JP3382786B2 - ロケットエンジン - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工衛星等の飛行
体の軌道変更、又は姿勢制御に使われる輻射冷却式のロ
ケットエンジンに関する。 【0002】 【従来の技術】図5は、四二酸化窒素(NTO)を酸化
剤とし、モノメチルヒドラジン(MMH)を燃料とする
推薬を使用するようにしたロケットエンジンの断面図で
ある。二液の接触のみで着火する自燃性のNTO、MM
Hを推進薬とするロケットエンジンでは、図に示すよう
に、燃焼室01の軸方向から噴射器02に流入し、噴射
されたNTOと、燃焼室01の径方向から噴射器01に
流入し、噴射されたMMHが直接接触して、着火し、燃
焼室01内で3300°K以上の燃焼温度で燃焼し、こ
の高温、高圧の燃焼ガスが、スロート03を通って、ノ
ズル04から外部に高速で噴出することによって、推力
を発生させるようにしている。 【0003】また、高温の燃焼温度からノズル04、ス
ロート03および燃焼室01(以下併せて燃焼室等とい
う)を保護するために、これらの部材の内部に通路07
を設け、入口管05からMMHを注入して、通路07を
通過させ、冷却するとともに、出口管06から流出する
加熱されたMMH1を、噴射器入口08から噴射器内0
2に注入するようした再生冷却方式を採用している。 【0004】しかしながら、人工衛星等の軌道変更、又
は姿勢制御に使用される姿勢制御用スラスタエンジン
(Reaction Control System:
RCS)用のロケットエンジンでは、推力が200N程
度と小さく、図6に示すように、燃焼室01′、スロー
ト03′、ノズル04′からなる燃焼室等が一体に形成
され、また、噴射器02は推進薬の噴射量を制御するバ
ルブと一体に形成され、さらに噴射器と燃焼室01′と
は、フランジで接合されることなく溶接で一体化され、
軽量化が図られている。 【0005】このため、燃焼室等の冷却には、上述した
再生冷却方式が採用できず、輻射冷却方式が採用されて
いる。また、上述した高温の燃焼温度に耐えるようにす
るため、一体成形される燃焼室等は、冷間加工に耐える
延性を持ち、容易に管等に加工できるとともに、高融点
で、しかも高温強度および高耐食性に優れたニオブ(N
iobium:Nb)が使用されている。しかしなが
ら、Nbは酸化されやすく、融点温度の低い酸化被膜を
形成して、高温雰囲気では容易に剥離し、肉厚が薄肉化
する不具合がある。 【0006】このため、図6に示すように、Nbで形成
された燃焼室等の内、外周面に、二酸化ジルコニウム
(ZrO2 )を溶射09して、耐酸化コーティングを行
ったり、又はシリコンカーバイドSiCを化学蒸着液
(Chemical Vaccum Developm
ent:CVD)法で積層して、耐酸化コーティング、
すなわち、表皮層を形成して、酸化被膜の形成を防止す
ることが行われている。 【0007】(1)しかながら、このようなNbで形成
された燃焼室等の内、外周面に、ZrO2 を溶射して耐
酸化コーティングを形成する方法では、これらの燃焼室
等が使用される2000℃までの表面温度には、充分使
用できる利点はあるものの、耐酸化コーティングが溶射
によって形成されているため、はがれやすく、信頼性に
欠けているという不具合がある。 【0008】(2)また、Nbで形成された燃焼室等の
内、外周面に、SiCをCVD法により積層して耐酸化
コーティングする方法では、CVD法によるコーティン
グのため、はがれにくい利点はあるものの、耐熱性が充
分でなく、1400℃〜1600℃までの表面温度にし
か使用できず、輻射冷却方式の燃焼室等には採用できな
いという不具合がある。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来の輻射冷却方式が採用されるRCS用のロケットエン
ジンの不具合を解消するため、融点は高いが酸化されや
すいNbの表皮層に、Nbと同様に融点が高く、耐酸化
性に優れているIrを採用するとともに、NbとIrの
互いの熱膨張率の差を補うために、NbとIrの積層を
互いの濃度を傾斜させて積層することにより、表皮層が
はがれにくく耐久性に富むとともに、耐熱性を向上させ
たロケットエンジンを提供することを課題とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】このため、本発明のロケ
ットエンジンは、次の手段とした。 【0011】ロケットエンジンを構成する、少くとも燃
焼室の構造部材を次の積層にしたものとした。 【0012】(1)融点が約2750°Kと高く、しか
も高温強度に優れ、比重が8.57と比較的小さいニオ
ブ(Nb)を、化学(真空)蒸着(CVD)法で複数回
コーティングして、積層して、高温強度が補強された強
度層。なお、強度層は化学蒸着法によるコーティング回
数を多くして、望ましくは1000μm程度の厚みの積
層にすることが好ましい。 【0013】(2)強度層の内周面および外周面に、融
点が約2730°Kと高く、しかも耐酸化性に優れ、比
重が22.5と比較的大きいイリジウム(Ir)と、前
述したNbとを、交互にCVD法でコーティングするこ
とにより積層し、強度層の内周面上、および外周面上
に、IrとNbの層が少くとも2層以上設けられ、Nb
で形成される強度層とIrで形成される表皮層との熱膨
張率の差を補うようにした中間層。なお、中間層で積層
されるIr、Nbの層は、数μmのオーダの厚みにされ
るとともに、強度層に近い部分の積層はNbの層が厚
く、Irの層が薄く、また表皮層に近い部分の積層はI
rの層が厚く、Nbの層が薄くなるように形成すること
が好ましい。 【0014】(3)Ir、Nbの層を交互に積層した中
間層の内周面および外周面に、IrをCVD法で複数回
コーティングして、積層し、耐酸化性を補強する表皮
層。なお、外皮層はNbに比較して比重の大きいIrで
形成されることから、50μm程度の厚みにすることが
好ましい。 【0015】本発明のロケットエンジンは、上述の手段
により、輻射冷却方式のロケットエンジンで、高温度の
燃焼ガスにさらされる部材のうち、少くとも、最も高温
になる燃焼室の構造強度材が、Nbを積層した強度層を
採用して形成されているので、例えばNTO、MMHを
推薬とし、表面温度が2000℃にもなるロケットエン
ジンにおいても、軽量で、かつ、高温強度を充分保持で
きる耐熱性に富むものである。 【0016】また、燃焼室の表面に形成される耐酸化被
覆が、Irを採用して積層した表皮層で形成されている
ので、表面温度が2000℃にもなるロケットエンジン
においても、使用でき、耐熱性に富むものにできるとと
もに、酸化被膜を形成し、この酸化被膜の剥離により薄
肉化し、強度低下することのあった強度層の構造強度の
低下が防止でき、耐久性に富むものにできる。 【0017】さらに、熱膨張率が7.31×10-61/
°KのNbによる強度層と、6.8×10-61/°Kの
Irによる表皮層との接合が、Nb−Irの配分を段階
的に変化させて積層した中間層でなされているので、N
b、Irの熱膨張率の差が緩和され、強度層と表皮層と
を接合する接合部に過大な応力が発生せず、密着性が向
上して、はがれにくくなり、耐久性に富むものにでき
る。 【0018】なお、上述した手段は、通常燃焼室と一体
成形されるスロート、ノズルにも採用して、上述したも
のと同様の作用、効果が得られるものである。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明のロケットエンジン
の実施の一形態を図面にもとづき説明する。図1は、本
発明の実施の第1形態としての、推力が200N程度と
小さく、人工衛星等の軌道変更、又は姿勢制御に使用さ
れる姿勢制御用スラスタエンジン(RCS)用のロケッ
トエンジンの縦断面図である。 【0020】図に示すように、燃焼室1、スロート3お
よびノズル4は、一体化されて燃焼室等5を形成し、さ
らに、燃焼室1の先端部とバルブ一体型噴射器2とは、
フランジ等を設けることなく、直接溶着され、軽量化が
図られている。また、酸化剤としてのNTO、および燃
料としてのMMHは、ともに燃焼室1の軸方向と略平行
に配設された管により導入され、バルブ一体型噴射器2
内に流入し、燃焼室1の軸心部で相互に衝突するように
噴射される。この衝突により着火する、NTO、MMH
からなる自燃性の推進菜は、燃焼室1内で3000℃以
上の燃焼温度で燃焼し、この高温、高圧の燃焼ガスが、
スロート3を通って、ノズル4で加速され外部に高速で
噴出することによって推力を発生させる。 【0021】一方、1体に形成された燃焼室1、スロー
ト3、およびノズル4からなる燃焼室等5の部分模式断
面図である、図2、および図2の矢視A−Aにおける断
面図である図3に示すように、燃焼室等5は、次の5層
で形成されている。 【0022】(1)融点が約2750°Kと高く、しか
も高温強度に優れ、比重が8.57と比較的小さく、熱
膨張率が7.3×10-61/°Kであるニオブ(Nb)
を化学(真空)蒸着(CVD)法で複数回コーティング
して1000μm以上に、積層し、強度が補強された強
度層6。 【0023】(2)強度層6の内周面および外周面のそ
れぞれに、融点が約2730°Kと高く、しかも耐酸化
性に優れ、比重が22.5と比較的大きく、また熱膨張
率が6.8×10-61/°Kであるイリジウム(Ir)
と、前述したNbとを、交互にCVD法でコーティング
することにより、数μmのオーダの厚さに積層し、強度
層6の内周面上および外周面上に、IrとNbの層が、
少くとも2層以上設けられ、Nbで形成される強度層6
と、Irで形成される後述する表皮層8との熱膨張率の
差を補うようにした中間層7。 【0024】(3)中間層7の内周面および外周面に、
IrをCVD法で複数回コーティングして、50μm程
度の厚さに積層し、耐酸化被膜を形成し、Nbで形成さ
れた強度層6に酸化被膜が形成されるのを防止する表皮
層8。 【0025】なお、中間層7を形成するIr、Nbの層
は、中間層7の詳細図である図4に示すように、強度層
6に近い部分の積層はNbの層を厚くするとともに、I
rの層を薄くして、また表皮層8に近い部分の積層はI
rの層が厚く、Nbの層が薄くなるように形成されてい
る。 【0026】次に、この様な5層で形成される燃焼室等
5の形成方法について説明する。まず、アルミニウムA
l型のマンドレル9を燃焼室等5の内面形状に合わせて
加工し、その外周面に、燃焼室等5の内周面を形成する
表皮層8の材料であるIrを50μm程度CVD法でコ
ーティングする。この場合、Irの比重は22.5と大
きいので、必要以上に厚くならないように注意して燃焼
室等5の重量増を防止することが必要である。 【0027】次いで、NbとIrを、数μm程度CVD
法で交互にコーティングし、中間層7を形成する。この
とき、層の増加につれて、図4に示すように徐々にNb
の層を厚く、Irの層を小さくしていく。そして、中間
層7の最小のIrの層の外周面上に、Nbのみの層を1
000μm以上CVD法でコーティングして、強度層6
を形成する。 【0028】次いで、IrとNbを交互にCVD法でコ
ーティングし中間層7を形成する。この強度層6の外周
面側に形成される中間層7は、層の増加につれて、図4
に示すものとは逆に、徐々にNbの層を小さく、Irの
層を大きくしていく。そして、中間層7の最小のNbの
層の上方に、Irのみの層を数十μm程度CVD法でコ
ーティングして、最外周の表皮層8を形成する。最後
に、Al製のマンドレル9を苛性ソーダで除去すれば
内、外面がIrで耐酸化被膜が形成された燃焼室等5と
なる。 【0029】このように、本実施の形態のロケットエン
ジンでは、CVD法でIrをNbに耐酸化コーティング
し、さらに互いの熱膨張率の差を緩和するために、Ir
−Nbの配分を段階的に変化させて接合したので、Ir
とNbとの熱膨張差が緩和され、IrとNbとの接合部
がはがれにくくなり、耐久性が向上する。また、Irの
融点はNbとほぼ同程度であるので、表面温度が約20
00℃程度になるまで使用可能となり、耐熱性に優れた
ものとなり、燃焼室1、スロート3、ノズル4が一体と
なり、再生冷却方式が採用できない、表面温度が200
0℃にもなる輻射冷却方式のロケットエンジンに適用で
きる。 【0030】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のロケット
エンジンによれば、特許請求の範囲に示す構成により、 (1)例えば、NTO、MMHが推薬として使用され、
表面温度が2000℃にもなる輻射冷却方式を採用した
ロケットエンジンにおいても、軽量で、かつ構造強度を
充分保持できる、耐熱性に富むものにできる。 【0031】(2)表面温度が2000℃にもなる輻射
冷却方式のロケットエンジンにおいても使用できる、耐
熱性に富むコーティングにできるとともに、強度層に酸
化被膜を形成し、この酸化被膜の剥離により薄肉化し、
強度低下することのあった、強度層の構造強度の低下が
防止でき、耐久性に富むものにできる。 【0032】(3)さらに、熱膨張率に差のあるNb、
Irの接合(積層)が、Nb−Irの配分を段階的に変
化させて積層した中間層により、Nb、Irの熱膨張率
の差が緩和され、密着性が向上して接合部がはがれにく
くなり、耐久性に富むものにできる。
体の軌道変更、又は姿勢制御に使われる輻射冷却式のロ
ケットエンジンに関する。 【0002】 【従来の技術】図5は、四二酸化窒素(NTO)を酸化
剤とし、モノメチルヒドラジン(MMH)を燃料とする
推薬を使用するようにしたロケットエンジンの断面図で
ある。二液の接触のみで着火する自燃性のNTO、MM
Hを推進薬とするロケットエンジンでは、図に示すよう
に、燃焼室01の軸方向から噴射器02に流入し、噴射
されたNTOと、燃焼室01の径方向から噴射器01に
流入し、噴射されたMMHが直接接触して、着火し、燃
焼室01内で3300°K以上の燃焼温度で燃焼し、こ
の高温、高圧の燃焼ガスが、スロート03を通って、ノ
ズル04から外部に高速で噴出することによって、推力
を発生させるようにしている。 【0003】また、高温の燃焼温度からノズル04、ス
ロート03および燃焼室01(以下併せて燃焼室等とい
う)を保護するために、これらの部材の内部に通路07
を設け、入口管05からMMHを注入して、通路07を
通過させ、冷却するとともに、出口管06から流出する
加熱されたMMH1を、噴射器入口08から噴射器内0
2に注入するようした再生冷却方式を採用している。 【0004】しかしながら、人工衛星等の軌道変更、又
は姿勢制御に使用される姿勢制御用スラスタエンジン
(Reaction Control System:
RCS)用のロケットエンジンでは、推力が200N程
度と小さく、図6に示すように、燃焼室01′、スロー
ト03′、ノズル04′からなる燃焼室等が一体に形成
され、また、噴射器02は推進薬の噴射量を制御するバ
ルブと一体に形成され、さらに噴射器と燃焼室01′と
は、フランジで接合されることなく溶接で一体化され、
軽量化が図られている。 【0005】このため、燃焼室等の冷却には、上述した
再生冷却方式が採用できず、輻射冷却方式が採用されて
いる。また、上述した高温の燃焼温度に耐えるようにす
るため、一体成形される燃焼室等は、冷間加工に耐える
延性を持ち、容易に管等に加工できるとともに、高融点
で、しかも高温強度および高耐食性に優れたニオブ(N
iobium:Nb)が使用されている。しかしなが
ら、Nbは酸化されやすく、融点温度の低い酸化被膜を
形成して、高温雰囲気では容易に剥離し、肉厚が薄肉化
する不具合がある。 【0006】このため、図6に示すように、Nbで形成
された燃焼室等の内、外周面に、二酸化ジルコニウム
(ZrO2 )を溶射09して、耐酸化コーティングを行
ったり、又はシリコンカーバイドSiCを化学蒸着液
(Chemical Vaccum Developm
ent:CVD)法で積層して、耐酸化コーティング、
すなわち、表皮層を形成して、酸化被膜の形成を防止す
ることが行われている。 【0007】(1)しかながら、このようなNbで形成
された燃焼室等の内、外周面に、ZrO2 を溶射して耐
酸化コーティングを形成する方法では、これらの燃焼室
等が使用される2000℃までの表面温度には、充分使
用できる利点はあるものの、耐酸化コーティングが溶射
によって形成されているため、はがれやすく、信頼性に
欠けているという不具合がある。 【0008】(2)また、Nbで形成された燃焼室等の
内、外周面に、SiCをCVD法により積層して耐酸化
コーティングする方法では、CVD法によるコーティン
グのため、はがれにくい利点はあるものの、耐熱性が充
分でなく、1400℃〜1600℃までの表面温度にし
か使用できず、輻射冷却方式の燃焼室等には採用できな
いという不具合がある。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来の輻射冷却方式が採用されるRCS用のロケットエン
ジンの不具合を解消するため、融点は高いが酸化されや
すいNbの表皮層に、Nbと同様に融点が高く、耐酸化
性に優れているIrを採用するとともに、NbとIrの
互いの熱膨張率の差を補うために、NbとIrの積層を
互いの濃度を傾斜させて積層することにより、表皮層が
はがれにくく耐久性に富むとともに、耐熱性を向上させ
たロケットエンジンを提供することを課題とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】このため、本発明のロケ
ットエンジンは、次の手段とした。 【0011】ロケットエンジンを構成する、少くとも燃
焼室の構造部材を次の積層にしたものとした。 【0012】(1)融点が約2750°Kと高く、しか
も高温強度に優れ、比重が8.57と比較的小さいニオ
ブ(Nb)を、化学(真空)蒸着(CVD)法で複数回
コーティングして、積層して、高温強度が補強された強
度層。なお、強度層は化学蒸着法によるコーティング回
数を多くして、望ましくは1000μm程度の厚みの積
層にすることが好ましい。 【0013】(2)強度層の内周面および外周面に、融
点が約2730°Kと高く、しかも耐酸化性に優れ、比
重が22.5と比較的大きいイリジウム(Ir)と、前
述したNbとを、交互にCVD法でコーティングするこ
とにより積層し、強度層の内周面上、および外周面上
に、IrとNbの層が少くとも2層以上設けられ、Nb
で形成される強度層とIrで形成される表皮層との熱膨
張率の差を補うようにした中間層。なお、中間層で積層
されるIr、Nbの層は、数μmのオーダの厚みにされ
るとともに、強度層に近い部分の積層はNbの層が厚
く、Irの層が薄く、また表皮層に近い部分の積層はI
rの層が厚く、Nbの層が薄くなるように形成すること
が好ましい。 【0014】(3)Ir、Nbの層を交互に積層した中
間層の内周面および外周面に、IrをCVD法で複数回
コーティングして、積層し、耐酸化性を補強する表皮
層。なお、外皮層はNbに比較して比重の大きいIrで
形成されることから、50μm程度の厚みにすることが
好ましい。 【0015】本発明のロケットエンジンは、上述の手段
により、輻射冷却方式のロケットエンジンで、高温度の
燃焼ガスにさらされる部材のうち、少くとも、最も高温
になる燃焼室の構造強度材が、Nbを積層した強度層を
採用して形成されているので、例えばNTO、MMHを
推薬とし、表面温度が2000℃にもなるロケットエン
ジンにおいても、軽量で、かつ、高温強度を充分保持で
きる耐熱性に富むものである。 【0016】また、燃焼室の表面に形成される耐酸化被
覆が、Irを採用して積層した表皮層で形成されている
ので、表面温度が2000℃にもなるロケットエンジン
においても、使用でき、耐熱性に富むものにできるとと
もに、酸化被膜を形成し、この酸化被膜の剥離により薄
肉化し、強度低下することのあった強度層の構造強度の
低下が防止でき、耐久性に富むものにできる。 【0017】さらに、熱膨張率が7.31×10-61/
°KのNbによる強度層と、6.8×10-61/°Kの
Irによる表皮層との接合が、Nb−Irの配分を段階
的に変化させて積層した中間層でなされているので、N
b、Irの熱膨張率の差が緩和され、強度層と表皮層と
を接合する接合部に過大な応力が発生せず、密着性が向
上して、はがれにくくなり、耐久性に富むものにでき
る。 【0018】なお、上述した手段は、通常燃焼室と一体
成形されるスロート、ノズルにも採用して、上述したも
のと同様の作用、効果が得られるものである。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明のロケットエンジン
の実施の一形態を図面にもとづき説明する。図1は、本
発明の実施の第1形態としての、推力が200N程度と
小さく、人工衛星等の軌道変更、又は姿勢制御に使用さ
れる姿勢制御用スラスタエンジン(RCS)用のロケッ
トエンジンの縦断面図である。 【0020】図に示すように、燃焼室1、スロート3お
よびノズル4は、一体化されて燃焼室等5を形成し、さ
らに、燃焼室1の先端部とバルブ一体型噴射器2とは、
フランジ等を設けることなく、直接溶着され、軽量化が
図られている。また、酸化剤としてのNTO、および燃
料としてのMMHは、ともに燃焼室1の軸方向と略平行
に配設された管により導入され、バルブ一体型噴射器2
内に流入し、燃焼室1の軸心部で相互に衝突するように
噴射される。この衝突により着火する、NTO、MMH
からなる自燃性の推進菜は、燃焼室1内で3000℃以
上の燃焼温度で燃焼し、この高温、高圧の燃焼ガスが、
スロート3を通って、ノズル4で加速され外部に高速で
噴出することによって推力を発生させる。 【0021】一方、1体に形成された燃焼室1、スロー
ト3、およびノズル4からなる燃焼室等5の部分模式断
面図である、図2、および図2の矢視A−Aにおける断
面図である図3に示すように、燃焼室等5は、次の5層
で形成されている。 【0022】(1)融点が約2750°Kと高く、しか
も高温強度に優れ、比重が8.57と比較的小さく、熱
膨張率が7.3×10-61/°Kであるニオブ(Nb)
を化学(真空)蒸着(CVD)法で複数回コーティング
して1000μm以上に、積層し、強度が補強された強
度層6。 【0023】(2)強度層6の内周面および外周面のそ
れぞれに、融点が約2730°Kと高く、しかも耐酸化
性に優れ、比重が22.5と比較的大きく、また熱膨張
率が6.8×10-61/°Kであるイリジウム(Ir)
と、前述したNbとを、交互にCVD法でコーティング
することにより、数μmのオーダの厚さに積層し、強度
層6の内周面上および外周面上に、IrとNbの層が、
少くとも2層以上設けられ、Nbで形成される強度層6
と、Irで形成される後述する表皮層8との熱膨張率の
差を補うようにした中間層7。 【0024】(3)中間層7の内周面および外周面に、
IrをCVD法で複数回コーティングして、50μm程
度の厚さに積層し、耐酸化被膜を形成し、Nbで形成さ
れた強度層6に酸化被膜が形成されるのを防止する表皮
層8。 【0025】なお、中間層7を形成するIr、Nbの層
は、中間層7の詳細図である図4に示すように、強度層
6に近い部分の積層はNbの層を厚くするとともに、I
rの層を薄くして、また表皮層8に近い部分の積層はI
rの層が厚く、Nbの層が薄くなるように形成されてい
る。 【0026】次に、この様な5層で形成される燃焼室等
5の形成方法について説明する。まず、アルミニウムA
l型のマンドレル9を燃焼室等5の内面形状に合わせて
加工し、その外周面に、燃焼室等5の内周面を形成する
表皮層8の材料であるIrを50μm程度CVD法でコ
ーティングする。この場合、Irの比重は22.5と大
きいので、必要以上に厚くならないように注意して燃焼
室等5の重量増を防止することが必要である。 【0027】次いで、NbとIrを、数μm程度CVD
法で交互にコーティングし、中間層7を形成する。この
とき、層の増加につれて、図4に示すように徐々にNb
の層を厚く、Irの層を小さくしていく。そして、中間
層7の最小のIrの層の外周面上に、Nbのみの層を1
000μm以上CVD法でコーティングして、強度層6
を形成する。 【0028】次いで、IrとNbを交互にCVD法でコ
ーティングし中間層7を形成する。この強度層6の外周
面側に形成される中間層7は、層の増加につれて、図4
に示すものとは逆に、徐々にNbの層を小さく、Irの
層を大きくしていく。そして、中間層7の最小のNbの
層の上方に、Irのみの層を数十μm程度CVD法でコ
ーティングして、最外周の表皮層8を形成する。最後
に、Al製のマンドレル9を苛性ソーダで除去すれば
内、外面がIrで耐酸化被膜が形成された燃焼室等5と
なる。 【0029】このように、本実施の形態のロケットエン
ジンでは、CVD法でIrをNbに耐酸化コーティング
し、さらに互いの熱膨張率の差を緩和するために、Ir
−Nbの配分を段階的に変化させて接合したので、Ir
とNbとの熱膨張差が緩和され、IrとNbとの接合部
がはがれにくくなり、耐久性が向上する。また、Irの
融点はNbとほぼ同程度であるので、表面温度が約20
00℃程度になるまで使用可能となり、耐熱性に優れた
ものとなり、燃焼室1、スロート3、ノズル4が一体と
なり、再生冷却方式が採用できない、表面温度が200
0℃にもなる輻射冷却方式のロケットエンジンに適用で
きる。 【0030】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のロケット
エンジンによれば、特許請求の範囲に示す構成により、 (1)例えば、NTO、MMHが推薬として使用され、
表面温度が2000℃にもなる輻射冷却方式を採用した
ロケットエンジンにおいても、軽量で、かつ構造強度を
充分保持できる、耐熱性に富むものにできる。 【0031】(2)表面温度が2000℃にもなる輻射
冷却方式のロケットエンジンにおいても使用できる、耐
熱性に富むコーティングにできるとともに、強度層に酸
化被膜を形成し、この酸化被膜の剥離により薄肉化し、
強度低下することのあった、強度層の構造強度の低下が
防止でき、耐久性に富むものにできる。 【0032】(3)さらに、熱膨張率に差のあるNb、
Irの接合(積層)が、Nb−Irの配分を段階的に変
化させて積層した中間層により、Nb、Irの熱膨張率
の差が緩和され、密着性が向上して接合部がはがれにく
くなり、耐久性に富むものにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロケットエンジンの実施の第1形態を
示す縦断面図、 【図2】図1に示す実施の形態の燃焼室、スロートおよ
びノズルの部分模式断面図、 【図3】図2に示す矢視A−Aにおける断面図、 【図4】図3に示す中間層の詳細断面図、 【図5】再生冷却方式のロケットエンジン、 【図6】従来の輻射冷却方式のロケットエンジンの部分
縦断面図である。 【符号の説明】 1 燃焼室 2 噴射器 3 スロート 4 ノズル 5 燃焼室等 6 強度層 7 中間層 8 表皮層 9 マンドレル
示す縦断面図、 【図2】図1に示す実施の形態の燃焼室、スロートおよ
びノズルの部分模式断面図、 【図3】図2に示す矢視A−Aにおける断面図、 【図4】図3に示す中間層の詳細断面図、 【図5】再生冷却方式のロケットエンジン、 【図6】従来の輻射冷却方式のロケットエンジンの部分
縦断面図である。 【符号の説明】 1 燃焼室 2 噴射器 3 スロート 4 ノズル 5 燃焼室等 6 強度層 7 中間層 8 表皮層 9 マンドレル
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平4−149082(JP,A)
特開 平6−9269(JP,A)
特開 平6−256926(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
F02K 9/62
B64G 1/26
F02K 9/88
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 飛行体の軌道変更、若しくは姿勢制御に
使用される輻射冷却式のロケットエンジンにおいて、ニ
オブを化学蒸着法で複数回積層して筒状に形成された強
度層と、前記強度層の内周面および外周面に、イリジュ
ムおよび前記ニオブを交互に化学蒸着法で積層して、前
記イリジュムおよび前記ニオブの層を少くとも2層以上
形成した中間層と、前記中間層の内周面および外周面
に、前記イリジュムを化学蒸着法で複数回積層して形成
した表皮層とからなる燃焼室が設けられていることを特
徴とするロケットエンジン。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21365096A JP3382786B2 (ja) | 1996-08-13 | 1996-08-13 | ロケットエンジン |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21365096A JP3382786B2 (ja) | 1996-08-13 | 1996-08-13 | ロケットエンジン |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1054302A JPH1054302A (ja) | 1998-02-24 |
JP3382786B2 true JP3382786B2 (ja) | 2003-03-04 |
Family
ID=16642684
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP21365096A Expired - Fee Related JP3382786B2 (ja) | 1996-08-13 | 1996-08-13 | ロケットエンジン |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3382786B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7553385B2 (en) | 2004-11-23 | 2009-06-30 | United Technologies Corporation | Cold gas dynamic spraying of high strength copper |
DE102006021539A1 (de) * | 2006-05-08 | 2007-11-15 | Eads Space Transportation Gmbh | Verfahren zur Herstellung von Bauteilen für den Raketenbau |
-
1996
- 1996-08-13 JP JP21365096A patent/JP3382786B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1054302A (ja) | 1998-02-24 |
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