JP3491367B2 - 熱間加工性、冷間加工性、靭延性にすぐれた析出硬化型ステンレス鋼 - Google Patents
熱間加工性、冷間加工性、靭延性にすぐれた析出硬化型ステンレス鋼Info
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Description
化処理状態での冷間加工性にすぐれ、しかも析出硬化処
理状態での靭延性にすぐれた析出硬化型ステンレス鋼に
関する。この鋼は、各種ボルト、シャフト、油圧機器な
どの、耐食性および強度がよいことが要求される部品の
素材として好適である。
硬化型ステンレス鋼として、JIS−G4303に制定
されているSUS630(17−4PH)鋼がある。
理後に時効硬化処理を施して、高硬度を得るタイプのス
テンレス鋼であり、強度はステンレス鋼のうちでもっと
も大きいものに属するとともに、耐食性は一般に、オー
ステナイト系よりは劣るものの、マルチンサイト系やフ
ェライト系よりも良好であり、さびにくく、しかも強い
ステンレス鋼として良好な特性をもっていることから、
各種のボルト、シャフト、油圧機器などの材料として活
用されている。
は、溶体化処理状態での硬度がHRC35前後と高いた
め、溶体化処理後の冷間加工性があまりよくないという
問題があった。
を減らし、溶体化処理状態での硬度を下げて、冷間加工
性を向上させるという対策が考えられた。
向上したものの、C+N含有量を過度に低減すると結晶
粒の粗大化を招き、析出硬化状態での靭延性が低下する
という、新しい問題が生じた。このようなわけで、熱間
加工性、冷間加工性および靭延性のいずれをも向上させ
た析出硬化型ステンレス鋼の出現が望まれていた。
のような従来技術の問題点にかんがみてなされたもので
あって、熱間加工性、溶体化処理状態での冷間加工性に
すぐれ、しかも、析出硬化処理状態での靭延性にもすぐ
れた、析出硬化型のステンレス鋼を提供することにあ
る。
間加工性、靭延性にすぐれた析出硬化型ステンレス鋼
は、重量%で、C:0.010%以下、N:0.010
〜0.025%、C+N:0.025%以下、Si:
1.0%以下、Mn:0.7%超過〜2.0%以下、
P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cu:3.
0〜5.0%、Ni:2.5〜4.9%、Cr:13.
0〜16.5%、Mo:1.0%以下およびNb:0.
50%以下を含有し、ただし、C+N≦0.025%、
Nb≧−11.43(C+N)+0.60%であって、残
部Feおよび不純物からなり、 式(1) 10Nieq−17.7Creq≧−240…(1) Nieq=Ni+0.5Mn+30(C+N)+0.16Cu Creq=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+21.4A1 式(2) (Ni+Mn)/Cu≧1.50…(2) を満足する合金組成を有することを特徴とする。
は、上記した合金成分に加えて、Ca、Mg、Bおよび
REMのうちから選ばれる1種または2種以上:0.0
005〜0.0100%を含有することができる。
た過程を述べれば、つぎのとおりである。すなわち、C
およびNの含有量が溶体化処理後の硬度に及ぼす影響に
ついて検討したところ、CはNの約2倍の影響をもつこ
とが明らかとなったので、C量を低減する一方で、Nを
利用してNb(炭)窒化物を生成させて結晶粒の粗大化
を防止した。冷間加工性を向上させるために、C+Nの
合計量を規定するとともに、必要量のNb(炭)窒化物
が生成するように、Nbの必要量を規定するとともに、
Nの下限値を設定したものである。
性、靭延性にすぐれた析出硬化型ステンレス鋼を構成す
る各合金成分について、そのはたらきと組成範囲の限定
理由にを説明する。
元素である。C含有量が多いと、溶体化処理後の硬度が
上昇して冷間加工性を低下させるので、少ない方がよ
い。上限を、0.010%とした。
る元素である。この点からはN含有量は少ない方がよい
ことになるが、前述のように、溶体化処理後の硬度に対
する影響はCほど大きくないことが明らかとなったの
で、C量を低減しする一方で、Nを利用してNb(炭)
窒化物を生成させ、結晶粒の粗大化を防止するために必
要最低限のN量を定めた。このようにして、N量の範囲
を、0.010〜0.025%とした。上記の作用を得
るためのより好ましいN量範囲は、0.015〜0.0
25%である。
処理状態での硬度を下げることができ、その結果、冷間
加工性を向上させることが可能となる。このような観点
から、C+Nの含有量上限を0.025%とした。
が多くなるとδフェライトが増加して熱間加工性が損わ
れるので、上限を1.0%と定めた。
る。それとともに、熱間加工性を改善し、高価なNiの
必要量を低減させる点で有用であり、さらに、δフェラ
イトを制御する上でも有効な成分である。ゆえにMn
は、0.7%を超える量を添加する。しかし、過大に添
加するとMs点が低下し、残留オーステナイトが多くな
って、析出硬化処理時の硬度が低下する。そのため、M
n含有量の上限を2.0%とした。
与えるため、少ない方がよい。許容限度として、0.0
4%の値を設定した。
から、これもなるべく低減したい。やはり許容限度とし
て、0.03%の値を設定した。
せるはたらきがあり、重要な元素である。Cuの析出硬
化に与える作用は、3.0%以上の存在において有効で
ある。過剰に添加すると、高温で粒界脆化を生じて熱間
加工性を害するので、5.0%以下とした。
るのに有用な元素である。この効果を確実に得るために
は、2.5%以上含有させる必要がある。過剰に添加す
るとMs点が低下し、残留オーステナイトが多くなって
析出硬化処理時の硬度を低下させるので、4.9%まで
の添加量に止める。
13.0%以上含有させることが必要である。一方でC
rは強力なフェライト生成元素であるから、多量に添加
するとδフェライトの割合が増加し、熱間加工性が損な
われる。16.5%が添加量の上限である。
が、多すぎるとδフェライト量を増加させて、熱間加工
性を低下させる。添加量の限界として、1.0%を定め
た。
あるが、含有量が多すぎるとδフェライトが増加する。
これは、再三述べたように熱間加工性にとって有害であ
るから、Al量を0.010%以下に規制した。
0]%以上であって、0.50%以下、好ましくは0.
40%以下 Nbは、適量が存在することで、必須成分として存在す
るN(およびC)とともにNb(炭)窒化物を生成し
て、結晶粒の粗大化を防止する効果を奏する。これは析
出硬化処理後の靭延性の向上にとって有用なことであ
る。この適量の下限として、C+Nの含有量との関係に
おいて、[−11.43(C+N)+0.60]%以上を
定めた。一方、Nb量が多すぎると、溶体化処理時の硬
度が上昇して冷間加工性が低下することになるので、上
限として0.50%を設けた。好ましい上限は、0.4
0%である。
ばれる1種または2種以上:0.0005〜0.010
0% Ca,Mg,BおよびREM(希土類元素の単独または
複合)は、いずれもステンレス鋼の熱間加工性を向上さ
せるのに有用な元素である。これらのうちの1種または
2種以上を、2種以上の場合は合計量で、0.0005
%以上含有させるとよい。添加量が過大になると、逆に
熱間加工性を低下させるので、合計量で0.0100%
までの添加に止めるのが得策である。
−240 Nieq=Ni+0.5Mn+30(C+N)+0.16C
u Creq=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+21.
4A1 前述したように、C+Nの含有量を少量に規制すること
によって、溶体化処理状態での硬度を低くすることがで
き、それによって冷間加工性を向上させることが可能で
ある。ただし、CもNも、ともにγ相形成元素であり、
C+Nの含有量をあまりに低くすると、δフェライト相
が増加して、熱間加工性を害する結果となる。そこで、
冷間加工性の向上と熱間加工性の低下とのバランスを取
る必要がある。これを規定するのが、上記の式(1)で
ある。この式を満足するように、C+Nおよび他の成分
の量との関係において、NiおよびCrの量を調節する
必要がある。
低下することが見出された。したがって、(Ni+Mn)
/Cuの値が1.50を保つような、Ni量、Mn量お
よびCu量を選択する必要がある。
テンレス鋼を溶製し、インゴットに鋳造した。表1は実
施例の合金成分を示し、表2はその成分間の関係を示
す。表3は比較例の合金成分を示し、表4はその成分間
の関係を示す。各インゴットを1200℃で熱間鍛造し
て、直径20mmφの丸棒とした。鍛造材を、鍛造ままの
状態でキズ割れの有無を調べ、熱間加工性を評価した。
評価は、キズ割れのないものを○、キズ割れのあるもの
を×とし、その結果を、表5(実施例)および表6(比
較例)の「熱間加工性」の欄に示す。
℃に加熱して急冷する溶体化処理を施し、処理後の硬度
を測定した。測定の結果を、表5および表6の「ST硬
度」の欄に示す。
2.5mmの試験片を切り出し、圧縮試験を行って、ε=
1となるときの圧縮荷重を測定した。測定結果を、表5
および表6の「圧縮試験」の欄に示す。あわせて結晶粒
度を測定し、表5および表6の「結晶粒度番号」の欄に
示した。
ち空冷する析出硬化処理を行ない、処理後の硬度を測定
するとともに、引張試験を行なった。測定および試験の
結果は、表5および表6の「時効処理後」に属する「時
効硬度」「引張強さ」「0.2%耐力」「伸び」および
「絞り」の各欄に示す。
に従う合金組成を有するステンレス鋼No.1〜15で
は、溶体化処理状態での硬度が低く、圧縮試験における
圧縮荷重はおよそ900〜940MPa程度であって、
溶体化処理後の冷間加工にとって有利なものとなってい
る。結晶粒度番号はおよそ7〜8前後であって、組織が
微細であることを示しており、析出硬化処理後の状態で
靭延性が高いことを期待できるものであった。
3〜44前後でそろった値になっている。それととも
に、強度、伸びおよび絞りが良好な値を示していて、靭
延性が高いことが確認される。
は、C+Nの含有量が多いため、溶体化処理状態での硬
度がHRC30〜33と高く、圧縮試験の際の圧縮荷重
が大きくなっていて、溶体化処理後の冷間加工性がよく
ないことが明らかである。
め、溶体化処理後の硬度が低く、溶体化処理状態での冷
間加工性はすぐれている。ところが、N量が少ないた
め、結晶粒度がNo.4.2と、組織が粗大化している。
それに起因して、析出硬化処理状態での伸びおよび絞り
が、かなり低い値であって、靭延性において大きく劣る
ことが明らかである。
が少なく、Nを利用してNb(炭)窒化物を生成させ、結
晶粒の粗大化を防止する作用が十分でない。このため、
結晶粒度がNo.4.0と、組織の粗大化が明瞭である。
伸び、絞りとも低い値であって、析出硬化処理後の靭延
性は低い。
ieq−17.7Creqの値が−240よりも小さいた
め、熱間加工性が劣っていた。それゆえ、その後の試験
は行なわなかった。
記した合金組成を有するものであるから、熱間加工性に
すぐれ、溶体化熱処理状態での冷間加工性にすぐれ、か
つ、析出硬化処理状態での靭延性にもすぐれたステンレ
ス鋼である。本発明のステンレス鋼は、従来のSUS6
30鋼(17−4PH鋼)にくらべて、溶体化処理後の
冷間加工性が良好であるため、各種ボルト、シャフト、
シリンダー等の部品への加工を、好適に、かつ高精度で
行なうことが可能である。
んだ1種または2種以上を0.0005〜0.0100
%の範囲で含有させた態様においては、熱間加工性のい
っそうの向上が実現する。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.010%以下、N:
0.010〜0.025%、C+N:0.025%以
下、Si:1.0%以下、Mn:0.7%超過〜2.0
%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、C
u:3.0〜5.0%、Ni:2.5〜4.9%、C
r:13.0〜16.5%、Mo:1.0%以下および
Nb:0.50%以下を含有し、ただし、C+N≦0.
025%、Nb≧−11.43(C+N)+0.60%で
あって、残部Feおよび不純物からなり、 式(1) 10Nieq−17.7Creq≧−240 Nieq=Ni+0.5Mn+30(C+N)+0.16C
u Creq=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+21.
4A1 式(2) (Ni+Mn)/Cu≧1.50 を満足することを特徴とする熱間加工性、冷間加工性、
靭延性にすぐれた析出硬化型ステンレス鋼。 - 【請求項2】 請求項1に記載の合金成分に加えて、さ
らにCa、Mg、BおよびREMのうちから選ばれる1
種または2種以上:0.0005〜0.0100%を含
有する請求項1の析出硬化型ステンレス鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP03410595A JP3491367B2 (ja) | 1995-02-22 | 1995-02-22 | 熱間加工性、冷間加工性、靭延性にすぐれた析出硬化型ステンレス鋼 |
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JPH08225894A JPH08225894A (ja) | 1996-09-03 |
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JP (1) | JP3491367B2 (ja) |
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1995
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