JP3438493B2 - 浄水場の運転支援システム - Google Patents

浄水場の運転支援システム

Info

Publication number
JP3438493B2
JP3438493B2 JP30152496A JP30152496A JP3438493B2 JP 3438493 B2 JP3438493 B2 JP 3438493B2 JP 30152496 A JP30152496 A JP 30152496A JP 30152496 A JP30152496 A JP 30152496A JP 3438493 B2 JP3438493 B2 JP 3438493B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
concentration
chlorine
pipe network
residual chlorine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP30152496A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10137764A (ja
Inventor
憲一郎 岡
伊智朗 圓佛
倫典 小崎
研二 馬場
筒井  和雄
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP30152496A priority Critical patent/JP3438493B2/ja
Publication of JPH10137764A publication Critical patent/JPH10137764A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3438493B2 publication Critical patent/JP3438493B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatment Of Water By Oxidation Or Reduction (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、浄水場の運転支援
システムに係り、特に発癌性物質濃度と塩素濃度の分布
評価を基に、水道水中の発癌性物質濃度、及び残留塩素
濃度が共に目標値を満たすように塩素注入装置及び高度
浄水処理装置の運転を支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】発癌性物質の抑制を考慮した水道水への
殺菌用塩素の注入方法に関しては、特開平6−320166 号
公報に、浄水池に後塩素注入制御装置を配備し、配水池
に追加塩素注入制御装置を配備して、浄水池と配水池か
ら検知した残留塩素量から、配水管網での必要最小限の
塩素量を確保し且つ配水管網でのトリハロメタンを最小
限に抑える塩素注入量を決定するという考え方があり、
トリハロメタンを考慮した残留塩素の監視・制御が述べ
られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来技術
は、塩素注入量の制御のみで残留塩素濃度とトリハロメ
タン濃度を制御するものであるため、水道水原水に含ま
れるトリハロメタン前駆物質濃度が高い時期には注入塩
素濃度に対するトリハロメタン生成率が高いため、残留
塩素濃度の確保とトリハロメタン抑制を同時に実現でき
ない。
【0004】本発明の目的は、塩素注入量制御と同時
に、水道水原水に含まれる発癌性物質の前駆物質を除去
する高度浄水処理を制御することにより、水道水原水中
の前駆物質濃度が高い場合にでも、水道管網内の殺菌用
塩素濃度の目標値(法定値)を満たしつつ、同時に水道
管網の任意の点での発癌性物質濃度を目標値(厚生省の
ガイドラインなど)以下に抑えることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、水道管網全体
での残留塩素濃度及び発癌性物質濃度を推定し、その結
果に基づいて塩素注入量の決定と、高度浄水処理装置の
制御を支援するシステムを実現したものである。本発明
では、まず水道管網の管径,管路長,材質分布などの管
路情報と水需要分布を基に水道水の流下時間分布を推定
し、該流下時間分布及び水道管網の管径,材質分布など
の管路情報と、浄水場での注入塩素量(仮定値)を組み
合わせることにより、塩素注入量の仮定値に対応した残
留塩素濃度分布を推定する。推定結果と予め設定した残
留塩素濃度の下限目標値を比較し、水道管網の任意の地
点での残留塩素濃度が該下限目標値を上回るように塩素
注入量の下限値を求め、この注入塩素量に従って浄水場
での塩素注入を制御する。さらに、得られた塩素注入量
と流下時間分布及び水道管網の管径と、浄水場出口での
発癌性物質前駆物質の初期濃度を組み合わせることによ
り、水道管網全体での発癌性物質濃度分布を推定する。
推定結果と予め設定した発癌性物質濃度の上限目標値を
比較し、水道管網の任意の地点での発癌性物質濃度が該
上限目標値を上回らないように発癌性物質前駆物質の上
限値を求め、この値にしたがって前駆物質除去のための
高度浄水処理装置を運転する。
【0006】また、現時点での残留塩素濃度、及び発癌
性物質濃度の観測値から、残留塩素濃度・発癌性物質濃
度推定式決定手段による推定機能を用いて流下時間経過
後の濃度を予測し、その結果を基に注入塩素量及び高度
浄水処理装置の運転を制御することで、時間遅れを考慮
した塩素注入量のフィードフォワード制御が実現でき
る。
【0007】本発明による浄水場運転支援システムで
は、水道管網の管径,管路長,管同士の接続関係,材質
分布,水需要分布を基に管網内での残留塩素濃度・発癌
性物質濃度を推定する手段、及び塩素注入量を決定する
手段を具備することで、塩素注入量の決定及び高度浄水
処理装置の制御が可能なシステムを実現できる。
【0008】また、本発明による浄水場運転支援システ
ムに、演算導出した塩素注入量と高度浄水処理装置の制
御量の時間的変化を水質項目と同時にCRTなどに表示
することで、浄水管の運転員の塩素注入装置の運転、及
び高度浄水処理装置の運転を視覚的に補助することが可
能となる。これにより、必要最小限の残留塩素量を確保
しつつ、発癌性物質を設定値以下にした安全な水道水の
供給が実現できる。
【0009】なお、配水管網の残留塩素濃度を、水の流
量,水需要量,流速データ等を用いて演算式により推定
する公知例があり、特開平3−186395号公報,特開平1−
231990号公報,特開平7−290040号公報,特開平7−3285
98号公報等に記載されているが、発癌性物質について
は、いずれも考慮していない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施例を説明する。
【0011】図1は、本発明による浄水場運転支援シス
テムによる浄水場運転の一実施例の全体構成を示す。ま
ず、簡単のために浄水場での単独塩素注入に関して説明
する。本発明による浄水場運転支援システム100は、
大きく分けると、(1)水質・水道水物理量情報収集手段
105、(2)水道管網データベース110、 (3)水
質データベース200、(4)水道水物理量データベース
210、(5)塩素注入量決定手段400、(6)高度浄水
処理装置制御量決定手段500、(7)CRT800とから構成
される。
【0012】まず、浄水場運転支援システム100によ
る塩素注入量及び高度浄水処理装置制御量を決定する大
まかな流れについて説明する。図1において、塩素濃度
センサ10,発癌性物質前駆物質濃度センサ11は、対
象となる水道管網5を管轄する浄水場1出口に設置さ
れ、それぞれ水道水中の塩素濃度,発癌性物質前駆物質
濃度を測定する。ここで、発癌性物質とは塩素注入の副
生成物としてできるトリハロメタンなどを指し、発癌性
物質前駆物質とは、フミン酸,フルボ酸など塩素と反応
して発癌性物質を生成する物質を指す。同様に、対象と
なる水道管網5に設置された流量センサ20,水温セン
サ21は、それぞれ水道水の流量,水温を測定する。測
定されたデータは水質・水道水物理量情報収集手段10
5により収集される。
【0013】水質・水道水物理量情報収集手段105
は、本実施例のようにセンサによるデータや、あるいは
分析装置による分析結果をオフラインで入力するなどの
手法により収集した水質・水道水物理量の情報を、デー
タの種別に応じて水質データベース200、または水道
水物理量データベース210に振り分ける役割を果た
す。
【0014】水道管網データベース110は、実地調査
または上水管網敷設時の設計図や台帳を基にデジタルデ
ータとして作成する。
【0015】水道管網データベース110,水質データ
ベース200,水道水物理量データベース210に保存
されたデータを基に、塩素注入量決定手段400にて水
道管網上の残留塩素濃度分布の推定と塩素注入量の決定
とを行う。残留塩素濃度推定手段410により水道管網
上の残留塩素濃度分布を推定するにあたって、水道水の
流速・流下方向の推定が行われる。流速・流下時間推定
工程600は、水道水物理量データ(流量),水道管網
データ(管径,管路長,流速係数,バルブの損失係数)
から、水道管網の任意の点での流速・流下方向を推定す
る手段により構成される。残留塩素濃度推定手段410
はまた、水質データ(塩素濃度),水道水物理量データ
(流量,水温),水道管網データ(管径,管路長,管材
質)から残留塩素濃度を導出する式を備え、この式によ
り、上水道管網全体での残留塩素濃度分布を求める。
【0016】次に、再び水道管網データベース110,
水質データベース200,水道水物理量データベース2
10に保存されたデータを基に、高度浄水処理装置制御
量決定手段500にて発癌性物質濃度の推定と高度浄水
処理装置の制御量の決定とを行う。発癌性物質濃度推定
手段510により水道管網上の発癌性物質濃度分布を推
定するにあたって、水道水の流速・流下方向の推定が行
われる。流速・流下時間推定工程600は塩素注入量決
定手段400で用いるものと同じである。また、高度浄
水処理装置制御量決定手段500は、水質データ(塩素
濃度,発癌性物質前駆物質濃度),水道水物理量データ
(流量,水温),水道管網データ(管径,管路長,管材
質)と、前記塩素注入量決定手段450の演算結果とか
ら発癌性物質濃度を導出する式を備え、この式により、
上水道管網全体での発癌性物質濃度分布を求める。
【0017】次に、浄水場運転支援システム100の各
構成要素の詳細を説明する。
【0018】水道管網データベース110は、水道管網
の敷設位置,管径,長さ,材質,敷設勾配などの水道管
網に付帯する情報を保存するためのデータベースであ
る。ここに保存される情報は、水道管網敷設時にデジタ
ルデータとして記録されることが望ましいが、現状では
一般に実地調査または上水管網敷設時の台帳を基にデジ
タルデータとして入力される。地図をデジタルデータと
して記録する方式には、大別して(1)地図を同じ大きさ
の多角形で分割し、各々の多角形に属性情報を付与する
ラスター形式、(2)地図を有向線分もしくは無向線分と
点により表現し、線分、及び点に対して属性情報を与え
るベクター形式の2つがある。本実施例では全てのデー
タが水道管網に属する、または水道管網に沿って分布し
ている為、線,点状データを扱うのに適しているベクタ
ー形式の例で説明する。具体的には、図7に示すように
水道管網を分岐点で分割する。分岐点、及び水道管網末
端の点をノードと呼び、分割された線分をセグメントと
呼ぶ。ベクター形式では各セグメントとノードに対し
て、位置,管の長さ,管径,流量,水圧,管の材質,水
温などの情報を割り当て、別途記録したセグメント群と
ノード群の接続関係を併用することで各種情報の空間的
分布を知ることができる。
【0019】また、本実施例ではベクター形式のデータ
のみしか扱っていないが、例えば土質などの平面的に分
布しているデータを考慮に入れる場合、ラスター形式と
の併用も必要となる。
【0020】水質データベース200は、塩素濃度セン
サ10,発癌性物質前駆物質濃度センサ11でそれぞれ
測定された塩素濃度,発癌性物質前駆物質濃度を保存す
るためのデータベースである。これらのデータは通信ネ
ットワークを通じてオンラインで受信され、記録され
る。このデータベースは、磁気ディスク,磁気テープ,
光ディスク,光磁気ディスク,半導体メモリなどの各種
の磁気媒体,光媒体,半導体媒体の上に構築され、計算
機(図示せず)に直結、もしくは情報ネットワークを介
して接続された媒体読み取り装置を通して計算機に読み
込まれる。また、データベースの形式としては、相互参
照の可能なリレーショナルデータベースの形式が望まし
い。
【0021】水道水物理量データベース210は、流量
センサ20,水温センサ21でそれぞれ測定された流
量,水温のデータを保存するためのデータベースであ
る。これらのデータは通信ネットワークを通じてオンラ
インで受信され、記録される。
【0022】なお、水質データベース200,水道水物
理量データベース210は、分析装置によるオフライン
のデータ収集、及びデータ入力により構築することも可
能である。
【0023】次に本発明の特徴である塩素注入量決定手
段400,高度浄水処理装置制御量決定手段500の詳
細を説明する。
【0024】塩素注入量決定手段400は、残留塩素濃
度推定手段410を備え、残留塩素濃度推定手段は、流
速・流下時間推定工程600と残留塩素濃度計算工程4
16の2つを中心に構成される。塩素注入量決定手段4
00の流れを図2を用いて説明する。
【0025】塩素濃度初期値設定工程402では、浄水
場出口での残留塩素濃度の仮の値を設定する。本実施例
では管網で確保しなければならない残留塩素濃度の最小
値(規定値)を、塩素濃度初期値として設定する。次に
残留塩素濃度推定手段410により管網内全体での残留塩
素濃度を推定する。次に工程404で残留塩素濃度推定
値と規定値とを比較し、管網内での残留塩素濃度の推定
値のうちの最小のものの値が規定値よりも低い場合は、
塩素濃度初期値設定工程402で設定する塩素濃度初期
値を増加させ、再計算を繰り返す。管網内での残留塩素
濃度の推定値のうちの最小のものの値が規定値よりも高
くなった時点で出力工程406に移行する。出力工程4
06は、繰り返し計算の最後に用いた塩素濃度初期値を
出力する。
【0026】以上が塩素注入量決定手段400の詳細で
ある。
【0027】次に、残留塩素濃度推定手段410を図3
により説明する。残留塩素濃度推定手段410は、水
質,水道水物理量の値を基に、数2で示す水道水流下中
の残留塩素濃度推定式により管網内の残留塩素濃度分布
を推定する手段である。
【0028】本実施例で使用する残留塩素濃度の推定式
を数1に示す。
【0029】
【数1】 C(Cl) i j=C(Cl) j i・exp(−kij・tij) kij=exp(kD [M(i,j)]・D+kT [M(i,j)]・Tij+k0 [M(i,j)]) …(数1) ここで、 C(Cl) i j :セグメント(i,j)のノードi末端に
於ける残留塩素濃度 Dij :セグメント(i,j)に於ける水道管の
管径 Tij :セグメント(i,j)に於ける水温 M(i,j) :セグメント(i,j)に於ける管材質 kij :セグメント(i,j)に於ける塩素減少
速度定数 tij :セグメント(i,j)間の水道水の流下
時間 kD [M(i,j)] :管材質M(i,j)に対する管径依存定
数 kT [M(i,j)] :管材質M(i,j)に対する温度依存定
数 k0 [M(i,j)] :管材質M(i,j)に対する定数 但し、流れはノードiからノードjに向かっているもの
とする。
【0030】初期データ読み込み工程412では、水道
管網データベース110から水道管網のノードとセグメ
ントの連結関係、水道管の管径や材質などの水道管網デ
ータを、水質データベース200から浄水場での塩素注
入濃度,発癌性物質前駆物質濃度データを、水道水物理
量データベース210から流量,水温といった水道水物
水物理量データを読み込む。また、塩素濃度初期値設定
工程402で設定された値に塩素濃度初期値を設定す
る。
【0031】流速・流下時間推定工程600では、初期
データ読み込み工程412で読み込んだデータの内、水
道管網の長さや管径などの属性情報を基に管網内の全て
のセグメントに於ける水道水の流速及び流下方向を推定
する。これについては後ほど述べる。
【0032】次に計算開始ノードを設定(符号414)
する。本実施例では計算開始ノードを浄水場出口とし
た。残留塩素濃度計算工程416での計算は図3に示す
ようなステップで実行される。まず、計算対象としてい
るノードの上流ノードを検索し、該上流ノードの全てに
関して残留塩素濃度が計算済みであった場合、数2で示
す式を用いて残留塩素濃度を計算する。
【0033】
【数2】 C(Cl) i=(Σ(j=U(i))(Cl) j・Fj i)/(Σ(j=U(i))j i)…(数2) ここで、 C(Cl) i :ノードiに於ける残留塩素濃度 Fj i :セグメント(i,j)に於ける水道水の流
量 U(i) :ノードiの上流に位置するノードの集合 なお、上流ノードの検索は、水道管網のノードとセグメ
ントの連結関係を用いて、所定ノードの上流に位置する
セグメントと、セグメントの他端ノードを検索すること
で実現できる。水道管網データベース110及び流速・
流下時間推定工程600の出力結果の連結関係に関する
部分は、図7に示すように水道管網セグメント間の物理
的連結関係を表の形で保存している。この表の「下流ノ
ード」というカテゴリーを検索することにより、所定ノ
ードに接続する下流方向のセグメント/ノードを容易に
選択することができる。
【0034】残留塩素の計算の後、直結している下流ノ
ードを検索する。下流ノードの検索は、上流ノードと同
じく、図8に示すような水道管網データベース110及
び流速・流下時間推定工程600の出力結果の連結関係
に関する部分の「上流ノード」というカテゴリーを検索す
ることにより、所定ノードに接続する上流方向のセグメ
ント/ノードを容易に選択することで実現できる。直結
している下流ノードが存在する場合、それらのノードを
計算開始ノードとして再設定し、再度残留塩素濃度の計
算を繰り返す。直結している下流ノードが存在しない場
合には、管網全体を検索し、残留塩素濃度を計算してい
ないノードを探す。そのようなノードが見つかった場
合、それらのノードを計算開始ノードとして再設定し、
再度残留塩素濃度の計算を繰り返す。見つからなかった
場合は、管網全体での残留塩素濃度の計算が完了してい
るので、出力工程418に移行する。
【0035】出力工程418では、管網全体において残
留塩素濃度の最小値を検索し、その値を出力する。
【0036】以上が残留塩素濃度推定手段410の詳細
である。
【0037】次に高度浄水処理装置制御量決定手段50
0の詳細を説明する。高度浄水処理装置制御量決定手段
500は、発癌性物質濃度推定手段510を備え、発癌
性物質濃度推定手段は流速・流下時間推定工程600と
発癌性物質濃度計算工程518の2つの中心に構成され
る。高度浄水処理装置制御量決定手段500の流れを図
4を用いて説明する。
【0038】高度浄水処理率設定工程502では、浄水
場での高度処理によって除去される発癌性物質前駆物質
の除去率の仮の値を設定する。ここで除去率とは高度処
理前後の発癌性物質前駆物質濃度の比のことを指す。本
実施例では高度浄水処理率の初期値を0としている。
【0039】次に発癌性物質濃度推定手段510により
管網内全体での発癌性物質濃度を推定する。工程504
で、管網内での発癌性物質濃度の最大値と規定値とを比
較し、最大値が規定値よりも高い場合は、高度浄水処理
率設定工程502で設定する高度浄水処理率を増加さ
せ、再計算を繰り返す。ここで、高度浄水処理率の増加
とは、例えば高度浄水処理がオゾン処理である場合はオ
ゾン注入量を増加させることを言う。また、高度浄水処
理として活性炭処理を採用している場合、活性炭の注入
量を増加させることに相当する。
【0040】管網内での発癌性物質濃度の最大値が規定
値よりも低くなった時点で出力工程506に移行する。
出力工程506は、繰り返し計算の最後に用いた高度浄
水処理率を出力する。
【0041】以上が高度浄水処理装置制御量決定手段5
00の詳細である。
【0042】次に、発癌性物質濃度推定手段510を図
5により説明する。発癌性物質濃度推定手段510は、
水質,水道水物理量の値を基に、数4で示す水道水流下
中の発癌性物質濃度推定式により管網内の発癌性物質濃
度分布を推定する手段である。
【0043】本実施例で使用する発癌性物質濃度の推定
式を数3で示す。
【0044】
【数3】 C(HC) i=0.7・(Pr)a・(Ti)b・(ti)c・(Cli)d …(数3) ここで、 C(HC) i :ノードiに於ける発癌性物質濃度 Pr :水道水流出点での発癌性物質前駆物質
濃度 Ti :ノードiに於ける水温 ti :水道水流出点からノードiに至るまで
の重み付き流下時間 Cli :ノードiに於ける残留塩素濃度 a,b,c,d:定数 ここで重み付き流下時間とは、数4で定義した量を言
う。
【0045】
【数4】 ti=(Σ(j=U(i))j・Fj i)/(Σ(j=U(i))j i) …(数4) ここで、 ti :ノードiに於ける重み付き流下時間 Fj i :セグメント(i,j)に於ける水道水の流量 U(i) :ノードiの上流に位置するノードの集合 初期データ読み込み工程512では、水道管網データベ
ース110から水道管網のノードとセグメントの連結関
係、水道管の管径や材質などの水道管網データを、水質
データベース200から浄水場での塩素注入濃度,発癌
性物質前駆物質濃度データを、水道水物理量データベー
ス210から流量,水温といった水道水物理量データを
読み込む。また、高度浄水処理率設定工程502で設定
された値に高度浄水処理率の初期値を設定する。
【0046】初期値設定後、流速・流下時間推定工程6
00により管網全体での流速・流下方向を推定する。こ
の工程は、残留塩素濃度推定手段410で説明したもの
と同じである。
【0047】次に計算開始ノードを設定(符号514)
する。本実施例では計算開始ノードを浄水場出口とし
た。計算は図5に示すようなステップで実行される。ま
ず、計算対象としているノードの上流ノードを検索し、
該上流ノードの全てに関して重み付き流下時間が計算済
みであった場合、重み付き流下時間計算工程516にお
いて数4で示す式を用いて対象ノードの重み付き流下時
間を計算する。
【0048】重み付き流下時間の計算の後、直結してい
る下流ノードを検索する。直結している下流ノードが存
在する場合、それらのノードを計算開始ノードとして再
設定し、再度重み付き流下時間の計算を繰り返す。直結
している下流ノードが存在しない場合、管網全体を検索
し、重み付き流下時間を計算していないノードを探す。
そのようなノードが見つかった場合、それらのノードを
計算開始ノードとして再設定し、再度重み付き流下時間
の計算を繰り返す。見つからなかった場合は、管網全体
での重み付き流下時間の計算が完了しているので、発癌
性物質濃度計算工程518に移行する。発癌性物質濃度
計算工程518は、上記の重み付き流下時間の推定値と
数3を用いて管網全体での発癌性物質の濃度を計算す
る。
【0049】出力工程520では、発癌性物質濃度計算
工程518の結果を用い、管網全体での発癌性物質濃度
の最大値を検索し、その値を出力する。
【0050】以上が発癌性物質濃度推定手段510の詳
細である。
【0051】次に、図6の流速・流下時間推定工程60
0について説明する。
【0052】初期パラメータ設定工程610は、水道管
網データベース110から、水道管網データ(管径,管
路長,流速係数)を、水道水物理量データベース210
から水道水物理量データ(初期流量)を読み込むと同時
に、管網の各セグメントでの流量・流下方向と水道水流
出点での圧力に関して仮の値を設定する。
【0053】管網エネルギー計算工程612は、数5に
従って、管網水流の総エネルギーを算出する。
【0054】
【数5】
【0055】 E :管網水流の総エネルギー xj :セグメントjでの(流下方向付き)流量 wi :ノードiに於ける流入量 pi :ノードiでの圧力 Rj :セグメントjでの流速抵抗 Cj :セグメントjでの流速係数 Dj :セグメントjの管径 Lj :セグメントjの管路長 ここで、int[] は積分を表す。
【0056】次に管網水流の総エネルギーの計算値を最
小にするように、各セグメントでの流量・流下方向と水
道水流出点での圧力を調整する。この調整には山登り法
などの良く知られた最適化手法を適用できる。
【0057】管網水流の総エネルギーの最小が得られた
後、出力工程616に移行する。この出力工程616で
は管網水流の総エネルギーの最小値に対応する、各セグ
メントの流量・流下方向と水道水流出点での圧力を出力
する。
【0058】図1に戻って、CRT800は前記塩素注入量決
定手段400及び高度浄水処理装置制御量決定手段50
0で計算した浄水場での塩素注入濃度と高度浄水処理装
置制御量と、残留塩素濃度推定手段410及び発癌性物
質濃度推定手段510で計算した水道管網内の残留塩素
濃度及び発癌性物質濃度の分布を画面に表示するもので
ある。これらを水道管網データベース110を用いて作
成した水道管網の地図データと重ねて表示することによ
り、塩素注入量を変化させた時の残留塩素濃度、及び発
癌性物質濃度の地図上での分布の変化を調べることがで
きる。
【0059】最後に、図1の塩素注入量制御装置900
及び高度浄水処理制御装置910について説明する。塩
素注入量制御装置900及び高度浄水処理制御装置91
0は、塩素注入量決定手段400及び高度浄水処理装置
制御量決定手段500の出力値を電話回線通信,無線通
信,光ファイバー通信などの通信手段によりそれぞれ塩
素注入装置3,高度浄水処理装置4に送信する。塩素注
入装置3は塩素注入量制御装置900から送信された情
報に従って水道水に塩素を注入する役割を果たす。ま
た、高度浄水処理装置4は高度浄水処理制御装置910
から送信された情報に従って高度浄水処理を実施する役
割を果たす。なお符号2は原水が浄水処理過程にあるこ
とを示している。
【0060】また、本実施例の塩素注入量決定手段40
0において、数1,数2のパラメータを決定する際の塩
素注入量データ及び塩素注入量の初期値数を複数にする
ことで、塩素分散注入への対応も容易に可能である。
【0061】以上が、本発明による浄水場運転支援シス
テムを浄水場の塩素注入及び高度浄水処理の制御に適用
した実施例の構成と動作の説明である。
【0062】また、残留塩素濃度・発癌性物質濃度推定
式決定手段で決定した推定式と、塩素注入量、及び発癌
性物質前駆物質濃度の変動パターンを組み合わせること
により、将来時刻での残留塩素濃度・発癌性物質濃度を
推定し、塩素注入位置と水質,水道水物理量の値の収集
点とのずれを補正するフィードフォワード制御が可能と
なる。
【0063】本実施例では、法定基準塩素濃度を保持し
つつ、発癌性物質生成を目標値以下に抑える塩素注入制
御が可能になるため、より安全な水道水供給ができる。
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、水道管網全体において
任意の点、時刻での残留塩素濃度及び発癌性物質濃度を
推定し、残留塩素濃度が規定値を満たすような塩素注入
制御と発癌性物質濃度が規定値を上回らないような高度
浄水処理制御が可能になるため、互いにトレードオフの
関係にある残留塩素濃度の確保と発癌性物質の生成抑制
の両方が同時に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】全体図(実施例1)。
【図2】塩素注入量決定手段。
【図3】残留塩素濃度推定手段。
【図4】高度浄水処理装置制御量決定手段。
【図5】発癌性物質濃度推定手段。
【図6】流速・流下方向推定工程。
【図7】上流方向セグメント/ノード検索工程。
【図8】下流方向セグメント/ノード検索工程。
【符号の説明】
1…浄水場、2…浄水処理過程、3…塩素注入装置、4
…高度浄水処理装置、5…水道管網、10…塩素濃度セ
ンサ、11…発癌性物質前駆物質濃度センサ、20…流
量センサ、21…水温センサ、100…浄水場運転支援
システム、110…水道管網データベース、200…水質
データベース、210…水道水物理量データベース、4
00…塩素注入量決定手段、410…残留塩素濃度推定
手段、500…高度浄水処理装置制御量決定手段、51
0…発癌性物質濃度推定手段、600…流速・流下時間
推定工程、800…CRT、900…塩素注入量制御装
置、910…高度浄水処理制御装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C02F 1/76 C02F 1/76 A (72)発明者 馬場 研二 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (72)発明者 筒井 和雄 茨城県日立市大みか町五丁目2番1号 株式会社 日立製作所 大みか工場内 (56)参考文献 特開 昭53−51652(JP,A) 特開 平7−124568(JP,A) 特開 平6−304546(JP,A) 特開 平6−206077(JP,A) 特開 平7−290040(JP,A) 特開 平6−320166(JP,A) 特開 平3−186395(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 1/00 C02F 1/50 C02F 1/76

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩素注入装置と高度浄水処理装置を具備す
    る浄水場の運転支援システムであって、 前記浄水場が管轄する水道管網の管径,管路長,材質,
    管同士の接続関係,水圧,水の需要量パターンを基に、
    水道管網上の任意の2点間の水道水の流下時間を推定す
    る流下時間推定手段と、 前記流下時間推定手段で求めた水道水塩素注入点から水
    道管網上の任意の点までの水道水の流下時間の推定値に
    加え、前記水道水塩素注入点の残留塩素濃度,水道水の
    水温,水道管の材質情報の各々の値を用い、下流に位置
    する側での残留塩素濃度を演算導出する残留塩素濃度推
    定手段と、 前記残留塩素濃度推定手段で求めた水道管網上の残留塩
    素濃度推定点における残留塩素濃度の推定値が、予め設
    定した水道管網の残留塩素濃度の下限値を上回るように
    塩素注入点での注入塩素量を決定する塩素注入量決定手
    段と、 前記流下時間推定手段で求めた水道管網の塩素注入点か
    ら水道管網上の任意の点までの水道水の流下時間の推定
    値、及び前記残留塩素濃度推定手段で求めた水道管網上
    の残留塩素濃度推定点における残留塩素濃度の推定値に
    加え、水道管網の塩素注入点における発癌性物質の前駆
    物質量、水道水の水温の各々の値を用い、任意の点にお
    ける発癌性物質濃度を演算導出する発癌性物質濃度推定
    手段と、前記発癌性物質濃度推定手段で求めた発癌性物質濃度の
    推定値が予め設定した発癌性物質濃度の上限値を上回ら
    ないように前記高度浄水処理装置を制御する高度浄水処
    理装置制御手段と、 を備えたことを特徴とする浄水場の
    運転支援システム。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の運転支援システムにおい
    て、前記流下時間推定手段として、管網上での流体の速
    度分布を仮定し、管網全体での流体の運動エネルギーの
    総和が最小となるように該速度分布を変化させることに
    より管網全体での流下速度分布を決定し、求めた流下速
    度分布より流下時間分布を求める手段を備えたことを特
    徴とする浄水場の運転支援システム。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の運転支援システムにおい
    て、浄水場に複数個の塩素注入点が存在する場合に、前
    記塩素注入量決定手段として、各々の塩素注入点からの
    寄与を水道水の流量に比例した重みを付けて平均するこ
    とにより、残留塩素濃度を推定する手段を備えることを
    特徴とする浄水場の運転支援システム。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の運転支援システムにおい
    て、前記塩素注入量決定手段で求めた塩素注入量と、前
    記発癌性物質濃度推定手段で求めた発癌性物質濃度の時
    間的変化を水質項目と同時にCRT表示する表示手段を
    備えたことを特徴とする浄水場の運転支援システム。
JP30152496A 1996-11-13 1996-11-13 浄水場の運転支援システム Expired - Lifetime JP3438493B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30152496A JP3438493B2 (ja) 1996-11-13 1996-11-13 浄水場の運転支援システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30152496A JP3438493B2 (ja) 1996-11-13 1996-11-13 浄水場の運転支援システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10137764A JPH10137764A (ja) 1998-05-26
JP3438493B2 true JP3438493B2 (ja) 2003-08-18

Family

ID=17897976

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP30152496A Expired - Lifetime JP3438493B2 (ja) 1996-11-13 1996-11-13 浄水場の運転支援システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3438493B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4592601B2 (ja) * 2006-01-25 2010-12-01 株式会社日立製作所 薬品注入支援システムと薬品注入支援制御ソフトウエア

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10137764A (ja) 1998-05-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Liou et al. Modeling the propagation of waterborne substances in distribution networks
Jury Solute travel‐time estimates for tile‐drained fields: I. Theory
CN111784052A (zh) 一种城市面源污染入河负荷量预测方法
CN107526880A (zh) 一种基于河流水质观测推算上游入河污染通量的方法
KR100991227B1 (ko) Gis 기반으로 한 상하수도 통합 관리 시스템 및 그 제어 방법
CN113887007A (zh) 一种基于物联网的城市排水监测系统及方法
CN112113146B (zh) 供水管网管道粗糙系数和节点需水量同步自适应校核方法
CN114511990A (zh) 泥石流概率测算方法、泥石流多要素协同监测预警方法
JP3438493B2 (ja) 浄水場の運転支援システム
US20230205943A1 (en) Real-time simulation method of sewage pipe network based on water supply iot data assimilation
JP4828991B2 (ja) 溢水発生推定装置およびプログラム
Li et al. Reconsideration of sample size requirements for field traffic data collection with global positioning system devices
CN107273686B (zh) 雨洪径流氮磷输出负荷预测方法
JP4469313B2 (ja) 管網の薬品注入制御装置、管網の薬品注入制御方法および管網の薬品注入制御プログラム
Venohr et al. Nitrogen retention in a river system and the effects of river morphology and lakes
Verhoff et al. An analysis of total phosphorus transport in river systems
CN108197426B (zh) 规划排污口任意多点概化下降解系数不确定的小型河道纳污能力估算方法
CN108090706B (zh) 中点概化河道纳污能力风险估计及促进规划合理化方法
Field et al. A generalized kinematic catchment model
JP2008057142A (ja) 管路の水理解析方法
CN108460519B (zh) 污染源重心概化下小型河道纳污能力风险估计方法
CN106845026B (zh) 一种大气污染统计建模变量最优空间尺度选取方法
JP4132389B2 (ja) 解析装置および解析方法
JPH0762714A (ja) 配水管網の汚染物質拡散状態の解析方法
CN108280585B (zh) 规划排污口任意多点概化下小型河道纳污能力风险估算方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080613

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080613

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090613

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100613

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100613

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110613

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110613

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120613

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120613

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130613

Year of fee payment: 10

EXPY Cancellation because of completion of term