JP3433209B2 - 塗装構造物の応力測定法およびその装置 - Google Patents

塗装構造物の応力測定法およびその装置

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JP3433209B2 JP2000366269A JP2000366269A JP3433209B2 JP 3433209 B2 JP3433209 B2 JP 3433209B2 JP 2000366269 A JP2000366269 A JP 2000366269A JP 2000366269 A JP2000366269 A JP 2000366269A JP 3433209 B2 JP3433209 B2 JP 3433209B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電材料および非
接触方式の表面電位計を用いて、塗装やコーテイングで
表面が保護された機械、構造物あるいは建造物の部材表
面の応力を測定する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】金属、コンクリートあるいは複合材料か
らなる橋梁、船舶、航空機、鉄塔、クレーン、海洋構造
物、プラント設備、建設機械、構造壁面などでは、使用
期間中に種々の応力が生じる。この応力を把握すること
は、構造物の安全管理上きわめて重要である。
【0003】構造物の表面は、塗装やコーテイングが施
されていることが多い。応力測定には歪ゲージ法が多く
使用されているが、歪ゲージ法ではゲージから計測装置
までの電気配線が必要である。ところが、構造物表面に
防食や耐久性向上の目的で塗装やコーテイングが施され
ている場合、これらを剥がして歪ゲージを接着するのに
手間がかかるとともに、塗装と部材の間に歪ゲージを接
着すると、塗装に電気配線を通す穴が必要になり、この
部分が塗膜劣化の原因になりやすいという問題があっ
た。また、電気配線は構造物の機能や外観に弊害を与え
ることも多いという問題があった。最近ではレーザ光
線,赤外線あるいは光ファイバーを用いて、部材表面の
応力を計測する方法も提案されているが、装置が高価な
こと、塗装やコーテイング部材では計測が困難であると
いう問題がある。またこれらの方法は周囲の温度や振動
などの環境に影響を受けやすいので、実機械や構造物の
現場での応力測定を精度よく実施することは容易でなか
った。
【0004】そこで、構造物の外観や機能に弊害を与え
ることなく、応力を計測できる信頼性の高い方法が望ま
れている。たとえば人間に聴診器を当てるような方式
で、塗装やコーテイングが施された構造物の応力を計測
することができれば、非破壊検査やモニタリングの有力
な手段になると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図1に示すように圧電
材料1を、構造部材2に圧電材料の正極が上面を、負極
が母材面を向くように接着する。構造物が使用期間中に
応力を受けると、圧電材料は分極し、圧電材料の表面と
反対側表面の間には、応力に比例した電位差を生じる。
この電位差は非接触方式の表面電位計3を用いて計測で
きることが、文献1(勝見圭介、琵琶士朗、松本英治、
柴田俊忍、高分子圧電フィルムを用いた静的ひずみ分布
の測定(測定原理および円孔付平板に対する検討)、日
本機械学会論文集A編、第64巻、617号、215−
220、1998)に示されている。すなわち、表面電
位計のプローブ4を、ケーブル5を介して圧電材料の表
面近くに置き、表面電位計の接地端子6を、電気配線7
を介して構造部材2に短絡させると、圧電材料の表面に
生じた電位を計測することができる。表面電位と部材表
面の歪の間には圧電方程式に基づく関係式があり、電位
から部材の歪を求めることができる。さらに、部材の応
力−歪関係式を用いて応力を求めることができる。
【0006】圧電材料を用いた応力測定法には、文献2
(新宅英司、藤本由紀夫、濱田邦裕、圧電素子による構
造物の簡易応力履歴計測に関する研究、第1報および第
2報、日本造船学会論文集第184号、343−35
0、1998および第186号、401−411、19
99)に示すように、圧電材料の表面に電気端子と電気
配線を取り付けて計測する別の方法もあるが、この場
合、応力速度に比例した電圧が出力されるので、出力電
圧を積分回路などで積分して応力に比例する電圧に変換
する処理が必要である。またその方法では、出力信号を
積分処理するため、応力の変化速度が小さい静的、準静
的な応力を正確に検出することは困難である。これに対
して、非接触方式の表面電位計を用いる方法では、応力
に比例した電位差が直接計測できることが長所であり、
変動応力の計測だけでなく静的応力の計測も可能であ
る。
【0007】本発明は、事前に、構造物の表面に圧電材
料を接着しておき、その後、接着領域を含む構造物表面
に塗装あるいはコーテイングを施しておくことにより、
構造物の使用期間中に、塗装やコーテイングの上から非
接触方式の表面電位計を用いて圧電材料に生じた表面電
位を計測し、その電位から平面応力状態にある構造部材
表面の直交する2つの軸応力σ、σ、およびせん断
応力τXYを求める方法と装置を提供することが課題で
ある。
【0008】また、構造物の狭隘部など、表面電位計の
プローブを塗装面に直接近づけることが困難な部位にお
いて、応力測定を可能にする方法と装置を提供すること
が課題である。
【0009】
【課題を解決するための手段】[1]本発明は、機械、
構造物あるいは建造物の導電性の部材表面に圧電材料を
接着し、その上に塗装やコーテイングを施しておくこと
により、塗装やコーテイングの上から、振動容量型で距
離補償型かつ低インピーダンス型の、非接触方式の表面
電位計を用いて圧電材料の表面電位を計測し、構造部材
の応力を求めることを特徴とする。
【0010】[2]上記[1]の圧電材料として異方性
圧電材料を用い、構造部材表面に角度を変えて異方性圧
電材料を3方向にそれぞれ接着し、その上に塗装やコー
テイングを施しておくことにより、上記[1]の方法で
圧電材料の表面電位をそれぞれ計測し、それらの電位か
ら部材表面の直交する2方向の軸応力σ、σとせん
断応力τXYを求めることを特徴とする。
【0011】[3]上記[2]の3枚の異方性圧電材料
を角度を変えて金属箔に接着し、この金属箔を機械、構
造物あるいは建造物の非導電性の部材表面に接着して表
面電位計の接地端子を金属箔と接続することにより、コ
ンクリートなど非導電性部材で上記[]の応力測定
実現することを特徴とする。
【0012】[4]上記[2]または上記[3]に記載
の異方性圧電材料として矩形、円形あるいは中心角12
0度の扇形のものを用い、同じ形状の3枚の圧電材料を
円周上に等間隔に配置することを特徴とする。
【0013】[5]上記[1]に記載の導電性部材、ま
たは上記[3]に記載の非導電性部材おいて、部材表面
に接着した異方性圧電材料の位置と形状、および異方性
の向きを、塗装やコーテイングの上面にマーキングして
おくことを特徴とする。
【0014】[6]構造物の狭隘部などで、表面電位計
のプローブを圧電材料に近づけて計測することが困難な
場合、周囲を絶縁した電気配線の両端に金属板を取り付
けて、一方の金属板を圧電材料を接着した位置の塗装あ
るいはコーテイングの上に置き、もう一方の金属板を計
測部位から離れた位置に置いて、表面電位計のプローブ
を計測位置から離れた側の金属板に近づけて計測するこ
とを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を、図
面を用いて詳細に説明する。図2は塗装あるいはコーテ
イングが施された構造部材の表面電位の測定法である。
事前に、構造部材2の表面に圧電材料1を接着してお
き、その後、接着領域を含む構造部材表面に塗装あるい
はコーテイング8を施しておくことにより、構造物の使
用期間中に、塗装やコーテイング8の上から距離補償型
の表面電位計3を用いて圧電材料1に生じた表面電位が
計測可能であり、これから構造部材の応力を測定するこ
とが可能である。測定の原理を以下に説明する。
【0016】文献3(上原利夫、帯電した絶縁物の表面
電位測定法、静電気学会誌、13巻、4号、284−2
91、1989)に紹介されている、振動容量型で距離
補償型かつ低インピーダンス型の非接触方式の表面電位
計は、図3(a)に示すように、電位計のプローブ4の
先端部に内蔵されたセンサ電極9と被測定面11(本発
明における圧電材料の表面)との間の静電容量を利用し
て表面電位を計測する。
【0017】その回路は文献3を参考にすると図3
(b)のようである。図において被測定面11は電位V
1に帯電しており、被測定面11とセンサ電極9の間に
静電容量Cが生じる。センサ電極9は、静電容量Cに充
電される電荷Qを測定する増幅回路12によって仮想接
地され、プローブ筐体10の電位V2も接地される。し
たがって、被測定面11とセンサ電極9の電位差は常に
V1となり、静電容量Cに充電される電荷Qは次式で表
せる。
【0018】
【数1】Q=C×V1
【0019】このとき、センサ電極9を振動させると、
センサ電極9と被測定面11との間の距離変化に応じて
静電容量Cが変化し、Qの時間変化は次式のようにな
る。
【0020】
【数2】dQ/dt=(dC/dt)×V1
【0021】これによって、センサ電極9に接続した増
幅回路12には電流が流れ、最終的に、静電容量Cの変
化は、次式に示すように、増幅回路の出力電圧V3とし
て検出される。
【0022】
【数3】V3=(dC/dt)×V1×Rf ただし、Rfは増幅回路で使用されている抵抗値で、一
定値である。
【0023】通常の容量式の表面電位計は、V3によっ
て被測定面の電位V1を計測しているので、センサ電極
と被測定面の間の距離が変化すると、数3の(dC/d
t)が変化し、出力電圧V3の値がその影響を受けるの
で正確な測定ができない。
【0024】これに対して、距離補償型の表面電位計で
は、接地していたプローブ筐体10の電位V2を、被測
定面11(圧電材料表面)の電位V1と同電位になるま
で変化させることで、静電容量Cの効果を打ち消す。こ
のため、出力電圧V3の値はゼロとなる。すなわち、回
路の出力電圧V3の値を参照しながら、V3=0になる
ようにプローブ筐体10の電位V2の絶対値を上昇させ
る。すると、被測定面11の電位V1は静電容量Cの値
にかかわらず、プローブ筐体10の電位V2として検出
することができる。つまり、圧電材料1の表面とプロー
ブ4との間に誘電体である塗装やコーテイング8が存在
し、これらによって静電容量Cが変化しても、静電容量
Cの値自体は測定に影響しないので、構造部材に働く応
力により圧電材料1の表面に生じる表面電位が計測可能
である。
【0025】次に、図4に示すように、金属板13を塗
装あるいはコーテイング8の上に置いた場合について、
上述の表面電位計で計測を行うことを考えてみる。図4
は電気的にみると、プローブ先端のセンサ電極と金属板
13からなる静電容量C1と、金属板13と圧電材料1
の表面の電極からなる静電容量C2の2つを直列に接続
した構成になっている。この場合、全体の静電容量C
は、金属板が無い場合に比べて変化するが、金属板が構
造物と電気的に絶縁されている限り、静電容量Cの効果
を打ち消す測定方法を用いると電位計測が可能である。
【0026】ところで、上述の方法で電位を計測し、構
造物表面の直交する2つの軸応力とせん断応力を求める
には、異方性を有する圧電材料の使用が有効である。た
とえば、高分子圧電材料であるポリフッ化ビニリデン
(PVDF)は、伸延処理されているのでフィルムの面
内で異方性を示す。図5のように金属製の構造物表面に
直交座標、X、Y、Z座標を取り、3枚の異方性圧電材
料1A、1B、1Cを、伸延方向がX軸を向く方向、伸
延方向がY軸を向く方向、および伸延方向がX軸とY軸
の間をなす45度を向く方向にそれぞれ接着する。
【0027】いま、接着位置の部材表面に作用するX、
Y方向の軸応力をσ、σ、およびせん断応力をτ
XYとすると、X軸方向に接着した異方性圧電材料1A
の表面電位計から得られる出力電圧V、Y軸方向に接
着した異方性圧電材料1Bの出力電圧をV、および4
5度方向に接着した異方性圧電材料1Cの出力電圧をV
45と、部材表面の応力σ、σ、τXYとの間には
次の関係が成立する。
【0028】
【数4】V=a1×σ+a2×σ=a2×σ+a1×σ45=a1×σ45+a2×σ−45 ここで、σ45、σ−45は45度方向および−45度
方向の応力である。また、係数a1、a2は圧電材料の
特性および構造部材のヤング率とポアソン比に依存する
値である。なお、σ45、σ−45は応力の釣合いより
次のように表される。
【0029】
【数5】σ45=(σ+σ)/2+τXY σ−45=(σ+σ)/2−τXY そこで、数5を数4に代入して出力電圧と応力の関係を
マトリクス表示すると次式を得ることができる。
【0030】
【数6】 以上から、構造部材表面に方向を変えて接着した、3枚
の圧電材料の表面電位V、V、V45を計測する
と、それらを、数6に代入して連立方程式を解くことに
より、構造部材表面の応力σ、σ、τXYが決定で
きる。
【0031】なお、数6の係数a1、a2は次の実験か
ら事前に決定できる。図6に示す平滑試験片14に、伸
延方向がX軸方向およびY軸方向を向くように切り出し
た2枚の異方性圧電材料1A、1Bを接着し、試験機に
取り付け軸荷重を負荷する。実験は静的荷重でもよいが
正弦波荷重のようなものが適している。試験中、2つの
圧電材料の表面電位を前記表面電位計で計測し、それぞ
れの出力電圧をV、Vとする。平滑試験片14はσ
=σ、σ=0、τXY=0の単軸応力状態にあるの
で、出力電圧と負荷した応力の関係は次式となり、係数
a1、a2を決定することができる。
【0032】
【数7】V=a1×σ V=a2×σ なお、係数a1、a2は平滑試験片のヤング率、ポアソ
ン比に依存し、また接着条件にも依存するので、この実
験で用いる材料のヤング率、ポアソン比および接着条件
は構造物に設置した場合と同じであることが必要であ
る。
【0033】本発明によって応力計測が可能なことを検
証するため実験を行った。まず図7に示す平滑試験片1
4を準備した。次に、ポリフッ化ビニリデン(PVD
F)(呉羽化学製)を、長辺が伸延方向と平行な向きの
長方形1A、長辺が伸延方向と直角な向きの長方形1
B、および長辺が伸延方向と45度をなす向きの長方形
1Cに、それぞれ2枚づつ切り出した。その後、伸延方
向がX軸、Y軸および45度方向に向くように平滑試験
片14の上に置き、エポキシ樹脂で接着した。PVDF
は両側表面に金属電極が蒸着されているものを使用し
た。
【0034】次にX軸方向、Y軸方向および45度方向
に接着した一組については、図のように、市販の絶縁性
のアルキッド樹脂塗料を0.1mm程度の厚さに重ね塗
りして塗装した。塗装が乾燥した後、試験片を油圧サー
ボ試験機に取り付けて、応力振幅50MPaおよび10
0MPaで、荷重繰り返し速度が1Hzの正弦波および
三角波の完全両振り軸応力を、2波ずつ繰り返し負荷し
た。
【0035】表面電位計には、トレックジャパン製の表
面電位計Model347と、プローブModel60
00B−7Cを用いた。この電位計は振動容量型であ
り、距離補償型かつ低インピーダンス型である。低イン
ピーダンス型の表面電位計は文献3によると、応答速度
が速く(使用した表面電位計のカタログによると計測時
間が3ミリ秒)、また、高湿度環境においても計測可能
である(使用した表面電位計のカタログによると湿度9
5%まできわめて安定に測定できる)ことが示されてい
る。
【0036】測定はプローブを圧電材料と離れた位置の
構造物表面(圧電材料の電位の影響を受けない領域)に
近づけて、電位計の零調節つまみで表面電位の読みを零
とし、その後、プローブを圧電材料に近づけて表面電位
を計測した。なお、表面電位計の接近距離を均一にする
ため、プローブを固定する治具を作製して実験したが、
発明者らの実験では、プローブ先端のセンサ電極と被測
定面との距離が3mm以内であれば、電位の計測値には
差異が見られず、10mm離れても電位がわずかに減少
するのみという結果が得られた。
【0037】図8は、図7の平滑試験片に負荷した応力
履歴と、伸延方向がX軸と一致するように接着し上面を
塗装したPVDFの、表面電位の履歴とを比較して示
す。図において、応力履歴と同じ波形が表面電位に計測
されていることがわかる。なお、PVDFの上面を塗装
したものと塗装しないもので、記録紙で見る限り電位履
歴に差異はみられなかった。
【0038】
【表1】
【0039】表1は図7の平滑試験片に負荷した応力範
囲(振幅の2倍)、およびX軸方向、Y軸方向および4
5度方向に接着し上面を塗装したPVDFの、表面電位
の変動範囲を示す。同表には、応力と電位の計測値から
計算した数6の係数a1、a2の値も示している。この
係数を用いると、数6より応力範囲がσ=200MPa
の場合、V45は次のようになる。
【0040】
【数8】V45={(a1+a2)/2}×σ ={(0.089+0.023)/2}(V/MPa)
×200(MPa) =11.2(V) この値は表1の45度方向の計測電位11.0(V)に
近い値になっている。
【0041】上記の実施例に示した応力測定法は容易
に、塗装やコーテイングが施された金属製の実構造物に
適用することができる。異方性圧電材料の設置において
は、その形状、配置として、たとえば図9(a)、
(b)および(c)に示すものが考えられる。図中の斜
線方向が圧電材料の伸延方向を表す。圧電材料が接着し
てある位置を計測員に知らせるため、たとえば図(b)
の圧電材料の配置に対しては、図(d)に示すように、
塗装あるいはコーテイング8の上面に圧電材料の接着位
置と接着方向とをマーキング15しておくと便利であ
る。計測に必要な圧電材料の寸法は、表面電位計のプロ
ーブの接近距離に依存するが、プローブの計測範囲内に
収まって入れば、寸法によらず同じ電位が計測できる。
【0042】なお、構造物がコンクリートやプラスチッ
ク材料のように非導電材料の場合には、図10に示すよ
うに、向きを変えて切り出した3枚の異方性圧電材料1
A、1B、1Cを金属箔16に接着し、これを構造部材
2の表面に接着し、計測においては、表面電位計の接地
端子をこの金属箔と電気配線7で接続すると、金属製構
造物の場合と同様に計測できる。
【0043】図11は構造物の狭隘個所や据付設備など
の影響で、表面電位計のプローブ4を圧電材料1を接着
した塗装8の表面に接近させることが困難な場合の測定
方法と装置を示す。周囲を絶縁した電気配線17の両端
に金属板13A、13Bを取り付けた装置を準備し、計
測においては、一方の金属板13Aを、圧電材料を接着
した位置の塗装面の上に置き、もう一方の金属板を計測
箇所と離れた位置に置く。その後、表面電位計のプロー
ブ4を離れた側の金属板13Bに接近させて計測する。
この回路は、プローブ4の先端のセンサ電極と金属板1
3Bからなる静電容量、および金属板13Aと圧電材料
1の表面からなる静電容量の2つを直列に接続した構成
となるが、静電容量Cの効果を打ち消す計測方法を用い
ているので、電位が計測できる。
【0044】上記によって表面電位が計測できることを
確認するため、2枚のアルミニウム板を周囲を絶縁した
電気配線で接続し、一方のアルミニウム板を圧電材料を
接着した塗装の上面に置いてビニールテープで貼り付
け、もう一方のアルミニウム板を離れた位置に置いて、
プローブを離れた側のアルミニウム板に近づけて計測を
行った。その結果、プローブを塗装面に直接近づけた場
合と比較して数パーセント小さい電位が計測された。こ
の電位の差は電気配線の長さや材質などに関係するが、
事前に実験を行って電位の差を把握しておくことができ
るので応力測定が可能である。
【0045】なお、本発明は上記実施例に限定されるこ
となく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であ
り、これらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、従来適当な方法が無か
った、塗装やコーテイングが施された構造部材の応力
を、人間に聴診器を近づけるような方法で短時間に計測
することができる。また、金属製、コンクリート製ある
いはプラスチック製など、種々の材質の応力計測に適用
することができる。計測に必要な構造物側の準備作業
が、圧電材料の接着のみであるので、安価に多数の部位
の応力計測が実現できる。さらに、PVDFのような薄
い圧電材料を用いると、塗装した後の外観への影響がほ
とんどなく、撤去の必要性も少ない。これらの特徴によ
り、従来の応力測定法で問題であった、種々の技術的お
よびコスト的課題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧電材料と非接触方式の表面電位計を用いた電
位測定法の図である。
【図2】塗装あるいはコーテイングが施された構造部材
の表面電位の測定法である。
【図3】(a)は表面電位計のプローブの拡大図であ
る。(b)は振動容量型で距離補償型かつ低インピーダ
ンス型の電位計による表面電位の計測原理である。
【図4】圧電材料を接着しその上面を塗装した構造物に
おいて、圧電材料を接着した位置の塗装の上に金属板を
置き、表面電位を計測する図である。
【図5】構造部材表面に3枚の異方性圧電材料を異なる
向きに接着した図である。
【図6】平滑試験片に2枚の異方性圧電材料を、直交す
る向きに接着した図である。
【図7】平滑試験片に3枚のPVDFを、伸延方向が荷
重方向と0度、45度および90度方向をなすように接
着し、これらと同じものをもう一組接着して、一方の組
の表面を塗装した図である。
【図8】平滑試験片に負荷した応力履歴、および伸延方
向が応力の負荷方向に一致するように接着し、上面を塗
装したPVDFの表面電位の履歴の図である。
【図9】(a)、(b)および(c)は、構造物に接着
する異方性圧電材料の形状と配置の例である。(d)
は、計測者に圧電材料の接着位置と方向を知らせるため
の塗装表面のマーキングである。
【図10】非導電性の構造物での応力測定装置の図であ
る。
【図11】構造物の狭隘個所などで表面電位を計測する
方法および装置の図である。
【符号の説明】
1、1A、1B、1C 圧電材料 2 構造部材 3 表面電位計 4 表面電位計のプローブ 5 ケーブル 6 接地端子 7 電気配線 8 塗装あるいはコーテイング 9 センサ電極 10 プローブ筐体 11 被測定面 12 増幅回路 13、13A、13B 金属板 14 平滑試験片 15 圧電材料の接着位置と接着方向を示すマーキング 16 金属箔 17 周囲を絶縁した電気配線
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01L 1/16

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 機械、構造物あるいは建造物の導電性の
    部材表面に、圧電材料を接着し、その上に塗装やコーテ
    イングを施しておくことにより、塗装やコーテイングの
    上から、振動容量型で距離補償型かつ低インピーダンス
    型の、非接触方式の表面電位計を用いて圧電材料の表面
    電位を計測し、構造部材の応力を求めることを特徴とす
    る応力測定法。
  2. 【請求項2】 請求項1の圧電材料として異方性圧電材
    料を用い、構造部材表面に角度を変えて異方性圧電材料
    を3方向にそれぞれ接着し、その上に塗装やコーテイン
    グを施しておくことにより、請求項1の方法で圧電材料
    の表面電位をそれぞれ計測し、それらの電位から部材表
    面の直交する2方向の軸応力σX、σYとせん断応力τ
    XYを求めることを特徴とする応力測定法。
  3. 【請求項3】 前記請求項2の3枚の異方性圧電材料を
    角度を変えて金属箔に接着し、この金属箔を機械、構造
    物あるいは建造物の非導電性の部材表面に接着して表面
    電位計の接地端子を金属箔と接続することにより、コン
    クリートなど非導電性部材で請求項1の応力測定を実現
    することを特徴とする応力測定装置。
  4. 【請求項4】 請求項2または請求項3に記載の異方性
    圧電材料として矩形、円形あるいは中心角120度の扇
    形のものを用い、同じ形状の3枚の圧電材料を円周上に
    等間隔に配置することを特徴とする応力測定装置。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の導電性部材、または請
    求項3に記載の非導電性部材において、部材表面に接着
    した異方性圧電材料の位置と形状、および異方性の向き
    を、塗装やコーテイングの上面にマーキングしておくこ
    を特徴とする応力測定法。
  6. 【請求項6】 構造物の狭隘部などで、表面電位計のプ
    ローブを圧電材料に近づけて計測することが困難な場
    合、周囲を絶縁した電気配線の両端に金属板を取り付
    け、一方の金属板を圧電材料を接着した位置の塗装ある
    いはコーテイングの上に置き、もう一方の金属板を計測
    部位から離れた位置に置いて、表面電位計のプローブを
    計測位置から離れた側の金属板に近づけて計測すること
    を特徴とする応力測定装置。
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