JP3484483B2 - イーストを混ぜた冷蔵生地製品 - Google Patents

イーストを混ぜた冷蔵生地製品

Info

Publication number
JP3484483B2
JP3484483B2 JP52018094A JP52018094A JP3484483B2 JP 3484483 B2 JP3484483 B2 JP 3484483B2 JP 52018094 A JP52018094 A JP 52018094A JP 52018094 A JP52018094 A JP 52018094A JP 3484483 B2 JP3484483 B2 JP 3484483B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yeast
dough
fructose
galactose
fermenting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP52018094A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08509602A (ja
Inventor
ジェイ. ドミンゲス,デビッド
Original Assignee
ザ ピルスバリー カンパニー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=27487537&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JP3484483(B2) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Priority claimed from US08/087,616 external-priority patent/US5492702A/en
Priority claimed from US08/144,236 external-priority patent/US5494686A/en
Application filed by ザ ピルスバリー カンパニー filed Critical ザ ピルスバリー カンパニー
Publication of JPH08509602A publication Critical patent/JPH08509602A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3484483B2 publication Critical patent/JP3484483B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A21BAKING; EDIBLE DOUGHS
    • A21DTREATMENT, e.g. PRESERVATION, OF FLOUR OR DOUGH, e.g. BY ADDITION OF MATERIALS; BAKING; BAKERY PRODUCTS; PRESERVATION THEREOF
    • A21D10/00Batters, dough or mixtures before baking
    • A21D10/02Ready-for-oven doughs
    • A21D10/025Packaged doughs
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A21BAKING; EDIBLE DOUGHS
    • A21DTREATMENT, e.g. PRESERVATION, OF FLOUR OR DOUGH, e.g. BY ADDITION OF MATERIALS; BAKING; BAKERY PRODUCTS; PRESERVATION THEREOF
    • A21D10/00Batters, dough or mixtures before baking
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A21BAKING; EDIBLE DOUGHS
    • A21DTREATMENT, e.g. PRESERVATION, OF FLOUR OR DOUGH, e.g. BY ADDITION OF MATERIALS; BAKING; BAKERY PRODUCTS; PRESERVATION THEREOF
    • A21D8/00Methods for preparing or baking dough
    • A21D8/02Methods for preparing dough; Treating dough prior to baking
    • A21D8/04Methods for preparing dough; Treating dough prior to baking treating dough with microorganisms or enzymes
    • A21D8/047Methods for preparing dough; Treating dough prior to baking treating dough with microorganisms or enzymes with yeasts
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N1/00Microorganisms, e.g. protozoa; Compositions thereof; Processes of propagating, maintaining or preserving microorganisms or compositions thereof; Processes of preparing or isolating a composition containing a microorganism; Culture media therefor
    • C12N1/14Fungi; Culture media therefor
    • C12N1/16Yeasts; Culture media therefor
    • C12N1/18Baker's yeast; Brewer's yeast

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Bakery Products And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Noodles (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、焼いた食品を製造する際に使用するための
冷蔵可能な生地(ドウ,dough)製品に関するものであ
る。特に、本発明は冷蔵温度で長期間保存され得るイー
スト混入(イースト発酵,yeast−leavened)生地を提供
する。
広範囲の冷蔵可能な生地製品は、多種類の異なる焼い
た食品を製造するために消費者にとって現在では利用可
能である。これらの冷蔵された生地はビスケットおよび
パン用の生地からスイートロールやトウモロコシパン製
品用のものに及ぶ。これらの生地製品は、それらが非常
に簡便であり、使用が容易であるので、消費者にかなり
一般的である。上記製品の多くは開封されて取り出さ
れ、そして生地がすくに焼かれ得るように、予備膨化
(発酵)された状態で販売されている。予備膨化された
状態での包装および販売は、消費者の側で、生地を焼く
前に長期間生地を注意深く膨化させる必要性を無くして
いる。
冷蔵可能な生地製品の製造の際には、適当な大きさに
された未膨化生地が個々の容器に入れられる。生地は次
に、例えば生地を高められた温度に保持し、生地に膨張
を起こさせることにより、容器内で膨化される。生地は
約15−20psiの内部正圧が得られるまで膨化を継続する
であろう。ほとんどの上記容器はその内部圧力が約40ps
iを実質的に越えるならば、破壊または爆発するであろ
う。上記製品は少なくとも2週間、望ましくは数カ月
間、生地の品質の顕著な低下または容器破壊を起こす実
質的な可能性なしに、冷蔵温度で貯蔵できることが望ま
しい。
今日の市場での冷蔵可能な生地製品の一つの欠点はこ
れらの生地が一般的にはイーストで発酵され得ないこと
である。イーストが生地中に使用される場合、イースト
細胞は増殖を継続するか、または冷蔵温度でさえも少な
くとも代謝を続けるであろう。それ故に、生地が冷凍状
態で貯蔵されない限り、イーストは貯蔵期間にわたり二
酸化炭素を産生し続ける。生地の全体の貯蔵寿命の間イ
ーストが発酵することを可能にするが、生地がすぐに使
用される場合には上手く使用し得るものの、密閉容器中
に長期間の貯蔵(例えば約2週間またはそれ以上)した
場合、容器内の圧力が急激に高まり、容器を破壊するの
で、上手く使用し得ない。もし、慣用のイースト発酵さ
せた生地が標準的な生地製品容器中に入れられるなら
ば、容器はおよそ2日以内に破損することが予測され
る。また、膨化の所望程度を越えるイーストの持続活性
は生地の官能特性およびレオロジー特性に悪影響を及ぼ
し得、不適当な焼成食品が最終的に製造される。
今日まで、冷蔵可能な生地の製造はイーストを化学膨
張剤、例えばベーキングソーダ等に置き換えなければな
らなかった。そのような化学膨張剤は一般に膨張性の酸
と膨張性の塩基からなり、前記酸部分と塩基部分が反応
して二酸化炭素を発生し、生地に発泡を起こす。上記膨
張剤の主な利点の一つは、反応が予測可能な化学反応に
基づいており、生地を膨張させるために発生される二酸
化炭素の容量を容易に制御できることである。膨張剤の
化学反応が進行し完了すると、二酸化炭素の発生は終了
する。
化学的に膨張させた生地製品は冷蔵温度で長期間保存
され得るけれども、上記生地を焼くことにより得られる
最終の焼成品はイーストを混ぜた(イースト発酵させ
た)生地を用いて製造した製品に比べ極めて劣ってい
る。イースト混入生地から製造される製品は、化学膨張
剤を用いて製造されたものに比べ、優れた味わい、香り
および手触りを有することは広く知られている。商業的
な生地製造者はイースト混入生地に似せる目的のために
のみ添加物をしはしば添加する。例えば、上記製造者は
イーストフレーバー、例えばパスツール処理された不活
性イースト培養物を化学的に膨張させた生地にしばしば
添加する。そのような添加剤を用いても、化学的に膨張
させた生地から製造された焼成品はイースト発酵させた
生地の特徴的な風味や芳香を欠き、そして比較的貧弱な
感触を示し続ける。
冷蔵温度ではなく冷凍温度で生地を保存することによ
りイースト混入生地の保存に関係する問題を解決する試
みもなされた。冷凍されたイースト混入生地は化学的に
膨張された冷蔵生地に比べ明らかに良好である焼成品を
与え得る。冷凍時イーストは不活性になり、それにより
冷蔵温度で継続される二酸化炭素発生に関連する問題が
回避される。
しかしながら、冷凍生地は予備膨化された冷蔵生地製
品ほど便利ではない。そのような冷蔵生地は容器から取
りだしてすぐに焼くことができるが、冷凍生地は焼成に
先立ち解凍しなければならない。また、膨化生地は冷凍
を到底行うことができないので、冷凍生地は一般に解凍
後、そして焼成に先立ち膨化されなければならない。こ
れにより生地の焼成はさらに遅れる。消費者は生地の過
剰膨化を避けるために膨化工程を追跡し、丁度よい時間
に焼くために生地をオーブンに確実に入れる、より多く
の時間を費やさなければならない。上記冷凍生地は冷蔵
生地に比べより多くの注意を必要とするだけでなく、生
地が解凍および膨化されて、所望の時間に焼成品が得ら
れるように前もって十分に計画をたてることを消費者に
要求する。
公開された欧州特許出願(公開欧州特許第0442575号,
1991年8月21日公開)には、ジスト−ブロケードが基質
限定概念を用いる生地組成物を記載している。この開示
によれば、生地はマルトース陰性イースト(マルトース
を発酵できないイースト)で膨化され、そしてその生地
が冷凍される。ジスト−ブロケードは、膨化時間を注意
深く追跡する必要なしに、生地がいつも同じ日に解凍、
膨化および焼成され得ると言明している。しかしなが
ら、ジスト−ブロケードによる上記生地は長期間、例え
ば2週間またはそれ以上、冷蔵温度で保存されるように
は設計されていない。
消費者は生地製品の「新鮮な焼き上がり(fresh−bak
ed)」特性を好むので、多くの生地製造者は冷凍および
冷蔵の両方の形態で予備膨化生地を販売する。「予備膨
化生地」は、例えば生地を高められた温度に暴露するこ
とにより、生地中の膨張剤が生地を所望容量に膨らませ
るのに十分な二酸化炭素を発生させた生地を意味する。
生地を消費者に提供する前に生地を膨化することは、消
費者が生地を焼く前に長期間生地を注意深く膨化させる
必要性を解消する。
冷蔵生地組成物の例はヤング等,米国特許第4381315
号および同第4383336号;およびアトウエル,米国特許
第4526801号に記載されている。冷蔵生地は膨張剤を含
有する生地成分を混合し、場合により容器に生地を入
れ、生地を膨化し、そして次に冷蔵温度、すなわち約0
℃と約12℃との間に生地を保存することにより製造され
る。
冷蔵生地は非常に一般的に保存前に包装され、そして
生地の膨化に先立って詰められてもよく、その場合、生
地は生地の容量が容器を満たし、そしてシールするまで
密閉容器中で膨化される。また、生地は膨化された後に
柔軟なパッケージに包装されてもよく、その場合、シー
ル手段がパッケージに適用され、その中に生地はパッケ
ージを実質的に気密にするように詰められる。この開示
の目的のために、「含有手段」という表現は、以下にお
いて、硬質容器および柔軟性容器の両方を意味するため
に使用されるであろう。
製品や保存温度等に応じて、商業的に製造される冷蔵
生地の最低限の許容し得る貯蔵寿命は約90日と長期であ
り得る。冷蔵温度で、慣用のイーストは二酸化炭素を製
造し続け、生地が保存のためのシールされた含有容器中
に詰められた後でさえも、生地の膨張が継続し、そして
生地成分の反応が継続する。慣用のイーストが冷蔵温度
で二酸化炭素を製造し続けるので、生地の過発酵が起こ
り、生地のレオロジーに不利な変化を生じる。これらの
変化は生地から製造された焼成品または調理品の味、香
り、感触およびその他の官能特性に負の影響を与える。
生地が冷蔵温度で保存のためにシールされた含有手段
中に包装されるならば、慣用のイーストによる継続され
る二酸化炭素製造は含有手段内での圧力の連続的な増加
を引き起こす。最終的に、含有手段内の圧力は該含有手
段が破壊する点まで上昇する。この破壊は慣用のイース
トでは約1週間またはそれ未満の間に起こり得るが、こ
の期間は多くの商業的に製造される冷蔵可能な生地の最
低の供与し得る貯蔵寿命よりかなり短い。
WO−A−9301724号は、冷蔵温度での上記二酸化炭素
の産生を防ぐために、冷蔵可能な生地中に低温感受性イ
ーストの使用を開示している。しかしながら、これは、
生地が保存される温度を製造者がまれにしか制御できな
いので、不十分であることが今では見出されている。従
って、この問題は低温感受性イーストを活性化させるの
に十分な高温で包装された生地の保存、販売の際に生
じ、二酸化炭素の産生や容器の最終的な破壊および内容
物の破損を引き起こす。
多くの市販の生地製造操作において使用される小麦粉
は破壊したデンプンを約5重量%(wt.%)含有する。
アルファ−およびベータ−アミラーゼ(小麦粉に固有)
はそのようなデンプンをマルトース等の糖に変換する。
アミラーゼの作用により製造されるマルトースおよびそ
の他の糖のいくつかはイーストの多くの菌種により代謝
される。
WO−A−9301724号は、「マルトース陰性」または単
に「MAL−」と表記されるマルトースを発酵しないイー
スト菌種の冷蔵可能な生地中への使用を開示している。
該イーストはその他のタイプの糖、例えばショ糖または
デキストロースを通常発酵できる。32℃で生地100グラ
ムあたりCO2約100−200mlが膨化には通常十分である。
生地中の発酵可能な糖の全量は全体の発酵可能な糖供給
量の発酵により産生される二酸化炭素ガスの容量を限定
する試みにおいて調整された。
標準的な螺旋型に巻かれた冷蔵可能な生地容器中に生
地を入れることにより、この生地で製造された生地製品
が適当な内部圧力、例えば約20psi以下を約25日間維持
することが今見出された。しかしながら、約25日後、二
酸化炭素が生地によりもう一度発生され始めた。生地に
おけるこの新たな活性は、約40psiで破壊する傾向を示
すであろう、使用される容器を約50−55日後に破壊させ
るのに十分な二酸化炭素を産生させるのに足りる程であ
る。
明らかに事実上発酵が停止した後、なぜイーストが活
性になったかは結果的に解明されなかった。しかしなが
ら、追加の二酸化炭素の産生およびそれに続く容器の破
壊の原因となると考えられる1つの因子は、生地中に存
在する炭水化物の変化である。上記したように、小麦粉
に固有であるアルファ−およびベータ−アミラーゼは生
地、特に小麦粉中に存在する炭水化物に作用する。時間
が経過して、これらのアミラーゼはイーストにより発酵
されないオリゴ糖、例えばマルトースおよびマルトトリ
オースをイーストにより発酵され得る糖に分解する。従
って、上記生地組成中に使用されるイーストが実際にマ
ルトース陰性であっても、生地の変化する炭水化物プロ
フィールはイーストにより発酵可能である糖を存在させ
得る。このように、生地は二酸化炭素を発生し続け、そ
して容器を破壊させることができる。
従って、MAL−イーストを用いて製造される生地製品
および組成物中の最初のマルトースの限定された量は、
冷蔵温度で、より短期間の保存(約30日またはそれ未満
のオーダーの保存期間)には有用であり得る。そのよう
な生地製品がもっと非常に長い期間保存されるならば、
容器は破損し始めるであろう。30日間の貯蔵寿命はある
用途には適当であるかもしれないけれども、現在の冷蔵
生地製品は冷蔵温度での90日間またはそれ以上の予測貯
蔵寿命を有することが期待されている。従って、本発明
のMAL−実施態様は、規格化された市場、例えば30日間
の予測貯蔵寿命がそれでも適当であると考えられる商店
内のパン屋等に限定される商業的用途を有し、限定され
た商業的適用性を有するにすぎないかもしれない。
従って、この産業では冷蔵温度で長期間保存され得る
イースト混入生地に対する長い間の要望があった。しか
し、今まで、商業的製造業者は、大量の市販品および延
長された貯蔵寿命に適当である冷蔵可能なイースト混入
生地を、そのような製品の経済的可能性が明瞭であるに
もかかわらず、製造および販売することはできなかっ
た。イーストにより連続的な二酸化炭素の発生と関係す
る問題がそのような製品を不可能にしていたことは明ら
かである。
発明の要約 本発明は冷蔵可能なイースト含有生地の製造方法およ
び該生地で製造される生地製品を提供する。別の面にお
いて、本発明はイースト発酵された冷蔵可能な生地組成
物、冷蔵可能な生地を容器中に含む生地製品、および上
記冷蔵可能な生地から製造される焼成品を提供する。本
発明の一つの面によれば、イーストの予め選択された菌
種は粉と水、およびおそらくその他の成分と混合され、
生地を形成する。イーストおよび生地組成物は、生地中
のイーストにより発酵可能な炭水化物の全量が限定され
るように選択される。
一つの好ましい態様において、イーストは生地に使用
される粉に固有の炭水化物を実質的に発酵できず、そし
て非固有の炭水化物、例えばガラクトースが所望容量の
二酸化炭素を製造するために選択された量で生地に添加
される。そのようにすることにより、イーストが発生し
得る二酸化炭素の最大容量を限定することができる。そ
こで、これは、生地の温度が不注意に高められた場合で
さえも、生地のシールされた容器を破壊するのに十分な
二酸化炭素の発生を防止する。
もう一つの好ましい態様において、限定された量での
み本来存在する生地系に固有の選択された糖をイースト
は発酵できる。そのような糖は、生地を膨化するのに必
要なCO2の容量を生成するのに必要なもの以下の量、望
ましくは未満の量で本来存在すべきであり、生地を膨化
させるのに必要な追加の糖は生地組成物に該糖の量を添
加することにより供給される。
一つのそのような態様において、イーストはフルクト
ースを除く、生地に本来の炭水化物を実質的に発酵でき
ない。小麦中のフルクトース濃度は最初0.1重量%(wt.
%)未満のオーダーである。小麦中の二糖類ショ糖をグ
ルコースおよびフルクトース単糖類に分解し得る種々の
酵素の作用により、イースト内のフルクトース濃度は時
間の経過で増加し得る。にもかかわらず、ほとんどの小
麦ベースの生地系中のフルクトースの濃度は生地を適当
に膨化するのに必要な生地100gあたりCO2100−200mlを
発生するのに必要な量より少ない。追加のフルクトース
が膨化の所望程度を得るために生地に添加される。
本発明はまた、得られた生地を耐圧性容器中に入れ、
そして容器内の生地を膨化のために高められた温度に加
熱する追加の工程を含み得る。容器中の生地が一旦膨化
されたら、容器中の生地の温度は冷蔵温度に低下され、
そして生地は長期間冷蔵温度で保存される。この態様の
方法はさらに、生地を容器から取りだし、そしてそれを
焼いて焼成品を製造する工程をさらに含む得る。
本発明の別の面は冷蔵可能なイースト含有生地および
それで製造される生地製品の作成に使用されるディプロ
イド(二倍体)イーストを提供する。
「GAL+」イーストと以下に記載される本発明の上記
面のディプロイドイーストは小麦粉に固有の炭水化物を
実質的に発酵できない。本発明の生地組成物において、
イーストは生地に使用される粉に固有の炭水化物を実質
的に発酵できず、そして非固有の炭水化物、例えばガラ
クトースが所望容量の二酸化炭素を製造するために選択
された量で生地に添加される。そのようにすることによ
り、イーストが発生し得る二酸化炭素の最大容量を限定
することができる。そこで、これは、、生地の温度が不
注意に高められた場合でさえも、生地のシールされた容
器を破壊するのに十分な二酸化炭素の発生を防止する。
本発明のこの面の別の態様によれば、イーストは小麦
粉に固有の炭水化物を実質的に発酵できず、そして低温
感受性である。本明細書で使用されるように、「低温感
受性」イースト(または単に「1ts」イースト)は発酵
可能な基質の存在下、高められた温度で活性であるが、
冷蔵温度では実質的に不活性となる、つまり二酸化炭素
の製造を実質的に停止する。従って、本発明のこの特定
の態様のイーストは「GAL+」および「1ts」の両方であ
ると言及され得る。
本発明に係る方法は、粉、水、ガラクトースおよびGA
L+/1tsまたはディプロイドGAL+イーストを含有する生
地を作成し、そして該生地を冷蔵温度で長期間保存する
ことからなる。この方法はまた、得られた生地を耐圧性
容器中に入れ、そして容器内の生地を膨化のための高め
られた温度に加熱する追加の工程を含み得る。容器中の
生地が一旦膨化されたら、容器中の生地の温度は冷蔵温
度に好ましくは長期間維持される。この態様の方法はさ
らに、生地を容器から取りだし、そしてそれを焼いて焼
成品を製造する工程をさらに含む得る。
本発明のさらに別の面に従って、生地は粉、水および
不活性閾値温度以下の温度で利用可能な基質を発酵し得
るが、不活性閾値温度と実質的に同じか、またはそれ以
上の温度に加熱されるならば、実質的に不活性になるで
あろうイーストを含有する。この不活性閾値温度は室温
より高く、そして生地が調理または焼成され、生地に代
わって焼成品となるであろう温度未満であることが望ま
しい。
本発明のこの面の方法によれば、生地は粉、水および
イーストを混合することにより形成される。この生地組
成物は膨化され、そして次に少なくともイーストの不活
性閾値温度と同程度に高い温度に加熱されて、実質的に
イーストを不活性化しする、すなわち、イーストを事実
上あらゆる温度での発酵を不可能にする。生地は次いで
生地のあらゆるその他の膨化なしに冷蔵温度で保存され
得る。
本発明のこの面はさらに、冷蔵生地組成物中に膨張剤
として使用するのに十分に適している温度感受性イース
トを提供する。このイーストは、例えば偏性好気性菌に
されることにより、イーストがそれより高い温度で実質
的に不活性化される不活性閾値温度を有する。一旦不活
性閾値温度より高く加熱されたら、イーストは実質的に
嫌気的な環境に維持されても事実上あらゆる温度で実質
的に不活性のままであろう。別の態様において、イース
トは過度に高温および過度に低温の両方に感受性であ
る。
限定された量の酸素が周囲中に存在しても、イースト
は、低温に対するその感受性の故に、冷蔵温度で実質的
に不活性のままであろう。
図面の簡単な説明 図1は30℃に維持された生地組成物におけるGAL+イ
ーストに対する二酸化炭素発生速度と時間との関係を示
すグラフである。
図2は図1の試料中に発生した二酸化炭素の全容量を
示す。
図3は生地に添加された非固有の炭水化物の性質にお
いて異なる4種の生地組成物により発生される二酸化炭
素の全容量を示すグラフである。
図4は図3に示した生地に対する二酸化炭素発生の速
度を示す。
図5は2種の化学的に膨張させた生地、一方はGAL+
イーストを含有するもの、他方はそれなしのものに対す
るカン圧力と時間との関係を示すグラフである。
図6および7は組成物中に混合した異なる量の非固有
糖を有する3種の生地試料に対するカン圧力と時間との
関係を示すグラフである。
図8は異なる培地上のD3083およびRD308.3イーストの
増殖を吸光度の関数として示す。
図9は発酵における種々の糖の利用に対する反応経路
を示す、解糖の工程の模式図である。
図10は異なる糖を含有するPG1−/G6PDH−イースト発
酵生地組成物により発生される二酸化炭素の全容量を示
すグラフである。
図11は図10に示された生地に対する二酸化炭素発生の
速度を示す。
図12は2種の生地組成物、一方はフルクトース含有生
地、そして他方はショ糖含有生地に対するカン圧力と時
間の関係を示す。
図13は本発明のディプロイドGAL+イーストで発酵さ
せた生地に対する時間の関数としてカン圧力を示す。
図14は約30℃での時間の関数として本発明のGAL+/1t
sイースト菌種に対するコロニーサイズを示す。
図15は約12℃での時間の関数として本発明のGAL+/1t
sイースト菌種に対するコロニーサイズを示す。
図16は高温培養の後のcdc19細胞の嫌気性増殖を示
す。
好ましい態様の詳細な説明 本発明に従って、生地組成およびその中に使用される
イーストが生地中のイーストにより発酵可能な基質の量
を制御することによりイーストの発酵作用を有効および
制御可能に限定するように選択されて、生地製品は調製
される。ある種の炭水化物を発酵しないイーストの菌種
は当該分野では公知であり、しばしば、イーストの同種
の2つの異なる菌種は同一糖を発酵できない。それ故
に、イーストの菌種は選択された糖のみを発酵できる生
地組成物中で利用され得る。生地組成物中のそれらの糖
の全量を制御することにより、発酵量が制御され得る。
上に説明したように、冷蔵温度でさえも、ほとんどの
イーストは二酸化炭素を発生するであろう。イーストに
より発酵可能な糖が限定されるならば、糖が消費された
とき、二酸化炭素発生が実質的に停止するであろう。従
って、カン詰めする前にある期間生地中の発酵可能な糖
をイーストに代謝させるか、または生地の糖含量を制御
することにより、イーストによる二酸化炭素発生は、生
地の温度に無関係に、ある種の予め決められた容量に一
旦達したら実質的に停止され得る。従って、容器中に発
生される二酸化炭素の全容量は、内圧を高め、そして容
器を破損するのに十分なレベルに達することが防止され
得る。
前に記載したように、冷蔵可能な生地中にMAL−イー
ストの使用の際に遭遇する問題は、マルトースが粉に固
有の酵素によりイーストにより代謝されることにより単
純な糖に分解されるということである。
ほとんどの粉中に存在する糖の大部分はグルコースお
よびフルクトースのいずれか、または両方に分解される
ことによりイーストにより代謝され、上記2種の糖はイ
ーストによりさらに代謝される。本発明は、イーストに
より発酵可能なより小さい単位にイースト中で分解され
る大きい糖の発酵による二酸化炭素の発生の問題を、グ
ルコースを代謝できないイーストの使用により解決する
ことを課題とする。それ故に、このイーストは、より大
きい糖が分解され得るより最小ユニットの一つを発酵で
きない。このようにして、イーストはフルクトースおよ
びその前駆体に実質的に基質限定され、このため、二酸
化炭素産生を大きく限定している。
好ましい態様において、イーストはグルコースおよび
フルクトースの両方を代謝できない。このようにして、
ほとんどの粉およびそれらの副産物に固有の糖を発酵す
る2つの経路がブロックされ、イーストを粉に固有の糖
を発酵不可能にする。二酸化炭素産生は次いで、イース
トにより代謝可能である、粉に固有ではない糖の測定さ
れた添加により注意深く制御され得る。
冷蔵温度での顕著に長い保存のために適当な本発明の
好ましい態様によれば、生地に使用されるイーストの1
つの菌種(または複数の菌種)は粉に固有である炭水化
物を実質的に発酵できない。小麦粉を使用する生地の場
合、これらの固有の炭水化物は糖、例えばマルトース、
ショ糖、グルコース、フルクトースおよびこれらの糖か
ら構成される種々のオリゴ糖を包含する。その他の粉が
使用されるべきであるならば、もちろん、そのような粉
に固有の糖においていくつかの変形があり得る。
そのようなイーストの使用は、生地組成物中に最初に
存在するか、または生地中に最初に存在する炭水化物へ
のアルファ−およびベータ−アミラーゼの作用により生
じる生地中のあらゆる炭水化物をイーストが発酵するこ
とを有効に防止することが見出された。イーストにより
発酵され得る予め決められた量の非固有の炭水化物が生
地に添加され、所望量の膨化を行い得る。基質が消費さ
れたら、イーストの発酵活性は実質的に停止し、さらに
二酸化炭素が発生することが防止され、そして生地の過
発酵が回避されることが明らかである。本発明のこの態
様によれば、生地組成物は破壊または爆発なしに90日以
上の期間保存され得る生地製品を製造するために使用さ
れ得ることが見出された。
本発明の生地においてイーストにより発酵され得る非
固有の炭水化物は粉中に本来生じない事実上あらゆる炭
水化物であり得る。けれども、この炭水化物は好ましく
は糖またはオリゴ糖である。例えば、発酵可能な非固有
の糖はガラクトースまたはラクトース、グルコースおよ
びガラクトースの二糖類であってよい。
一つの特に好ましい態様において、イーストは小麦粉
には固有でないガラクトースを発酵できるが、小麦粉に
固有であるあらゆる糖を実質的に発酵できず、このイー
ストは以下において「ガラクトース陽性」または「GAL
+」イーストと記載される。このGAL+イーストは粉、
水およびガラクトースと混合されて生地を形成する。生
地中のガラクトースの量は、生地が所望の程度以上に膨
化しないようにイーストの活性を限定するために選択さ
れる。上記のように、ほとんどの環境中、32℃で生地10
0グラムあたり二酸化炭素約100−200mlが生地を膨化さ
せるのに十分である。従って、生地組成物中のガラクト
ースの重量%は32℃で生地100グラムあたり二酸化炭素
を約200ml以下発生するように選択されるべきである。
この容量の二酸化炭素を発生するのに必要なガラクトー
スの量は、該量がイーストの異なる菌種によって代わる
ので、個々に決定される必要があろう。
本発明の開示に示されるように、粉に固有である炭水
化物を実質的に発酵できないが、その他の炭水化物を発
酵できるイーストを作成することは、十分に当業者の能
力の範囲内であろう。そのようなイーストは、所望の特
性等を有する適当な菌種を単離する、イースト菌種を交
雑する標準的な方法により行われ得る。これらのタイプ
の共通の技術は例えばシェルマン等によりMethod in Ye
ast Geneticsに記載されており、該文献の技術は参照に
より本明細書に編入される。シェルマン等の文献の第27
3−369頁の“Making Mutants"と表題が付されたセクシ
ョンIIIが特に興味深い。
ロボおよびマイトラはArchives of Biochemistry and
Biophysics 182,639−645(1977),「サッカロミセス
・セレビシアエにおけるグルコースホスホリル化酵素の
物理学的役割」における標準的技術を用いて、S.Cerevi
siaeのヘキソキナーゼ陰性菌種をグルコキナーゼ陰性に
する方法を教示しており、この文献の教示は参照により
本明細書に編入される。その方法によれば、ヘキソキナ
ーゼ陰性菌種は、50mM無グルコース−ガラクトースを含
有するイーストエキス−ペプトン培地(YEP)中のN−
メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジンで突然変
異を誘発され、そしてグルコキナーゼ陰性突然変異体が
YEPガラクトースプレートからYEPグルコースプレートへ
のレプリカプレーティングによりグルコース陰性コロニ
ーとして単離された。独立した遺伝子分析により決定さ
れる突然変異体の遺伝子型はhxk1 hxk2 glk1であり、
hxk1とhxk2がそれぞれP1およびP2ヘキソキナーゼをコー
ドする遺伝子を表し、そしてglk1はグルコキナーゼ合成
のための遺伝子決定因子を表す。
ロボおよびマイトラは本発明に従って使用するための
イーストを製造する適当な一つの方法を教示している
が、その他の方法が当業者には明らかであろう。当業者
はまた、特定の粉に固有の炭水化物を実質的に発酵でき
ないが、ガラクトース以外の非固有の炭水化物を発酵で
きるイーストのその他の菌種が公知方法により製造され
得ることを理解するであろう。
実施例1 共通の生地系に固有である炭水化物を発酵するGAL+
イーストの能力を試験するために、GAL+イーストを含
有する生地組成物が調製された。この生地配合物は小麦
粉870.75g(58.05重量%)、水529.80g(35.32重量
%)、実施例1において使用される小麦グルテンプレブ
レンド58.20g(3.88重量%)、塩11.25g(0.75重量%)
およびイースト28.50g(2.00重量%)を含有していた。
この実験で使用されるイーストはD308.3と表記されるSa
ccharomyces CerevisiaeのGAL+菌種であり、該イース
トの遺伝子型はαhxk1 hxk2 glk1 ade1 trp1 his2
met4だった。このイーストはバークレーのカリフォル
ニア大学の分子および細胞生物学学部にあるドナー・ラ
ボラトリーのイースト遺伝子保存センターから公衆に利
用可能であり、1991年3月15日付けのYGSCのカタログ第
7版に、このイースト菌種は保存番号D308.3で記載され
ている。このイースト菌種はまた、米国メリーランド20
852,ロックビル,パークローンドライブ12301のアメリ
カン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に19
93年3月5日にATCC74211の下に寄託されていた。
固体ガラクトース寒天プレートからのD308.3の単離さ
れたコロニーは、液体イーストエキスペプトン(YEP)
およびガラクトースを含有する6個の50ml培養フラスコ
中に接種するために使用された。試料は約30℃でほぼ20
時間保温され、次いでこれもまたYEPおよびガラクトー
スを含有する6個の1リットルフラスコ試料に接種する
ために使用された。これらの1リットルフラスコは30℃
で約24時間保温され、次に約24℃でほぼ20時間保温され
た。
このイーストは次いで、ソルバル・インストルメンツ
から市販されて利用可能であるGSAロータを用いて集め
られた。GSAロータと共に使用のための試料容器は、試
料、フタおよび容器の全重量が約300gとなるように充填
された。試料容器は2500rpmで20分間回転され、そして
上澄み液はすぐにデカンテーションされた。試料、フタ
および容器の全重量を300gまで上昇させるために十分な
蒸留水が試料容器に添加され、そして容器を回転させ
て、イーストペレットを懸濁液とする。この試料容器は
次に2500rpmで20分間回転され、そして上澄み液は再び
デカンテーションされた。
洗浄したイーストペーストおよび水が一緒にされてス
ラリーを形成させた。このスラリーを卓上ホバルトミキ
サー中でその他の成分と混合した。生地を速度1で30秒
間混合し、次に速度2で約4分ないし約5分間混合し
た。2つの100g試料(図1および2におけるA1およびA
2)および2つの50g試料(図1および2におけるA3およ
びA4)がリソグラフ(登録商標)試験装置内に配置され
た。リソグラフ(登録商標)は試料により発生された気
体、例えば二酸化炭素の容量およびその気体が発生され
る速度を決定するために、シェルドン・マニファクチャ
リング社から市販されて利用可能である。試料を約30℃
で約17時間(1000分)保温した。上記リソグラフ試験の
結果は図1および2に示されている。
図1に見られ得るように、二酸化炭素は上記試料の全
てにおいて最初の40−50分間はかなり急激に発生され、
その後、発生速度はおよそゼロまで漸減した。二酸化炭
素発生の速度はわずかに正の速度と負の速度との間を上
下していたけれども、保温120分後と実験の終点との間
には試料はごくわずか二酸化炭素を発生するか、または
二酸化炭素を発生しなかった。
さらに、二酸化炭素の発生速度は実験の最初に顕著だ
ったけれども、この試料中に発生した二酸化炭素の全容
量が約7ml未満だったことは特記されるべきであり、こ
の結果は図2に最もよく示されている。上記したよう
に、生地を適当に膨化させるために、二酸化炭素約100
〜約200ml/生地100gが必要であると一般に考えられてい
る。しかし、これらの無ガラクトース試料中で発生した
二酸化炭素の容量は上記の限度よりかなり下回ってい
た。気体約7mlがこれらの試料において発生したという
表示は、容器が保温のために加熱された時にリソグラフ
(登録商標)試料容器中のヘッドスペースの膨張に、実
際に、全体でないにしても、主に寄与し得る。換言すれ
ば、この実験における生地試料により容易に感知できる
二酸化炭素は発生されなかったことがほぼ明らかであ
る。
従って、本実施例において使用されるD308.3イースト
はこの生地系に固有の炭水化物を実質的に発酵または別
の言葉でいえば代謝できないと言うことができる。従っ
て、イーストのD308.3菌種は実際にGAL+と表示され
(その用語が本明細書で使用される)、そしてこのイー
ストは本発明における使用のために適当であるイースト
の一つの例を提示することが確信される。しかし、上記
したように当業者はその他のGAL+イースト、並びに本
発明の開示を考慮して、生地中の粉に固有でない炭水化
物のみを発酵できるその他のイーストを作成できる。
実施例2 実施例1で使用されたGAL+イーストの応答性を試験
するために、変化する非固有の炭水化物を有する4種の
異なる生地組成物が調製された。4種の生地の各々は粉
290.25g、水176.60g、塩3.50gおよび実施例1で使用さ
れたD308.3GAL+イースト3.50gを含有していた。4種の
異なる生地の配合は添加されたその他の成分の性質が相
違していた。対照試料において、その他の成分は添加さ
れなかった。第2の試料においてガラクトース5.00gを
含んでいた。第3の試料においてラクトース10.00gが付
与された。そして最後の試料はいくつかの生地において
風味成分として使用され、そして典型的には幾分クラク
トースを含有し、そして微量のガラクトースを含有して
もよい脱脂粉乳(NFDM)20.00gを含んでいた。
実施例1と関連して上記したような方法と実質的に同
様に、イーストペーストを増殖させ、そして集めた。各
試料に対して、洗浄イーストは水でスラリー化し、そし
てこのスラリーを卓上ホバルトミキサー中でその他の成
分に添加した。各試料を次に速度1で約30分間混合し、
次いで速度2で約4分間混合した。生地組成物の各々の
2つの100g試料を混合直後にリソグラフ(登録商標)試
料ジャー中に入れ、そしてリソグラフ(登録商標)に約
28℃でほぼ20時間保持した。図3および4は各試料に対
する発生二酸化炭素の全容量および二酸化炭素発生速度
をそれぞれ示す。
図3および4から見られ得るように、ガラクトースを
含む生地組成物のみが適当容量の二酸化炭素を発生し
た。対照試料、ラクトース含有試料およびNFDMを有する
試料は全て約20時間にわたり二酸化炭素を約10ml発生し
た。さらに、非ガラクトース生地に対して測定された二
酸化炭素発生の実質的に全ては保温の最初の1ないし2
時間で発生された。リソグラフ(登録商標)試料ジャー
中の気体容量におけるこのわずかな変化は、上で説明し
たように、試料ジャーのヘッドスペースの熱膨張に全体
的に起因し得る。従って、非固有のガラクトースを含有
しなかった試料は本試験の間に顕著な量の二酸化炭素を
ほとんど発生しなかった。
この実験の結果は、D308.3イーストがガラクトースを
代謝できるが、生地組成物の粉に固有であるあらゆる炭
水化物を実質的に発酵できないことを示す。また、この
イーストは「ストレートの」ラクトースまたは脱脂粉乳
中のラクトースのいずれかを実質的に発酵できないこと
が明らかである。この実験の間に、ガラクトース含有生
地は二酸化炭素を発生し続けることが明らかであり、こ
れはガラクトースの全てが使用されたわけではないこと
を示す。さらに、20時間の保温の最後に、ガラクトース
生地は100mlをわずかに越える二酸化炭素を発生し、二
酸化炭素発生は実験終了後も継続していたようである。
ガラクトースを含有する生地はガラクトース約1.0重
量%(5.00g/全生地487.35g)だった。この実験の結果
に基づいて、ガラクトース約1重量%は生地100gあたり
望ましい二酸化炭素100−200mlを発生するのに適当であ
るより多いようである。市販の冷蔵生地の包装に通常さ
れているような内容量約250ccの標準的な螺旋状に巻か
れた複合容器を用いる別の実験により、ガラクトース約
0.5重量%ないし約1.0重量%が約10−20psiの内部圧力
を達するために十分な二酸化炭素を発生するのに十分で
あることが確立された。従って、本発明の冷蔵可能な生
地製品の製造の際には、容器中に入れられる生地は好適
には約0.5重量%と約1.0重量%の間のガラクトースを包
含する。
実施例3 ガラクトースが生地に添加されないならば、GAL+イ
ーストの存在が容器の完全な状態に影響を与えるかを調
べるために、D308.3イーストが化学的に膨張させた生地
製品に添加された。D308.3イーストを含有する生地2バ
ッチおよび化学的に膨張させた生地の別の2バッチが調
製された。化学的に膨張させた生地は以下の組成を有し
ていた:粉約1590g(56重量%)、水947g(33.43重量
%)、実施例1の小麦グルテンプレブレンド110g(3.9
重量%)、イーストフレーバー89.2g(3.15重量%)、
グルコノデルタラクトン(GDL)42.5g(1.5重量%)、
ベーキングソーダ32.0g(1.13重量%)、および塩21.3g
(0.75重量%)。イーストを含有する生地の2つのバッ
チは、水947g(33.43重量%)の代わりに水約890g(31.
4重量%)を含み、そしてD308.3イースト約56.7g(2.00
重量%)を含み、非常に類似した組成を有していた。
これらのバッチの各々における水は、マックダフィ混
合ボウル中に粉とグルテンプレブレンドを満たす前に、
最初にフレーバー剤と混合された。イーストを含有する
バッチにおいて、イーストは水でスラリー化されたが、
これは、フレーバー成分がこのスラリーに添加される前
に行われた。各成分を速度1で約30秒混合し、次に速度
2で約5分間混合した。塩および膨張剤(GDLおよびソ
ーダ)を次にこの生地に添加し、そして混合物を速度1
で約30秒間、そして速度2で約2.5分間混合した。
生地の各バッチを厚さ約1/4インチ(約0.64cm)のシ
ート状にし、そしてロールをかけ長い棒状の生地にし
た。棒状の各生地を約210gの一連の試料に分割し、そし
て各試料を内容量約250ccの標準的な螺旋状に巻かれた
複合カン中に密封した。これらの生地製品を次に、容器
中の内部圧が約10−15psiに達するまで約32−35℃で膨
化させた。この膨化の後、生地製品は約4℃の冷蔵貯蔵
に移された。
図5は測定されたカン圧、すなわち容器の内部圧力を
時間の関数としてプロットしている。図5に示され得る
ように、標準的な化学的に膨張された生地を含有する生
地製品と、GAL+イーストを有する化学的に膨張された
生地を含有する生地製品との間に顕著な違いは見られな
かった。
種々のその他の物理的測定が、標準的な化学的に膨張
された生地をイースト混入生地と比較するために異なる
試料に対して行われた。物理的測定の中で、保水性、pH
および糖含量が比較された。生地の試料はまた、約375
゜F(163℃)で約20分間焼成された。得られた焼成品の
比容ならびに外観、香り(アロマ)およびその他の感覚
特性が比較された。GAL+イーストを含有する試料のわ
ずかに小さい比容の他には、上記2つの生地組成物の間
に顕著な違いは見られなかった。
実施例4 生地のガラクトース含量と本発明に係る生地を含有す
る生地製品の得られる内部圧力との関係が試験された。
添加されるガラクトースの量だけが異なるバッチである
4種の異なるバッチが調製された。各生地は小麦粉約87
0.75g(58.05重量%)、水529.80g(35.32重量%)、実
施例1で使用された小麦グルテンプレブレンド58.20g
(3.88重量%)、塩11.25g(0.75重量%)およびD308.3
イースト28.50g(2.00重量%)を含有していた。さら
に、1つのバッチはガラクトース5.92g(0.5重量%)を
含有し、別のものはガラクトース約7.40g(0.63重量
%)を含有し、3のものはガラクトース約8.87g(0.75
重量%)を含有し、そして最後のバッチはガラクトース
約11.83g(1.00重量%)含有していた。
実施例2に詳記したのと実質的に同じ方法でD308.3イ
ーストを増殖させ、そして集めた。ガラクトースを0.5
重量%および1.0重量%含有するバッチを形成する際
に、イーストペーストは1リットルフラスコ中の水およ
びガラクトースと混合され、そしてフラスコ中約30℃で
約1時間保温され、その間フラスコは震とうされた。こ
のスラリーを次いでマックダフィ混合ボウルに添加し、
そしてその他の成分と速度1で約30秒間、続いて速度2
で約7分間混合した。0.63重量%および0.75重量%ガラ
クトースバッチは、イースト、水およびガラクトースが
その他の成分と混合される前に保温されない点でわずか
に異なっていた。代わりに、これら3種の成分は卓上ホ
バート中でスラリー化され、そして速度2で約4分間だ
けドウフックを用いて混合された。
生地が混合された後、生地の各バッチからの2つの50
グラム試料をリソグラフ試料ジャー中入れ、そしてリソ
グラフ中約28−30℃で保温した。実施例3に概説したよ
うに、生地を次にロールにかけ、210グラムの試料に分
割し、そして標準的な冷蔵可能な生地容器中に詰めた。
得られた生地製品を約35℃で約3時間保温し、そして引
き続き約4℃で保存した。
図6および7は試料のカン圧を時間の関数として示
し、各バッチからの試料に対するカン圧は一緒にされて
平均されこれらのプロットを形成する。試料の最終的カ
ン圧はおおよそ生地のガラクトース量に比例している。
ガラクトースを0.63重量%含有する試料は約5−6.5psi
のカン圧を有していたのに対し、0.75重量%の生地は約
9−10.5のカン圧を有し、そして3重量%イーストおよ
び1重量%ガラクトースを有する生地における圧力は16
psiよりわずかに低い最大圧力を生成した。従って、本
発明の容器内の所望の圧力は生地に添加されたガラクト
ースの量の関数として極めて容易に制御され得ることが
明らかであり、ガラクトースが一旦消費されると、生地
は二酸化炭素の生成を実質的に停止するであろう。
実施例5 D308.3イーストは、最終的な焼成品がわずかにくすん
だ白色になるという、該イーストを含有する焼成生地の
感覚的な外観に悪影響をおそらく及ぼした。生地のその
他の官能的品質の全ては、消費者におそらくより訴える
であろうこのわずかな変色を示さない普通の生地だっ
た。生地の変色が、アデニンを作れず、培地にアデニン
を補足せずに増殖した際に桃色または赤色のわずかな変
色をイーストが引き起こすD308.3イーストにおそらく起
因することが決定された。イーストのこの変色は該イー
ストに対して(ヒトに対してではなく)毒性である代謝
物の構築によるものであると推定される。
RD308.3イーストと表記される、代謝のためにアデニ
ンを要求しないD308.3イーストの自発性復帰変異株が単
離された。まず、D308.3イーストの濃厚ペーストが、実
施例1に概説したように、ローター中イーストを遠心分
離することにより形成された。このイーストペーストを
次にリン酸カリウム一塩基性緩衝液(蒸留水1リットル
にKH2PO4を約43mg添加,NaOHでpHを約7.2に調整)で希釈
し、そして「アデニン欠損」(ADO)培地、すなわち補
足のアデニンを含有しない培地上に約1×107コロニー
形成単位(CFU)/mlの濃度で塗布した。ADO培地は蒸留
水1リットルあたりそれぞれおよそ:アミノ酸を含まな
いバクトイースト窒素塩基6.7g,ガラクトース20g,およ
びバクトアガー20g,アデニン,アスパラギン,アスパラ
ギン酸,システイン,グルタミン,グルタミン酸,グリ
シン,ヒスチジン,イノシトール,イソロイシン,ロイ
シン,リジン,メチオニン,パラ−アミノ安息香酸,フ
ェニルアラニン,プロリン,セリン,トレオニン,トリ
プトファン,チロシン,ウラシルおよびバリンを含有す
る「ドロップアウト(欠損)ミックス」2g含有してい
た。(実質的に同じ配合はMethod in Yeast Genetics,A
Laboratory Course Manual(1990),179−180頁の付録
Aにローズ等により教示されており、該文献は参照によ
り本明細書に編入されるが、その配合はガラクトースで
なくグルコースを使用している。) ADOプレートを約25℃でほぼ4日間保温し、そしてア
デニンを要求しなかったコロニーが単離された。これら
のコロニーの同定は、非復帰変異株が色調において桃色
または赤色状となる傾向があり、一方復帰変異コロニー
は白色状であるという事実により大きく単純化された。
単離されたコロニーは次にもう一度新鮮なADO培地上に
プレーティングされ、そして実質的に同一条件で保温さ
れた。イーストの復帰変異株のコロニーは、第1回目の
単離において大まかに行われたあらゆる菌株からもう一
度単離され、そしてプレーティングおよび保温が最後に
もう一度繰り返された。本発明の開示を考慮してそのよ
うなイーストを当業者は容易に作成できると確信するけ
れども、RD308.3イーストの得られた菌株はATCCに1993
年3月5日に受託番号ATCC74212の下に寄託され、そし
てATCCから一般に利用可能である。
2つの試料が調製された。一方は元のD308.3イースト
を含有する試料であり、他方はRD308.3イーストを含有
する試料であった。これらの試料は、所望のイーストの
単離されたコロニー(約1白金餌)を、YEP/ガラクトー
ス(蒸留水1リットルあたりバクトイーストエキス約10
g,バクトペプトン20g,およびガラクトース約20gを含有
する)約5mlと混合し、そして約30℃で約12−15時間保
温することにより調製された。(YEP/ガラクトース培地
の配合はその配合におけるグルコースが本培地において
ガラクトースに置換されていることを除いて、上記のMe
thod in Yeast Genetics,A Laboratory Course Manual
(1990)の付録Aの177頁に教示されている。)滴定の
結果から、各菌株に対して約48±2×105CFU/mlの密度
であることがわかった。得られた試料の各々に対して、
試料約100μlが3つに分けられた培地5mlに添加され
た。1つの培地はYEPのみを含有し、もう1つのものはY
EPとグルコースを含有し、そして第3のものはYEPとガ
ラクトースを含有する。
得られた試料の吸光度が経時的に測定され、そして図
8に示されている。D308.3およびRD308.3イーストの増
殖の様子は上記3つの培地の全てに対して実質的に同じ
であることがわかった。さらに、これらイーストの両方
はガラクトースを容易に代謝できるが、YEPまたはYEP/
グルコース上ではわずかしか増殖しないことがわかる。
D308.3株およびRD308.3株がYEP単独上よりもYEP/グルコ
ース上でわずかに増殖が少ないことを記載することは興
味深い。これはさらに、これらのイーストが実質的にグ
ルコースを代謝できないことを示す。
D308.3株およびRD308.3株に対する増殖補足物として
の栄養要求マーカー、アデニン、ヒスチジン、メチオニ
ンおよびトリプトファンが標準的方法により比較され
た。D308.3イーストは上記増殖補足物の4種全てが存在
しないならば、ガラクトース最小培地上で増殖できない
が、RD308.3イーストはヒスチジン、メチオニンおよび
トリプトファンが添加されていさえすれば増殖すること
ができた。
従って、上記2種の菌株の栄養要求マーカーの間に見
られた唯一の顕著な相違は、D308.3イーストはアデニン
補足を要求するが、RD308.3イーストは要求しないとい
うことだった。このように、RD308.3イーストは、生地
に添加された場合にD308.3イーストに関連して上記した
ように実質的にふるまうであろうが、D308.3イーストを
含有する生地に伴う焼成品のわずかな変色が実質的に解
消されるであろう。
図9は解糖の工程を模式的に示している。この分野で
はよく知られているように、種々の糖が解糖により分解
され、解糖を解してピルビン酸となり、そして得られる
ピルビン酸は嫌気性環境における発酵により二酸化炭素
を生成するためにイーストにより利用され得る。
図9に模式的に示したように、グルコースはヘキソキ
ナーゼ(HXK)またはグルコキナーゼ(GLK)のいずれか
によりグルコース6−ホスフェートに変換され得る。こ
のグルコース6−ホスフェートは次いで2つの経路の1
つによりフルクトース6−ホスフェートに変換され得
る。通常の解糖経路において、グルコース6−ホスフェ
ートはホスホグルコイソメラーゼの作用によりフルクト
ース6−ホスフェートに変換される。
グルコース6−ホスフェートのフルクトース6−ホス
フェートへの変換のための別の経路において、グルコー
ス6−ホスフェートはまず6−ホスホグルコノラクトン
にツビッシェンフェルメント(ZWF)としても知られる
グルコース6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(G6PD
H)の作用により変換される。ペントースホスフェート
変換とも呼ばれるペントース五リン酸経路を介し、上記
6−ホスホグルコノラクトンはフルクトース6−ホスフ
ェートに変換され得る。
イーストが生地系に固有のあらゆる糖を実質的に発酵
できない上記態様において、イースト突然変異体はヘキ
ソキナーゼ(HXK)またはグルコキナーゼ(GLK)のいず
れかを実質的に生成できなかった。図9Aの模式図からわ
かるように、これはグルコースまたはフルクトースがフ
ルクトース6−ホスフェートに変換されるのを防止して
いる。イーストは実質的にグルコースまたはフルクトー
スがフルクトース6−ホスフェートに変換できないの
で、グルコースまたはフルクトースは一般にピルビン酸
に変換され得ず、そのためにイーストにより有効に利用
されてCO2を生成できない。
図9Aの模式図からわかるように、ガラクトースはガラ
クトキナーゼの作用によりグルコース1−ホスフェート
に変換され得る。このグルコース1−ホスフェートは次
にホスホグルコムターゼの作用を介しグルコース6−ホ
スフェートに変換され得る。このグルコース6−ホスフ
ェートはフルクトース6−ホスフェートに変換され得、
そしてその後上記のようにホスホグルコイソメラーゼ
(PGI)またはグルコース6−ホスフェートデヒドロゲ
ナーゼ(G6PDH)のいずれかによりピルビン酸に変換さ
れ得る。従って、上記態様におけるイーストはガラクト
キナーゼの作用を介してガラクトースを利用できるが、
グルコースおよびフルクトースの解糖の経路はヘキソキ
ナーゼおよびグルコキナーゼの欠損により利用できな
い。
上記のように、別の態様において、本発明は非固有の
糖を利用しないが、生地系に固有であるが、限られた量
でのみ存在する糖を代わりに発酵する。本発明の一つの
特定の好ましい態様において、固有の糖はフルクトース
である。フルクトースは小麦粉に通常存在するが、0.1
重量%未満の濃度であり、0.02−0.08重量%のオーダー
の濃度がほとんどの小麦粉について一般的である。小麦
粉が水およびイーストと一旦混合されると、この比較的
低濃度のフルクトースはさらに希釈されるであろう。ハ
プロイドイーストで発酵された生地は生地約100gを膨化
させるのに必要なCO1100−200mlを発生するために、通
常少なくとも約1.0重量%の発酵可能な基質を要求する
ので、固有のフルクトースの量は生地の適当な膨化に必
要なものより少ないであろう。
本発明によれば、フルクトース6−ホスフェートを生
成するための選択された糖のみをホスホリル化できるイ
ーストが粉および水と混合されて生地組成物を形成して
いる。一つの好ましい態様において、イーストはフルク
トースを発酵できるが、顕著な量で粉中に本来生じるあ
らゆる糖を実質的に発酵できない。フルクトースの追加
の量が生地組成物に添加されて、イーストのための追加
の発酵可能な基質を与える。生地に添加されるフルクト
ースの量は約30℃で測定される場合、イーストが約100
−200mlCO2/生地100gを生成するのに充分であるべきで
ある。上記量の二酸化炭素を生成するのに必要なフルク
トースの量は、所望程度の膨化を得るためにイーストの
異なる菌株に対してそれぞれ決定されるべきである。
上記および図9に示したように、フルクトースはホス
ホリル化を介してフルクトース6−ホスフェートに変換
されるためにヘキソキナーゼを必要とする。従って、本
発明に従って使用されるイーストはヘキソキナーゼを生
成できなければならない。しかしながら、ヘキソキナー
ゼはまた、グルコースを分解してグルコース6−ホスフ
ェートとし、これは次にPGIまたはG6PDHによりフルクト
ースに変換され得る。本発明のイーストをグルコースで
はなくフルクトースを利用可能とするために、フルクト
ース6−ホスフェートへのグルコース6−ホスフェート
の変換のための2つの経路がブロックされた。
図9Bに模式的に示されるように、これは、ホスホグル
コイソメラーゼ陰性(「PGI−」)およびグルコース6
−ホスフェートデヒドロゲナーゼ陰性(「G6PDH−」で
あるイースト、すなわちPGIおよびG6PDHを欠くイースト
を用いることにより本発明に従って達成される。そのよ
うなイーストはPGIまたはG6PDHのいずれかを生成できな
いので、グルコース6−ホスフェートをフルクトース6
−ホスフェートにホスホリル化により変換することによ
りグルコース6−ホスフェートを実質的に利用できな
い。従って、グルコースはヘキソキナーゼまたはグルコ
キナーゼの作用によりグルコース6−ホスフェートに変
換されても、解糖の工程は実質的にその点でブロックさ
れ、そしてグルコースはピルビン酸に変換さ得ない。
図9Bに模式的に示されるように、これは解糖工程を介
して1つの経路のみを発酵するが、フルクトースのフル
クトース6−ホスフェートへのヘキソキナーゼによる変
換である。従って、本発明の生地中のフルクトースの量
は発生される二酸化炭素の容量を決定するであろう。
本発明の一つの態様によれば、PGI−およびG6PDH−で
あるイーストは粉、水および生地の所望程度の膨化を与
えるのに十分な量のフルクトースと混合される。生地に
添加されるフルクトースの量は、上記したように、生地
の膨化に必要と通常考えられる、100−200mlCO2/生地10
0gの容量を発生するために最適に選択される。生地に添
加されるフルクトースの正確な量は、使用されるイース
トの特定菌株および粉中の固有のフルクトースの量等の
多くの因子に依存するであろう。従って、当該生地組成
物に添加されるフルクトースの量は異なる生地配合に対
して個々に決定されるべきである。しかしながら、一旦
適当な配合が当該組成物に対して決定されたら、発生さ
れる二酸化炭素の容量は生地に添加されるフルクトース
の量の関数として予測可能に変えられ得る。
PGI−/G6PDH−イーストは現在市販されていないけれ
ども、当業者は公知技術、例えばシェルマン等,同上に
概説されている方法を用いてそのようなイーストを作成
できるであろう。上記イーストの作成において、PGI−
イーストをG6PDH−イーストと公知技術により交雑する
ことができる。
2つのイーストが一旦交雑され、そして胞子形成され
てハプロイド株が得られたら、その菌株はそれらが実際
にPGI−/G6PDH−であること、すなわち、それらがホス
ホグルコースイソメラーゼを実質的に持たず、そしてグ
ルコース6−ホスフェート活性を実質的に持たないこと
を確認するために試験されるべきである。イーストのPG
I−/G6PDH−性が一旦確認されたら(例えばグルコース
培地上での実質的ゼロ増殖を確認することにより)、そ
のイーストは本発明の生地を作成するために使用され得
る。例えば本発明のPGI−/G6PDH−イーストは下記のよ
うにして作成される。
実施例6 多くの推定的PGI−イースト株および多くの推定的G6P
DH−イースト株が一般に利用可能な供給者から得られ
た。この実験において、Saccharomyces cerevisiaeイー
ストの以下の菌株が使用された: YM3269イーストの遺伝子型はイーストがZWF、すなわ
ちグルコース6−ホスフェート(G6PDH)を欠くことを
示す表記zwf1を含む。イーストの最初の3種の菌株は上
記のUCバークレーにあるYGSCから全て入手し、最後の菌
株(YM3269)は米国ミズーリ州セントルイスにあるワシ
ントン・ユニバーシティ・スクール・オブ・メディシン
の遺伝学部のエム.ジョンストン博士から入手した。
特定のイースト菌株が本実験のために選択されたけれ
ども、イーストのその他のPGI−およびG6PDH−菌株を選
択および発見することは十分に当業者の能力の範囲内で
ある。例えば「イーストにおけるグルコース6−ホスフ
ェートデヒドロゲナーゼのための構造遺伝子の同定,不
活性化は有機硫黄に対する栄養要求を導く」,The EMBO
Journal,vol.10 no.3,pp.547−553(1991)。この文献
中の技術は参照により本明細書に編入される。トーマス
等はS.cerevisiaeのMET19遺伝子の欠損が、該MET19遺伝
子がイーストからのグルコース6−ホスフェートデヒド
ロゲナーゼをコードしているので、そのようなイースト
がG6PDH−となることを引き起こすであろうことを教示
している。トーマス等はまた、そのような欠損がその他
のイースト菌株にクローン化され得る方法を記載してい
る。
上記イーストの各々の異なる基質を利用する能力が、
多くの異なる培地の各々の試料に各イーストの試料を接
種し、そして試料の吸光度を経時的に25℃で測定するこ
とにより試験された。異なる培地が塩基として液体YEP
を全て用い、そして培地への糖の添加を変えた。1つの
培地は追加の基質を含有せず、第2のものはグルコース
を含有し、第3のものはフルクトースを含有し、第4の
ものはショ糖を含有し、そして第5のものはマルトース
を含有する。イーストが異なる培地上での増殖する能力
を試験するこの方法はこの分野では十分に公知であり、
そしてここでさらに詳細に議論する必要はない。
そのような公知試験プロトコルを用いることにより、
N543−9Dイーストがフルクトース、ショ糖およびグルコ
ース上で増殖し、マルトース上で増殖しないことが決定
された。このイーストがグルコース上で増殖する能力
は、報告されたように、実際にPGI−でないことを示
す。
9520T4Cイースト株はまた、フルクトースおよびショ
糖上で容易に増殖するが、マルトース上では少ししか増
殖せず、そしてグルコース上で最初増殖し得なかった。
しかし、液体グルコース培地中での約6日間の保温の
後、この菌株はグルコース上での増殖に順応した。この
菌株はほとんど少なくとも部分的にPGI−であるが、該
イーストはペントースホスフェート経路(図9に関連し
て上記した)を介してグルコースを変換することにより
グルコースを処理し得るか、またはPGI−突然変異が
「不完全(leaky,リーキー)」であり得る、すなわちPG
Iが十分に不活性化されていないと推測される。
YM3269株はグルコース、フルクトースおよびショ糖上
で容易に増殖できたが、該イーストはマルトース上での
増殖が困難であるようだった。図9に示されるように、
グルコース6−ホスフェートはG6PDHの欠失によりペン
トースホスフェート経路の不活性化が起こされていても
通常の解糖経路を介して処理され得るので、G6PDHの欠
失にもかかわらず、イーストはグルコース、フルクトー
スおよびショ糖を使用できると予期される。
N548−8Aイーストはグルコース、フルクトースおよび
ショ糖上で徐々に増殖でき、そしてマルトース上では一
般に増殖できなかった。これは、このイーストが「不完
全な」ホスホグルコキナーゼ(PGK)変異を有するとい
う文献からの理解と一致する。
従って、YM3269イーストは明らかにG6PDH陰性であ
り、そして9520T4CイーストはPGI陰性であることが明ら
かである。このようにして、これら2つのイースト菌株
はPGI−/G6PDH−ハプロイドを得るために選択された。
所望のハプロイドを作成するためにこれらの2つの菌株
を交雑する際に、プロトコルはMethod in Yeast Geneti
cs,A Laboratory Course Manual,コールド・スプリング
・ハーバー研究所出版部,pp.53−59(1990)から誘導さ
れ、この文献の教示は参照により本明細書に編入され
る。
この方法によれば、YM3269イーストは、滅菌ループを
用いて分離YEP+フルクトースプレート上にプレーティ
ングされて、それら各プレート上に菌株を約7mm離した
一連の平行線に適用した。これらのプレートは約30℃で
ほぼ1日間保温された。
G6PDH−YM3269株の押圧はレプリカプレートパッド上
に行われた。この押圧はアデニン、ヒスチジン、メチオ
ニンおよびウラシルを補足したYEP+フルクトース培地
(バクトイーストエキス約1重量%,バクトペプトン約
2重量%,バクトアガー約2重量%,およびフルクトー
ス約2重量%,バランスは蒸留水)を含む新鮮なプレー
ト上に押しつけられた。新鮮なレプリカプレートパッド
を用いて9520T4C PGI−株の押圧が行われた。第2のレ
プリカパッドは前の押圧のために使用されたのと同じYE
P+フルクトースプレート上であるが、第1の押圧に対
してほぼ垂直な方向に押しつけられ、チェッカーボート
に類似するイースト菌株のパターンを得た。この2重に
押圧されたYEP+フルクトースプレートはほぼ30℃で一
晩(すなち約12−15時間)保温された。
このようにして調製されたYEP+フルクトースプレー
トは、アデニン、ヒスチジン、メチオニンおよびウラシ
ルを含有するフルクトース最小培地上に押圧された。フ
ルクトース最小培地は蒸留水約1リットル中にアミノ酸
なしのバクトイースト窒素塩基約6.7g、バクトアガー約
20gおよびフルクトース約20gを含有し、アデニン、ヒス
チジン、メチオニンおよびウラシルはこの配合に水溶液
の形態で添加された。フルクトースの代わりにデキスト
ロースを利用する上記最小培地、ならびに補足物の配合
はMethod in Yeast Genetics,A Laboratory Course Man
ual,コールド・スプリング・ハーバー研究所出版部,pp.
178−179(1990)から誘導され、この文献の教示は参照
により本明細書に編入される。
これらのフルクトース最小培地プレートは約30℃でほ
ぼ2日間保温された。「チェッカーボード」パターンの
交点での増殖が測定され、そして新鮮なフルクトース最
小培地プレート上にプレーティングされてハプロイドコ
ロニーからディプロイド(交雑)コロニーが単離され
る。フルクトース最小培地プレート上に単離されたディ
プロイドコロニーが胞子形成培地のプレート上に縞状に
塗布され、そして約25℃で約4−5日間保温する。胞子
形成培地は酢酸カリウム約10g(1重量%)、バクトイ
ーストエキス約1.0g(0.1重量%)、フルクトース約0.5
g(0.05重量%)、バクトアガー約20g(2.0重量%)を
含有し、バランスは蒸留水約1000mlである。
イースト細胞1白金餌を胞子形成プレートから採取
し、そしてエッペンドルフ(登録商標)微量遠心チュー
ブ中の蒸留水約300マイクロリットルおよびグルスラー
ゼ15マイクロリットルと混ぜた。この溶液はボルテック
スにより混合され、そしてほぼ30℃で約30分間保温し
た。保温した試料は短時間超音波処理し、胞子クラスタ
ーを分離した。約20分以内に、超音波処理試料の約1
0-4、10-5、および10-6の連続希釈がYEP+フルクトース
プレート上にプレーティングされた。
これらの連続希釈は次に、「イースト遺伝子および分
子生物学へのガイド」,グスリエおよびフィンク編,Met
hods of Enzymology,vol.194,pp.146−147(1991)から
適合させた方法でエチルエーテル雰囲気に暴露された。
上記文献の技術は参照により本明細書に編入される。こ
の方法において、4mm×4mm片の濾紙が連続希釈の1つを
含む各ペトリ皿の逆さにしたフタ内に入れられた。換気
設備内でエチルエーテル0.75mlが各濾紙に添加され、そ
してフタおよび希釈物がガラスチャンバー内にエチルエ
ーテル10mlを含有するビーカーと共に置かれて、チャン
バー内を高められた蒸気圧に維持した。
チャンバーを密封し、そして試料を室温で約15分間保
温し、その終了時点でエチルエーテル0.75mlを各濾紙片
に添加した。これらの試料を再びガラスチャンバー内室
温で約15分間保温し、次いで試料はチャンバーから取り
出され、そして各試料のフタを少し開いて開放大気に約
30分間放置した。
10-4、10-5、および10-6希釈プレートの各々から、お
よびYM3269と9520T4Cの各々の親株からの試料から単離
されたコロニーはYEP+フルクトースプレート上に格子
状にプレーティングし、そして約25℃でほぼ24時間保温
した。これちらの試料の各々を次にYEP+フルクトース
の1つのプレーとYEP+グルコースの1つのプレートト
上にレプリカプレーティングした。これらのプレートを
約30℃で約1−2日間保温して、単離された推定上のYM
3269×9520T4C菌株のどれがフルクトース富化培地上に
増殖するが、グルコース含有培地では増殖しないかを決
定した。
YEP+フルクトース5ml容量にイースト1白金餌を接種
することにより、各単離された株の増殖速度が次に評価
された。YM3269および9520T4C親株の各々に対する対照
試料もまた、同様の培地に親イースト1白金餌を接種す
ることにより調製された。これらの試料は約30℃で約24
時間保温され、そして各々得られたイーストの100マイ
クロリットル試料がYEP、YEP+フルクトースおよびYEP
+グルコースの別々の5ml試料に、各単離された菌株お
よび親株の各々から調製された3種の試料の1組を接種
するために使用された。各試料の吸光度が600nmで測定
され、そして試料は約25℃で約2週間保温され、吸光度
測定が各試料に対して1週間に約2回行われた。
推定上のYM3269×9520T4Cハプロイド菌株のほぼ200個
のコロニーが最初に「チェッカーボード」プレーティン
グから得られた。これら200個のコロニーのうち47個が
フルクトース培地上で増殖するが、YEPまたはYEP+グル
コース培地上で保温の最初の段階では実質的に増殖でき
なかったことが見出された。しかし、上記したように、
9520T4C親株は保温約6日後にグルコース培地に順応す
ることが見出された。グルコース培地中で最初増殖しな
かった47株のうち、15株以外の全てが親株と同様にグル
コースに適合する能力を示した。従って、200個の最初
の単離されたコロニーのうち15株のみがフルクトース上
で増殖できるがグルコース上増殖できない、実際にPGI
−/G6PDH−であると評価された。これらの15個のコロニ
ーはPGI−/G6PDH−1ないしPGI−/G6PDH−15と表記され
る。
この実験的な実施例はそれ故に、本発明において使用
され得るようなイースト15コロニーを容易に提供してい
る。この実験的な実施例は本発明のイーストを作成する
直接的な方法を説明しているけれども、そのようなイー
ストの作成のための上記方法の変形またはその他の方法
が当業者には明らかであろう。
PGI−/G6PDH−1はATCCに1993年7月2日に受託番号A
TCC74230の下に寄託された。この菌株は本発明に係る適
当なイースト菌株の一例として単に寄託された。15の単
離されたPGI−/G6PDH−菌株の1つまたはそれ以上がほ
ぼ同様に作用し、そしてイーストのその他の菌株は本発
明の開示に従って当業者により容易に作成され得ること
は理解されるべきである。
本発明のその他の態様によれば、本発明のそのような
イーストは生地組成物に混入される。この態様によれ
ば、本発明のイーストは粉、水およびイーストにより発
酵な基質と混合される。イーストにより発酵可能な基質
は生地系に本来あるものであってよいが、生地中のその
ような生地の量は生地100gあたりCO2200mlを生成するの
に必要なものより多くないべきであり、そして実質的に
その量未満であることが望ましい。本明細書で使用され
るように、基質はそれが粉に固有であるか、または粉中
に最初に存在するその他の炭水化物への粉中の酵素の作
用により時を経て生成されるならば、生地中に本来生じ
ると記載される。
例えば、フルクトースは小麦中に本来生じ、そして小
麦粉中に約0.02重量%と約0.08重量%との間で一般に含
まれる。そのようなフルクトースは粉中に天然の状態で
存在するので粉に固有であると記載され得る。粉はま
た、グルコースとフルクトースの二糖類であるショ糖を
含有してもよく、そしてショ糖は通常生じる酵素の作用
によりその構成単糖類に分解され得、時を経て生地中に
追加のフルクトースを生じる。ショ糖の濃度はほとんど
の小麦において一般に約0.2重量%のオーダーであり、
もし完全に分解されれば、粉中の最初の0.02−0.08重量
%フルクトースに対して約0.1重量%の追加のフルクト
ースを生じるであろう。また、種々の小麦粉のオリゴ糖
(例えばグルコフルクトース)は種々の量のフルクトー
スを含有し、これは時を経て小麦粉生地系中のフルクト
ースの全量におそらく寄与するであろう。本来のフルク
トースおよび本来のショ糖やその他の本来のオリゴ糖の
分解により生成されるフルクトースの両方が本明細書に
おいて「本来生じる」ものとして、その用語が使用され
ると理解されたい。
フルクトースの例を繰り返すと、ほとんどの小麦粉中
の全体の本来生じるフルクトースは、ショ糖がグルコー
スとフルクトースに完全に分解された場合であっても、
約0.2重量%以下であろう。粉が水およびその他の生地
成分と混合される時までには、生地組成物中の本来生じ
るフルクトースの重量%は生地の約0.12重量%未満、し
ばしばそのオーダーであろう。しかしながら、発酵可能
な基質1重量%のオーダー以上の濃度が生地の適度な膨
化に必要な100−200mlCO2/生地100gを発生するために通
常必要である。従って、本来生じるフルクトースは実質
的に、粉で製造される生地を少なく膨化するのに必要と
されることが予期されるものより実質的に少ない。
それ故に、特にイーストが小麦粉と共に使用される場
合に、フルクトースは本発明のイーストによる発酵可能
な基質として機能する。他方、本来生じるグルコースは
冷蔵小麦粉生地中の比較的低い濃度(例えば約0.2重量
%のオーダーにある固有濃度)で最初存在し、時を経て
約90日の冷蔵期間の終わりには1重量%またはそれ以上
まで濃度が増加するであろう。従って、小麦粉生地中に
「本来生じる」グルコースは生地を適当に膨化するのに
必要なものより多くなり得る。
本来生じるグルコースの量を限定するために小麦をさ
らに処理せずに、製品の予期される90日の貯蔵寿命の間
に生地系中に生成されるグルコースの追加量は、生地の
適当な膨化のために望ましい100−200mlCO2/生地100gよ
り多く十分に発生させるであろう。さらに、生地が標準
的容器中で膨化される場合、膨化の間の生地の膨張は容
器中に最初に存在する空気を容器から追い出し(フラッ
シュし)、そして容器を実質的に密封するために使用さ
れる。小麦粉中の固有のグルコースの量は一般に、今日
の市販用途にある標準的な容器を適度にフラッシュおよ
び密封するために十分ではないだろう。
不適当なフラッシュおよび密封はある量の空気を容器
中に残し、そしておそらくそれが密封される前に容器中
に入るであろう。容器中の顕著な酸素含量は生地に多く
の悪影響、例えば生地の灰色化や有害バクテリアの増殖
の促進を与え得る。従って、固有のグルコースは生地包
装において望ましい15−20psi内圧を生成するには不十
分であり得るが、全体の本来生じるグルコースから生地
中に発生されるCO2の全容量は所望の容量を十分に越え
ることができる。従って、グルコースは本発明のイース
ト発酵生地のための発酵可能なな基質の良好な候補では
ないだろう。
生地を膨化するのに必要な量以下の、本来生じる量で
生地中に存在する基質(ほとんどの場合が糖)のみを発
酵できるイーストを利用することにより、イーストが発
生し得る二酸化炭素の全容量もまた制限されるであろ
う。従って、生地中の発酵可能な基質の濃度を選択する
ことにより、そして本発明のイーストを使用することに
より、イーストでの生地の膨化は市販基準に制御され得
る。このことは上記したように、生地が収容される容器
を破壊せずに、生地の延長された期間、例えば90日以上
のオーダーの保存を可能にすることにおいて重要であ
る。
実施例7 実施例6で作成されたイーストが生地組成物を膨化
し、そして長期冷蔵保存で生き残る能力を試験するため
に、そのようなイーストは粉および水と混合され、生地
を形成した。特にイースト菌株PGI−/G6PDH−1(ATCC
受託番号ATCC74230)が4つの異なる生地組成物中に使
用された。各生地組成物はおよそ以下のものを含有して
いた:小麦粉428.3g(57.7重量%),蒸留水259.7g(3
5.0重量%),実施例1に示したものと実質的に同一な
小麦グルテンプレブレンド26.5g(3.56重量%),塩5.6
3g(0.76重量%)およびPGI−/G6PDH−1イースト15.0g
(2.02重量%)。4つの生地組成物は生地に添加される
基質の量および種類において異なっていた。第1の組成
物は糖を添加せず、第2のものはフルクトースを約7.5g
(1.0重量%)含有し、第3のものはグルコースを約7.5
g(1.0重量%)含有し、そして第4のものはショ糖を約
7.5g(1.0重量%)含有していた。
PGI−/G6PDH−1イーストを水および糖とスラリー化
し、必要ならばこのスラリーを残りの成分と卓上ホバー
トミキサーで混合した。生地は速度1で約30秒間、続い
て速度2で約4分間混合した。
生地が混合された後、各生地組成物からの2つの試料
100gをリソグラフ(登録商標)試料ジャー中に入れた。
これらの試料ジャーを次にリソグラフ(登録商標)中約
30℃で約24時間保温し、そしてこれらの試料のガス発生
をリソグラフ(登録商標)により追跡した。図10は各試
料の経時的に発生したCO2の全容量のグラフでであり、
図11は各試料に対してCO2発生の速度のグラフである。
(生地の各バッチからの2つの試料から集められたデー
タは一緒にして平均されて、これらの図面に示された試
料に対するデータを得る。) さらに、フルクトース含有およびショ糖含有生地の2
つの試料210gを標準的な市販の螺旋型に巻かれたカン
(直径約2.25″,長さ約4″)に入れた。カン詰めされ
た生地試料を次に約97゜F(36℃)で約3.5時間保温し、
そして約4℃で約90日間保存した。図12はこれらの生地
の各々に対する密封容器中の経時的な圧力を示すグラフ
である。(圧力測定は97゜Fでの最初の膨化保温の後開
始され、そして各生地の2つの試料に対するデータは一
緒されて平均されて、その生地に対する示されたデータ
を得た。)図10および11のデータは、フルクトースを含
有する生地がその他の3つの試料より顕著に多量のCO2
を発生したことを示す。このことにより、ホスホグルコ
ースイソメラーゼ(PGI)陰性であり、そしてグルコー
ス6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(G6PDH)陰性で
あるイーストで膨化された生地に期待するであろう。図
9および9Bに示されるように、そのようなイーストは生
地中のフルクトースを容易に利用できるが、その他の糖
を利用できない。
あらゆる追加の糖を含まなかった生地は、フルクトー
ス補足生地により発生されたものより実質的に少なかっ
たけれども、いくらかCO2を発生した。イーストは、二
酸化炭素を発生する基質として生地中に本来生じるフル
クトースを利用し得た。本来生じないフルクトースを含
有しない(すなわち組成物中にはフルクトースが添加さ
れなかった)対照試料100gが100mlをいくらか越えるCO2
を発生したことを記載することは興味深い。
しかし、この結果の信頼性は確かではない。ある環境
において、生地中の種々のバクテリアは、生地が長期
間、例えば10時間以上膨化される場合に、CO2またはそ
の他の気体を発生するであろう。図10および11の生地は
約30℃に10時間以上保持されたので、対照試料により発
生された少なくとも一部の気体がバクテリア、すなわち
イースト以外のものによるものであろう。イースト中の
バクテリアの増殖は生地に悪影響を及ぼし得る不所望の
副産物が得られるだけではないことは十分に公知であ
る。従って、市販の膨化された生地はできるだけ短時間
膨化されるのが一般的であり、そして発酵のためにこれ
らの生地においてイースト以外のものからのCO2の発生
に依存すべきではない。
従って、イーストにより発生されるCO2の容量は生地1
00gに対して100ml未満であると信じられている。これ
は、生地を適度に膨化させると考えられるレベル以下に
低下しているので、生地は所望程度まで生地を膨化させ
るのに十分な本来生じるフルクトースを欠いているよう
に見える。
ショ糖を1重量%含有する生地は、追加の糖を何ら含
有していない対照試料に比べ、実際にわずかに低いCO2
を発生した。最初に、これは、生地中の発酵可能な基質
に加え、追加のショ糖がグルコースおよびフルクトース
に分解されたことにおいて例外であるように見える。こ
れは完全には理解されないが、PGI−/G6PDH−1イース
トがショ糖を構成単糖類に切断できないか、または生地
中の多量の未消費グルコースの代謝抑圧のいずれかに起
因し得ると考えられる。グルコース補足配合物がショ糖
生地に比べより少ない気体を発生したという事実は、イ
ーストにより発酵され得ないグルコースの存在がイース
トの代謝を抑圧しているということを支持するであろ
う。
上記したように、図12はカン詰めされた生地安定性試
験における圧力を示す。フルクトース補足生地は保存の
最初の10日間で約18psiの内部圧力に達し、90日の終了
時までに圧力は約24psiまで徐々に上昇した。上記した
ように、カンの内部圧力は少なくとも約15−20psiを有
することが望ましいが、カンの内部圧力は40psiを越え
るべきではなく、さもないと容器は破壊するであろう。
従って、図12のフルクトース補足生地は標準的なカン詰
めされた生地の所望の操作パラメータに容易に適合する
こと、および容器の破壊なしに長期間保存され得ること
がわかる。この場合、生地はカン圧に何らかの悪影響な
しに冷蔵温度で90日間保存されたが、これは上記のよう
に、ほとんどの現在の市販の冷蔵生地製品の製造に対す
る要求に適合する。
ショ糖補足生地は、フルクトース補足生地程の内圧を
生じなかった。図12に示されるように、ショ糖生地は冷
蔵保存の最初の10日間で約10psi未満の圧力に達し、そ
してこのグラフに示される90日の終了時までに内圧は約
14psiまで徐々に上昇した。この製品が保存2か月後で
さえも内圧が所望の15−20psiに達しなかった記載する
ことは興味深い。従って、生地製品系中の非発酵性糖
(例えばグルコース)の濃度を変えることにより、生地
の気体発生、それ故に生地貯蔵寿命の間の生地を含有す
るパッケージの内圧を有効に制限するか、または制御し
得る。
本発明の別の態様は、二酸化炭素を顕著な容量で発生
せずに冷蔵温度で長期間保存され得る生地を製造する方
法を提供する。この方法はさらに生地をパッケージに詰
め、生地をパッケージ内で膨化し、そして生地を冷蔵温
度で長期間保存する工程をさらに包含してもよい。
本発明の生地の製造に際し、上記したように、粉、
水、粉に固有の炭水化物を実質的に発酵できないイース
ト、およびイーストにより発酵可能なある量の炭水化物
が一緒に混合される。生地に添加される発酵可能な炭水
化物の量は生地の膨化の必要な程度のみを与えるのに十
分であることが望ましく、あまりにも多量の発酵可能な
基質は過発酵による生地レオロジーに有害な変化を引き
起こし得る。この量は、異なる菌株のイーストがその他
のものに比べより有効な発酵可能な基質を利用し得るの
で、当該イーストに対して個別に最適に決定される。
本発明の特に好ましい態様において、生地の製造に使
用されるイーストはGAL+イーストであり、そして予め
決められた量のガラクトースが生地に添加されて所望程
度の膨化を付与する。このGAL+は上記のD308.3またはR
D308.3イーストであってよいが、その他のGAL+イース
トは本発明に従って作用するであろう本発明の開示によ
って製造され得ることは理解されたい。
上記したように、上記方法はさらに生地を容器に詰
め、生地を容器内で膨化し、そして生地を冷蔵温度で長
期間保存する工程をさらに包含してもよい。この分野で
公知のあらゆる公知の生地パッケージがこの方法におい
て使用され得る。例えば、螺旋型に巻かれた生地容器、
例として市販の冷蔵可能生地製品に一般に使用されてい
るものが十分であろう。容器を充填するのに必要なもの
よりいくぶん少ない生地の量が、密封された時に容器に
頂部を残して、容器中に収容される。
生地は次に容器内で膨化され、膨張して容器を満た
し、頂部の空気を排出してもよい。膨化は発酵可能な炭
水化物の実質的に全てがイーストにより消費されるまで
継続され、その時点で約15ないし約20psiの内圧が容器
内に達成される。この膨化は高められた温度、例えば約
30℃ないし約40℃で行われるのが有利であり、イースト
の発酵を可能にし、そして生地の膨化をより迅速に行う
ことを可能にする。
次いで、この膨化された生地は延長された期間、望ま
しくは少なくとも約2週間冷蔵温度で放置されてもよ
い。本発明の生地は最適には、冷蔵温度で、上記したよ
うに現在の生地の予期される貯蔵寿命である少なくとも
約90日間、保存できる。「冷蔵温度」により、約12℃と
約0℃との間、好ましくは約4℃と約7.2℃の間の温度
での保存が意図される。そのような温度は本明細書にお
いて「冷蔵温度」と記載される。
上記したように、本発明の好ましい態様は、粉に固有
の炭水化物を実質的に発酵できないが、非固有の炭水化
物を発酵できるイーストを提供する。第一に特に好まし
い態様において、このイーストは小麦粉に固有の炭水化
物を実質的に発酵できないが、非固有の糖、例えばガラ
クトースを発酵できるディプロイドイーストからなる。
このイーストはディプロイドGAL+イーストと本明細書
において記載される。
これまで記載され、そして試験されたGAL+イースト
は冷蔵可能なイースト混入生地を製造するために完全に
適している。しかし、市販の製造設備において、より適
当であり、かつ頑強であるようなイーストを提供するこ
とが望ましい。商業的な操作において、生地製造に使用
されるイーストの菌株がGAL+でないイーストのその他
の菌株と接触され得る可能性がある。ハプロイドである
GAL+イーストが使用されるならば、GAL+イーストがイ
ーストの混入菌株と交雑し、イーストの能力に影響を与
える可能性がある。同様に、ハプロイドGAL+イースト
菌株のいくつかが野生型に復帰し、そしてグルコースま
たは粉に固有のその他の炭水化物を自由に代謝し得るよ
うになる可能性がある。
イーストのいくつかの混入は商業的製造において問題
となるべきではない。しかし、イースト菌株があまりに
汚染された場合、生地組成物に添加されるイーストは固
有の炭水化物をかなりの範囲まで代謝可能であり得る。
このことにより、製造される生地中の炭水化物プロフィ
ールに適合し、そして非固有の炭水化物の予め決められ
た供給が消費された後でさえもかなりな量の二酸化炭素
を発生し続けるイーストが得られるであろう。このた
め、このことは、長期間の保存の後に不適当なレオロジ
ーを有する生地が製造され、そして生地が貯蔵のために
充填されている容器に破壊を引き起こすのに十分に高い
圧力を生じることが予想される。
従って、汚染されにくく、グルコース利用性野生型に
復帰しそうにないイーストを有することが望ましい。本
発明のGAL+イーストはより頑強で、より汚染されにく
く、かつ野生型により復帰しにくいと考えられている。
実施例7 市販の生地製造操作に使用するためのより強健なイー
ストを提供する試みにおいて、GAL+イーストのディプ
ロイド菌株が創製された。D308.3とRD308.3菌株が両方
とも交雑「α」型ハプロイドGAL+イーストであり、そ
のため適当なディプロイド菌株を形成するために互いに
交雑できない。それ故に、交雑「a」型GAL+イースト
菌株がD308.3およびRD308.3イーストのいずれか、また
は両方と交雑するために創製された。
イーストの以下の菌株が所望のGAL+ディプロイドイ
ーストの創製に使用された: イーストのXA83−5B菌株は同じ記載でYGSCから一般に
利用可能である。YM3270は米国ミズーリ州セントルイス
にあるワシントン・ユニバーシティ・スクール・オブ・
メディシンのマイク ジョンストン博士から入手した。
これらのイースト菌株は、XA83−5Bイーストが交雑型a
を有するGAL+ハプロイドの生成を可能にし、そしてYM3
270イーストが得られたイーストが実際に交雑型aであ
るかを確認するための試験に有用である点において本発
明の交雑プロトコルに有用であることが見出された。し
かし、交雑型aを有するその他のイーストが使用され得
ることは考えられ、そして理解されるべきである。この
ことはYM3270イーストの場合に特に当てはまり、下に概
説されるようにして生成されたイーストの交雑型を決定
するために簡単に使用された。
本実験において使用されるD308.3(trp+)イースト
は上に詳細に記載したD308.3イーストの自発性復帰変異
体であり、そしてATCC74211の下でATCCから入手可能だ
った。寄託されたD308.3イーストは適当な速度で増殖す
るためにトリプトファン補足を必要とすると決定され
た。D308.3(trp+)イースト(以下、D308.3'イースト
とも記載する)は適当な増殖のためにトリプトファン補
足を要求しない寄託されたD308.3の自発性復帰変異体で
ある。D308.3'イーストはRD308.3イーストを単離するた
めの実施例5に概説した操作と類似の方法で単離され
た。特に、D308.3イーストの濃厚ペーストが得られ、そ
して「トリプトファン欠損」培地(すなわち補足のトリ
プトファンを含有しない培地)上に約1×108CFU/mlの
オーダーで塗布した。トリプトファン欠損培地の組成は
実施例5のアデニン欠損培地と実質的に同じであるが、
培地中に実質的にトリプトファンを含まないように、そ
の組成におけるトリプトファンがアデニンに置き換えら
れた。
これらの接種された欠損プレートは保温され、そして
欠損培地上で増殖し、そしてそれ故に増殖のためにトリ
プトファン補足を要求する必要のないイーストのコロニ
ーが単離された。これらの単離された復帰変異菌株は再
度トリプトファン欠損培地上にプレーティングされ、そ
して増殖するコロニーがプレートから単離された。これ
らの単離されたコロニーの試料はもう一度トリプトファ
ン欠損培地上にプレーティングされ、保温され、そして
最後にもう一回単離されて、単離されたコロニーから実
質的に全ての非復帰変異イーストを除去した。これらの
単離されたコロニーは本明細書の実施例8において使用
されるD308.3'イーストである。
交雑型aGAL+ハプロイドイーストは、交雑型aイース
トであるXA83−5BイーストとRD308.3イーストを交雑す
ることにより創製された。交雑はMethod in Yeast Gene
tics,A Laboratory Course Manual,コールド・スプリン
グ・ハーバー研究所出版部,pp.53−59(1990)から誘導
されるプロトコルに従って以下のように行われた: XA83−5BイーストとRD308.3イーストとは、滅菌ルー
プを用いて分離YEP+フルクトースプレート上にプレー
ティングされて、それら各プレート上に菌株を約7mm離
した一連の平行線に適用した。これらのプレートは約30
℃で約24時間保温された。
交雑型aXA83−5B株の押圧はレプリカプレートパッド
上に行われた。この押圧はYEP+ガラクトース培地(バ
クトイーストエキス約1重量%,バクトペプトン約2重
量%,バクトアガー約2重量%,およびフルクトース約
2重量%,バランスは蒸留水)を含む新鮮なプレート上
に押しつけられた。新鮮なレプリカプレートパッドを用
いて交雑型αRD308.3株の押圧が行われた。第2のレプ
リカパッドは前の押圧のために使用されたのと同じYEP
+フルクトースプレート上であるが、第一の押圧に対し
てほぼ垂直な方向に押しつけられ、チェッカーボートに
類似するイースト菌株のパターンを得た。この2重に押
圧されたYEP+ガラクトースプレートはほぼ30℃で約24
時間保温された。
このようにして調製されたYEP+ガラクトースプレー
トは、合成デキストロース最小培地上に押圧された。合
成デキストロース最小培地は蒸留水約1リットル中にア
ミノ酸なしのバクトイースト窒素塩基約6.7g、バクトア
ガー約20gおよびグルコース約20gを含有していた。この
ような最小培地はMethod in Yeast Genetics,A Laborat
ory Course Manual,上掲,pp.178−179に教示されてい
る。上記合成デキストロース最小培地は約30℃で約24時
間保温された。
「チェッカーボード」パターンの交点での増殖が測定
され、そして新鮮な合成デキストース最小培地プレート
上にプレーティングされてハプロイドコロニーからディ
プロイド(交雑)コロニーが単離される。合成デキスト
ース最小培地プレート上に単離されたディプロイドコロ
ニーが胞子形成培地のプレート上に縞状に塗布され、そ
して約30℃で約4−5日間保温する。胞子形成培地は酢
酸カリウム約10g(1重量%)、バクトイーストエキス
約1.0g(0.1重量%)、ガラクトース約0.5g(0.05重量
%)、バクトアガー約20g(2.0重量%)を含有し、バラ
ンスは蒸留水約1000mlである。
イースト細胞1白金餌を胞子形成プレートから採取
し、そしてエッペンドルフ(登録商標)微量遠心チュー
ブ中の蒸留水約300マイクロリットルおよびグルスラー
ゼ15マイクロリットルと混ぜた。この溶液はボルテック
スにより混合され、そしてほぼ30℃で約30分間保温し
た。保温した試料は短時間超音波処理し、胞子クラスタ
ーを分離した。約20分以内に、超音波処理試料の約1
0-4、10-5、および10-6の連続希釈がYEP+ガラクトース
プレート上にプレーティングされた。
これらの連続希釈は次に、「イースト遺伝子および分
子生物学へのガイド」,グスリエおよびフィンク編,Met
hods of Enzymology,vol.194,pp.146−147(1991)から
適合させた方法でエチルエーテル雰囲気に暴露された。
上記文献の技術は参照により本明細書に編入される。こ
の方法において、4mm×4mm片の濾紙が連続希釈の1つを
含む各ペトリ皿の逆さにしたフタ内に入れられた。換気
設備内でエチルエーテル0.75mlが各濾紙に添加され、そ
してフタおよび希釈物がガラスチャンバー内にエチルエ
ーテル10mlを含有するビーカーと共に置かれて、チャン
バー内を高められた蒸気圧に維持した。
チャンバーを密封し、そして試料を室温で約15分間保
温し、その終了時点でエチルエーテル0.75mlを各濾紙片
に添加した。これらの試料を再びガラスチャンバー内室
温で約15分間保温し、次いで試料はチャンバーから取り
出され、そして各試料のフタを少し開いて開放大気に約
30分間放置した。
287の推定上のハプロイドGAL+イーストコロニーが上
記10-4、10-5、および10-6希釈プレートから単離され
た。これらの推定上のハプロイドの各々をYEP+グルコ
ースプレートおよびYEP+グルコースプレート上に格子
状にプレーティングし、そして約30℃でほぼ48時間保温
し、単離された推定上のXA83−5B×RD308.3菌株のどれ
がガラクトース富化培地上に増殖するが、グルコース含
有培地では増殖しないかを決定した。これらの287コロ
ニーのうち50が、ガラクトース上に十分に増殖するが、
グルコース上で通常増殖しない性質により、GAL+であ
ると決定された。これらのGAL+ハプロイドは次にそれ
らを新鮮YEP+ガラクトースプレート上に縞状に塗布す
ることにより単離された。
これらのGAL+ハプロイドの各々の交雑型は、これら
のイーストの試料をYM3270イーストと上記のように交雑
を試みることにより決定された。YM3270イーストは交雑
型αであるので、単離されたGAL+イーストの交雑型a
のみがYM3270イーストと交雑することができるであろ
う。それ故に、これにより、共に交雑型αであるD308.
3'およびRD308.3Lと交雑し、本発明の所望のディプロイ
ドを製造し得るGAL+菌株を同定する。
交雑の能力の決定において、利用された方法はRD308.
3とXA83−5B菌株とを交雑するために使用された上記の
交雑方法と同様だった。単離されたGAL+株とYM3270イ
ーストとの交雑において、GAL+イーストの3種の異な
る菌株の各々の3本のほぼ平行な縞が単一のYEP−ガラ
クトースペトリ皿上に塗布された(ペトリ皿あたり全部
で9本の縞)。単離されたGAL+菌株の各々試料がペト
リ皿上にプレーティングされるように、多くのそのよう
なペトリ皿が調製された。分離プレート上には、YM3270
イーストの6本のほぼ平行な縞がYEP−ガラクトース培
地上に塗布された。GAL+試料およびYM3270プレートの
両方が約30℃で約24時間保温された。
GAL+菌株およびYM3270菌株が一連のプレート上にほ
ぼ垂直な方向にレプリカプレーティングされ、最初の交
雑プロトコルにおいて概説したように、チェッカーボー
ドパターンを得た。これらの菌株は、前の交雑において
利用された合成デキストロース最小培地ではなく合成デ
キストロース完全ウラシル欠損培地上にプレーティング
された。合成デキストロース完全ウラシル欠損培地はア
ミノ酸を実質的に含まないバクトイースト窒素塩基約6.
7g、グルコース約20g、バクトアガー約20gおよび「欠損
ミックス」約2gを含有し、バランスは蒸留水約1000mlで
あった。上記「欠損ミックス」はアデニン約0.5g、ロイ
シン約4.0g、パラアミノ安息香酸約0.2g、およびアラニ
ン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シス
テイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチ
ジン、イノシトール、イソロイシン、リジン、メチオニ
ン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニ
ン、トリプトファン、チロシンおよびバリンの各々約2.
0gを含有していた。
上記チェッカーボードプレートを約30℃で約24時間保
温し、そして増殖を測定した。YM3270イースト菌株が増
殖のためにウラシル補足を要求することが決定されてい
るので、ウラシル欠損培地上へのイーストのプレーティ
ングは、交雑ディプロイドイーストのハプロイドコロニ
ーからの分離は効率的に行われる。単離された50のGAL
+コロニーのうち、わずかに6つがウラシル欠損培地に
関する栄養要求補足による交雑型αYM3270イーストと交
雑する能力に基づいて交雑型aの生存し得るハプロイド
菌株であることが見出された。
交雑型aであると同定された6つのGAL+菌株およびD
308.3'およびRD308.3菌株の栄養要求マーカーが次に公
知技術を用いて決定された。特に上記6つの菌株の各々
の試料は異なる培地を有する一連のプレート上にプレー
ティングされた。全てのプレートに対する培地はアミノ
酸を実質的に含まないバクトイースト窒素塩基約6.7g、
グルコース約20g、バクトアガー約20gおよび「欠損ミッ
クス」約2gを含有し、バランスは蒸留水約1000mlであっ
た。上記「欠損ミックス」はアデニン約0.5g、ロイシン
約4.0g、パラアミノ安息香酸約0.2g、およびアラニン、
アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイ
ン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジ
ン、イノシトール、イソロイシン、リジン、メチオニ
ン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニ
ン、トリプトファン、チロシンおよびバリンの各々約2.
0gを含有していた。
培地組成は、培地に添加される各「欠損ミックス」が
イソロイシン、トリプトファン、リジン、アデニン、ヒ
スチジンまたはメチオニンの1つが省かれているが、配
合のその他の全ての成分を含むことにおいて互いに異な
っていた。これらの一連のプレートは約30℃で約24時間
保温され、そして増殖が視覚で検査された。欠損培地が
このプロトコルにおいて使用されるけれども、栄養要求
マーカーを決定するために認められているあらゆる手段
が使用され得ると理解されるべきである。以下の栄養要
求マーカーが6つの交雑型aGAL+菌株の各々に対して決
定された: この表において、「+」表示はその菌株が同定された欠
損培地上で増殖したことを示し、「−」表示はその菌株
が同定された欠損培地上で十分な増殖を示さなかったこ
とを示し、そして「+/−」表示はこの菌株が同定され
た欠損培地上で増殖を示したが、下に概説するように、
栄養要求補足を介してRD308.3またはD308.3'のいずれか
の菌株に交雑された場合metの添加を要求したことを示
す。当業者は本発明の開示に従ってその他のGAL+/1ts
イースト菌株を容易に作成することができるであろう
が、GAL+#33イースト菌株は1994年3月4日にATCCに
寄託され、そして受託番号ATCC の下で一般に利
用可能である。
これらの栄養要求決定に基づいて、交雑型aのGAL+
菌株番号6,33,44,46および50が親株RD308.3に交雑さ
れ、交雑型aのGAL+菌株番号11がD308.3'に交雑され
た。RD308.3とXA83−5B菌株とを交雑するために上記し
たものと実質的に同じ交雑プロトコルが本発明の菌株の
交雑において使用された。しかしながら、この交雑プロ
トコルにおいて、親ハプロイドから得られるディプロイ
ドコロニーを単離するために使用される合成ガラクトー
ス最小培地は以下のようにアミノ酸が補足された: これら6種のディプロイド株の各々は、それらがガラ
クトース上で増殖し得たが、グルコース上で実質的に増
殖し得なかったという点においてGAL+のままであるか
を確認するために試験された。各デュプロイドおよびRD
308.3およびD308.3'菌株の多い接種物(例えば約107CFU
/mlのオーダーで)がYEP+ガラクトースプレートおよび
YEP+グルコースプレート上にプレーティングした。デ
ュプロイド6種全ておよびRD308.3およびD308.3'ハプロ
イドの両方はガラクトース培地上で十分に増殖したが、
グルコース培地上で十分な増殖を示さなかった。
本発明の開示によれば、当業者は本発明のGAL+を確
実に製造し得る。上記の実験的な方法はこの目的を達成
する広範囲の可能な方法のほんの一例であり、そして本
発明のGAL+を製造するその他の有効な手段は本発明の
教示を考慮すれば当業者に明らかであろう。例えば、本
実施例で使用された以外のその他の出発イーストを選択
し得、イースト菌株の交雑はその他の公知方法で行われ
得、そして栄養要求マーカーはその他の公知手段により
決定され得る。
本発明のデュプロイドGAL+イーストはRD308.3および
D308.3'ハプロイド菌株のいずれよりも、より活性であ
り、そして復帰変異や汚染に対してより耐性であろう。
そのような改良された活性および耐性はRD308.3およびD
308.3'ハプロイドイーストのいずれよりも市販の生地製
造操作においてより価値のあるGAL+イースト菌株とな
るべきである。
実施例9 本発明に係る冷蔵可能な生地の発酵におけるイースト
の使用に関連して実施例8で製造したGAL+ディプロイ
ドの特性が試験された。実施例8で製造された6つのGA
L+ディプロイドの遺伝子型、ならびにRD308.3およびD3
08.3'菌株の遺伝子型は親株の遺伝子型に基づいて以下
のようであると考えられる: 最初に、イーストの上記菌株の各々がある種の炭水化
物を利用できる能力が試験された。1白金餌の各イース
ト菌株を、上記とほぼ同様の組成を有するYEP+ガラク
トース液体培地約50mlを含有する別々の300mlフラスコ
に添加した。これらのフラスコを約30℃で約18時間震と
うしながら保温した。保温後の試料の各々に対して3本
の10ml試験管を保温試料約100μlに加えた。各試料に
対する1本の試験管はYEPを約5ml含有し、もう1本の試
験管はYEP+デキストロースを約5ml含有し、そして第3
の試験管はYEP+ガラクトースを約5ml含有していた。こ
れらの培地の組成は実質的に上記のものと同一だった。
1組3本の対照試験管もまた、3本の試験管の各々に、
いずれもイーストを加えずに、YEP、YEP+デキストロー
ス約5mlまたはYEP+ガラクトース約5ml入れた。
これらの得られた試験管の各々の吸光度が保温の前、
そして約30℃での保温の間に600nmで測定された。YEPま
たはYEP+デキストロース培地を含有する試験管の吸光
度は約2週間にわたり測定され、そしてYEP+ガラクト
ースを含有する試験管の吸光度は保温約100時間、試験
管を震とうして、および震とうせずに測定された。
a/αGAL+#50を除いてディプロイドa/αGAL+菌株の
各々がガラクトース培地上でRD308.3に比べ非常に迅速
に増殖することが見出された。D308.3'、RD308.3および
a/αGAL+菌株番号6、11、33および44はYEPおよびYEP
+グルコース培地の両方上での増殖がかなり低かった。
a/αGAL+#50イースト菌株はガラクトース培地上で十
分に増殖したが、RD308.3菌株に比べかなり良好ではな
かった。a/αGAL+#44およびa/αGAL+#50菌株は、YE
P+グルコース培地中での保温約12日後に増殖し始める
ように見えた。グルコースを利用するこの明らかな能力
の理由ははっきりとは理解されないけれども、上記菌株
がグルコース利用可能に自発的に復帰したか、または本
試験において使用された試料が別の生物に汚染されたか
のいずれかであると推測された。
6つのディプロイドa/αGAL+菌株がグルコース利用
可能にする能力が、別々の10ml容量のYEP+ガラクトー
スにイースト1白金餌を最初に添加し、そして約30℃で
約20時間、震とうしながら保温することにより試験され
た。各試料に対する3つの別々のYEP+ガラクトースプ
レートは試料の3つのプレートの各々上に試料100μl
を塗布プレーティングすることにより調製された。さら
に、各試料の10-4、10-5および10-6連続希釈物が同様の
YEP+ガラクトースプレート上に塗布プレーティングさ
れた。
これらのプレートは保温され、そしてそれぞれのYEP
+グルコースプレート上野6つの菌株の各々に対する観
察された復帰変異コロニーの数が記録された。これらの
比率が次に、YEP+ガラクトースプレート上での連続希
釈物との比較により、プレート上にプレーティングされ
た実際のコロニーの全数と比べられた。復帰変異の頻度
を決定するこの方法はこの分野では十分に公知である。
これらの試料の復帰変異率はそのようにして決定され、
以下のとおりであった: 従って、本発明のディプロイドイースト菌株がグルコ
ース利用可能に復帰した頻度は親株RD308.3ハプロイド
の復帰頻度よりかなり低かった。従って、本発明のディ
プロイドイーストは本発明のRD308.3イーストに比べ、
少なくともグルコース利用可能への復帰変異に関して、
より安定である。
これらのディプロイド菌株は、本発明に係る冷蔵可能
な生地の発酵におけるそれらの利用性を決定するため
に、生地系内で評価された。まず、イースト菌株が、YE
P+ガラクトース液体培地を約50ml含有する300ml培養フ
ラスコに、1つの単離されたイーストコロニーを接種す
ることにより増殖され、2つのそのような接種したフラ
スコがイーストの各菌株に対して調製された。これらの
フラスコを約30℃で約48時間、フラスコを震とうしなが
ら、保温した。保温した試料を次に、YEP+ガラクトー
ス液体培地を約1000ml含有する別々の2リットルフラス
コに添加し、そしてそのより大きいフラスコを約30℃で
約24時間、実施例1に記載したペースト状での集菌に先
立ち、保温した。
生地はディプロイドイーストの各菌株ならびにRD308.
3イーストから調製された。各生地はおよそ以下の成分
を含有していた:小麦粉約758g(56.1重量%)、小麦グ
ルテンプレブレンド約49.0g(3.5重量%)、水約498g
(35.6重量%)、塩約14g(1.0重量%)、イーストペー
スト35g(2.5重量%)、グルコース約14g(1.0重量%)
およびイーストフード約4.2g(0.3重量%)。この組成
において使用されるイーストフードは米国ウイスコンシ
ン州のレッド・スター・ユニバーサル・フーズ・コーボ
レーション・オブ・ミルウォーキーから商品名「レギュ
ラー・イースト・フード」で市販されているものであ
る。水、ガラクトースおよびイーストフードが混合さ
れ、そしてマックダフィ(登録商標)混合ボウル中イー
ストペーストと、速度1で約30秒間、続いて速度2で約
6分間混合された。
そのようにして製造された生地50g試料をリソグラフ
(登録商標)試料ジャー中に入れ、それらが約30℃で約
42時間保温される際の、気体発生データが各試料に対し
て集められた。ディプロイド菌株番号33、46および50で
発酵させた生地試料50gおよびRD308.3イーストで発酵さ
せた試料はそれぞれ、試験の間にCO2を約90−100ml発生
した。これは生地を適度に膨化するのに必要と考えられ
る100−200mlCO2/生地100gの範囲内である。a/αGAL+
#44イーストで膨化された試料はCO2を約65mlのみ発生
した。ディプロイド菌株番号33および46はハプロイドRD
308.3イーストより少し迅速にCO2を発生することがわか
った。ディプロイド菌株番号6および11はRD308.3より
低い速度でガスを発生したが、この低い速度に対する理
由は液体培養試験を考慮しているこの時点で理解されな
い。#44および#50菌株はハプロイド親株に比べより少
なくより遅く気体を発生することがわかった。
リソグラフ試料が採取された後に残る生地はロールに
かけられて約4分の1インチの厚さのシートとし、そし
て約250gの重さの長方形のスラブに切断した。これらの
スラブを丸め棒状にし、標準的な250g容量の螺旋型に巻
かれた生地カンに入れた。現在市販の冷蔵生地操作にお
いて使用されているような標準的な化学的に膨張させた
生地の同様のスラブもまた上記カンに入れられた。カン
詰めされた生地は、カン内の圧力が約15−20psiに達し
得るまで、約100゜F(約38℃)で膨化された。これらの
膨化された生地試料は次いで約4℃でカン中に保存さ
れ、そしてカンの内圧が経時的に追跡された。
RD308.3イーストで膨化した生地は約3時間処理され
て、所望程度までカン内で膨化させた。ディプロイドイ
ーストで膨化させた生地は全て、a/αGAL+#6イース
トを除いて、RD308.3生地に比べいくらか迅速に膨化し
た。a/αGAL+#33含有の生地は約2.5時間かかっただけ
であり、そしてa/αGAL+#46で膨化させた生地は約2
時間15分かかっただけだった。a/αGAL+#6イースト
発酵生地は5時間以上の膨化時間であり、より長い時間
を要した。
図13はカン詰めされた生地試料の圧力を時間の関数と
して示すグラフである。上側の線はa/αGAL+#33イー
ストで発酵させた試料に対するカン圧を示し、下側の線
(中空のボックスにより示されるデータポイントを有す
る)は化学的膨張生地試料に対して測定された圧力を示
す。両方の試料に対するカン圧の測定は生地がカン内で
膨化された後に開始され、その最初の内圧は両方の試料
に対して15および20psiの間である。
両方のカン内の圧力は、図13に示された月単位の期間
にわたり実質的に一定のままであり、そして本発明のイ
ーストで発酵された生地のふるまいは化学的膨張試料の
ものに好都合に匹敵している。これらの試料の両方のプ
ロットはその間測定が集められた4週間にわたりほぼ平
坦のままであったので、容器内の圧力が市販の冷蔵生地
の予期される90日間の貯蔵寿命内に危険な状態に達する
であろう理由がない。従って、本発明のディプロイドGA
L+イーストは延長された期間冷蔵温度で保存され得る
生地の製造に十分に適していることが明らかである。
上記のように、本発明の別の態様に係るイーストは両
方とも、小麦粉に固有の炭水化物を実質的に発酵でき
ず、そして低温感受性である。継続出願番号第07/82945
3号に説明されているように(この技術は参照により編
入される)、低温感受性(「1ts」イースト)は高めら
れた温度で「正常に」活動するが、冷蔵温度では実質的
に休止状態または不活性になるという事実を特徴とす
る。
本発明のGAL+1tsイーストの製造の際に、上記の本発
明のGAL+イーストと低温感受性イーストが交雑されてG
AL+1tsイーストが製造される。低温感受性イーストは
イーストの通常菌株の遺伝子突然変異を有することが望
ましい。イーストの通常菌株はあるパーセンテージのそ
のようなイースト細胞を含むと考えられており、そして
イーストのこれらの1ts突然変異体は種々の方法のいず
れかで単離され得る。
例えば、イーストの寒冷感受性突然変異体は、リトル
ウッドおよびデイビスにより「トリチウム自滅によるサ
ッカロミセス・セレビシアエにおける温度感受性および
栄養要求突然変異体の富化」,Mutat.Res.Vol.17,pp.315
−322(1973)に記載されるようなトリチウム自滅富化
により単離されてもよい。上記文献の技術は参照により
本明細書に編入される。このトリチウム自滅富化法にお
いて、好ましくはS.cerevisiaeであるイーストの菌株が
通常の温度で増殖培地中に置かれ、そして温度は次に冷
蔵温度に下げられる。イーストが低温に達したら、トリ
チウム化ウリジンまたはトリチウム化アミノ酸が培養液
に供給され得る。これらの低温で活性のままである細胞
はこれらの前駆体を取り込み、そしてトリチウムにより
殺される。しかし、イースト試料中に存在する低温感受
性突然変異体は、それらが低温で実質的に不活性のまま
であるので、ウリジンやアミノ酸を取り込まないであろ
う。従って、その突然変異体は低下された保存温度で優
先的に生き残る。
遺伝学におけるいくらかの研究者はこれらのイースト
のある種の特性を研究した。例えば、ウルシックおよび
デービスは「リボソーム処理の際のサッカロミセス・セ
レビシアエの寒冷感受性突然変異体」,Molec.Gen.Gene
t,175,313−323(1979)にある種の研究の結果を報告
し、そしてサインおよびマネーは「低温でのサッカロミ
セス・セレビシアエの増殖に影響する突然変異体の遺伝
子分析」,Genetics,77:651−659(1974年8月)におい
て上記試験の結果を考察している。上記文献の技術は参
照により本明細書に編入される。
低温でのイーストの増殖を妨げるために突然変異され
得る比較的多くの遺伝子がイーストにあることがわかっ
ている。本発明の目的のために、これら遺伝子のどれが
利用される突然変異体に影響を及ぼすかは重要ではな
い。イーストの選択において重要な因子は、イーストが
高められた温度、例えば室温で活性のままであり得る
が、冷蔵温度で二酸化炭素の発生を実質的に停止するこ
とである。そのような1tsイーストの8つの適当な例は
受託番号ATCC74124ないしATCC74131の下でATCCから入手
できる。
1tsイーストの冷蔵温度での実質的に不活性は、高め
られた温度で生地を所望程度まで膨化または発酵させ、
次に長期間冷蔵温度で発酵生地を保持することを予測可
能にする。そのような長期間の保存は、イーストが不活
性であり、そして顕著な容量の二酸化炭素をさらに発生
しないので、1tsイースト発酵生地の容量を顕著に変え
ないであろう。これにより、商業的な生地製造者は生地
を制御可能に発酵または膨化させることが可能であり、
そして後日消費者に販売するために生地を密封された容
器中に入れることが可能となる。生地は販売されるまで
冷蔵温度に保存されさえすれば、時間が経過しても、容
器内の圧力は実質的に高まらない。不適当な輸送または
保存の間に生地が冷蔵温度より高く一時的に加温されて
も、再び冷却されれば、その高められた温度で導かれる
膨化作用は抑えられ、そしてイーストは再び不活性にな
るであろう。
本発明のGAL+1tsイーストは冷蔵生地系において使用
するために上記した少なくともハプロイドGAL+菌株よ
りは優れていると考えられる。GAL+1tsイーストの低温
感受性特性は、菌株が汚染された場合に過剰な二酸化炭
素発生を制限するバックアップ機構を提示する。とりわ
け、イーストの低温感受性は、さもなければイーストが
二酸化炭素を発生し続けるであろう冷蔵温度でイースト
を実質的に不活性にするであろうと考えられる。
例えば、イーストのいくつかが復帰変異し、そしてよ
り容易にグルコースを利用するならば、イーストの低温
感受性は、このイーストで発酵された生地が冷蔵温度で
保存される場合に二酸化炭素を実質的に停止することに
より上記汚染からの悪影響を制限するであろう。また、
イースト菌株の完全性が求められないが、過剰な発酵可
能な基質(例えば過剰なグルコース)が生地組成物にお
いて不所望に使用されるならば、GAL+1tsイーストは、
過剰の発酵可能な基質が依然として存在する場合でさえ
も、生地の冷蔵保存の間に二酸化炭素の発生を実質的に
停止するであろう。
実施例10 実施例8において、XA83−5Bイースト菌株がRD808.3
イースト菌株と交雑されてディプロイドイーストが製造
された。RD808.3イースト菌株はGAL+イーストであり、
XA83−5Bイーストは低温感受性菌株であることが前に決
定されていた。
実施例8に記載したように、連続希釈プレートから単
離された287の推定上のGAL+ハプロイドイーストコロニ
ーのうち50菌株が、グルコース富化培地上で増殖する
が、グルコース含有培地上で実質的に増殖できない性質
によりGAL+と実際に同定された。実施例8において、
交雑型αであると決定された上記菌株のうち6つが親株
RD308.3またはD308.3'と交雑された。
本実施例において、実施例8の50の単離されたGAL+
ハプロイドの各々1白金餌がYEP+ガラクトース約5mlを
含有する別々の滅菌された10ml試験管に添加された。こ
れらの接種試料を約30℃で震とうしながら約24時間保温
して菌株を増殖させた。これらの24時間保温試料の各々
の2つの試料(試料あたり約100μl)を次にYEP+ガラ
クトース約5mlを含有する別々の滅菌された10ml試験管
に接種するために使用した。これにより50対の接種試験
管が得られた。
各対からの一方の接種試験管を約30℃で保温し、各対
からの他方の試験管を約12℃で保温した。約600nmでの
吸光度測定が30℃で保温された試験管の各々に対して数
日間(すなわち全ての試料が対数期に達するまで)行わ
れた。12℃で保温された試料の約600nmでの吸光度もま
た測定されたが、該測定は保温約10日後および約30日後
に行われた。
約30℃での保温の際に吸光度の増加率により示される
ように、イースト菌株の全ては十分に増殖していた。し
かし、約12℃での保温の際に吸光度の増加が全くない
か、または十分増加がないことにより示されるように、
試験された50のGAL+イースト菌株のうち5株の増殖が
低いか、全く示されなかった。それ故に、これらの5つ
の菌株は低温感受性(本明細書ではその用語が使用され
る)であることが明らかである。これらの明らかなGAL/
1ts菌株にはGAL/1ts#8、GAL/1ts#17、GAL/1ts#21、
GAL/1ts#26およびGAL/1ts#48の表記が与えられた。
当業者は本発明の開示に従ってその他のGAL/1tsイー
スト菌株を容易に製造することができるであろう。しか
し、便宜のために、GAL/1ts#8イースト菌株が1994年
3月4日にATCCに寄託され、そしてATCC の受託
番号の下に一般に利用可能である。
イーストのこれら5つの菌株の低温感受性を確認する
ために、30℃および12℃での上記イーストのコロニーの
増殖率が親株RD308.3およびXA83−5Bに比較された。7
本のほぼ平行な列(該列は上記7菌株のうちの1種の4
つのコロニーを有し)は2つのYEP+ガラクトースアガ
ープレート上に格子状にプレーティングされた。列を形
成する際に、滅菌爪楊枝が使用され、イーストのコロニ
ーが移された。2つのそのようなプレートが作成され、
そして一方のプレートが約30℃で保温され、他方が約12
℃で保温された。
このプレーティングから得られるコロニーは移すのに
使用した爪楊枝とほぼ同じ最初の直径を有しており、2
つの別々に保温されたプレート上のコロニーの直径の測
定は経時的に行われた。図14および15はそれぞれ約30℃
で保温されたプレートおよび約12℃で保温されたプレー
トに対するイースト菌株GAL/1ts#8、GAL/1ts#17、GA
L/1ts#21、GAL/1ts#26、GAL/1ts#48、RD308.3および
XA83−5Bのコロニー直径を示す。
直径はデジタルマイクロメーターを用いて目視で測定
され、そして移送に用いられた爪楊枝はアガープレート
においてわずかな窪みを生成したので、直径約1.0mm未
満の信頼できる測定を行うことはかなり困難であった。
イーストの1菌株に対してなされた列のコロニーの4種
全てに対する測定値が一緒されて平均され、2つのグラ
フに示されている測定値とした。
図14はイーストの示された菌株の6種全てが、約30℃
での保温約9日後の終わりまでに約3.5mmないし約7.5mm
に及ぶコロニーを有し、試験の間十分に増殖したことを
示す。RD308.3イーストは最も迅速に増殖し、低温菌株
の全ては少し遅く増殖した。GAL/1ts#21およびGAL/1ts
#17はXA83−5Bとほぼ同じ速度で増殖し、GAL/1ts#8
およびGAL/1ts#48菌株は少し遅く増殖した。
図15は約12℃での同じイーストの増殖速度を示す。RD
308.3イーストの増殖速度は30℃保温に対して図12に示
したものより遅かったが、にもかかわらず、イーストの
この菌株は低温でかなり十分増殖していた。XA83−5Bイ
ーストおよびGAL/1ts#8およびGAL/1ts#26菌株は全て
20日の試験の間にいくらか測定可能な増殖を示したが、
これら3種のイーストのいずれに対しても最大のコロニ
ーの大きさは依然として約2mm未満であった。保温約2
週間後にコロニーの直径の突然のジャンプが見られる
が、上記したように、約1mm未満のコロニー直径を正確
に読み取ることは比較的困難であった。これらのコロニ
ーは、保温6日目と保温約9日後の次の測定との間の突
然の増殖の突発したことに比べ、比較的遅いが比較的安
定して増殖していると考えられる。
これらのイーストが保温された12℃という温度はXA83
−5Bイースト菌株の低温感受性閾値のほぼ下限であると
考えられ、そしてこれにより、12℃でのこの菌株のわず
かではあるが測定可能な増殖が説明され得る。
しかし、本発明のGAL/1tsイーストの3つの菌株は12
℃で保温された場合、増殖が測定されなかった。これ
は、GAL/1ts#17、GAL/1ts#21およびGAL/1ts#48イー
ストが驚くべきことに、XA83−5B親株よりさらに低温感
受性であることを示す。イーストのこれら3つの菌株は
また、約30℃ではそれらの低温感受性の親株とほぼ同じ
ように増殖した。
上記イーストの菌株は小麦粉に固有のあらゆる炭水化
物を実質的に発酵できないように見えるので、GAL/1ts
#17、GAL/1ts#21およびGAL/1ts#48イーストは本発明
の冷蔵可能な生地組成物への使用に特に十分に適してい
ることが明らかである。従って、上記の評価に基づい
て、これらの菌株は本発明の交雑により得られたものの
中の最も好ましい菌株であろう。
本発明の開示は、イーストのGAL+および1ts菌株をど
のように選択または単離するか、そのようなイーストの
交雑の少なくとも一つの方法、およびそのようにして得
られたGAL+/1ts菌株を単離および評価するためにイー
ストの得られた菌株を試験する方法を教示している。本
発明の教示によれば、あらゆるGAL+/1ts菌株を作成お
よび試験することは当業者の能力の十分に範囲内であ
る。
本発明のもう一つの態様は、二酸化炭素の顕著な発生
なしに長期間冷蔵温度で保存され得る生地の形成方法を
提供する。該方法はさらに、生地を包装し、包装内で生
地を膨化し、そして冷蔵温度で長期間、生地を保存する
工程をさらに含み得る。
本発明の生地の作成において、粉、水、前記粉に固有
の炭水化物を実質的に発酵できないイースト、および該
イーストにより発酵なある量の炭水化物は上記のように
一緒に混合される。生地に添加された発酵可能な炭水化
物の量は、生地の膨化に必要な程度のみを提供するのに
十分であることが望ましい。多すぎる発酵可能な基質は
過発酵により生地レオロジーに有害な変化を引き起こす
であろう。この量は、異なる菌株のイーストはその他の
ものに比べより有効な発酵可能な基質を利用し得るので
与えられたイーストに対して個々に最適に決定される。
所望する場合、追加のフレーバー剤、例えば塩、粉に固
有の追加量の糖、または小麦粉グルテンが生地から製造
される最終的な焼成品に所望のフレーバー(風味)を与
えるために生地に添加され得る。
本発明方法の特に好ましい態様において、生地作成に
用いられるイーストはGAL+イーストであり、予め決め
られた量のガラクトースが生地に添加されて、所望程度
の膨化が行われる。このGAL+は上記のD308.3、D308.3'
イーストまたはRD308.3イーストであってよいが、その
他のGAL+イーストは、本発明に従って作用するであろ
う本発明の開示に従って製造され得る。
上記したように、上記方法は生地を充填し、生地を容
器内で膨化し、そして生地を冷蔵温度に長期間保存する
工程をさらに包含し得る。この分野で知られている実際
のあらゆる公知の生地パッケージがこの方法において使
用され得る。例えば、商業的に製造される冷蔵可能な生
地製品に現在使用されているもののような螺旋型に巻か
れた生地容器が十分であろう。容器を充填するのに必要
なものよりいくぶん少ない量の生地が容器中に入れられ
て、密封された場合に容器中に頂部を残す。
生地は次に容器中で膨化されて、膨張し容器を充填し
て頂部の空気を排出する。発酵可能な炭水化物の実質的
に全てがイーストにより消費されるまで、膨化は継続さ
れ、その時点で約15ないし約20psiの内部圧力が容器中
に達成される。この膨化は高められた温度、例えば約30
℃ないし約40℃で行われるのが有利であり、イーストに
発酵させ、そして生地のより迅速な膨化を可能にする。
この膨化された生地は冷蔵保存に長期間、望ましくは
少なくとも約2週間まで放置される。本発明の生地は上
で説明したように現在の生地の要望される貯蔵寿命であ
る少なくとも90日間冷蔵温度で最適には保存できる。
「冷蔵貯蔵」により、約12℃と約10℃の間、好ましくは
約4℃と約7.2℃の間の温度での保存が意図される。そ
のような温度は本明細書において「冷蔵温度」と表記さ
れる。
本発明はさらにイーストが温度感受性である生地組成
物を提供する。もし、それらがイーストの不活性化閾値
温度より高く加温されるならば、実質的に嫌気性の環境
中でのイーストの二酸化炭素製造能力は実質的に全ての
温度で実質的に不活性化される。製造パラメータおよび
イーストの二酸化炭素製造能力を有効に制御することに
より、生地組成物の膨化は制御さ得る。
上記したように、冷蔵温度でさえも、慣用のイースト
は二酸化炭素を製造し続ける。生地組成物を上記不活性
化閾値温度より高く加熱することにより二酸化炭素製造
が実質的に不活性化されるならば、生地が一旦予め決め
られた容量に達したら、生地組成物が暴露される次の温
度条件に関係なく、膨化の量は制御され得る。
本発明の冷蔵生地組成物は、それらの不活性化閾値温
度未満の温度で通常機能するイーストの温度感受性菌株
を使用する。例えば、イーストはおよそ室温で生地中の
基質を醗酵し得、そしてそれらの不活性化閾値温度未満
の温度で基質を醗酵し続けることができる。しかしなが
ら、イーストが不活性化閾値温度より高く加熱された
ら、それは生地を膨化するのに必要な二酸化炭素を製造
する能力を失う。これらの温度感受性イーストを用いる
ことにより、生地組成物が予め決められた容量まで嫌気
的に膨化され、次いで少なくとも不活性化閾値温度に加
熱されてイーストの二酸化炭素製造能力を実質的に不活
性化することが驚くべきことに開発された。いくつかの
生地組成物において、生地の膨化は不活性化閾値温度ま
で生地を加熱している間に行われ得る。生地組成物は次
に例えば冷蔵温度で、長期間、過剰な二酸化炭素製造に
関係する問題および保存の間の慣用のイーストによる生
地レオロジーの低下なしに、保存され得る。
本発明の冷蔵可能な生地組成物は冷蔵温度での貯蔵の
ための含有手段中に最適に置かれ得る。そのような含有
手段は当業者には公知であり、そして螺旋型に巻かれた
複合カンを包含する。未膨化生地は次に閉鎖されるカン
中に入れられ、約15−20psiまで内圧まで膨化され、そ
れにより生地を有するカンの全容量を満たす。生地は、
出口を満たし、それによりカンの内部環境を嫌気的にす
ることにより上記含有手段中にシールを形成する。冷蔵
生地に適当なそのような螺旋型に巻かれた複合カンの例
は以下の特許文献に記載されているものを包含する、そ
れらの技術は参照により本明細書に編入される:カリー
等,米国特許第351050号,レイド,米国特許第3972468
号およびトーンニル等,米国特許第3981433号。
別の含有手段は柔軟なパッキング材料、例えばポリマ
ーフィルムから形成され、含有手段の内部環境は実質的
に嫌気性である。内部環境を実質的に嫌気的にする一つ
の方法は、真空または不活性環境下に含有手段を密封シ
ールすることによる。また、不活性気体はパッケージに
密封前に含有手段から実質的にフラッシュ酸素を添加し
てもよい。
本発明の冷蔵生地組成物はまた、膨化の停止直後、冷
蔵温度で含有手段なしに貯蔵されてもよい。
生地組成物の配合は重要ではない;実際には、粉、水
および本発明に係るイーストからなるあらゆる生地が使
用され得る。本発明における使用に適当な一つの生地組
成の配合の一例を表Iに示す: 表1 成分 生地の重量% 粉 54.53−57.93 水 34.71−35.45 グルテンプレブレンド 3.88−3.91 デキストロース 0.99 塩 0.75 温度感受性イースト 1.00 はグルテンプレブレンドはビタル小麦グルテン約75
%;ハードハイグルテン21.9%;キサンタンガム2.5
%;およびアゾジカーボンアミドプレミックス0.616%
からなる。
本発明の一態様において使用される温度感受性イース
トは不活性閾値温度を有する、すなわちある閾値より高
温に加熱された場合に実質的に不活性化されるサッカロ
ミセス・セレビシアエの多くの種のあらゆるものであっ
てよい。イーストの不活性閾値温度は最適には約43℃で
あり、その温度で小麦粉と共に製造された慣用の生地は
通常焼成を始めるであろう。(本明細書で使用されるよ
うに「生地」または「生地組成物」という用語は未焼成
生地を意味し、焼成された生地は「焼成された生地」
「焼成品」等と記載される。) 他方、イーストの不活性閾値温度が室温より低いなら
ば、慣用の操作での生地の製造は、全体の製造領域が、
不活性化される前に生地のイーストによる膨化を可能に
するために、その温度以下に維持される必要あるので、
不都合で困難である。従って、好ましい態様において、
本発明の生地において使用されるイーストの不活性閾値
温度は約25℃と約43℃の間である。
生地を約40℃以上にかなりの期間加熱することは、可
能な不活性化および小麦粉グルテンの変性、ならびによ
り高温での小麦粉に固有の悪性ミクロ組織の増殖の促進
により生地に有害であるかもしれない。以下により十分
に説明されるように、イーストは不活性閾値温度以上に
加熱される前に生地が膨化される。膨化は高められた温
度、例えば約30−40℃で、室温またはそれ以下でするよ
りも、より迅速に起こる。イーストの活性化およびそれ
による膨化の速度は温度とおおよそ正比例するというこ
とができる。
それ故に、商業的な製造環境において、室温以上、例
えば約30℃またはそれ以上、イーストの閾値温度を越え
ず、かつ実質的に不活性にせずに、生地を加熱できるこ
とが有利であろう。従って、本発明の特に好ましい態様
にといて、イーストの不活性閾値温度は約25℃と約40℃
の間、そして最適には約30℃と約40℃の間であることが
望ましい。
そのような温度感受性イーストは、それらの不活性閾
値温度より高い温度に暴露されたとき、望ましくは細胞
サイクル拘束に入る。出願人は、温度誘導細胞サイクル
拘束が生じると、イーストは偏性嫌気性細菌になり、醗
酵性嫌気増殖が実質的に不可能になる傾向があることを
発見した。出願人はさらに、これらの特性が生地膨化を
有効に制御するため、および上記温度感受性イーストを
含有する生地が冷蔵条件で長期間保存され得ることを発
見した。
生地組成物中の温度感受性イーストを使用することに
より、生地は不活性閾値温度未満の温度で所望容量に膨
化され得、続いてイーストはイーストの不活性閾値温度
より高い温度に生地を、従ってそのなかのイーストを暴
露することにより実質的に不活性化され得る。このよう
にして製造された生地は、過醗酵や生地組成物の過剰膨
化によるオプションの含有容器の破壊の危険性なしに、
長期間冷蔵され得る。イーストの不活性化に続いて、生
地組成物温度を、閾値レベル未満の温度まで変えても、
イーストの醗酵能力の実質的な不活性化への測定される
影響は無かった。生地のこれらの特性は、慣用の非温度
感受性イーストで醗酵された生地に対しては有害な作用
を示すであろう温度変動が考えられる輸送および保存の
ために特に適したものとする。この冷蔵生地組成物を焼
成または調理することにより得られる製品は、それがイ
ーストで醗酵され、そしてイースト醗酵生地製品に関係
する所望の官能品質を有するので、パン製品と規定され
得る。
本発明の開示によれば、高められた温度での加熱処理
により実質的に不活性化され得るイーストを製造するこ
とは当業者の能力の範囲内であろう。そのようなイース
トはイースト菌株を交雑し、所望の特性を有する適当な
菌株を単離する等の標準的な方法により製造され得る。
これらのタイプの共通な技術は、例えばシェルマン等に
よりMethod in Yeast Geneticsに記載されている。この
文献は参照により本明細書に編入される。上記文献の27
3−369頁の「突然変異体の作成」と題された3章がシェ
ルマン等の中で特に興味深い。
そのような突然変異体を創製し、そして単離する一つ
の方法はハートウエル等による「イーストにおける細胞
分裂サイクル突然変異体の遺伝子制御:V.cdc突然変異体
の遺伝子分析」,Genetics 74:367−386(1973年6月)
に教示されている。この文献は参照により本明細書に編
入される。上記文献に開示されているように、ハートウ
エル等は、A364A株と同定される、遺伝子型adel ade2
ura1 tyr1 his7 his7 lys2 gal1を有するイース
トの1菌株を公知突然変異誘発源、すなわちN−メチル
−N'−ニトロN−ニトロソグアニジンまたはエチルメタ
ンスルホネートで処理した。約23℃の許容温度および約
36℃の制限増殖温度を有する生成温度感受性突然変異体
が単離される。これらの温度感受性突然変異体の中で細
胞分裂サイクル突然変異体がこれらの突然変異体に対す
る形態学的基準を同定し、そして80%またはそれ以上の
細胞が均一形態を示すそれらの突然変異コロニーを選択
することにより単離された。
この操作に続いて、ハートウエル等はほぼ150の異な
るcdc突然変異体を同定した。補足性の研究により、こ
れらの突然変異体は32の補足群に規定され、そのうちの
30は核遺伝子における単一突然変異により規定される
(標準的遺伝子分析技術により決定される)。十分に作
用することが見出されたそのような菌株はピルピン酸キ
ナーゼ遺伝子内の構造的突然変異を示したが、本発明に
おいて十分に作用し得るその他の熱的に感受性の突然変
異体であってもよいことは理解されるべきである。
熱的不活性化に対する一つの可能な機構はS.cerevisi
ae cdc19に対して解明されたが、この菌株はバークレー
のカリフォルニア大学の分子および細胞生物学部にある
ドナー・ラボラトリーのイースト・ジェネティック・ス
トック・センター(YGSC)から利用可能であり、1993年
3月5日にメリーランド州ロックビレ,パークローンド
ライブ12301のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレ
クション(ATCC)にATCC74213の下に寄託されている。c
dc19イースト菌株の醗酵経路は、熱的に不安定なピルビ
ン酸キナーゼ酵素に生じるイーストにおける突然変異体
に起因する不活性閾値温度より高い温度への暴露により
実質的に不活性化される。ピルビン酸キナーゼ遺伝子に
突然変異を有する突然変異体は公知の形態学的または遺
伝子分析技術により同定され得る。
温度感受性イーストを含有する生地組成物が不活性閾
値温度より高い温度に暴露されるならば、ピルビン酸キ
ナーゼは構造的に不活性となり、そしてイーストは偏性
嫌気細菌となり、ピルビン酸キナーゼ生合成が回復する
まで事実上、顕著な嫌気的醗酵ができない。cdc19菌株
において、ピルビン酸キナーゼ生合成は、i)酸素が存
在し、そしてピルビン酸キナーゼの生合成が新たに生じ
得る、またはii)遺伝子突然変異体が野生型に復帰する
時に回復する。そのような復帰はイーストが増殖してい
るときにのみ生じ得る。温度感受性イーストの嫌気的増
殖が40℃での保温0−4時間に続いて25℃で観察される
図16に示されるように、cdc19細胞はそれらの不活性閾
値温度より高い温度に暴露されたら、嫌気条件下、イー
ストは増殖する能力を失い、それにより野生型に復帰す
る能力を失う。
cdc19イーストの熱的不活性化は全ての関連温度(例
えば生地が冷凍される場合の約0℃と、生地が焼成され
る場合の約45℃との間)で、嫌気条件下、さらなる二酸
化炭素発生を実質的に解消する。これは、イーストを、
本発明に係る冷蔵生地組成物に特に適当なものにする。
本発明の題2の態様において、上記生地組成物に使用
される温度感受性イーストは、より高い不活性閾値温度
を有し、そして冷蔵温度で実質的に不活性となるS.cere
visiaeの種のあらゆるものであってよい。そのようなイ
ーストは例えば低温感受性イーストを高温感受性イース
トを交雑させることにより得られる得る。低温感受性突
然変異を有する非常に多くのイースト菌株がある。本発
明のために、これらの突然変異体菌株のどれが利用され
るかは重要ではなく、冷蔵温度での実質的な不活性およ
び高められた温度、すなわち冷蔵温度より高い温度での
実質的に通常の醗酵活性の必要な特性が選択された特定
の菌株に観察されればよい。
低温感受性突然変異体は通常のイースト菌種にもとき
どき見出される。これらの低温感受性突然変異体の単離
は当業者には公知の種々の方法により行われ得る。一つ
の単離方法はリトルウッドおよびデイビスにより「トリ
チウム自滅によるサッカロミセス・セレビシアエにおけ
る温度感受性および栄養要求突然変異体の富化」,Muta
t.Res.Vol.17,pp.315−322(1973)に記載されるような
「トリチウム自滅」富化プロトコルである。上記文献の
技術は参照により本明細書に編入される。
このプロトコルにおいて、イーストの菌株が通常の許
容温度で増殖培地中に置かれ、そして温度は次に冷蔵
(非許容性)温度に下げられる。トリチウム化ウリジン
またはトリチウム化アミノ酸が培養液に供給され得る。
これらの温度で活性のままである細胞はこれらのトリチ
ウム化前駆体を取り込み、そしてトリチウムにより殺さ
れる。これらの低温で不活性である上記細胞は毒性の前
駆体を取り込まず、そしてそれからの低温感受性により
低温を生き残ることができる。
当業者はこのトリチウム自滅法に従って低温感受性イ
ーストを容易に製造できるであろう。したしながら、冷
蔵温度で実質的に不活性になるイーストの以下の菌種が
ATCCから入手可能である:「1ts1」S.cerevisiae(受託
番号ATCC74124),「1ts2」S.cerevisiae(受託番号ATC
C74125),「1ts3」S.cerevisiae(受託番号ATCC7416
4),「1ts4」S.cerevisiae(受託番号ATCC74127),
「1ts5」S.cerevisiae(受託番号ATCC74128),「1ts
6」S.cerevisiae(受託番号ATCC74129),「1ts7」S.ce
revisiae(受託番号ATCC74130)および「1ts8」S.cerev
isiae(受託番号ATCC74131)。
高温感受性イースト菌種と低温感受性菌種との交雑は
イーストにおけるハプロイド突然変異体を製造するため
のあらゆる公知手段により行われ得る。一つのそのよう
なプロトコルはMethod in Yeast Genetics,A Laborator
y Course Manual,コールド・スプリング・ハーバー研究
所出版部,pp.53−59(1990)から誘導され、この文献の
技術は参照により本明細書に編入される。
出願人は、高温感受性イースト菌種と低温感受性菌種
との交雑が、冷蔵生地組成物に膨張剤として使用するた
めに優れたものとする特徴を有する突然変異イースト菌
種を生じることを発見した。イーストにおける高温およ
び低温感受性を結合することにより、不活性化閾値温度
より高く生地組成物の温度を上昇させることによりイー
ストが不活性化され得るだけでなく、いくつかのイース
ト細胞の離れる可能性が不活性となり、そしてより低
温、例えば冷蔵温度での二酸化炭素の発生の継続が低温
増殖感受性をイースト菌種に導入することにより解消さ
れる。
低温感受性イーストにおける低温増殖感受性に対する
一つの可能な機構は「1ts8」S.cerevisiae(上記)に対
して解明されている。この菌種により行われる突然変異
はより低温、例えば冷蔵温度でのあらゆる合成を不可能
にする。それ故に、これらのイーストはそれらの不活性
閾値温度より低温で増殖できない。
高温および低温感受性イーストの特性の結合は、不活
性閾値温度より高く生地組成物のイースト温度を高め、
その後低温感受性突然変異の結果として全てのタンパク
質合成を事実上実質的に不活性にするように冷蔵され
て、ピルビン酸キナーゼ生合成を高める。ピルビン酸キ
ナーゼは実質的に不活性化され、そしてピルビン酸キナ
ーゼは顕著な量でイーストにより生合成され得ないの
で、事実上全ての嫌気的発酵性増殖は解消され、そして
顕著な量の二酸化炭素はイーストにより製造されないで
あろう。イーストの低温感受性突然変異は従って安全機
能を提示し、酸素が不注意にもイーストと接触するよう
になっても(例えばこのイーストで発酵された生地の容
器に空気漏れが生じた場合)、イーストは二酸化炭素を
実質的に製造できない。
本発明に従って生地組成物を製造する際に、温度感受
性イーストは水および粉製品、例えば製粉した小麦と適
当な比率で混合されて、焼成に適当である生地を形成す
る。最終的な調理された生地製品において所望の感触ま
たは味を得るために必要な追加の成分がこの混合の間に
同様に添加されてもよい。そのような成分はこの分野で
は公知であり、そして塩、砂糖、小麦グルテン、生地コ
ンディショナーおよびその他のフレーバー剤を包含す
る。これらの成分の全てが一緒に混合され、均一な生地
組成物とされる。生地を混合するためのさまざまな手段
はこの分野で十分に公知であり、そしてここでは詳細な
議論は必要ない。
生地が一旦混合されたら、イーストは二酸化炭素を発
生し生地を膨化させるであろう。この膨化は適当な温度
で行われ得る。しかしながら、低温感受性を有する上記
イーストが使用されるならば、イーストは冷蔵温度で実
質的に不活性のままであるので、膨化は冷蔵温度よりか
なり高い温度で行われるべきである。商業的な操作にお
いて製造時間を短縮するために、生地を室温より高い温
度に加温して二酸化炭素発生を加速させることは有利で
あろう。それ故に、生地は膨化のために加熱され得る
が、膨化の完了前にイーストの不活性化を回避するため
に生地の多くを不活性閾値温度より低温に保持すること
に注意すべきである。下に記載するように、約36℃の不
活性閾値温度を有するcdc19イーストを用いて十分に作
用することが見出された一態様において、膨化は約30℃
と約35℃との間の温度で行われる。
生地が予め決められた程度まで膨化したら、生地の温
度は不活性閾値温度まで、または望ましくはそれより高
温に高められ得る。生地は均一温度まですぐには加熱さ
れないであろう。生地の外部は生地の内部より室温に近
い温度であり、生地の熱移動の低い効率のために、生地
内に温度勾配を生じる傾向がある。最適には生地はその
中のほとんど、そして好ましくは実質的に全てが閾値に
達し、そして実質的に不完成化されるのに十分な程の長
さで、不活性閾値温度に、またはそれより高く、十分に
ゆっくりと加熱されるか、保持される。
得られるイーストは次いで冷蔵温度で長期間、あらゆ
る顕著な追加容量の二酸化炭素を発生せずに、保存され
得る。用語は本明細書で使用されるように、冷蔵温度は
約0℃と約12℃の間であり、約4℃ないし約7.2℃に及
ぶ温度が好ましい。生地はそのような温度で、なんらか
の不所望の品質の低下なしに、ほとんどの商業的に製造
される冷蔵可能な生地に対する最低の許容される貯蔵寿
命である約90日まで保存され得る。
本発明の別の態様によれば、生地は容器手段、例えば
上記のものに充填される。生地は膨化前に収容され、そ
して容器手段内で膨化されることが好ましい。螺旋型に
巻かれたカンを用いる現在の商業的な充填操作におい
て、生地は容器に収容され、そしてカンの内部圧力が約
15−20psiに達するまで膨化される。本発明に従って、
生地は容器内に収容され、そして容器手段の内部圧力が
約15−20psiに達するまで膨化され、その時点で生地を
不活性閾値温度より高く加熱して実質的にイーストを不
活性化する。詰められた生地製品は次いで冷蔵温度で長
期間保存され得る。
上記のように、室温変化と、生地の中心部の温度にお
ける変化との間の遅延時間を生じ得る生地内に温度勾配
があり得る。膨化および不活性化工程の温度プロフィー
ルはこの遅延時間を考慮して行われるべきである。いく
つの例において、遅延時間は、生地がイーストの不活性
閾値温度まで加熱されるのと同時に高められた温度で膨
化されるのを可能にするのに十分であるべきである。本
方法のそのような態様において、加熱処理の温度プロフ
ィールはスムーズ、すなわち膨化と不活性化工程との間
に明確な分離がなくてもよい。
実施例11:高温および低温感受性イーストの作成 高温に対して感受性を有する、すなわち高められた温
度で実質的に不活性化されるイーストの菌種が、低温感
受性イースト、すなわち低温で実質的に不活性になる
が、高温では基質を発酵する能力を保持しているイース
トと交雑された。高温に感受性であるイーストはcdc19
と表記され、そしてATCCに1993年3月5日にATCC74213
の下に寄託されているサッカロミセス・セレビシアエの
突然変異菌種だった。イーストのこの特定の菌種は約36
℃の不活性閾値温度を有し、そしてその温度またはそれ
高く加熱された場合、偏性好気性菌となる。
使用される高温感受性イースト菌種は、上記のように
ATCCに受託番号ATCC74131で寄託された1ts8イーストで
ある。イースト突然変異菌種1ts8は高められた温度で正
常にふるまい、例えば室温またはそれ以上で利用可能な
基質を発酵できるが、冷蔵温度で実質的に不活性となる
公知低温感受性イースト菌種の代表種である。
高温および低温感受性イースト菌種は、高温感受性突
然変異菌種cdc19を低温感受性突然変異菌種1ts8と交雑
させることにより得られた。上記菌種の交雑のために使
用されるプロトコルはMethod in Yeast Genetics,A Lab
oratory Course Manual,コールド・スプリング・ハーバ
ー研究所出版部,pp.53−59(1990)から誘導され、以下
の通りである: 6つの実質的に平行な線が白色のカードボードシート
上に描かれる。cdc19および1ts8菌種の各々に対して、Y
EPD(YEP+デキストロース)プレートがストリップパタ
ーン上に置かれた。滅菌ループを用いて、菌種がそれら
のそれぞれのプレート上に、上記平行線をガイドとして
用いて塗布し、約25℃に約24時間保温した。
cdc19菌種の押圧がレプリカプレートパッド上に行わ
れた。新鮮なレプリカプレートパッドを用いて、低温感
受性1ts8菌種の押圧が行われた。第2のレプリカパッド
は前の押圧のために使用されたのと同じYEPDプレート上
であるが、第1の押圧に対してほぼ垂直な方向に押しつ
けられ、チェッカーボートに類似するイースト菌株のパ
ターンを得た。この2重に押圧されたYEPDプレートはほ
ぼ25℃で一晩(すなわち約12−15時間)保温された。
このようにして調製されたYEPDプレートは、蒸留水約
1リットルあたり、アミノ酸なしのバクトイースト窒素
塩基約6.7g、グルコース約20gおよびバクトアガー約20g
を含有する合成デキストロース最小培地(SD)プレート
上に押圧された。SDプレートは約25℃で約2日間保温さ
れた。「チェッカーボード」パターンの交点での増殖が
測定され、そして新鮮なSDプレート上にプレーティング
されてハプロイドコロニーからディプロイド(交雑)コ
ロニーが単離される。SDプレート上に単離されたディプ
ロイドコロニーが胞子形成培地(下記の組成)のプレー
ト上に縞状に塗布され、そして約25℃で数日間保温す
る:酢酸カリウム約10g(1重量%)、バクトイースト
エキス約1.0g(0.1重量%)、グルコース約0.5g(0.05
重量%)、バクトアガー約20g(2.0重量%)、バランス
が蒸留水約1000ml。
イースト細胞1白金餌を胞子形成プレートから採取
し、そしてエッペンドルフ(登録商標)微量遠心チュー
ブ中の蒸留水約300マイクロリットルおよびグルスラー
ゼ15マイクロリットルと混ぜた。この溶液はボルテック
スにより混合され、そしてほぼ30℃で約30分間保温し
た。保温した試料は短時間超音波処理し、胞子クラスタ
ーを分離した。超音波処理試料の約10-4、10-5、および
10-6の連続希釈がYEPD上にプレーティングされ、そして
約25℃で約2日間貯蔵する。
3つのレプリカプレートが、10-4、10-5、および10-6
の希釈プレートの各々から調製される。各希釈物からの
3つのプレートの1つは約12℃で貯蔵され、別のものは
約25℃で貯蔵され、そして各希釈物からの第3のプレー
トは約38℃で貯蔵された。これらのプレートをそれぞれ
の温度で4日間保温する。cdc19×1ts8ハプロイドコロ
ニーは、それらの高温感受性が38℃での増殖を実質的に
抑制し、そして低温感受性が約12℃でイーストの増殖を
非常に低い速度に低下させるので、25℃でのみ増殖する
であろう。
cdc19菌種、1ts8菌種および上記のようにして作成さ
れたcdc19×1ts8菌種の増殖速度が約12℃、約25℃およ
び約38℃で比較された。cdc19イーストは約12℃および
約25℃の両方で十分に増殖し得たが、約38℃では実質的
に増殖できなかった。1ts8イーストは3種の全ての温度
で増殖できたが、このことは1ts8菌種は温度が約10℃未
満に低下するまで活性を実質的に停止しないので、予測
されることである。しかし、1ts8イーストの約12℃での
増殖はcdc19菌種のものに比べかなり低かった。cdc19×
1ts8イーストは約12℃でごくわずか増殖し、約25℃で全
く十分に増殖し、そして約38℃で実質的に増殖できなか
った。
本発明は好ましい態様について記載されたけれども、
本発明はそれらの態様に制限されるものではなく、その
ような制限は添付した請求の範囲に見出されるのみであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:865) (31)優先権主張番号 08/087,616 (32)優先日 平成5年7月2日(1993.7.2) (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 08/144,236 (32)優先日 平成5年10月27日(1993.10.27) (33)優先権主張国 米国(US) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A21D 6/00 - 10/00 C12N 1/18 BIOSIS(DIALOG)

Claims (23)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粉、水、ガラクトース及び/叉はフルクト
    ースを発酵できるイースト、及びガラクトース及び/又
    はフルクトースを含有する、イーストを混ぜた冷蔵可能
    な生地製品。
  2. 【請求項2】イーストにより発酵され得るガラクトース
    及び/叉はフルクトースの量が、ガラクトース及び/叉
    はフルクトースの全てがイーストにより代謝されたと
    き、生地の膨化の有効な程度を越えないように選択され
    る請求項1記載の生地製品。
  3. 【請求項3】密封された空洞を有する容器であって、生
    地が前記空洞内に配置される前記容器をさらに有する請
    求項1または2記載の生地製品。
  4. 【請求項4】以下の工程: (a)粉、水、ガラクトース及び/又はフルクトースを
    発酵できるイースト、およびガラクトース及び/叉はフ
    ルクトースを混合し、 (b)生地を容器に入れ、そして容器内で生地を膨化さ
    せ、そして (c)前記容器内の前記膨化生地を冷蔵温度で少なくと
    も2週間保存する、 ことからなる冷蔵可能な生地製品の製造方法。
  5. 【請求項5】混合されて生地を形成するイーストおよび
    該イーストにより発酵され得るガラクトース及び/叉は
    フルクトースの量が生地の膨化の有効な程度を越えない
    ように選択される請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】生地を容器内で高められた温度に保存する
    ことにより生地が膨化される請求項4または5おいずれ
    か1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】約10と約20psiの間の内部圧力が容器内に
    発生するまで、生地が膨化される請求項4、5または6
    のうちのいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】請求項4または7のいずれか1項に記載の
    方法に従って製造される生地製品。
  9. 【請求項9】以下の特性: (a)粉に固有である炭水化物を実質的に発酵できな
    い、 そして (b)アデニン補足なしにガラクトースを発酵できる、 を示す「GAL+」イーストからなる、小麦粉を含有する
    冷蔵可能な生地を発酵させるためのイースト。
  10. 【請求項10】粉、水、前記粉に本来生じるガラクトー
    ス及び/叉はフルクトースのみを発酵できるイーストか
    らなり、前記発酵され得る本来生じるガラクトース及び
    /叉はフルクトースの量が生地100gあたりCO2約200mLを
    得るのに必要な量を超えない、イーストを混ぜた冷蔵可
    能な生地製品。
  11. 【請求項11】前記イーストにより発酵され得るガラク
    トース及び/叉はフルクトースの追加の本来生じない量
    をさらに含む請求項10記載の生地製品。
  12. 【請求項12】イーストがフルクトース以外の生地中に
    本来生じるあらゆる炭水化物を実質的に発酵できない請
    求項10または11のいずれか1項に記載の生地製品。
  13. 【請求項13】粉、水およびホスホグルコースイソメラ
    ーゼまたはグルコース6−ホスフェートデヒドロゲナー
    ゼを実質的に産生できないイーストを、該イーストがグ
    ルコースを発酵するのに有効な量で含有するイーストを
    混ぜた冷蔵可能な生地製品。
  14. 【請求項14】フルクトースの人工的添加をさらに含む
    請求項13記載の生地製品。
  15. 【請求項15】粉、水およびフルクトース6−ホスフェ
    ートを製造するために選択された糖のみをホスホリル化
    できる「PGI−/G6PDH−」イーストからなり、前記粉中
    に本来生じる前記糖の全量が約200mL CO2/生地100gを得
    るのに必要な量を超えない、イーストを混ぜた冷蔵可能
    な生地製品。
  16. 【請求項16】イーストがフルクトースを発酵できる
    が、グルコースを実質的に発酵できない請求項15記載の
    生地製品。
  17. 【請求項17】小麦粉中に本来生じるあらゆるその他の
    糖を実質的に発酵できない、フルクトースを発酵できる
    「PGI−/G6PDH−」サッカロミセス セレビシエ種のイ
    ースト。
  18. 【請求項18】前記イーストがフルクトースを発酵でき
    るが、グルコースを実質的に発酵できない請求項17記載
    のイースト。
  19. 【請求項19】前記イーストが実質的にホスホグルコー
    スイソメラーゼ陰性であり、そして実質的にグルコース
    6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ陰性である請求項17
    または18のうちのいずれか1項に記載のイースト。
  20. 【請求項20】以下の特性: (a)小麦粉に固有である炭水化物を実質的に発酵でき
    ない、そして (b)アデニン補足なしにガラクトースを発酵できる、 を示すディプロイドイーストからなる、小麦粉を含有す
    る冷蔵可能な生地を発酵させるためのイースト。
  21. 【請求項21】以下の特性: (a)小麦粉に固有である炭水化物を実質的に発酵でき
    ない、 (b)ガラクトースを発酵できる、および (c)約0℃と約12℃の間の温度で実質的に不活性に成
    る、 を示すサッカロミセス セレビシエ種のイーストから成
    る、 小麦粉を含有する冷蔵可能な生地を発酵させるためのイ
    ースト。
  22. 【請求項22】イーストが約4℃と約7.2℃の間の温度
    で実質的に不活性になる請求項21記載のイースト。
  23. 【請求項23】小麦粉、水および請求項20ないし22のい
    ずれか1項に記載のイーストを含有する冷蔵可能な生地
    組成物。
JP52018094A 1993-03-05 1994-03-04 イーストを混ぜた冷蔵生地製品 Expired - Fee Related JP3484483B2 (ja)

Applications Claiming Priority (9)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US2692793A 1993-03-05 1993-03-05
US08/026,927 1993-03-05
US3221993A 1993-03-19 1993-03-19
US08/032,219 1993-03-19
US08/087,616 1993-07-02
US08/087,616 US5492702A (en) 1991-07-18 1993-07-02 Substrate-limited yeast-leavened refrigerated dough products
US08/144,236 US5494686A (en) 1991-07-18 1993-10-27 Substrate-limited yeast-leavened refrigerated dough products
US08/144,236 1993-10-27
PCT/US1994/002333 WO1994019955A1 (en) 1993-03-05 1994-03-04 Yeast-leavened refrigerated dough products

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08509602A JPH08509602A (ja) 1996-10-15
JP3484483B2 true JP3484483B2 (ja) 2004-01-06

Family

ID=27487537

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP52018094A Expired - Fee Related JP3484483B2 (ja) 1993-03-05 1994-03-04 イーストを混ぜた冷蔵生地製品

Country Status (10)

Country Link
EP (1) EP0687144B2 (ja)
JP (1) JP3484483B2 (ja)
AT (1) ATE185047T1 (ja)
CA (1) CA2155675C (ja)
DE (1) DE69420951T3 (ja)
DK (1) DK0687144T4 (ja)
ES (1) ES2139736T5 (ja)
GR (1) GR3031337T3 (ja)
HK (1) HK1012211A1 (ja)
WO (1) WO1994019955A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5744330A (en) * 1992-01-31 1998-04-28 The Pillsbury Company Catabolite non-repressed substrate-limited yeast strains
CA2959306A1 (en) * 2014-08-27 2016-03-03 General Mills, Inc. Glutamic acid containing gluten-free dough
AU2017297378A1 (en) * 2016-07-14 2019-01-24 General Mills, Inc. Stable, packaged, refrigerated dough compositions
CN113632921B (zh) * 2020-04-27 2024-07-12 白象食品股份有限公司 一种预发酵速冻生胚及其制备方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE3673672D1 (de) * 1985-03-27 1990-10-04 Kyowa Hakko Kogyo Kk Gefrierresistenter teig und darin verwendbarer mikroorganismus.
JPS61231993A (ja) * 1985-04-09 1986-10-16 Oriental Yeast Co Ltd 新規パン酵母
JPH02238876A (ja) * 1989-03-14 1990-09-21 Natl Food Res Inst 新規パン酵母
IL97067A (en) * 1990-02-12 1994-05-30 Gist Brocades Nv Dough-limited doughs
CH681307A5 (ja) 1990-11-09 1993-02-26 Nestle Sa
EP0594747B2 (en) * 1991-07-18 2010-02-17 General Mills Marketing, Inc. Yeast-leavened refrigerated dough products

Also Published As

Publication number Publication date
GR3031337T3 (en) 1999-12-31
ES2139736T5 (es) 2005-10-16
WO1994019955A1 (en) 1994-09-15
CA2155675A1 (en) 1994-09-15
HK1012211A1 (en) 1999-07-30
ATE185047T1 (de) 1999-10-15
DE69420951T3 (de) 2006-07-27
EP0687144A1 (en) 1995-12-20
DE69420951D1 (de) 1999-11-04
DK0687144T4 (da) 2005-04-25
EP0687144B1 (en) 1999-09-29
DE69420951T2 (de) 2000-05-04
JPH08509602A (ja) 1996-10-15
ES2139736T3 (es) 2000-02-16
CA2155675C (en) 2008-05-27
EP0687144B2 (en) 2005-04-06
DK0687144T3 (da) 2000-01-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5494686A (en) Substrate-limited yeast-leavened refrigerated dough products
D'amore et al. Ethanol tolerance of yeast
CA1333888C (en) Fermentation
Hernandez-Lopez et al. Osmotolerance and leavening ability in sweet and frozen sweet dough. Comparative analysis between Torulaspora delbrueckii and Saccharomyces cerevisiae baker's yeast strains
Williams et al. Functional ingredients
US5571544A (en) Substrate-limited yeast-leavened refrigerated dough products
US6465027B1 (en) Ready-to-use long conservation baker's leaven
CA2204634C (en) Dry bakery products and a process for their preparation
CA2331491A1 (en) Methods and compositions for making fermented cereal products
US5540940A (en) Substrate-limited, yeast leavened refrigerated dough products and process of making
Randez-Gil et al. Construction of baker's yeast strains that secrete Aspergillus oryzae alpha-amylase and their use in bread making
JP3484483B2 (ja) イーストを混ぜた冷蔵生地製品
JP2000139326A (ja) パン生地の製造方法
US4643901A (en) Yeast strains, method of production and use in baking
Myers et al. Loading ofSaccharomyces cerevisiaewith glycerol leads to enhanced fermentation in sweet bread doughs
US5514386A (en) Dough compositions containing temperature sensitive yeast and a temperature sensitive yeast strain and process of making
CA2616949C (en) Yeast-leavened refrigerated dough products
JP4411864B2 (ja) 新規パン酵母
KR100430638B1 (ko) 신규 효모 유전자
JP2766374B2 (ja) サワードーの調製方法
JP3966887B2 (ja) 新規酵母遺伝子
Stear Industrial Propagation and Production of Yeast for the Baking Industry

Legal Events

Date Code Title Description
S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees