)及び塩化アンモニウム又は
フッ化アンモニウムのような活性剤を含んでなる混合物
から製造されたベッド中に充填する。好ましいアルミニ
ウム源合金はチタン50−70重量%、アルミニウム2
0−48重量%及び炭素0.5−9重量%の組成をも
つ。アルミニウム含有層の沈着処理中又は沈着後に、か
く被覆された基体を1800°F(982℃)を超える
温度に典型的には約240分又はそれ以上の時間にわた
って加熱し、それによって層20からのアルミニウム及
び基体24からの元素を相互に拡散させてアルミナイド
被覆を形成させる。アルミナイド被覆の厚みは好ましく
は約50−75μm(約0.002−0.003イン
チ)である。
【0029】図5は図4に関して上記した本発明の方法
を実施する場合に得られる動翼10の表面近くの帯域の
顕微鏡組織を説明するものである。この組織は図3の組
織と類似しているが、TCP−相(たとえばP−相)は
存在せず、したがって第二の反応帯域も存在しない。そ
の代りに、図5の組織には、沈着した炭素原子が炭化物
を形成するに足る量で拡散されている帯域に微細な炭素
に富む沈殿物(炭化物)36の配列が存在する。これら
の炭化物は典型的にはレニウム、クロム、タンタル及び
タングステンのような耐火性元素を含有し、それによっ
て減損帯域38−炭化物沈殿帯域はこれと同義語とし
て用い得る−中にTCP−相を形成するように反応し
得るこれら元素の量を減ずるものである。こゝで、用語
“減損帯域”とはTCP−相を形成するように反応する
に適する形で存在するTCP−相形成性元素の濃度が減
少した帯域を意味する。この用語はこれらの元素が減損
帯域38から完全に除去されてしまったことを意味する
ものと解釈されるべきではない。その代りに、レニウ
ム、クロム、タンタル及びタングステンのようなTCP
−相形成性元素は存在するが、これらはTCP−相を形
成し得ないような既に反応された形態で存在するもので
ある。
【0030】アルミニウムは層20から基体中にアルミ
ナイド域の深さ40によって示される程度まで拡散す
る。減損帯域38は、アルミナイド域の深さ40にほゞ
等しいことが好ましいがアルミナイド域の深さ40より
も幾分大きいか又は小さくてもよい深さまで及んでい
る。この減損帯域38は基体の表面の下約25ないし約
100μmの深さにまで及んでおり、そしてアルミナイ
ド層40は基体の表面の下約25ないし約50μmの深
さまで延びている。減損帯域38がアルミナイド帯域の
深さ40よりも実質的に大である場合には、その過剰容
量の物質は固溶体強化性元素、レニウム、クロム及びタ
ングステンが不必要なまでに減損されておりかつ不必要
な炭化物沈殿物を含む。これらの炭化物沈殿物は帯域3
8の深さが大き過ぎる場合には超合金の早過ぎる破壊を
惹起し得る。一方、減損帯域38がアルミナイド域の深
さ40よりも実質的に小さい場合には、TCP−相を形
成し得る帯域は小さいであろう。その結果、第二の反応
帯域はそうでない場合に存在する該帯域よりも小さい
が、該帯域はなお存在しかつやはり有害である。
【0031】これに関連して考慮すべき問題点の例とし
て、白金−アルミナイド主拡散帯域32の深さは典型的
には約30μm(約0.001インチ)である。拡散理
論は拡散工程中の炭素の侵入する深さは約(2Dt)
0.5 [たゞしDは選定された処理温度における相互拡散
係数(2100°F(1149℃)において約6×10
-9cm2 /秒)でありそしてtは時間である]であること
を予測する。この計算に従えば、この浸炭処理はSRZ
の形成に影響を及ぼすためには少なくとも12−1/2
分行なわなければならない。同様の計算はその他の条件
についても行ない得る。この計算は各場合にSRZが存
在しないこと及び炭素の拡散深さが必要な深さよりも大
きくないことの条件を確定するように実験的に検証され
る。
【0032】鋼のような鉄合金の表面近くの帯域の与炭
は表面に増加した硬度を付与するための完全に確立され
た方法である。しかしながら、ニッケル基超合金の表面
近くの帯域中に高炭素含量まで与炭又はその他の方法で
炭素を導入しないことが標準的な実施方法である。ニッ
ケル基超合金の表面近くの帯域中の過度の炭素含量は該
超合金の耐酸化性及び耐腐食性を低下しかつ早過ぎる破
壊をもたらす。したがって、特定の目的、すなわちSR
Zの形成を回避する目的のための本発明に従う表面の与
炭又は炭化物化法はこの分野で慣用される方法からは著
しく異なる方法に相当する。
【0033】本発明に従う解決法の成果は実験的に確認
された。まずレネ162合金の試験片を用意し、そのい
くつかに前記したごとき本発明の好ましい炭素処理を、
メタン−水素ガス混合物から約2100°F(1149
℃)で約15−60分間炭素を沈着させることによっ
て、施した。ついで、すべての試験片に前記したごとき
白金−アルミナイド処理を行なった。(白金層を表面上
に電気めっきする前に残留炭素層をグリットブラスト処
理によって除去した。)白金層は典型的には約5−15
μm(0.0002−0.0006インチ)厚であり、
そしてアルミニウム層は約65−75μm(約0.00
25−0.003インチ)厚であった。パックアルミナ
イド化処理は前述したごとく約1975°F(1079
℃)の温度で約4時間の条件で行なった。
【0034】アルミナイド被覆を施した後、各型の試験
片を空気中で約2050°F(1121℃)に約50時
間加熱した。SRZが生ずべき場合には、かゝる処理に
よってSRZが生ずるであろう。本発明の炭素拡散処理
を行なわない試験片はP−相を伴って広範なSRZを生
じたが、本発明の炭素拡散処理を行なった試験片にはか
ゝるSRZの形成は全く認められなかった。これらの炭
素拡散処理した試験片はその表面近くに約0.5μmの
寸法の微細な炭化物を有していた。これらの炭化物は深
さが増加するにつれて幾分粗大となった。
【0035】本発明は本発明の手段を採用しなければ第
二の反応帯域を形成する傾向のあるニッケル基超合金に
改善された組織を与える。アルミナイド、白金(又は他
の貴金属)−アルミナイド及びその上を覆う被覆層をも
つかゝる超合金は本発明の解決法によって利益を受け
る。本発明の特定の実施態様を例証の目的で上記に詳述
したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱することなしに
種々の変形及び修正をなすことができる。したがって、
本発明は特許請求の範囲に拘束される以外、何等制限さ
れるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】超合金物品の斜視図である。
【図2】図1の物品の2−2線に沿う断面図であり、本
発明の処理を用いない場合において、拡散的白金−アル
ミナイド化処理中の表面近くの帯域の状態を説明するも
のである。
【図3】図2に描かれた帯域の表面近くの顕微鏡組織を
拡大して図解的に示す断面図である。
【図4】本発明の処理工程のフローチャートである。
【図5】図1−図3に示したと同様の、たゞし本発明に
従う図4の処理を施した物品の表面近くの顕微鏡組織を
拡大して図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
10 ジェットエンジンガスタービン動翼 12 板翼 16 冷却用通路 20 アルミニウム含有層 22 板翼12の表面 24 ニッケル基超合金基体 26 白金含有層 32 主拡散帯域 34 第二の反応帯域 36 微細な炭素に富む(炭化物)沈殿物含有帯域 38 減損帯域 40 アルミナイド域の深さ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭47−27842(JP,A) 特開 昭55−82760(JP,A) 特開 昭54−58621(JP,A) 特開 昭60−159144(JP,A) 特開 昭58−64372(JP,A) 特開 昭54−65718(JP,A) 特開 平2−277784(JP,A) 特表 昭57−501866(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 28/00 C22C 19/03 C23C 10/28 C23C 16/12

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レニウム、クロム、タンタル、タングス
    テン及びそれらの混合物からなる群から選択されるTC
    P−相形成性元素を含むニッケル基超合金基体と;該基
    体内に存在しかつ該基体の表面下の炭化物深さまで延び
    る炭化物沈殿物含有帯域であって、該基体の表面に沈着
    した炭素の該基体内への拡散によって得られる炭化物沈
    殿物含有帯域と;該基体の表面から該基体の表面下の
    ルミナイド深さまで延びるアルミニウムに富む拡散層
    と;からなる超合金物品。
  2. 【請求項2】 レニウム、クロム、タンタル、タングス
    テン及びそれらの混合物からなる群から選択される耐
    性元素を含むニッケル基超合金基体と;該基体内に存在
    しかつ該基体の表面に隣接する炭化物沈殿物含有帯域で
    あって、該基体の表面に沈着した炭素の該基体内への拡
    散によって得られる炭化物沈殿物含有帯域と;からなる
    超合金物品。
  3. 【請求項3】 さらに該基体の表面の少なくとも一部を
    被覆するアルミニウム層を含んでなる請求項2記載の物
    品。
  4. 【請求項4】 さらに該基体の表面の少なくとも一部を
    被覆する貴金属の層を含んでなる請求項2記載の物品。
  5. 【請求項5】 さらに該基体の表面の少なくとも一部を
    被覆する白金の層と、該白金層を被覆するアルミニウム
    層を含んでなる請求項2記載の物品。
  6. 【請求項6】 さらに該基体の表面から該基体中に延び
    るアルミニウムに富む拡散層を含んでなる請求項2記載
    の物品。
  7. 【請求項7】 該炭化物深さが25ないし100μmで
    ある請求項2記載の物品。
  8. 【請求項8】 該拡散層のアルミナイド深さが25ない
    し50μmである請求項1又は請求項6記載の物品
  9. 【請求項9】 アルミナイド化処理中に第二の反応帯域
    を形成する傾向をもつニッケル基超合金基体と、該基体
    の表面から該基体の表面下のアルミナイド深さまで延び
    るアルミニウムに富む拡散層とからなる超合金物品であ
    って、該基体に含まれるTCP−相形成性元素が該基体
    の表面下の減損深さまで減損されているとともに、前記
    減損深さが前記アルミナイド深さと少なくとも同等であ
    り、該減損元素がレニウム、クロム、タンタル及びタン
    グステンからなる群から選択される、超合金物品。
  10. 【請求項10】 つぎの工程: (a)レニウム、クロム、タンタル及びタングステンを
    含むニッケル基超合金基体を供給し; (b)基体の表面上に炭素含有層を沈着させ; (c)該炭素含有層からの炭素を該基体中に、該基体中
    に炭化物沈殿物を形成するに十分な温度で拡散させ; (d)基体の表面上にアルミナイド被覆を沈着させ;そ
    して (e)基体を加熱して該基体の表面にアルミニウム及び
    ニッケルを含む保護層を形成させる;工程を含んでなる
    被覆物品の製造法。
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