JP3379782B2 - 繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼 - Google Patents

繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ころ軸受あるいは玉軸
受といった転がり軸受の要素部材として用いられる軸受
鋼に関し、とくに繰り返し応力負荷によって転動接触面
下に発生するミクロ組織変化(劣化)に対する遅延特性
に優れた軸受鋼について提案する。 【0002】 【従来の技術】自動車ならびに産業機械等で用いられる
ころがり軸受としては、従来、高炭素クロム軸受鋼(JI
S:SUJ 2)が最も多く使用されている。一般に軸受鋼と
いうのは、転動疲労寿命の長いことが重要な性質の1つ
であるが、この転動疲労寿命に与える要因としては、鋼
中の硬質な非金属介在物の影響が大きいと考えられてい
た。そのため、最近の研究の主流は、鋼中酸素量の低減
を通じて非金属介在物の量, 大きさを制御することによ
って軸受寿命を向上させる方策がとられてきた。 【0003】例えば、軸受の転動疲労寿命の一層の向上
を目指して開発されたものとしては、特開平1−306542
号公報や特開平3−126839号公報などの提案があり、こ
れらは、鋼中の酸化物系非金属介在物の組成, 形状ある
いは分布状態をコントロールする技術である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、非金属
介在物の少ない軸受鋼を製造するには、高価な溶製設備
の設置あるいは従来設備の大幅な改良が必要であり、経
済的な負担が大きいという問題があった。また、本発明
者らが行った最近の研究成果を整理したところによれ
ば、転動寿命を決めている要因としては、従来から一般
に論じられてきた現象;すなわち、熱処理時に生じる
“脱炭層”(低C濃度領域)や上述した“非金属介在
物”の存在以外の要因もあるということが判った。とい
うのは、従来技術の下で単に脱炭層や非金属介在物を減
少させても、軸受の転動疲労寿命、特に、高負荷あるい
は高温といった過酷な条件下での軸受寿命の向上には大
きな効果が得られないことを多く経験したからである。
このことから、特有の軸受寿命を律する他の要因の存在
を確信したのである。 【0005】そこで、本発明者らは、転がり軸受の剥離
の発生原因について調査を行った。その結果、軸受の内
・外輪と転動体との回転接触時に発生する繰り返し剪断
応力により、図1に示すような、転動接触面の下層部分
(表層部)に、帯状の白色生成物と棒状の析出物からな
るミクロ組織変化層が発生し、これが転動回数を増すに
つれて次第に成長し、終いにはこのミクロ組織変化部か
ら疲労剥離が生じて軸受寿命につながることがわかっ
た。さらに、軸受使用環境の苛酷化すなわち,高面圧化
(小型化),使用温度の上昇は、これらミクロ組織変化
が発生するまでの転動回数を短縮し、著しい軸受寿命の
低下につながるということをつきとめた。すなわち、軸
受寿命というのは、従来技術のような、脱炭層や非金属
介在物の制御だけでは不十分であり、例えば、単に非金
属介在物を低減させただけでは、上述した転動接触面下
で発生するミクロ組織変化が発生するまでの時間を遅延
させることはできない。その結果として、軸受寿命の今
まで以上の向上は図り得ないということを知見したので
ある。 【0006】そこで、本発明の目的は、過酷な使用条件
の下での転動疲労寿命特性を向上させるために、高負荷
での軸受使用中に生成が予想されるミクロ組織変化を遅
延させることができ、ひいては軸受寿命の著しい向上を
もたらす軸受鋼を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】さて、本発明者らは、上
述した知見に基づき軸受寿命として新たに“ミクロ組織
変化遅延特性”というものに着目し、それの向上を図る
には、当然そのための新たな合金設計(成分組成)が必
要であり、このことの実現なくして軸受のより一層の寿
命向上は図れないという認識に立って、さらに種々の実
験と検討とを行った。その結果、意外にもAlを適正量添
加すれば、繰り返し応力負荷による転動接触面下に生成
する上述したミクロ組織変化を著しく遅延できることを
見い出し、本発明軸受鋼を開発した。 【0008】すなわち、本発明軸受鋼は、以下の如き要
旨構成を有するものである。 :0.5〜1.5wt%,Al:0.07超〜1.0wt%,O:0.0020w
t%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物から
なる、繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特
性に優れた軸受鋼。 【0009】 【作用】以下に、上記合金設計になる本発明軸受鋼に想
到した背景につき、本発明者らが行った実験結果に基づ
いて説明する。まず、実験に当たり、 SUJ 2 ( C:1.02wt%, Si:0.25wt%, Mn:0.45wt
%, Cr:1.35wt%, Ni:0.0040wt%, O:0.0012wt%)
と、Alを添加した2種の材料 (C:1.00wt%, , Si:0.23wt%, Mn:0.46wt%,
Cr:1.33wt%, O:0.0009wt%, Al:0.080 wt%, N:
0.0042wt%) (C:1.00wt%, , Si:0.20wt%, Mn:0.43wt%,
Cr:1.30wt%, O:0.0008wt%, Al: 0.215wt%, N:
0.0032wt%) についての供試鋼材を作製した。ついで、これらの供試
材を焼ならし、球状化焼ならし、焼入れ焼もどしの各処
理を施したのち、それぞれの供試材から12mmφ×22mmの
円筒型の試験片を作製した。 【0010】次に、これらの試験片をラジアルタイプ型
の転動疲労寿命試験機を用い、ヘルツ最大接触応力:60
kgf/mm2 , 46500 cpm の負荷条件の下で転動疲労寿命の
試験を行った。試験結果は、ワイブル分布確立紙上にプ
ロットし, 材料強度の上昇による転動疲労寿命の向上を
示す数値と見られるB10(10%累積破損確率) と高負荷
転動時の繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化発生を
遅延させることによる転動疲労寿命の向上を示す数値と
見られるB50(50%累積破損確率)とを求めた。 【0011】その結果、表1に示すように、高Al添加材
については、前記B10値についての改善はそれほど大き
くないが、B50値については著しく高い数値を示し、軸
受平均寿命はSUJ 2 に比べてB10値で約2倍、B50値で
約20倍もの改善を示すことが認められた。とくに、Alの
多量添加は高負荷転動中に生成するミクロ組織変化の遅
延特性に対して顕著な効果を示し、その分破損(寿命)
を遅延させることが期待できる。 【0012】 【表1】【0013】図2は、上記実験結果をまとめたものであ
って、非金属介在物に起因する軸受寿命とミクロ組織変
化に起因する寿命の変化との関係を示す模式図である。
この図に明らかなように、従来のように累積破損確率10
%のB10値で示される軸受寿命(以下、これを「B10
動疲労寿命」という)によれば、Alを多量に添加しても
その効果は期待した程には顕れない。しかし、これをB
50値でみると、Al添加の効果は極めて顕著なものとな
り、ミクロ組織変化生成環境の下での軸受寿命を意識す
る限り、かかるB50に優れているという評価は不可欠の
ものであることが判った。 【0014】そこで、本発明においては、繰り返し応力
負荷によるミクロ組織変化遅延特性の改善を図るという
観点から、以下に説明するような成分組成の範囲を決定
した。 【0015】Si:0.05〜0.5wt%,0.5超〜2.5wt% Siは、鋼の溶製時の脱酸剤として用いられる他、基地に
固溶して焼もどし軟化抵抗の増大により焼入れ,焼もど
し後の強度を高めて転動疲労寿命を向上させる元素とし
て有効である。こうした目的の下に添加されるSiの含有
量は、0.05〜0.5wt%の範囲とする。さらに、このSi
は、0.5wt%超を添加すると、繰り返し応力負荷の下で
のミクロ組織変化の遅延をもたらして転動疲労寿命を向
上させる効果がある。しかし、その含有量が2.5wt%を
超えると、その効果が飽和する一方で加工性や靱性を低
下させるので、ミクロ組織変化遅延特性のより一層の向
上のためには、0.5超〜2.5wt%を添加することが有効で
ある。 【0016】 Si:0.05〜0.5 wt%, 0.5 超〜2.5 wt%以下 Siは、鋼の溶製時の脱酸剤として用いられる他、基地に
固溶して焼もどし軟化抵抗の増大により焼入れ, 焼もど
し後の強度を高めて転動疲労寿命を向上させる元素とし
て有効である。こうした目的の下に添加されるSiの含有
量は、0.05〜0.5 wt%の範囲とする。さらに、このSi
は、0.5 %wt%超を添加すると、繰り返し応力負荷の下
でのミクロ組織変化の遅延をもたらして転動疲労寿命を
向上させる効果がある。しかし、その含有量が 2.5wt%
を超えると、その効果が飽和する一方で加工性や靱性を
低下させるので、ミクロ組織変化遅延特性のより一層の
向上のためには、 0.5超〜2.5 wt%を添加することが有
効である。 【0017】Al:0.07超〜1.0 wt% Alは、本発明において最も重要な役割を担っている元素
であり、とりわけ苛酷な繰り返し応力負荷の下での、上
述したミクロ組織変化の遅延を促してこの面における転
動疲労寿命のより一層の向上を図る場合に、欠かせない
成分である。この作用は、Alの単独多量添加でも十分に
効果がある。すなわち、このAlによる上記ミクロ組織変
化の遅延を実現するためには、少なくとも0.07wt%を超
えて含有させることが必要であるが、 1.0wt%を超える
とその効果が飽和する一方で靱性, 加工性を低下させる
ので、このAlは0.07超〜1.0 wt%の範囲に限定した。な
お、このAlは、鋼の溶製時の脱酸剤としても作用し、さ
らにNと結合して結晶粒を微細化し、鋼の靱性向上にも
寄与する。 【0018】O:0.0020wt%以下 Oは、硬質な非金属介在物を形成するので、たとえ他の
成分の制御によって繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化の遅延が得られたとしても、転動疲労寿命の低下を
招くことがあるから、可能なかぎり低いことが望まし
い。しかし、0.0020wt%以下の含有量であれば許容でき
る。 【0019】Mn:0.05〜2.0 wt%, 2.0 超〜5.0 wt% Mnは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用し、鋼の低酸素化
に有効な元素である。また、鋼の焼入れ性を向上させる
ことにより基地マルテンサイトの靱性, 硬度を向上さ
せ、転動疲労寿命の向上に有効に作用する。こうした目
的のためには、0.05〜2.0 wt%の添加があれば十分であ
る。しかし、このMnを、 2.0wt%を超えて添加すること
により、Alと同様に転動時の繰返し応力の負荷によるミ
クロ組織変化を著しく遅延させる効果を有し、転動疲労
寿命を改善する。しかし、5.0 wt%を超える添加では、
多量の残留γが発生して強度ならびに寸法安定性が低下
するため、この目的のためには、 2.0超〜5.0 wt%の範
囲で添加する。 【0020】Cr:0.05〜2.5 wt%, 2.5 超〜8.0 wt% Crは、焼入れ性の向上と安定な炭化物の形成を通じて、
強度の向上ならびに耐摩耗性を向上させ、ひいては転動
疲労寿命を向上させる成分である。この効果を得るため
には、0.05〜2.5 wt%の添加で十分である。さらに、こ
のCrは、 2.5wt%を超えて多量に添加した場合には、繰
返し応力負荷によるミクロ組織変化を遅延せしめて、こ
の面での転動疲労寿命を向上させるのに有効である。そ
して、この目的のためのCr添加の効果は、 8.0wt%を超
えると飽和するのみならず、却って焼入れ時の固溶C量
の低下を招いて強度が低下する。従って、この目的のた
めに添加するときは、 2.5超〜8.0 wt%としなければな
らない。 【0021】Mo:0.05〜0.5 wt%, 0.5 超〜2.0 wt% Moは、残留炭化物の安定化により耐摩耗性を向上させる
元素である。とくに0.05〜0.5 wt%を添加すると、焼入
れ性を増大して焼入れ焼もどし後の強度向上に寄与する
と共に、安定炭化物の析出により、耐摩耗性と転動疲労
寿命とを向上させる。さらにこのMoは、0.5 wt%超とい
う多量を添加すると、転動時のミクロ組織変化を遅らせ
る効果が著しくなり、この面での転動疲労寿命を向上さ
せる。しかし、その量が 2.0wt%を超えると、切削性,
鍛造性を低下させ、コストアップの因ともなるため、こ
の目的のためには 0.5超〜2.0 wt%の範囲内で添加する
ことが必要である。 【0022】Ni:0.05〜1.0 wt%, 1.0 超〜3.0 wt% Niは、焼入れ性の増大により焼入れ焼もどし後の強度を
高め靱性を向上させるとともに、転動疲労寿命を向上さ
せるので、この目的のためには0.05〜1.0 wt%の範囲内
で添加する。さらに、このNiは、 1.0wt%を超えて添加
した場合には、転動時のミクロ組織変化を遅らせ、それ
により転動疲労寿命を向上させる。しかし、この場合で
も3wt%を超えて添加すると、多量の残留γを析出して
強度の低下ならびに寸法安性を害することになる他、コ
ストアップになるため、この作用効果を期待する場合に
は、1.0 超〜3.0 wt%の範囲内で添加することが必要で
ある。 【0023】Cu:0.05〜1.0 wt%, 1.0 超〜2.5 wt% Cuは、焼入れの増大により焼入れ焼もどし後の強度を高
め、転動疲労寿命を向上させるために添加する。この目
的のために添加するときは、0.05〜1.0 wt%の範囲で十
分である。一方、このCuはまた、上記の目的とは別に
1.0%を超えて多量に添加した場合には、繰り返し応力
負荷によるミクロ組織変化を遅らすことによって、転動
転動疲労寿命を著しく向上させることになる。ただし、
その量が 2.5wt%を超えるとこの添加効果が飽和すると
ともに、却って鍛造性の低下を招くことになるため、こ
の目的のためには 1.0超〜2.5 wt%の範囲で添加するこ
とが必要である。 【0024】B:0.0005〜0.01wt% Bは、焼入れ性の増大により焼入れ焼もどし後の強度を
高め、転動疲労寿命を向上させるので、0.0005wt%以上
を添加する。しかしながら、0.01wt%を超えて添加する
と加工性を劣化させるので、0.0005〜0.01wt%の範囲に
限定する。 【0025】 N:0.0005〜0.012 wt%, 0.012 超〜0.05wt% Nは、窒化物形成元素と結合して結晶粒を微細化すると
共に、基地に固溶して焼入れ焼もどし後の強度を高め、
転動疲労寿命を向上させる。この目的のためには0.0005
〜0.012 wt%の範囲内で添加する。また、このNは、0.
012 wt%を超えて添加した場合には、繰り返し応力によ
るミクロ組織変化を遅らせることにより転動疲労寿命を
向上させる。ただし、その量が0.05wt%を超えると、加
工性が低下するため、この目的のためには0.012 超〜0.
05wt%を添加する。 【0026】P≦0.025 wt% Pは、鋼の靱性ならびに転動疲労寿命を低下させること
から可能なかぎり低いことが望ましく、その許容上限は
0.025 wt%である。 【0027】S≦0.025 wt% Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させ
る。しかし、多量に含有させると転動疲労寿命を低下さ
せることから、0.025 wt%を上限としなければならな
い。 【0028】以上、繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化を遅延させることによる転動疲労寿命を改善すると
共に、強度の上昇を通じて転動疲労寿命を改善するため
の主要成分(AlおよびSi, Mn, Cr, Mo, Ni, Cu, B,
N)およびC,P,Sの限定理由について説明したが、
本発明ではさらに、V, Nb, W, Zr, Ta, HfおよびCoの
うちから選ばれるいずれか1種または2種以上を添加す
ることにより、高負荷時の転動疲労寿命を改善させるよ
うにしてもよい。 【0029】上記各元素の好適添加範囲と添加の目的、
上限値、下限値限定の理由につき、表2にまとめて示
す。 【表2】【0030】なお、本発明においては、被削性を改善す
るために、S,Se, Te, REM, Pb,Bi, Ca, Ti, Mg, P,
Sn, As等を添加しても、上述した本発明の目的である繰
り返し応力負荷によるミクロ組織変化による遅延特性を
阻害することはなく、容易に被削性を改善することがで
きるので、必要に応じて添加してもよい。 【0031】 【実施例】表3, 表4, 表5に示す成分組成の鋼を常法
にて溶製し、得られた鋼材につき1240℃で30h の拡散焼
鈍の後に65mmφの棒鋼に圧延した。次いで、焼ならし−
球状化焼なまし−焼入れ−焼もどしの順で熱処理を行
い、ラッピング仕上げにより12mmφ×22mmの円筒型転動
疲労寿命試験片を作製した。そして、上記各試験片につ
いて、軸受平均寿命であるB50転動疲労寿命の試験を行
った。このB50転動疲労寿命試験は、ラジアルタイプの
転動疲労寿命試験機を用いて、ヘルツ最大接触応力:60
0 kgf/mm2 , 繰り返し応力数約46500 cpm の条件で行っ
たものである。試験結果は、ワイブル分布に従うものと
して確率紙上にまとめ、鋼材No.57(従来鋼である Suj
2) の平均寿命 (累積破損確率:50%における、剥離発
生までの総負荷回数) を1として、その他の鋼種のもの
を対比して評価した。その評価結果も、表3、表4、表
5にそれぞれ示した。 【0032】 【表3】【0033】 【表4】【0034】 【表5】【0035】表3,4,5に示す結果から明らかなよう
に、鋼中C量が本発明範囲外である鋼材No.58,鋼中Al
量が本発明範囲外である鋼材No.59,ならびに鋼中O量
が本発明範囲外である鋼材No.60の平均寿命は、いずれ
も従来鋼(鋼材No.57)に比べて低い。これに対し、本
発明鋼である鋼材No.1,2の平均寿命は、従来鋼(鋼
材No.57)に比較して12.7〜13.5倍も優れている。すな
わち、軸受鋼へのAlの添加がミクロ組織変化を著しく遅
延し、その結果転動疲労寿命の向上に有効に作用したこ
とが窺える。 【0036】なかでも、Si, Mn, Cr, Mo, W, V, Zr,
Ta, Hf, Ni, Cu, Co, Nを所定量以上を積極的に加えた
鋼No.15 〜56の場合には、上記平均寿命(B50転動疲労
寿命)は、より一層向上することが確かめられた。 【0037】 【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
基本的には≧0.07%超の高Al含有軸受鋼とすることによ
り、繰り返し応力負荷に伴うミクロ組織変化の遅延をも
たらすことによる転動疲労寿命の向上を達成して、高寿
命の軸受用の鋼を提供することができる。従って、従来
技術の下では不可欠とされていた、より一層の鋼中酸素
量の低減あるいは鋼中に存在する酸化物系非金属介在物
の組成, 形状, ならびにその分布状態をコントロールす
るために必要となる製鋼設備の改良あるいは建設が不必
要である。また、本発明にかかる軸受鋼の開発によっ
て、転がり軸受の小型化ならびに軸受使用温度のより以
上の上昇が可能となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】(a),(b)は、繰り返し応力負荷の下に、
発生するミクロ組織変化のようすを示す金属組織の顕微
鏡写真。 【図2】介在物に起因する軸受寿命とミクロ組織変化に
起因する軸受寿命とに及ぼすMoの影響を示す説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天野 虔一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究本部内 (56)参考文献 特開 昭62−218542(JP,A) 特開 昭62−274055(JP,A) 特開 平3−53021(JP,A) 特公 昭59−29646(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】C:0.5〜1.5wt%,Al:0.07超〜1.0wt
    %,O:0.0020wt%以下を含有し、残部がFeおよび不可
    避的不純物からなる、繰り返し応力負荷によるミクロ組
    織変化の遅延特性に優れた軸受鋼。
JP06914193A 1993-03-05 1993-03-05 繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼 Expired - Fee Related JP3379782B2 (ja)

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