JP3405041B2 - 内燃機関の動弁装置 - Google Patents
内燃機関の動弁装置Info
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- JP3405041B2 JP3405041B2 JP02807896A JP2807896A JP3405041B2 JP 3405041 B2 JP3405041 B2 JP 3405041B2 JP 02807896 A JP02807896 A JP 02807896A JP 2807896 A JP2807896 A JP 2807896A JP 3405041 B2 JP3405041 B2 JP 3405041B2
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の動弁装
置に係り、特に、弁体に固定されるプランジャを電磁力
で駆動する内燃機関の動弁装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、例えば特開平2−17628
8号に開示される如く、内燃機関が備える弁体を電磁力
により駆動する装置が知られている。上記従来の装置
は、弁体に固定されるディスク状のプランジャを備えて
いる。上記従来の装置において、プランジャの上部に
は、第1電磁コイルと、第1電磁コイルを取り囲む第1
コアとが配設されている。また、プランジャの下部に
は、第2電磁コイルと、第2電磁コイルを取り囲む第2
コアとが配設されている。 【0003】第1コア、プランジャ、および第1コアと
プランジャとの間に形成されるエアギャップは、第1電
磁コイルの内外を取り巻く磁気回路を形成している。第
1電磁コイルに電流が供給されると、第1電磁コイルに
よって発生される磁束が、上記の磁気回路を通って第1
電磁コイルの内外を還流する。この際、プランジャに
は、第1コアに向かう電磁吸引力が作用する。 【0004】また、第2コア、プランジャ、および第2
コアとプランジャとの間に形成されるエアギャップは、
第2電磁コイルの内外を取り巻く磁気回路を形成してい
る。第2電磁コイルに電流が供給されると、第2電磁コ
イルによって発生される磁束が、上記の磁気回路を通っ
て第2電磁コイルの内外を還流する。この際、プランジ
ャには、第2コアに向かう電磁吸引力が作用する。 【0005】上記の構成によれば、第1電磁コイルに電
流を供給することにより、プランジャを、すなわち、弁
体を第1コア側に変位させることができ、また、第2電
磁コイルに電流を供給することにより、プランジャを、
すなわち、弁体を第2コア側に変位させることができ
る。従って、上記従来の装置によれば、第1電磁コイル
および第2電磁コイルに、適当なタイミングで交互に電
流を供給することにより、弁体を開閉運動させることが
できる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
装置において、プランジャを第1コア側に吸着保持する
ためには、第1電磁コイルに電流を流し続けることが必
要である。この際、第1コアを流通する磁束は、第1電
磁コイルを流通する電流Iの値に応じた所定値に収束す
る。かかる状態から、プランジャを第2コア側へ変位さ
せるためには、第2電磁コイルに電流を供給し始めるに
先立って、第1コアを流通している磁束を消滅させるこ
とが必要である。 【0007】第1コアを流通する磁束は、第1電磁コイ
ルへの電流の供給を停止した後、所定の遅延時間が経過
した後に消滅する。すなわち、第1コアを流通する磁束
が所定値に収束している状況下で第1電磁コイルへの電
流供給が停止されると、第1コアには、磁束の減少を妨
げるように、逆起電力に起因する渦電流が発生する。こ
のため、第1コアを流通する磁束は、第1電磁コイルへ
の電流の供給が停止された後、更に渦電流の消滅に要す
る時間が経過した後に消滅する。 【0008】内燃機関の動弁装置において、優れた応答
性を確保するためには、第1電磁コイルに対する電流の
供給が停止された後、プランジャが第2コアへ向けて移
動し始めるまでの時間、すなわち、第1電磁コイルに対
する電流の供給が停止された後、第1コアに残存する渦
電流が消滅するまでの時間が短いほど有利である。同様
に、優れて応答性を確保するためには、第2電磁コイル
への電流の供給が停止された後、第2コアに残存する渦
電流が消滅するまでの時間が短いほど有利である。 【0009】第1および第2コアに発生する渦電流が消
滅するまでの時間は、例えば、第1および第2コアに、
その径方向に延在するスリットを設けることにより短縮
することができる。すなわち、上記のスリットが形成さ
れると、渦電流が第1および第2コアの中心軸回りを還
流できなくなり、スリットが存在しない場合に比して実
質的に渦電流の流通経路が延長される。その結果、第1
および第2コアにスリットが形成されている場合は、逆
起電力により発生した渦電流が、早期に抵抗熱として消
費され易くなる。従って、上記従来の動弁装置が備える
第1コアおよび第2コアに、それぞれ径方向のスリット
を加設すれば、より応答性の良い動弁装置を実現するこ
とができる。 【0010】しかしながら、第1コア、および第2コア
にスリットが形成されていると、第1コアとプランジャ
との間に作用する電磁吸引力、および第2コアとプラン
ジャとの間に作用する電磁吸引力が、スリットの形成さ
れている部位の近傍においてのみ、他の部位に比して小
さくなるという弊害が生ずる。プランジャに作用する電
磁吸引力が、上記の如くその全周において均一でないと
すると、プランジャが第1コアおよび第2コアに吸引さ
れる過程で、プランジャに傾斜が生じ易い。かかる条件
下では、プランジャに連結されている弁軸には大きな摺
動摩擦が生じ易く、更に、弁体には偏摩耗が発生し易
い。 【0011】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、弁体の偏摩耗等の弊害を伴うことなく優れた応
答性を発揮し得る内燃機関の動弁装置を提供することを
目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、プランジャの一方の側に第1電磁コイ
ルと第1コアとを備え、前記プランジャの他方の側に第
2電磁コイルと第2コアとを備え、前記第1電磁コイル
および前記第2コイルを流通する電流を制御することに
より弁体を開閉せしめる内燃機関の動弁装置において、
前記第1コアおよび前記第2コアが、互いに同一の位置
に、径方向に延在するスリットを備える内燃機関の動弁
装置により達成される。 【0013】本発明において、第1電磁コイルに電流が
供給されると、第1コア、プランジャ、および両者間の
エアギャップを通る磁束が発生し、プランジャと第1コ
アとの間に電磁吸引力が作用する。電磁吸引力は、スリ
ットの近傍において、他の部位に比して小さくなる。同
様に、第2電磁コイルに電流が供給されると、第2コア
およびプランジャを流通する磁束が発生し、プランジャ
と第2コアとの間には、スリット近傍において他の部位
に比して強度の小さな分布を有する電磁吸引力が作用す
る。本発明において、第1コアと第2コアとは、共に同
一の位置にスリットを備えている。このため、プランジ
ャに作用する電磁吸引力の分布は、プランジャが第1コ
ア側へ変位する過程においても、第2コア側へ変位する
過程においても、常に同一方向に弱い領域を有するもの
となる。この場合、プランジャには、変位の過程で偏心
は生ずるものの傾斜が生ずることはない。 【0014】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例である
動弁装置10の全体構成図を示す。動弁装置10は、弁
体12を備えている。弁体12は、図中下端部を内燃機
関の燃焼室内に露出させた状態でシリンダヘッド内に配
設される部材であり、内燃機関の吸気弁、又は排気弁を
構成する。内燃機関のシリンダヘッドには、弁体12に
対する弁座を備えるポートが設けられている。弁体12
が弁座から離座すること、又は弁座に着座することによ
りポートの導通状態が制御される。 【0015】弁体12には、弁軸14が固定されてい
る。弁軸14は、バルブガイド16により軸方向に摺動
可能に保持されている。バルブガイド16は、動弁装置
10のロアキャップ17に支持されている。弁軸14の
上部には、プランジャホルダ18が固定されている。プ
ランジャホルダ18は、例えばステンレス鋼やチタン合
金等の如く、硬度の高い非磁性或いは磁気特定の低い材
料で構成されている。プランジャホルダ18は、弁軸1
4の軸方向に延在する円筒部18aと、円筒部18aの
ほぼ軸方向中央部に形成されたリング部18bとを備え
ている。 【0016】プランジャホルダ18の下端部には、ロア
リテーナ20が固定されている。ロアリテーナ20とロ
アキャップ17との間には、両者を離間させる方向の付
勢力を発生するロアスプリング22が配設されている。
ロアスプリング22は、ロアリテーナ20を、すなわち
プランジャホルダ18を、図1における上方へ向けて付
勢する付勢力を発生する。 【0017】一方、プランジャホルダ18の上端部に
は、アッパーリテーナ24が固定されている。アッパー
リテーナの上部には、アッパースプリング26の下端部
が当接している。アッパースプリング26の周囲には、
その外周を取り巻くように円筒状のアッパーキャップ2
7が配設されている。更に、アッパースプリング26の
上端部は、スプリングキャップ28が配設されている。
スプリングキャップ28は、アッパーキャップ27に螺
着されるアジャストボルト29により、その位置が規制
されている。アッパースプリング26は、アッパーリテ
ーナ24を、すなわち、プランジャホルダ18を、図1
における下方へ向けて付勢する付勢力を発生する。 【0018】プランジャホルダ18の、リング部18b
の外周には、プランジャ30が接合されている。プラン
ジャ30は、Fe,Ni,Co等をベース材料とする軟
磁性材料で構成されたドーナツ状の部材である。プラン
ジャ30と、プランジャホルダ18とは、電子ビーム溶
接、レーザ溶接、ろう付け、カシメ、接着等の手法で接
合されている。 【0019】プランジャ30は、図1に示す如く、プラ
ンジャホルダ18に接合される内周側端部30aの板
厚、および外周側端部30bの板厚が、内周側端部30
aと外周側端部30bとの中間部30cの板厚に比して
薄くなるように成形されている。このため、プランジャ
30は、その中間部30cにおいて、内周側端部30a
および外周側端部30bに比して高い磁束流通能力を有
している。 【0020】プランジャ30の上方には、第1電磁コイ
ル32及び第1コア34が配設されている。また、プラ
ンジャ30の下方には、第2電磁コイル36及び第2コ
ア38が配設されている。第1コア34には、環状溝3
4aおよび貫通孔34bが形成されている。また、第2
コア38には、環状溝38aおよび貫通孔38bが形成
されている。環状溝34aおよび34bには、それぞれ
第1電磁コイル32および第2電磁コイル36が収納さ
れている。更に、貫通孔34bおよび38bには、プラ
ンジャホルダ18の円筒部18aが摺動可能に挿入され
ている。 【0021】図2は、第1コア34を図1に示すII-II
直線に沿って切断した際に得られる断面図を示す。図2
に示す如く、第1コア34は、磁性材料で構成される磁
性部34cを備えている。磁性部34cには第1コア3
4の全長に渡ってスリット34dが形成されている。ス
リット34dは、第1コア34の径方向に、貫通孔34
bに至るまで延在している。スリット34dの内部に
は、樹脂部34eが形成されている。図1に示す如く、
樹脂部34eには、ターミナル40,42の一端がモー
ルドされている。ターミナル40,42は、樹脂部34
dの内部において第1電磁コイル32の巻線に接続され
ている。 【0022】第2コア38(図1参照)は、第1コア3
4と同様の構成を有している。すなわち、第2コア38
は、磁性材料で構成される磁性部38c、磁性部38c
に形成されるスリット38d、およびスリット38dの
内部に形成される樹脂部38eを備えている。また、樹
脂部38eには、第2電磁コイル36の巻線に接続され
たターミナル44,46の一端がモールドされている。 【0023】図1に示す如く、第1コア34および第2
コア38の外周には、外筒48が配設されている。第1
コア34および第2コア38は、外筒50により、両者
の間隔が所定距離となるように、かつ、スリット34
d,38dが動弁装置10の軸方向に重なるように、す
なわち、樹脂部34eの延長線状に樹脂部38eが存在
するように、所定の位置関係に保持されている。 【0024】本実施例において、第1コア34、第2コ
ア38、およびプランジャ30は、プランジャ30の内
周側端部30aが、第1コア34および第2コア38の
環状溝34a,38aの内周側に対向するように、ま
た、プランジャ30の外周側端部30bが、第1コア3
4および第2コア38の環状溝34a,38aの外周側
に対向するように設計されている。上述したアッパーキ
ャップ27は、第1コア34の上端面に固定されてい
る。また、上述したロアキャップ17は、第2コア38
の下端面に固定されている。そして、アッパキャップ2
7に螺着されるアジャスタボルト29は、プランジャ3
0の中立位置が、第1コア34と第2コア38との中間
点となるように調整されている。 【0025】本実施例の動弁装置10は、コネクタ50
を備えている。コネクタ50は、第1コア34が備える
樹脂部34eおよび第2コア38が備える樹脂部38e
に対向する位置に配設されている。図3は、コネクタ5
0の内部構造を図1に示すIII 方向から表した図を示
す。図3に示す如く、コネクタ50は、その内部に動弁
装置10の軸方向に延在する4本のターミナル50a〜
50dを備えている。ターミナル50a〜50dは、そ
れぞれ第1コア34が備えるターミナル40,42およ
び第2コア38が備えるターミナル44,46に、例え
ば抵抗溶接等の手法により接合されている。動弁装置1
0は、コネクタ50を介して図示しない駆動回路と電気
的に接続される。 【0026】次に、本実施例の弁駆動装置10の動作に
ついて説明する。コネクタ50を介して動弁装置10に
接続される駆動装置から、第1電磁コイル32に向けて
所定の電流が供給されると、第1電磁コイル32の内周
側及び外周側を還流する磁界が発生する。第1電磁コイ
ル32の周囲に上記の磁界が発生すると、第1コア3
4、プランジャ30、及び第1コア34とプランジャ3
0との間のエアギャップを含む磁気回路に磁束が流通
し、プランジャ30を第1コア34側へ吸引する吸引
力、すなわち、弁体12を図1において上方へ変位させ
る電磁吸引力が発生する。 【0027】プランジャ30に対して上記の吸引力が作
用すると、プランジャ30、プランジャホルダ18、ア
ッパリテーナ24、ロアリテーナ20、弁軸14および
弁体12は、アッパスプリング26の付勢力に抗って図
1における上方へ向けて変位する。そして、その変位
は、プランジャ30が、ほぼ第1コア34と当接するま
で継続される。以下、かかる状況下におけるプランジャ
30の位置を閉弁側変位端と称す。 【0028】プランジャ30が閉弁側変位端に保持され
ている状態から、第1電磁コイル32に供給されていた
電流が遮断されると、その後、プランジャ30に作用し
ていた電磁吸引力が消滅し、アッパスプリング26の付
勢力に起因して、プランジャ30が図1における下方へ
向けて変位し始める。プランジャ30の変位量が所定値
に達した時点で、第2電磁コイル36に適当な電流を流
通させると、今度はプランジャ30を第2コア38側へ
吸引する吸引力、すなわち、弁体12を図1において下
方へ変位させる吸引力が発生する。 【0029】プランジャ30に対して上記の吸引力が作
用すると、プランジャ30、プランジャホルダ18、ア
ッパリテーナ24、ロアリテーナ20、弁軸14および
弁体12は、ロアスプリング22の付勢力に抗って、ほ
ぼプランジャ30が第2コア38に当接するまで図1に
おける下方へ向けて変位する。以下、プランジャ30が
第2コア38と当接する位置を開弁側変位端と称す。従
って、動弁装置10によれば、第1電磁コイル32と第
2電磁コイル36とに適当なタイミングで交互に電流を
供給することにより、プランジャ30を閉弁側変位端と
開弁側変位端との間で往復運動させること、すなわち、
弁体12を開弁位置と閉弁位置との間で往復運動させる
ことが可能である。 【0030】ところで、動弁装置10を駆動するにあた
り、第1電磁コイル32および第2電磁コイル36への
電流供給を開始した直後、および、第1電磁コイル32
および第2電磁コイル36への電流供給を停止した直後
には、第1コア34および第2コア38を流通する磁束
に時間的な変化が生ずる。第1コア34および第2コア
38は導電物質である。このため、それらの内部を貫く
磁束に時間的な変化が生ずると、第1コア34および第
2コア38の内部には、磁束変化を抑制する向きに逆起
電力が発生する。 【0031】図4は、環状導電体52を紙面表側から裏
側へ向かって貫く磁束Φが時間的に減少する際に、逆起
電力によって環状伝導体52内に発生する渦電流の方向
を示す。環状伝導体52を貫く上記の磁束Φが減少する
場合、環状伝導体52には、その減少を妨げる向き、す
なわち、図4において右回り方向に進行する渦電流が発
生する。尚、環状導電体52を貫く上記の磁束Φが時間
的に増加する際には、図4において左回り方向に進行す
る渦電流が発生する。 【0032】本実施例において、第1コア34および第
2コア38にスリット34d,38dが形成されていな
いとすれば、すなわち、第1コア34および第2コア3
8が、その全周にわたって伝導性を有しているとすれ
ば、第1電磁コイル32および第2電磁コイル36への
電流供給が停止された直後、および、それらへの電流供
給が開始された直後に、図4に示す環状伝導体52の場
合と同様に、それらの全周を還流する渦電流が発生す
る。このようにして発生する渦電流は、上述の如く第1
コア34および第2コア38の内部を流通する磁束の変
化を妨げる作用を有している。従って、第1コア34お
よび第2コア38を貫く磁束Φは、渦電流が急減に消滅
されるほど急激な変化を示し、一方、渦電流が緩やかに
消滅されるほど緩やかな変化を示す。 【0033】動弁装置10において、第1コア34側へ
吸引されているプランジャ30は、第1電磁コイル32
への電流供給を停止した後、第1コア34を流通する磁
束が所定値以下に減衰するまでの間(以下、この時間を
tOFF1と称す)は、依然として第1コア34側へ吸着さ
れたままとなる。同様に、第2コア38側へ吸引されて
いるプランジャ30は、第2電磁コイル36への電流供
給を停止した後、第2コア38を流通する磁束が所定値
以下に減衰するまでの間(以下、この時間をt OFF2と称
す)は、依然として第2コア38側へ吸着されたままと
なる。動弁装置10において優れた応答性を得るために
は、上記の時間t0FF1およびtOFF2が小さいほど望まし
い。従って、動弁装置10においては、第1コア34お
よび第2コア38が、共にそれらの内部に発生する渦電
流を早期に消滅させ得る特性を有していることが望まし
い。 【0034】図5は、C型導電体54を紙面表側から裏
側へ向かって貫く磁束Φが時間的に減少する際に、逆起
電力によってC型伝導体54内に発生する渦電流の方向
を示す。C型導電体54には、その径方向に延在するス
リット56が形成されている。スリット56は、C型導
電体54の全長に渡って形成されている。スリット56
が形成されているため、C型導電体54に生ずる渦電流
は、その全周を還流することができない。その結果、磁
束Φが減少する場合、C型導電体54には、その外周5
4OUT 側を図5において右回り方向に進行し、かつ、そ
の内周54IN側を図5において左回り方向に進行するこ
とにより還流する渦電流が発生する。尚、磁束Φが増加
する場合には、C型導電体54の外周54OUT 側を図5
において左回り方向に進行し、かつ、その内周54IN側
を図5において右回り方向に進行することにより還流す
る渦電流が発生する。 【0035】図5に示す渦電流の流通経路は、図4に示
す流通経路に比してほぼ2倍の経路長を有している。逆
起電力により発生する渦電流は、その流通の過程で抵抗
熱に変換されることにより消滅される。従って、渦電流
は、その流通経路が長いほど早期に消滅する。この点、
スリット56を備えるC型導電体54は、渦電流を早期
に消滅させるうえで、環状導電体52に比してすぐれた
特性を備えていることになる。 【0036】本実施例において、動弁装置10が備える
第1コア34および第2コア38には、それぞれスリッ
ト34dおよび38dが形成されている。従って、第1
コア34および第2コア38は、磁性材料を環状に成形
しただけのコア、すなわち、スリットを備えていないコ
ア(以下、環状コアと称す)に比して、渦電流を早期に
消滅させるうえで優れた特性を示す。このため、本実施
例の動弁装置10によれば、環状コアを用いる装置に比
して優れた応答性を確保することができる。 【0037】ところで、第1コア34のスリット34d
には、非磁性材料で構成される樹脂部34eが充填され
ている。樹脂部34eには磁束が流通しないため、第1
電磁コイル32に電流が流通している場合であっても、
樹脂部34eとプランジャ30との間に電磁吸引力が作
用することはない。このため、プランジャ30と第1コ
ア34との間に作用する電磁吸引力の強度分布は、スリ
ット34dの近傍においてのみ他の部位に比して小さな
強度を示す不均一なものとなる。同様に、第2コア38
とプランジャ30ととの間に作用する電磁吸引力の強度
分布は、スリット38dの近傍においてのみ他の部位に
比して小さな強度を示す不均一なものとなる。 【0038】プランジャ30に作用する電磁吸引力がそ
の全周において均一な分布を有していない場合、プラン
ジャ30が第1コア34または第2コア38に向かって
変位する過程で、プランジャ30は、より大きな吸引力
が作用している側、すなわち、スリット34d,38d
が形成されている部位の反対側へ大きく引き寄せられ
る。プランジャ30が上記の如く一方の側へ偏って吸引
されると、その影響でプランジャホルダ18、弁軸14
および弁体12等に傾斜が生ずる場合がある。 【0039】図6は、スリット34dとスリット38d
とが互いに逆向きとなるように第1コア34と第2コア
38とが配設されている場合に、プランジャホルダ1
8、弁軸14、および弁体12に生ずる傾斜の状態を示
す。図6に示す如く、第1コア34がスリット34dを
右側へ向けて配設されている場合、プランジャ30は、
第1コア34側へ引き寄せられる過程では図中左側へ大
きく引き寄せられる。一方、第2コア38がスリット3
8dを左側へ向けて配設されている場合、プランジャ3
0は、第2コア38側へ引き寄せられる過程では図中右
側へ大きく引き寄せられる。 【0040】このため、図6に示す構成において、プラ
ンジャ30の第1コア34へ向かう変位と第2コア38
へ向かう変位とが繰替えされると、プランジャホルダ1
8の軸線が第1コアおよび第2コア38の貫通孔34
b,38bの軸線に対して、また、弁軸14の軸線がバ
ルブガイド16の軸線に対して、更に、弁体12がバル
ブシートに対して、それぞれ図中反時計回り方向に傾斜
する事態が生ずる。プランジャホルダ18等にかかる傾
斜が生ずる場合、摺動抵抗の増大、プランジャホルダ1
8、弁軸14、および弁体12の局部的な偏摩耗等の弊
害が生ずる。 【0041】このように、第1コア34および第2コア
38がスリット34d,38dを備える構成は、第1コ
ア34および第2コア38に生ずる渦電流を早期に消滅
させることにより動弁装置10の応答性を高めるうえで
は有効であるものの、種々の弊害を生ずる可能性を内在
している。従って、かかる構成を採用するにあたって
は、電磁吸引力の不均一性に起因する弊害の除去を図る
必要がある。 【0042】本実施例の動弁装置10において、第1コ
ア34と第2コア38とは、上述の如く、スリット34
eと38eとが軸方向に重なり合うように配設されてい
る。図7は、第1コア34と第2コア38とが、かかる
条件を満たすように配設されている場合に、プランジャ
ホルダ18、弁軸14、および弁体12に生ずる傾斜の
状態を示す。 【0043】図7に示す如く、第1コア34がスリット
34dを左側へ向けて配設されている場合、プランジャ
30は、第1コア34側へ引き寄せられる過程では図中
右側へ大きく引き寄せられる。一方、第2コア38がス
リット38dを左側へ向けて配設されている場合、プラ
ンジャ30は、第2コア38側へ引き寄せられる過程で
は図中右側へ大きく引き寄せられる。 【0044】このように、第1コア34および第2コア
38が、本実施例の条件を満たすように配設されている
場合、プランジャ30は、第1コア34側へ変位する過
程、および、第2コア38側へ変位する過程において、
共に同一の方向に大きく引き寄せられる。この場合、プ
ランジャホルダ18および弁軸14は、貫通孔34b,
38b又はバルブガイド16に対して偏心した状態とは
なるものの、それらの軸線に対して傾斜することはな
い。このため、動弁装置10によれば、摺動抵抗の増大
や、プランジャホルダ18、弁軸14、および弁体12
の局部的な偏摩耗等の弊害を生ずることなく、高い応答
性を確保することが可能である。 【0045】 【発明の効果】上述の如く、請求項1記載の発明によれ
ば、第1コアおよび第2コアにスリットを形成しつつ、
変位の過程でプランジャに傾斜が生ずるのを防止するこ
とができる。このため、本発明によれば、弁体の偏摩耗
等の弊害を生ずることなく、優れた応答性を発揮する内
燃機関の動弁装置を実現することができる。
置に係り、特に、弁体に固定されるプランジャを電磁力
で駆動する内燃機関の動弁装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、例えば特開平2−17628
8号に開示される如く、内燃機関が備える弁体を電磁力
により駆動する装置が知られている。上記従来の装置
は、弁体に固定されるディスク状のプランジャを備えて
いる。上記従来の装置において、プランジャの上部に
は、第1電磁コイルと、第1電磁コイルを取り囲む第1
コアとが配設されている。また、プランジャの下部に
は、第2電磁コイルと、第2電磁コイルを取り囲む第2
コアとが配設されている。 【0003】第1コア、プランジャ、および第1コアと
プランジャとの間に形成されるエアギャップは、第1電
磁コイルの内外を取り巻く磁気回路を形成している。第
1電磁コイルに電流が供給されると、第1電磁コイルに
よって発生される磁束が、上記の磁気回路を通って第1
電磁コイルの内外を還流する。この際、プランジャに
は、第1コアに向かう電磁吸引力が作用する。 【0004】また、第2コア、プランジャ、および第2
コアとプランジャとの間に形成されるエアギャップは、
第2電磁コイルの内外を取り巻く磁気回路を形成してい
る。第2電磁コイルに電流が供給されると、第2電磁コ
イルによって発生される磁束が、上記の磁気回路を通っ
て第2電磁コイルの内外を還流する。この際、プランジ
ャには、第2コアに向かう電磁吸引力が作用する。 【0005】上記の構成によれば、第1電磁コイルに電
流を供給することにより、プランジャを、すなわち、弁
体を第1コア側に変位させることができ、また、第2電
磁コイルに電流を供給することにより、プランジャを、
すなわち、弁体を第2コア側に変位させることができ
る。従って、上記従来の装置によれば、第1電磁コイル
および第2電磁コイルに、適当なタイミングで交互に電
流を供給することにより、弁体を開閉運動させることが
できる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
装置において、プランジャを第1コア側に吸着保持する
ためには、第1電磁コイルに電流を流し続けることが必
要である。この際、第1コアを流通する磁束は、第1電
磁コイルを流通する電流Iの値に応じた所定値に収束す
る。かかる状態から、プランジャを第2コア側へ変位さ
せるためには、第2電磁コイルに電流を供給し始めるに
先立って、第1コアを流通している磁束を消滅させるこ
とが必要である。 【0007】第1コアを流通する磁束は、第1電磁コイ
ルへの電流の供給を停止した後、所定の遅延時間が経過
した後に消滅する。すなわち、第1コアを流通する磁束
が所定値に収束している状況下で第1電磁コイルへの電
流供給が停止されると、第1コアには、磁束の減少を妨
げるように、逆起電力に起因する渦電流が発生する。こ
のため、第1コアを流通する磁束は、第1電磁コイルへ
の電流の供給が停止された後、更に渦電流の消滅に要す
る時間が経過した後に消滅する。 【0008】内燃機関の動弁装置において、優れた応答
性を確保するためには、第1電磁コイルに対する電流の
供給が停止された後、プランジャが第2コアへ向けて移
動し始めるまでの時間、すなわち、第1電磁コイルに対
する電流の供給が停止された後、第1コアに残存する渦
電流が消滅するまでの時間が短いほど有利である。同様
に、優れて応答性を確保するためには、第2電磁コイル
への電流の供給が停止された後、第2コアに残存する渦
電流が消滅するまでの時間が短いほど有利である。 【0009】第1および第2コアに発生する渦電流が消
滅するまでの時間は、例えば、第1および第2コアに、
その径方向に延在するスリットを設けることにより短縮
することができる。すなわち、上記のスリットが形成さ
れると、渦電流が第1および第2コアの中心軸回りを還
流できなくなり、スリットが存在しない場合に比して実
質的に渦電流の流通経路が延長される。その結果、第1
および第2コアにスリットが形成されている場合は、逆
起電力により発生した渦電流が、早期に抵抗熱として消
費され易くなる。従って、上記従来の動弁装置が備える
第1コアおよび第2コアに、それぞれ径方向のスリット
を加設すれば、より応答性の良い動弁装置を実現するこ
とができる。 【0010】しかしながら、第1コア、および第2コア
にスリットが形成されていると、第1コアとプランジャ
との間に作用する電磁吸引力、および第2コアとプラン
ジャとの間に作用する電磁吸引力が、スリットの形成さ
れている部位の近傍においてのみ、他の部位に比して小
さくなるという弊害が生ずる。プランジャに作用する電
磁吸引力が、上記の如くその全周において均一でないと
すると、プランジャが第1コアおよび第2コアに吸引さ
れる過程で、プランジャに傾斜が生じ易い。かかる条件
下では、プランジャに連結されている弁軸には大きな摺
動摩擦が生じ易く、更に、弁体には偏摩耗が発生し易
い。 【0011】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、弁体の偏摩耗等の弊害を伴うことなく優れた応
答性を発揮し得る内燃機関の動弁装置を提供することを
目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、プランジャの一方の側に第1電磁コイ
ルと第1コアとを備え、前記プランジャの他方の側に第
2電磁コイルと第2コアとを備え、前記第1電磁コイル
および前記第2コイルを流通する電流を制御することに
より弁体を開閉せしめる内燃機関の動弁装置において、
前記第1コアおよび前記第2コアが、互いに同一の位置
に、径方向に延在するスリットを備える内燃機関の動弁
装置により達成される。 【0013】本発明において、第1電磁コイルに電流が
供給されると、第1コア、プランジャ、および両者間の
エアギャップを通る磁束が発生し、プランジャと第1コ
アとの間に電磁吸引力が作用する。電磁吸引力は、スリ
ットの近傍において、他の部位に比して小さくなる。同
様に、第2電磁コイルに電流が供給されると、第2コア
およびプランジャを流通する磁束が発生し、プランジャ
と第2コアとの間には、スリット近傍において他の部位
に比して強度の小さな分布を有する電磁吸引力が作用す
る。本発明において、第1コアと第2コアとは、共に同
一の位置にスリットを備えている。このため、プランジ
ャに作用する電磁吸引力の分布は、プランジャが第1コ
ア側へ変位する過程においても、第2コア側へ変位する
過程においても、常に同一方向に弱い領域を有するもの
となる。この場合、プランジャには、変位の過程で偏心
は生ずるものの傾斜が生ずることはない。 【0014】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例である
動弁装置10の全体構成図を示す。動弁装置10は、弁
体12を備えている。弁体12は、図中下端部を内燃機
関の燃焼室内に露出させた状態でシリンダヘッド内に配
設される部材であり、内燃機関の吸気弁、又は排気弁を
構成する。内燃機関のシリンダヘッドには、弁体12に
対する弁座を備えるポートが設けられている。弁体12
が弁座から離座すること、又は弁座に着座することによ
りポートの導通状態が制御される。 【0015】弁体12には、弁軸14が固定されてい
る。弁軸14は、バルブガイド16により軸方向に摺動
可能に保持されている。バルブガイド16は、動弁装置
10のロアキャップ17に支持されている。弁軸14の
上部には、プランジャホルダ18が固定されている。プ
ランジャホルダ18は、例えばステンレス鋼やチタン合
金等の如く、硬度の高い非磁性或いは磁気特定の低い材
料で構成されている。プランジャホルダ18は、弁軸1
4の軸方向に延在する円筒部18aと、円筒部18aの
ほぼ軸方向中央部に形成されたリング部18bとを備え
ている。 【0016】プランジャホルダ18の下端部には、ロア
リテーナ20が固定されている。ロアリテーナ20とロ
アキャップ17との間には、両者を離間させる方向の付
勢力を発生するロアスプリング22が配設されている。
ロアスプリング22は、ロアリテーナ20を、すなわち
プランジャホルダ18を、図1における上方へ向けて付
勢する付勢力を発生する。 【0017】一方、プランジャホルダ18の上端部に
は、アッパーリテーナ24が固定されている。アッパー
リテーナの上部には、アッパースプリング26の下端部
が当接している。アッパースプリング26の周囲には、
その外周を取り巻くように円筒状のアッパーキャップ2
7が配設されている。更に、アッパースプリング26の
上端部は、スプリングキャップ28が配設されている。
スプリングキャップ28は、アッパーキャップ27に螺
着されるアジャストボルト29により、その位置が規制
されている。アッパースプリング26は、アッパーリテ
ーナ24を、すなわち、プランジャホルダ18を、図1
における下方へ向けて付勢する付勢力を発生する。 【0018】プランジャホルダ18の、リング部18b
の外周には、プランジャ30が接合されている。プラン
ジャ30は、Fe,Ni,Co等をベース材料とする軟
磁性材料で構成されたドーナツ状の部材である。プラン
ジャ30と、プランジャホルダ18とは、電子ビーム溶
接、レーザ溶接、ろう付け、カシメ、接着等の手法で接
合されている。 【0019】プランジャ30は、図1に示す如く、プラ
ンジャホルダ18に接合される内周側端部30aの板
厚、および外周側端部30bの板厚が、内周側端部30
aと外周側端部30bとの中間部30cの板厚に比して
薄くなるように成形されている。このため、プランジャ
30は、その中間部30cにおいて、内周側端部30a
および外周側端部30bに比して高い磁束流通能力を有
している。 【0020】プランジャ30の上方には、第1電磁コイ
ル32及び第1コア34が配設されている。また、プラ
ンジャ30の下方には、第2電磁コイル36及び第2コ
ア38が配設されている。第1コア34には、環状溝3
4aおよび貫通孔34bが形成されている。また、第2
コア38には、環状溝38aおよび貫通孔38bが形成
されている。環状溝34aおよび34bには、それぞれ
第1電磁コイル32および第2電磁コイル36が収納さ
れている。更に、貫通孔34bおよび38bには、プラ
ンジャホルダ18の円筒部18aが摺動可能に挿入され
ている。 【0021】図2は、第1コア34を図1に示すII-II
直線に沿って切断した際に得られる断面図を示す。図2
に示す如く、第1コア34は、磁性材料で構成される磁
性部34cを備えている。磁性部34cには第1コア3
4の全長に渡ってスリット34dが形成されている。ス
リット34dは、第1コア34の径方向に、貫通孔34
bに至るまで延在している。スリット34dの内部に
は、樹脂部34eが形成されている。図1に示す如く、
樹脂部34eには、ターミナル40,42の一端がモー
ルドされている。ターミナル40,42は、樹脂部34
dの内部において第1電磁コイル32の巻線に接続され
ている。 【0022】第2コア38(図1参照)は、第1コア3
4と同様の構成を有している。すなわち、第2コア38
は、磁性材料で構成される磁性部38c、磁性部38c
に形成されるスリット38d、およびスリット38dの
内部に形成される樹脂部38eを備えている。また、樹
脂部38eには、第2電磁コイル36の巻線に接続され
たターミナル44,46の一端がモールドされている。 【0023】図1に示す如く、第1コア34および第2
コア38の外周には、外筒48が配設されている。第1
コア34および第2コア38は、外筒50により、両者
の間隔が所定距離となるように、かつ、スリット34
d,38dが動弁装置10の軸方向に重なるように、す
なわち、樹脂部34eの延長線状に樹脂部38eが存在
するように、所定の位置関係に保持されている。 【0024】本実施例において、第1コア34、第2コ
ア38、およびプランジャ30は、プランジャ30の内
周側端部30aが、第1コア34および第2コア38の
環状溝34a,38aの内周側に対向するように、ま
た、プランジャ30の外周側端部30bが、第1コア3
4および第2コア38の環状溝34a,38aの外周側
に対向するように設計されている。上述したアッパーキ
ャップ27は、第1コア34の上端面に固定されてい
る。また、上述したロアキャップ17は、第2コア38
の下端面に固定されている。そして、アッパキャップ2
7に螺着されるアジャスタボルト29は、プランジャ3
0の中立位置が、第1コア34と第2コア38との中間
点となるように調整されている。 【0025】本実施例の動弁装置10は、コネクタ50
を備えている。コネクタ50は、第1コア34が備える
樹脂部34eおよび第2コア38が備える樹脂部38e
に対向する位置に配設されている。図3は、コネクタ5
0の内部構造を図1に示すIII 方向から表した図を示
す。図3に示す如く、コネクタ50は、その内部に動弁
装置10の軸方向に延在する4本のターミナル50a〜
50dを備えている。ターミナル50a〜50dは、そ
れぞれ第1コア34が備えるターミナル40,42およ
び第2コア38が備えるターミナル44,46に、例え
ば抵抗溶接等の手法により接合されている。動弁装置1
0は、コネクタ50を介して図示しない駆動回路と電気
的に接続される。 【0026】次に、本実施例の弁駆動装置10の動作に
ついて説明する。コネクタ50を介して動弁装置10に
接続される駆動装置から、第1電磁コイル32に向けて
所定の電流が供給されると、第1電磁コイル32の内周
側及び外周側を還流する磁界が発生する。第1電磁コイ
ル32の周囲に上記の磁界が発生すると、第1コア3
4、プランジャ30、及び第1コア34とプランジャ3
0との間のエアギャップを含む磁気回路に磁束が流通
し、プランジャ30を第1コア34側へ吸引する吸引
力、すなわち、弁体12を図1において上方へ変位させ
る電磁吸引力が発生する。 【0027】プランジャ30に対して上記の吸引力が作
用すると、プランジャ30、プランジャホルダ18、ア
ッパリテーナ24、ロアリテーナ20、弁軸14および
弁体12は、アッパスプリング26の付勢力に抗って図
1における上方へ向けて変位する。そして、その変位
は、プランジャ30が、ほぼ第1コア34と当接するま
で継続される。以下、かかる状況下におけるプランジャ
30の位置を閉弁側変位端と称す。 【0028】プランジャ30が閉弁側変位端に保持され
ている状態から、第1電磁コイル32に供給されていた
電流が遮断されると、その後、プランジャ30に作用し
ていた電磁吸引力が消滅し、アッパスプリング26の付
勢力に起因して、プランジャ30が図1における下方へ
向けて変位し始める。プランジャ30の変位量が所定値
に達した時点で、第2電磁コイル36に適当な電流を流
通させると、今度はプランジャ30を第2コア38側へ
吸引する吸引力、すなわち、弁体12を図1において下
方へ変位させる吸引力が発生する。 【0029】プランジャ30に対して上記の吸引力が作
用すると、プランジャ30、プランジャホルダ18、ア
ッパリテーナ24、ロアリテーナ20、弁軸14および
弁体12は、ロアスプリング22の付勢力に抗って、ほ
ぼプランジャ30が第2コア38に当接するまで図1に
おける下方へ向けて変位する。以下、プランジャ30が
第2コア38と当接する位置を開弁側変位端と称す。従
って、動弁装置10によれば、第1電磁コイル32と第
2電磁コイル36とに適当なタイミングで交互に電流を
供給することにより、プランジャ30を閉弁側変位端と
開弁側変位端との間で往復運動させること、すなわち、
弁体12を開弁位置と閉弁位置との間で往復運動させる
ことが可能である。 【0030】ところで、動弁装置10を駆動するにあた
り、第1電磁コイル32および第2電磁コイル36への
電流供給を開始した直後、および、第1電磁コイル32
および第2電磁コイル36への電流供給を停止した直後
には、第1コア34および第2コア38を流通する磁束
に時間的な変化が生ずる。第1コア34および第2コア
38は導電物質である。このため、それらの内部を貫く
磁束に時間的な変化が生ずると、第1コア34および第
2コア38の内部には、磁束変化を抑制する向きに逆起
電力が発生する。 【0031】図4は、環状導電体52を紙面表側から裏
側へ向かって貫く磁束Φが時間的に減少する際に、逆起
電力によって環状伝導体52内に発生する渦電流の方向
を示す。環状伝導体52を貫く上記の磁束Φが減少する
場合、環状伝導体52には、その減少を妨げる向き、す
なわち、図4において右回り方向に進行する渦電流が発
生する。尚、環状導電体52を貫く上記の磁束Φが時間
的に増加する際には、図4において左回り方向に進行す
る渦電流が発生する。 【0032】本実施例において、第1コア34および第
2コア38にスリット34d,38dが形成されていな
いとすれば、すなわち、第1コア34および第2コア3
8が、その全周にわたって伝導性を有しているとすれ
ば、第1電磁コイル32および第2電磁コイル36への
電流供給が停止された直後、および、それらへの電流供
給が開始された直後に、図4に示す環状伝導体52の場
合と同様に、それらの全周を還流する渦電流が発生す
る。このようにして発生する渦電流は、上述の如く第1
コア34および第2コア38の内部を流通する磁束の変
化を妨げる作用を有している。従って、第1コア34お
よび第2コア38を貫く磁束Φは、渦電流が急減に消滅
されるほど急激な変化を示し、一方、渦電流が緩やかに
消滅されるほど緩やかな変化を示す。 【0033】動弁装置10において、第1コア34側へ
吸引されているプランジャ30は、第1電磁コイル32
への電流供給を停止した後、第1コア34を流通する磁
束が所定値以下に減衰するまでの間(以下、この時間を
tOFF1と称す)は、依然として第1コア34側へ吸着さ
れたままとなる。同様に、第2コア38側へ吸引されて
いるプランジャ30は、第2電磁コイル36への電流供
給を停止した後、第2コア38を流通する磁束が所定値
以下に減衰するまでの間(以下、この時間をt OFF2と称
す)は、依然として第2コア38側へ吸着されたままと
なる。動弁装置10において優れた応答性を得るために
は、上記の時間t0FF1およびtOFF2が小さいほど望まし
い。従って、動弁装置10においては、第1コア34お
よび第2コア38が、共にそれらの内部に発生する渦電
流を早期に消滅させ得る特性を有していることが望まし
い。 【0034】図5は、C型導電体54を紙面表側から裏
側へ向かって貫く磁束Φが時間的に減少する際に、逆起
電力によってC型伝導体54内に発生する渦電流の方向
を示す。C型導電体54には、その径方向に延在するス
リット56が形成されている。スリット56は、C型導
電体54の全長に渡って形成されている。スリット56
が形成されているため、C型導電体54に生ずる渦電流
は、その全周を還流することができない。その結果、磁
束Φが減少する場合、C型導電体54には、その外周5
4OUT 側を図5において右回り方向に進行し、かつ、そ
の内周54IN側を図5において左回り方向に進行するこ
とにより還流する渦電流が発生する。尚、磁束Φが増加
する場合には、C型導電体54の外周54OUT 側を図5
において左回り方向に進行し、かつ、その内周54IN側
を図5において右回り方向に進行することにより還流す
る渦電流が発生する。 【0035】図5に示す渦電流の流通経路は、図4に示
す流通経路に比してほぼ2倍の経路長を有している。逆
起電力により発生する渦電流は、その流通の過程で抵抗
熱に変換されることにより消滅される。従って、渦電流
は、その流通経路が長いほど早期に消滅する。この点、
スリット56を備えるC型導電体54は、渦電流を早期
に消滅させるうえで、環状導電体52に比してすぐれた
特性を備えていることになる。 【0036】本実施例において、動弁装置10が備える
第1コア34および第2コア38には、それぞれスリッ
ト34dおよび38dが形成されている。従って、第1
コア34および第2コア38は、磁性材料を環状に成形
しただけのコア、すなわち、スリットを備えていないコ
ア(以下、環状コアと称す)に比して、渦電流を早期に
消滅させるうえで優れた特性を示す。このため、本実施
例の動弁装置10によれば、環状コアを用いる装置に比
して優れた応答性を確保することができる。 【0037】ところで、第1コア34のスリット34d
には、非磁性材料で構成される樹脂部34eが充填され
ている。樹脂部34eには磁束が流通しないため、第1
電磁コイル32に電流が流通している場合であっても、
樹脂部34eとプランジャ30との間に電磁吸引力が作
用することはない。このため、プランジャ30と第1コ
ア34との間に作用する電磁吸引力の強度分布は、スリ
ット34dの近傍においてのみ他の部位に比して小さな
強度を示す不均一なものとなる。同様に、第2コア38
とプランジャ30ととの間に作用する電磁吸引力の強度
分布は、スリット38dの近傍においてのみ他の部位に
比して小さな強度を示す不均一なものとなる。 【0038】プランジャ30に作用する電磁吸引力がそ
の全周において均一な分布を有していない場合、プラン
ジャ30が第1コア34または第2コア38に向かって
変位する過程で、プランジャ30は、より大きな吸引力
が作用している側、すなわち、スリット34d,38d
が形成されている部位の反対側へ大きく引き寄せられ
る。プランジャ30が上記の如く一方の側へ偏って吸引
されると、その影響でプランジャホルダ18、弁軸14
および弁体12等に傾斜が生ずる場合がある。 【0039】図6は、スリット34dとスリット38d
とが互いに逆向きとなるように第1コア34と第2コア
38とが配設されている場合に、プランジャホルダ1
8、弁軸14、および弁体12に生ずる傾斜の状態を示
す。図6に示す如く、第1コア34がスリット34dを
右側へ向けて配設されている場合、プランジャ30は、
第1コア34側へ引き寄せられる過程では図中左側へ大
きく引き寄せられる。一方、第2コア38がスリット3
8dを左側へ向けて配設されている場合、プランジャ3
0は、第2コア38側へ引き寄せられる過程では図中右
側へ大きく引き寄せられる。 【0040】このため、図6に示す構成において、プラ
ンジャ30の第1コア34へ向かう変位と第2コア38
へ向かう変位とが繰替えされると、プランジャホルダ1
8の軸線が第1コアおよび第2コア38の貫通孔34
b,38bの軸線に対して、また、弁軸14の軸線がバ
ルブガイド16の軸線に対して、更に、弁体12がバル
ブシートに対して、それぞれ図中反時計回り方向に傾斜
する事態が生ずる。プランジャホルダ18等にかかる傾
斜が生ずる場合、摺動抵抗の増大、プランジャホルダ1
8、弁軸14、および弁体12の局部的な偏摩耗等の弊
害が生ずる。 【0041】このように、第1コア34および第2コア
38がスリット34d,38dを備える構成は、第1コ
ア34および第2コア38に生ずる渦電流を早期に消滅
させることにより動弁装置10の応答性を高めるうえで
は有効であるものの、種々の弊害を生ずる可能性を内在
している。従って、かかる構成を採用するにあたって
は、電磁吸引力の不均一性に起因する弊害の除去を図る
必要がある。 【0042】本実施例の動弁装置10において、第1コ
ア34と第2コア38とは、上述の如く、スリット34
eと38eとが軸方向に重なり合うように配設されてい
る。図7は、第1コア34と第2コア38とが、かかる
条件を満たすように配設されている場合に、プランジャ
ホルダ18、弁軸14、および弁体12に生ずる傾斜の
状態を示す。 【0043】図7に示す如く、第1コア34がスリット
34dを左側へ向けて配設されている場合、プランジャ
30は、第1コア34側へ引き寄せられる過程では図中
右側へ大きく引き寄せられる。一方、第2コア38がス
リット38dを左側へ向けて配設されている場合、プラ
ンジャ30は、第2コア38側へ引き寄せられる過程で
は図中右側へ大きく引き寄せられる。 【0044】このように、第1コア34および第2コア
38が、本実施例の条件を満たすように配設されている
場合、プランジャ30は、第1コア34側へ変位する過
程、および、第2コア38側へ変位する過程において、
共に同一の方向に大きく引き寄せられる。この場合、プ
ランジャホルダ18および弁軸14は、貫通孔34b,
38b又はバルブガイド16に対して偏心した状態とは
なるものの、それらの軸線に対して傾斜することはな
い。このため、動弁装置10によれば、摺動抵抗の増大
や、プランジャホルダ18、弁軸14、および弁体12
の局部的な偏摩耗等の弊害を生ずることなく、高い応答
性を確保することが可能である。 【0045】 【発明の効果】上述の如く、請求項1記載の発明によれ
ば、第1コアおよび第2コアにスリットを形成しつつ、
変位の過程でプランジャに傾斜が生ずるのを防止するこ
とができる。このため、本発明によれば、弁体の偏摩耗
等の弊害を生ずることなく、優れた応答性を発揮する内
燃機関の動弁装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である内燃機関の動弁装置の
構成を表す断面図である。 【図2】図1に示す動弁装置を図1に示すII-II 直線に
沿って切断した際に得られる断面図を示す。 【図3】図1に示すコネクタの内部構造を図1に示すII
I 矢視で表した図である。 【図4】環状導電体を貫く磁束が減少する際に発生する
渦電流の流通経路を表す図である。 【図5】スリットを備えるC型導電体を貫く磁束が減少
する際に発生する渦電流の流通経路を表す図である。 【図6】第1コアのスリットと第2コアのスリットが互
いに反対向きである場合の動作状態を説明するための図
である。 【図7】第1コアのスリットと第2コアのスリットが互
いに同一向きである場合の動作状態を説明するための図
である。 【符号の説明】 10 動弁装置 12 弁体 14 弁軸 18 プランジャホルダ 30 プランジャ 32 第1電磁コイル 34 第1コア 34d,38d スリット 34e,38e 樹脂部 36 第2電磁コイル 38 第2コア
構成を表す断面図である。 【図2】図1に示す動弁装置を図1に示すII-II 直線に
沿って切断した際に得られる断面図を示す。 【図3】図1に示すコネクタの内部構造を図1に示すII
I 矢視で表した図である。 【図4】環状導電体を貫く磁束が減少する際に発生する
渦電流の流通経路を表す図である。 【図5】スリットを備えるC型導電体を貫く磁束が減少
する際に発生する渦電流の流通経路を表す図である。 【図6】第1コアのスリットと第2コアのスリットが互
いに反対向きである場合の動作状態を説明するための図
である。 【図7】第1コアのスリットと第2コアのスリットが互
いに同一向きである場合の動作状態を説明するための図
である。 【符号の説明】 10 動弁装置 12 弁体 14 弁軸 18 プランジャホルダ 30 プランジャ 32 第1電磁コイル 34 第1コア 34d,38d スリット 34e,38e 樹脂部 36 第2電磁コイル 38 第2コア
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 プランジャの一方の側に第1電磁コイル
と第1コアとを備え、前記プランジャの他方の側に第2
電磁コイルと第2コアとを備え、前記第1電磁コイルお
よび前記第2コイルを流通する電流を制御することによ
り弁体を開閉せしめる内燃機関の動弁装置において、 前記第1コアおよび前記第2コアが、互いに同一の位置
に、径方向に延在するスリットを備えることを特徴とす
る内燃機関の動弁装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP02807896A JP3405041B2 (ja) | 1996-02-15 | 1996-02-15 | 内燃機関の動弁装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP02807896A JP3405041B2 (ja) | 1996-02-15 | 1996-02-15 | 内燃機関の動弁装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09222006A JPH09222006A (ja) | 1997-08-26 |
JP3405041B2 true JP3405041B2 (ja) | 2003-05-12 |
Family
ID=12238747
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP02807896A Expired - Fee Related JP3405041B2 (ja) | 1996-02-15 | 1996-02-15 | 内燃機関の動弁装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3405041B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9364293B2 (en) | 2006-04-28 | 2016-06-14 | Biosense Webster, Inc. | Reduced field distortion in medical tools |
-
1996
- 1996-02-15 JP JP02807896A patent/JP3405041B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH09222006A (ja) | 1997-08-26 |
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Legal Events
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