JP3369691B2 - トラップ剤添加有機ホトリフラクティブ材料 - Google Patents

トラップ剤添加有機ホトリフラクティブ材料

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JP3369691B2 JP34459893A JP34459893A JP3369691B2 JP 3369691 B2 JP3369691 B2 JP 3369691B2 JP 34459893 A JP34459893 A JP 34459893A JP 34459893 A JP34459893 A JP 34459893A JP 3369691 B2 JP3369691 B2 JP 3369691B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、並列性に優れた光情報
処理を実現するための光学素子用材料であるホトリフラ
クティブ材料の中で、各種の材料を添加した有機ホトリ
フラクティブ材料及びその製造方法と書込み方法に関す
る。 【0002】 【従来の技術】これまでの有機ホトリフラクティブ材料
としては、有機結晶と高分子のものが知られている。有
機結晶は光の並列処理を行うための大面積化が難しく、
結晶作製の煩雑さなどの問題点を有する。一方、高分子
はこれらの欠点を補うために研究されているが、いずれ
の高分子も厚膜化できないなどの加工性に問題があり、
また、光学的透明性に劣り、回折効率が小さいという欠
点を持っていた。従来の有機ホトリフラクティブ高分子
としては、非線形光学高分子にキャリア輸送剤、キャリ
ア発生剤を分散したもの、例えば、S.デュチャーム、
J.C.スコット、R.J.トゥイーグ、及びW.E.
モーナー(S. Ducharme 、J. C.Scott 、R. J. Twieg
、W. E. Moerner )、フィジカル レビュー レター
ズ(Phys. Rev. Lett.)、第66巻、第1846頁(1
991)、C.A.ウォルシュ(C. A. Walsh)、及び
W.E.モーナー、ジャーナル オブ オプチカル ソ
サィエテイ オブ アメリカ(J. Opt. Soc. Am.) 、
B.第9巻、第1642頁(1992)、J.C.スコ
ット、L.Th. ポートメイヤー(L. Th. Pautmeier) 、
及びW.E.モーナー、ジャーナル オブ オプチカル
ソサィエテイ オブ アメリカ、B.第9巻、第20
59頁(1992)(4−ニトロ−1,2−フェニレン
ジアミンをエポキシでクロスリンクさせた高分子にヒド
ラゾン系キャリア輸送剤を添加)、S.M.シレンス
(S. M. Silence)、C.A.ウォルシュ、J.C.スコ
ット、T.J.マトレイ(T. J. Matray) 、R.J.ト
ゥイーグ、F.ハチェ(F. Hache) 、G.C.ヨークル
ント(G. C. Bjorklund)、及びW.E.モーナー、オプ
チクス レターズ(Opt. Lett.) 、第17巻、第110
7頁(1992)(p−ニトロアニリンをペンダントし
た高分子にヒドラゾン系キャリア輸送剤を添加)、S.
M.シレンス、C.A.ウォルシュ、J.C.スコッ
ト、及びW.E.モーナー、アプライド フィジクス
レターズ(Appl. Phys. Lett.)、第61巻、第2967
頁(1992)(p−ニトロアニリンをペンダントした
高分子にヒドラゾン系キャリア輸送剤、C60を添加)、
J.S.シルドクラウト(J. S. Schildkraut)、アプラ
イド フィジクス レターズ、第58巻、第340頁
(1991)(スチルベン系非線形光学材料をペンダン
トした高分子にアミン系キャリア輸送剤、ペリレン色素
を添加)、Y.キュイ(Y. Cui) 、Y.ザング(Y. Zha
ng) 、P.N.プラサド(P. N. Prasad) 、J.S.シ
ルドクラウト、及びD.J.ウイリアムス(D. J. Will
iams) 、アプライド フィジクス レターズ、第61
巻、第2132頁(1992)(非線形光学高分子にア
ミン系キャリア輸送剤、ボロンジケトネートを添加)、
キャリア輸送高分子に非線形光学材料、キャリア発生剤
を分散したもの、例えば、Y.ザング、Y.キュイ、及
びP.N.プラサド、フィジカル レビュー(Phys. Re
v.) 、B.第46巻、第9900頁(1992)(ポリ
ビニルカルバゾールにジエチルアミノニトロスチルベ
ン、C60を添加)、キャリア輸送・非線形光学性の両方
の性質をもった高分子、例えば、L.リ(L. Li)、J.
Y.リー(J. Y. Lee)、Y.ヤング(Y. Yang)、J.ク
マー(J. Kumar) 、及びS.K.トリパシイ(S. K. Ty
ipathy) 、アプライド フィジクス(Appl. Phys.)、
B.第53巻、第279頁(1991)(ポリビニルシ
ンナメートとアゾ系化合物がクロスリンクした高分
子)、K.タムラ(K. Tamura)ほか、アプライド フィ
ジクス レターズ、第60巻、第1803頁(199
2)(カルバゾール基とトリシアノビニルカルバゾール
基とをもった高分子)であった。しかし、これらの有機
ホトリフラクティブ高分子は加工性に問題があり、厚膜
で大面積試料の作製が難しかった。また、光学特性が悪
く大きなロスが見られた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、加工
性や光学特性に優れ、回折効率の大きな有機ホトリフラ
クティブ材料を提供することにある。また、回折効率が
大きく、応答波長域の広い有機ホトリフラクティブ材料
を提供することにある。また、この材料を利用して情報
記憶をもった有機ホトリフラクティブ材料を提供するこ
とにある。更に、回折効率が大きな有機ホトリフラクテ
ィブ材料の製造方法を提供することにある。更にまた、
従来の方法を改良した有機ホトリフラクティブ材料の書
込み方法、及びその記憶方法を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、
発明は、トラップ剤添加有機ホトリフラクティブ材料に
関する発明であって、干渉縞が照射されたとき、前記干
渉縞の明部分で発生したキャリアが前記干渉縞の暗部ま
で輸送された後トラップされて空間電荷が形成され、前
記空間電荷によって屈折率変化が生じるホトリフラクテ
ィブ材料であって、前記ホトリフラクティブ材料は、キ
ャリア発生剤、キャリア輸送剤、非線形光学材料又は前
記空間電荷によって配向し屈折率変化を引き起こす分子
配向性材料、キャリアトラップ剤、前記キャリアトラッ
プ剤の酸化体、及び高分子マトリックス材料からなり、
前記キャリアトラップ剤と前記酸化体の組み合わせが、
「フェロセン〔略号:Fe(cp) 2 〕とその酸化体フ
ェロセンヘキサフルオロホスフェート{略号:〔Fe
(cp) 2 〕PF 6 }、又はコバルトセン〔略号:Co
(cp) 2 〕とコバルトセンヘキサフルオロホスフェー
ト{略号:〔Co(cp) 2 〕PF 6 }」である事を特徴
とする。 【0005】本発明と従来技術との差異は、下記の通り
である。 【0006】本発明は、成形・加工性がよく取り扱いに
優れた汎用高分子に下記組み合わせを分散させた点が異
なっている。 【0007】すなわち、上記汎用性高分子にキャリア輸
送剤、キャリア発生剤、非線形光学材料を分散させ、さ
らに下記の組み合わせのキャリアトラップ剤、前記キャ
リアトラップ剤の酸化体を分散させたことである。 【0008】なお、上記非線形光学材料の代りに空間電
荷によって配向し屈折率変化を引き起こす分子配向性材
料を分散させてもよい。 【0009】ここで、キャリアトラップ剤、前記キャリ
アトラップ剤の酸化体の組み合わせとは、「フェロセン
〔略号:Fe(cp) 2 〕とその酸化体フェロセンヘキ
サフルオロホスフェート{略号:〔Fe(cp) 2 〕P
6 }」の組み合わせである。 【0010】又は「コバルトセン〔略号:Co(cp)
2 〕とコバルトセンヘキサフルオロホスフェート{略
号:〔Co(cp) 2 〕PF 6 }」の組み合わせでもよ
い。 【0011】ここで、キャリアトラップ剤、前記キャリ
アトラップ剤の酸化体を組み合わせて添加することによ
る効果は以下の通りである。 【0012】すなわち、キャリアトラップ剤、前記キャ
リアトラップ剤の酸化体を組み合わせて添加することに
よって、キャリアを放出した後のキャリア発生剤を安定
化させることができるのである。 【0013】また、上記組み合わせを添加することによ
り、放出されたキャリアとキャリア発生剤との再結合を
抑制することもできるのである。 【0014】これによって、加工性・光学特性に優れ、
大きな回折効率を持つトラップ添加有機ホトリフラクテ
ィブ材料を作製することが可能となった。 【0015】 【実施例】以下、本発明を参考例、及び実施例により更
に具体的に説明するが、本発明はこれら参考例、及び
施例に限定されない。 【0016】参考例1 ホトリフラクティブ材料とは、干渉縞が照射されたとき
の明部分でキャリアが発生し、暗部まで輸送された後に
トラップされ(空間電荷の形成)、この空間電荷によっ
て屈折率変化(電気光学効果)が生じる材料である。こ
のためには有機ホトリフラクティブ高分子中に、キャリ
ア発生剤、キャリア輸送剤、非線形光学材料が存在して
いる必要がある。ここでは、加工・成型性のよいポリ
(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリカーボネ
ート(PC)中に、非線形光学剤材料(NLO):
(S)−(−)−1−(4−ニトロフェニル)−2−ピ
ロリジンメタノール(NPP、10wt%)、(S)−
(−)−N−(5−ニトロ−2−ピリジル)プロリノー
ル(PNP、10wt%)、p−ニトロアニリン(p−N
A、10wt%)又はp−ニトロフェノール(p−NP、
10wt%)、キャリア輸送剤(CTM):ジエチルアミ
ノベンズアルデヒド−ジフェニルヒドラゾン(DEH、
30wt%)、キャリア発生剤(CGL):長鎖アルキル
基をもったスクアリリウム色素(Sq、0.01wt%、
0.1wt%)を分子分散した試料のホトリフラクティブ
効果を以下に示す。各種化合物の構造を下記式(化1)
に示す。 【0017】 【化1】【0018】分散剤と高分子とをクロロホルム中に溶解
した後、キャストし、溶媒を除去し、ITO基板でサン
ドイッチ(スペーサーの膜厚は86μm)し、ガラス転
移点以上(120℃)に加熱・加圧することによって基
板との密着性を向上し、気泡の発生を防いだ加圧成型試
料を得た(2cmφ×86μm)。作製した試料の組成を
下記表1に示す。試料作製後、ガラス転移点以上に加熱
し、2.3×105 V/cmの電界強度でポーリングを行
った。 【0019】図1にはPR1−1における光電導度(印
加電界2.3×105 V/cm2 ,光強度1.2×1014
photons/cm2・ s ) の波長依存性とSqのクロロホルム
中における吸収スペクトルを示す。図1において、横軸
は波長(nm)、縦軸は吸光度(任意単位)又は光電導度
(10-13 S/cm) を表す。図1によれば、明らかにS
qがキャリア発生剤として作用しており、633nmにお
ける光電導度は2.3×10-14 S/cm、量子効率φは
0.1%であった。各試料の633nmにおける光電導度
ρの値を表1に示す。 【0020】電気光学定数(r33)の測定は交流電場印
加における透過型のポッケルスセルを用いて行った。そ
の実験系を図2に示す。偏光面を45°傾けた入射光
(He−Neレーザ、633nm,70mW/cm2 )を入射
角60°で入射し、λ/4板、アナライザーを通して出
射光強度を検出した。外部電場を印加することにより位
相変調することができ、変調された光強度Im は次の式
(数1)及び(数2)によって表すことができる。 【0021】 【数1】Im /IC =(2π/λ)dΔn(sin2 θ
/cosθ) 【0022】 【数2】 Δn=1/2(n3 333−n1 331)V/d 【0023】IC は入射光強度、λは波長、dは膜厚、
θは入射角、n1 、n3 は電場に対して垂直、平行な屈
折率、Vは印加電圧、r33、r31は電気光学定数の垂
直、平行成分である。よって、r33=3r31,n3 =n
1 と仮定すると、下記式(数3): 【0024】 【数3】r33=3λIm cosθ/2π(n3 )VIC
sin2 θ 【0025】となる。EO効果による変調光強度Im
Vに比例して変化することからr33は電界に依存せず一
定となる。各試料のr33定数を表1に示す。これらの分
散材料は、光電導性〔1.4〜6.3×10-14 S/c
m、φ=0.1%(633nm)〕と非線形光学効果〔r
33(pm/V)=0.8〜2.2〕の両方をもった材料であ
り、ホトリフラクティブ効果が得られる。 【0026】 【表1】 表1 有機ホトリフラクティブ高分子の光電導度とr33定数 ──────────────────────────────────── 試 料 NLO ポリマー DEH Sq 1014ρ r33 (wt%) (wt%) (S/cm) (pm/V) ──────────────────────────────────── PR1-1 NPP 10wt% PMMA 30 0.01 2.3 2.2 PR1-2 30 0.1 6.3 1.8 PR1-3 PC 30 0.01 1.4 0.9 PR1-4 30 0.1 5.8 0.8 PR1-5 PNP 10wt% PMMA 30 0.01 2.2 2.6 PR1-6 30 0.1 6.2 2.0 PR1-7 PC 30 0.01 1.2 1.1 PR1-8 30 0.1 5.9 1.1 PR1-9 p-NA 10wt% PMMA 30 0.01 2.5 1.7 PR1-10 30 0.1 6.8 1.5 PR1-11 PC 30 0.01 1.8 0.6 PR1-12 30 0.1 5.5 0.7 PR1-13 p-NP 10wt% PMMA 30 0.01 2.2 1.0 PR1-14 30 0.1 6.9 0.9 PR1-15 PC 30 0.01 1.9 0.8 PR1-16 30 0.1 6.0 0.8 ──────────────────────────────────── 【0027】そこで、ホトリフラクティブ効果の確認を
行うために、位相ずれとホログラフィック格子の大きさ
とを2光波混合法によって測定した。その実験系を図3
に示す。試料に同じ電界をもった2つのビームが照射さ
れるとブラッグ条件が満たされ、屈折率変化と吸収変化
とが混じ合った格子が書込まれる。格子を書込んだ後、
試料台を格子の消える速さより速く格子ベクトルKの方
向に移動させると書込まれた格子に依存して出射光強度
〔I(1) 、I(2) 〕が変化する。移動距離をξとしたと
きの出射光強度の差(I- ) と和(I+ )は以下のよう
に式(数4)〜(数6)で整理できる。 【0028】 【数4】I- (ξ)=I(1) −I(2) =I0 exp(−α0
d/cos θ)〔0−4Psin(φP +2πξ/Λ)〕 【0029】 【数5】I+ (ξ)=I(1) +I(2) =I0 exp(−α0
d/cos θ)〔2−4Acos(φA +2πξ/Λ)〕 【0030】 【数6】 P=πΔnd/λcos θ, A=Δαd/4cos θ 【0031】ここで、I0 は入力光強度、α0 は吸収係
数、dは格子の厚み、θは入射角、φP は屈折率成分の
位相ずれ、φA は吸収成分の位相ずれ、Δnは屈折率変
化量、Δαは吸収係数の変化量、λは波長である。よっ
て、試料台を移動させてその出射光の差と和をとること
によってP、Aの値を測定でき、これから屈折率変化量
(Δn)と吸収係数の変化量(Δα)を決定できる。ま
た、各々の位相からはφP 、φA を求めることができ
る。 【0032】実験の光源としてはHe−Neレーザ(6
33nm,30W/cm2 )を用い、ブラッグ角θ=5°で格
子を書込んだ(干渉縞の周期Λ:3.63μm)。直流
電場を照射面が正極となるように印加し、発生したホー
ルキャリアが暗部に移動できるように試料台を入射角4
5°(35°)に傾けた。格子を書込んだ後(>30
秒)、試料台を格子ベクトルKの方向に10μm/sの
速さで移動させたときのPR1−1における出射光強度
〔I(1) ,I(2) 〕の変化を図4(2.3×105 V/
cm印加時)に示す。約3.6μmの周期で変調されてい
るのが見られ、2光波混合による格子が書込まれている
ことがわかる。図5及び図6には印加電場0と2.3×
105 V/cmのときの差(I- )と和(I+ )を示す。
この差(I- )と式(数4)、和(I+ )と式(数5)
から(Δn、φP )、(Δα、φA)をそれぞれ求める
ことができる。なお、図4において、横軸は時間
(S)、縦軸はシグナル強度(任意単位)を表す。図5
と図6に示すように、PR1−1の差(I- )において
はサイン波がみられ、屈折率変化が観測されている。電
場を印加しない場合は位相ずれが0°で、負の屈折率変
化Δn=−0.2×10-6であり、レーザ光照射で発生
した熱によって起こる高分子の膨張又は分子配向の乱れ
によるものである(熱効果)。対して、この試料に電場
を印加(E=2.3×105 V/cm)した場合は、約9
0°の位相ずれと、より大きな正の屈折率変化Δn=
0.9×10-6が観測された。この屈折率の位相ずれは
試料台を傾けない時(入射角0°)は観測されなかっ
た。よって、この屈折率変化はキャリアに起因したもの
であり、明部で発生したキャリアが電場によって暗部に
移動し、形成された空間電荷によって引き起こすEO効
果である(ホトリフラクティブ効果)。これらの効果は
Sqの濃度を増やしたPR1−2においても同様に観測
され、吸収係数、キャリア発生の増大が屈折率変化(Δ
n)を大きくしている。各試料のΔn、φP 、Δα、φ
A の値を表2及び表3にまとめた。 【0033】以上の効果は、キャリア発生剤、キャリア
輸送剤と非線形光学材料を分散した本参考例1の高分子
に干渉縞を書込むと、外部電場を印加しない場合には熱
効果による格子が、印加すると位相格子と干渉縞との間
に位相ずれの生じたホトリフラクティブ効果による格子
が形成されることを示している。 【0034】そこで、回折効率の測定を行った。回折効
率の測定はホログラフィック格子を書込んだ後、反対側
から入射した読出し光の回折光を検出することによって
行った。図7にその実験系を示す。試料台は2光波混合
のときと同様に入射角が45°(35°)となるように
傾けた。He−Neレーザ(633nm、50mW/cm2)
の書込み光をブラッグ角θ=5°で照射した状態で、読
出し光(3mW/cm2 )を入射した。PR1−2における
電場印加による回折光強度変化を図8に示す。図8にお
いて横軸は時間(S)、縦軸はシグナル強度(任意単
位)を示す。 【0035】電場印加〔電界(E=2.3×105 V/
cm)〕をon/offすることにより回折光の増減がみ
られ、ホトリフラクティブ効果による屈折率変化であ
る。表2及び表3には吸収された光を補正した各試料の
回折効率の値を示す。いずれも、電場印加によって回折
効率は大きくなり、η〜10-6程度の大きな値であっ
た。また、本発明の分散系有機ホトリフラクティブ高分
子は、100μm〜1cmの厚膜で5cm2 の大面積の試料
やコア径10〜50μmのファイバー化した試料(長さ
10m)の作製が可能であった。また、光学特性にも優
れている(<0.5dB/cm)。 【0036】 【表2】 表2 有機ホトリフラクティブ高分子における2光波混合法 の測定結果と回折効率(η) ──────────────────────────────────── 試 料 10-5E 106 Δn φp −Δα φA 106 η (V/cm) (度) (cm-1) (度) ──────────────────────────────────── PR1-1 0 -0.2 0 <0.10 0 0 2.3 0.9 97 <0.10 0 0.10 PR1-2 0 -1.5 -4 0.56 0 0.40 2.3 3.7 120 0.68 0 2.13 PR1-3 0 -0.1 -13 <0.10 0 0 2.3 0.7 99 <0.10 0 0.10 PR1-4 0 -0.8 -5 0.32 0 0.22 2.3 2.9 126 0.44 0 1.32 PR1-5 0 -0.2 0 <0.10 0 0 2.3 1.2 98 <0.10 0 0.12 PR1-6 0 -1.3 -7 0.55 0 0.38 2.3 3.9 126 0.68 0 2.56 PR1-7 0 -0.1 -11 <0.10 0 0 2.3 0.9 109 <0.10 0 0.15 PR1-8 0 -0.8 -7 0.31 0 0.20 2.3 3.2 123 0.47 0 1.52 ──────────────────────────────────── 【0037】 【表3】 表3 有機ホトリフラクティブ高分子における2光波混合法 の測定結果と回折効率(η) ──────────────────────────────────── 試 料 10-5E 106 Δn φp −Δα φA 106 η (V/cm) (度) (cm-1) (度) ──────────────────────────────────── PR1-9 0 -0.3 0 <0.10 0 0 2.3 0.7 96 <0.10 0 0.08 PR1-10 0 -1.2 -2 0.46 0 0.32 2.3 2.7 115 0.58 0 1.11 PR1-11 0 -0.1 -8 <0.10 0 0 2.3 0.5 92 <0.10 0 0.07 PR1-12 0 -0.8 -2 0.37 0 0.21 2.3 1.9 123 0.44 0 0.72 PR1-13 0 -0.1 0 <0.10 0 0 2.3 0.3 98 <0.10 0 0.03 PR1-14 0 -0.8 -1 0.50 0 0.20 2.3 1.7 124 0.61 0 0.90 PR1-15 0 -0.1 -10 <0.10 0 0 2.3 0.2 91 <0.10 0 0.01 PR1-16 0 -0.8 -2 0.31 0 0.11 2.3 1.0 123 0.34 0 0.76 ──────────────────────────────────── 【0038】参考例2 ホトリフラクティブ材料とは、形成された空間電荷によ
って屈折率変化(電気光学効果)が生じる材料であるこ
とから、有機ホトリフラクティブ高分子中に、キャリア
発生剤、キャリア輸送剤、非線形光学材料のほかにキャ
リアトラップ剤が存在するとその効果が増大する。ここ
では、PMMA中に、非線形光学材料:(S)−(−)
−1−(4−ニトロフェニル)−2−ピロリジンメタノ
ール(NPP、10wt%)、キャリア輸送剤:ジエチル
アミノベンズアルデヒド−ジフェニルヒドラゾン(DE
H、30wt%)、キャリア発生剤:長鎖アルキル基をも
ったスクアリリウム色素(Sq、0.1wt%)のほかに
キャリアトラップ剤であるフェロセン〔Fe(cp)
2 、0.1wt%〕又はN,N,N′,N′−テトラメチ
ル−p−フェニレンジアミン(TMPD、0.1wt%)
を分子分散した試料のホトリフラクティブ効果を示す。
トラップ分散剤の構造を下記式(化2)に、試料の組成
を表4に示す 【0039】 【化2】 【0040】サイクリックボルタモグラムの酸化電位の
半波電位(E1/2 )から、添加したFe(cp)2 はキ
ャリア輸送剤であるDEHより0.11eVイオン化電位
が小さく、同様のTMPDは0.39eV小さい。よっ
て、これら添加剤は浅いキャリアトラップとして働く。
光電導度、電気光学定数(r33)、2光波混合及び回折
効率の測定は実施例1と同様の方法で行った。これらの
値を表4に示す。少量(0.1wt%)のトラップ剤添加
がホトリフラクティブ効果を大きくし、また、位相ずれ
を90度近くにする傾向があった。 【0041】以上の効果は、キャリア発生剤、キャリア
輸送剤と非線形光学材料を分散した高分子にキャリアト
ラップ剤を添加することによりホトリフラクティブ効果
の改良が可能であることを示している。 【0042】 【表4】 表4 NPP(10wt%)/DEH(30wt%)/Sq(0.1wt%)にトラップ剤添加における光電導 度、r33定数及び2光波混合法の測定結果(2.3×105 V/cm印加時) ──────────────────────────────────── 試料 Fe(cp)2 TMPD 1014ρ r33 106 Δn φp −Δα φA 10 6 η (wt%) (wt%) (S/cm) (pm/V) (度) (cm-1) (度) ──────────────────────────────────── PR2-1 0.1 0 2.2 1.2 4.2 112 0.55 0 2.82 PR2-2 0 0.1 0.1 1.1 5.1 98 0.35 0 4.51 PR1-2 0 0 6.3 1.8 3.7 120 0.68 0 2.13 ──────────────────────────────────── 【0043】参考例3 ガラス転移点以上の温度でポーリングし、室温に戻して
配向を固定した有機ホトリフラクティブ高分子は、室温
に放置することによって徐々に配向緩和を起こし、非線
形光学性を失う。これらの問題を解決する手段としてガ
ラス転移点が室温より低いホトリフラクティブ高分子を
用いた。この高分子の粘性は小さいことから非線形光学
材料の配向も起こりやすく、大きなr33定数をもつとい
う利点もある。PMMA中に、非線形光学材料:(S)
−(−)−1−(4−ニトロフェニル)−2−ピロリジ
ンメタノール(NPP、xwt%)、キャリア輸送剤:ジ
エチルアミノベンズアルデヒド−ジフェニルヒドラゾン
(DEH、30wt%)、キャリア発生剤:長鎖アルキル
基をもったスクアリリウム色素(Sq、0.01wt%、
0.1wt%)を分子分散した。NPPの添加量とガラス
転移点との関係を図9に示す。図9において、横軸はN
PP添加量(wt%)、縦軸はガラス転移点温度(℃)を
表す。NPPが30wt%以上で室温以下になる。このN
PP30wt%を含む試料(PR3−1、PR3−2)
は、室温、直流電場印加によるポーリングでNPP分子
を配向させることが可能であった。また、比較のために
PC中に分散した試料PR3−3(Tg=80℃)の作
製も行い、100℃でポーリング(E=2.3×105
V/cm)し、室温に戻した。測定した試料の組成を表5
に示す。 【0044】電気光学定数(r33)の測定は直流電場印
加における透過型のポッケルスセルを用いて行った。交
流電場を直流電場に変更した以外は実施例1と同様であ
る。実施例1では、EO効果による変調光強度Im はV
に比例して変化することからr33は電界に依存せず一定
となった。しかし、実験で用いた試料のガラス転移点が
室温より低いことから、直流電場の印加によりNPP分
子の配向も誘起され、r33定数は電界に依存することに
なる。図10にはPR3−2のr33定数の電界依存性を
示す。図10において、横軸は電界(V/cm)を縦軸は
33(pm/V)を表す。 【0045】r33は電界に対して直線的に増加し、分子
配向の効果が含まれたEO効果が観測された。電界強度
E=2.3×105 (V/cm)においてはr33=6.2
(pm/V)の値が得られ、この値はガラス転移点が室温
以上の試料であるPR3−3より大きな値である。よっ
て大きな屈折率変化、回折効率が発現できる。また、ガ
ラス転移点を使用温度近傍以下とした材料を、電場を印
加しながら、すなわちポーリングしながら使用すること
によって、配向緩和の問題も解決された。2光波混合の
測定結果と回折効率の値を表5に示す。ガラス転移点を
下げることによってより大きな回折効率が得られること
を示している。 【0046】 【表5】 【0047】a)x=30wt% *)E=2.3
×105 V/cm 【0048】参考例4 大きなホトリフラクティブ効果をもつためには、大きな
33定数をもつ必要がある。このためには非線形光学材
料が高濃度に汎用高分子に分散できるほどよい。ここで
は非線形光学材料(NPP、p−NA、p−NP)の濃
度を変えてPMMA中〔DEH(30wt%)、Sq
(0.1wt%)〕に分散した系の回折効率を調べた。図
11は非線形光学材料の分散濃度に対する回折効率の値
をプロットしたものである(2.3×105 V/cm印加
時)。図11において、横軸はwt%、縦軸は回折効率
(×10-6)を表す。p−NAは10wt%、p−NPは
30wt%まで汎用高分子へ分散可能であったのに対し
て、自分自身が安定なガラス状態となるNPPは80wt
%まで分散できた。これに伴って回折効率も大きくなっ
ており、ガラス状態になる非線形光学材料の使用がホト
リフラクティブ効果を大きくできることを示している。 【0049】参考例5参考例では、大きなキャリア発生効率を得るために、
キャリア発生剤として微粒子状の有機顔料を用いた。用
いた有機顔料はフタロシアニン顔料(H2Pc、CuP
c、VOPc、TiOPc)、ペリレン顔料(Pe
r)、アゾ顔料(azo)であり、その構造を下記式
(化3)〜(化5)に示す。 【0050】 【化3】 【0051】 【化4】 【0052】 【化5】 【0053】まず、各種有機顔料をジメチルホルムアミ
ド(DMF)中のボールミルによって粉砕・微粒子化し
た後、クロロホルム中に溶解させたポリ(メチルメタク
リレート)(PMMA)と共にエタノールで共沈殿させ
た。これによってPMMA中に微粒子状の有機顔料5wt
%を含む試料を得た。次に、キャリア輸送剤;ジエチル
アミノベンズアルデヒド−ジフェニルヒドラジン(DE
H、30wt%)、非線形光学剤;(S)−(−)−1−
(4−ニトロフェニル)−2−ピロリジンメタノール
(NPP、30wt%)、PMMAをクロロホルムに溶解
させて、溶媒を除去することによって、非線形光学材
料、キャリア輸送剤がPMMAに分子分散した試料を得
た。この2種の試料を適量混合し、ペレットの作製を行
い、ITO基板でサンドイッチ(スペーサーの膜厚は8
6μm)し、100℃に加熱することによって、微粒子
状のキャリア発生剤、分子分散したキャリア輸送剤と非
線形光学材料を含む加圧成型試料を得た(2cmφ×86
μm)。また、CGM、CTMを含む試料とNLOを含
む試料との混合、CGM、NLOを含む試料とCTMを
含む試料との混合でも同様な試料を作製することができ
た。一方、CGM、CTM、NLO及びPMMAを同時
にクロロホルム中に分散、溶解させ、溶媒の除去・ペレ
ット作製・加熱によって作製した試料においても、散乱
の増加がみられたものの同様なホトリフラクティブ効果
を示した。作製した試料の組成を、各試料の633nmに
おける光電導度ρ(印加電界2.3×105 V/cm2
光強度1.2×1014photons/cm2 ・s)、量子効率φの
値及びポッケルスセルを用いて測定した電気光学定数
(r33)の値と共に示す。 【0054】 【表6】 表6 顔料分散有機ホトリフラクティブ高分子の電気電導度とr33定数 ──────────────────────────────────── 試 料* 顔 料 1014ρ φ r33 (S/cm) (%) (pm/V) ──────────────────────────────────── PR1 H2 Pc 5.2 0.3 7.2 PR2 CuPc 6.3 0.4 7.1 PR3 VOPc 8.1 0.5 6.8 PR4 TiOPc 9.1 0.5 6.7 PR5 Per 2.1 0.1 6.9 PR6 azo 2.2 0.1 7.2 ──────────────────────────────────── 【0055】*)NPP 30wt%、DEH 30wt
%、顔料 0.1wt%(PMMA中) 【0056】次に、ホトリフラクティブ効果の確認を行
うために、位相ずれとホログラフィック格子の大きさと
を2光波混合法によって測定した。試料に同じ電界をも
った2つのビームが照射されるとブラッグ条件が満たさ
れ、屈折率変化と吸収変化とが混じり合った格子が書込
まれる。格子を書込んだ後、試料台を格子の消える速さ
より速く格子ベクトルKの方向に移動させると書込まれ
た格子に依存して出射光強度〔I(1) 、I(2) 〕が変化
する。移動距離をξとしたときの出射光強度の差
(I- )と和(I+ )は既述の数式である(数4)〜
(数6)に整理できる。 【0057】実験の光源としてはHe−Neレーザ(6
33nm、30mW/cm2)を用い、ブラッグ角θ=5°で格
子を書込んだ(干渉縞の周期Λ:3.63μm)。直流
電場を照射面が正極となるように印加し、発生したホー
ルキャリアが暗部に移動できるように試料台を入射角4
5°(35°)に傾けた。格子を書込んだ後(>30
秒)、試料台を格子ベクトルの方向に10μm/sの速
さで移動させたときのPR3の出射光強度〔I(1) ,I
(2) 〕の変化を図12(2.3×105 V/cm印加時)
に示す。図12において、横軸は時間(s)、縦軸はシ
グナル強度(任意単位)を表す。約3.6μmの周期で
変調されているのが見られ、2光波混合による格子が書
込まれていることがわかる。図13には印加電場2.3
×105 V/cmのときの差(I- )と和(I+ )を示
す。この差(I- )と式(数4)、和(I+ )と式(数
5)から(Δn、φP )、(Δα、φA )をそれぞれ求
めることができる。図13に示すように、PR3の差
(I- )においてはサイン波がみられ、ホトリフラクテ
ィブ効果による92°の位相ずれと屈折率変化Δn=1
1.0×10-6が観測された。この屈折率変化は電場を
印加しない場合、試料台を傾けない場合(入射角0°)
は観測されない。各試料のΔn、φP 、Δα、φAの値
を表7にまとめた。 【0058】次に、回折効率の測定を行った。回折効率
の測定はホログラフィック格子を書込んだ後、反対側か
ら入射した読み出し光の回折光を検出することによって
行った。試料台は2光波混合のときと同時に入射角が4
5°(35°)となるように傾けた。He−Neレーザ
(633nm、50mW/cm2)の書込み光をブラッグ角θ=
5°で照射した状態で、読み出し光(3mW/cm2)を入射
した。表7には吸収された光を補正した各試料の回折効
率の値を示す。いずれも〜5×10-6程度の大きな回折
効果が得られ、デバイス応用可能な値である。 【0059】 【表7】 表7 有機ホトリフラクティブ高分子における2光波混合法の測定結果 と回折効率(η)*) ─────────────────────────────────── 試 料 106Δn φP −Δα φA 106η (度) (cm-1) (度) ─────────────────────────────────── PR1 8.2 97 <0.10 0 5.2 PR2 9.1 99 <0.10 0 5.5 PR3 11.0 92 <0.10 0 6.0 PR4 12.0 91 <0.10 0 6.5 PR5 5.2 95 <0.10 0 4.2 PR6 5.3 98 <0.10 0 4.3 ─────────────────────────────────── 【0060】*)印加電場 E=2.3×105 V/cm 【0061】また、微粒子状に分散した有機顔料は幅広
い吸収帯をもつことにより、様々な光に応答可能とな
る。図14にはPR3の吸収スペクトルと633nm、7
80nm、900nmの光に対する回折効率を示す。いずれ
もデバイス応用可能な値を示し、使用可能な波長域の広
い有機ホトリフラクティブ材料の作製が可能となった。
なお、図14において、縦軸は吸光度(任意単位)、横
軸は波長(mm)を表す。 【0062】実施例1 本実施例では、大きな回折効率を得るためにキャリアト
ラップ剤のほかにその酸化体を添加した。酸化体はトラ
ップ剤と等しい電子親和力をもつ。添加した化合物はキ
ャリアトラップ剤フェロセン〔Fe(cp)2 〕とその
酸化体フェロセンヘキサフルオロホスフェート{〔Fe
(cp)2 PF6 }、及びコバルトセン〔Co(cp)
2 〕とコバルトセンヘキサフルオロホスフェート{〔C
o(cp)2 PF6 }である。これらの構造を以下に
(化6)〜(化9)として示す。 【0063】 【化6】 【0064】 【化7】 【0065】 【化8】 【0066】 【化9】 【0067】試料は、トラップ剤と酸化体の混合物
(1:1モル比,1wt%)と非線形光学剤(NLO);
(S)−(−)−1−(4−ニトロフェニル)−2−ピ
ロリジンメタノール(NPP、30wt%)、キャリア輸
送剤(CTM);ジエチルアミノベンズアルデヒド−ジ
フェニルヒドラゾン(DEH、30wt%)、キャリア発
生剤(CGL);長鎖アルキル基をもったスクアリリウ
ム色素(Sq、0.01wt%)及びポリ(メチルメタク
リレート)(PMMA)からなる。試料の作製は、これ
ら分散剤とPMMAをアセトニトリル又はクロロホルム
溶液に溶解させ、溶媒除去・粉砕・ペレット作製を行
い、ITO基板でサンドイッチ(スペーサーの膜厚は8
6μm)し、100℃に加熱することによって行った
(2cmφ×86μm)。 【0068】ホトリフラクティブ効果は2光波混合法に
よって測定した。試料に同じ電界をもった2つのビーム
が照射されるとブラッグ条件が満たされ、屈折率変化と
吸収変化とが混じり合った格子が書込まれる。格子を書
込んだ後、試料台を格子の消える速さより速く格子ベク
トルKの方向に移動させると書込まれた格子に依存して
出射光強度〔I(1) 、I(2) 〕が変化する。移動距離を
ξとしたときの出射光強度の差(I- )と和(I+ )は
既述の数式である(数4)〜(数6)のように整理でき
る。 【0069】実験の光源としてHe−Neレーザ(63
3nm、30mW/cm2)を用い、ブラッグ角θ=5°で格子
を書込んだ(干渉縞の周期Λ:3.63μm)。直流電
場を照射面が正極となるように印加し、発生したホール
キャリアが暗部に移動できるように試料台を入射角45
°(35°)に傾けた。格子を書込んだ後(>30
秒)、試料台を格子ベクトルの方向に10μm/sの速
さで移動させた。各試料のΔn、Δαの値を表8にまと
めた。トラップ剤であるFe(cp)2のほかに酸化体
である〔Fe(cp)2 〕PF6 を添加することによっ
て、電界の印加にかかわらずΔn、Δαの増加がみら
れ、トラップ剤だけでなく、その酸化体の添加が有用で
あることを示している。 【0070】次に、回折効率の測定を行った。回折効率
の測定はホログラフィック格子を書込んだ後、反対側か
ら入射した読み出し光の回折光を検出することによって
行った。試料台は2光波混合のときと同時に入射角が4
5°(35°)となるように傾けた。He−Neレーザ
(633nm、50mW/cm2)の書込み光をブラッグ角θ=
5°で照射した状態で、読み出し光(3mW/cm2)を入射
した。表8には吸収された光を補正した各試料の回折効
率ηの値を示す。酸化体の添加により回折効率が大きく
なり、デバイス応用の範囲が広がった。 【0071】 【表8】 表8 キャリアトラップ剤添加有機ホトリフラクティブ高分子における 2光波混合法の測定結果と回折効率(η) ──────────────────────────────────── 試 料 *) トラップ剤 105E 106Δn −Δα 106η (V/cm) (cm-1) ──────────────────────────────────── PR1 Fe(cp)2 0 0.6 <0.10 0.02 2.3 3.6 <0.10 0.12 PR2 Fe(cp)2+[Fe(cp)2]PF6 0 0.9 0.27 0.04 2.3 4.5 0.38 0.22 PR3 Co(cp)2+[Co(cp)2]PF6 0 0.8 0.20 0.03 2.3 4.1 0.31 0.20 ──────────────────────────────────── 【0072】*)NPP;30wt%、DEH;30wt
%、Sq;0.01wt%、トラップ;1wt%(PMMA
中) 【0073】参考例6〜10 ホトリフラクティブ材料とは、干渉縞が照射されたとき
の明部分でキャリアが発生し、暗部まで輸送された後に
トラップされ(空間電荷の形成)、この空間電荷によっ
て屈折率変化(電気光学効果)が生じる材料である。こ
のためには有機ホトリフラクティブ高分子中に、キャリ
ア発生剤(CGM)、キャリア輸送剤(CTM)、非線
形光学材料(NLO)が存在している必要がある。ここ
では、大きな回折効率を得るためには、キャリア輸送
剤、非線形光学材料及びキャリア輸送剤と電荷移動錯体
を形成するアクセプター(化10)とを高分子マトリッ
クスに分散した系のホトリフラクティブ効果を検討し
た。 【0074】 【化10】【0075】作製した有機ホトリフラクティブ材料はキ
ャリア輸送剤;ジエチルアミノベンズアルデヒド−ジフ
ェニルヒドラゾン(DEH、30wt%)、非線形光学
剤;(S)−(−)−1−(4−ニトロフェニル)−2
−ピロリジンメタノール(NPP、30wt%)、アクセ
プター;長鎖アルキル基をもつテトラシアノキノジメタ
ン〔TCNQ(n=1、3、12、15、18)、0.
2wt%〕及びポリ(メチルメタクリレート)(PMM
A)からなり、これらをクロロホルムに溶解させて、溶
媒を除去することによって得られた粉末試料をペレット
状にし、ITO基板でサンドイッチ(スペーサーの膜厚
は86μm)後、100℃に加熱することによって、加
圧成型試料を得た(2cmφ×86μm)。図15には試
料の吸収スペクトルを示す。図15において、横軸は波
長(nm)、縦軸は吸光度(任意単位)を表す。DEHと
TCNQとの電荷移動に基づく幅広い吸収帯が可視領域
(600〜900nm)に見られ、DEHとTCNQとの
電荷移動錯体が形成していることがわかった。 【0076】ホトリフラクティブ効果の確認を行うため
に、位相ずれとホログラフィック格子の大きさとを2光
波混合法によって測定した。実験の光源としてはHe−
Neレーザ(633nm、30mW/cm2) を用い、ブラッグ
角θ=5°で格子を書込んだ(干渉縞の周期Λ:3.6
3μm)。直流電場を照射面が正極となるように印加
し、発生したホールキャリアが暗部に移動できるように
試料台を入射角40°(30°)に傾けた。格子を書込
んだ後(>30秒)、試料台を格子ベクトルの方向に1
0μm/sの速さで移動させると約3.6μmの周期で
出射光強度が変調されているのが見られ、2光波混合に
よる格子が書込まれていることがわかった。この出射光
の差をとることによって屈折率変化量(Δn)を決定で
きる。図16にはこのようにして得られた屈折率変化量
(Δn)の電界依存性を示す。図16において、縦軸は
Δn(×105 )、横軸は電界(V/μm)を表す。電
界が大きくなるに従って屈折率変化量も大きくなり、電
界強度34.9V/μmにおける屈折率変化量は1.1
×10-5(位相ずれ50度)であった。 【0077】次に、回折効率の測定を行った。回折効率
の測定はホログラフィック格子を書込んだ後、反対側か
ら入射した読出し光の回折光を検出することによって行
った。試料台は2光波混合のときと同様に入射角が40
°(30°)となるように傾けた。He−Neレーザ
(633nm、50mW/cm2) の書込み光をブラッグ角θ=
5°で照射した状態で、読出し光(3mW/cm2) を入射し
た。図17には回折効率の電界依存性を示す。図17に
おいて、縦軸は回折効率(×104 )、横軸は電界(V
/μm)を表す。電界強度34.9V/μmにおける回
折効率は3.3×10-4と大きく、デバイス応用可能な
値であった。表9には炭素数の異なるTCNQにおける
結果をまとめた。 【0078】 【表9】 表9 電荷移動錯体有機ホトリフラクティブ高分子における2光波混合 法の測定結果と回折効率(η)*) ──────────────────────────────────── 参考例 n 105 Δn φp −Δα φA 104 η 番号 (度) (cm-1) (度) ──────────────────────────────────── 1 0.8 29 <0.10 0 3.0 3 0.9 33 <0.10 0 2.9 12 1.0 32 <0.10 0 3.2 15 1.1 36 <0.10 0 3.3 10 18 1.1 35 <0.10 0 3.3 ──────────────────────────────────── 【0079】*) 印加電場 E=3.49×105 V/c
m 【0080】また、電荷移動錯体は幅広い吸収帯をもつ
ことにより、様々な光に応答可能となる。図15には6
33nm、780nm、900nmの光に対する回折効率を示
す(n=18)。いずれもデバイス応用可能な値を示
し、使用可能な波長域の広い有機ホトリフラクティブ材
料の作製が可能となった。アクセプターであるTCNQ
(n=0〜18)を、下記式(化11)〜(化13)で
表される各種キャリア輸送剤と組合せた場合もほぼ同様
な値が得られた。 【0081】 【化11】 【0082】 【化12】【0083】 【化13】【0084】参考例11〜13 他のアクセプターであるTCNE、TNF、F−TCN
Qを用いた場合も参考例6〜10とほぼ同様な結果が得
られ、これらの結果を表10に示す。 【0085】 【表10】 表10 電荷移動錯体有機ホトリフラクティブ高分子における2光波混合 法の測定結果と回折効率(η)*) ────────────────────────────────────参考 例 アクセプター 105 Δn φp −Δα φA 104 η 番号 (度) (cm-1) (度) ──────────────────────────────────── 11 TCNE 0.6 25 <0.10 0 1.5 12 TNF 0.5 23 <0.10 0 2.1 13 F−TCNQ 1.0 34 <0.10 0 3.4 ──────────────────────────────────── 【0086】*) 印加電場 E=3.49×105 V/c
m 【0087】これらアクセプターを、他の式(化11)
〜(化13)で表されるキャリア輸送剤と組合せた場合
もほぼ同様な値が得られた。 【0088】参考例14〜19 ホトリフラクティブ材料とは、干渉縞が照射されたとき
の明部分でキャリアが発生し、暗部まで輸送された後に
トラップされ(空間電荷の形成)、この空間電荷によっ
て屈折率変化(電気光学効果)が生じる材料である。こ
のためには有機ホトリフラクティブ高分子中に、キャリ
ア発生剤(CGM)、キャリア輸送剤(CTM)、2次
非線形光学材料(NLO)が存在している必要がある。
ここでは、より大きな回折効率を得るために、2次非線
形光学材料の代りに複屈折の大きな有機材料を分散し、
内部電荷によって分子を配向させて大きな屈折率変化を
引き起こさせた。ここで、分子を配向させるためにはガ
ラス転移点を室温より低くする必要がある。 【0089】作製した有機ホトリフラクティブ材料はキ
ャリア輸送剤;ジエチルアミノベンズアルデヒド−ジフ
ェニルヒドラジン(DEH、30wt%)、アクセプタ
ー;直鎖アルキル基をもったテトラシアノキノジメタン
(TCNQ、0.2wt%)、ポリ(メチルメタクリレー
ト)(PMMA)及び複屈折の大きな有機材料(30wt
%)からなる。複屈折の大きな有機材料の構造を下記式
(化14)に示す。 【0090】 【化14】 【0091】これらをクロロホルム−テトラヒドロフラ
ン(THF)(1:1)に溶解させて、溶媒を除去する
ことによって得られた粉末試料をペレット状にし、IT
O基板でサンドイッチ(スペーサーの膜厚は86μm)
後、100℃に加熱することによって、加圧成型試料を
得た(2cmφ×86μm)。得られた試料のガラス転移
点は18℃であった。 【0092】分子配向を利用したホトリフラクティブ効
果の確認を行うために、位相ずれとホログラフィック格
子の大きさとを2次波混合法によって測定した。実験の
光源としてはHe−Neレーザ(6.33nm、30mW/c
m2) を用い、ブラッグ角θ=5°で格子を書込んだ(干
渉縞の周期Λ:3.63μm)。直流電場を照射面が正
極となるように印加し、発生したホールキャリアが暗部
に移動できるように試料台を入射角40°(30°)に
傾けた。格子を書込んだ後(>30秒)、試料台を格子
ベクトルの方向に10μm/sの速さで移動させると約
3.6μmの周期で出射光強度が変調されているのが見
られ、2光波混合による格子が書込まれていることがわ
かった。この出射光の差をとることによって屈折率変化
量(Δn)と位相ずれ(φp)を決定できる。表11に
はこのようにして得られた屈折率変化量(Δn)と位相
ずれ(φp)の値を示す。 【0093】次に、回折効率の測定を行った。回折効率
の測定はホログラフィック格子を書込んだ後、反対側か
ら入射した読出し光の回折光を検出することによって行
った。試料台は2光波混合のときと同様に入射角が40
°(30°)となるように傾けた。He−Neレーザ
(633nm、50mW/cm2) の書込み光をブラッグ角θ=
5°で照射した状態で、読出し光(3mW/cm2) を入射し
た。表11には各試料の回折効率の値を示す。回折効率
は〜10-4と大きく、デバイス応用可能な値である。 【0094】 【表11】 表11 分子配向を利用した有機ホトリフラクティブ高分子における 2光波混合法の測定結果と回折効率(η)*) ──────────────────────────────────── 参考例 試 料 106 Δn φp −Δα φA 105 η 番号 (度) (cm-1) (度) ──────────────────────────────────── 14 PR1 8.4 97 <0.10 0 5.1 15 PR2 9.4 92 <0.10 0 5.5 16 PR3 12.5 92 <0.10 0 9.0 17 PR4 13.0 91 <0.10 0 7.5 18 PR5 6.2 93 <0.10 0 4.5 19 PR6 5.3 91 <0.10 0 5.3 ──────────────────────────────────── 【0095】*) 印加電場 E=2.3×105 V/cm 【0096】参考例20〜25 分子配向によって屈折率変化を引き起こすホトリフラク
ティブ材料では、ホログラフィック格子を書込みながら
ガラス転移点より低い温度に冷却することによってその
分子配向を保持することができた。よって、これを利用
すれば情報の記憶が可能となる。実験で用いた分散材料
と試料の作製方法は参考例14〜19と同様であった
が、高いガラス転移点を持つように高分子をPMMAか
らポリカーボネート(PC)に変更し、150℃の加熱
によって成膜した。作製した試料膜のガラス転移点はい
ずれも80℃であった。試料を100℃に加熱し、直流
電場を照射面が正極となるように印加した状態で、He
−Neレーザ(633nm、30mW/cm2) の2光波をブラ
ッグ角θ=5°で書込んだ。書込みながら試料の温度を
20℃まで低下させ分子配向を固定させた。十分冷却さ
せた後、1光波のみを照射し、回折された光強度の測定
を行い、回折効率を求めた。PR1〜PR4を分散させ
た場合の回折効率の値を表12に示す。得られた回折効
率は参考例14〜19と同程度であり記憶材料として十
分利用できることが明らかとなった。 【0097】 【表12】 表12 分子配向を利用した有機ホトリフラクティブ高分子に記憶さ せたホログラフィック格子における回折効率(η)*) ────────────────────────────────── 参考例番号 試 料 105 η ────────────────────────────────── 20 PR1 2.1 21 PR2 3.5 22 PR3 5.0 23 PR4 5.5 24 PR5 1.5 25 PR6 2.3 ────────────────────────────────── 【0098】*) 印加電場 E=2.3×105 V/cm
における書込み 【0099】参考例26 ホトリフラクティブ材料とは、干渉縞が照射されたとき
の明部分でキャリアが発生し、暗部まで輸送された後に
トラップされ(空間電荷の形成)、この空間電荷によっ
て屈折率変化(電気光学効果)が生じる材料である。よ
って、有機ホトリフラクティブ高分子は光電導性と電気
光学効果の両方を備えもつ必要がある。ここでは、光電
導性を示すキャリア輸送剤と電気光学効果を示す非線形
光学材料とを含む高分子材料を分解点以上に加熱(熱分
解)して大きなホトリフラクティブ効果を発現させた。 【0100】作製した有機ホトリフラクティブ材料はキ
ャリア輸送剤;ジエチルアミノベンズアルデヒド−ジフ
ェニルヒドラゾン(DEH、50wt%)、非線形光学
剤;(S)−(−)−1−(4−ニトロフェニル)−2
−ピロリジンメタノール(NPP、30wt%)及びポリ
カーボネート(PC、20wt%)〔それぞれ式(化1)
中のNPP、DEH、及びPC〕からなり、これらをク
ロロホルムに溶解させて、溶媒を除去することによって
粉末試料を得た。次にこの粉末試料をペレット状にし、
ITO基板でサンドイッチ(スペーサーの膜厚は86μ
m)後、250℃に加熱することによって、熱分解(分
解点200℃)した加圧成型試料(2cmφ×86μm)
を得た。図18には得られた加圧成型試料の吸収スペク
トルを示す。図18において、縦軸は吸光度(任意単
位)、横軸は波長(nm)を表す。図18から明らかなよ
うに、吸収端が700nm辺りまで広がっており、実験で
使用したHe−Neレーザ(632.8nm)の光を吸収
することができる(T%=83%)。膜のガラス転移点
は30℃以下であった。 【0101】得られた試料の光電導性は、アルミ基板上
の試料膜をコロナ帯電(6kV)し、白色光(200lux)
を照射したときの表面電位減衰から確認した。図19に
はDEH(50wt%)を含むポリカーボネート膜(20
μm)の熱処理(250℃)前後での光減衰曲線を示
す。図19において、縦軸は表面電位(V)、横軸は時
間(s)を表す。熱処理前では光応答が全く見られない
のに対して、熱処理後では光応答が見られ、熱分解膜が
大きな光電導性を有していることが明らかとなった。ま
た、暗電導の増加も観測された。この光減衰曲線から、
熱分解によって多くのキャリアトラップが形成されてい
ることが判明し、このトラップによって大きな内部電場
の発生が期待できる。 【0102】得られた試料の電気光学効果は図20に示
す直流電場印加における透過型のポッケルスセルを用い
て確認した。偏向面を45°傾けた入射光(He−Ne
レーザ、633nm、70mW/cm2) を入射角60°で入射
し、λ/4板、アナライザーを通した出射光強度を検出
した。もし試料が電気光学効果をもつならば、外部電場
を印加することにより位相変調することができ、変調さ
れた光強度Im と入射光強度Ic の比Im /Ic は電気
光学効果の大きさに比例することになる。図21にはI
m /(Ic ×V)(Vは印加電圧)の印加電場依存性を
示す。図21において、縦軸は上記のIm /Ic V(×
104 )を、横軸は電界(V/μm)を表す。いずれの
電界においても変調されており、電気光学効果を有する
ことが判明した。更にIm /(Ic ×V)が電場に比例
して増加することから、電気光学効果に分子配向の効果
が加わっている。以上のように、熱分解した分散材料
は、光電導性と電気光学効果の両方をもった材料であ
り、ホトリフラクティブ効果が期待できる。 【0103】次に、ホトリフラクティブ効果の確認を行
うために、位相ずれとホログラフィック格子の大きさと
を2光波混合法によって測定した。実験の光源としては
He−Neレーザ(633nm、30mW/cm2) を用い、ブ
ラッグ角5°で格子を書込んだ。直流電場を照射面が正
極となるように印加し、発生したホールキャリアが暗部
に移動できるように試料台を入射角θに傾けた(図2
2)。格子を書込んだ後(>30秒)、試料台を格子ベ
クトルの方向に10μm/sの速さで移動させると出射
光強度が変調されているのが見られ、2光波混合による
格子が書込まれていることがわかった。この出射光の差
をとることによって屈折率変化量(Δn)と位相ずれ
(φp)を決定できる。図23には入射角35°におけ
る屈折率変化量(Δn)の電界依存性を示す。図23に
おいて、縦軸はΔn(×105 )、横軸は電界(V/μ
m)を表す。電界が大きくなるに従って屈折変化量も大
きくなり、電界強度34.9V/μmにおける屈折率変
化量は2.0×10-5であった。また、図24には位相
ずれ(φp)の電界依存性を示す。図24において、縦
軸は位相ずれ(度)、横軸は電界(V/μm)を表す。
10〜30°の位相ずれが見られ、ホトリフラクティブ
効果によって格子が書込まれたことを示している。 【0104】ホトリフラクティブ効果による回折効率
(η)の測定は図25に示す実験系によって行った。試
料台を入射角θとなるように傾けた状態で、ホログラフ
ィック格子を2光波(50mW/cm2) で書込みながら、反
対側から入射した読み出し光の回折光を検出した。図2
6にはθ=35°、読み出し光強度5mW/cm2における回
折効率の電界依存性を示す。図26において、縦軸は回
折効率(×104 )、横軸は電界(V/μm)を表す。
回折効率は電界と共に大きくなり、電界強度34.9V
/μmにおける回折効率は5.4×10-4であった。図
27には電界強度34.9V/μm、読み出し光強度5
mW/cm2における回折効率の入射角(θ)依存性を示す。
図27において、縦軸は回折効率(%)、横軸は入射角
θ(度)を表す。入射角が大きくなるに従って回折光も
大きくなり、電界方向における変調が大きくなってい
る。このことは外部電場によってアシストされたキャリ
ア輸送が屈折率変化に寄与していることを示している。
図28にはθ=60°、電界強度34.9V/μmにお
ける回折効率の読み出し光強度依存性を示す。図28に
おいて、縦軸は回折効率(%)、横軸は読み出しビーム
強度(μW)を表す。読み出し光強度が強くなると回折
効率は小さくなり、読み出し光によって書込んだ格子が
消去されていることがわかる。読み出し光強度50μW
(1.56mW/cm2) のときが最も回折効率が大きく、回
折効率1.1×10-2(1.1%)が得られた。この電
界印加における回折光の応答特性を図29に示す。図2
9において、縦軸は回折効率(%)、横軸は時間(S)
を表す。電界印加後、20秒程度で飽和し、比較的速い
応答が観測され、十分デバイス応用可能な材料であっ
た。 【0105】以上のように、光の干渉縞と位相ずれをも
った位相格子がホトリフラクティブ材料に書込まれるこ
とを示したが、この位相格子によってホトリフラクティ
ブ材料特有の増幅効果が発現する。増幅効果の確認は図
30に示す実験系で行った。ポンプ光強度を30mW/c
m2、シグナル光強度を0.3mW/cm2にした場合のポンプ
光入射によるシグナル光強度変化を図30に示す。図3
0において、縦軸はシグナル(任意単位)を表す。シグ
ナル光はポンプ光を入射することによって増加し(1.
13倍)、このときの増幅係数Γは12.1(cm-1) で
あった。 【0106】参考例27〜40 他のキャリア輸送材料を用いて熱分解させた場合もほぼ
同様な挙動を示し、実施したキャリア輸送剤の構造を既
述の式(化11)〜(化13)に示した。 【0107】また、2光混合法によって得られる屈折率
変化量(Δn)と位相ずれ(φp )、回折効率(η)、
増幅係数(Γ)を表13にまとめた。 【0108】 【表13】 表13 熱分解有機ホトリフラクティブ高分子における2光波混合1)、 回折効率2)及び増幅効果3)の測定結果 ──────────────────────────────────── 参考例 キャリア輸送剤 105Δn φp η Γ 番号 (度) (%) (cm-1) ──────────────────────────────────── 27 A−1 2.3 33 1.2 12.4 28 A−2 2.1 36 1.3 12.6 29 A−3 2.4 40 1.1 13.0 30 A−4 2.2 31 1.4 12.0 31 B−1 1.8 30 0.9 11.1 32 B−2 1.9 33 1.0 12.0 33 B−3 2.0 29 1.0 12.2 34 B−4 1.8 35 1.2 10.9 35 B−5 2.1 30 1.1 11.5 36 C−1 1.9 44 0.9 11.2 37 C−2 1.3 50 0.7 10.0 38 C−3 2.0 39 1.0 12.2 39 C−4 2.1 41 1.3 12.4 40 C−5 1.9 36 1.1 12.1 ──────────────────────────────────── 【0109】1) 印加電場 E=34.9V/μm、θ
=35°、書込み光30mW/cm2 2) 印加電場 E=34.9V/μm、θ=60°、書
込み光50mW/cm2、読み出し光1.56mW/cm2 3) ポンプ光30mW/cm2、シグナル光0.3mW/cm2 【0110】 【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
る加工性がよく、光学特性に優れるトラップ剤添加有機
ホトリフラクティブ材料は、これまでの無機ホトリフラ
クティブ結晶に代って、現像不要・書換え可能な実時間
ホログラムとして応用される。また、本発明のように、
キャリアトラップ剤を添加することによって、キャリア
を放出した後のキャリア発生剤を安定化させ、放出した
キャリアとキャリア発生剤との再結合を抑制する。した
がって、干渉縞照射によって最終的に形成される空間電
場が安定化される
【図面の簡単な説明】 【図1】PR1−1の光電導度の波長依存性とSqの吸
収スペクトルを示す図である。 【図2】電気光学定数(r33)測定器具の構成図であ
る。 【図3】2光波混合法の構成図である。 【図4】2光波混合法の出射光変化(PR1−1)を示
すグラフである。 【図5】印加電場2.3×105 V/cmのときの2光波
混合法における出射光強度の和(I+ )と差(I- )を
示すグラフである。 【図6】印加電場0V/cmのときの2光波混合法におけ
る出射光強度の和(I+ )と差(I- )(PR1−1)
を示すグラフである。 【図7】回折効率測定器具の構成図である。 【図8】電場印加による回折光強度変化(PR1−2)
を示すグラフである。 【図9】NPP添加量とガラス転移点との関係を示すグ
ラフである。 【図10】PR3−2におけるr33定数の電界依存性を
示すグラフである。 【図11】非線形光学材料の分散濃度に対する回折効率
の値をプロットしたグラフである。 【図12】2光波混合法の出射光変化(PR3)を示す
グラフである。 【図13】2光波混合法における出射光強度の和
(I+ )と差(I- )(PR3)を示すグラフである。 【図14】PR3の吸収スペクトルと633nm、780
nm、900nmの光を用いたときの回折効率を示すグラフ
である。 【図15】試料の吸収スペクトルと633nm、780n
m、900nmの光を用いたときの回折効率を示すグラフ
である。 【図16】屈折率変化量(Δn)の電界依存性を示すグ
ラフである。 【図17】回折効率の電界依存性を示すグラフである。 【図18】試料の吸収スペクトルを示すグラフである。 【図19】試料を250℃で熱処理する前後での表面電
位光減衰曲線を示すグラフである。 【図20】電気光学効果の測定のために用いた直流電場
印加における透過型ポッケルスセルの実験系の構成図で
ある。 【図21】電気光学効果の大きさを表すIm /(Ic
V)の印加電場依存性を示すグラフである。 【図22】ホトリフラクティブ効果の確認のために行っ
た2光波混合法の実験系の構成図である。 【図23】屈折率変化量(Δn)の電界依存性を示すグ
ラフである。 【図24】位相ずれ(φp )の電界依存性を示すグラフ
である。 【図25】回折効率測定のための実験系の構成図であ
る。 【図26】回折効率(η)の電界依存性を示すグラフで
ある。 【図27】回折効率(η)の入射角(θ)依存性を示す
グラフである。 【図28】回折効率(η)の読み出し光強度依存性を示
すグラフである。 【図29】回折光の電界印加における応答特性を示すグ
ラフである。 【図30】増幅効果の実験系とポンプ光入射によるシグ
ナル光強度変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 助川 健 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−98166(JP,A) 特開 平6−235809(JP,A) 特開 平5−80687(JP,A) OPTICS LETTERS,1993 年 7月 1日,Vol.18,No. 13,1044−1046 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/361 G02F 1/061 G03H 1/04 JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 干渉縞が照射されたとき、前記干渉縞の
    明部分で発生したキャリアが前記干渉縞の暗部まで輸送
    された後トラップされて空間電荷が形成され、前記空間
    電荷によって屈折率変化が生じるホトリフラクティブ材
    料であって、 前記ホトリフラクティブ材料は、キャリア発生剤、キャ
    リア輸送剤、非線形光学材料又は前記空間電荷によって
    配向し屈折率変化を引き起こす分子配向性材料、キャリ
    アトラップ剤、前記キャリアトラップ剤の酸化体、及び
    高分子マトリックス材料からなり、 前記キャリアトラップ剤と前記酸化体の組み合わせが、
    「フェロセン〔略号:Fe(cp)2〕とその酸化体フ
    ェロセンヘキサフルオロホスフェート{略号:〔Fe
    (cp) 2 〕PF 6 、又はコバルトセン〔略号:Co
    (cp)2〕とコバルトセンヘキサフルオロホスフェー
    {略号:〔Co(cp) 2 〕PF 6 」である事を特徴
    とするトラップ剤添加有機ホトリフラクティブ材料。
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