JP3435895B2 - 冷蔵庫 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は冷蔵庫に係り、特に、庫
内に強制送風で冷気を循環させて該庫内を冷却する冷却
方式であると共に複数の貯蔵室のうちの少なくとも１つ
が扉と貯蔵容器を備えた引き出し式の貯蔵室となってい
る冷蔵庫に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般的な家庭用の冷蔵庫の構造は、機能
の面から、断熱容器と強度部材の役割をもつ本体である
箱体及び扉部分と、庫内の冷却を行うための冷凍サイク
ル部分とに大別できる。箱体及び扉部分は、鋼板製の外
箱及び外板と樹脂製の内箱及び内板で主に発泡ウレタン
製の断熱材を挟むようにして一体化した各々の主構造部
分と、箱体内を温度条件の異なる冷凍貯蔵室，冷蔵貯蔵
室及び野菜貯蔵室等の貯蔵室や冷気通路等に大きく区画
する仕切り部材や、貯蔵室や扉の内側を細かく区画する
棚，貯蔵容器及びポケット等の樹脂製あるいは断熱材製
の内装部品とから構成される。また、冷凍サイクル部分
は、冷媒の昇圧及び循環のための圧縮機や放熱のための
凝縮器等のように庫外に設置される部品や、庫内を循環
する冷気を冷却するための蒸発器や冷気を循環させる送
風機等のように庫内に設置される部品や、各部品間を結
んで冷媒を循環させる冷媒管とを備える。

【０００３】複数の貯蔵室をもつ一般的な冷蔵庫では、
庫内の冷却は、蒸発器で冷却された冷気を各貯蔵室に送
風機と冷気通路により循環させる冷気強制循環方式で行
われる。そして、蒸発器で奪った庫内の熱は、冷凍サイ
クルを循環する冷媒により庫外の凝縮器に運ばれて放出
される。

【０００４】冷蔵庫の貯蔵室の構造には、扉が箱体の一
側面に固定されたヒンジを支点とする回動によって開閉
され、貯蔵品が箱体内の棚や扉内側のポケットに収納さ
れる固定棚式と、扉が上記と同様な回動または箱体に対
して前後方向の滑動で開閉され、貯蔵容器が箱体に対し
て前後方向の滑動で出し入れされる引き出し式とがあ
る。一般に、引き出し式の貯蔵室では、１枚の扉に対応
する貯蔵室が比較的小さくて室内の貯蔵容器が２段以下
である場合には、扉と貯蔵容器が一体となって滑動する
形式をとり、特に貯蔵容器が上下方向に２段の場合には
上段の貯蔵容器は扉を開けて引き出した状態で独立に滑
動できる構造とされる。これに対して、貯蔵室が大きく
て該室内に３段以上の貯蔵容器が収容される場合には、
該貯蔵室に対し１枚の扉が回動で動作し、各貯蔵容器は
扉とは連動せずに扉を開けた状態で各々独立に滑動でき
る形式をとっている。

【０００５】このような引き出し式の貯蔵室は、貯蔵品
の取り出し易さの観点から、冷蔵庫の下半部分における
貯蔵室に多く採用されている。また、最近の冷蔵庫は、
冷蔵貯蔵室の使い易さを重視して冷蔵庫の上半部分を固
定棚式の１つの冷蔵貯蔵室だけとし、下半部分に複数の
引き出し式の冷凍貯蔵室や野菜貯蔵室等を配置する構造
が広く採用されており、引き出し式の貯蔵室の数が多く
なっている。

【０００６】しかし、このような引き出し式の貯蔵室
は、冷蔵庫の下半部分に位置しているために、庫内での
貯蔵品の引っかかりや扉のパッキンへの異物の挟み込み
等により扉が僅かに開いた状態で放置されることが起き
易い。また、通常の使用状態で扉を開けた場合には、貯
蔵容器と共に冷気が庫外に引き出されたり、貯蔵容器と
内壁及び仕切り部材との間に存在する隙間から冷気が漏
れ出すことが多い。これらのことは、冷蔵庫を使用する
上で次に述べるような問題を発生させる。

【０００７】ここで、従来の冷蔵庫における引き出し式
の貯蔵室周辺の構造と冷気循環の状況及び問題点を図面
を使用して具体的に説明する。図１４及び図１５は、従
来の冷蔵庫で扉を全て閉めた状態での冷蔵庫本体の下半
部分の縦断側面図及び同じ状態の冷蔵庫本体の下半部分
の扉を省略した正面図である。図１６は、同じ従来の冷
蔵庫の一部の扉を僅かに開けた状態での冷蔵庫本体の下
半部分の縦断側面図である。

【０００８】図１４において、冷蔵庫本体１は、基本的
に箱体２と複数の扉３ａ〜３ｃを備え、上半部分は固定
棚式の冷蔵貯蔵室４であり、下半部分は複数の引き出し
式の貯蔵室として第１及び第２の冷凍貯蔵室５ａ，５ｂ
と野菜貯蔵室６が上から順に配置されており、野菜貯蔵
室６の背面及び下部の外側空間は機械室７となってい
る。引き出し式の各貯蔵室は、主に仕切り部材８ａ，８
ｂ，８ｃによって区画されており、箱体２の前面フラン
ジ部の封止のため各扉３ａ〜３ｃの内側にはパッキン９
ａ〜９ｃが設けられ、各扉３ａ〜３ｃと各貯蔵容器１０
ａ，１０ｃは容器側面のガイドレール１１ａ〜１１ｃに
より箱体２の前後方向に一体的に滑動するかたちで出し
入れされる。

【０００９】貯蔵容器１０ａ〜１０ｃは、一般に上方開
口を開放しているが、野菜貯蔵室６のように高湿に保持
する必要のある貯蔵室では、特開昭６３−１１６０７９
号公報等に示されているように、貯蔵容器１０ｃの上側
開口に対向する蓋体１２を庫内に留まるように設け、扉
３ｃを閉めたときに該蓋体１２が前記貯蔵容器１０ｃの
開口を密閉するようにしている。

【００１０】冷凍貯蔵室５ａ，５ｂのほぼ背面側の庫内
には蒸発器１３と送風機１４が配置され、冷気１５を箱
体２や仕切り部材８ａ〜８ｃにより形成された供給通路
１６と戻り通路１７を介して各貯蔵室５ａ，５ｂ，６に
循環させている。蒸発器１３で奪った熱は、機械室７に
配置された圧縮機１８や凝縮器１９等により冷凍サイク
ルを循環する冷媒を介して庫外に放出する。

【００１１】図１４及び図１５に示すように、総ての貯
蔵室５ａ，５ｂ，６の扉３ａ〜３ｃが完全に閉められた
状態で冷凍サイクルが動作している場合には、冷気１５
は、冷凍貯蔵室５ａ，５ｂのように上面が開口している
貯蔵容器１０ａ，１０ｂの場合には、供給通路１６によ
り背面上部から該貯蔵容器１０ａ，１０ｂ内に供給され
た後に該貯蔵容器１０ａ，１０ｂの上面開口の周囲から
溢れ出し、主に貯蔵室の下部及び背面側から戻り通路１
７を経て蒸発器１３に戻る。また、野菜貯蔵室６のよう
に貯蔵容器１０ｃの上面開口を覆う蓋体１２を備える貯
蔵室では、冷気１５は、主に背面上部から貯蔵容器１０
ｃの外周に沿って供給され、該貯蔵容器１０ｃの外表面
を冷却した後に貯蔵室を区画する仕切り部材８ｃの側面
や箱体２の背面から戻るかたちで循環する。特に、箱体
２の最下部に配置される一般的な野菜貯蔵室６では、冷
気１５は、その大部分が背面上部から貯蔵容器１０ｃの
底面及び側面に供給され、扉３ｃと貯蔵容器１０ｃの間
に形成された垂直方向の前面冷気通路２０を上昇するよ
うに通って該貯蔵容器１０ｃ及び蓋体１２の上部に位置
する仕切り部材８ｃの内部の戻り通路１７へ、蓋体１２
の上面を経由した冷気１５と合流しながら戻るかたちを
とる。

【００１２】なお、庫内温度が設定値以下で冷凍サイク
ルが動作しない状態では、送風機１４と圧縮機１８は停
止し、前述したような冷気１５の循環は起こらない。

【００１３】ところが、図１６に示すように、過失によ
り何れかの引き出し式の貯蔵室の扉（例えば扉３ａ，３
ｃ）がパッキン９ａ，９ｃの厚さ程度まで僅かに開いた
状態で放置された場合には、扉スイッチ（図示せず）は
この開放状態を検知することができず、冷蔵庫は扉３
ａ，３ｃが完全に閉められた状態と同様に運転される。
この場合、冷凍サイクルは、それまで停止状態であって
も冷気漏れと外気侵入によって総ての貯蔵室５ａ，５
ｂ，６で庫内温度が設定値以上となって直ちに連続動作
の状態となり、蒸発器１３による冷却と冷気１５の循環
が該蒸発器１３に過大着霜を発生して除霜運転に入るま
で続けられる。扉３ａ，３ｃの開放量が僅かであって
も、冷気１５と外気２１には密度差があることから、該
冷気１５は下部の隙間から庫外に漏れ出し、外気２１が
上部の隙間から庫内に侵入するかたちの流れが形成され
易く、冷気１５の漏れ出し量が多くなり易い。特に、野
菜貯蔵室６の扉３ｃを開けた状態では、冷気１５は、前
面冷気通路２０を上昇するときの通風抵抗よりも隙間を
漏れ出すときの通風抵抗の方が小さいために、貯蔵容器
１０ｃの底面及び側面を通った冷気１５は、ほぼそのま
ま庫外に漏れ出すことになる。

【００１４】このように、引き出し式の貯蔵室の扉が僅
かに開いた状態になって多量の冷気１５の漏れ出しを伴
いながら冷凍サイクルが連続動作するようになると、冷
気１５に高温及び高湿の外気が混入して庫内を循環する
ため、全貯蔵室５ａ，５ｂ，６での庫内温度の上昇によ
る貯蔵品の傷み及び冷凍サイクルの連続動作や蒸発器１
３への過大着霜による冷蔵庫全体の消費電力の大幅な増
加が現れるという問題を生ずる。

【００１５】また、通常の使用状態では、何れかの引き
出し式の貯蔵室５ａ，５ｂ，６の扉３ａ〜３ｃを開けて
貯蔵容器１０ａ〜１０ｃを引き出した状態では、扉スイ
ッチによる開放状態の検知が行われて冷凍サイクルが動
作しているか停止しているかに拘らずに少なくとも送風
機１４は停止するように制御し、扉３ａ（３ｂ，３ｃ）
を開けた貯蔵室５ａ（５ｂ，６）以外の貯蔵室からの冷
気１５の漏れ出しを防ぐようにしている。しかしなが
ら、貯蔵容器１０ａ（１０ｂ，１０ｃ）と周囲の箱体２
の内壁や仕切り部材８ａ〜８ｃの側面との間には該貯蔵
容器１０ａ（１０ｂ，１０ｃ）を滑動させるために必要
な比較的大きな隙間を形成しているために、該貯蔵容器
１０ａ（１０ｂ，１０ｃ）を引き出すことによりその貯
蔵室５ａ（５ｂ，６）内の大部分の冷気１５が漏れ出し
た後も、該貯蔵容器を引き出した状態では上部から貯蔵
室内へ流入した外気２１が冷やされて下部から流出する
かたちで該外気２１の侵入が連続的に起こることにな
る。

【００１６】このように、引き出し式の貯蔵室５ａ（５
ｂ，６）の扉３ａ（３ｂ，３ｃ）を開けて貯蔵容器１０
ａ（１０ｂ，１０ｃ）を引き出した状態では、初期の冷
気１５の漏れ出しとその後の外気２１の連続的な侵入に
より庫内温度の上昇が引き起こされるので、扉３ａ（３
ｂ，３ｃ）を開けた貯蔵室５ａ（５ｂ，６）内の貯蔵品
が傷むことや該扉３ａ（３ｂ，３ｃ）を閉めた後に該貯
蔵室１０ａ（１０ｂ，１０ｃ）を再冷却するために冷蔵
庫全体の消費電力が増加するという問題を生ずる。

【００１７】また、通常の使用状態で、貯蔵室５ａ，５
ｂ，６の何れかの扉３ａ〜３ｃを開けたときには、この
開放時間が長いと、扉スイッチによる開放検知で送風機
１４が停止したことによる影響が扉を閉じたままの貯蔵
室にも現れる（引き出し式に限らない）。図１６にも示
したように、最近の一般的な冷蔵庫で見られるように、
引き出し式の野菜貯蔵室６が箱体２の最下部で蒸発器１
３がすぐ上部に配置される構造をとるものでは、野菜貯
蔵室６とは別の貯蔵室５ａ（５ｂ）の扉３ａ（３ｂ）が
開放されることで送風機１４が停止し、且つ扉３ａ（３
ｂ）を開けた貯蔵室５ａ（５ｂ）の庫内温度の上昇で冷
凍サイクルが動作するか元々冷凍サイクルが動作してい
た状態であったとすると、圧縮機１８が動作して蒸発器
１３が急速に低温になると、該蒸発器１３から野菜貯蔵
室６へかなり低温の冷気１５がその密度差によって戻り
通路１７を逆流して流れ込むようになる。その結果、野
菜貯蔵室６の一部または全部が氷点以下となって貯蔵品
である野菜が凍結して傷むという問題を生ずる。この問
題に関して、特開平５−２２３４３１号公報には、送風
機１４の制御変更による野菜の凍結防止の対策が示され
ているが、凍結防止以外の付随する問題、例えば後述す
るような消費電力の増加等には十分な対策ができていな
い。扉を開けていない貯蔵室が前記のような野菜貯蔵室
６でない場合でも、他の貯蔵室の扉が開放されたために
送風機１４が停止して冷凍サイクルが動作した状態にな
ると、その貯蔵室への冷気１５の循環が途切れるため
に、冷蔵庫本体１の断熱壁からの熱侵入で庫内温度が上
昇して貯蔵品が傷むという問題を生ずる。また、圧縮機
１８が動作しながら送風機１４は停止するという変則運
転状態になるため、通常の断続運転に比べて冷蔵庫全体
の消費電力が増加するという問題も発生する。

【００１８】このように貯蔵室の扉が開けられた場合の
冷気の漏れ出しに伴う問題の対策例として、固定棚式の
貯蔵室については、特開平６−１８０１７９号公報や特
開平６−１８０１８０号公報に示されたような、扉のパ
ッキンよりも庫内側にシール部材を設ける対策が知られ
ている。これらは固定棚式の貯蔵室に関する対策であ
り、扉が僅かに開けられた場合に限ってその効果を発揮
する。また、引き出し式の貯蔵室については、扉の庫内
側下部の一部分にシール部材を設ける対策が行われた例
があるが、これも扉が僅かに開けられた場合に限ってそ
の効果を発揮するものである。

【００１９】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述したよ
うな引き出し式の貯蔵室を備えた従来の冷蔵庫における
問題点である、扉が僅かに開放された状態で放置された
場合や通常の使用状態で扉を開けて貯蔵容器を引き出し
たときに発生する貯蔵室での冷気漏れ出しと外気侵入に
よる温度上昇や他の貯蔵室の扉が開けられたことで扉を
開けていない他の引き出し式の貯蔵室に生ずる温度変動
による該引き出し式の貯蔵室内での貯蔵品の傷みや冷蔵
庫全体の消費電力の増加の問題を解決しようとするもの
である。

【００２０】

【課題を解決するための手段】本発明は、蒸発器で生成
された冷気を送風機により冷蔵庫本体内の複数の貯蔵室
に供給通路と戻り通路を経て循環させると共に前記貯蔵
室のうちの少なくとも１つが扉と貯蔵容器を備えた引き
出し式の貯蔵室であって該引き出し式の貯蔵室の前記扉
は前記冷蔵庫本体の前面フランジの一側面に固定された
ヒンジを支点とする回動または該冷蔵庫本体に対する前
後方向の滑動で開閉し、且つ前記貯蔵容器は前記冷蔵庫
本体に対する前後方向の滑動で出し入れするようにした
冷蔵庫において、第１の特徴は、前記引き出し式の貯蔵
室に関して、前記扉と前記貯蔵容器の間に上下方向に伸
びる前面冷気通路が前記扉のほぼ閉状態で形成されるよ
うにすると共に、前記貯蔵容器及び前記前面冷気通路の
前面周囲の隙間を封止する軟質でひれ状のシール部材
を、前記冷蔵庫本体の前面フランジ近傍の庫内側に設
け、前記扉の全閉状態から前記扉がパッキンの厚さ程度
に開いた状態までの範囲で前記シール部材の先端が隙間
を挟んで対向する部材表面との接触を保つようにしたこ
とにあり、付随的には、前記引き出し式の貯蔵室は上下
方向に複数段に貯蔵容器を収容し、下段の貯蔵容器の前
面上部には軟質でひれ状のシール部材が設けられ、該シ
ール部材の先端が隙間を挟んで対向する上段の貯蔵容器
の表面との接触を保つようにしたことにあり、前記扉の
全閉状態から前記扉が前記パッキンの厚さ程度に開いた
状態までの範囲での前記シール部材の先端と前記対向す
る部材表面との接触を磁力で支援するようにしたことに
ある。

【００２１】また、第２の特徴は、前記引き出し式の貯
蔵室に関して、前記貯蔵容器が通常の使用状態で最大に
引き出された状態で庫外に露出する範囲の該貯蔵容器の
前面を除く両側面と底面の外表面形状を前方から見て一
定な断面形状にすると共に、引き出された状態の前記貯
蔵容器の少なくとも両側面と底面の周囲の隙間を封止す
る軟質でひれ状のシール部材を、前記冷蔵庫本体の前面
フランジ近傍の庫内側に設け、前記貯蔵容器が引き出さ
れた状態で前記シール部材の先端が前記貯蔵容器の両側
面と底面との接触を前記冷蔵庫本体の前面付近で保つよ
うにしたことにあり、付随的には、前記引き出し式の貯
蔵室は上下方向に複数段に貯蔵容器を収容し、下段の貯
蔵容器の前面上部には軟質でひれ状のシール部材が設け
られ、該シール部材の先端が隙間を挟んで対向する上段
の貯蔵容器の表面との接触を保つようにしたことにあ
り、前記引き出し式の貯蔵室は庫内に留まる形式で前記
貯蔵容器の上面を密閉する蓋体を備えた野菜貯蔵室であ
り、前記貯蔵容器の上面を封止する前記シール部材は、
該貯蔵容器が引き出された状態では前記シール部材の先
端は前記蓋体の前面上部に接触するようにしたことにあ
る。

【００２２】更に、第３の特徴は、各貯蔵室の前記供給
通路と前記戻り通路に通路切換え手段と通路遮断手段
と、何れかの前記貯蔵室の前記扉が開けられると共に何
れかの前記貯蔵室の庫内温度が設定値より高いために前
記冷気の循環を行う必要があるときには前記扉の開放検
知による前記送風機の停止を行わないようにすると共に
前記扉が開けられた貯蔵室への前記冷気の送風を前記供
給通路から直接に前記戻り通路へ迂回させることで中止
し、且つ前記引き出し式の貯蔵室も含む前記扉が開けら
れていない貯蔵室への前記冷気の送風は前記供給通路と
前記戻り通路を使って継続するように前記送風機，通路
切換え手段及び通路遮断手段を制御する制御装置を設け
たことにあり、更に、第４の特徴は、前記引き出し式の
貯蔵室に関して、前記扉と前記貯蔵容器の間に上下方向
に伸びる前面冷気通路が前記扉のほぼ閉状態で形成され
るようにすると共に、前記貯蔵容器が通常の使用状態で
最大に引き出された状態で庫外に露出する範囲の該貯蔵
容器の前面を除く両側面と底面の外表面形状を前方から
見て一定な断面形状にして引き出された状態の該貯蔵容
器の少なくとも両側面と底面の周囲の隙間を封止する軟
質でひれ状のシール部材を前記冷蔵庫本体の前面フラン
ジ近傍の庫内側に設け、前記貯蔵容器が引き出された状
態で前記シール部材の先端が前記貯蔵容器の両側面と底
面との接触を前記冷蔵庫本体の前面付近で保つようにし
たことにあり、付随的には、前記各貯蔵室の前記供給通
路と前記戻り通路に通路切換え手段と通路遮断手段と、
何れかの前記貯蔵室の前記扉が開けられると共に何れか
の前記貯蔵室の庫内温度が設定値より高いために前記冷
気の循環を行う必要があるときには前記扉の開放検知に
よる前記送風機の停止を行わないようにすると共に前記
扉が開けられた貯蔵室への前記冷気の送風を前記供給通
路から直接に前記戻り通路へ迂回させることで中止し、
且つ前記引き出し式の貯蔵室も含む前記扉が開けられて
いない貯蔵室への前記冷気の送風は前記供給通路と前記
戻り通路を使って継続するように前記送風機，通路切換
え手段及び通路遮断手段を制御する制御装置を設けたこ
とにある。

【００２３】

【作用】引き出し式の貯蔵室の扉と貯蔵容器の間に形成
された前面冷気通路の前面周囲の隙間を封止したシール
部材は、引き出し式の貯蔵室の扉を僅かに開けたまま放
置された状態でも、前記引き出し式の貯蔵室の冷気の漏
れ出しを僅少に抑える。扉を僅かに開けた状態では扉ス
イッチによる開放検知がなされないために扉を閉めた状
態と同様に冷凍サイクルが断続的に動作するが、前面冷
気通路により庫内の冷気循環が良好に行われる。従っ
て、引き出し式の貯蔵室の扉を僅かに開けて放置したで
も冷気の漏れ出しや外気の侵入とそれによる庫内の温度
上昇がほとんど起こらず冷凍サイクルが連続動作に入る
こともないため、貯蔵室内の貯蔵品の傷みや冷蔵庫全体
の消費電力の増加がほとんど現れなくなる。

【００２４】また、庫外に引き出される範囲の貯蔵容器
の側面及び底面と周囲の隙間がシール部材で封止される
ため、通常の使用状態で引き出し式の貯蔵室の扉を開け
貯蔵容器を引き出したときに、引き出した状態での連続
的な外気の侵入は大幅に少なくなる。従って、引き出し
式の貯蔵室の扉を開け貯蔵容器を引き出したときに、外
気の侵入が抑制されて庫内の温度上昇が少なくなると共
に扉を閉めた後の庫内の再冷却も少なくなるため、扉を
開けた貯蔵室内の貯蔵品の傷みや冷蔵庫全体の消費電力
の増加が少なくなる。

【００２５】また、何れかの貯蔵室の扉が開けられると
共に冷凍サイクルが動作して冷気の循環が行われている
場合、扉スイッチで開放検知しても送風停止は行わない
ように制御される。そして、扉が開けられた貯蔵室では
冷気の送風が中止され、引き出し式の貯蔵室も含む扉が
開けられていない貯蔵室では、冷気の送風は継続されて
全ての扉が閉められた状態とほぼ同様な冷却を行う。何
れかの貯蔵室の扉を開けた場合に、引き出し式も含む扉
を開けていない貯蔵室での温度変動がほとんど発生しな
くなるために貯蔵品の傷みが現れず、また、冷蔵サイク
ルも変則運転にならないために冷蔵庫全体の消費電力の
増加もほとんど現れなくなる。

【００２６】

【実施例】本発明の実施例を図面を用いて説明する。

【００２７】図１は、本発明になる冷蔵庫の第１の実施
例における該冷蔵庫の一部の扉を僅かに開けた状態での
冷蔵庫本体の下半部分の縦断側面図であり、図２は、同
じ状態での該冷蔵庫本体の下半部分の扉を省略した正面
図である。冷蔵庫の基本的な構造や扉を閉めた状態の冷
気の循環等は、前述した従来の冷蔵庫とほぼ同一である
ので、これらには同一の参照符号を付して重複する説明
を省略する。

【００２８】この実施例では、引き出し式の各貯蔵室の
扉３ａ〜３ｃと貯蔵容器１０ａ〜１０ｃの間に上下に開
口をもつ上下方向の前面冷気通路２０ａ〜２０ｃが設け
られている。この前面冷気通路２０ａ〜２０ｃは、各貯
蔵容器１０ａ〜１０ｃの前面に通路形成部材を追加して
一体化すると共に該通路形成部材を各扉３ａ〜３ｃの内
面に密着させて配置することにより形成される。冷蔵庫
本体１の前面フランジ近傍の庫内側には、前面冷気通路
２０の前面周囲の隙間を封止するように、軟質材で形成
したひれ状のシール部材２２ａ〜２２ｉが設置される。
このシール部材２２ａ〜２２ｉは、各扉３ａ〜３ｃ及び
貯蔵容器１０ａ〜１０ｃを全閉の状態から扉スイッチに
よる開放検知がなされないパッキン９の厚さ程度まで引
き出した状態までの範囲で、該シール部材２２ａ〜２２
ｉの先端が、容器滑動のために設けた隙間を挟んで対向
する各扉３ａ〜３ｃの内面突出部の表面ないし各貯蔵容
器１０ａ〜１０ｃの前面に追加した通路形成部材の上下
の開口より前側の表面との接触を保つように位置する。

【００２９】図面は、第１の冷凍貯蔵室５ａと野菜貯蔵
室６の扉３ａ，３ｃと貯蔵容器１０ａ，１０ｃが前述し
た程度に僅かだけ引き出され、且つ冷凍サイクルが動作
して冷気１５の循環が行われている状態を示している。
従来の冷蔵庫では、前述したように、このように扉３ａ
が開けられた第１の冷凍貯蔵室５ａと野菜貯蔵室６で冷
気１５の漏れ出しと外気２１の侵入が活発に起こるが、
この実施例では、扉３ａが開けられた第１の冷凍貯蔵室
５ａと野菜貯蔵室６においても冷気１５は貯蔵容器１０
ａ〜１０ｃの前面では前面冷気通路２０ａ〜２０ｃを流
れて循環し、しかも周囲の隙間がシール部材２２ａ〜２
２ｉで封止されているので冷気１５の庫外への漏れ出し
も抑制される（外気２１の侵入も抑えられる）。従っ
て、この実施例の冷蔵庫では、従来の冷蔵庫に比べ、扉
３ａ，３ｃを僅かに開けた引き出し式の貯蔵室５ａ，６
及びその他の貯蔵室５ｂでも庫内温度がほとんど上昇し
ないために該貯蔵室内の貯蔵品に傷みが発生することは
ない。また、貯蔵室５ａ，５ｂ，６の庫内温度の上昇が
ないため冷凍サイクルの連続動作が起こらず、外気２１
の侵入による蒸発器１３の過大着霜も発生しないため
に、冷蔵庫全体としての消費電力の増加も軽微である。

【００３０】図３は、本発明になる冷蔵庫の第２の実施
例であって、該冷蔵庫の扉を僅かに開けた状態の引き出
し式の貯蔵室の縦断側面図である。この実施例で、引き
出し式の貯蔵室は１枚の回動式の扉３ｄで開閉される大
きな冷凍貯蔵室５ｃであり、３段の滑動式の貯蔵容器１
０ｄ〜１０ｆを収容する構造となっている。前述した実
施例と同様に、各貯蔵容器１０ｄ〜１０ｆの前面に前面
冷気通路２０ｄ〜２０ｆが形成され、且つ軟質でひれ状
のシール部材２２ａ，２２ｊ，２２ｋ，２２ｆが冷蔵庫
本体１の前面フランジ近傍の庫内側や２〜３段目の貯蔵
容器１０ｅ，１０ｆの前面上部（前面冷気通路２０ｄ〜
２０ｆの上下の開口より前側）に設けられている。

【００３１】このようにすると、扉３ｄが前述した実施
例と同様に僅かに開けられた状態でも、冷気１５は各貯
蔵容器１０ｄ〜１０ｆの前面では前面冷気通路２０ｄ〜
２０ｆを流れるので、庫内の冷気循環状態は扉３ｄが完
全に閉められた状態のときとほとんど変わらず、しかも
前記シール部材２２ａ，２２ｊ，２２ｋ，２２ｆの封止
作用により庫外に漏れ出す冷気１５の量は僅かである。
従って、この実施例でも、前記の実施例と同様に、貯蔵
品の傷みと消費電力の増加の問題を一挙に解決すること
ができる。

【００３２】図４は、本発明になる冷蔵庫の第３の実施
例であって、該冷蔵庫の扉を僅かに開けた状態の引き出
し式の貯蔵室の縦断側面図である。この実施例で、引き
出し式の野菜貯蔵室６は、扉３ｅと一体的に滑動する貯
蔵容器１０ｇを収容する。貯蔵容器１０ｇは、その前面
部材を上下方向に延長して扉３ｅの内面突出部の内面に
密着させると共に該貯蔵容器１０ｇの前面の上下端に開
口を設けることで扉３ｅと該貯蔵容器１０ｇの間に前面
冷気通路２０ｇを形成し、シール部材２２ｇ，２２ｉは
冷蔵庫本体１の前面フランジ近傍の庫内側から延びてそ
の先端部が扉３ｅの内面突出部の外面と接触するように
配置される。

【００３３】このようにすると、扉３ｅが僅かに開けら
れた状態でも、前述した２つの実施例と同様に、前面冷
気通路２０ｇとシール部材２２ｇ，２２ｉの作用によ
り、冷気１５の庫内循環の状態はほとんど変わらず、庫
外への漏れ出しも僅かである。従って、貯蔵品の傷みや
消費電力の増加という問題はほとんど現れない。

【００３４】前述した各実施例における冷蔵庫は、シー
ル部材２２ａ〜２２ｋを軟質のひれ状のものとし、その
先端が対向する部材表面と接触するだけで封止効果を得
るようにしたが、封止効果を確実にするために、各シー
ル部材２２ａ〜２２ｋの先端と対向する部材表面とが磁
気吸着で接触圧力を高めるように部材の材質変更や追加
等を行ってもよい。

【００３５】上述した各実施例におけるような本発明に
なる冷蔵庫は、過失などにより、引き出し式の貯蔵室の
扉が僅かに開いた状態で放置された場合に、従来の冷蔵
庫に比べて冷気の漏れ出しや外気の侵入とそれによる庫
内の温度上昇がほとんど起こらないため、貯蔵品の傷み
を防止し且つ冷蔵庫全体の消費電力の増加を抑えること
ができる。

【００３６】図５は、本発明になる冷蔵庫の第４の実施
例であって、該冷蔵庫の一部の扉及び貯蔵容器を引き出
した状態での冷蔵庫本体の下半部分の縦断側面図であ
る。冷蔵庫の基本的な構造や扉を閉めた状態の冷気の循
環等は前述した従来の冷蔵庫とほぼ同一であるので同一
の参照符号を付して重複する説明を省略する。

【００３７】この実施例は、引き出し式の各貯蔵室５
ａ，５ｂの貯蔵容器１０ｈ〜１０ｊの前面を除く側面と
底面の外表面形状を、通常の使用状態で最大に引き出し
た状態で庫外に露出する範囲については前方から見て一
定の断面形状となるように成形している。更に、引き出
された状態の各貯蔵容器１０ｈ〜１０ｊの少なくとも両
側面と底面の周囲に形成される隙間を封止するように、
冷蔵庫本体１の前面フランジ近傍の庫内側に軟質でひれ
状のシール部材２２ｃ〜２２ｉも設置される。このシー
ル部材２２ｃ〜２２ｉは、扉３ｆ〜３ｈ及び貯蔵容器１
０ｈ〜１０ｊが通常の使用状態で引き出される範囲（扉
スイッチによる開放検知が行われる状態）では、該シー
ル部材２２ｃ〜２２ｉの先端が各貯蔵容器１０ｈ〜１０
ｊの側面と底面とに冷蔵庫本体１の前面付近で常に接触
状態を保つように位置する。

【００３８】図面は、第１の冷凍貯蔵室５ａと野菜貯蔵
室６の貯蔵容器１０ｈ，１０ｊが引き出された状態を示
しており、扉スイッチによる開放検知により送風機１４
が停止して冷気１５の循環は停止されている。このよう
な状態では、従来の冷蔵庫では、前述したように、貯蔵
容器１０ｈ，１０ｊを引き出す際の冷気１５の漏れ出し
とその後の外気の侵入が連続的に起こるが、この実施例
では、引き出した状態で貯蔵容器１０ｈ，１０ｊの側面
と底面の周囲の隙間はシール部材２２ｃ，２２ｇ，２２
ｉで封止されて外気２１の侵入経路が貯蔵容器１０ｈ，
１０ｊの上面開口に限られるため、密度差による流れが
形成されにくく、外気２１の侵入は僅少になる。特に野
菜貯蔵室６では、貯蔵容器１０ｊの上面を封止するシー
ル材２２ｇの先端が、貯蔵容器１０ｊが引き出された状
態で庫内に留まっている蓋体１２の前面上部に接触する
ので、蓋体１２の上部への外気２１の侵入も防止され
る。従って、この実施例における冷蔵庫は、従来の冷蔵
庫に比べ、貯蔵容器が引き出された貯蔵室の庫内温度が
上昇しないため、それらの貯蔵室内の貯蔵品の傷みが少
なくなる。また、貯蔵室の庫内温度が上昇しないので扉
を閉めた後の該貯蔵室の再冷却の必要性が小さくなり、
冷蔵庫全体の消費電力の増加を抑制することができる。

【００３９】図６は、本発明になる冷蔵庫の第５の実施
例であって、該冷蔵庫の一部の扉及び貯蔵容器を引き出
した状態の引き出し式の貯蔵室の縦断側面図である。こ
の実施例では、引き出し式の貯蔵室は冷凍貯蔵室５ｄで
あって、共に滑動式の１枚の扉３ｉと２段の貯蔵容器１
０ｋ，１０ｍを備えている。図面は、２段の貯蔵容器１
０ｋ，１０ｍが一緒に引き出された状態を示している。
前記実施例と同様に、各貯蔵容器１０ｋ，１０ｍの側面
と底面の外表面形状は前方から見て一定の断面形状とな
るように成形されており、更に、軟質でひれ状のシール
部材２２ａ，２２ｊ，２２ｆが貯蔵容器１０ｋ，１０ｍ
の両側面と底面の周囲に形成される隙間を封止するよう
に冷蔵庫本体１の前面近傍の内側や下段の貯蔵容器１０
ｍの前面上部に設けられている。

【００４０】このように構成された冷蔵庫は、扉３ｉと
貯蔵容器１０ｋ，１０ｍが一緒に引き出された場合で
も、両貯蔵容器１０ｋ，１０ｍの両側面と底面の外表面
形状が前方から見て一定な断面形状であってシール部材
２２ａ，２２ｊ，２２ｆによりそれらの周囲の隙間が良
好に封止されるので、外気２１の侵入経路は上段の貯蔵
容器１０ｋの上面開口に限られることになり、貯蔵容器
１０ｋ，１０ｍを引き出した状態での外気２１の侵入が
僅少になる。従って、この実施例においても、前述した
実施例と同様に、貯蔵室内の貯蔵品の傷みや冷蔵庫全体
の消費電力の増加という問題が少なくなる。

【００４１】図７は、本発明になる冷蔵庫の第６の実施
例であって、該冷蔵庫の扉と一部の貯蔵容器を引き出し
た状態の引き出し式の貯蔵室の縦断側面図である。この
実施例では、引き出し式の貯蔵室は大きな冷凍貯蔵室５
ｅであって、１枚の回動式の扉３ｊで開閉され、３段の
滑動式の貯蔵容器１０ｎ〜１０ｐを収容する。図面は、
扉３ｊを開けて最上段の貯蔵容器１０ｎを引き出した状
態を示している。前述した２つの実施例と同様に、各貯
蔵容器１０ｎ〜１０ｐの両側面と底面の外表面形状とシ
ール部材２２ａ，２２ｊ，２２ｋ，２２ｆにより該各貯
蔵容器１０ｎ〜１０ｐの周囲に形成される隙間を封止す
ように構成され、外気２１の侵入経路は上段の貯蔵容器
１０ｎの上面開口に限られ、貯蔵容器１０ｎを引き出し
た状態での外気２１の侵入が大幅に減少する。従って、
この実施例でも、前述した２つの実施例と同様に、貯蔵
品の傷みや冷蔵庫全体の消費電力の増加という問題が少
なくなる。

【００４２】以上のように、本発明になる第４〜６の実
施例の冷蔵庫では、通常の使用状態で引き出し式の貯蔵
室の扉を開けて貯蔵容器を引き出したときに、従来の冷
蔵庫に比べ、外気の侵入を抑制して庫内の温度上昇を少
なくすることができるために、扉を開けた貯蔵室におけ
る貯蔵品の傷みを防止し、且つ冷蔵庫全体の消費電力の
増加を少なくすることができる。

【００４３】図８〜図１２は本発明になる冷蔵庫の第７
の実施例であって、図８は総ての扉を閉めた状態での冷
蔵庫本体の下半部分の縦断側面図、図９は一部の扉及び
貯蔵容器を引き出した状態での冷蔵庫本体の下半部分の
縦断側面図、図１０は冷気通路切換え部の縦断側面図、
図１１は制御装置のブロック図、図１２は制御装置が実
行する制御処理のフローチャートである。この実施例に
おける冷蔵庫の基本的な構造は、既に図１４〜図１６を
参照して説明した従来の冷蔵庫とほぼ同一である。この
同一部分については、同一の参照符号を付して重複する
説明は省略する。この実施例は、各貯蔵室５ａ，５ｂ，
６への冷気１５の供給通路１６と戻り通路１７から成る
冷気循環経路の途中に新たに通路切換え手段２４ａ〜２
４ｃ及び通路遮断手段２５を備える。この通路切換え手
段２４ａ，２４ｂは、図１０に示すように、電磁操作器
２４ａ−１によって操作される切換え弁操作２４ａ−２
によって冷気流通方向を切換えるものである。通路切換
え手段２４ｃ及び通路遮断手段２５は、図示説明を省略
するが、弁によって冷気通路を変更あるいは断続する構
成である。

【００４４】制御装置は、図１１に示すように、マイク
ロコンピュータ２６を中心にして構成され、図１２に示
すように、冷蔵貯蔵室室温度センサ２７ａ，冷凍貯蔵室
室温度センサ２７ｂ，庫外温度センサ２７ｃ，冷蔵貯蔵
室扉スイッチ２８ａ，第１冷凍貯蔵室５ａの扉スイッチ
２８ｂ，第２冷凍貯蔵室５ｂの扉スイッチ２８ｃからの
検出信号に基づいて送風機１８，圧縮機１８，ヒータ２
９，冷蔵貯蔵室通路切換え手段２４ｄ及び第１及び第２
の冷凍貯蔵室通路切換え手段２４ａ，２４ｂを切り換え
操作を制御する。野菜貯蔵室６の扉検知手段２８ｄは機
械的に通路切換え手段２４ｃ及び通路遮断手段２５と連
係して該通路切換え手段２４ｃ及び通路遮断手段２５を
操作する。

【００４５】図８に示したように、総ての扉３ａ〜３ｃ
が閉められた状態では、通路切換え手段２４ａ〜２４ｃ
及び通路遮断手段２５は開状態であり、従来の冷蔵庫と
同様に、冷凍サイクルの断続運転に応じて冷気１５の循
環の停止及び継続を行う。

【００４６】図９に示すように、野菜貯蔵室６の扉３ｃ
が開けられたとき（開けられるのは何れかの貯蔵室でよ
い）に、扉３ｃを開けた野菜貯蔵室６の庫内温度の上昇
で冷凍サイクルが動作するか元々冷凍サイクルが動作し
ていた場合は、この実施例では扉スイッチ２８ｄの開放
検知での送風機１４の停止制御は行わないので、送風機
１４による冷気１５の循環は継続する。しかし、通路切
換え手段２４ｃ及び通路遮断手段２５は、扉３ｃの開放
に連動して供給通路１６及び戻り通路１７を切換え及び
遮断して該扉３ｃを開けた野菜貯蔵室６へ供給すべき冷
気１５をその供給通路１６から戻り通路１７に直接迂回
させることで該扉３ｃを開けた野菜貯蔵室６内には循環
させず、扉３ａ，３ｂが閉じている冷凍貯蔵室５ａ，５
ｂ等の他の貯蔵室（引き出し式でない貯蔵室も含む）に
対してそれらの供給通路１６と戻り通路１７の経路によ
り冷気１５の循環を継続させる。但し、複数の貯蔵室を
同じ冷気１５が連続的に循環する場合（例えば、通常の
冷蔵庫での冷蔵貯蔵室４と野菜貯蔵室６等）には、扉を
開けた貯蔵室については冷気１５を迂回させ、その貯蔵
室の供給通路１６から次の貯蔵室の供給通路１６（次の
貯蔵室がある場合）やその貯蔵室の戻り通路１７（その
貯蔵室が経路の最後の場合）に流れるように通路の切換
えを行う。従って、扉を開けていない貯蔵室では総ての
貯蔵室の扉が閉められた状態とほぼ同様に該貯蔵室内の
冷却が行われるので、従来の冷蔵庫のような庫内温度の
大幅な変動を発生することがなく、それらの貯蔵室内の
貯蔵品の傷みを少なくすることができる。また、冷凍サ
イクルの運転は、扉３ｃを開けた野菜貯蔵室６での熱損
失分だけ動作時間が長くなるものの通常の断続運転とな
り、従来の冷蔵庫のような圧縮機１８が動作しながら送
風機１４は停止するという変則運転にはならないため、
貯蔵室を開けたことによる冷蔵庫全体としての消費電力
の増加も少なくすることができる。

【００４７】以上、冷蔵庫の構造や扉を開ける貯蔵室を
特定の場合に限って説明したが、冷蔵庫の構造を変形し
た場合や他の貯蔵室の扉を開けた場合でも、同様な作用
効果を期待できることは明白である。

【００４８】以上のように、この実施例の冷蔵庫は、何
れかの貯蔵室の扉を開けた場合に、引き出し式も含む扉
を開けていない貯蔵室での温度変動が極めて少ないため
に、扉を開けていない引き出し式の貯蔵室の貯蔵品の傷
みや冷蔵庫全体の消費電力の増加が極めて少ない。

【００４９】これまで本発明の第１〜第７の実施例を説
明したが、これらの複数の実施例の構成を組み合わせる
ことにより、扉を開ける種々の条件で貯蔵品の傷みや消
費電力の増加を少なくすることができる冷蔵庫を実現で
きるようになる。

【００５０】図１３は、このような考えのもとに構成し
た本発明の第８の実施例である冷蔵庫であって、各貯蔵
室の扉を開けた状態での冷蔵庫本体の下半部分の縦断側
面図である。この実施例は、冷蔵庫の基本的な構造や扉
を閉めた状態での冷気の循環等は既に説明した従来の冷
蔵庫あるいは第１及び第７の実施例と同じであるので、
これらの構成については同一の参照符号を付して説明す
る。

【００５１】図面は、第１及び第２の冷凍貯蔵室５ａ，
５ｂの扉３ａ，３ｂが僅かに開けられ、野菜貯蔵室６は
扉３ｃと貯蔵容器１０ｃが大きく引き出された状態を示
している。引き出し式の各貯蔵室５ａ，５ｂ，６では、
扉３ａ〜３ｃと貯蔵容器１０ａ〜１０ｃの間に上下方向
に伸びる前面冷気通路２０ａ〜２０ｃが形成され、庫外
に最大に引き出される範囲の貯蔵容器１０ａ〜１０ｃの
前面を除く底面と側面の外表面形状が前方から見て一定
の断面形状に成形され、また、前面冷気通路２０ａ〜２
０ｃの前面封止用のシール部材２２ａ〜２２ｉが貯蔵容
器１０の底面と両側面の隙間の封止も兼ねるような形状
及び配置で設けられ、更に、各貯蔵室５ａ，５ｂ，６へ
の冷気１５の供給通路１６と戻り通路１７に通路切換え
手段２４ａ〜２４ｃ及び通路遮断手段２５が設置されて
いる。

【００５２】図示の状態では、野菜貯蔵室６の扉３ｃと
貯蔵容器１０ｃとが大きく引き出されているために、冷
気１５は該野菜貯蔵室６を迂回して循環するように通路
切換え手段２４ｃと通路遮断手段２５が動作し、第１及
び第２の冷凍貯蔵室５ａ，５ｂは扉３ａ，３ｂが僅かに
開けられた状態であるが冷気１５の循環が行われてい
る。

【００５３】野菜貯蔵室６では、貯蔵容器１０ｃの底面
と両側面の封止も兼ねるシール部材２２ｇ，２２ｉによ
り引き出した後の庫内への外気２１の侵入が少なく抑え
られており、また、第１及び第２の冷凍貯蔵室５ａ，５
ｂでは、扉３ａ，３ｂが僅かに開いているが、前面冷気
通路２０ａ，２０ｂとその前面封止用のシール部材２２
ａ〜２２ｆにより冷気１５の漏れ出し及び外気２１の侵
入を抑えられるので庫内の冷却が良好に行われている。
従って、既に前記各実施例で説明したように、従来の冷
蔵庫に比べて扉３ｃを開けた野菜貯蔵室６や扉３ａ，３
ｂが僅かに開いた冷凍貯蔵室５ａ，５ｂでの庫内温度の
上昇が少なくなって貯蔵品の傷みが少なく、また、冷凍
サイクルは通常の断続運転に近くなることなどから扉を
開けたことによる冷蔵庫全体としての消費電力の増加も
少なくなる。そして、このような作用効果は、各貯蔵室
の扉の開け方がこの実施例と異なる冷蔵庫もでも、同様
に得ることができる。

【００５４】以上、冷蔵庫の構造や扉を開ける貯蔵室を
特定の構成に限って説明したが、他の冷蔵庫の構造や他
の貯蔵室の扉を開けた場合でも、扉を開ける条件により
効果の現れ方がやや異なってくるものの、貯蔵品の傷み
や消費電力の増加を少なくすることができる基本的な効
果は共通して期待できる。

【００５５】上述した各実施例は、冷蔵庫本体の上半部
分を固定棚式の冷蔵貯蔵室、下半部分を複数の引き出し
式のその他の貯蔵室としたものを共通に対象としたが、
一つ以上の引き出し式の貯蔵室を備えた異なる全体構造
の冷蔵庫（例えば、冷蔵庫本体の上部ないし中央部が固
定棚式の冷凍貯蔵室と冷蔵貯蔵室で、それらの下部が引
き出し式の野菜貯蔵室等であるもの等）についても、本
発明を適用することにより同様の効果を期待できること
は明らかである。

【００５６】

【発明の効果】本発明は、一つ以上の引き出し式の貯蔵
室を備えた冷蔵庫において、引き出し式の貯蔵室自体あ
るいは他の貯蔵室の扉を開けたことにより引き出し式の
貯蔵室に発生する冷気の漏れ出しや外気侵入による温度
変動を少なくして、貯蔵室の扉を開けることによる貯蔵
品の傷みや消費電力の増加を少なくすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明になる冷蔵庫の第１の実施例における該
冷蔵庫の一部の扉を僅かに開けた状態での冷蔵庫本体の
下半部分の縦断側面図である。

【図２】図１に示した冷蔵庫における扉を省略した冷蔵
庫本体の下半部分の正面図である。

【図３】本発明になる冷蔵庫の第２の実施例における該
冷蔵庫の扉を僅かに開けた状態の引き出し式の貯蔵室の
縦断側面図である。

【図４】本発明になる冷蔵庫の第３の実施例における該
冷蔵庫の扉を僅かに開けた状態の引き出し式の貯蔵室の
縦断側面図である。

【図５】本発明になる冷蔵庫の第４の実施例における該
冷蔵庫の一部の扉及び貯蔵容器を引き出した状態での冷
蔵庫本体の下半部分の縦断側面面図である。

【図６】本発明になる冷蔵庫の第５の実施例における該
冷蔵庫の扉及び貯蔵容器を引き出した状態の引き出し式
の貯蔵室の縦断側面図である。

【図７】本発明になる冷蔵庫の第６の実施例における該
冷蔵庫の扉と一部の貯蔵容器を引き出した状態の引き出
し式の貯蔵室の縦断側面図である。

【図８】本発明になる冷蔵庫の第７の実施例における該
冷蔵庫の扉を全て閉めた状態での冷蔵庫本体の下半部分
の縦断側面図である。

【図９】図８に示した冷蔵庫における一部の扉及び貯蔵
容器を引き出した状態での冷蔵庫本体の下半部分の縦断
側面図である。

【図１０】図８に示した冷蔵庫における冷気通路切換え
部の縦断側面図である。

【図１１】図８に示した冷蔵庫における制御装置のブロ
ック図である。

【図１２】図１１に示した制御装置が実行する制御処理
のフローチャートである。

【図１３】本発明になる冷蔵庫の第８の実施例における
該冷蔵庫の各貯蔵室の扉を開けた状態での冷蔵庫本体の
下半部分の縦断側面図である。

【図１４】従来の冷蔵庫の総ての扉を閉めた状態での冷
蔵庫本体の下半部分の縦断側面図である。

【図１５】図１４に示した従来の冷蔵庫における総ての
扉を閉めた状態での扉を省略した冷蔵庫本体の下半部分
の正面図である。

【図１６】図１４に示した従来の冷蔵庫における一部の
扉を僅かに開けた状態での冷蔵庫本体の下半部分の縦断
側面図である。

【符号の説明】

１…冷蔵庫本体、３ａ〜３ｃ…扉、５ａ，５ｂ…冷凍貯
蔵室、６…野菜貯蔵室、１０ａ〜１０ｃ…貯蔵容器、１
２…蓋体、１３…蒸発器、１４…送風機、１５…冷気、
１６…供給通路、１７…戻り通路、２０ａ〜２０ｃ…前
面冷気通路、２２ａ〜２２ｉ…シール部材。

フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−116079（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−223431（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−180179（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−180180（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−52977（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−173369（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−25476（ＪＰ，Ａ) 実開 昭63−49489（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭61−91774（ＪＰ，Ｕ) 実開 平４−57184（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F25D 17/08 307

Claims (9)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】蒸発器で生成された冷気を送風機により冷
   蔵庫本体内の複数の貯蔵室に供給通路と戻り通路を経て
   循環させると共に前記貯蔵室のうちの少なくとも１つが
   扉と貯蔵容器を備えた引き出し式の貯蔵室であって該引
   き出し式の貯蔵室の前記扉は前記冷蔵庫本体の前面フラ
   ンジの一側面に固定されたヒンジを支点とする回動また
   は該冷蔵庫本体に対する前後方向の滑動で開閉し、且つ
   前記貯蔵容器は前記冷蔵庫本体に対する前後方向の滑動
   で出し入れするようにした冷蔵庫において、 前記引き出し式の貯蔵室に関して、前記扉と前記貯蔵容
   器の間に上下方向に伸びる前面冷気通路が前記扉のほぼ
   閉状態で形成されるようにすると共に、前記貯蔵容器及
   び前記前面冷気通路の前面周囲の隙間を封止する軟質で
   ひれ状のシール部材を、前記冷蔵庫本体の前面フランジ
   近傍の庫内側に設け、前記扉の全閉状態から前記扉が僅
   かに開いた状態までの範囲で前記シール部材の先端が隙
   間を挟んで対向する部材表面との接触を保つようにした
   ことを特徴とする冷蔵庫。
2. 【請求項２】請求項１において、前記引き出し式の貯蔵
   室は上下方向に複数段に貯蔵容器を収容し、下段の貯蔵
   容器の前面上部には軟質でひれ状のシール部材が設けら
   れ、該シール部材の先端が隙間を挟んで対向する上段の
   貯蔵容器の表面との接触を保つようにしたことを特徴と
   する冷蔵庫。
3. 【請求項３】請求項１において、前記扉の全閉状態から
   前記扉が僅かに開いた状態までの範囲での前記シール部
   材の先端と前記対向する部材表面との接触を磁力で支援
   するようにしたことを特徴とする冷蔵庫。
4. 【請求項４】蒸発器で生成された冷気を送風機により冷
   蔵庫本体内の複数の貯蔵室に供給通路と戻り通路を経て
   循環させると共に前記貯蔵室のうちの少なくとも１つが
   扉と貯蔵容器を備えた引き出し式の貯蔵室であって該引
   き出し式の貯蔵室の前記扉は前記冷蔵庫本体の前面フラ
   ンジの一側面に固定されたヒンジを支点とする回動また
   は該冷蔵庫本体に対する前後方向の滑動で開閉し、且つ
   前記貯蔵容器は前記冷蔵庫本体に対する前後方向の滑動
   で出し入れするようにした冷蔵庫において、 前記引き出し式の貯蔵室に関して、前記貯蔵容器が通常
   の使用状態で最大に引き出された状態で庫外に露出する
   範囲の該貯蔵容器の前面を除く両側面と底面の外表面形
   状を前方から見て一定な断面形状にすると共に、引き出
   された状態の前記貯蔵容器の少なくとも両側面と底面の
   周囲の隙間を封止する軟質でひれ状のシール部材を、前
   記冷蔵庫本体の前面フランジ近傍の庫内側に設け、前記
   貯蔵容器が引き出された状態で前記シール部材の先端が
   前記貯蔵容器の両側面と底面との接触を前記冷蔵庫本体
   の前面付近で保つようにしたことを特徴とする冷蔵庫。
5. 【請求項５】請求項４において、前記引き出し式の貯蔵
   室は上下方向に複数段に貯蔵容器を収容し、下段の貯蔵
   容器の前面上部には軟質でひれ状のシール部材が設けら
   れ、該シール部材の先端が隙間を挟んで対向する上段の
   貯蔵容器の表面との接触を保つようにしたことを特徴と
   する冷蔵庫。
6. 【請求項６】請求項４において、前記引き出し式の貯蔵
   室は庫内に留まる形式で前記貯蔵容器の上面を密閉する
   蓋体を備えた野菜貯蔵室であり、前記貯蔵容器の上面を
   封止する前記シール部材は、該貯蔵容器が引き出された
   状態では前記シール部材の先端は前記蓋体の前面上部に
   接触するようにされていることを特徴とする冷蔵庫。
7. 【請求項７】蒸発器で生成された冷気を送風機により冷
   蔵庫本体内の複数の貯蔵室に供給通路と戻り通路を経て
   循環させると共に前記貯蔵室のうちの少なくとも１つが
   扉と貯蔵容器を備えた引き出し式の貯蔵室であって該引
   き出し式の貯蔵室の前記扉は前記冷蔵庫本体の前面フラ
   ンジの一側面に固定されたヒンジを支点とする回動また
   は該冷蔵庫本体に対する前後方向の滑動で開閉し、且つ
   前記貯蔵容器は前記冷蔵庫本体に対する前後方向の滑動
   で出し入れするようにした冷蔵庫において、 各貯蔵室の前記供給通路と前記戻り通路に通路切換え手
   段と通路遮断手段と、何れかの前記貯蔵室の前記扉が開
   けられると共に何れかの前記貯蔵室の庫内温度が設定値
   より高いために前記冷気の循環を行う必要があるときに
   は前記扉の開放検知による前記送風機の停止を行わない
   ようにすると共に前記扉が開けられた貯蔵室への前記冷
   気の送風を前記供給通路から直接に前記戻り通路へ迂回
   させることで中止し、且つ前記引き出し式の貯蔵室も含
   む前記扉が開けられていない貯蔵室への前記冷気の送風
   は前記供給通路と前記戻り通路を使って継続するように
   前記送風機，通路切換え手段及び通路遮断手段を制御す
   る制御装置を設けたことを特徴とする冷蔵庫。
8. 【請求項８】蒸発器で生成された冷気を送風機により冷
   蔵庫本体内の複数の貯蔵室に供給通路と戻り通路を経て
   循環させると共に前記貯蔵室のうちの少なくとも１つが
   扉と貯蔵容器を備えた引き出し式の貯蔵室であって該引
   き出し式の貯蔵室の前記扉は前記冷蔵庫本体の前面フラ
   ンジの一側面に固定されたヒンジを支点とする回動また
   は該冷蔵庫本体に対する前後方向の滑動で開閉し、且つ
   前記貯蔵容器は前記冷蔵庫本体に対する前後方向の滑動
   で出し入れするようにした冷蔵庫において、 前記引き出し式の貯蔵室に関して、前記扉と前記貯蔵容
   器の間に上下方向に伸びる前面冷気通路が前記扉のほぼ
   閉状態で形成されるようにすると共に、前記貯蔵容器が
   通常の使用状態で最大に引き出された状態で庫外に露出
   する範囲の該貯蔵容器の前面を除く両側面と底面の外表
   面形状を前方から見て一定な断面形状にして引き出され
   た状態の該貯蔵容器の少なくとも両側面と底面の周囲の
   隙間を封止する軟質でひれ状のシール部材を前記冷蔵庫
   本体の前面フランジ近傍の庫内側に設け、前記貯蔵容器
   が引き出された状態で前記シール部材の先端が前記貯蔵
   容器の両側面と底面との接触を前記冷蔵庫本体の前面付
   近で保つようにしたことを特徴とする冷蔵庫。
9. 【請求項９】請求項８において、前記各貯蔵室の前記供
   給通路と前記戻り通路に通路切換え手段と通路遮断手段
   と、何れかの前記貯蔵室の前記扉が開けられると共に何
   れかの前記貯蔵室の庫内温度が設定値より高いために前
   記冷気の循環を行う必要があるときには前記扉の開放検
   知による前記送風機の停止を行わないようにすると共に
   前記扉が開けられた貯蔵室への前記冷気の送風を前記供
   給通路から直接に前記戻り通路へ迂回させることで中止
   し、且つ前記引き出し式の貯蔵室も含む前記扉が開けら
   れていない貯蔵室への前記冷気の送風は前記供給通路と
   前記戻り通路を使って継続するように前記送風機，通路
   切換え手段及び通路遮断手段を制御する制御装置を設け
   たことを特徴とする冷蔵庫。