JP3381791B2 - 積層型インクジェット記録ヘッドの圧力発生ユニットの製造方法 - Google Patents

積層型インクジェット記録ヘッドの圧力発生ユニットの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ノズル開口に連通する
圧力室の一部領域に圧電振動子を設け、この圧電振動子
により圧力室を圧縮してインク滴を発生させる記録ヘッ
ド、より詳細にはインクを加圧する圧力発生ユニットを
製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】圧力室を構成している振動板の一部領域
に圧電振動板を張設し、圧電振動板の変位により圧力室
の容積を変化させてインク滴を発生させるインクジェッ
ト式記録ヘッドは、圧力室の広い面積を変位させること
が可能なため、インク滴を安定して発生させることがで
きるという特徴を備えている。しかしながら振動板の変
位方向に直角な方向にインク滴を飛翔させるため、記録
用紙の紙面に垂直な方向のサイズが大きくなり、キャリ
ッジ等が大型化するという問題を抱えている。このよう
な問題を解消するために振動板を含む圧力発生部材、及
びインク流路形成部材を積層構造により構成して、振動
板の変位方向に平行にノズル開口を設けて薄型化を図っ
たインクジェット記録ヘッドが提案されている(特開昭
62-111758号公報)。このような積層構造を取ると、小
型化を図れるばかりでなく、プレス加工やエッチング加
工された板材を接着するとい簡単な方法が適用できるた
め、製造工程の簡素化を図ることが可能となる。しかし
ながら、各板材の接着を接着剤に頼っている関係上、微
細な小孔への接着剤の流れ込みによる流路抵抗の変動に
よる信頼性の低下を招いたり、振動板への圧電振動子の
取り付けを、接着剤や、エッチングやレーザー加工に頼
っているため、手間がかかるという問題を抱えている。
このような問題を解消するために半固化状態のセラミッ
ク板を所要の形状に加工して流路部材と、圧電振動子を
形成し、これらを積層して焼成することにより、圧電振
動子の取り付け作業を不要としたインクジェット記録ヘ
ッドも提案されている(特開昭63-149159号公報)。し
かしながら、これは前述したように振動板の変位方向に
直角な方向にノズル開口を設けたもので、記録ヘッドの
薄型化するためには適用できない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこれらの問題
に鑑みてなされたものであって、その目的とするところ
は、流路を形成する部材や圧電振動子の接着作業をなく
して製造工程の簡素化を図ることができる薄型のインク
ジェット式記録ヘッドに適した圧力発生ユニットの製造
方法を提案することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような問題を解消す
るために本発明においては、表面に圧電振動子が圧力室
に対応して形成される振動部材となるセラミックのグリ
ーンシートからなる第1の板材と、前記圧力室を形成す
る複数の通孔を有するセラミックのグリーンシートから
なる圧力室形成部材と、リザーバと前記圧力室との流路
を形成する通孔及び前記圧力室とノズル開口とを接続す
る通孔を有するセラミックのグリーンシートからなる第
2の板材とを積層して焼成により一体に接合するように
した。
【0005】
【作用】圧力室など加圧流路を形成する複数の板材や圧
電振動子の接合を焼成により達成でき、接着作業を不要
として製造工程の簡素化を図ることができる。
【0006】
【実施例】そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例
に基づいて説明する。図1、2は本発明の一実施例を示
す断面図と、その分解斜視図であって、図中符号1は、
圧力室形成部材で、圧力室を形成するのに適した厚さ、
例えば150μmのジルコニア(ZrO2)などのセラ
ミック板に、図4に拡大して示したように長軸側の端部
が丸く形成された長丸矩形状の圧力室2、2、2‥‥の
形状に一致し、一端が図3に示したようにリザーバ21
に重なり、また他端がノズル開口31に重なる長孔
2’、2’、2’‥‥を一定ピッチで穿設して構成され
ている。4は、圧力室形成部材1の一方の面に固定され
る振動板で、圧力室形成部材1と一体に焼成したとき相
性が良く、しかも弾性率の高い材料、この実施例では圧
力室形成部材と同様に厚さ10μmのジルコニアの薄板
で構成され、これの表面には図4に示したように圧力室
2に対応させて圧電振動子7の駆動信号印加電極5と、
後述する共通電極の引出電極6が設けられている。
【0007】7は、前述の圧電振動子で、駆動信号印加
電極5を覆い、図4に示したように圧力室2の長手方向
の長さとほぼ等しく、また幅が小さなサイズのPZT等
の圧電振動材料の薄板からなり、長手方向を軸とするよ
うに幅方向に湾曲するモードで振動するように構成され
ている。これら圧電振動子7、7、7‥‥、及び引出電
極6の表面は、図5、及び図6に示したように共通電極
8がスパッタリングなどの膜形成法により作り付けられ
ている。この結果、各圧電振動子7は振動板4側が駆動
信号印加電極5に、また表面側が共通電極8に接続され
ることになる。また、圧電振動子7は、図6に見られる
ように駆動信号印加電極5の幅よりも広く、かつ幅方向
の両端からそれぞれ若干W、W’張り出すように形成さ
れている。
【0008】10は、振動板4と協同して圧力室2を形
成する蓋部材で、圧力室形成部材1と一体に焼成したと
き相性が良い材料、この実施例では厚さ150μmのジ
ルコニアの薄板からなり、後述するノズル開口31と圧
力室2を接続する通孔11と、リザーバ21と圧力室2
を接続する通孔12を穿設して構成されている。これら
各部材1、4、10は、それぞれ一体に固定されて圧力
発生ユニット15としてまとめ上げられている。
【0009】20は、流路ユニット35を構成するリザ
ーバ形成部材で、インク流路を構成するに適した例えば
150μmのステンレス鋼などの耐蝕性を備えた板材
に、リザーバ21を形成する略V字状の通孔21’と、
圧力室2とノズル開口31を結ぶ連通路となる通孔22
を穿設して構成されている。リザーバ21となる通孔2
1’は、インク供給口部材24から各圧力室2、2、2
‥‥の端部に平行に伸びるように構成されている。すな
わち、ノズル開口列を2列備える本実施例においては、
インク供給口部材24を先端として「V」字状に分岐し
て、各枝から圧力室2、2、2‥‥に至る直線状の流路
が構成されている。
【0010】26は、前述のリザーバ形成部材20の一
方に固定されるインク供給部材で、圧力室2とノズル開
口31を接続する通孔27や、リザーバ21と圧力室2
とを接続する通孔2を穿設するとともに、図示しないイ
ンクタンクと接続するインク供給口形成部材24を表面
に固定して構成されている。
【0011】30は、スペーサ部材の他方の面に固定さ
れたノズルプレートで、直径40μmのノズル開口を穿
設するのに適した厚さ60μmのステンレス鋼板からな
り、圧力室2に対向する位置にノズル開口31,31‥
‥が設けられている。これら部材20,26,30は、
それぞれ接着剤や溶着等により一体に積層されて流路ユ
ニット35としてまとめ上げられている。そしてこれら
部材20,26,30は金属により構成されているた
め、内部にリザーバ形成用の大きな通孔21’を有する
としても、十分な接着強度を得るための圧力を加えても
食い込みや、変形を生じることがなく、高い精度寸法精
度を維持して層状にまとめあげることができる。
【0012】そしてこれら圧力発生ユニット15と流路
ユニット35は、その対向する面、つまり蓋部材10と
インク供給部材26との接触面に接着剤を塗布して一体
に固定されて記録ヘッドに構成される。これにより、圧
力室2は、蓋部材10の通孔12とインク供給部材26
の通孔28を介してリザーバ21に、及び蓋部材10の
通孔11とインク供給部材26の通孔27とリザーバ形
成部材20の通孔22を介してノズル開口31に接続さ
れることになる。
【0013】図7,図8は、それぞれ本発明の積層型イ
ンクジェット式記録ヘッドの表側、及び裏側の構造を示
すものであって、表側にはノズル開口31,31,31
‥‥が2列一定の間隔を隔てて配列されており、また、
裏面側には流路ユニット35に一体に圧力発生ユニット
15が固定されていて、各圧電振動子7,7,7‥‥に
電気信号を伝達するケーブル37が接続されている。
【0014】この実施例において、圧電振動子7の1つ
に駆動信号を印加すると、圧電振動子7が図9示したよ
うに長手方向を軸とするように幅方向に湾曲し、振動板
4を圧力室側に変形させる。これにより圧力室2の容積
が縮小してここに存在するインクに圧力が印加されるこ
とになる。圧力室2のインクは、蓋部材10の通孔11
からインク供給部材26の通孔27、流路ユニット35
のリザーバ形成部材20の通孔22を通ってノズルプレ
ート30のノズル開口31に移動し、ここからインク滴
となって飛び出す。
【0015】ところで、圧力室2とノズル開口31とを
接続する流路は、蓋部材10、インク供給部材26、及
びリザーバ形成部材20に穿設した通孔11、27、2
2により構成されいて、ノズル開口側の口径が段階的に
小さくなっているため、圧力室の気泡が流路に侵入し難
くなっている。なお、圧力室2のインクは通孔12、2
8を通ってリザーバ21にも流れ込むが、通孔28の口
径が小さいため、インク滴の飛翔に影響を与える程度に
までは圧力の損失はない。
【0016】駆動信号の印加が解除されて圧電振動子7
が元の形状に復帰すると、圧力室2の容積が膨張して圧
力室2に陰圧が生じる。この結果、通孔28,12を通
ってリザーバ21から圧力室2に、消費分に相当するイ
ンクが補給される。また圧力室2に発生した陰圧は、ノ
ズル開口31にも作用するが、ノズル開口31,31,
31‥‥に生じているメニスカスによりインクが圧力室
側に後退するのが阻止されてリザーバ21からのインク
吸引に有効に作用する。
【0017】そして、流路ユニット35と圧力発生ユニ
ット15は、30μm程度の高分子材料製の接着剤の薄
い層を介して接続されているため、温度変化による両ユ
ニットの熱膨張差が生じたとしても、熱膨張差は接着層
により緩衝されてノズルプレートに歪みを生じさせるこ
とがなく、印刷品質の低下が接着層により防止される。
【0018】次に上述した記録ヘッドの製造方法を図1
0に基づいて説明する。焼成したとき圧力室2を形成す
るのに適した厚みを備えたセラミック材料、この実施例
ではジルコニアの粘土状薄板、いわゆるグリーンシート
40に、圧力室を形成すべき位置をプレスにより打ち抜
いて通孔41,41‥‥を穿設した第1のシートを用意
する。同様に蓋部材10を形成するのに適した厚みのジ
ルコニアのグリーンシートにリザーバ21とノズル開口
31との連通孔となる通孔43,44をプレスにより穿
設した第2のシート42を用意する。
【0019】第1のシート40を挟むように第2のシー
ト42と、振動板4に適した厚みのジルコニアのグリー
ンシートからなる第3のシート45とをサンドイッチ状
に積層して、均一な圧力を加えて3枚を粘着させた状態
で乾燥させる。この乾燥工程により3枚のシート40,
42,45が仮接着されて半固化状態となる。ついで温
度、例えば1000°Cで、反りを防止できる程度の圧
力を加えながら焼成する。これにより、各シートがセラ
ミックに変化し、同時に各シートの境界面では焼結作用
により3枚のシートが元から1枚のシートで構成されて
いたかのように一体となる(図10 I)。
【0020】いうまでもなく、圧力室形成部材となる第
1のシート40には圧力室となる通孔41が穿設されて
いるとしても、この通孔41の横幅が極めて小さいた
め、仮接着時に振動板や蓋部材となる第3、第2のシー
ト45、42に無用な変形を起こさせることなく、この
通孔41の部分に適当に圧力が集中して振動板、及び蓋
部材となるシート45、42を第1のシート40に焼結
させる際に寄与し、圧力室の容積を設計基準通りに仕上
げるのに役立つ。
【0021】焼成により各シート40、42、45はそ
れぞれ圧力室形成部材50、蓋部材51、振動板52と
して機能するようになる。この状態で振動板52の表面
に圧力室53の位置と、共通電極引出端子の位置に導電
ペーストを厚膜印刷法により形成して乾燥させる。つい
で圧力室53の形状に合わせて通孔を形成したマスクを
用いて粘土状の圧電材料を厚膜印刷する。振動子構成材
料の焼成に適した状態に乾燥した時点で、圧電振動子及
び電極を焼成するのに適した温度、例えば1000乃至
1200°C程度で全体を加熱する。これにより各圧力
室53に圧電振動子54を形成することができる(図1
0 II)。そして圧電振動子54を形成した段階で、
共通電極引出端子、及び圧電振動子54を覆うように導
電材料の層をスパッタリング等の膜形成手法により形成
すると、振動板、圧力室形成部材、及び蓋部材を同一材
料であたかもブロックとして構成したような圧力発生ユ
ニットが完成する。
【0022】一方、所定の厚みを備えた金属板材に連通
孔27や流路制限孔28に対応する通孔61,62をプ
レスにより穿設したインク供給部材60と、リザーバ2
1や連通孔22となる通孔64,65をプレスにより穿
設したリザーバ形成部材66と、ノズル開口31となる
通孔68をプレスにより穿設したノズルプレート69を
用意し、図11に示したように部材60,66,69間
に,各部材の通孔61,62,64,65,68を塞が
ない程度の接着代を見込んだ通孔70,70,‥‥、7
1、72,72,72‥‥、73を穿設した接着フィル
ム75,76を介装して熱圧着して流路ユニットを構成
する(図10 III)。
【0023】このようにして構成された圧力発生ユニッ
トと流路ユニットとの接合面に図12(イ)したように
一方のユニット、例えば流路ユニットのインク供給部材
60の表面に、接着剤を塗布したり、熱溶着フィルムに
より接着剤層80を形成して(図10 IV)、これに
圧力発生ユニットの蓋部材51を、その通孔56,57
が同心円状に位置するように位置合わせして接合すると
(図10 V)、流路ユニットと圧力発生ユニットとの
間に異種材料間の熱膨張差を吸収する緩衝材となる接着
層81を介した記録ヘッドが完成する。なお、接着剤層
80は、2つの被接合部材から圧力を受けると横に広が
るため、通孔外周に接着剤を塗布しない領域82を設け
て、蓋部材51とインク供給部材60の通孔に流れ込む
のを防止されている。
【0024】この実施例によれば圧力発生部材を金属に
比較して密度の小さなセラミックにより構成しているか
ら、減衰度が大きく隣接する圧電振動子から伝搬してく
る振動を可及的に減衰させることができ、クロストーク
を防止することができる。また、振動により常に変形を
受ける部材が中間に異材を介することなく一体に構成で
きるため、接合不良に起因するインク漏れを確実に防止
することができる。さらには圧力発生ユニットの基体
と、振動発生ユニットを構成するセラミックをそれぞれ
に適した温度で焼成することができるため、信頼性の向
上を図ることができる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、圧
力室など加圧流路を形成する複数の板材や圧電振動子の
接合を焼成により達成でき、接着作業を不要として製造
工程の簡素化を図ることがで
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す分解斜視図である。
【図3】圧力室の相対位置関係を示す図である。
【図4】圧電振動子の取り付け位置を示す図である。
【図5】圧電振動子と各電極との位置関係を示す斜視図
である。
【図6】振動板に取り付けられた圧電振動子の構造を図
5の線A−Aの断面で示す図である。
【図7】本発明の積層型インクジェット記録ヘッドの概
観を示す斜視図である。
【図8】本発明の積層型インクジェット記録ヘッドの裏
面構造を示す斜視図である。
【図9】同図(イ)(ロ)は、同上記録ヘッドのインク
滴発生時の状態を長手方向の断面と、幅方向(線B−
B)の断面とで示す断面図である。
【図10】同図(I)乃至(V)は、それぞれ本発明の
積層型インクジェット記録ヘッドの製造方法を示す図で
ある。
【図11】流路ユニットを構成する各板の接着工程を示
す図である。
【図12】同図(イ)(ロ)は、それぞれ流路ユニット
と圧力発生ユニットとを接着する接着層を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 圧力室を形成するスペーサ部材 2 圧力室となる通孔 4 振動板 5 信号印加電極 6 共通電極引出電極 7 圧電振動子 8 共通電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/045 B41J 2/055 B41J 2/16

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に圧電振動子が圧力室に対応して形
    成される振動部材となるセラミックのグリーンシートか
    らなる第1の板材と、前記圧力室を形成する複数の通孔
    を有するセラミックのグリーンシートからなる圧力室形
    成部材と、リザーバと前記圧力室との流路を形成する通
    孔及び前記圧力室とノズル開口とを接続する通孔を有す
    るセラミックのグリーンシートからなる第2の板材とを
    積層して焼成により一体に接合する積層型インクジェッ
    ト記録ヘッドの圧力発生ユニットの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記焼成の後、導電材料のペースト、及
    び圧電材料を塗布して焼成し、前記圧電振動子を形成
    る工程を含む請求項1に記載の積層型インクジェット記
    録ヘッドの圧力発生ユニットの製造方法。
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