JP3476124B2 - 摩擦材の品質評価方法 - Google Patents

摩擦材の品質評価方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、産業機
械、鉄道車両などの動力伝達系のクラッチフェーシング
などに用いられる湿式摩擦材の寿命を、非破壊により評
価する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】例えば自動車の自動変速機内には、相手
材との摩擦によって動力を伝達する湿式摩擦材が用いら
れている。この湿式摩擦材としては、有機繊維を基材と
し、それに各種摩擦調整剤などの充填材を配合するとと
もに、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる結合
材を含浸固化させてなる紙質の摩擦材が多く用いられて
いる。 【0003】この湿式摩擦材は、有機繊維と充填材との
分散液から湿式抄造して紙状基材を形成し、それにフェ
ノール樹脂などの結合材を含浸させた後、熱プレス法な
どにより結合材を硬化させることにより製造されてい
る。ところで湿式摩擦材の寿命は、その板厚、結合材の
含浸膜厚などによって決定される。ところが湿式抄造に
よって抄紙された紙状基材を用いているため、ノギスや
マイクロメータなどを用いて板厚を測定しようとすると
繊維の変形により測定値が変動する。また断面観察や重
量測定などによって板厚及び結合材の濃度分布を測定す
ることも可能であるが、破壊検査であったり高精度が望
めないという欠点がある。 【0004】そこで従来は、加圧耐久性を試験すること
で実用に即した寿命評価が行われている。すなわち紙質
の摩擦材を鋼板に貼付けた実機の状態のものを自動変速
機油中に浸し、加温しながら加圧と解放のサイクルを繰
り返して、摩擦材が破壊するまでの実働繰り返し回数を
もって寿命を判定している。ところが上記加圧耐久性試
験による評価方法では、摩擦材が実際に破壊寿命に至る
まで上記加圧耐久試験が行われるために、試験時間がき
わめて長大となるという不具合があった。 【0005】そこで特開平10−111230号公報には、摩擦
材単体を試験片として加圧耐久試験を所定回数行い、そ
の後引張り強度を測定して新品の摩擦材の引張り強度に
対する強度比を算出し、その算出値に基づいて引張り強
度比が50%となる点の加圧耐久回数を予測して破壊寿
命とする評価方法が開示されている。この評価方法によ
れば、加圧耐久試験を破壊限界まで行うことなく、それ
より遙か以前の2点の加圧回数だけ行うことで破壊寿命
を予測することができる。したがって試験時間を短縮す
ることができる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところが上記公報に開
示された評価方法では、試験時間はある程度短縮できる
ものの、生産される摩擦材全部を評価するには長大な時
間とコストが必要となる。また上記方法は破壊検査法で
もある。したがって生産されたロットから数点サンプリ
ングしたものについて評価するに止まらざるを得ず、全
数検査は困難であるため品質評価の精度には限界があっ
た。 【0007】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、さらに簡単にかつ精度高く湿式摩擦材の寿
命を評価できるようにすることを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の摩擦材の品質評価方法の特徴は、紙状基材からなる
摩擦材の品質を非破壊により評価する方法であって、特
定波長の電磁波を吸収する電磁波吸収剤を含有する結合
材を用いて摩擦材を形成し、摩擦材に特定波長の電磁波
を照射し摩擦材から放射される電磁波強度を測定して、
予め作成された電磁波強度と寿命との関係から摩擦材の
寿命を評価することにある。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明の品質評価方法では、特定
波長の電磁波を吸収し特定波長の電磁波を放射する電磁
波吸収剤を含有する結合材を用いて摩擦材を形成してい
る。結合材は摩擦材の表面から空孔内に含浸されるた
め、摩擦材の表面側の濃度が高く中心部に向かうにつれ
て濃度が低くなるという分布をもち、したがって電磁波
吸収剤も同様の分布をもって摩擦材中に含まれている。 【0010】本発明者は、摩擦材に含まれる電磁波吸収
剤から放射される電磁波強度と摩擦材に含浸されている
結合材の含浸膜厚との関係と、摩擦材に含浸されている
結合材の含浸膜厚と寿命との関係との間に緊密な相関関
係が存在することを見出して本発明を完成した。すなわ
ち摩擦材の寿命は、結合材の含浸膜厚に比例し、結合材
が内部まで含浸しているほど長寿命となる。一方、特定
波長の電磁波を吸収する電磁波吸収剤を含有する結合材
を用いて形成された摩擦材から放射される電磁波強度
も、結合材の含浸膜厚に比例することが明らかとなっ
た。したがって、摩擦材から放射される電磁波強度を測
定することで、結合材の含浸膜厚を推定することがで
き、寿命を推定することができる。 【0011】したがって本発明の品質評価方法によれ
ば、非破壊で容易に摩擦材の寿命を推定評価することが
できる。したがって生産されたロットの全数検査も可能
となり、品質検査の精度が著しく向上する。本発明の品
質評価方法に用いられる摩擦材としては、電磁波吸収剤
を含むこと以外は従来と同様の、基材繊維と充填材と結
合材とからなる摩擦材を用いることができる。基材繊維
としては、ガラス繊維、ロックウール、チタン酸カリウ
ム繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミ
ナ繊維、カオリン繊維、ボーキサイト繊維、カヤノイド
繊維、ホウ素繊維、マグネシア繊維、金属繊維などの無
機繊維、リンターパルプ、木材パルプ、合成パルプ、ポ
リエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリイミド系繊
維、ポリビニルアルコール変性繊維、ポリ塩化ビニル繊
維、ポリプロピレン繊維、ポリベンゾイミダゾール繊
維、アクリル繊維、炭素繊維、フェノール繊維、ナイロ
ン繊維、セルロース繊維などの有機繊維の一種又は複数
種を用いることができる。少なくとも無機繊維などの耐
熱性に優れた繊維を含むことが好ましい。 【0012】また充填材としては、硫酸バリウム、炭酸
カルシウム、炭酸マグネシウム、炭化珪素、炭化ホウ
素、炭化チタン、窒化珪素、窒化ホウ素、アルミナ、シ
リカ、ジルコニア、カシューダスト、ラバーダスト、珪
藻土、タルク、カオリン、酸化マグネシウム、二硫化モ
リブデンなどの粉末を用いることができる。結合材とし
ては、従来一般に用いられているフェノール樹脂などの
耐熱性に優れた有機熱硬化性樹脂、あるいは金属アルコ
キシド及び有機基置換金属アルコキシドの少なくとも一
方を加水分解して調製されたゾル溶液を乾燥・焼成して
なる有機無機質の複合結合材を用いることができる。特
に後者の有機無機複合結合材を用いれば、高い摩擦係数
をもつ湿式摩擦材となるので好ましい。 【0013】そして電磁波吸収剤としては、顔料、染
料、蛍光色素などが例示される。この電磁波吸収剤は、
摩擦材の摩擦特性に影響を及ぼさないものが望ましく、
少量の添加量で強い電磁波を放射するものが望ましい。
例えば顔料や染料であれば、光の照射により固有の波長
の光を吸収して固有の波長の可視光を発色するので、そ
の発色のスペクトル強度を測定することで結合材の含浸
膜厚を推定することができる。また電磁波吸収剤が蛍光
色素であれば、特定の励起光を照射することで特定波長
の蛍光を発色するので、その発色のスペクトル強度を測
定することで結合材の含浸膜厚を推定することができ
る。 【0014】また電磁波吸収剤は、少なくとも結合材の
含浸時に液体として結合材と相溶するものが望ましい。
これにより結合材の濃度分布と電磁波吸収剤の濃度分布
を容易に同一とすることができ、評価精度が一層向上す
る。この電磁波吸収剤の添加量には特に制限がなく、電
磁波吸収剤の種類に応じて適宜決定することができる。 【0015】本発明の品質評価方法に用いる摩擦材を製
造するには、基材繊維と充填材の水分散液を調製し、長
網式抄造機などに流出させ原料を堆積させる。そして除
水後に圧搾・乾燥して抄紙体とし、フェノール樹脂など
の結合材と電磁波吸収剤を含む溶液をこの抄紙体に含浸
させ加熱硬化させることで製造することができる。また
有機無機質の複合結合材を用いる場合には、金属アルコ
キシド及び有機基置換金属アルコキシドの少なくとも一
方を加水分解して形成されたゾル溶液に電磁波吸収剤を
混合した溶液を上記抄紙体に含浸させ、乾燥・焼成する
ことで製造することができる。あるいは上記アルコキシ
ド溶液に電磁波吸収剤を混合しておき、それから形成さ
れたゾル溶液を含浸させてもよい。後者の方法によれ
ば、ゾル中に電磁波吸収剤を含ませることができるの
で、結合材中に電磁波吸収剤を一層均一に分散させるこ
とができ、測定精度が一層向上する。 【0016】 【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。セルロース短繊維とカシューダストとが重量比で
5:1の比率で混合された水分散液を調製した。そして
長網式抄造機を用い、その無終端長網上に水分散液を流
出させ除水させた。得られた抄紙基材を二本のロールで
圧搾し、乾燥ドラムで乾燥させて紙状基材を得た。 【0017】次にガラス容器にエタノール28重量部
と、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)11重量部
と、トリエトキシメチルシラン(CH3Si(OC2H5)3))9
重量部と、有機蛍光色素であるローダミン6Gを0.2
重量部とを秤量し、10分間攪拌した。その後、この溶
液を攪拌しながら0.05Nの塩酸水溶液を20重量部
滴下し、さらに24時間攪拌してゾル溶液を調製した。
そして所定形状に裁断された上記紙状基材にこのゾル溶
液を含浸させ、乾燥後加熱硬化させることで湿式摩擦材
を得た。複合結合材の含浸量は、紙状基材100重量部
に対して20重量部である。 【0018】得られた摩擦材に波長525nmの励起レ
ーザー光を照射し、摩擦材から放射される波長580n
mの蛍光の強度を図1に示す蛍光強度測定装置を用いて
測定した。この蛍光強度測定装置は、分光器1と、光電
子倍増管2と、積分器3と、レーザー光照射装置4とか
ら構成されている。そしてレーザー光照射装置4によっ
て摩擦材5に特定波長(525nm)の励起レーザー光
が照射され、摩擦材5から放射される蛍光はレンズ10
を通過することで収束されて分光器1に入射する。分光
器1では入射した光が分光され、特定波長(580n
m)の蛍光が光電子倍増管2によって増幅される。そし
て増幅された蛍光の光強度が積分器3によって測定され
る。 【0019】そして、上記摩擦材の断面を顕微鏡にて観
察し、結合材の含浸膜厚を測定した。また、テトラエト
キシシラン、トリエトキシメチルシラン及びローダミン
6Gの重量比はそのままで、それらの総重量を変動させ
たこと以外は上記製造方法と同様にして、結合材の含浸
膜厚が異なる摩擦材をそれぞれ製造し、同様にして摩擦
材から放射される波長580nmの蛍光の強度を測定し
た。これらの結果を、結合材の含浸膜厚が0.5mmの
場合の蛍光強度を1とした相対比を縦軸にとり、結合材
の含浸膜厚を横軸にとって図2に示す。 【0020】図2よりわかるように、結合材の含浸膜厚
と蛍光強度比とは正の相関関係を示し、含浸膜厚が大き
いほど蛍光強度が大きくなっている。一方、上記と同様
にして製造された摩擦材をそれぞれ鋼板に貼付け、加圧
耐久試験機を用いて摩擦材が破壊するまでの実働繰り返
し回数をそれぞれ測定した。加圧耐久試験条件は表1に
示すとおりである。なお、それぞれの摩擦材の硬度は同
一となっている。 【0021】 【表1】 それぞれの摩擦材の結果を、結合材の含浸膜厚が0.5
mmの場合の繰り返し回数を1とした相対比(寿命比)
を縦軸にとり、結合材の含浸膜厚を横軸にとって図3に
示す。 【0022】図3よりわかるように、結合材の含浸膜厚
と寿命比とは正の相関関係を示し、含浸膜厚が大きいほ
ど寿命比が大きくなっている。したがって図2と図3よ
り、製造される摩擦材の寿命を非破壊で推定することが
可能となる。例えば、ローダミン6Gを上記と同量含む
同種の結合材を用いて製造された摩擦材の蛍光強度を上
記と同様に測定し、結合材の含浸膜厚が0.5mmの場
合の蛍光強度との比を算出する。その値を図2の縦軸に
当てはめてグラフから横軸の数値を読むことにより、結
合材の含浸膜厚が推定される。そしてその含浸膜厚を図
3の横軸に当てはめてグラフから縦軸の数値を読むこと
により、結合材の含浸膜厚が0.5mmの場合の寿命と
の比がわかり、その摩擦材の寿命を推定することができ
る。 【0023】 【発明の効果】すなわち本発明の摩擦材の品質評価方法
によれば、非破壊で容易に摩擦材の寿命を推定評価する
ことができる。したがって生産されたロットの全数検査
が可能となり、品質検査の精度が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例で用いた蛍光強度測定装置の説
明図である。 【図2】本発明の実施例で得られた結合材膜厚と蛍光強
度比との関係を示すグラフである。 【図3】本発明の実施例で得られた結合材膜厚と寿命比
との関係を示すグラフである。 【符号の説明】 1:分光器1 2:光電子倍増管 3:積分器
3 4:レーザー光照射装置 5:摩擦材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 21/00 - 21/61 G01B 11/00 - 11/30 JICSTファイル(JOIS) 実用ファイル(PATOLIS) 特許ファイル(PATOLIS)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 紙状基材からなる摩擦材の品質を非破壊
    により評価する方法であって、特定波長の電磁波を吸収
    する電磁波吸収剤を含有する結合材を用いて摩擦材を形
    成し、該摩擦材に特定波長の電磁波を照射し該摩擦材か
    ら放射される電磁波強度を測定して、予め作成された電
    磁波強度と寿命との関係から該摩擦材の寿命を評価する
    ことを特徴とする摩擦材の品質評価方法。
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