JP3379781B2 - 繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼 - Google Patents

繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼

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JP3379781B2 JP06412293A JP6412293A JP3379781B2 JP 3379781 B2 JP3379781 B2 JP 3379781B2 JP 06412293 A JP06412293 A JP 06412293A JP 6412293 A JP6412293 A JP 6412293A JP 3379781 B2 JP3379781 B2 JP 3379781B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ころ軸受あるいは玉軸
受といった転がり軸受の要素部材として用いられる軸受
鋼に関し、とくに多量のMnとAlとの複合添加によって、
繰り返し応力負荷によって転動接触面下に発生するミク
ロ組織変化(劣化)に対する遅延特性を改善してなる軸
受鋼について提案する。
【0002】
【従来の技術】自動車ならびに産業機械等で用いられる
ころがり軸受としては、従来、高炭素クロム軸受鋼(JI
S:SUJ 2)が最も多く使用されている。一般に軸受鋼と
いうのは、転動疲労寿命の長いことが重要な性質の1つ
であるが、この転動疲労寿命に与える要因としては、鋼
中の硬質な非金属介在物の影響が大きいと考えられてい
た。そのため、最近の研究の主流は、鋼中酸素量の低減
を通じて非金属介在物の量, 大きさを制御することによ
って軸受寿命を向上させる方策がとられてきた。
【0003】例えば、軸受の転動疲労寿命の一層の向上
を目指して開発されたものとしては、特開平1−306542
号公報や特開平3−126839号公報などの提案があり、こ
れらは、鋼中の酸化物系非金属介在物の組成, 形状ある
いは分布状態をコントロールする技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、非金属
介在物の少ない軸受鋼を製造するには、高価な溶製設備
の設置あるいは従来設備の大幅な改良が必要であり、経
済的な負担が大きいという問題があった。また、本発明
者らが行った最近の研究によれば、転動寿命を決めてい
る要因としては、従来から一般に論じられてきた現象;
すなわち、熱処理時に生じる“脱炭層”(低C濃度領
域)や上述した“非金属介在物”の存在以外の要因もあ
るということが判った。というのは、従来技術の下で単
に脱炭層や非金属介在物を減少させても、軸受の転動疲
労寿命, 特に高負荷あるいは高温といった過酷な条件下
での軸受寿命の向上には大きな成果が得られないという
ことを多く経験したからである。このことから、特有の
軸受寿命を律する他の要因の存在を確信したのである。
【0005】そこで、本発明者らは、転がり軸受の剥離
の発生原因について調査を行った。その結果、軸受の内
・外輪と転動体との回転接触時に発生する繰り返し剪断
応力により、転動接触面下層部分(表層部)に、図1
(a) に示すような、帯状の白色生成物と棒状の析出物か
らなるミクロ組織変化層が発生し、これが転動回数を増
すにつれて次第に成長し、終いにはこのミクロ組織変化
部から、図1(b) に示すような疲労剥離が生じて軸受寿
命につながることがわかった。さらに軸受使用環境の過
酷化すなわち, 高面圧化(小型化), 使用温度の上昇
は、これらミクロ組織変化が発生するまでの時間を縮
め、著しい軸受寿命の低下を招くことになるということ
をつきとめた。すなわち、過酷な状況下での軸受寿命
は、従来技術のような、単に脱炭層や非金属介在物を制
御するだけでは不十分である。例えば、単に非金属介在
物を低減させただけでは、上述した転動接触面下で発生
するミクロ組織変化が発生するまでの時間を遅延させる
ことはできない。その結果として、軸受寿命の今まで以
上の向上は図り得ないということを知見したのである。
【0006】そこで、本発明の目的は、過酷な使用条件
の下での軸受使用中に生成が予想されるミクロ組織変化
を遅延させることができ、ひいては軸受寿命の著しい向
上をもたらす軸受鋼を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】さて、本発明者らは、上
述した知見に基づき軸受寿命として新たに“ミクロ組織
変化遅延特性”というものに着目し、それの向上を図る
には、当然そのための新たな合金設計(成分組成)が必
要であり、このことの実現なくして軸受のより一層の寿
命向上は図れないという認識に立って、さらに種々の実
験と検討とを行った。その結果、多量のMnをAlとともに
複合添加すれば、繰り返し応力負荷による転動接触面下
に生成する上述したミクロ組織変化を著しく遅延でき、
ひいては軸受寿命を著しく向上させることができること
を見い出し、本発明軸受鋼を開発した。
【0008】すなわち、本発明軸受鋼は、以下の如き要
旨構成を有するものである。 (1) C:0.5〜1.5wt%,Mn:2.5超〜5.0wt%,Al:0.00
5〜0.07wt%,O:0.0020wt%以下を含有し、残部がFe
および不可避的不純物からなる、繰り返し応力負荷によ
るミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第1発
明)。 (2) C:0.5〜1.5wt%,Mn:2.5超〜5.0wt%,Al:0.00
5〜0.07wt%,O:0.0020wt%以下を含有し、さらにS
i:0.05〜0.5wt%,Cr:0.05〜2.5wt%,Ni:0.05〜1.0
wt%,Mo:0.05〜0.5wt%,Cu:0.05〜1.0wt%,B:0.
0005〜0.01wt%及びN:0.0005〜0.012wt%のうちから
選ばれるいずれか1種または2種以上を含み、残部がFe
および不可避的不純物からなる、繰り返し応力負荷によ
るミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第2発
明)。 (3) C:0.5〜1.5wt%,Mn:2.5超〜5.0wt%,Al:0.00
5〜0.07wt%,O:0.0020wt%以下を含有し、さらに、S
i:0.5超〜2.5wt%,Cr:2.5超〜8.0wt%,Ni:1.0超〜
3.0wt%,Mo:0.5超〜2.0wt%,N:0.012超〜0.050wt
%,V:0.05〜1.0wt%,Nb:0.05〜1.0wt%,W:0.05
〜1.0wt%,Zr:0.02〜0.5wt%,Ta:0.02〜0.5wt%,H
f:0.02〜0.5wt%及びCo:0.05〜1.5wt%のうちから選
ばれるいずれか1種または2種以上を含み、残部がFeお
よび不可避的不純物からなる、繰り返し応力負荷による
ミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第3発
明)。 (4) C:0.5〜1.5wt%,Mn:2.5超〜5.0wt%,Al:0.00
5〜0.07wt%,O:0.0020wt%以下を含有し、さらに
下記I群の成分のうちから選ばれるいずれか1種または
2種以上を含み、さらに、下記II群の成分(ただし、I
群で選択されている元素は除く)のうちから選ばれるい
ずれか1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可
避的不純物からなる、繰り返し応力負荷によるミクロ組
織変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第4発明)。 I群: Si:0.05〜0.5wt%,Cr:0.05〜2.5wt%,Ni:0.
05〜1.0wt%,Mo:0.05〜0.5wt%,Cu:0.05〜1.0wt
%,B:0.0005〜0.01wt%及びN:0.0005〜0.012wt%II群: Si:0.5超〜2.5wt%,Cr:2.5超〜8.0wt%,Ni:
1.0超〜3.0wt%,Mo:0.5超〜2.0wt%,N:0.012超〜
0.050wt%,V:0.05〜1.0wt%,Nb:0.05〜1.0wt%,
W:0.05〜1.0wt%,Zr:0.02〜0.5wt%,Ta:0.02〜0.
5wt%,Hf:0.02〜0.5wt%及びCo:0.05〜1.5wt%
【0009】
【作用】以下に、上記合金設計になる本発明軸受鋼に想
到した背景につき、本発明者らが行った実験結果に基づ
いて説明する。まず、実験に当たり、 SUJ 2 ( C:1.02wt%, Si:0.25wt%, Mn:0.45wt
%, Cr:1.35wt%, Ni:0.0040wt%, O:0.0012wt%)
と、多量のMnとAlを複合添加した2種の材料 (C:1.00wt%, , Si:0.28wt%, Mn:2.20wt%,
Cr:1.30wt%, O:0.0011wt%, Al:0.046 wt%, N:
0.0048wt%) (C:0.96wt%, , Si:0.30wt%, Mn:4.51wt%,
Cr:1.32wt%, O:0/0010wt%, Al:0.042 wt%, N:
0.0051wt%)についての供試鋼材を作製した。ついで、
これらの供試材を焼ならし、球状化焼ならし、焼入れ焼
もどしの各処理を施したのち、それぞれの供試材から12
mmφ×22mmの円筒型の試験片を作製した。
【0010】次に、これらの試験片をラジアルタイプ型
の転動疲労寿命試験機を用い、ヘルツ最大接触応力:60
kgf/mm2 , 46500 cpm の負荷条件の下で転動疲労寿命の
試験を行った。試験結果は、ワイブル分布確立紙上にプ
ロットし, 材料強度の上昇による転動疲労寿命の向上を
示す数値と見られるB10(10%累積破損確率) と高負荷
転動時の繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化発生を
遅延させることによる転動疲労寿命の向上を示す数値と
見られるB50(50%累積破損確率)とを求めた。
【0011】その結果、表1に示すように、高MnとAlの
複合添加材については、前記B10値についての改善はそ
れほど大きくないが、B50値については著しく高い数値
を示し、軸受平均寿命はSUJ 2 に比べてB10値で約4
倍、B50値で約25倍もの改善を示すことが認められた。
とくに、多量のMnとAlとの複合添加は、高負荷転動中に
生成するミクロ組織変化の遅延特性に対して顕著な効果
を示し、その分破損(寿命)を遅延させることが期待で
きる。
【0012】
【表1】
【0013】図2は、上記実験結果をまとめたものであ
って、非金属介在物に起因する軸受寿命とミクロ組織変
化に起因する寿命の変化との関係を示す模式図である。
この図に明らかなように、従来のように累積破損確率10
%のB10値で示される軸受寿命(以下、これを「B10
動疲労寿命」という)によれば、多量のMnをAlとともに
複合添加しただけでは期待した程の効果は得られない。
しかし、これを累積破損確率50%のB50値で示される軸
受寿命(以下、これを「B50転動疲労寿命」という)で
みると、多量のMnをAlとともに複合添加した場合の効果
は極めて顕著なものとなり、ミクロ組織変化生成環境の
下でのB50転動疲労寿命に関する限り、極めて良好であ
ることが判った。
【0014】そこで、本発明においては、繰り返し応力
負荷によるミクロ組織変化遅延特性の改善を図るという
観点から、以下に説明するような成分組成の範囲を決定
した。
【0015】C: 0.5〜1.5 wt% Cは、基地に固溶してマルテンサイトの強化に有効に作
用する元素であり、焼入れ焼もどし後の強度確保と、そ
れによる転動疲労寿命を向上させるために含有させる。
その含有量が0.5 wt%未満ではこうした効果が得られな
い。一方、 1.5wt%超では非削性, 鍛造性が低下するの
で、 0.5〜1.5 wt%の範囲に限定する。
【0016】Si:0.05〜0.5 wt%, 0.5 超〜2.5 wt Siは、鋼の溶製時の脱酸剤として用いられる他、基地に
固溶して焼もどし軟化抵抗の増大により焼入れ, 焼もど
し後の強度を高めて転動疲労寿命を向上させる元素とし
て有効である。こうした目的の下に添加されるSiの含有
量は、0.05〜0.5 wt%の範囲とする。さらに、このSi
は、0.5 wt%超を添加すると、繰り返し応力負荷の下で
のミクロ組織変化の遅延をもたらして転動疲労寿命を向
上させる効果がある。しかし、その含有量が 2.5wt%を
超えると、その効果が飽和する一方で加工性や靱性を低
下させるので、ミクロ組織変化遅延特性のより一層の向
上のためには、 0.5超〜2.5 wt%を添加することが有効
である。
【0017】Mn:2.0 超〜5.0 wt% このMnは、本発明においてAlとともに最も重要な役割を
担っている元素であり、とくに 2.0wt%を超えて多量に
添加することにより、高負荷転動時の繰り返し応力の負
荷の下で、上述したミクロ組織変化の遅延を促して、B
50転動疲労寿命を顕著に改善する。しかし、その量が
5.0wt%を越えるようなあまりに多量の添加では、残留
γが多量に発生して、強度ならびに寸法安定性が低下す
るため、この目的のためには、2.0 超〜5.0 wt%の範囲
で添加する。
【0018】Cr:0.05〜2.5 wt%, 2.5 超〜8.0 wt% Crは、焼入れ性の向上と安定な炭化物の形成を通じて、
強度の向上ならびに耐摩耗性を向上させ、ひいては転動
疲労寿命を向上させる成分である。この効果を得るため
には、0.05〜2.5 wt%の添加で十分である。さらに、こ
のCrは、2.5 wt%を超えて多量に添加した場合には、繰
り返し応力負荷によるミクロ組織変化を遅延せしめて、
この面での転動疲労寿命を向上させるのに有効である。
そして、この目的のためのCr添加の効果は、8.0 wt%を
超えると飽和するのみならず、却って焼入れ時の固溶C
量の低下を招いて強度が低下する。従って、この目的の
ために添加するときは、 2.5超〜8.0 wt%としなければ
ならない。
【0019】Ni:0.05〜1.0 wt%, 1.0 超〜3.0 wt% Niは、焼入れ性の増大により焼入れ焼もどし後の強度を
高め靱性を向上させるとともに、転動疲労寿命を向上さ
せるので、この目的のためには0.05〜1.0 wt%の範囲内
で添加する。さらに、このNiは、 1.0wt%を超えて添加
した場合には、転動時のミクロ組織変化を遅らせ、それ
により転動疲労寿命を向上させる。しかし、この場合で
も3wt%を超えて添加すると、多量の残留γを析出して
強度の低下ならびに寸法安定性を害することになる他、
コストアップになるため、この作用効果を期待する場合
には、1.0 超〜3.0 wt%の範囲内で添加することが必要
である。
【0020】Mo:0.05〜0.5 wt%, 0.5超〜2.0 wt% Moは、残留炭化物の安定化により耐摩耗性を向上させる
元素である。とくに0.05〜0.5 wt%を添加すると、焼入
れ性を増大して焼入れ焼もどし後の強度向上に寄与する
と共に、安定炭化物の析出により、耐摩耗性と転動疲労
寿命とを向上させる。さらにこのMoは、0.5 wt%超とい
う多量を添加すると、転動時のミクロ組織変化を遅らせ
る効果が著しくなり、この面での転動疲労寿命を向上さ
せる。しかし、その量が 2.0wt%を超えると、切削性,
鍛造性を低下させ、コストアップの因ともなるため、こ
の目的のためには 0.5超〜2.0 wt%の範囲内で添加する
ことが必要である。
【0021】Cu:0.05〜1.0 wt% Cuは、焼入れの増大により焼入れ焼もどし後の強度を高
め、転動疲労寿命を向上させるために添加する。この目
的のために添加するときは、0.05〜1.0 wt%の範囲で十
分である。
【0022】B:0.0005〜0.01wt% Bは、焼入れ性の増大により焼入れ焼もどし後の強度を
高め、転動疲労寿命を向上させるので、0.0005wt%以上
を添加する。しかしながら、0.01wt%を超えて添加する
と加工性を劣化させるので、0.0005〜0.01wt%の範囲に
限定する。
【0023】Al:0.005 〜0.07wt% Alは、鋼の溶製時の脱酸剤として用いられると同時に、
鋼中Nと結合して結晶粒を微細化して鋼の靱性向上に寄
与する。また、焼入れ焼もどし後の強度を高めることに
よる転動疲労寿命の向上にあわせ高Mnとの複合添加によ
り、各種の軸受寿命を向上させる作用がある。このよう
な作用のためにAlは、0.005 〜0.07wt%添加することが
有効である。
【0024】 N:0.0005〜0.012 wt%, 0.012 超〜0.05wt% Nは、窒化物形成元素と結合して結晶粒を微細化すると
共に、基地に固溶して焼入れ焼もどし後の強度を高め、
転動疲労寿命を向上させる。この目的のためには0.0005
〜0.012 wt%の範囲内で添加する。また、このNは、0.
012 wt%を超えて添加した場合には、繰り返し応力によ
るミクロ組織変化を遅らせることにより転動疲労寿命を
向上させる。ただし、その量が0.05wt%を超えると、加
工性が低下するため、この目的のためには0.012 超〜0.
05wt%を添加する。
【0025】P≦0.025 wt% Pは、鋼の靱性ならびに転動疲労寿命を低下させること
から可能なかぎり低いことが望ましく、その許容上限は
0.025 wt%である。
【0026】S≦0.025 wt% Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させ
る。しかし、多量に含有させると転動疲労寿命を低下さ
せることから、0.025 wt%を上限としなければならな
い。
【0027】O:0.0020wt%以下 Oは、硬質な非金属介在物を形成するので、たとえ他の
成分の制御によって繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化の遅延が得られたとしても、転動疲労寿命の低下を
招くことがあるから、可能なかぎり低いことが望まし
い。しかし、0.0020wt%以下の含有量であれば許容でき
る。
【0028】以上、繰り返し応力の負荷によって発生す
るミクロ組織変化を遅延させることによる転動疲労寿命
を改善すると共に、強度の上昇を通じて転動疲労寿命を
改善するための主要成分(Mn, AlおよびSi, Cr, Ni, M
o, Cu, B, N)およびC,P,Sの限定理由について
説明したが、本発明ではさらに、W, V, Nb, Zr, Ta,
HfおよびCoのうちから選ばれるいずれか1種または2種
以上を添加することにより、高負荷時の転動疲労寿命を
改善させるようにしてもよい。
【0029】上記各元素の好適添加範囲と添加の目的、
上限値、下限値限定の理由につき、表2にまとめて示
す。
【表2】
【0030】なお、本発明においては、被削性を改善す
るために、さらに、S,Se, Te, REM, Pb, Bi, Ca, Ti,
Mg,P,Sn, As等を添加しても、上述した本発明の目的
である繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化による遅
延特性を阻害することはなく、容易に被削性を改善する
ことができるので、必要に応じて添加してもよい。
【0031】
【実施例】表3, 表4に示す成分組成の鋼を常法にて溶
製し、得られた鋼材につき1240℃で30h の拡散焼鈍の後
に65mmφの棒鋼に圧延した。次いで、焼ならし−球状化
焼なまし−焼入れ−焼もどしの順で熱処理を行い、ラッ
ピング仕上げにより12mmφ×22mmの円筒型転動疲労寿命
試験片を作製した。そして、上記各試験片について、軸
受平均寿命であるB50転動疲労寿命の試験を行った。こ
のB50転動疲労寿命試験は、ラジアルタイプの転動疲労
寿命試験機を用いて、ヘルツ最大接触応力:600 kgf/mm
2 , 繰り返し応力数約46500 cpm の条件で行ったもので
ある。試験結果は、ワイブル分布に従うものとして確率
紙上にまとめ、鋼材No.1 (従来鋼である SUJ2) の平均
寿命 (累積破損確率:50%における、剥離発生までの総
負荷回数) を1として、その他の鋼種のものを対比して
評価した。その評価結果を、表3, 表4にそれぞれ示し
た。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】表3,4に示す結果から明らかなように、
鋼中C量が本発明範囲外である鋼材No.4、鋼中Mn量が
本発明範囲外である鋼材No.5ならびに鋼中O量が本発
明範囲外である鋼材No.2の平均寿命は、いずれも従来
鋼(鋼材No.1)に比べて低い。また、鋼中Al量が本発
明範囲外の少ない量である鋼材No.3の場合、従来鋼に
比べると良い結果を示しているが、それほどでもなく、
Al添加量が不足しているためと思われる。これに対し、
本発明鋼である鋼材No.6,7の平均寿命は、従来鋼
(鋼材No.1)に比較して約6倍も優れている。すなわ
ち、軸受鋼へのMnの添加がミクロ組織変化を著しく遅延
し、その結果転動疲労寿命の向上に有効に作用したこと
が窺える。なかでも、Si,Cr,Ni,Mo,W,V,Nb,Z
r,Ta,Hf,CoおよびNのいずれか少なくとも1種以上
を所定量積極的に加えた鋼No.17〜28の場合には、上記
平均寿命(B50転動疲労寿命)は、より一層向上するこ
とが確かめられた。そして、このことは、強度上昇によ
る寿命改善成分とミクロ組織変化遅延改善成分との複合
添加例を示す鋼材No.33〜39(但し、鋼No.34を除く)の場
合には、一層顕著な効果を示すことが確かめられた。
【0035】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
基本的には2.0 wt%超の高Mn−Al含有軸受鋼とすること
により、繰り返し応力負荷に伴うミクロ組織変化の遅延
をもたらすことによる転動疲労寿命の向上を達成して、
高寿命の軸受用の鋼を提供することができる。従って、
従来技術の下では不可欠とされていた、より一層の鋼中
酸素量の低減あるいは鋼中に存在する酸化物系非金属介
在物の組成, 形状, ならびにその分布状態をコントロー
ルするために必要となる製鋼設備の改良あるいは建設が
不必要である。また、本発明にかかる軸受鋼の開発によ
って、転がり軸受の小型化ならびに軸受使用温度のより
以上の上昇が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】繰り返し応力負荷の下に、発生するミクロ組織
変化の様子を示す金属組織の顕微鏡写真。
【図2】介在物に起因する軸受寿命とミクロ組織変化に
起因する軸受寿命とに及ぼすMnの影響を示す説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天野 虔一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究本部内 (56)参考文献 特開 平3−138332(JP,A) 特開 平3−271319(JP,A) 特開 平3−47947(JP,A) 特開 平2−54739(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.5〜1.5wt%,Mn:2.5超〜5.0wt%,
    Al:0.005〜0.07wt%,O:0.0020wt%以下を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる、繰り返し応力
    負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼。
  2. 【請求項2】C:0.5〜1.5wt%,Mn:2.5超〜5.0wt%,
    Al:0.005〜0.07wt%,O:0.0020wt%以下を含有し、
    さらにSi:0.05〜0.5wt%,Cr:0.05〜2.5wt%,Ni:
    0.05〜1.0wt%,Mo:0.05〜0.5wt%,Cu:0.05〜1.0wt
    %,B:0.0005〜0.01wt%及びN:0.0005〜0.012wt%
    のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
    み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、繰り返し
    応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受
    鋼。
  3. 【請求項3】C:0.5〜1.5wt%,Mn:2.5超〜5.0wt%,
    Al:0.005〜0.07wt%,O:0.0020wt%以下を含有し、
    さらに、Si:0.5超〜2.5wt%,Cr:2.5超〜8.0wt%,N
    i:1.0超〜3.0wt%,Mo:0.5超〜2.0wt%,N:0.012超
    〜0.050wt%,V:0.05〜1.0wt%,Nb:0.05〜1.0wt
    %,W:0.05〜1.0wt%,Zr:0.02〜0.5wt%,Ta:0.02
    〜0.5wt%,Hf:0.02〜0.5wt%及びCo:0.05〜1.5wt%
    のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
    み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、繰り返し
    応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受
    鋼。
  4. 【請求項4】C:0.5〜1.5wt%,Mn:2.5超〜5.0wt%,
    Al:0.005〜0.07wt%,O:0.0020wt%以下を含有し、
    さらに、下記I群の成分のうちから選ばれるいずれか1
    種または2種以上を含み、さらに、下記II群の成分(た
    だし、I群で選択されている元素は除く)のうちから選
    ばれるいずれか1種または2種以上を含み、残部がFeお
    よび不可避的不純物からなる、繰り返し応力負荷による
    ミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼。 I群: Si:0.05〜0.5wt%,Cr:0.05〜2.5wt%,Ni:0.
    05〜1.0wt%,Mo:0.05〜0.5wt%,Cu:0.05〜1.0wt
    %,B:0.0005〜0.01wt%及びN:0.0005〜0.012wt%II群: Si:0.5超〜2.5wt%,Cr:2.5超〜8.0wt%,Ni:
    1.0超〜3.0wt%,Mo:0.5超〜2.0wt%,N:0.012超〜
    0.050wt%,V:0.05〜1.0wt%,Nb:0.05〜1.0wt%,
    W:0.05〜1.0wt%,Zr:0.02〜0.5wt%,Ta:0.02〜0.
    5wt%,Hf:0.02〜0.5wt%及びCo:0.05〜1.5wt%
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