JP3359016B2 - 灰・土壌の無害化処理方法及び無害化処理装置 - Google Patents

灰・土壌の無害化処理方法及び無害化処理装置

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JP3359016B2
JP3359016B2 JP2000040854A JP2000040854A JP3359016B2 JP 3359016 B2 JP3359016 B2 JP 3359016B2 JP 2000040854 A JP2000040854 A JP 2000040854A JP 2000040854 A JP2000040854 A JP 2000040854A JP 3359016 B2 JP3359016 B2 JP 3359016B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、灰・土壌の無害化
処理方法及び無害化処理装置に関するものである。かか
る本発明は、放電に起因するプラズマによりラジカルを
発生させ、このラジカルや副生したオゾンを利用して、
灰・土壌に含まれている有害物質(ダイオキシン等)を
分解して無害化するものである。なお本明細書では、
「灰・土壌」とは、灰や土壌や各種の粉状物や粒状物や
固形物や固体状の物質を含む概念として使用する。
【0002】
【従来の技術】都市ゴミ焼却炉,産業廃棄物焼却炉,汚
泥焼却炉等の各種焼却炉や、熱分解炉や、溶融炉等から
は、灰や排ガスが排出される。このような灰や排ガスに
有害物質が含まれている場合には、このような有害物質
を無害化する必要がある。
【0003】また、旧式の焼却炉等から排出されていた
排ガス中には、有害物質が含まれていたこともあり、そ
の場合には、近隣の土壌が有害物質により汚染されてい
た。このような汚染された土壌を無害化することも要望
されている。
【0004】なお、本発明が対象とする有害物質として
は、ダイオキシン等のハロゲン化芳香族化合物,高縮合
度芳香族炭化水素,環境ホルモン,窒素酸化物,硫黄酸
化物等がある。
【0005】有害物質を含む灰や土壌や各種の粉状物や
粒状物や固形物や固体状の物質(以下これらを「灰・土
壌」と記載する)を無害化するには、従来では、焼却処
理法、高温熱分解法、太陽光線分解法、熱脱着分解法、
化学分解法、光分解法、微生物分解法などが知られてい
る。このような各種の処理方法の中で、現在実用化され
ているのは、焼却処理法である。
【0006】この焼却処理法では、有害物質を含む灰・
土壌を、ロータリーキルン式焼却炉にて焼却して灰・土
壌を焼却処理(約900°C)し、灰・土壌中に含まれ
ている有害物質を分解する。また灰・土壌の焼却処理に
伴って発生した排ガスは、アフターバーナーにより再燃
焼処理されて、排ガス中に含まれている有害物質を無害
化している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の焼却
処理法では、無害化処理に多くの手間や時間を要し、ま
た費用もかさんでいた。また、従来の他の手法は、原理
的には効果はあっても実用化できていない。
【0008】本発明は、上記従来技術に鑑み、従来に無
い新規な手法(原理)により灰・土壌中に含まれている
ダイオキシン等の有害物質を分解して無害化する灰・土
壌の無害化処理方法及び無害化処理装置を提供すること
を目的とする。
【0009】本発明は、ダイオキシンを環境基準(土
壌)の1000pg/g以下に低減することを目的とし
ており、原理的には1pg/g以下に低減することがで
きる。そして灰・土壌中のダイオキシン分解率は99パ
ーセント以上が期待できる。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明方法は、パルス幅が極めて短い高電圧のパルス電圧が
印加される正電極と負電極を有する反応容器に、有害物
質が含まれている灰・土壌を入れ、正電極と負電極との
間で発生した放電に起因するプラズマによりラジカルを
発生させ、このラジカルにより前記有害物質を分解させ
ることを特徴とする。この場合、前記灰・土壌は、連続
的または断続的に前記反応容器に入れられるようにして
もよい。しかも、前記パルス電圧のパルス幅Tは、前記
正電極と前記負電極との間の距離をd、気体中でのスト
リーマ放電進展速度をv、円周率をπとすると、次式で
表される幅以上とし、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
v)×π/2〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、前記正電極と前記負電極と
の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
な値とする。ただし、λは前記正電極と前記負電極との
間の気体温度が300K、気体圧力が1気圧時の気体分
子同士の平均距離(平均自由行程に比例する定数)を1
としたときの相対値である。
【0011】また本発明の構成は、有害物質が含まれて
いる灰・土壌が入れられる反応容器に、正電極と負電極
とが備えられ、前記正電極と前記負電極には、パルス幅
が極めて短い高電圧のパルス電圧が印加されることを特
徴とする。
【0012】また本発明の構成は、有害物質が含まれて
いる灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、こ
の円筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド
状電極とが備えられ、前記線電極またはロッド状電極と
前記円筒電極には、パルス幅が極めて短い高電圧のパル
ス電圧が印加されることを特徴とする。
【0013】また本発明の構成は、有害物質が含まれて
いる灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、こ
の円筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド
状電極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電
極またはロッド状電極との間に強誘電体が配置されてお
り、前記線電極またはロッド状電極と前記円筒電極に
は、パルス幅が極めて短い高電圧のパルス電圧が印加さ
れることを特徴とする。
【0014】また本発明の構成は、有害物質が含まれて
いる灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、こ
の円筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド
状電極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電
極またはロッド状電極との間には線電極またはロッド状
電極を回転中心として線電極またはロッド状電極の周囲
を回転移動する強誘電体が配置されており、前記線電極
またはロッド状電極と前記円筒電極には、パルス幅が極
めて短い高電圧のパルス電圧が印加されることを特徴と
する。
【0015】また本発明の構成は、有害物質が含まれて
いる灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、こ
の円筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド
状電極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電
極またはロッド状電極との間には、前記円筒電極の内周
面に接して円筒状の誘電体が配置されており、前記線電
極またはロッド状電極と前記円筒電極には、パルス幅が
極めて短い高電圧のパルス電圧が印加されることを特徴
とする。
【0016】また本発明の構成は、有害物質が含まれて
いる灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、こ
の円筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド
状電極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電
極またはロッド状電極との間には線電極またはロッド状
電極を回転中心として線電極またはロッド状電極の周囲
を回転移動する強誘電体が配置されており、更に、前記
円筒電極と前記線電極またはロッド状電極との間には、
前記円筒電極の内周面に接して円筒状の誘電体が配置さ
れており、前記線電極またはロッド状電極と前記円筒電
極には、パルス幅が極めて短い高電圧のパルス電圧が印
加されることを特徴とする。
【0017】また本発明の構成は、有害物質が含まれて
いる灰・土壌が入れられる反応容器に、正電極と負電極
とが備えられ、前記正電極と前記負電極には、パルス幅
が極めて短い高電圧のパルス電圧が印加されるととも
に、前記反応容器の出口から灰・土壌を取り出し、取り
出した灰・土壌を前記反応容器の入口に戻す循環機構を
備えていることを特徴とする。
【0018】また本発明の構成は、有害物質が含まれて
いる灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、こ
の円筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド
状電極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電
極またはロッド状電極との間には、前記円筒電極の内周
面に接して円筒状の誘電体が配置されており、前記線電
極またはロッド状電極と前記円筒電極には、パルス幅が
極めて短い高電圧のパルス電圧が印加されるとともに、
前記反応容器の出口から灰・土壌を取り出し、取り出し
た灰・土壌を前記反応容器の入口に戻す循環機構を備え
ていることを特徴とする。
【0019】また本発明装置では、前記パルス電圧のパ
ルス幅Tは、正側の電極と負側の電極との間の距離を
d、気体中でのストリーマ放電進展速度をv、円周率を
πとすると、次式で表される幅以上とし、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
v)×π/2〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、正側の電極と負側の電極と
の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
な値としたことを特徴とする。ただし、λは正側の電極
と負側の電極との間の気体温度が300K、気体圧力が
1気圧時の気体分子同士の平均距離(平均自由行程に比
例する定数)を1としたときの相対値である。
【0020】また本発明装置では、前記パルス電圧のパ
ルス幅Tは、正側の電極と負側の電極との間の距離を
d、気体中でのストリーマ放電進展速度をv、円周率を
πとすると、次式で表される幅以上とし、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
v) 〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、正側の電極と負側の電極と
の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
な値としたことを特徴とする。ただし、λは正側の電極
と負側の電極との間の気体温度が300K、気体圧力が
1気圧時の気体分子同士の平均距離(平均自由行程に比
例する定数)を1としたときの相対値である。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面
に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明では有害物
質としてダイオキシンを例にして説明するが、他の有害
物質も同様にして無害化処理するものである。また灰・
土壌を代表して灰を例にして説明するが、灰以外の土壌
等も同様にして無害化処理するものである。
【0022】本発明では、正電極と負電極を有する反応
容器の内部に、有害物質を含む灰を入れる。そして正電
極と負電極との間に、パルス幅が極めて短い(例えばパ
ルス幅が数10nsの)高電圧のパルス電圧を印加し
て、正負電極間でストリーマ放電を発生させる。放電
は、灰粒子の間の空間を進展していく。このとき正負の
電極間距離を50cm〜100cm程度にしておくと、
印加電圧を短パルス化したことと相俟って、ストリーマ
放電が発生し易くなる。
【0023】この放電によりプラズマ(電子やイオン)
が発生する。発生した電子のうち、エネルギーの高い
(10eV以上の)電子は、灰粒子の間の空間に存在す
る気体分子に衝突してラジカルを発生する。ラジカルと
しては、酸素ラジカル(O・)、窒素ラジカル(N
・)、水酸化ラジカル(OH・)、水素ラジカル(H
・)等がある。
【0024】このようなラジカルは、灰に含まれている
有害物質をラジカル化学反応により分解して無害化す
る。また、酸素ラジカル(O・)が酸素分子と結合して
オゾン(O3 )が同時に生成され、このオゾン(O3
もダイオキシン分解に寄与する。なお、発生確率的には
小さいが、電子がダイオキシンに直接衝突してダイオキ
シンを解離(分解)して無害化することもある。
【0025】なお、ストリーマ放電は、エネルギーの高
い(10eV以上の)電子を多く発生するので、放電と
してはストリーマ放電の発生割合を多くするように、パ
ルス幅および電極間距離を工夫している。具体的には、
放電が正電極と負電極の間を短絡する時間を、パルス幅
とすることが理想的であるが、それ以上のパルス幅とし
ても消費エネルギーが多少上昇されるのみである。かか
る高エネルギーの電子を発生させれば、多量のラジカル
やオゾンを発生させることができ、ひいては、無害化処
理(分解処理)が効率的に行われる。
【0026】また、パルス幅を短くしているので、軽い
電子は移動しても、重いイオンは殆ど移動することはな
い。このようにイオンの移動が殆どないので、イオンの
移動に伴う振動熱は殆ど発生せず、熱損失を低減して効
率を高めることができる。
【0027】ダイオキシンは、窒素や酸素といったガス
分子よりもサイズが1桁以上大きいため、多くは、灰粒
子の表面や細孔(マイクロポア)内に物理的に吸着して
いると推定される。またダイオキシンの一部が、灰粒子
の内部に存在することも推定される。
【0028】灰粒子の表面に吸着されたダイオキシン
に、ラジカル及び副生したオゾンが作用すると、ラジカ
ル化学反応及び化学反応によりダイオキシンが分解す
る。そうすると、灰粒子の表面と内部との間で、ダイオ
キシンの濃度勾配が生ずる。この濃度勾配により、ダイ
オキシンは、高濃度の内部から低濃度の表面に向かって
移動してくる。このように移動してきたダイオキシン
は、灰の表面にて次々にラジカルと反応して分解され
る。更にラジカル及びオゾンが灰の細孔(マイクロポ
ア)の内部へ進入し、その内壁に吸着しているダイオキ
シンも分解される。このようにして、灰中のダイオキシ
ンが分解されて無害化される。
【0029】ここでダイオキシンの分解原理を説明す
る。ダイオキシンはベンゼン環に塩素が結合したもの
(クロロベンゼン)2個がエーテル結合したものである
が、プラズマによって次の原理で分解すると考えられ
る。 ラジカルがエーテル結合の酸素と反応してエーテル結
合を切る。 ラジカルが塩素と反応して脱塩素反応を起こす。 ラジカルがベンゼン環の炭素と反応してベンゼン環を
開環させる。 上述した〜の結果としてダイオキシン毒性が低減さ
れ無害化される。
【0030】<第1実施例>次に本発明の第1実施例に
かかる無害化処理装置を説明する。図1は第1実施例に
かかるバッチ式の無害化処理装置1を示す正面断面図、
図2はその透視斜視図である。
【0031】両図に示すようにこの無害化処理装置1で
は、ケーシング2内に複数本の反応管(反応容器)3を
上下方向(垂直方向)に沿い配置して備えている。各反
応管3は、図3にも示すように、円筒電極3aの内部空
間に線電極3bを配置した構成の部材である。なお、線
電極3bの代わりにロッド状電極を採用することがで
き、ロッド状電極であっても同様な効果が得られるが、
以下の説明では線電極3bを例として説明する。
【0032】ケーシング2の上面には開閉可能に上蓋2
aが備えられており、上蓋2aを閉じると、ケーシング
2の上面及び各反応管3の上面が密閉されるようになっ
ている。また、ケーシング2の下面には開閉可能に下蓋
2bが備えられており、下蓋2bを閉じると、ケーシン
グ2の下面及び各反応管3の下面が密閉されるようにな
っている。
【0033】パルス電源10は、パルス幅が極めて短
く、且つ、高電圧のパルス電圧を発生する電源であり、
その高圧端子(正電位側の端子)が各線電極3bに接続
されており、その低圧端子(負電位側の端子)が各円筒
電極3aに接続されている。
【0034】このような無害化処理装置1では、上蓋2
aを開けて、ダイオキシンを含む灰を、各反応管3の円
筒電極3aと線電極3bとの間の空間(反応空間)3c
に入れる。
【0035】パルス電源10から出力されるパルス電圧
の電圧値は、正電極となる線電極3bと負電極となる円
筒電極3aとの間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以
上にするような値となっている。
【0036】ただし、λは反応空間3cの気体温度が3
00K、気体圧力が1気圧時の気体分子同士の平均距離
(平均自由行程に比例する定数)を1としたときの相対
値である。したがって、例えば、気体温度を300Kに
固定したまま気体圧力を2気圧にするとλの値は2にな
り、気体圧力を1気圧に固定したまま気体温度を600
Kにするとλの値は0.5になる関係となっている。
【0037】またパルス電源10から出力されるパルス
電圧のパルス幅Tは、電極3a,3b間の距離をd、反
応空間3c内の気体中でのストリーマ放電進展速度を
v、円周率をπとすると、次の式(1)で表される幅
(秒)以上とした。 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度v)×π/2 〔秒〕 ・・・・(1)
【0038】したがって、例えば電極間距離dを2.5
〔cm〕、ストリーマ放電進展速度vを1〜2〔cm/
10ns〕とすると、パルス幅Tは20〜40〔ns〕
以上となる。よってパルス幅Tを20〔ns〕以上にす
る。なおストリーマ放電進展速度vは実験により求めた
値である。パルス幅が20〔ns〕より小さい場合、ス
トリーマ放電が正電極と負電極の一部(正電極近傍)に
しか進展せず、電極間の一部しかストリーマ放電が発生
しないことになるので、結果として分解率が大きく低下
することになる。
【0039】パルス幅Tを上式(1)により規定した理
由は次の通りである。即ち、模式図である図4に誇張し
て示すように、円筒電極3aの表面の一点をA、線電極
3bの表面の一点をBとし、灰粒子を球状と仮定して、
AB間に3個の灰粒子が存在したと考える(実際にはA
B間には多数の灰粒子が存在している)。また灰粒子の
直径をDとする。
【0040】そして、BからAに向かってストリーマ放
電(図中において黒塗りした太線)が発生した場合、こ
のストリーマ放電は3個の灰粒子の表面に沿って進展す
る。このとき、AB間の直線距離は3Dとなり、灰粒子
の表面に沿って進展していった放電経路距離は3・D・
π/2となる。また3・D=dである。この関係から、
表面距離/直線距離=π/2となる。よって、反応空間
3cに灰を入れた場合のストリーマ放電進展速度は、気
体中でのストリーマ放電進展速度のπ/2倍となり、上
記(1)式が得られる。
【0041】更に、パルス電源10は、電極3a,3b
間に多数のパルス電圧を印加し続けるが、その印加時間
は、電極3a,3b間に与えるエネルギーが10〔kJ
/litter〕以上になる時間としている。したがって、パ
ルス電圧の電圧値を低く設定した場合には、印加電圧時
間は長くなり、パルス電圧の電圧値を高く設定した場合
には、印加電圧時間は短くなる。
【0042】このようにして、正電極である線電極3b
と負電極である円筒電極3aとの間に、パルス電圧を印
加すると電極3a,3b間に放電が発生する。この場
合、パルス幅が上記(1)式で表される幅であるときに
は、放電は殆どストリーマ放電となる。また、パルス幅
が上記(1)式で表される幅以上であるときには、最初
は殆どがストリーマ放電であるが、上記(1)式で表さ
れる幅(時間)を経過するとグロー放電やアーク放電が
発生する。
【0043】このようにして放電により電子が発生し、
このうちエネルギーの高い(10eV以上の)電子は、
灰粒子の間の空間に存在する気体分子に衝突してラジカ
ルを発生する。ラジカルとしては、酸素ラジカル(O
・)、窒素ラジカル(N・)、水酸化ラジカル(OH
・)、水素ラジカル(H・)等がある。また酸素ラジカ
ル(O・)と酸素分子が結合したオゾンも同時に生成さ
れる。
【0044】このようなラジカル及び副生したオゾン
は、灰に含まれている有害物質をラジカル化学反応及び
化学反応により分解して無害化する。また、ラジカル及
びオゾンが灰の細孔(マイクロポア)の内部へ進入し、
その内壁に吸着しているダイオキシンも分解される。な
お、発生確率的には小さいが、電子がダイオキシンに直
接衝突してダイオキシンを解離(分解)して無害化する
こともある。
【0045】そして、電極3a,3b間に与えるエネル
ギーが10〔kJ/litter〕以上になる時間となった
ら、灰に含まれている有害物質は完全に分解されて無害
化されるので、パルス電圧の印加を停止する。
【0046】その後、下蓋2bを開き、反応空間3c内
に入っていた灰を取り出す。このようにして、バッチ式
処理により、灰の無害化処理ができる。
【0047】ここで試験結果を示す。この試験では、ダ
イオキシンを用いるのは危険であるので、ダイオキシン
の代替物質としてエチレンガスを用いた。そして、吸着
剤(シリカライト)にエチレンを吸着した物質を、1本
の反応管3の反応空間3cに詰めた。
【0048】試験条件は次の通りである。 (1)反応管(反応容器)3の円筒電極3aの直径は5
cm、長さは15cm。反応空間3cの容積は約300
ccである。 (2)パルス電源10が出力するパルス電圧のパルス幅
は100ns、電圧は10〜30kV(つまり、反応空
間の電界強度が4〜12kV/cmとなる電圧)とし
た。 (3)電圧印加時間は、電極3a,3b間に与えるエネ
ルギーが10〔kJ/litter〕となる時間とした。 (4)試験手順としては、(4−1)エチレンを飽和状
態まで吸着させ、初期吸着量を測定し、(4−2)電極
間にパルス電圧を印加してプラズマを発生させ、ラジカ
ルによる分解処理を行わせ、(4−3)再吸着量を測定
し、(4−4)分解率を測定する。分解率は、(初期吸
着量−再吸着量)/初期吸着量×100で表される。
【0049】図5は上記試験をした場合のエチレン分解
特性試験結果である。この結果から、投入エネルギーを
10〔kJ/litter〕以上にすることで、95%以上の
エチレンを分解できたことが分かった。
【0050】図6は上記試験をした場合の印加電圧と分
解率の関係を示す試験結果である。この結果から、印加
電界強度を5kV/cm以上にすることが効果的である
ことが判明した。このため、パルス電源10から出力さ
れるパルス電圧の電圧値を、電極3a,3b間での電界
強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするような値とすれ
ば良いことが分かった。
【0051】なお、図1及び図2に示す第1実施例で
は、バッチ処理をしているが、上蓋2aと下蓋2bを無
くし、各反応管3の上端から連続式に灰を投入して、灰
を各反応空間3c中に流通させつつ無害化処理をし、無
害化した灰を各反応管3の下端から連続的に取り出すよ
うにした連続形にすることも可能である。
【0052】また、図1及び図2に示す第1実施例で
は、円筒電極3aは反応管(反応容器)の筺体としての
機能を兼用しているが、独立した筒状の筺体の内部に平
板電極と線電極(またはロッド状電極)を配置して反応
管(反応容器)を形成するようにしても良い。
【0053】<第2実施例>次に本発明の第2実施例に
かかる無害化処理装置を説明する。第2実施例は第1実
施例における反応管3を、図7に示す反応管30に取り
替えた構成となっている。このため全体構成は省略し、
反応管30を中心に説明する。なお、線電極30bの代
わりにロッド状電極を採用することができ、ロッド状電
極であっても同様な効果が得られるが、以下の説明では
線電極30bを例として説明する。
【0054】反応管(反応容器)30では、図7に示す
ように、円筒電極30aの内部空間に線電極30bが配
置されている。また円筒電極30aと線電極30bとの
間の反応空間30cには、複数本(本例では4本)の強
誘電体31が配置されている。強誘電体31は、チタン
酸バリウム等をロッド状に形成したものである。このよ
うな強誘電体31は、線電極30bに平行で、かつ、線
電極30bを中心とした円周上において周方向に離れた
位置(本例では90°離れた位置)に配置されている。
このため、線電極30bは、複数本の強誘電体31によ
り囲まれた状態となっている。
【0055】各強誘電体31は、その下端が回転円板3
2に固定されている。回転円板32は、線電極30bの
配置位置を回転中心として、図示しない駆動装置により
回転駆動される。このため、複数本の強誘電体31は、
線電極30bを回転中心として、線電極30bの周囲位
置において回転移動する。
【0056】反応管30では、強誘電体31を配置して
いるため、電界強度を表す図8、及び、電界強度分布を
表す(電気力線を点線で表す)図9に示すように、線電
極30bから円筒電極30aに向かうにつれて(反応管
の中心から半径方向の外側に向かうにつれて)減少して
いく電界強度の減少割合を緩和する。このため、反応容
器30の半径方向に関して、電界強度を均一化でき、半
径方向に均一にストリーマ放電を発生させることができ
る。
【0057】また、強誘電体31が、線電極30bを回
転中心として、線電極30bの周囲位置において回転移
動するため、電界強度の強い部分(図8において電気力
線を描いている部分)が、周方向に沿い移動していくた
め、経時的にみて、周方向においても電界強度の均一化
を図ることができ、周方向に関してもストリーマ放電を
均一に発生させることができる。
【0058】このように、径方向および周方向に関して
ストリーマ放電を均一に発生させることができるので、
径方向および周方向に関して、プラズマ(電子及びイオ
ン)ひいてはラジカルを均一に発生させることができ
る。このため、ダイオキシンを含む灰が反応空間30c
のどの位置に収納されても、収納位置にかかわらず、ダ
イオキシンが均一に分解されて無害化される。
【0059】また、強誘電体31が周方向に回転移動す
るため、反応空間30cに収納された灰が物理的に攪拌
されるため、均一化が更に促進されると共に、灰の凝集
を防止することができ、この点からもダイオキシンの分
解促進を図ることができる。
【0060】この反応管30は、バッチ式の無害化処理
装置にも連続式の無害化処理装置にも適用することがで
きる。
【0061】<第3実施例>次に本発明の第3実施例に
かかる無害化処理装置を説明する。第3実施例は第1実
施例における反応管3を、図10に示す反応管300に
取り替えた構成となっている。このため全体構成は省略
し、反応管300を中心に説明する。なお、線電極30
0bの代わりにロッド状電極を採用することができ、ロ
ッド状電極であっても同様な効果が得られるが、以下の
説明では線電極300bを例として説明する。
【0062】反応管(反応容器)300では、図10に
示すように、円筒電極300aの内部空間に線電極30
0bが配置されている。また円筒電極300aと線電極
300bとの間の反応空間300cには、円筒電極30
0aの内周面に接して円筒状の誘電体301が配置され
ている。誘電体301は、強誘電体である必要はなく、
アルミナ等を円筒状に形成したものであってもよい。こ
のような誘電体301は、線電極300bを中心とし
て、円筒電極300aの内周面に接して同心状に配置さ
れている。
【0063】反応管300では、円筒電極300aの内
周面に接して円筒状の強誘電体301を配置しているた
め、印加される電圧を更に上昇させた場合でもアーク放
電に転移せず、分解率向上に有効なストリーマ放電を持
続させることができる。電界強度を表す図8に示すよう
に、線電極300bから円筒電極300aに向かうにつ
れて(反応管の中心から半径方向の外側に向かうにつれ
て)減少していく電界強度の減少割合を緩和する。この
ため、反応容器300の半径方向に関して、電界強度を
均一化でき、半径方向に均一にストリーマ放電を発生さ
せることができる。
【0064】また、図7に示す回転移動する複数の強誘
電体31を、図10に示す反応管300に組み込むこと
もできる。このときにも、印加される電圧を更に上昇さ
せた場合でもアーク放電に転移せず、分解率向上に有効
なストリーマ放電を持続させることができる。強誘電体
301が円筒状となっているため、周方向に沿う方向に
おいても電界強度の均一化を図ることができ、周方向に
関してもストリーマ放電を均一に発生させることができ
る。
【0065】このように、径方向および周方向に関して
ストリーマ放電を均一に発生させることができるので、
径方向および周方向に関して、プラズマ(電子及びイオ
ン)ひいてはラジカルを均一に発生させることができ
る。このため、ダイオキシンを含む灰が反応空間300
cのどの位置に収納されても、収納位置にかかわらず、
ダイオキシンが均一に分解されて無害化される。
【0066】この反応管300は、バッチ式の無害化処
理装置にも連続式の無害化処理装置にも適用することが
できる。
【0067】<第4実施例>次に本発明の第4実施例に
かかる無害化処理装置を用いた無害化処理システムを説
明する。図11に示すように、無害化装置101はケー
シング102内に多数の反応管103を配置して構成さ
れている。反応管103は、図1及び図2に示したもの
と同様な構成のものである。またケーシング102の上
下端面は開口している。
【0068】無害化装置101の上面には出口ヘッダ1
21が連結されており、無害化装置101の下面には入
口ヘッダ122が連結されている。入口ヘッダ122と
出口ヘッダ121は循環形のダクト123により連結さ
れている。
【0069】ダクト123にはファン124が介装され
ると共に、投入部125,排出部126及び添加ガス注
入口127が備えられている。投入部125はファン1
24の前後に備えられている。また、反応管103の円
筒電極103aと線電極103bとの間の反応空間10
3cには高電圧のパルス電圧が印加され、プラズマによ
りラジカルが発生する。なお、線電極103bの代わり
にロッド状電極を採用することもできる。
【0070】かかる処理システムでは、投入部125か
らダイオキシンを含む一定量の灰を投入してから投入部
125を閉じ、ファン124を作動させると、灰は、無
害化装置101とダクト123を通じて循環流通する。
このとき、無害化装置101を通過するときに、ダイオ
キシンがラジカル化学反応により分解されて無害化され
る。
【0071】しかも、ファン124により強制循環して
いるため、灰粒子の径が小さいとき(1μm以下)であ
っても、灰粒子の間に気体層を設けることができ、この
結果、放電(プラズマ)の発生を確実に行うことができ
る。このため、粒子径の小さい灰であっても、確実にダ
イオキシンの無害化処理ができる。
【0072】この処理の際に、添加ガス注入口127か
らダクト123内にアンモニアや酸素を注入すると、N
Hラジカル(NH・)、NH2 ラジカル(NH2 ・)、
酸素ラジカル(O・)、オゾンが多量に発生して、ラジ
カル化学反応及び化学反応の促進を図ることができ、無
害化処理の効率が向上する。
【0073】なお図11の例において、反応管103と
して、図10に示す反応管300を採用することもでき
る。このようにすればアーク放電の発生を防止できる。
【0074】また図11の例において、パルス電圧のパ
ルス幅Tは、正側の電極と負側の電極との間の距離を
d、気体中でのストリーマ放電進展速度をv、円周率を
πとすると、次式で表される幅以上とする。 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
v) 〔秒〕 また前記パルス電圧の電圧値は、正側の電極と負側の電
極との間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にす
る。ただし、λは正側の電極と負側の電極との間の気体
温度が300K、気体圧力が1気圧時の気体分子同士の
平均距離(平均自由行程に比例する定数)を1としたと
きの相対値である。
【0075】図11の例では、灰と空気が混合している
が、灰は空気中に浮遊している状態となっているため、
灰の形状による放電距離の差が殆どなくなるため、パル
ス幅Tを上記式のように規定している。
【0076】なお上述した無害化処理装置1(または1
01)からの排ガスに、ダイオキシンが含まれる可能性
があるため、図12に示すように、無害化処理装置1
(101)の排出ダクトにパルスプラズマ式排ガス処理
装置200を設置して、排ガスすべてをパルスプラズマ
式排ガス処理装置200により無害化して排気する。
【0077】また上述した本発明の各実施例によれば、
つぎのような効果や特長がある。 (1)焼却炉前のRDF(Refuse Derive Fuel)のダイ
オキシン分解が可能。 (2)高濃度ダイオキシン汚染物質(固体)中のダイオ
キシン分解ができ、灰や土壌以外の汚染物質にも適用で
きる。 (3)液中ダイオキシン(焼却炉排水等)を分離し、固
体状にしたダイオキシン分解にも適用可能である。 (4)灰・土壌中のダイオキシン分解率は99パーセン
ト以上を期待できる。 (5)乾式処理である。
【0078】
【発明の効果】以上説明したように本発明の無害化処理
方法では、パルス幅が極めて短い高電圧のパルス電圧が
印加される正電極と負電極を有する反応容器に、有害物
質が含まれている灰・土壌を入れ、正電極と負電極との
間で発生した放電に起因するプラズマによりラジカルを
発生させ、このラジカルや副生したオゾンにより前記有
害物質を分解させるようにした。このため本発明では、
ラジカル反応により有害物質を効果的に分解して無害化
することができる。
【0079】この場合、前記灰・土壌は、連続的または
断続的に前記反応容器に入れられるようにしてもよい。
このため灰・土壌の量や有害物質の含有量に応じて、最
適な処理形態を採用することができる。
【0080】しかも、本発明の無害化処理装置では、前
記パルス電圧のパルス幅Tは、前記正電極と前記負電極
との間の距離をd、気体中でのストリーマ放電進展速度
をv、円周率をπとすると、次式で表される幅以上と
し、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
v)×π/2〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、前記正電極と前記負電極と
の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
な値とする。ただし、λは前記正電極と前記負電極との
間の気体温度が300K、気体圧力が1気圧時の気体分
子同士の平均距離(平均自由行程に比例する定数)を1
としたときの相対値である。このため、ストリーマ放電
を良好に発生させることができ、有害物質の分解を効率
的に行うことができる。
【0081】また本発明では、有害物質が含まれている
灰・土壌が入れられる反応容器に、正電極と負電極とが
備えられ、前記正電極と前記負電極には、パルス幅が極
めて短い高電圧のパルス電圧が印加される構成とした。
【0082】このような無害化処理装置によれば、電極
間で発生した放電に起因するプラズマによりラジカルが
発生し、このラジカルや副生したオゾンにより有害物質
を分解して無害化することができる。
【0083】また本発明では、有害物質が含まれている
灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、この円
筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド状電
極とが備えられ、前記線電極またはロッド状電極と前記
円筒電極には、パルス幅が極めて短い高電圧のパルス電
圧が印加される構成とした。
【0084】このような無害化処理装置によれば、円筒
電極と線電極またはロッド状電極との間で均一な放電が
行われ、ラジカルが均一に発生して、有害物質の収納位
置に関係なく有害物質を均一に分解して無害化すること
ができる。
【0085】また本発明では、有害物質が含まれている
灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、この円
筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド状電
極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電極ま
たはロッド状電極との間に強誘電体が配置されており、
前記線電極またはロッド状電極と前記円筒電極には、パ
ルス幅が極めて短い高電圧のパルス電圧が印加される構
成とした。
【0086】このような無害化処理装置によれば、円筒
電極と線電極またはロッド状電極との間で均一な放電が
行われ、ラジカルが均一に発生して、有害物質の収納位
置に関係なく有害物質を均一に分割して無害化すること
ができる。また、強誘電体を配置したため、電界分布が
更に均一化され、有害物質の収納位置に関係なく有害物
質を更に均一に分解して無害化することができる。
【0087】また本発明では、有害物質が含まれている
灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、この円
筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド状電
極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電極ま
たはロッド状電極との間には線電極またはロッド状電極
を回転中心として線電極またはロッド状電極の周囲を回
転移動する強誘電体が配置されており、前記線電極また
はロッド状電極と前記円筒電極には、パルス幅が極めて
短い高電圧のパルス電圧が印加される構成とした。
【0088】このような無害化処理装置によれば、円筒
電極と線電極またはロッド状電極との間で均一な放電が
行われ、ラジカルが均一に発生して、有害物質の収納位
置に関係なく有害物質を均一に分割して無害化すること
ができる。また、強誘電体を配置したため、電界分布が
更に均一化され、有害物質の収納位置に関係なく有害物
質を更に均一に分解して無害化することができる。しか
も、強誘電体が回転移動することにより灰・土壌を物理
的に攪拌することができ、分解の均一化が更に進む。
【0089】また本発明では、有害物質が含まれている
灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、この円
筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド状電
極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電極ま
たはロッド状電極との間には、前記円筒電極の内周面に
接して円筒状の誘電体が配置されており、前記線電極ま
たはロッド状電極と前記円筒電極には、パルス幅が極め
て短い高電圧のパルス電圧が印加される構成とした。
【0090】このような無害化処理装置によれば、更に
高い高電圧パルスを印加しても、アーク放電に転移しな
い構成となり、更なる分解率向上が可能となる。
【0091】また本発明では、有害物質が含まれている
灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、この円
筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド状電
極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電極ま
たはロッド状電極との間には線電極またはロッド状電極
を回転中心として線電極またはロッド状電極の周囲を回
転移動する強誘電体が配置されており、更に、前記円筒
電極と前記線電極またはロッド状電極との間には、前記
円筒電極の内周面に接して円筒状の誘電体が配置されて
おり、前記線電極またはロッド状電極と前記円筒電極に
は、パルス幅が極めて短い高電圧のパルス電圧が印加さ
れる構成とした。
【0092】このような無害化処理装置によれば、更に
高い高電圧パルスを印加しても、アーク放電に転移しな
い構成となり、更なる分解率向上が可能となる。また、
このような無害化処理装置によれば、円筒電極と線電極
またはロッド状電極との間で均一な放電が行われ、ラジ
カルが均一に発生して、有害物質の収納位置に関係なく
有害物質を均一に分割して無害化することができる。ま
た、円筒状の誘電体を配置したため、半径方向及び周方
向に関して電界分布が更に均一化され、有害物質の収納
位置に関係なく有害物質を更に均一に分解して無害化す
ることができる。
【0093】また本発明では、有害物質が含まれている
灰・土壌が入れられる反応容器に、正電極と負電極とが
備えられ、前記正電極と前記負電極には、パルス幅が極
めて短い高電圧のパルス電圧が印加されるとともに、前
記反応容器の出口から灰・土壌を取り出し、取り出した
灰・土壌を前記反応容器の入口に戻す循環機構を備えて
いる構成とした。
【0094】このような無害化処理装置によれば、微細
な灰であっても灰粒子の間に気体層を設けることができ
るため、放電(プラズマ)の発生を確実に行うことがで
き、粒子径の小さい灰であっても、確実に有害物質の無
害化ができる。
【0095】また本発明では、有害物質が含まれている
灰・土壌が入れられる反応容器に、円筒電極と、この円
筒電極の内部空間に配置された線電極またはロッド状電
極とが備えられると共に、前記円筒電極と前記線電極ま
たはロッド状電極との間には、前記円筒電極の内周面に
接して円筒状の誘電体が配置されており、前記線電極ま
たはロッド状電極と前記円筒電極には、パルス幅が極め
て短い高電圧のパルス電圧が印加されるとともに、前記
反応容器の出口から灰・土壌を取り出し、取り出した灰
・土壌を前記反応容器の入口に戻す循環機構を備えてい
る構成とした。
【0096】このような無害化処理装置によれば、更に
高い電界を印加でき、更なる分解率向上を図ることがで
きる。
【0097】また本発明装置では、前記パルス電圧のパ
ルス幅Tは、正側の電極と負側の電極との間の距離を
d、気体中でのストリーマ放電進展速度をv、円周率を
πとすると、次式で表される幅以上とし、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
v)×π/2〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、正側の電極と負側の電極と
の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
な値とした。ただし、λは正側の電極と負側の電極との
間の気体温度が300K、気体圧力が1気圧時の気体分
子同士の平均距離(平均自由行程に比例する定数)を1
としたときの相対値である。
【0098】かかる構成としたため、本発明では、灰・
土壌が詰まっている状態においても、正電極と負電極と
の間にストリーマ放電を効果的に発生させることがで
き、多量のラジカルを生成することができる。この結
果、有害物質を効率良く分解できると共に、効率が向上
する。
【0099】また本発明装置では、前記パルス電圧のパ
ルス幅Tは、正側の電極と負側の電極との間の距離を
d、気体中でのストリーマ放電進展速度をv、円周率を
πとすると、次式で表される幅以上とし、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
v) 〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、正側の電極と負側の電極と
の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
な値とした。ただし、λは正側の電極と負側の電極との
間の気体温度が300K、気体圧力が1気圧時の気体分
子同士の平均距離(平均自由行程に比例する定数)を1
としたときの相対値である。
【0100】かかる構成としたため、本発明では、灰等
が浮遊した状態で空気に混在していても、正電極と負電
極との間にストリーマ放電を効果的に発生させることが
でき、多量のラジカルを生成することができる。この結
果、有害物質を効率良く分解できると共に、効率が向上
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例にかかる無害化処理装置を
示す正面断面図。
【図2】本発明の第1実施例にかかる無害化処理装置を
示す透視斜視図。
【図3】第1実施例に用いる反応管を示す断面図。
【図4】灰中を進展するストリーマを示す模式図。
【図5】エチレン分解特性試験結果を示す特性図。
【図6】印加電圧と分解率の関係を示す特性図。
【図7】第2実施例を用いる反応管を示す斜視図。
【図8】反応管に強誘電体を配したときの電界強度を示
す特性図。
【図9】反応管に強誘電体を配したときの電界強度分布
を示す特性図。
【図10】第3実施例に用いる反応管を示す斜視図。
【図11】第4実施例にかかる無害化処理システムを示
す構成図。
【図12】無害化処理装置にパルスプラズマ式排ガス処
理装置を組み合わせたシステムを示す構成図。
【符号の説明】
1 無害化処理装置 2 ケーシング 2a 上蓋 2b 下蓋 3 反応管(反応容器) 3a 円筒電極 3b 線電極 3c 反応空間 10 電源 30 反応管 30a 円筒電極 30b 線電極 30c 反応空間 31 強誘電体 32 回転円板 101 無害化処理装置 102 ケーシング 103 反応管 103a 円筒電極 103b 線電極 103c 反応空間 121 出口ヘッダ 122 入口ヘッダ 123 ダクト 124 ファン 125 投入部 126 排出部 300 反応管 300a 円筒電極 300b 線電極 300c 反応空間 301 誘電体
フロントページの続き (72)発明者 川添 浩平 長崎県長崎市深堀町5丁目717番1号 三菱重工業株式会社長崎研究所内 (56)参考文献 特開2000−354841(JP,A) 特開 平9−299740(JP,A) 特開2000−126542(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B09B 3/00 - 5/00 B09C 1/00 - 1/10 B01J 19/00 - 19/32

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パルス幅が極めて短い高電圧のパルス電
    圧が印加される正電極と負電極を有する反応容器に、有
    害物質が含まれている灰・土壌を入れ、正電極と負電極
    との間で発生した放電に起因するプラズマによりラジカ
    ルを発生させ、このラジカルにより前記有害物質を分解
    させることを特徴とする灰・土壌の無害化処理方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記灰・土壌は、連
    続的または断続的に前記反応容器に入れられることを特
    徴とする灰・土壌の無害化処理方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2において、 前記パルス電圧のパルス幅Tは、前記正電極と前記負電
    極との間の距離をd、気体中でのストリーマ放電進展速
    度をv、円周率をπとすると、次式で表される幅以上と
    し、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
    v)×π/2〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、前記正電極と前記負電極と
    の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
    な値としたことを特徴とする灰・土壌の無害化処理方
    法。ただし、λは前記正電極と前記負電極との間の気体
    温度が300K、気体圧力が1気圧時の気体分子同士の
    平均距離(平均自由行程に比例する定数)を1としたと
    きの相対値である。
  4. 【請求項4】 有害物質が含まれている灰・土壌が入れ
    られる反応容器に、正電極と負電極とが備えられ、前記
    正電極と前記負電極には、パルス幅が極めて短い高電圧
    のパルス電圧が印加されることを特徴とする灰・土壌の
    無害化処理装置。
  5. 【請求項5】 有害物質が含まれている灰・土壌が入れ
    られる反応容器に、円筒電極と、この円筒電極の内部空
    間に配置された線電極またはロッド状電極とが備えら
    れ、前記線電極またはロッド状電極と前記円筒電極に
    は、パルス幅が極めて短い高電圧のパルス電圧が印加さ
    れることを特徴とする灰・土壌の無害化処理装置。
  6. 【請求項6】 有害物質が含まれている灰・土壌が入れ
    られる反応容器に、円筒電極と、この円筒電極の内部空
    間に配置された線電極またはロッド状電極とが備えられ
    ると共に、前記円筒電極と前記線電極またはロッド状電
    極との間に強誘電体が配置されており、前記線電極また
    はロッド状電極と前記円筒電極には、パルス幅が極めて
    短い高電圧のパルス電圧が印加されることを特徴とする
    灰・土壌の無害化処理装置。
  7. 【請求項7】 有害物質が含まれている灰・土壌が入れ
    られる反応容器に、円筒電極と、この円筒電極の内部空
    間に配置された線電極またはロッド状電極とが備えられ
    ると共に、前記円筒電極と前記線電極またはロッド状電
    極との間には線電極またはロッド状電極を回転中心とし
    て線電極またはロッド状電極の周囲を回転移動する強誘
    電体が配置されており、前記線電極またはロッド状電極
    と前記円筒電極には、パルス幅が極めて短い高電圧のパ
    ルス電圧が印加されることを特徴とする灰・土壌の無害
    化処理装置。
  8. 【請求項8】 有害物質が含まれている灰・土壌が入れ
    られる反応容器に、円筒電極と、この円筒電極の内部空
    間に配置された線電極またはロッド状電極とが備えられ
    ると共に、前記円筒電極と前記線電極またはロッド状電
    極との間には、前記円筒電極の内周面に接して円筒状の
    誘電体が配置されており、前記線電極またはロッド状電
    極と前記円筒電極には、パルス幅が極めて短い高電圧の
    パルス電圧が印加されることを特徴とする灰・土壌の無
    害化処理装置。
  9. 【請求項9】 有害物質が含まれている灰・土壌が入れ
    られる反応容器に、円筒電極と、この円筒電極の内部空
    間に配置された線電極またはロッド状電極とが備えられ
    ると共に、前記円筒電極と前記線電極またはロッド状電
    極との間には線電極またはロッド状電極を回転中心とし
    て線電極またはロッド状電極の周囲を回転移動する強誘
    電体が配置されており、 更に、前記円筒電極と前記線電極またはロッド状電極と
    の間には、前記円筒電極の内周面に接して円筒状の誘電
    体が配置されており、 前記線電極またはロッド状電極と前記円筒電極には、パ
    ルス幅が極めて短い高電圧のパルス電圧が印加されるこ
    とを特徴とする灰・土壌の無害化処理装置。
  10. 【請求項10】有害物質が含まれている灰・土壌が入れ
    られる反応容器に、正電極と負電極とが備えられ、前記
    正電極と前記負電極には、パルス幅が極めて短い高電圧
    のパルス電圧が印加されるとともに、 前記反応容器の出口から灰・土壌を取り出し、取り出し
    た灰・土壌を前記反応容器の入口に戻す循環機構を備え
    ていることを特徴とする灰・土壌の無害化処理装置。
  11. 【請求項11】有害物質が含まれている灰・土壌が入れ
    られる反応容器に、円筒電極と、この円筒電極の内部空
    間に配置された線電極またはロッド状電極とが備えられ
    ると共に、前記円筒電極と前記線電極またはロッド状電
    極との間には、前記円筒電極の内周面に接して円筒状の
    誘電体が配置されており、前記線電極またはロッド状電
    極と前記円筒電極には、パルス幅が極めて短い高電圧の
    パルス電圧が印加されるとともに、 前記反応容器の出口から灰・土壌を取り出し、取り出し
    た灰・土壌を前記反応容器の入口に戻す循環機構を備え
    ていることを特徴とする灰・土壌の無害化処理装置。
  12. 【請求項12】 請求項4乃至請求項9のいずれか一項
    において、 前記パルス電圧のパルス幅Tは、正側の電極と負側の電
    極との間の距離をd、気体中でのストリーマ放電進展速
    度をv、円周率をπとすると、次式で表される幅以上と
    し、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
    v)×π/2〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、正側の電極と負側の電極と
    の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
    な値としたことを特徴とする灰・土壌の無害化処理装
    置。ただし、λは正側の電極と負側の電極との間の気体
    温度が300K、気体圧力が1気圧時の気体分子同士の
    平均距離(平均自由行程に比例する定数)を1としたと
    きの相対値である。
  13. 【請求項13】 請求項10または請求項11におい
    て、 前記パルス電圧のパルス幅Tは、正側の電極と負側の電
    極との間の距離をd、気体中でのストリーマ放電進展速
    度をv、円周率をπとすると、次式で表される幅以上と
    し、 パルス幅T=(電極間距離d/ストリーマ放電進展速度
    v) 〔秒〕 前記パルス電圧の電圧値は、正側の電極と負側の電極と
    の間の電界強度を5・λ〔kV/cm〕以上にするよう
    な値としたことを特徴とする灰・土壌の無害化処理装
    置。ただし、λは正側の電極と負側の電極との間の気体
    温度が300K、気体圧力が1気圧時の気体分子同士の
    平均距離(平均自由行程に比例する定数)を1としたと
    きの相対値である。
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