JP3447322B2 - マウス細胞表面抗原に対するハムスターモノクローナル抗体 - Google Patents

マウス細胞表面抗原に対するハムスターモノクローナル抗体

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JP3447322B2 JP12390593A JP12390593A JP3447322B2 JP 3447322 B2 JP3447322 B2 JP 3447322B2 JP 12390593 A JP12390593 A JP 12390593A JP 12390593 A JP12390593 A JP 12390593A JP 3447322 B2 JP3447322 B2 JP 3447322B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マウス細胞表面抗原に
対するモノクローナル抗体に関する。
【0002】
【従来技術】哺乳類の細胞の発生の各段階での細胞の死
滅の多くがいわゆるアポトーシスと呼ばれる「計画的な
死」によることが知られており、このアポトーシスと緊
密な関係にある細胞表面の物質(ポリペプチド)が「細
胞表面抗原(FasまたはFas抗原)」である。アポトー
シスは、種々の細胞の交替、死滅に際して観察されてい
る[ウイリーら(Wyllie et al.)Int. Rev. Cytol. 6
8: 251-306(1980)]。これはまた、免疫細胞(胸腺細
胞)の死や腫瘍細胞の死滅の形態であることから、生理
学および医学分野で注目されている。例えば、胸腺にお
いて、Fasは、前駆体T細胞がT細胞になる過程での該
前駆体細胞の死滅に関与する可能性が指摘されている
[ワタナベ−フクナガら(Watanabe-Fukunaga,R.) Natu
re 356: 314-317 (1992)
【0003】また、TNFとFas抗原とはダウンレギュ
レーションの関係にあり、TNFの細胞毒性作用の発現
にFas抗原が加担していることが推測されている。とこ
ろで、細胞表面のTNFレセプター(I型およびII
型)、神経成長因子(NGF)レセプター、B細胞抗原
CD40およびT細胞抗原OX40等は、すべて生理学
的に重要な細胞表面膜タンパク質群を構成しておりNG
FR/TNFRファミリーと称される。Fas抗原もこ
のファミリーに属している。[イトウら(Itoh, N., Ce
ll 66:233-243 (1991); ワタナベ−フクナガら(Watanab
e-Fukunaga,R., J.Immunol. 148: 1274-1279 (199
2)]。
【0004】さらに本発明者らは先の研究でマウスのリ
ンパ増殖性突然変異(lpr)をコードする構造遺伝子
は、Fas抗原遺伝子であることを示した[ワタナベ−
フクナガ(Watanabe-Fukunaga,R) Nature 356:314-317
(1982)]。また、悪性B−細胞およびT−細胞系で高度
に発現されているAPO−1抗原がFas抗原と同定され
た[オームら(Oehm,A., J.Biol.Chem. 267: 10709-1071
5 (1992)]。
【0005】一方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感
染細胞が抗Fasモノクローナル抗体の細胞死滅作用に対
して高い感受性を有していること、並びにインターフェ
ロン−γ(INF−γ)で処理されたヒト結腸がんHT
−29細胞には細胞表面Fas抗原が誘導され、該腫瘍細
胞の抗Fas抗体の細胞毒性作用に対する感受性が高めら
れることが示されている。これらの研究結果はFas抗原
に特異的なモノクローナル抗体の、HIV感染症治療お
よび結腸がん治療における有用性を強く示唆するもので
ある。
【0006】上記のことから、Fas抗原に特異的な抗体
を用いてFas抗原を発現する細胞を特異的にアポトーシ
スにより死滅させることが可能であり、その臨床面での
有用性が予測される。これに関連し、Fas抗原に対する
作動性抗体(agonistic antibody)を、EB−ウイルス
誘発性リンパ増殖性病巣[ファークら(Falk,M.H.) Blo
od 79: 3300-3306 (1992)]、HTLV−1関連悪性疾
患[デバチンら(Debatin,K-M.) Lancet 335: 497-500
(1990)]またはエイズ患者[コバヤシら(Kobayashi,N.)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87: 9620ー9624 (1990)]に
投与することが提案された。
【0007】しかしながら、安全で有効な治療を達成す
るには、臨床適用の前にマウスなどを用いた十分な動物
実験を重ねる必要がある。既に、ヒトFas抗原に対する
マウスモノクローナル抗体は得られているが、それは、
ヒトFas抗原を発現している細胞に対してのみ溶解作用
を示し、マウスFas抗原を発現している細胞には作用し
ないことが分かっている[ヨネハラら、J. Exp. Med. 1
69: 1747-1756(1989)]。従って、上記の目的を達成する
には、マウスFas抗原に対するハムスターモノクローナ
ル抗体を得る必要がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、マウスF
as抗原に特異的なハムスターモノクローナル抗体を供給
することを目的として研究を重ね、マウスFas抗原と特
異的に反応するモノクローナル抗体の開発に成功した。
以下、本明細書中、単に抗Fas抗体というときは、本発
明のマウス細胞表面抗原に特異的なハムスターモノクロ
ーナル抗体を指すものとする。本発明のモノクローナル
抗体はマウスミエローマ細胞とマウス細胞表面抗原を発
現するW4形質転換細胞で免疫された哺乳類の脾臓細胞
とを融合させ、目的の抗体を生産する融合細胞をクロー
ン化することにより得られるハイブリドーマJo2を培
養することにより製造される。
【0009】本発明の抗Fas抗体は以下の特性を有す
る。 (1)マウス細胞表面抗原を発現する形質転換細胞に対
して用量依存性の細胞溶解作用を示すが、マウス細胞表
面抗原を発現しない細胞には細胞溶解作用を示さず、
(2)マウス胸腺細胞のサブセットの内CD4+CD
+、CD4+CD8-およびCD4-CD8+を免疫化学
的に認識するがCD4-CD8-を認識せず、(3)マウ
スに腹腔内投与した時、正常なマウスの胸腺および肝臓
の細胞の細胞表面抗原を免疫化学的に認識し、アポトー
シスに基づく肝細胞の死をもたらし、数時間以内にマウ
スを死に至らしめるが、細胞表面抗原を発現しないMR
L−lprlprマウスに腹腔内投与した時には、そのよう
な細胞死および個体死をもたらさない。
【0010】本発明のモノクローナル抗体を生産するハ
イブリドーマはFERM P−13635の下で茨城県
筑波市の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
に寄託されているハイブリドーマJo2を培養すること
により得られる。
【0011】本発明のハイブリドーマは、免疫原として
マウスFas抗原を発現するW4形質転換細胞で免疫化し
た哺乳類(ホスト)から得た抗体産生細胞とミエローマ
細胞とを常法に従って融合させ、目的のモノクローナル
抗体を産生するハイブリッド融合細胞をクローン化する
ことにより得られる。W4細胞は、WR19L細胞(A
TCC,TIB52)を、マウスFas抗原cDNA[ワ
タナベ-フクナガ(Watanabe-Fukunaga, R., J.Immunol.1
48, 1274-1279(1992)]を保持するpEF−BOS発現
ベクター[ミズシマとナガタ(Mizushima and Nagata),
Nucleic.Acids Res. 18, 5322(1990)]で形質転換して
得られる。
【0012】免疫動物(ホスト)としてはハムスター、
ラットなどの哺乳類が使用可能である。ホスト動物を免
疫するには、免疫原であるW4細胞の懸濁液(好ましく
は2000rad照射処理したもの)を動物の皮下あるい
は腹腔内に注射する。接種量は動物、目的とする免疫化
の程度によって異なるが、通常、1回あたり106〜1
7細胞/動物で、1〜2週間ごとに数回、好ましくは
1週間ごとに6回行う。最終感作の1〜5日後に脾臓を
摘出し、抗体産生細胞として用いる。抗体産生細胞と融
合させる骨髄腫細胞も当業者に既知であり、マウス、ラ
ット、ヒトなどに由来するものを用いることができる。
そのようなミエローマ細胞は市販されており、例えばP
3X63Ag8U.1がある。
【0013】細胞融合は文献記載の周知の方法[サンチ
ェ−マドリードら(Sanchez-Madrid,F.) J. Immunol.
130: 309-312 (1983);ヒラタら(Hirata,Y),J.Immuno
l. 143: 2900-2906 (1989)等]に従って行うことができ
る。通常、融合促進剤として50%ポリエチレングリコ
ールを含有するRPMI 1640等の培地で融合さ
せ、細胞融合によって得られた細胞を選択し、クローニ
ングし、目的のハイブリドーマを得る。通常、細胞をH
AT等の選択培地を含むマイクロタイタープレート内で
培養し、適宜選択培地を交換して培養を続け、骨髄腫細
胞を死滅させる。ハイブリドーマが成育したウエルの上
清における抗体の存在をスクリーニングするには、様々
な方法が使用可能であるが、本明細書の実施例では、マ
ウスFas抗原を発現するJ6細胞の細胞表面のマウスF
as抗原との結合活性をFACS(Fluorescent Activate
d Cell Sorter)分析法で調べて該スクリーニングを行っ
ている。しかし、これに限定されるものではない。最後
に抗体産生の認められたウエルの細胞を限界希釈法等で
クローニングを行い、目的のモノクローナル抗体を生産
する安定なハイブリドーマを得る。このハイブリドーマ
によるモノクローナル抗体の製造は、当業者既知のイン
ビトロまたはインビボの方法で行うことができる。
【0014】例えば、血清不含培地(ALM−V培地、
Gibco)などの適当な培地で培養し、その上清から精製マ
ウス抗Fas抗体を得ることができる。精製は、例えば、
培養培地または腹水に硫安を加えて分画し、プロテイン
A−アガロース(Pharmacia)を用いた、アフィニティー
クロマトグラフィー等を用いて行う。
【0015】以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳し
く説明するが、これらの実施例は本発明を制限するもの
ではない。実施例1 マウスFas抗原に対するハムスターモノクロ
ーナル抗体の製造 1. 材料 免疫動物(ホスト):8週令雌性アルメニア(Armenia
n)ハムスター(日本クレア) 骨髄腫細胞:P3X63Ag8U 1 免疫原:W4細胞 免疫原である、マウスFas抗原を発現する形質転換体
(W4)の調製は以下の方法で行う。
【0016】1)発現ベクターpEFMF1の構築 2μgのプラスミドpMF1[ワタナベ−フクナガら,
(Watanabe-Fukunaga,R. J.Immunol. 148, 1274-1279(1
992)]からFascDNAを含有する1.5kbXhoI
断片を調製し、それを哺乳類発現プラスミドpEF−B
OS[ミズシマ(Mizusima)およびナガタ(Nagata) Nucl
eic Acids Res. 18: 5322 (1990)]のBstXIサイト
にBstXIアダプターを用いて導入し、ヒトペプチド
鎖延長因子1α遺伝子のプロモーターのコントロール下
にFasをコードするcDNAを含有する発現ベクター
pEFMF1を構築した。
【0017】2)形質転換 マウスT−細胞リンパ腫WR19L細胞の形質転換は以
下の方法で行った。10%FCS含有RPMI1640
培地で増殖させたWR19L細胞(ATCC TIB5
2)[キネブチ(T. Kinebuchi) Tokyo Institute for
Immunopharmacology, Inc. より供与]1×107
(0.8ml中)を、ネオマイシン耐性付与遺伝子を含
有するpSTneoB(0.2μg)およびApaLI
消化pEFMF1(25μg/ml)で、電気穿孔法
[ポッターら(Potter et al.) Proc. Natl.Acad. Sci.
USA 81: 7161-7165(1984)]により同時形質転換した。
[290ボルト、キャパシタンス:950μ F;Gene
Pulser(Bio-Rad)]。 細胞を96ウエルのマイクロタイタ
ープレートを用い増殖培地(0.1ml/ウエル)で2
日間培養し、最終濃度900μg/mlでG−418を
含有する培地でネオマイシン耐性クローンを選択した。
9日後、個々のG−418耐性形質転換体におけるFa
s抗原の発現をウサギ抗マウスFasポリクロナール抗
体(後述)を用いてサイトフルオロメーターで分析し、
Fas陽性細胞株(W4)を限界希釈法でクローン化し
た。
【0018】2.検出 マウスFas抗原を高発現するJurkat形質転換細胞(J6
細胞)を用いて行う。ヒトT−細胞リンパ腫 Jurkat細
胞の形質転換は以下の方法で行った。10%FCS含有
RPMI1640培地で増殖させたJurkat細胞
(ATCC TIB152) 1×107個(0.8ml
中)を、ネオマイシン耐性付与遺伝子を含有するpST
neoB(0.2μg)およびApaLI消化pEFM
F1(25μg/ml)で、電気穿孔法[ポッターら
(Potter et al.) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 81: 716
1-7165(1984)]により同時形質転換した。290ボル
ト、キャパシタンス:950μ F;Gene Pulser(Bio-
Rad)。 細胞を96ウエルのマイクロタイタープレート
を用い、増殖培地(0.1ml/ウエル)で2日間培養
し、最終濃度900μg/mlでG−418を含有する
培地でネオマイシン耐性クローンを選択した。9日後、
個々のG−418耐性形質転換体におけるFas抗原の
発現をウサギ抗マウスFasポリクロナール抗体(後
述)を用いてサイトフルオロメーターで分析し、Fas
陽性細胞株(J6)を限界希釈法でクローン化した。
【0019】ウサギ抗マウスFas抗体(マウスFas抗原
に対する抗ペプチド抗体)は以下の方法で作成した。N
−末端に余分のシステイン残基を有するマウスFas抗原
配列(アミノ酸番号8−21)[ワタナベ−フクナガら
(J.Immunol. 148, 1274-1279(1992)]を含有するC−
末端がアミド形のペプチドを合成した。m−マレイミド
ベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(M
BS)を用い、ペプチドをウシ血清アルブミン(BS
A)にカップリングさせた。ペプチドの合成およびその
BSAへの結合はMultiple Peptide Systems Co.,(サ
ンディエゴ)により行った。雌性ニュージランドウサギ
にペプチドを皮下注射した。条件:フロインドの完全ア
ジュバント中BSAコンジュゲート(0.5mg/注射)
を14日間隔で2回。さらに、ウサギにペプチド25μ
gを静注した。条件:PBS中BSAコンジュゲートを
3日間隔で3回。最終注射の3日後にウサギの全血清を
採取し、抗ペプチド抗体(抗−mFASP)をペプチド
とコンジュゲートしたTSKゲル上でのアフィニティー
クロマトグラフィーで精製した。簡単に述べると、MB
Sを用いてペプチド(2mg)をAF Amino Toyopearl
650 (東ソー) (充填容量:0.8ml)にカップリング
し、未反応部位を、ゲルを1M Tris−Hcl(pH8.
5)により洗浄してブロックした。血清(1.5ml)を
カラム(0.5ml)に負荷し、0.005%Tween20お
よび水で広範囲に洗浄した後、0.1M グリシンーH
Cl(pH2.2)で特異抗体をゲルから溶離した。
【0020】3. 方法 8週令雌性アルメニアンハムスターにW4細胞(1x1
7、2800rads照射処理)を1週間間隔で6回接種
した。最終免疫の3日後にハムスターから脾臓を摘出
し、脾細胞を調製し、10%のウシ胎児血清を含むダル
ベッコ変法イーグル培地に懸濁して細胞浮遊液を調製し
た。上記の脾細胞浮遊液(6×107)とマウス骨髄腫
細胞P3X63Ag8U.1(1.2×107)とを5
0%(w/v)ポリエチレングリコール1500(ベー
リンガー)を用いて融合させた。最後に400xgで5
分間遠心して得られた細胞塊を7個の96ウエルプレー
トに分注した後、HAT培地で培養し、光学顕微鏡でハ
イブリドーマの成長を監視した[サンチェーマドリード
ら(Sanchez-Madrid,F.) J. Immunol. 130:309-312 (1
983);ヒラタ(Hirata,Y.),J.Immunol. 143: 2900-2906
(1989)]。
【0021】培地をHT培地に代えて培養を続け、その
間、培養上清における抗Fasモノクローナル抗体の産生
を、J6細胞表面のマウスFas抗原との結合活性をFA
CS分析法で調べることにより、スクリーニングした。
目的の抗マウスFasモノクローナル抗体を産生するハイ
ブリドーマJo2を選択し、3ユニット/mlのヒトイ
ンターロイキン6(IL−6),10%のウシ胎児血清
を含む、RPMI 1640培地による制限希釈法で継
代を繰り返してハイブリドーマクローンJo2を確立し
た。このJo2を血清不含培地(ALM−V培地、Gibc
o)で培養すると、培地にモノクローナル抗体が分泌され
た。
【0022】培地に50%硫酸アンモニウムを加えて沈
澱させ、プロテインA−アガロース法(Pharmacia)[ク
リガンら(Cligan,J.E.) Current Protocols in Immunol
ogy,Willey Interscience (1991)]によってハムスター
抗マウスFasモノクローナル抗体(Jo2抗体)を精製
した。
【0023】実験例1 Jo2抗体とマウス胸腺細胞の
細胞表面抗原との反応 野生型マウス由来の胸腺細胞およびFas抗原を殆ど発現
しないlprマウス(リンパ増殖変異体)由来の胸腺細胞
と、Jo2抗体との免疫化学的反応を以下の方法で検討
した。 (1)フローサイトメトリー 3−4週令のマウス(Balb/c、MRL−+/+およ
びMRL−lpr/lpr)の胸腺から単一細胞浮遊液を調製
し、1x106細胞をJo2抗体、次いでフィコエリス
リン(PE)−結合ヤギ抗ハムスターIgG(F(ab')
2)フラクション,CATALOG)により染色した
(図1における斜線部分)。図1の空白部分は、第2抗
体のみで染色された胸腺のFACS像である。図1から
明らかに、野生型マウスの胸腺から得た細胞の殆どがF
as抗原陽性であるのに対し、MRL−lpr/lprマ
ウスの胸腺由来の細胞にはFas抗原が殆ど検出されな
い。
【0024】(2)3色フローサイトメトリー Balb/cおよびMRL−lpr/lprマウスの胸腺細胞のサ
ブセット[CD4+CD8+(DP)、CD4+CD8
-(CD4SP)、CD4-CD8+(CD8SP)およ
びCD4-CD8-(DN)]の細胞各5000個を用
い、これらサブセットにおけるFas抗原の発現状態を、
FACScan(Beckton Dickinson)によるCD4、CD
8およびFas抗原に対する3色フローサイトメトリーで
分析した。用いたモノクローナル抗体はビオチン−標識
抗CD4(RM−4−5,PharMingen)およびStreptav
idin TRI−COLOR(CATALOG)、蛍光性
イソチオシアナート(FITC)−標識抗CD8/Ly
t−2(53−6.7,Beckton Dickinson)、本発明の
Jo2抗Fas抗体およびPE−標識ヤギ抗ハムスターI
gGである。結果を図2に示す。左側パネルにCD4お
よびCD8発現のためのマウス胸腺を二次元的に示し
た。 右側パネルには、Fas抗原の発現状態を示す。図
2から明らかに、Balb/cマウスの胸腺細胞の内、2
重陽性の胸腺細胞サブセット(CD4+CD8+)、単一
陽性の胸腺細胞サブセット(CD4+CD8-およびCD
-CD8+)はFas抗原を発現しているが、2重陰性の
胸腺細胞サブセット(CD4-CD8-)の大多数はFas
抗原を発現していないことが分かる。他方、MRL−lp
r/lprマウスの胸腺細胞は、CD4およびCD8抗原の
分布はBalb/cマウスと同様であるが、どの胸腺細胞
サブセットもFas抗原を発現していない。
【0025】実験例2 Jo2抗体のマウス細胞および
個体に対する致死作用 (1)細胞溶解作用 96ウエルマイクロタイタープレート上でFas抗原を発
現するW4形質転換細胞(2x104)または非形質転
換細胞WR19L細胞(2x104)を、種々の濃度
(0.1−1000ng/ml)のJo2抗体と混合し、3
7℃で16時間インキュベーションした。次いでウエル
あたり0.5μCi[3]チミジン(比活性:74GB
q/mmol)を加え、4時間インキュベーションした
後、収穫した。Jo2抗体による細胞溶解作用を、Jo
2抗体不在下での[3]チミジンの取り込みに対する
割合(%)で示した。結果を図3に示す。図中、W4細
胞は(白丸)、WR19L細胞は(黒丸)で表されてい
る。図3から明らかに、Jo2抗体はFas抗原を発現す
る形質転換細胞W4を用量依存的に、16時間以内に溶
解するが、親細胞WR19Lには作用しない。これは、
Jo2抗体がFas抗原を発現する細胞を認識し、細胞溶
解作用を表すことを示すものである。
【0026】(2)致死作用 マウスへのJo2抗体の腹腔内投与が及ぼす致死作用を
検討した。結果を図4に示す。即ち、10匹の3週令の
雌性Balb/cマウス(黒丸、白丸、黒三角)およびM
RL−lpr/lprマウス(黒四角)に、PBS200μl中
の、精製Jo2抗体100μg(黒丸、黒四角)または
10μg(白丸)、あるいは正常なハムスターIgG
(黒三角)を腹腔内投与し、以後の生死を観察した。図
4から明らかに、Jo2抗体100μgを投与されたB
alb/cマウスの90%(9/10)が投与後3時間以
内に死亡した。10μgを投与されたマウスにおいても
8時間以内に50%(5/10)が死亡した。他方、ハ
ムスターIgGを投与された対照群のマウスには死亡例
がない。なお、エンドトキシンの致死作用に対して極め
て高い耐性を有するC3H/HeJマウスもJo2抗体
によって死亡した(データ示さず)。このことは、Fas
抗原に対する抗体の致死作用がエンドトキシンによるも
のでないことを示唆している。
【0027】 (3)血清中の生化学的パラメーターの変化 PBS200μl中の精製Jo2抗体100μgを3週
令の雌性Balb/cマウスに腹腔内投与し、様々な時期
に血液試料を採取した。血清の生物学的パラメーターを
標準的な自動臨床分析装置(日立、7150型)で検査
した。検査した生物学的パラメーターは以下の通りであ
る。GOT:グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナ
ーゼ;GPT:グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナ
ーゼ;ALP:アルカリホスホターゼ;AMY:アミラ
ーゼ;CPK:クレアチンホスホキナーゼ;HBD:α
−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ;BUN:血中尿素
窒素;T−BIL:総ビリルビン。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】 表1から明らかに、血清中のGOT、GPT、HBDお
よびT−BILは抗体の注射から3時間後に劇的に増加
し、基準値の200、1000、50および10倍に達
したが、ALP、AMYおよびBUNの増加は僅かであ
った。ヘマトクリット値、血球数およびNa+、K+およ
びCl-等のイオン濃度には有意な変化を認めなかっ
た。ハムスターのIgGを投与されたマウスでは同様の
変化を認めなかった。これらの結果は、マウスに投与さ
れたFas抗体が、肝臓および心臓の細胞を特異的に損傷
することを示唆している。
【0029】実験例3 マウス肝臓および胸腺細胞にお
けるJo2誘導アポプトーシス (1)Jo2抗体のマウス肝細胞に対する作用 3週令のBalb/cマウスにJo2抗体100μgまた
は対照としてハムスターIgGを投与した。2時間後、
死亡したマウスの肝臓を摘出し、厚さ5μmの切片を
得、10%ホルムアルデヒドで固定化し、ヘマトキシリ
ンおよびエオシンで染色して組織の変化を調べた。結果
を図5に示す。図中、パネルAおよびBは対照(ハムス
ターIgG)、パネルCおよびDはJo2抗体100μ
gを投与されて2時間以内に死亡したマウスの肝臓組織
であり、パネルAおよびCは10倍、パネルBおよびD
は40倍の写真である。図から明らかに、Jo2抗体を
投与されたマウスの肝臓には多くの病巣出血と壊死が認
められる。この領域には正常な肝細胞は少ししか残って
おらず、大多数の損傷した細胞の特徴は細胞質濃縮と核
濃縮(ピクノーゼ)であり、これら細胞の死がアポトー
シスによることを示唆している。肝細胞に誘導されたア
ポトーシスは、ヒトの激症肝炎の動物モデルとなると考
えられる。このような出血性病巣および細胞壊死領域は
ハムスターのIgGを投与された対照群マウスの肝臓切
片には認められなかった。
【0030】 (2)Jo2抗体のマウス胸腺細胞に対する作用 Balb/cマウスにJo2Fas抗体を注射し、少なくと
も5時間生存したマウスから、胸腺DNAを調製して
0.5μg/mlの臭化エチジウムを含有するTBEバッ
ファー中の1%アガロースゲルによる電気泳動にかけ、
分析した。結果を図6に示す。DNAは、投与前(レー
ン1)、0.5時間後(レーン2)、1時間後(レーン
3)、2時間後(レーン4)、3時間後(レーン5)ま
たは5時間後(レーン6)に調製した。対照として、ハ
ムスターIgGの投与から5時間後のマウスから調製し
た胸腺DNAを用いた(レーン7)。胸腺組織は、肝臓
組織と異なり、明確な異常を呈していなかったが(デー
タ示さず)、その染色体DNAは明らかにアポトーシス
に特徴的な分解を示した。即ち、3時間後に得た胸腺D
NAははしご状に分離するアポトーシスに典型的なフラ
グメンテーション(切断)を示した。DNAの切断は後
になる程増加し、抗体投与から5時間後には、全染色体
DNAの80%以上が分解された。対照マウスでは染色
体DNAの分解を認めなかった。これらの結果は、Fas
抗原を発現する胸腺細胞がインビボで、抗Fas抗体によ
り誘導されるアポトーシスの影響を受け易いことを示唆
している。
【0031】
【発明の効果】本発明のハイブリドーマを培養すること
により得られるマウス細胞表面抗原に特異的なハムスタ
ーモノクローナル抗体Jo2は、抗Fas抗体の臨床適用
を安全かつ効果的に行うための研究開発に大きく貢献す
るのみならず、肝臓、胸腺、心臓等の細胞のアポトーシ
スの研究、並びに激症肝炎等の疾患の動物モデルの開発
に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】マウス胸腺から得た細胞におけるFas抗原の発
現を表すフローサイトメトリーの結果を示すグラフ。
【図2】マウスの胸腺由来の細胞サブセット[CD4+
CD8+(DP)、CD4+CD8-(CD4SP)、C
D4-CD8+(CD8SP)およびCD4-CD8-(D
N)]におけるFas抗原の発現を表す3色フローサイト
メトリーの結果を示すグラフ。
【図3】Fas抗原を発現するW4形質転換細胞または非
形質転換細胞WR19L細胞に対するJo2抗体の細胞
溶解作用を、Jo2抗体不在下での[3]チミジンの
取り込みに対する割合(%)で示したグラフ。
【図4】Jo2抗体を腹腔内投与されたマウスの生存率
を示すグラフ。
【図5】Jo2抗体を投与されて死亡したマウスの肝臓
組織の変化を示す写真の模写図。
【図6】Jo2抗体を投与されたマウスの胸腺細胞の染
色体DNAの変化を示すアガロースゲルによる電気泳動
の泳動パターンの模写図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 J.Immunol.(1992)Vo l.148,No.4,p.1274−1279 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 21/08 C07K 16/28 BIOSIS/WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マウスミエローマ細胞とマウス細胞表面
    抗原を発現するW4形質転換細胞で免疫されたハムスタ
    の脾臓細胞とを融合させて得られるハイブリドーマに
    より産生される、マウス細胞表面抗原に特異的なモノク
    ローナル抗体であって、 (1)マウス細胞表面抗原を発現する形質転換細胞に対
    して用量依存性の細胞溶解作用を示すが、マウス細胞表
    面抗原を発現しない細胞には細胞溶解作用を示さず、 (2)マウス胸腺細胞のサブセットの内CD4+CD
    +、CD4+CD8-およびCD4-CD8+を免疫化学
    的に認識するがCD4-CD8-を認識せず、 (3)マウスに腹腔内投与した時、正常なマウスの胸腺
    および肝臓の細胞の細胞表面抗原を免疫化学的に認識
    し、アポトーシスに基づく肝細胞の死をもたらし、数時
    間以内にマウスを死に至らしめるが、細胞表面抗原を発
    現しないMRL−lprlprマウスに腹腔内投与した時に
    は、そのような細胞死および個体死をもたらさないこと
    を特徴とする抗体。
  2. 【請求項2】 FERM P−13635の下で寄託さ
    れているハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体
    である請求項1記載のモノクローナル抗体。
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