JP3362066B2 - 高密度粉末焼結チタン合金製内燃機関用バルブスプリングリテーナー及びその製造方法 - Google Patents

高密度粉末焼結チタン合金製内燃機関用バルブスプリングリテーナー及びその製造方法

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JP3362066B2 JP04405593A JP4405593A JP3362066B2 JP 3362066 B2 JP3362066 B2 JP 3362066B2 JP 04405593 A JP04405593 A JP 04405593A JP 4405593 A JP4405593 A JP 4405593A JP 3362066 B2 JP3362066 B2 JP 3362066B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、内燃機関用バルブス
プリングリテーナーに関し、特に、高密度粉末焼結チタ
ン合金製内燃機関用バルブスプリングリテーナー及びそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】バルブ
スプリングリテーナーは、内燃機関例えば自動車エンジ
ンの動弁系に用いられる部品であり、バルブスプリング
を押えつつ、吸気用又は排気用バルブを支える役割を有
している。そして、エンジンの動作状態においては、こ
れらバルブの開閉サイクルが繰り返されることとなる。
【0003】従来、この種のバルブスプリングリテーナ
ーとしては、鉄鋼製のものが一般的に用いられている
が、近時、慣性重量を軽減することにより、エンジンを
高回転化させ、燃費を向上させるという観点から、これ
の軽量化を図る試みがなされている。中でもチタン合金
は軽量であると共に十分な強度を有しているため、この
種のバルブスプリングリテーナーの材料として注目され
ている。
【0004】しかしながら、チタンは難加工性であるた
めであるため、展伸材を冷間鍛造又は切削加工して製造
する方法では、加工費が著しく高くなってしまう。例え
ば、展伸材の丸棒から削り出してバルブスプリングリテ
ーナーを製作すると材料の約1/4を削り取ることとな
り、ネットシェープあるいはニアネットシェープにして
製造する場合に比べて10倍以上の研削費が必要とな
る。このため、チタン合金の展伸材は一部特殊車用に用
いられているに過ぎず、汎用化されていない。
【0005】また、チタン合金粉末を焼結してバルブス
プリングリテーナーを製造する方法も試みられている
が、単に焼結するだけでは高密度化することができず、
実用に供するためにはHIP処理を必要とし、結局コス
トが高くなり、やはり特種用途用に限定されてしまう。
また、粉末焼結品は疲労強度が低いという欠点がある。
【0006】この発明はかかる事情に鑑みてなされたも
のであって、HIPを経ることなく、十分な疲労強度を
有する高密度粉末焼結チタン合金製の内燃機関用バルブ
スプリングリテーナー及びその製造方法を提供すること
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】この発明は、上
記課題を解決するために、第1に、本体と、本体から突
出し、バルブスプリングの付勢力に抗してバルブスプリ
ングを支持するための環状の支持面を有する少なくとも
1つの鍔部とを備え、本体外周面と支持面との間、又は
1の鍔部の外周面と他の鍔部の支持面との間にR部を有
する内燃機関用バルブスプリングリテーナーであって、
粉末焼結による(α+β)型チタン合金からなり、全体
の焼結密度が理論密度の99%以上であり、かつ少なく
とも前記R部近傍の環状部分の密度が理論密度の99.
5%以上であることを特徴とする高密度粉末焼結チタン
合金製内燃機関用バルブスプリングリテーナーを提供す
る。
【0008】また、第2に、チタン粉末と予め合金化さ
れた合金粉末とを混合して混合粉末を作製し、この混合
粉末を成形し、次いで焼結させて、本体と、本体から突
出しバルブスプリングの付勢力に抗してバルブスプリン
グを支持するための環状の支持面を有する少なくとも1
つの鍔部とを備え、本体外周面と支持面との間、又は1
の鍔部の外周面と他の鍔部の支持面との間にR部を有
し、(α+β)型チタン合金からなる内燃機関用バルブ
スプリングリテーナーを製造し、このバルブスプリング
リテーナー全体の焼結密度を理論密度の99%以上と
し、かつ少なくとも前記R部近傍の環状部分の密度を理
論密度の99.5%以上としたことを特徴とする高密度
粉末焼結チタン合金製内燃機関用バルブスプリングリテ
ーナーの製造方法を提供する。
【0009】本願発明者らが粉末焼結法によるチタン合
金のバルブスプリングリテーナーにおいて疲労特性を十
分なものにするために種々検討を重ねた結果、全体を9
9%以上の高密度に維持すると共に、バルブスプリング
リテーナー本体外周面と支持面との間、又は1の鍔部の
外周面と他の鍔部の支持面との間のR部近傍の特定部分
の密度を特に高くすることにより、そのことが達成され
ることを見出した。
【0010】すなわち、本願発明者らがバルブスプリン
グリテーナーの実際の使用条件をシミュレートした応力
解析を行った結果、引張応力がR部近傍の特定部分に集
中しており、全体的に99%の密度を有していてもこの
部分から疲労破壊が生じやすいが、この部分をさらに緻
密化することにより疲労特性が極めて良好になることを
見出したのである。具体的には、リテーナー縦断面をと
った場合において、R部の支持面側から30°の点を中
心にした半径0.1mmの円とR部とで規定される部分
(実際には環状をなしている)に大きな引張応力が集中
し、この部分の密度を99.5%以上にすれば十分な疲
労特性が得られるのである。この発明は本発明者らのこ
のような知見に基づいてなされたものである。以下、こ
の発明について詳細に説明する。
【0011】図1は内燃機関における動弁機構を示すも
のであり、実際のバルブスプリングリテーナーの使用状
況を説明するための図である。シリンダヘッド1には、
吸気管14が形成されており、この吸気管14は吸気バ
ルブ2により開閉される。バルブ2のバルブステム3先
端にはバルブスプリングリテーナー4が固定される。バ
ルブスプリングリテーナー4は、図2の断面図にも示す
ように、先端にテーパが形成された円筒状のリテーナー
本体7と、本体7から突出する第1及び第2の鍔部5,
6とを有しており、第1の鍔部8が外側に、第2の鍔部
9が内側に形成されている。そして、リテーナー4は、
コッタ17を介してバルブ2に取り付けられている。第
1の鍔部5はその図面下側の面が環状の支持面8となっ
ており、これにより外側バルブスプリング10の一端が
支持される。また、第2の鍔部6はその図面下側の面が
環状の支持面9となっており、これにより内側バルブス
プリング11の一端が支持される。そして、第1の鍔部
5の支持面8と第2の鍔部6の外周面との間にはR部2
1が形成されており、第2の鍔部6の支持面9と本体7
の外周面との間にはR部22が形成されている。
【0012】なお、バルブスプリング10,11の下端
はシリンダヘッド1に取り付けられた支持部材15によ
って支持されている。この例では、外側バルブスプリン
グ10は相対的に大きなセット荷重を有し、内側バルブ
スプリング11は相対的に小さなセット荷重を有する。
図中、参照符号12はロッカーアームであり、13はカ
ムシャフト、16は弁座である。
【0013】内燃機関の動作状態においては、カムシャ
フト13及びロッカーアーム12によりバルブ2が下方
に移動することによって、排気管14が開の状態にな
り、続いて、これにより圧縮されたバルブスプリング1
0,11がバルブスプリングリテーナー4を押上げ、こ
れによりバルブ2が上昇して排気管14が閉の状態とな
る。そして、内燃機関の動作中、このようなサイクルが
繰り返されることとなる。
【0014】この発明においては、このようなバルブス
プリングリテーナー4を粉末焼結による(α+β)型チ
タン合金で製造する。そして、リテーナー全体の密度を
理論密度の99%以上とする。これは、99%未満であ
るとその強度自体が不十分となり、疲労特性も著しく劣
るからである。
【0015】さらに、図2に示すR部21の近傍部分、
特に支持面8側から30°の点を中心にした半径0.1
mmの円とR部とで規定される部分、又はR部22の支持
面9側から30°の点を中心にした半径0.1mmの円と
R部とで規定される部分(これの部分は実際には環状を
なしている)、又はこれら両方の部分の密度を99.5
%以上とする。
【0016】その理由を応力解析の結果に基づいて説明
する。ここでは、1つの鍔部を有するバルブスプリング
リテーナーをシミュレートした場合について説明する。
解析に用いたリテーナーの形状は、鍔部の厚み2.00
mm、鍔部の直径30mm、その突出長さ3.7mmである。
【0017】軸対称モデルにより、図3に示すように、
パンチによってリテーナー上面から受ける下向きの負荷
を鍔部で受けるという境界条件で解析した。実際には、
図1あるいは図2のように、リテーナー内面はコッタを
介してバルブに固定されており、スプリングを支持する
鍔部に上向きにスプリングの付勢力が作用する。ここで
はパンチ面の負荷圧力が10kgf /mm2 の場合に生じる
応力分布を求めた。図4はその際の応力分布図を示すも
のであり、20kgf /mm2 毎の等応力分布線図として示
している。図中の数字は各等応力線の応力値である。
【0018】この図4から明らかなように、応力はバル
ブスプリングリテーナーのR部近傍に集中しており、こ
のR部の一点において最大応力68kgf /mm2 を示し
た。また、60kgf /mm2 以上の高応力を生じる領域も
極限られた領域であることがわかる。その領域は、図5
に示すように、R部の支持面側から30°の点を中心に
した半径0.1mmの円とR部とで規定される部分であ
る。異なる形状のリテーナーについても同様の解析を行
ってみたが、高応力を生じる領域は図5に示した領域と
同様であった。
【0019】このように応力の集中が大きい領域を特に
緻密化することにより、疲労特性を向上させることがで
きる。具体的には、上述のような領域に対応する部分の
密度が理論密度の99.5%以上であれば、107 回疲
労強度(107 サイクルの疲労試験において破断しない
最大の荷重)が十分なものとなり、十分な疲労特性を示
す。
【0020】なお、焼結体全体の密度を99.5%以上
にすることができれば、上述の部分の密度を特に高くす
る必要がないことはいうまでもない。しかし、現実的に
は粉末焼結だけで全体的にこのような高密度を得るため
には設備面等から困難性を伴う。従って、実際には局部
的に高密度化する技術が求められる。このように局部的
に高密度化する方法としては、粉末成形の際のパンチを
分割タイプとし、粉末の充填深さの調整、又はダイコン
トロール等の操作により、R部に対応する部分の成形密
度を特に高くする方法がある。また、ショット又はサイ
ジング等により、焼結後に局部的に密度を上昇させる方
法も採用することができる。
【0021】この発明に係るバルブスプリングリテーナ
ーは、チタン粉末と予め合金化された合金粉末とを混合
し、その混合粉末を成形し、次いで焼結させて、(α+
β)型チタン合金にすることにより製造される。これに
より、HIPを経ることなく理論密度の99.0%以上
と十分に高密度のチタン合金焼結体を得ることができ、
単に素粉末を混合して作成したチタン合金の94.5乃
至96.5%よりもはるかに高い密度を得ることが可能
になる。また、機械的性質も溶製・鍛造チタン合金とほ
ぼ同一となる。
【0022】(α+β)合金としてはTi−6Al−4
Vが良く知られているが、重量%で、1.0〜4.0%
のFe、1.0〜4.0%のMo、3.0〜7.0%の
Al、2.0〜4.5%のV、及び0.5%以下のOを
含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなるものが
より好ましい。
【0023】以下、このように規定した理由について説
明する。HIPなどの処理を施すことなく、低温短時間
で緻密に焼結させるためには焼結速度が高いことが必要
であるが、そのためにはTi中での拡散速度が大きく、
かつTiに対して合金元素として作用し、機械的性質に
悪影響を及ぼさない元素を適量添加すればよい。
【0024】βTi中での拡散速度が大きい元素を調査
した結果、Feがこのような元素に該当することがわか
った。すなわち、Feの拡散速度(拡散係数)は950
℃において10-11 オーダー(m2 ・sec -1)であり、
Tiの自己拡散速度である10-13 よりも100倍大き
い。また、Feは強度上昇に寄与する。しかし、Feの
みではカーケンドール(Kirkendall)効果により、合金
成分側に気孔が生成されやすくなり、高密度化が妨げら
れる恐れがある。
【0025】このようなことを防止するために、本願発
明者らがさらに検討を重ねた結果、上述のような拡散速
度が大きな元素と共に、拡散速度が遅い、すなわち焼結
を遅らせる元素を添加すればよいことを見出した。
【0026】拡散速度が遅い元素を調査した結果、Mo
がこのような元素に該当することが判明した。Moの拡
散速度は10-10 のオーダーであり、チタンの1/10
である。また、Moはβチタンに全率固溶し、合金元素
として機能する。
【0027】しかしながら、FeとMoとの複合添加は
緻密化を促進するものの、これらのみの添加では焼結体
の強度を十分なものにすることができない。焼結体の強
度を向上させる観点からさらに検討を重ねた結果、Fe
及びMoに加えてさらにAl及びVを適量添加し、かつ
Oの含有量をコントロールすることにより、望ましい強
度を有する焼結チタン合金が得られることが判明した。
【0028】Alは置換型にTiへ固溶する唯一のα相
安定化元素であり、著しい固溶強化を示す。また、Ti
中での拡散速度が速いのでFe,Moとの複合添加で焼
結品の密度を上昇させる効果をも有する。Vは、Tiに
全率固溶するβ相安定化元素であり、Tiとの間に脆化
相である金属間化合物を形成することなく強度を上昇さ
せる作用を有する。すなわち、Vは主にβ相に固溶して
これを強化する。Oはα相に固溶して著しく強度を上昇
させる作用を有する。
【0029】真島らの研究(粉体および粉末冶金,19
87)によると、FeとTiとの2元系状態図において
固液共存領域に入らない組成近傍までは緻密化が進む可
能性がある。また、この2元状態図から、1350℃で
固液共存が発現する組成は、Feで9%(重量%以下同
じ)であることがわかる。しかし、この量が多いと延性
(靭性)が低下してしまう。また、Feの量が少なすぎ
ても緻密化の効果が得られない。従って、Fe含有量は
1〜4%であることが好ましい。
【0030】Moは上述したようにβTi中での拡散速
度が遅い元素であり、拡散速度が大きいFeと並存する
ことにより高密度化を達成するものである。しかし、M
oの量が1%よりも少ない場合にはその効果が得られ
ず、4%を超えると緻密化の進行が遅れ、緻密化が十分
に図れない。従って、Moの含有量は1〜4%であるこ
とが好ましい。
【0031】Alは上述のようにα相を著しく固溶強化
させる元素である。しかし、その含有量が3%未満では
焼結品の強度を十分なものにすることができない。ま
た、7%を超えると脆化相であるDO19型のhcp規則
相α2 (Ti3 Al)が析出し、延性を劣化させる。従
って、Alの含有量は3〜7%が好ましい。
【0032】Vはβ相を固溶強化する作用を有するが、
その含有量が2%未満では焼結品の強度を十分なものに
することができない。一方、4.5%を超えると延性の
低下を招く。従って、Vの含有量は2〜4.5%が好ま
しい。
【0033】OはTi粒子及びマスターアロイ粉末(合
金成分)から持ち込まれ、上述したようにα相に固溶し
て著しく強度を上昇させる作用を有するが、この量が
0.5%を超えると延性を害する。従って、Oの含有量
は0.5%以下であることが好ましい。このような組成
範囲のチタン合金を用いれば、Ti−6Al−4Vを上
回る材料特性を得ることができる。
【0034】なお、以上の説明では便宜的に1つの鍔部
を有するバルブスプリングリテーナーについて説明した
が、これに限らず、2つの鍔部を有するものでもよい
し、3つ以上の鍔部を有するものでもよい。
【0035】
【実施例】以下、この発明の実施例について説明する。
【0036】Ti−6Al−4Vの組成になるように、
平均粒径20μm以下、5種類の大きさに粉砕した60
Al−40Vのマスターアロイ粉末と、−60メッシュ
(−250μm)の純チタン粉末とを混合し、混合粉末
を作製した。この混合粉末を鋼製金型に充填後、圧力
8.0tonf/cm2 で成形して図3に示すような形状のバ
ルブスプリングリテーナー成形体を得、さらに1400
℃で5時間真空中で焼成した。このようにして全体の密
度が98.5乃至99.5%の粉末焼結チタン合金製バ
ルブスプリングリテーナーを製造した。これらのリテー
ナーについて図3に示すような装置を用いて静的破壊荷
重を求めた。
【0037】なお、鍔部の厚さは、リテーナーの破壊強
度に直接影響し、これを厚くすればR部に生じる局部最
大応力が低下し、リテーナーの強度は高くなる。しか
し、鍔部の厚さが増加すると重量が増加して軽量化のメ
リットが損なわれる。本実施例では、この点を考慮して
外側鍔部の厚さを2mmとして評価を行った。評価の結果
を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】表1に示すように、全体の密度が99%以
上のものについては、破壊荷重が、7020kgf 以上と
なり、鋼製(SCM415浸炭材)のものの6370kg
f よりも高い強度が得られ、特に99.3%を超えたも
のは、展伸材(溶製材)のTi−6Al−4Vの破壊荷
重である7210kgf を超える値が得られた。これに対
して、密度が99%未満のものは、静的破壊荷重が65
90kgf 以下となり、不十分な値となった。
【0040】この結果から、この発明のように予めマス
ターアロイを作製してチタン粉末と混合する方法を採用
した場合に、(α+β)型チタン合金であるTi−6A
l−4V合金をHIP処理を経ることなく十分高密度に
することができ、静的強度も十分なものとすることがで
きるが、全体の密度が99%未満では、十分な静的強度
を得ることができないことが確認された。
【0041】これらの試料のうち、全体の密度が99.
3%のものについて、疲労試験に供した。疲労試験は図
3と同様な負荷治具を製作し、油圧サーボ試験機を用い
て、応力比(最小応力/最大応力)=0.1の条件で行
い、破断繰り返し数を測定した。これにより得られた疲
労寿命曲線から、107 回疲労強度(繰り返し数107
回を超えて破断しない最大の荷重)を求めた。その結
果、その疲労強度は290kgf となり、展伸材(溶製
材)のTi−6Al−4Vの疲労強度である520kgf
、及びSCM415浸炭材の疲労強度である500kgf
よりも低い値となった。
【0042】この試料を縦に切断し、その断面を観察し
た。この試料の図5の高応力部に相当する部分につい
て、存在するポアの画像処理を行い、その面積率からそ
の部分の密度を真密度比として求めた。その結果、その
部分の密度は99.2%であり、99.5%未満である
ことが確認された。
【0043】次に、上述した条件で製造された混合粉末
を、下パンチが2分割タイプで上パンチが1つの金型を
用いて、各パンチの充填深さの変化及びダイコントロー
ル等の操作により、リテーナーのR部近傍の密度を種々
に変化させた成形体(圧粉体)を各条件10個ずつ作製
した。なお、鍔部の厚さも疲労強度に影響する因子であ
るため、焼結後の鍔部の厚さが2.00±0.02mmに
なるように条件を調節した。鍔部の直径、及びその突出
長さも上述の試料と同一とした。これらの成形体を14
00℃で5時間真空中で焼成し、全体の密度を99.2
%以上とした。各条件の試料のうちの1個ずつについて
縦に切断し、その断面を観察した。この試料の図5の高
応力部に相当する部分について、存在するポアの画像処
理を行い、その面積率からその部分の密度を真密度比と
して求めた。その結果、98.5〜99.8%の密度で
あった。各条件における残りの9個の試料については、
上述した図3の装置を用いて、上述した条件と同一条件
の疲労試験に供した。表2に、高応力部の密度と疲労強
度との関係を示す。
【0044】
【表2】
【0045】表中、高応力部の密度が99.5%以上と
本発明の要件を満たす実施例1〜4については、疲労強
度が390kgf 以上となった。高応力部の密度が99.
8である実施例4では、展伸材のTi−6Al−4V合
金及びSCM415浸炭材とほぼ同じ疲労強度であっ
た。これに対して、高応力部の密度が99.5%未満で
ある比較例5〜7のものは、疲労強度が290kgf 以下
となり、不十分な値となった。
【0046】次に、チタン合金の組成を変化させた実験
を行った。ここでは、Feを1.0〜4.0%、Moを
1.0〜4.0%、Alを3.0〜7.0%、Vを2.
0〜4.5%、Oを0.5%以下としたチタン合金を作
製した。この範囲の組成になるように、マスターアロイ
粉末とスポンジチタン粉末とを上述の条件と同一の条件
で混合し、混合粉末を作製した。そして、混合粉末を鋼
製金型に充填し、圧力8.0tonf/cm2 で図3に示すよ
うな形状のバルブスプリングリテーナー成形体を得、1
350℃で真空焼成を行った。その結果、この組成範囲
内のものはいずれも2時間以内という短時間で全体の密
度が99.5%に達した。ちなみに、Ti−6Al−4
Vでは1350℃で20時間以上焼成しなければなら
ず、上述の組成の合金は極めて焼結性が良好であること
が確認された。
【0047】次に、Feを2%、Moを2%、Alを
4.5%、Vを3%、Oを0.2%含み残部がTiから
なる上述の組成範囲内の合金について、静的強度を求め
た。ここでは、全体の密度が99.3%で、形状が上述
したものと同一であるリテーナー試料を用いた。その結
果、破壊荷重が7800kgf となり、同一条件でのTi
−6Al−4Vの7280kgf よりも高い値を示した。
【0048】次に、同様の組成の混合粉末について、上
述した下パンチが2分割タイプで上パンチが1つの金型
を用いて、上述と同様に充填深さなどを調節してリテー
ナーのR部近傍の密度のみを99.7%と99.5%以
上の値とした試料を作製した。なお、全体の密度は9
9.3%であった。この試料について、図3の装置を用
いて疲労試験を行った。条件は上述のTi−6Al−4
Vにおけるものと同一とした。その結果、107 回疲労
強度が530kgf と、密度条件が同じTi−6Al−4
Vの実施例3の470kgf よりも高い値となった。さら
に、この値は高応力部の密度が99.8%と高いTi−
6Al−4Vの実施例4における520kgf を上回って
いることが確認された。
【0049】この結果から、Feを1.0〜4.0%、
Moを1.0〜4.0%、Alを3.0〜7.0%、V
を2.0〜4.5%、Oを0.5%以下としたチタン合
金は、(α+β)型として代表的なTi−6Al−4V
よりも焼結性が良好であり、静的強度及び疲労強度が優
れていることが確認された。すなわち、この組成の合金
を用いれば、鍔部の厚さをより小さくしてもTi−6A
l−4Vと同等の強度を得ることができるため、一層軽
量化を図ることができる。
【0050】
【発明の効果】この発明によれば、HIPを経ることな
く、従来の鋼製バルブスプリングリテーナーと同等の強
度を有し、約40%軽い高密度粉末焼結チタン合金製の
内燃機関用バルブスプリングリテーナー及びその製造方
法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るバルブスプリングリテーナーが
使用される内燃機関の動弁系を示す図。
【図2】この発明に係るバルブスプリングリテーナーを
示す断面図。
【図3】バルブスプリングリテーナーの静的強度及び疲
労強度の求め方を説明するための図。
【図4】バルブスプリングリテーナーの応力解析の結果
を示す図。
【図5】バルブスプリングリテーナーの応力集中部分を
示す図。
【符号の説明】
1;シリンダヘッド、2;バルブ、4;バルブスプリン
グリテーナー、5,6;鍔部、7;リテーナー本体、
8,9;支持面、10,11;バルブスプリング、1
7;コッタ、21,22;R部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 尾関 昭矢 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 田島 秀紀 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 久保寺 正二 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 藤田 高弘 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−5107(JP,A) 特開 昭63−183144(JP,A) 実開 昭61−136106(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F01L 3/10 F01L 3/02 B22F 1/00 B22F 5/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 本体と、本体から突出し、バルブスプリ
    ングの付勢力に抗してバルブスプリングを支持するため
    の環状の支持面を有する少なくとも1つの鍔部とを備
    え、本体外周面と支持面との間、又は1の鍔部の外周面
    と他の鍔部の支持面との間にR部を有する内燃機関用バ
    ルブスプリングリテーナーであって、粉末焼結による
    (α+β)型チタン合金からなり、全体の焼結密度が理
    論密度の99%以上であり、かつ少なくとも前記R部近
    傍の環状部分の密度が理論密度の99.5%以上である
    ことを特徴とする高密度粉末焼結チタン合金製内燃機関
    用バルブスプリングリテーナー。
  2. 【請求項2】 重量%で、Alを3.0〜7.0%、V
    を2.0〜4.5%、Moを1.0〜4.0%、Feを
    1.0〜4.0%、Oを0.5%以下の範囲で含み、残
    部Ti及び不可避的不純物からなる請求項1に記載の高
    密度粉末焼結チタン合金製内燃機関用バルブスプリング
    リテーナー。
  3. 【請求項3】 チタン粉末と予め合金化された合金粉末
    とを混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を成形
    し、次いで焼結させて、本体と、本体から突出し、バル
    ブスプリングの付勢力に抗してバルブスプリングを支持
    するための環状の支持面を有する少なくとも1つの鍔部
    とを備え、本体外周面と支持面との間、又は1の鍔部の
    外周面と他の鍔部の支持面との間にR部を有し、(α+
    β)型チタン合金からなる内燃機関用バルブスプリング
    リテーナーを製造し、このバルブスプリングリテーナー
    全体の焼結密度を理論密度の99%以上とし、かつ少な
    くとも前記R部近傍の環状部分の密度を理論密度の9
    9.5%以上としたことを特徴とする高密度粉末焼結チ
    タン合金製内燃機関用バルブスプリングリテーナーの製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記混合粉末は、重量%で、Alを3.
    0〜7.0%、Vを2.0〜4.5%、Moを1.0〜
    4.0%、Feを1.0〜4.0%、Oを0.5%以下
    の範囲で含み、残部Ti及び不可避的不純物からなるこ
    とを特徴とする請求項3に記載の高密度粉末焼結チタン
    合金製内燃機関用バルブスプリングリテーナーの製造方
    法。
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