JP3417924B2 - スピン偏極走査型トンネル顕微鏡 - Google Patents

スピン偏極走査型トンネル顕微鏡

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JP3417924B2
JP3417924B2 JP2000401173A JP2000401173A JP3417924B2 JP 3417924 B2 JP3417924 B2 JP 3417924B2 JP 2000401173 A JP2000401173 A JP 2000401173A JP 2000401173 A JP2000401173 A JP 2000401173A JP 3417924 B2 JP3417924 B2 JP 3417924B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走査型トンネル顕
微鏡に係わり、特に磁性材料の磁気構造や強磁性体の磁
区構造等を数nm以下の空間分解能で観察するのに適し
たスピン偏極走査型トンネル顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】磁性体表面の微細磁区構造を評価するた
めの最も分解能の高い磁区観察手段として、磁気力顕微
鏡が知られている。その分解能は最高で10nm程度で
ある。これに対して、磁気記録媒体等の超微細化に伴
い、超微細磁区観察技術の更なる分解能向上が望まれて
いる。
【0003】走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneli
ng Microscopy)は、試料或いは探針を駆動させること
により探針を試料表面上で試料に対し相対的に走査し、
トンネル電流が探針−試料間距離に対して極めて敏感で
あることを利用して、試料表面の構造,物性を原子分解
能で評価する手法である。この走査型トンネル顕微鏡に
おいて、試料或いは探針として磁性体を用いた場合に
は、トンネル電子はスピン偏極するため、スピン状態を
分別できれば原子レベル分解能で試料表面の磁気情報を
得ることができる。
【0004】このようなスピン偏極走査型トンネル顕微
鏡として、強磁性体探針を用い、磁性体試料表面との間
のスピンに依存したトンネル電流変化からスピン情報を
得る方法が文献(M.Bode, M.Getzlaff, and R.Wiesenda
ngerer, Physical Review Letters, vol.81,p4256(199
8), O.Pietzsch, A.Kubetzka, M.Bode, and R.Wiesenda
ngerer, Physical Review Letters, vol.84,p5212(200
0))に開示されている。強磁性体探針を用いたこれらの
観察例では、磁化の向きがコントラストとして表示され
ている。
【0005】しかしながら、これらの公知例では、垂直
磁化については上向きと下向きの2値コントラストであ
り、面内磁化についても探針磁化方向に対して平行か反
平行かの2値のコントラストのみの表示である。実際に
は磁化はベクトルを持ったものであり、磁化の大きさも
含めた表示を行うにはベクトル表示で表すことが望まれ
るが、上記の公知例ではベクトル表示で表すことは不可
能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように従来、磁性
体磁気構造或いは強磁性体の磁区構造評価を行うものと
してスピン偏極走査型トンネル顕微鏡が開発されている
が、この顕微鏡では、数nm以下の空間分解能は達成で
きるものの、磁性材料の微細な磁化方向(原子のスピン
方向も含む)をベクトル表示することは困難であった。
【0007】本発明は、上記事情を考慮して成されたも
ので、その目的とするところは、磁性体磁気構造或いは
強磁性体の磁区構造評価において、数nm以下の空間分
解能で磁性材料の微細な磁化方向(原子のスピン方向も
含む)をベクトル表示可能なスピン偏極走査型トンネル
顕微鏡を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】(構成)上記課題を解決
するために本発明は次のような構成を採用している。
【0009】即ち本発明は、先端が磁性体で形成された
探針と、この探針を試料表面に対して相対的に走査させ
る走査機構と、前記探針と試料との間に所定の電圧を印
加するバイアス電圧源と、前記探針と試料との間に流れ
るトンネル電流を検出する電流検出機構と、前記探針を
高さ方向に駆動する駆動機構と、前記探針を相互に18
0度以外の異なる方向に磁化させる複数の磁場印加機構
とを具備してなるスピン偏極走査型トンネル顕微鏡であ
って、前記走査機構,検出機構,及び駆動機構による前
記試料表面の測定を、前記試料の同一箇所について前記
探針の異なる磁化方向でそれぞれ行い、同一箇所に対す
る異なる探針磁化方向における各々の測定信号に基づい
て試料表面の磁化ベクトルを求めることを特徴とする。
【0010】ここで、本発明の望ましい実施態様として
は次のものが挙げられる。
【0011】(1) 磁場印加機構は、探針磁化を、互いに
角度α(αは0度及び180度を除く)を成す第1と第
2の方向へ制御可能な2つの磁場印加機構であること。 (2) 磁場印加機構は、探針磁化を、互いに角度α(αは
0度及び180度を除く)を成す第1,第2,第3の3
つの方向へ制御可能な3つの磁場印加機構であること。 (3) 第1,第2の方向は試料表面に対する水平面内の方
向、第3の方向は試料表面に対する垂直方向であるこ
と。
【0012】(4) 探針の先端材料は、Fe,Co,N
i,Cr,若しくはMn、又はこれらの化合物からなる
強磁性体、又はこれらの材料が含まれる複合材からなる
こと。
【0013】(5) 探針の一つの磁化方向において試料表
面の所定領域全体の測定を行った後に、探針の別の磁化
方向において所定領域全体の測定を行うこと。 (6) 探針を同一走査線上で往復走査させ、往復走査の往
路と復路で探針磁化方向を変化させて測定すること。 (7) 探針を同一走査線上で複数回往復走査させ、各々の
往復走査で探針磁化方向を変化させて測定すること。
【0014】(作用)従来のスピン偏極走査型トンネル
顕微鏡は、磁気力顕微鏡が漏れ磁場を検出するのに対
し、磁化を直接検出する点が大きな特徴である。これま
での観察では、垂直磁化については上向きと下向きの2
値コントラストが示され、面内磁化についても探針磁化
方向に対して平行か反平行かの2値のコントラストのみ
の表示がなされてきた。
【0015】これに対し本発明者らの詳細な検討の結
果、中間の角度についてもコントラストが得られること
が明らかとなった。即ち、従来のスピン偏極走査型トン
ネル顕微鏡で得られるコントラストは、本来の磁化ベク
トルではなく、探針磁化と試料磁化のなす角度をθとし
たときのcosθの成分のみである。つまり、試料磁化
の方向も大きさも不明である。そこで、探針磁化の方向
を複数種選択して各々測定を行うことができれば、実際
の試料磁化の方向が分かり、更にその大きさも分かるこ
とになる。具体的には、試料の磁化の大きさをAとする
と、探針の第1の磁化方向での測定で得られるのはAc
osθ1 であり、探針の第2の磁化方向での測定で得ら
れるのはAcosθ2 であり、θ1−θ2(探針の磁化
方向の相対角度α)は既知であることから、これらを演
算することにより試料磁化の方向及び大きさが分かるこ
とになる。
【0016】本発明によれば、複数の磁場印加機構によ
り探針の磁化方向を変えることができ、各々の磁化方向
に対して試料表面の測定を行うことができる。このた
め、各々の磁化方向に対する測定信号を基に演算するこ
とにより、試料表面の磁化ベクトルを求めることが可能
となる。従って、磁性体磁気構造或いは強磁性体の磁区
構造評価において、数nm以下の空間分解能で磁性材料
の微細な磁化方向(原子のスピン方向も含む)をベクト
ル表示することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】実施形態を説明する前に、本発明
の基本原理について説明する。
【0018】本発明では、強磁性体からなる探針を用い
たスピン偏極走査型トンネル顕微鏡において、探針磁化
を互いに角度α(αは0度及び180度を除く)をなす
第1と第2或いは第3の少なくとも2つ以上の方向へ制
御可能な2つ以上の磁場印加機構を有し、試料の同一箇
所について、第1の磁化方向状態の探針にて測定した信
号強度と、第2以降の磁化方向その探針にて測定した信
号強度とから、試料磁化ベクトルを求める。
【0019】探針の磁化方向を制御する磁場印加機構と
しては、(i)コイル或いは導線、(ii)永久磁石を用
いることができる。これらは探針を中心として対称をな
す位置に対の形で設置してもよいし、シングル形態でも
問題はない。このような磁場印加機構を複数の方位から
磁場印加可能なように複数備えることを特徴とする。複
数の磁場印加機構から発生される磁場方向は、互いの角
度をαとすると、αは0度及び180度を除く角度であ
り、好ましくは20度から160度の間、さらに好まし
くは45度から135度の間にあることが好ましい。な
お、探針へ印加される磁場方向は、単独の磁場印加機構
からのものでも、或いは2つの磁場印加機構からの合成
であってもよい。
【0020】図1に、α=90度として2つの磁場印加
機構を設けた例を示す。図中の10は探針、11(11
a,11b)は第1の磁場印加機構、12(12a,1
2b)は第2の磁場印加機構を示している。また、図中
の矢印は磁場印加方向を示している。図1(a)には対
の形態、図1(b)にはシングル形態を示した。図で
は、探針10への磁場印加方向は、一対或いは1つの磁
場印加機構からの磁場方向と同じ場合を示している。磁
場印加機構が2つの場合は、その2つの方向を含む面内
での2次元磁化ベクトルの表示が、磁場印加機構が3つ
の場合は、3次元磁化ベクトル表示が可能となる。な
お、磁場印加機構の探針からの設置距離は、探針から距
離30cm以下で、できるだけ探針に近い方が好まし
い。
【0021】磁場印加機構から発生する磁場の強さは、
探針材料の特性に応じて選択され、探針磁化方向を変化
できる強さが求められる。この磁場は交流磁場を要求せ
ず、静的なものでよい。走査線毎に磁化方向を変える場
合には、走査スピードに応じて磁場をON−OFF或い
は変化させればよい。
【0022】本発明の探針材料としては、Fe,Co,
Ni及びそれらを含む合金、パーマロイと呼ばれるNi
Fe系合金や、CoNbZr系、FeTaC系、CoT
aZr系、FeAlSi系、FeB系、CoFeB系の
軟磁性材料、ホイスラー合金やCrO2 ,Fe3 4
La1-x Srx MnO3 などのハーフメタル磁性体が適
応できる。
【0023】探針は、図2(a)に示すように磁性体2
1の単体からなるものでもよいが、探針先端部で図2
(b)(c)(d)に示すように単層膜構造或いは積層
膜構造とし、最先端膜には10nm以下の厚さをもつF
eやCoやFeCo合金などの高スピン偏極度を有する
材料を、その内側の膜或いは探針材料そのものにはNi
Fe系合金、CoNbZr系,FeTaC系,CoTa
Zr系,FeAlSi系,FeB系,CoFeB系の軟
磁性の合金を用いると、探針磁化反転が容易でかつ高い
感度を得ることができる。なお、図中の22は非磁性体
探針、23,24は磁性体膜を示している。さらに、図
2(e)のように上記材料を含む強磁性層23/非磁性
層24/強磁性層25からなる積層膜を用いれば試料へ
の探針からの漏れ磁場の影響を小さくできる。
【0024】これらの膜構造を有する探針は、探針先端
部への真正面からの膜の蒸着或いはスパッタ法により容
易に形成することができる。また、これら膜の成長状態
を制御することで、連続膜でなく図2(f)に示すよう
に、非磁性又は磁性体の探針27の先端部に磁性体膜2
8をアイランド状に形成した構造とすることもでき、そ
れらも探針に適応できる。ここで、探針27の先端をア
モルファス状態に形成しておけば、後に形成する磁性体
膜28の異方性が小さくなるので望ましい。
【0025】本発明のスピン偏極走査型トンネル顕微鏡
において、測定手順は次の2通りの方法がある。第1の
方法は、第1の探針磁化方向にてある試料領域全てを走
査して測定した後、同一領域について第2以降の探針磁
化方向にて走査測定する。第2の方法は、各走査線を2
往復以上走査させ、各走査毎に探針磁化方向を第1、第
2(或いは第3)と変えて測定する。第2の方法の変形
として、探針磁化方向が2つの場合、往復走査の往路と
復路で探針磁化方向を変化させて測定してもよい。
【0026】測定される信号は、磁化情報を含むスピン
依存によるトンネルコンダクタンスの変化を反映したも
のであることが必要である。特開2000−13121
5号公報に開示されているような複数のバイアス電圧に
よるトンネル電流の検出、或いは、文献(M.Bode, M.Ge
tzlaff, and R.Wiesendangerer, Physical Review Lett
ers, vol.81,p4256(1998), O.Pietzsch, A.Kubetzka,
M.Bode, and R.Wiesendangerer, Physical Review Lett
ers, vol.84,p5212(2000))に開示されているような、
バイアス電圧を僅かに変調させて、そのトンネル応答信
号を検出するなどで磁化情報を得ることができる。この
磁化情報を担う信号の強度は、探針磁化と試料磁化のな
す角度をθとするとcosθの項を含む。従って、同一
箇所についての異なる探針磁化での信号強度から、試料
の各点における2次元或いは3次元磁化ベクトルを算出
し、それらを画像信号としてマッピングすることで試料
の磁化ベクトル画像表示が可能となる。
【0027】以下、本発明の詳細を図示の実施形態によ
って説明する。
【0028】(第1の実施形態)図3及び図4は、本発
明の第1の実施形態に係わるスピン偏極走査型トンネル
電子顕微鏡を説明するためのもので、図3は全体構成を
示す図、図4は探針と磁場印加機構との関係を示す図で
ある。
【0029】探針31は、例えば前記図2(f)に示す
構造となっており、この探針31は基端側がピエゾスキ
ャナー32に固定され、先端が試料30の表面に対して
相対走査されるようになっている。探針31の側方に
は、前記図1(b)に示す構成の磁場印加機構41,4
2が配設されている。磁場印加機構41,42による磁
場印加方向の相対角度αは90°である。
【0030】探針31には、STM制御/信号処理部4
0によりバイアス電圧が印加される。このバイアス電圧
の印加により探針31と試料30との間に流れるトンネ
ル電流は、増幅器43により増幅されてSTM制御/信
号処理部40及び後述する位相検波増幅器45に入力さ
れる。そして、STM制御/信号処理部40では、トン
ネル電流の平均値が一定となるように、ピエゾスキャナ
ー32を駆動するためのピエゾ制御信号を出力するよう
になっている。
【0031】また、交流電源44により変調電圧が出力
され、この変調電圧はSTM制御/信号処理部40から
探針31に与えられるバイアス電圧に重畳される。そし
て、位相検波増幅器45では、交流電源44からの変調
信号を基に、増幅器43を介して得られるトンネル電流
が同期検波される。ここで、トンネル電流の中には磁気
スピンに依存した成分があり、これはバイアス電圧を変
化させることにより大きく変化するため、バイアス電圧
を変えて信号を取り出せばスピン成分を取り出すことが
できる。即ち、上記のようにバイアス電圧に重畳する変
調信号に同期してトンネル電流を検波することにより、
試料表面の磁化成分のみを検出することが可能となる。
【0032】上記の装置を用い、試料30にCoアイラ
ンド膜を、探針31に積層膜探針を用いた場合を例に説
明する。タングステンワイヤから電解研磨により作製し
た探針を真空中でイオンエッチング或いは電界イオン顕
微鏡にて表面クリーニングした後、その先端へパーマロ
イ膜を10nm蒸着し、さらにFe膜を厚さ1nmだけ
スパッタ法により蒸着した。これを図3に示すようにス
キャナー32へ取り付け、Coのアイランド膜を観察し
た。
【0033】まず、磁場印加機構41により紙面向かっ
て左向きへ10Gの磁場を印加した。その状態で、試料
30に直流バイアス電圧を印加しさらに40mVの交流
電圧をこれに重畳させ、トンネル電流の平均値が0.2
nAになるよう探針高さをスキャナー32で調整しなが
ら、試料30の所定領域全体に対しての探針位置を相対
的に走査させた。そして、トンネル電流の中の変調電圧
と同じ周波数成分を同期検波し、得られた信号(信号
A)を、測定領域中での座標値に対応させてSTM制御
/信号処理部40へ取り込んだ。
【0034】次に、磁場印加機構42により紙面向う側
からこちら側へ向かって10Gの磁場を印加した。その
状態で、先ほどと同じ領域に対してトンネル電流の中の
変調電圧と同じ周波数成分を同様に同期検波し、得られ
た信号(信号B)を、測定領域中での座標値に対応させ
てSTM制御/信号処理部40へ取り込んだ。
【0035】これら2つの信号:信号Aと信号Bの値を
演算処理することで、各座標におけるCoアイランドの
磁化ベクトルを求めたところ、磁化の大きさは全てバル
クと同じであったが、磁化の向きはアイランド毎に異な
り、大きさの大きいアイランドでは多磁区であることが
明らかとなった。また、分解能は数nmであることを確
認した。
【0036】また、本実施形態ではCoアイランドにお
ける磁化ベクトルが求められることから、これらをディ
スプレイ等にマッピング表示することができる。その例
を図5に示す。
【0037】なお、本実施形態では磁場を印加しながら
測定を行ったが、探針が強磁性体であれば、予め探針を
磁化させるようにしてもよい。具体的には、測定前に探
針を試料位置とは十分に離した状態で、磁場印加機構4
1により探針31に磁場を印加して探針31を一方向に
磁化させ、磁場の印加を停めた状態で測定を行うように
してもよい。また、探針31の垂直方向の駆動はピエゾ
スキャナー32で行うが、探針31の水平方向の駆動は
ピエゾスキャナー32で行ってもよいし、試料30を載
置したステージを水平方向に移動させるようにしてもよ
い。
【0038】このように本実施形態によれば、2つの磁
場印加機構41,42により探針31の磁化方向を90
°変えることができ、各々の磁化方向に対して試料表面
の測定を行うことができる。このため、各々の磁化方向
に対する測定信号を基にSTM/信号処理部40により
演算処理することにより、試料表面の磁化ベクトルを求
めることができる。従って、磁性体磁気構造或いは強磁
性体の磁区構造評価において、数nm以下の空間分解能
で磁性材料の微細な磁化方向(原子のスピン方向も含
む)をベクトル表示することが可能となる。
【0039】(第2の実施形態)図6は、本発明の第2
の実施形態に係わるスピン偏極走査型トンネル顕微鏡の
要部構成を示す図である。なお、図4と同一部分には同
一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0040】本実施形態では、第1の実施形態と同じ探
針31、同じ試料30に対し、第1及び第2の磁場印加
機構41,42にさらに探針垂直方向への磁場印加が可
能なようにもう1つの磁場印加機構63を増設して測定
を行った。3つの磁場印加機構41,42,63には全
てコイルを用いた。
【0041】測定では各走査線を3往復させ、1回目の
走査で磁場印加機構41からの磁場印加を、2回目の走
査で磁場印加機構42からの磁場印加を、3回目の走査
で磁場印加機構63からの磁場印加を行い、それぞれの
磁場印加の際の各座標での信号を求め、1つの座標につ
いての3つの信号を演算処理することで、各点の磁化ベ
クトルを求めた。結果は、矢印でマッピングとして表示
することができる。
【0042】このように本実施形態では、3つの磁場印
加機構41,42,63を用いることにより、第1の実
施形態と同様に試料の磁化ベクトルを数nm以下の空間
分解能で測定することができ、しかも試料の磁化ベクト
ルを3次元で測定することができる。
【0043】(第3の実施形態)本発明の第3の実施形
態として、反強磁性体及びフェリ磁性体の磁気構造を観
察する場合の例を、第1及び第2の実施形態と比較して
示す。
【0044】本実施形態では、第1,2の実施形態と同
じ探針31と同じ磁場印加機構41,42,(63)を
使用し、走査時の磁場印加方法も第1,2の実施形態と
同様である。但し、交流電源44及び位相検波増幅器4
5は使用せずに、STM制御/信号処理部40では、原
子レベルで平坦な試料表面に対して探針31の相対高さ
が一定になるようにピエゾスキャナー32を駆動するた
めのピエゾ制御信号を出力し、トンネル電流増幅器43
で増幅させたトンネル電流をSTM制御/信号処理部4
0へ送り込み、異なる探針磁化方向におけるトンネル電
流を演算処理して磁気構造を求める。
【0045】原子レベルで平坦な反強磁性PtMnの表
面磁気構造を観察したところ、Mn原子のスピンが原子
毎に異なり、またその方向を確定することができた。
【0046】なお、本発明は上述した各実施形態に限定
されるものではない。探針の先端材料は必ずしもCoに
限るものではなく、Fe,Ni,Cr,若しくはMnを
用いてもよい。また、これらの化合物からなる強磁性
体、又はこれらの材料が含まれる複合材を用いてもよ
い。
【0047】実施形態では、探針の一つの磁化方向にお
いて試料表面の所定領域全体の測定を行った後に、探針
の別の磁化方向において同一領域全体の測定を行った
が、探針を同一走査線上で往復走査させ、往復走査の往
路と復路で探針磁化方向を変化させて測定するようにし
てもよい。
【0048】また、本発明のスピン偏極走査型顕微鏡と
しての不可欠基本構造は、探針と、探針を試料表面に対
して相対的に走査させる駆動機構と、探針と試料間に印
加するバイアス電圧源及び探針と試料間に流れるトンネ
ル電流を検出する検出手段である。このスピン偏極走査
型トンネル顕微鏡は、同じ基本構造で記録再生装置とし
て用いることができる。例えば、前記図1(a)の配置
ヘコイルを設置し、2つの磁場の合成による磁場を探針
に印加して、面内磁気記録媒体を200nm×200n
mの範囲について評価したところ、ピット長に対応した
コントラスト変化を十分に観察できるのが確認された。
【0049】その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲
で、種々変形して実施することができる。
【0050】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、ス
ピン偏極走査型トンネル顕微鏡において、磁性体を先端
に有する探針を相互に異なる方向に磁化させる複数の磁
場印加機構を設けたことにより、試料表面の測定を、試
料の同一箇所について探針の異なる磁化方向でそれぞれ
行うことができ、同一箇所に対する異なる磁化方向にお
ける各々の測定信号から試料表面の磁化ベクトルを求め
ることができる。従って、磁性体磁気構造或いは強磁性
体の磁区構造評価において、空間分解能数nm以下で磁
性材料の微細な磁化方向(原子のスピン方向も含む)を
ベクトル表示が可能となり、その有用性は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を説明するためのもので、磁
場印加機構の設置例を示す図。
【図2】本発明の基本構成を説明するためのもので、探
針の構造を示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係わるスピン走査型トンネル
顕微鏡の基本構成を示す図。
【図4】第1の実施形態に係わるスピン走査型トンネル
顕微鏡における探針と磁場印加機構との位置関係を示す
図。
【図5】磁化ベクトルをマッピング表示した例を示す
図。
【図6】第2の実施形態に係わるスピン偏極走査型トン
ネル顕微鏡の要部構成を示す図。
【符号の説明】 10,31…探針 11,41…第1の磁場印加機構 12,42…第2の磁場印加機構 21…磁性体探針 22…非磁性体探針 23,24…磁性体膜 25…非磁性体膜 27…非磁性体又は磁性体探針 28…アイランド状の磁性体膜 30…試料 32…ピエゾスキャナー 40…STM制御部/信号処理部 43…トンネル電流増幅部 44…交流電源 45…位相検波増幅器 63…第3の磁場印加機構
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−332718(JP,A) 特開 平6−268283(JP,A) 特開 平10−106465(JP,A) 特開2000−9626(JP,A) 特開 平5−302965(JP,A) 特開 平11−110708(JP,A) 特開 平11−94856(JP,A) 特開2000−131215(JP,A) 特開 平7−333233(JP,A) 特許3057153(JP,B2) 特許2760508(JP,B2) 特許2967172(JP,B1) M.Bode,M.Getzlaf f,and R.Wiesendang er,”Spin−Polarized Vacuum Tunneling into the Exchange− Split Surface Stat e of Gd(0001)”,Physi cal Review Letter s,米国,The American Physical Society, 1998年11月 9日,第81巻、第19号, p.4256−4259 O.Pietzsch,A.Kube tzka,M.Bode,and R. Wiesendanger,”Real −Space Observation of Dipolar Antife rromagnetism in Ma gnetic Nanowires b y Spin−Polarized S TS”,Physical Revie w Letters,米国,The A merican Physical S ociety,2000年 5月29日,第84 巻、第22号,p.5212−5215 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 13/10 - 13/24 G01N 27/72 - 27/90 G01R 33/00 - 33/26 G12B 21/00 - 21/24 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】先端が磁性体で形成された探針と、この探
    針を試料表面に対して相対的に走査させる走査機構と、
    前記探針と試料との間に所定の電圧を印加するバイアス
    電圧源と、前記探針と試料との間に流れるトンネル電流
    を検出する電流検出機構と、前記探針を高さ方向に駆動
    する駆動機構と、前記探針を相互に180度以外の異な
    る方向に磁化させる複数の磁場印加機構とを具備してな
    り、 前記走査機構,検出機構,及び駆動機構による前記試料
    表面の測定を、前記試料の同一箇所について前記探針の
    異なる磁化方向でそれぞれ行い、同一箇所に対する異な
    る探針磁化方向における各々の測定信号に基づいて試料
    表面の磁化ベクトルを求めることを特徴とするスピン偏
    極走査型トンネル顕微鏡。
  2. 【請求項2】前記複数の磁場印加機構による探針磁化方
    向は、試料表面に対する水平面内で互いに角度90°を
    成す2方向であることを特徴とする請求項1記載のスピ
    ン偏極走査型トンネル顕微鏡。
  3. 【請求項3】前記複数の磁場印加機構による探針磁化方
    向は、試料表面に対する水平面内で互いに角度90°を
    成す方向と、試料表面に対する垂直方向との3方向であ
    ることを特徴とする請求項1記載のスピン偏極走査型ト
    ンネル顕微鏡。
  4. 【請求項4】前記探針の先端材料は、Fe,Co,N
    i,Cr,若しくはMn、又はこれらの化合物からなる
    強磁性体、又はこれらの材料が含まれる複合材からなる
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のスピン
    偏極走査型トンネル顕微鏡。
  5. 【請求項5】前記探針の一つの磁化方向において試料表
    面の所定領域全体の測定を行った後に、前記探針の別の
    磁化方向において前記所定領域全体の測定を行うことを
    特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のスピン偏極走
    査型トンネル顕微鏡。
  6. 【請求項6】前記探針を同一走査線上で往復走査させ、
    往復走査の往路と復路で探針磁化方向を変化させて測定
    することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のス
    ピン偏極走査型トンネル顕微鏡。
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M.Bode,M.Getzlaff,and R.Wiesendanger,"Spin−Polarized Vacuum Tunneling into the Exchange−Split Surface State of Gd(0001)",Physical Review Letters,米国,The American Physical Society,1998年11月 9日,第81巻、第19号,p.4256−4259
O.Pietzsch,A.Kubetzka,M.Bode,and R.Wiesendanger,"Real−Space Observation of Dipolar Antiferromagnetism in Magnetic Nanowires by Spin−Polarized STS",Physical Review Letters,米国,The American Physical Society,2000年 5月29日,第84巻、第22号,p.5212−5215

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