JP3427583B2 - 銀膜の形成方法及び銀膜被覆物品の形成方法 - Google Patents

銀膜の形成方法及び銀膜被覆物品の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌作用を有する
銀膜及びその形成方法、並びにこのような銀膜を被覆し
た医療・生活用物品の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、生活環境に対する清潔意識が向上
しており、医療用品や生活用品等に抗菌作用を付与する
ことが求められている。抗菌作用を有し、人体に悪影響
を及ぼさない材質の一つとして銀が知られている。そこ
で、銀を含む医療・生活用物品として、無機銀化合物、
有機銀化合物又は金属銀粉末等の形で樹脂材料に練り込
んで成形したもの、銀イオン等をゼオライトに担持させ
て物品中に混入させたもの、医療用品や生活用品等の基
体上に無電解メッキその他の手法で銀膜を被覆したもの
等が開発されている。これらのうち、銀の有する抗菌作
用を最も効果的に発揮させることができるのは、物品基
体上に金属銀膜を被覆したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
無電解メッキ法等により形成された銀膜は、結晶性が低
いため、耐食性が劣り、環境中に存在する二酸化炭素
(CO2 )や酸化硫黄(SOx)等により、該膜表面が
容易に酸化又は(及び)硫化される。そして、これによ
り急速に抗菌活性が低下する。
【0004】そこで本発明は、耐変質性が優れることに
より抗菌活性を長期にわたり維持できる銀膜、及びその
形成方法、並びにこのような銀膜を被覆した物品を提供
することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は次の及びの
銀膜を提供しようとするものである。 X線回折分析
により得られるX線回折パターンにおいて、結晶配向面
(111)面からのX線回折強度が単位膜厚あたり2.
0cps/nm以上である銀膜。 X線回折分析によ
り得られるX線回折パターンにおいて、結晶配向面(1
11)面からのX線回折強度が、回折ピークとして検出
される全ての結晶配向面からのX線回折強度の和の60
%以上を占める銀膜。
【0006】本発明の前記及びの銀膜は、それぞれ
蒸着と、不活性ガスイオン(ヘリウム(He)イオン、
ネオン(Ne)イオン、アルゴン(Ar)イオン、クリ
プトン(Kr)イオン、キセノン(Xe)イオン等)、
窒素イオン、酸素イオンから選ばれた少なくとも一種の
イオンの照射とを併用し、且つ、銀原子とイオンの輸送
比(銀原子数/イオン数)を5〜200として形成され
る。
【0007】さらに、本発明は、医療用物品基体及び生
活用物品基体から選んだ基体上に、前記又はの銀膜
を被覆してなる医療又は生活用物品をそれぞれ提供しよ
うとするものである。医療用物品としては、カテーテル
その他のチューブ類、外科手術用埋め込み材、手術用器
具その他の医療用器具等が考えられ、生活用物品として
は、コンタクトレンズケース、歯ブラシその他のブラシ
等が考えられる。
【0008】本発明の前記及びの銀膜形成における
「蒸着」の方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イ
オンプレーティング法等を例示できる。
【0009】真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーテ
ィング法においては、蒸着物質又はスパッタターゲット
として銀単体等を用いて被成膜基体表面に銀膜を堆積さ
せるが、成膜時の基体温度及び基体に印加するバイアス
電圧等を調整することで銀膜の結晶性を促進させること
ができる。このとき基板温度は100〜300℃程度と
し、バイアス電圧は−100〜−500V程度とするこ
とが考えられる。
【0010】本発明は、特に、効率よく銀膜の結晶化を
促進させ得る方法として、次の(a)及び(b)の銀膜
の形成方法を提供する。 (a)被成膜基体上に、蒸着と、不活性ガスイオン、窒
素イオン、酸素イオンから選ばれた少なくとも一種のイ
オンの照射とを併用し、且つ、銀原子とイオンの輸送比
(銀原子数/イオン数)を5〜200として、X線回折
分析により得られるX線回折パターンにおいて、結晶配
向面(111)面からのX線回折強度が単位膜厚あたり
2.0cps/nm以上である銀膜を形成することを特
徴とする銀膜の形成方法。 (b)被成膜基体上に、蒸着と、不活性ガスイオン、窒
素イオン、酸素イオンから選ばれた少なくとも一種のイ
オンの照射とを併用し、且つ、銀原子とイオンの輸送比
(銀原子数/イオン数)を5〜200として、X線回折
分析により得られるX線回折パターンにおいて、結晶配
向面(111)面からのX線回折強度が、回折ピークと
して検出されるすべての結晶配向面からのX線回折強度
の和の60%以上を占める銀膜を形成することを特徴と
する銀膜の形成方法。
【0011】本発明の前記(a)及び(b)の各方法に
おいて、被成膜基体は前記と同様の医療用物品の基体及
び生活用物品の基体であることが考えられる。本発明の
前記(a)及び(b)の銀膜の形成方法において、蒸着
物質としては銀単体等を挙げることができ、これらの1
又は2以上を用いることができる。なお、蒸着とイオン
照射とを併用するとは、該両者を同時又は交互に行うこ
とを指す。
【0012】前記イオン照射において、イオン加速電圧
は100V〜2000Vとすることが考えられる。これ
は、加速電圧が100Vより小さいとイオン照射による
十分な効果が得られないからであり、2000Vより大
きいと被成膜基体に与える損傷が大きくなり、また銀膜
の結晶性を損なうからである。また、基体に到達する銀
原子(Ag)数とイオン(i)数との比(Ag/i輸送
比)は5〜200とするが、これは、Ag/i輸送比が
5より小さいと照射イオンが銀膜の結晶性を損なうから
であり、200より大きいとイオン照射による十分な効
果が得られないからである。
【0013】前記範囲内で、イオン加速電圧及びAg/
i輸送比を調整することで、形成される銀膜の結晶性を
制御することができる。本発明の前記及びの銀膜に
よると、原子配列の最密面である結晶配向面(111)
面を優先的に配向させたものであるため、該膜は耐食性
乃至耐変質性が高く、抗菌活性が長期にわたり維持され
る。
【0014】また、前記及びの銀膜が被覆された医
療・生活用物品はその表面が抗菌活性を有し、しかもそ
の抗菌活性が長期にわたり維持されるため、該物品を用
いることによる感染を防止したり、該物品又は該物品の
使用環境の細菌等による汚染を防止したりすることがで
きる。また、本発明の前記(a)及び(b)の銀膜の形
成方法によると、イオン照射におけるイオン種、イオン
加速エネルギ、イオン照射量(Ag/i輸送比)等を調
整することで、効率よく膜の結晶化を促進することがで
きる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明実施の形態を図面を
参照して説明する。図1は、本発明の銀膜の形成に用い
る成膜装置の1例の概略構成を示す図である。この装置
は、排気装置11が付設されたチャンバ1を有し、チャ
ンバ1内には被成膜基体Sを支持するホルダ2及びこれ
に対向する位置に電子ビーム蒸発源3が設置されてい
る。ホルダ2には直流電源21が接続されている。ま
た、蒸発源3の前方には開閉可能な遮蔽板(シャッタ
ー)4が配置され、ホルダ2付近には膜厚モニタ5が配
置されている。また、基体ホルダ2と蒸発源3との間に
は高周波電力を印加するためのコイル61が設置され、
コイル61にはマッチングボックス62を介して高周波
電源63が接続されている。また、チャンバ1にはガス
供給部7が付設され、チャンバ1内部へプラズマ原料ガ
スを導入できるようになっている。なお、チャンバ1は
接地されている。
【0016】この装置を用いて、シリコンゴムからなる
被成膜基体上に次のようにして銀膜を形成した。実施例1 シリコンゴムからなる被成膜基体Sをチャンバ1内に搬
入し、ホルダ2に支持させ、排気装置11の運転にてチ
ャンバ1内を5×10-4Pa以下の真空度とした。ま
た、当初シャッター4は閉じた状態とした。次いで、ガ
ス供給部7よりアルゴンガスをチャンバ1内が5×10
-2Paになるまで導入するとともに、高周波電源63か
らマッチングボックス62を介して高周波コイル61に
周波数13.56MHz、電力100Wの高周波電力を
印加して、前記導入したアルゴンガスをプラズマ化さ
せ、基体Sを該プラズマに1分間曝した。これにより、
基体S表面のクリーニングを行った。
【0017】その後、アルゴンガス導入及びコイル61
への高周波電力(但し、200Wの電力で)の印加を継
続しながら、電子ビーム蒸発源3を用いて銀単体を蒸気
化させ、シャッター4を開状態にすることにより、基体
S上に15.0Å/secの速度で成膜した。この間、
ホルダ2には直流電源21から−200Vのバイアス電
圧を印加した。このようにして基体S上に膜厚5000
Åの銀膜を形成した。
【0018】次に、前記実施例1により得られた銀膜及
び従来の無電解メッキ法により得られた銀膜について、
それぞれの結晶性をX線回折分析により評価した。用い
た装置及び測定条件は次の通りである。 ・X線回折装置 RAD−IIB(理学社製) ・測定条件 ターゲット材 :Cu ターゲット電圧 :40kV ターゲット電流 :30mA 測定方法 :θ−2θ法 スキャンスピード :2.0Deg/min スキャンステップ :0.02Deg 使用スリット :DS.4 RS5 SS0 スムージングポイント:9 得られたX線回折パターンを図2に示す。図2(A)は
本発明実施例1による銀膜の回折パターンを示し、図2
(B)は従来法による銀膜の回折パターンを示してい
る。
【0019】この結果、本発明実施例1による銀膜で
は、2θ=38.1°付近にAg(111)面を示す回
折ピークが強く現れており、Ag(111)面が強く配
向して結晶化していることが分かる。このAg(11
1)面からの単位膜厚あたりの回折強度は3.4cps
/nmであった。一方、従来法による銀膜ではAg(1
11)面からの回折強度は1.1cps/nmと低かっ
た。
【0020】次に、銀膜の耐食性(乃至耐変質性)と抗
菌活性との関係を明らかにするために、実施例1による
銀膜及び従来法により得られた銀膜について、それぞれ
Alcaligenes faecalis(アルカリ糞便菌)に対する抗菌
活性を評価した。抗菌活性の評価は、JIS L129
-1990 (繊維製品の抗菌性試験方法)規格のシェーク
フラスコ法により、所定数のA.faecalisをリン酸緩衝生
理食塩水(PBS)に接種したものに所定の銀膜被覆小
片を入れ、振盪培養し、生菌数の経時的変化を調べるこ
とで行った。各小片の銀膜の面積及び厚みは同じものと
した。
【0021】結果を図3に示す。本発明実施例1による
銀膜が被覆された小片を投入したサンプルでは、生菌数
は急速に減少し、24時間で1×101 CFU/mlと
なった。一方、従来法による銀膜が被覆された小片を投
入したサンプルでは、生菌数は前記実施例1による銀膜
を投入したサンプルと同様に急速に減少し、10時間後
に約1/10となったが、その後の生菌数はほぼ横這い
状態であった。
【0022】なお、PBS中で50時間振盪した後の前
記両サンプルの銀膜の表面をそれぞれ肉眼にて観察した
ところ、従来法による銀膜の表面は変色が見られ、変質
していると考えられた。一方、本発明実施例1による銀
膜では、このような変色はみられなかった。このよう
に、本発明実施例1による銀膜では、X線回折分析にお
けるAg(111)面の回折強度が強く、すなわち結晶
化度が高いため、PBS中での耐食性が優れ、その結
果、抗菌活性が長時間にわたり維持されて、長時間振盪
培養することで生菌数の著しい減少がみられたことが分
かる。
【0023】また、図4は本発明の銀膜の形成に用いる
成膜装置の他の例の概略構成を示す図である。この装置
は、真空チャンバ10を有し、チャンバ10内には被成
膜基体Sを支持するホルダ20が設置され、ホルダ20
に対向する位置には電子ビーム蒸発源30及びバケット
型イオン源80が設置されている。また、蒸発源30及
びイオン源80の前方にはシャッター40が配置され、
ホルダ20付近には膜厚モニタ50及びイオン電流測定
器90が配置されている。さらに、チャンバ10には排
気装置110が付設されて、容器10内を所定の真空度
にすることができる。
【0024】この装置を用いて、シリコンゴムからなる
被成膜基体上に、次のようにして銀膜を形成した。 実施例2 シリコンゴムからなる被成膜基体Sをチャンバ10内に
搬入し、ホルダ20に支持させ、排気装置110の運転
にてチャンバ10内を1×10-4Pa以下の真空度にし
た。また、当初シャッター40は閉じた状態とした。次
いで、電子ビーム蒸発源30を用いて銀単体を蒸気化さ
せ、シャッター40を開状態にすることにより、基体S
上に50Å/secの速度で成膜した。同時にイオン源
80にチャンバ10内が5×10-3Paになるまでアル
ゴンガスを導入し、イオン化させ、該イオンを加速電圧
500Vで該蒸着面に照射した。このときのAg/i輸
送比は30とした。このようにして基体S上に膜厚50
00Åの銀膜を形成した。
【0025】次に、前記実施例2により得られた銀膜、
及び実施例2においてイオン照射を行わず銀の蒸着のみ
を行うことにより得られた銀膜(従来法による銀膜)に
ついて、それぞれの結晶性をX線回折分析により評価し
た。評価に用いた装置及び測定条件は実施例1と同様で
ある。この結果、本発明実施例2による銀膜では、Ag
(111)面からの回折強度は、回折ピークとして検出
された全ての結晶配向面からの回折強度の和の60〜8
0%を占めた。一方、従来法による銀膜ではAg(11
1)面からの回折強度は、回折ピークとして検出された
全ての結晶配向面からの回折強度の和の50〜55%を
占めるのみであった。
【0026】次に、銀膜の結晶性と耐変質性との関係を
明らかにするために、実施例2による銀膜及び従来法に
より得られた銀膜のそれぞれについて、PBS中への銀
の溶出特性を評価した。銀の溶出特性の評価は、次のよ
うにして行った。PBSに本発明実施例2及び従来法に
よりそれぞれ得られた同面積、同膜厚の銀膜が被覆され
た小片をそれぞれ投入し、各サンプルを振盪しつつ、P
BS中に溶出した微量の銀濃度をフレームレス原子吸光
法により経時的に測定した。
【0027】結果を図5に示す。本発明実施例2による
銀膜は、PBSへの浸漬及び振盪開始後50時間まで、
直線的にPBS中の銀濃度が増加したのに対し、従来法
による銀膜では、PBSへの浸漬及び振盪開始後24時
間で銀濃度の増加が殆どみられなくなった。従来法によ
る銀膜からの銀の溶出が急速に低下したのは、銀膜表面
が例えば塩化銀(AgCl)等に変質したためと考えら
れる。
【0028】このように、銀はFCC(面心立方格子)
結晶構造を有し、Ag(111)面が最密充填面となる
ため、Ag(111)面を優先的に成長させることで銀
膜の耐食性乃至耐変質性が向上し、すなわち長時間にわ
たり銀の変質がみられず、コンスタントに銀がPBS中
に溶出して、抗菌活性が維持されたことが分かる。次
に、図6は本発明の1実施例である銀膜被覆医療用カテ
ーテルの製造に用いる成膜装置の1例の概略構成を示す
図である。この装置は、図4に示す装置において、基体
支持ホルダ20に代えて、カテーテル基体専用の治具2
1を備えたものである。その他の構成は図4の装置と同
様であり、同じ部品には同じ参照符号を付してある。
【0029】この装置を用いて、銀膜被覆医療用カテー
テルを次のようにして製造した。 実施例3 シリコンゴムからなる医療用カテーテル基体S1をチャ
ンバ10内に搬入し、カテーテル基体専用治具21に保
持させた。その後、前記実施例2と同様にして基体S1
上に膜厚5000Åの銀膜を形成した。但し、この間、
基体S1を治具21に保持させた状態で図示しない回転
手段にてカテーテル基体S1の長さ方向を軸としてその
周りに100rpmの回転速度で回転させた。このよう
にして、基体S1外周面が均一な銀膜で被覆されたカテ
ーテルを得た。
【0030】次に、前記実施例3により得られた銀膜被
覆カテーテル及び実施例3においてイオン照射を行わず
銀の蒸着のみを行うことにより得られた銀膜被覆カテー
テル(従来法による銀膜被覆カテーテル)について、そ
れぞれの銀膜の結晶性をX線回折分析により評価した。
評価に用いた装置及び測定条件は実施例1と同様であ
る。
【0031】この結果、本発明実施例3による銀膜では
Ag(111)面からの単位膜厚あたりのX線回折強度
は2.2cps/nmであり、回折ピークとして検出さ
れた全ての結晶配向面からの回折強度の和の60〜70
%を占めた。一方、従来法による銀膜ではAg(11
1)面からの回折強度は1.6cps/nmであり、回
折ピークとして検出された全ての結晶配向面からの回折
強度の和の35〜50%を占めるのみであった。
【0032】次に、銀膜被覆カテーテルの銀膜の結晶性
と該銀膜の耐変質性との関係を明らかにするために、実
施例3による銀膜及び従来法により得られた銀膜のそれ
ぞれについて、PBS中への銀の溶出特性を評価した。
銀の溶出特性の評価は、前記実施例2による銀膜につい
て行ったと同様の方法で行った。この結果、本発明実施
例3による銀膜はPBSへの浸漬及び振盪開始後24時
間以降もPBS中の銀濃度が増加し続けたのに対し、従
来法による銀膜では、PBSへの浸漬及び振盪開始後2
4時間で銀濃度の増加が殆ど見られなくなった。
【0033】このように、被成膜基体として医療用カテ
ーテルを用いる場合にも、銀膜のAg(111)面を優
先的に成長させることで銀膜の耐食性乃至耐変質性が向
上し、すなわち長時間にわたり銀の変質がみられず、コ
ンスタントに銀がPBS中に溶出したことが分かる。な
お、以上説明した本発明実施例1、2、3は、被成膜基
体Sとしてシリコンゴムからなるものを採用したが、こ
れに限らず、その他種々の材質の基体を用いた場合も前
記と同様の結果が得られた。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように本発明によると、耐
変質性が優れることにより抗菌活性を長期にわたり維持
できる銀膜、及びその形成方法、並びにこのような銀膜
を被覆した物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の銀膜の形成に用いる成膜装置の1例の
概略構成を示す図である。
【図2】図(A)は本発明の銀膜のX線回折パターンを
示す図であり、図(B)は従来の銀膜のX線回折パター
ンを示す図である。
【図3】本発明の銀膜及び従来の銀膜のA.faecalisに対
する抗菌活性を示す図である。
【図4】本発明の銀膜の形成に用いる成膜装置の他の例
の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の銀膜及び従来の銀膜のリン酸緩衝生理
食塩水中への銀の溶出特性を示す図である。
【図6】本発明の1実施例である銀膜被覆医療用カテー
テルの製造に用いることができる成膜装置の概略構成を
示す図である。
【符号の説明】
1 真空チャンバ 11 排気装置 2 基体ホルダ 21 カテーテル基体用治具 3 電子ビーム蒸発源 4 シャッター 5 膜厚モニタ 61 高周波コイル 62 マッチングボックス 63 高周波電源 7 プラズマ原料ガス供給部 8 バケット型イオン源 9 イオン電流測定器 S 被成膜基体 S1 被成膜医療用カテーテル基体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩本 泰志 京都市右京区梅津高畝町47番地 日新電 機株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−116163(JP,A) 特開 平5−24149(JP,A) 特開 平8−165561(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被成膜基体上に、蒸着と、不活性ガスイ
    オン、窒素イオン、酸素イオンから選ばれた少なくとも
    一種のイオンの照射とを併用し、且つ、被成膜基体への
    銀原子とイオンの輸送比(銀原子数/イオン数)を5〜
    200として、X線回折分析により得られるX線回折パ
    ターンにおいて、結晶配向面(111)面からのX線回
    折強度が単位膜厚あたり2.0cps/nm以上である
    銀膜を形成することを特徴とする銀膜の形成方法
  2. 【請求項2】 被成膜基体上に、蒸着と、不活性ガスイ
    オン、窒素イオン、酸素イオンから選ばれた少なくとも
    一種のイオンの照射とを併用し、且つ、被成膜基体への
    銀原子とイオンの輸送比(銀原子数/イオン数)を5〜
    200としてX線回折分析により得られるX線回折パ
    ターンにおいて、結晶配向面(111)面からのX線回
    折強度が、回折ピークとして検出される全ての結晶配向
    面からのX線回折強度の和の60%以上を占める銀膜を
    形成することを特徴とする銀膜の形成方法
  3. 【請求項3】 前記結晶配向面(111)面からのX線
    回折強度が、回折ピークとして検出される全ての結晶配
    向面からのX線回折強度の和の60%以上80%以下を
    占める請求項2記載の銀膜の形成方法
  4. 【請求項4】 前記被成膜基体として医療用物品基体及
    び生活用物品基体から選ばれた基体を採用し、該基体上
    に請求項1、2又は3記載の銀膜形成方法により銀膜を
    形成することで銀膜被覆物品を得る銀膜被覆物品の形成
    方法。
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