JP3343281B2 - 非線形光学材料、非線形光学素子およびその製造方法 - Google Patents

非線形光学材料、非線形光学素子およびその製造方法

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JP3343281B2 JP16348793A JP16348793A JP3343281B2 JP 3343281 B2 JP3343281 B2 JP 3343281B2 JP 16348793 A JP16348793 A JP 16348793A JP 16348793 A JP16348793 A JP 16348793A JP 3343281 B2 JP3343281 B2 JP 3343281B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、重合性官能基を有する
シアノビニル系芳香族化合物、そのホモポリマー叉はコ
ポリマーからなる各種光素子への応用が可能な高分子系
非線形光学材料及びこれを用いた非線形光学素子および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】非線形光学材料はレーザー光の強電界
下、2次以上の非線形応答を示す材料である。現象とし
ては、波長変換、発振、スイッチングなどの種ゝの効果
を起こすために、近年オプトエレクトロニクス材料とし
て注目されている。この様な材料としては、格子の振動
が関与する無機化合物結晶よりも、π電子系を有する有
機化合物の方が優れているとされており、低分子有機化
合物の単結晶、高分子中に非線形光学特性を示す化合物
を分散した組成物、非線形光学特性を示す化合物を高分
子の側鎖に導入した組成物などがある。
【0003】非線形光学特性を示す化合物の設計指針と
しては、π電子共役系を有する分子に強い電子吸引性置
換基と電子供与性置換基を導入する方法が有力かつ一般
的である。また、高分子を用いた非線形光学材料として
は、結晶性ポリマー中で高分子の結晶化と共に非線形光
学特性を示す化合物を結晶化させた組成物(特開平1−
274122号公報、特開平1−188835号公報)
や、高分子の側鎖に非線形光学特性を示す化合物を導入
させた組成物(特開昭63−112545号公報、特開
昭63−41832号公報)が知られている。また、高
分子側鎖に非線形光学特性を示す化合物を導入する際
に、化合物側の置換基と高分子主鎖側の置換基との間で
光による架橋反応を起こさせ、高分子の主鎖間を非線形
光学特性を示す化合物で架橋させることにより非線形光
学特性の安定化を図った例もある。(マクロモレキュー
ル, ケミストリー.,ラピッドコミュニケーション,12,63
-68,1991)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】優れた非線形光学材料
であるためには、分子レベルでは、強い光電場の下で影
響が現われてくる2次の超分極率βが大きい化合物が望
ましく、かつ結晶という集合体となった時に、反転対称
中心を有しない構造となっていなければならない。しか
し、非線形光学特性を大きく発現させるため、2次の超
分極率を大きくしようとπ電子共役系を有する有機化合
物に強い電子供与性及び電子吸引性置換基を導入した低
分子有機化合物においては結晶化が難しく、結晶ができ
ても分子レベルにおいて大きな双極子モーメントを持つ
ことで、その双極子モーメントを打ち消し合うように結
晶化が起こり、結晶レベルでの非線形光学特性が発現し
なくなるといった課題があった。そして、大きな非線形
光学特性を得るために強い電子吸引性及び電子供与性置
換基を導入することにより、化合物の吸収スペクトルが
長波長側に伸び、近赤外波長領域の半導体レーザーによ
る波長変換を行う際には、基本波あるいは発生する2次
高調波を吸収し、波長変換を目的とした非線形光学材料
としては使用できないという課題があった。
【0005】また、通常高分子材料を非線形光学材料と
して用いる際には、単に薄膜形成しただけでは等方性と
なり大きな超分極率を示す化合物を側鎖部に導入したと
しても2次の非線形光学特性が有効に発現されず、さら
に非線形光学特性を示す化合物を高分子中に分散させた
組成物にいたっては全くの偶然性のみに左右されてしま
う。そのために、高分子中に超分極率が大きく非線形光
学特性を示す化合物を分散させた組成物、あるいは高分
子側鎖に超分極率が大きくなるような化合物を導入した
高分子材料においては、側鎖部及び分散した化合物が高
分子中で運動できるようなガラス転移温度近傍で電極を
用いてあるいはコロナ帯電を利用して電場を印加し、化
合物及び側鎖部の配向を促している。しかし、この様な
系においては電場の印加を停止すると同時に化合物及び
側鎖部の配向緩和が起こり、性能が経時的に低下してく
るといった課題があった。
【0006】さらにこの様な配向緩和を抑え、非線形光
学特性の経時安定性を向上させるために、高分子鎖間に
非線形光学特性を示す化合物を光反応により架橋させる
方法もとられているが、紫外光等の大量の光を照射する
必要があり光照射によって非線形光学特性を示す化合物
部位が損傷したり、架橋反応において十分な反応率を達
成することができないといった課題があった。
【0007】本発明はこれらの課題を解決するため、強
い電子吸引性置換基と弱い電子供与性部位を芳香環に有
した超分極率は大きいが吸収波長端は短い重合性官能基
を有する新規なシアノビニル系芳香族化合物から得られ
るホモまたはコポリマーからなる非線形光学材料を提供
することを目的とする。また、前記ホモ及びコポリマー
を用いた配向緩和が少なく非線形光学特性の経時安定性
に優れ、有機溶剤への高い溶解性により成膜性に優れた
非線形光学材料およびこれを用いた非線形光学素子なら
びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明の非線形光学材料は、次の構成を有する。 (1)下記の式(化3)で表わされる重合性官能基を有
するシアノビニル系芳香族化合物を重合性単位として含
む高分子化合物からなる非線形光学材料。
【0009】
【化3】
【0010】(ただし式中、R1 はメチル基もしくは水
素原子、R2 は(−CH2 −)n 、nは2もしくは3、
3 は−CNもしくは−COOR4 を表す。ここで、R
4 は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状炭化水素基を表
す。) (2)高分子化合物が、前記(1)項に記載の(化3)
で表わされる重合性官能基を有するシアノビニル系芳香
族化合物のホモポリマーである前記(1)項に記載の非
線形光学材料。
【0011】(3)高分子化合物が、前記(1)項に記
載の(化3)で表わされる重合性官能基を有するシアノ
ビニル系芳香族化合物と、これと共重合可能なコモノマ
ーとのコポリマーを含む高分子化合物である前記(1)
項に記載の非線形光学材料。
【0012】(4)高分子化合物が、前記(1)項に記
載の(化3)で示される化合物と下記の構造式(化4)
で示される化合物とをコモノマーとして含むコポリマー
を含む高分子化合物である前記(1)項に記載の非線形
光学材料。
【0013】
【化4】
【0014】(ただし式中、R5 は水素原子または炭素
数1〜2の炭化水素基を表す。) (5)高分子化合物が、前記(2)、(3)または
(4)項に記載のホモまたはコポリマーであって、配向
された高分子化合物である前記(1)項に記載の非線形
光学材料。
【0015】(6)高分子化合物が、前記(4)項に記
載のコポリマーと多官能性モノマーとを含む配向された
硬化物からなる高分子化合物である請求項1に記載の非
線形光学材料。
【0016】(7)多官能性モノマ−が芳香族ないしは
脂肪族ポリアミン類である前記(6)項に記載の非線形
光学材料。 (8)基板、透明電極層、バッファ層、前記(2)また
は(3)項に記載のホモまたはコポリマーを含む高分子
組成物の配向された薄膜層、および、バッファ層がこの
順に積層されてなる非線形光学素子。
【0017】(9)基板、透明電極層、バッファ層、前
記(4)項に記載のコポリマーを含む高分子組成物の薄
膜層、および、バッファ層がこの順に積層されてなり、
前記高分子組成物の薄膜層の一部を形成する導波路部分
が多官能モノマーを含み、配向され硬化された層からな
ることを特徴とする非線形光学素子。
【0018】(10)透明電極層が形成された基板上に
バッファ層を形成し、更にその上に前記(2)または
(3)項に記載のホモまたはコポリマーを含む高分子組
成物の薄膜層を形成し、加熱しながら電場印加して前記
薄膜層を配向させ、次いで前記薄膜層上部にバッファ層
を形成することを特徴とする非線形光学素子の製造方
法。
【0019】(11)透明電極層が形成された基板上に
バッファ層を形成し、更にその上に請求項4に記載のコ
ポリマーを含む高分子組成物の薄膜層を形成し、次いで
前記薄膜層の一部を除いた部分に保護層を形成し、次い
で気相あるいは液相からの拡散により多官能性モノマー
を前記保護層で覆われていない前記薄膜層部にドーピン
グし、加熱しながら電場印加して前記薄膜層のドーピン
グされた部分を配向、硬化させ、次いで更にこの上にバ
ッファ層を形成することを特徴とする非線形光学素子の
製造方法。
【0020】
【作用】本発明の(化1)に表わされる重合性官能基を
有するシアノビニル系芳香族化合物は、シアノビニル基
を有することにより電子吸引性が強く、電子密度分布の
偏りが大きくなっている。また、π電子が移動できる共
役長も長くなっているために大きな非線形光学効果を発
現させるための二次の超分極率を示す分子構造となって
いる。
【0021】さらに、本発明の化合物においては芳香環
に結合している−OR2 部位が弱い電子供与性置換基と
して作用しているためにニトロアニリン系化合物に比べ
て吸収波長端が短波長側となっている。例えば2次の超
分極率βにおいて、半経験的分子軌道法の一つ、AM1
法( Austin Model 1 法 )による計算から本発明の(化
1)に表わされる化合物でR3 がシアノ基の場合、非線
形光学効果に寄与する部位に類似した低分子系化合物
(p−ジシアノビニル)アニソールのβは10.3となり、
低分子系における非線形光学材料として一般的な、p−
ニトロアニリンの6.0 、4−(N, N−ジメチル)ニト
ロアニリンの9.2 に対して優れた値を持つことがわか
る。
【0022】一方、吸収波長においても弱い電子供与性
置換基と強い電子吸引性置換基を組み合わせた分子構造
となっているために、これらの化合物よりも吸収波長端
が50nm以上短波長側にシフトし、近赤外波長領域の半
導体レーザーを用いた波長変換材料としても望ましい。
さらに末端にシアノ基あるいはアクリル酸エステル部位
を有することにより、高分子化合物にしてもニトロ基を
置換基としてもつ化合物よりも有機溶剤への溶解性が向
上し、製膜性にも優れた化合物となっている。
【0023】また、高分子化合物が、(化1)で表わさ
れる重合性官能基を有するシアノビニル系芳香族化合物
のホモポリマーである本発明の好ましい態様の非線形光
学材料とすることにより、非線形光学特性を示す部位の
密度が大きくなり、より大きな非線形光学特性を発現し
得る非線形光学材料が提供できる。
【0024】また、高分子化合物が、(化1)で表わさ
れる重合性官能基を有するシアノビニル系芳香族化合物
と、これと共重合可能なコモノマーとのコポリマーを含
む高分子化合物である本発明の好ましい態様の非線形光
学材料とすることにより、各種有機溶媒への溶解性の向
上、成膜性の優れた加工性の付与、ガラス転移温度(T
g)の向上あるいは低減といったことを備えた材料とす
ることができる。
【0025】また、高分子化合物が、(化1)で示され
る化合物と構造式(化2)で示される化合物とをコモノ
マーとして含むコポリマーを含む高分子化合物である本
発明の好ましい態様の非線形光学材料とすることによ
り、グリシジル基を有するために、アミン等のアルカリ
類および酸類等の存在下で開環反応が起こる。本発明に
おいては、電場印加による配向時に加熱することにより
グリシジル基が開環し、2次元、3次元の架橋構造とな
るために、配向処理後の硬化物においてはポリマー主鎖
の熱振動が規制され、配向緩和の少ないポリマーの構造
及び物性の経時安定性にも優れた非線形光学材料とする
ことが可能となる。
【0026】また、高分子化合物が、前述した(化1)
で表わされる化合物のホモポリマーまたはこれと共重合
可能なコポリマーであって、配向された高分子化合物で
ある本発明の好ましい態様の非線形光学材料とすること
により、高分子中の非線形光学特性を発揮する側鎖部位
による双極子モーメントが配向しているので、優れた非
線形光学特性を発現し得る非線形光学材料を提供でき
る。
【0027】また、高分子化合物が、前記(化1)で示
される化合物と前記(化2)で示される化合物とのコポ
リマーと多官能性モノマーとを含む配向された硬化物か
らなる高分子化合物である本発明の好ましい態様の非線
形光学材料とすることにより、更に経時安定性に優れ、
配向緩和の少ない非線形光学材料を提供することができ
る。
【0028】また、前記構成に於いて、多官能性モノマ
−が芳香族ないしは脂肪族ポリアミン類である本発明の
好ましい態様の非線形光学材料とすることにより、グリ
シジル基を含むコポリマーに適用した場合には、反応効
率が良く、より一層経時安定性に優れ、配向緩和の少な
い非線形光学材料を提供することができる。
【0029】また、前記本発明の第1番目の非線形光学
素子の発明に於いては、非線形光学特性に優れた高分子
系の非線形光学材料を用いた非線形光学素子を提供でき
る。また、前記本発明の第2番目の非線形光学素子の発
明に於いては、非線形光学特性ならびに経時安定性に優
れ、配向緩和の少ない高分子系の非線形光学材料を用い
た非線形光学素子を提供できる。
【0030】また、前記本発明の第1番目の非線形光学
素子の製造方法によれば、容易に、非線形光学特性に優
れた高分子系の非線形光学材料を用いた非線形光学素子
を製造することができる。
【0031】また、前記本発明の第2番目の非線形光学
素子の製造方法によれば、容易に、非線形光学特性なら
びに経時安定性に優れ、配向緩和の少ない高分子系の非
線形光学材料をを用いた非線形光学素子を製造すること
ができる。
【0032】また、更に、本発明における重合性官能基
を有するシアノビニル系芳香族化合物の各種有機溶剤に
対する溶解性が高いために、そのホモポリマー、これと
共重合可能なコモノマーとの共重合体及び(化2)で表
される化合物との共重合体を含む高分子組成物の有機溶
剤に対する溶解性も高く、薄膜作製も容易となり、共重
合体濃度を増すことによる厚膜化も可能である。また、
非線形光学特性を大きくするために非線形光学効果を示
す部位を側鎖の一部としてコポリマー中に多量に含有さ
せることができ、二次の超分極率βが小さな側鎖部位で
あっても大きな非線形光学特性を得ることができる。
【0033】
【実施例】本発明の重合性官能基を有するシアノビニル
系芳香族化合物は、上記(化1)で表わされるように、
メタあるいはエタアクリロイル基の部分において重合
し、芳香環を挟んで、非線形光学特性を表わすためのシ
アノビニル基及びアルコキシ部位を有していることを特
徴としている。
【0034】また、(化1)で表わされる化合物におい
てR1 はメチル基もしくは水素原子、R2 は(−CH2
−)n 、nは2もしくは3であり、R3 は−CNもしく
は−COOR4 を表す。ここでR4 は炭素数1〜4の直
鎖または分岐状炭化水素基である。さらに(化2)に表
わされる化合物においては、R5 は水素原子または炭素
数1〜2の炭化水素基である。
【0035】以下に(化1)で示される重合性官能基を
有するシアノビニル系芳香族化合物の合成方法を示す。
尚下記反応式(化5)〜(化7)に於けるR1 、R2
3は、前述のものと同一である。
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】すなわち、(化5)の反応においては、パ
ラ位にホルミル基を有するフェノール誘導体を例えばN
aOH水溶液などの塩基性水溶液中にて塩素その他のハ
ロゲン原子を有する直鎖もしくは分岐状アルコールと共
に還流させ、脱ハロゲン化水素反応を行い、アルキル鎖
末端にアルコール性ヒドロキシル基を持ったp−アルコ
キシホルミルベンゼン誘導体を得ることができる。
【0040】次に、(化6)の反応に示すように(化
5)の反応で得られた化合物をエタノール(EtOHと
略称した)等の適宜の溶媒中にてピペリジン、活性メチ
レン化合物(この式では例えばCH2 (CN)R3 )と
共に脱水反応を行い、例えばシアノビニル基を有する化
合物を得ることができる。
【0041】さらに(化7)の反応に示されるように
(化6)の反応で得られた化合物を、例えば乾燥テトラ
ヒドロフラン(THFと略称した)中にてトリエチルア
ミン(TEAと略称した)、塩化メタクリロイルまたは
塩化アクリロイルと反応させ、塩基性条件下での脱塩酸
反応により(化1)に示されるような化合物を得ること
ができる。
【0042】合成反応における反応溶媒としては化合物
及び反応触媒試薬に対して不活性溶媒であり、反応触媒
試薬を溶解することができるのであれば特に制限がな
く、クロロホルム、テトラヒドロフラン等、種ゝのもの
を使用することができる。特に(化5)の反応は塩基性
条件下で行なうために水酸化ナトリウム水溶液が好まし
く、(化6)の反応におけるアルデヒド基からシアノビ
ニル基への変換反応においては塩基性触媒を加えて、必
要により温度をかけながら反応を促進させるカルボニル
化合物、シアン酢酸エステル間の反応と類似の条件で行
なわれる。この場合、特に反応溶媒としてはエタノール
を用いることが望ましく、反応触媒としてはピペリジン
のような塩基性触媒(その他、ナトリウムメチラート、
ナトリウムアジド、酢酸ナトリウム、ベンジルアミン、
ジエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アンモニア、
脂肪族の第一及び第二アミン、アニリン、ニコチン等)
を用いることができる。前記反応の際の温度としては、
用いた原料成分の種類や組み合わせによって異なり、室
温で反応が進行するものもあり、一概に規定できないが
通常、室温から80℃程度で十分である。
【0043】また、(化6)の反応に用いる活性メチレ
ン化合物の合成方法はマロノニトリル等市販品を始め、
シアノ酢酸エステルの合成法に準じ、シアノ酢酸とアル
コール類とのエステル化により合成される。エステル化
反応には、一般的に酸触媒として塩酸または硫酸を用い
る方法、脱水剤として無水リン酸等を用いる方法、エス
テル化に伴い生成する水を過剰のアルコールを用い、水
とアルコールを共沸させて除く方法、水または水とアル
コールと2〜3成分系の共沸をする第三の溶剤を加えて
水を除く方法、シアノ酢酸メチルと高級アルコールとの
エステル交換反応による方法が挙げられる。
【0044】さらに、塩化アクリロイル、塩化メタクリ
ロイル、塩化エタクリロイル等の不飽和酸クロライドを
用いる(化7)の脱塩酸反応における反応触媒として
は、塩基性条件下での反応が望ましく塩基性触媒である
トリエチルアミン等を用いることが望ましい。
【0045】また、本発明の(化1)で示される重合性
官能基を有するシアノビニル系芳香族化合物と共重合さ
せる(化2)で示される化合物は市販品の他、グリシド
ールとアクリル酸誘導体のカルボキシル基との間での脱
水反応を伴うエステル化、塩化メタクリロイル等の不飽
和酸クロライドとグリシドールとの脱塩酸反応、メタク
リル酸メチルとグリシドールとの反応のようなエステル
交換反応等によっても合成することができる。
【0046】本発明でいう(化1)の重合性官能基を有
するシアノビニル系芳香族化合物を含むコポリマーを作
製する場合のコモノマーとしては、(化1)の重合性官
能基を有するシアノビニル系芳香族化合物と共重合し得
るものであれば特に限定されず、例えばビニルモノマー
が挙げられる。好適なビニルモノマーを例示すると、不
飽和有機酸類(例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレ
イン酸、イタコン酸等)、不飽和有機酸アミド類(例え
ばアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−プ
ロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミ
ド、N, N−ジエチルアクリルアミド等)、モノオレフ
ィン及びジオレフィン類(例えばスチレン、α−メチル
スチレン、α−エチルスチレン、イソブチレン、イソプ
レン等)、ハロゲン化モノオレフィン及びジオレフィン
類(例えばα−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、
2, 5−ジクロロスチレン、2, 5−ジブロモスチレ
ン、クロロブタジエン等)、有機及び無機酸のエステル
類(例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、
ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルバレ
レート、ビニルカプロエート、ビニルエナンテート、ビ
ニルベンゾエート、メチルメタクリレート、エチルメタ
クリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピ
ルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタ
クリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタク
リレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレ
ート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロ
ピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチル
アクリレート、イソブチルアクリレート、アミルアクリ
レート、ヘキシルアクリレート等)、及び有機ニトリル
類(例えばメタクリロニトリル、エタクリロニトリル)
等が挙げられる。
【0047】コポリマーの調製には、その他添加剤とし
て溶剤、連鎖移動剤等を加えてもよい。すなわち、コポ
リマーを構成するコモノマーを調製したい組成比に比例
した繰り返し構成単位におけるモル比にて秤量し、テト
ラヒドロフラン等の適宜の不活性溶媒に溶解させた後、
AIBN(α, α′−アゾビス(イソブチロニトリ
ル))を加えて反応液を80℃程度に加熱、反応を行う。
【0048】コポリマーを非線形光学材料として用いる
場合には、ポリマー中の前記(化1)の重合性官能基を
有するシアノビニル系芳香族化合物の比率は5重量%以
上であることが好ましく、さらに好ましくは20重量%
以上である。
【0049】尚、重合性官能基を有するシアノビニル系
芳香族化合物のホモポリマーについてもコモノマーを存
在させないだけで、上述したコポリマーの製造方法とほ
ぼ同一の方法が採用できる。
【0050】前記(化1)の重合性官能基を有するシア
ノビニル系芳香族化合物のホモまたはコポリマーは成膜
時にはアモルファス状態にあるため、2次の非線形光学
効果に関しては不活性である。そのために、電場印加に
よって前記(化1)の重合性官能基を有するシアノビニ
ル系芳香族化合物の芳香環及び芳香環に結合したシアノ
ビニル基の配向を促す必要がある。
【0051】電場印加は電場を印加した電極間に試料を
挟む方法や試料表面にコロナ帯電させる方法で行なうこ
とができる。この様な処理はポーリング(分極処理)と
呼ばれる。印加電場は通常10kV/mm以上で行える
が、効果的なポーリング処理のためには30kV/mm
以上が好ましい。印加電場の上限値はポリマーの絶縁破
壊の観点から100kV/mmが適当である。また、こ
の様なポーリングによる配向はポリマーがガラス状態に
ある様な場合(分子鎖が動きやすい状態にある場合)に
効率良く促進されるので、試料をガラス転移温度近傍ま
で加熱した状態で行なうことが望ましい。またさらに、
ポーリングを行なう前に延伸などの配向を促進する処理
を行なってもよい。
【0052】また、さらには本発明の(化1)で表され
る重合性官能基を有するシアノビニル系芳香族化合物と
(化2)で示される化合物とのコポリマー、あるいは、
(化1)で表される重合性官能基を有するシアノビニル
系芳香族化合物とこれと共重合可能な(化2)以外のグ
リシジル基を有するコモノマーとから得られるコポリマ
ーに多官能性モノマーを加えて電場印加によって試料を
ガラス転移温度近傍まで加熱した状態で配向させて硬化
物とすることにより、経時安定性に優れ、配向緩和のな
いより優れた非線形光学材料とする場合に用いられる多
官能性モノマーとしては、特にポリアミン類が好まし
く、ポリアミン類とコポリマー中のグリシジル基とを反
応させる方法が反応効率が良く好ましい。この様なポリ
アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリア
ミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタ
ミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族アミン
類及びm−フェニレンジアミン、p, p′ −ジアミノ
ジフェニルメタン、p, p′−ジアミノジフェニルスル
フォン等の芳香族アミン類が挙げられる。特にグリシジ
ル基を有するコポリマーの場合には、アミン等のアルカ
リ類または酸類等の存在下で開環反応が起こる。本発明
においては、分極時に加熱することによりグリシジル基
が開環し、2次元、3次元の架橋構造となる。この際用
いるアミンとしては、上述したものが挙げられるが、酸
としては、例えば、無水フタル酸やヘキサハイドロフタ
リックアンハイドライドなどのグリシジル基の開環触媒
などが挙げられる。
【0053】また、本発明に於いて薄膜作製時の有機溶
剤としては、テトラヒドロフラン、モノクロロベンゼ
ン、ジオキサン、アセトン、クロロホルム、アセトニト
リル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノー
ル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケ
トン等であり、その中でも、モノクロロベンゼン、ジオ
キサンが特に望ましい。
【0054】さらに本発明における非線形光学材料の製
造と共に非線形光学素子を製造する方法としては、以下
に示す工程に分割される。すなわち、1)電極となるイ
ンジウム錫酸化物(ITO)膜が形成されたガラス基板
上にクラッド層となるUV硬化性樹脂(紫外線硬化性樹
脂)等を用いたバッファ層を形成する工程、2)バッフ
ァ層の上に本発明より得られたホモポリマーまたはコポ
リマーを含む高分子組成物の薄膜層を形成する工程、
3)ホモポリマーまたはコポリマーを含む高分子組成物
の薄膜層上に保護層となるフォトレジスト層を形成し、
フォトレジストの一部を現像により除去することによっ
て導波路パターンを作製する工程、4)電場印加して配
向処理(分極処理)を行ないながら多官能性モノマーを
気相または液相から拡散させコポリマーとの間で架橋反
応をおこさせ導波路部分を完成させる工程、5)更にこ
の上にクラッド層となるバッファ層を形成する工程に分
割される。
【0055】またここで、本発明において(化1)で表
わされる重合性官能基を有するシアノビニル系芳香族化
合物のホモポリマー、あるいは、(化1)で表される重
合性官能基を有するシアノビニル系芳香族化合物とこれ
と共重合可能なコモノマーであってグリシジル基を有し
ていないコモノマーとから得られるコポリマーにおいて
は、上記4)における多官能性モノマーを気相または液
相から拡散させる工程を省略することになる。すなわ
ち、本発明において多官能性モノマーを拡散させない
(化1)で表わされる重合性官能基を有するシアノビニ
ル系芳香族化合物のホモポリマー、あるいは、(化1)
で表される重合性官能基を有するシアノビニル系芳香族
化合物とこれと共重合可能なコモノマーであってグリシ
ジル基を有していないコモノマーとから得られるコポリ
マーにおいては、これらのポリマーのガラス転移温度近
傍に加熱しながら電場印加して配向処理(分極処理)を
行なうことにより2次元光導波路が作製できる。
【0056】尚、いずれの方法においても配向処理の終
了時点で加熱は停止するのが良く、場合によっては加熱
の停止だけでなく、配向が緩和しないようにこれらのポ
リマーのガラス転移温度近傍より低い温度になるように
積極的に冷却しても良い。
【0057】ここで、例えば(化1)で表わされる重合
性官能基を有するシアノビニル系芳香族化合物と(化
2)で表わされる化合物のようなグリシジル基を有する
化合物とのコポリマーを用いた3次元光導波路を有する
非線形光学素子の製造方法を図1を用いて説明を行な
う。
【0058】工程(1)(図1(a) 参照)においては、
透明な電極層2として工程(3)において行なう導波路
部の分極処理に影響しない程度の低抵抗を有するインジ
ウム錫酸化物(ITO)等をスパッタ法等により設けた
ガラス基板1を素子基板として用いる。さらに、この素
子基板上にクラッド層としての役割を果たすバッファ層
3として本発明におけるグリシジル基を有するコポリマ
ーの屈折率より低い屈折率を有する樹脂、例えばUV硬
化性樹脂層をスピンコート法等により形成する。この際
には本発明におけるグリシジル基を有するコポリマーが
有機溶剤に可溶であるために、有機溶剤を用いないオリ
ゴエチレンオキサイド系のポリアクリレートである水溶
性のUV硬化性樹脂を用いることが好ましいが、例え
ば"NorlandOptical Adhesive 61"(Norland 社製) 等の
光学用接着剤も使用可能である。
【0059】次に工程(2)(図1(b) 参照)におい
て、工程(1)で作製したバッファ層3の上に本発明に
おけるグリシジル基を有するコポリマー層4をスピンコ
ーティング等の適宜の方法で形成する。この成膜の際、
先に示したクロロホルム、アセトン、モノクロロベンゼ
ン等の溶媒に本発明におけるグリシジル基を有するコポ
リマーを溶解させ薄膜を作製する。コポリマー層4の厚
さは、この部分の後述する導波路部に導波させる光を単
一モードにて伝播させなければならないために、詳細な
数値計算によって導波路部の幅および厚み(深さ)の制
御を行う必要がある。数値計算方法としてはマーカット
リィの方法や等価屈折率法などが代表的な手法であり、
詳細は例えば「光集積回路」(西原浩、春名正光ら共
著、オーム社)第31頁などに記載されている公知の方
法である。
【0060】例えば本発明において、導波路部が多官能
性モノマー拡散型3次元光導波路である場合、単一モー
ド伝播を行うためには、伝播する光の波長を0.860 μ
m、多官能性モノマーが拡散していない部分の屈折率が
s =1.5 〜1.6 、多官能性モノマーが拡散した部分
(導波路部)と拡散していない部分との屈折率差Δn=
5×10-3とすると、屈折率分布がガウス分布に従うと
したグレーテッド形に於いては、下記数式(数1)より
導波路部の幅が7〜8μm、導波路部の厚みが2.5〜
4μmという数値が得られる。
【0061】
【数1】
【0062】ここでアスペクト比(2dy /dx )は2
とした。式(数1)中、λは伝播する光の波長(μ
m)、dx は導波路部の厚み(深さ)、2dy は導波路
部の幅、ns は3次元光導波路部を囲む材料の屈折率
(本実施例では多官能性モノマーが拡散されていない部
分のグリシジル基を有するコポリマー層部分)、Δnは
多官能性モノマーが拡散した部分(導波路部)のグリシ
ジル基を有するコポリマー層部分とそれ以外の部分であ
る多官能性モノマーが拡散していない部分のグリシジル
基を有するコポリマー層部分との屈折率差である。
【0063】3次元光導波路において単一モードでの伝
播を行うために、導波路部の幅と厚みとの間には前記の
ような制約があるが、バッファ層の屈折率による影響を
少なくするためには厚みを大きめにとりグレーテッド形
として、また、多官能性モノマーがグリシジル基を有す
るコポリマー層の厚み方向に対して十分拡散でき得る厚
みの際にはステップ形の3次元光導波路として作製を行
う必要がある。
【0064】以上説明したように導波路部の幅と厚みは
非線形光学素子の設計には重要であるが、この点は、か
かるタイプの非線形光学素子の設計には通常普通に適用
されている公知の手法であり、本発明の本質部分ではな
い。
【0065】さらに工程(3)(図1(c) 参照)におい
て、本発明におけるコポリマー層4上にフォトレジスト
層5を例えばスピナー等で塗布・形成し、フォトマスク
(図示せず)を用いて上記レジストを露光した後、現像
することにより導波路パターン6を形成する。この際の
フォトレジストにはパターン形成の容易さ及びその一部
が導波路層となる本発明におけるコポリマー層4との関
係より水溶性のポジ型が好ましいが、入手のしやすさよ
り水溶性のネガ型であっても問題は無い。ただし、この
際にもフォトレジスト層5の屈折率がコポリマー層4の
屈折率よりも小さいことが必要である。
【0066】工程(4)(図1(d),(e) 参照)において
は、形成したフォトレジスト層5がポジ型であった場合
には酸性水溶液もしくは塩基性水溶液による現像後に残
ったフォトレジスト層5を保護層として、基板の側面部
を保護しながら気相または液相状態の多官能性モノマ
ー、例えば加熱気化したm−フェニレンジアミン(融点
62〜65℃)等の多官能性モノマー7を導波路パターン6
の部分において露出しているコポリマー層4の導波路部
8中に拡散させ、ドーピングを行う。また、ネガ型の場
合には水をリムーバーとしてコポリマー層4の導波路部
8を露出させた後、多官能性モノマー7を気相または液
相より拡散させドーピングを行なう。次にドーピングを
終了した素子要素をヒーター10を用いて加熱しなが
ら、前記コポリマーのガラス転移温度付近でコロナ帯電
用針電極9あるいはタングステンワイヤーなどを用いた
帯電器により、コロナ帯電による分極処理を行なう。分
極処理を基板温度が室温温度に下がるまで続けた後、再
度ガラス転移温度付近にまで基板素子を加熱する。この
時に、保護層としての水溶性フォトレジスト層5が無く
多官能性モノマーの拡散が行なわれたコポリマー層4の
導波路部8においては分極処理時において架橋化反応に
より高分子側鎖部位の持つ双極子モーメントが配向した
構造は保持されるが、コポリマー層4のうち保護層のフ
ォトレジスト層5に覆われたコポリマー層部11におい
ては双極子モーメントがランダムなアモルファス状態が
形成されていることになる。
【0067】最後に工程(5)(図1(f) 参照)におい
ては、保護層として残っていたフォトレジスト層5の上
から再度クラッド層となるUV硬化樹脂などをスピンコ
ーティング等でコーティングしてバッファ層12を形成
し、3次元光導波路素子を作製する。この際に、フォト
レジスト層5とバッファ層12の屈折率が等しくなるよ
うに選定あるいは調製することが好ましいが、導波路部
8よりもフォトレジスト層5及びバッファ層12の屈折
率が小さければ問題は無い。バッファ層12における屈
折率の調製においては例えば芳香環を増やしたりヨウ素
化、臭素化することによる屈折率の増加、フッ素化する
ことによる減少等の手法がある。
【0068】更に本発明の理解を一層容易にするため、
以下に具体的な実施例を示して本発明をより具体的に説
明する。 実施例1 300ml の三口フラスコに水酸化ナトリウム12.28 g(0.3
07mol)を溶かした水溶液200ml を入れ、4−ヒドロキシ
ベンズアルデヒド25g(0.205mol)を加熱・撹拌しながら
添加した。その溶液に2−クロロエタノール19.78 g
(0.246mol)を滴下し、滴下後溶液温度120 ℃にて加熱還
流を行ない10時間反応をさせた。反応液をテトラヒドロ
フラン(THF)にて抽出した。この時、水層側には塩
化ナトリウムを飽和させておいた。抽出液を減圧留去す
ることにより、THFを除き4−(2−ヒドロキシエチ
ル)オキシベンズアルデヒドを含む濃縮液を得た。この
濃縮液を亜硫酸水素ナトリウムの飽和水溶液中に撹拌し
ながら滴下し、30分撹拌し続けた。30分後には白色の4
−(2−ヒドロキシエチル)オキシベンズアルデヒドに
亜硫酸水素ナトリウムが付加した付加化合物が沈澱し
た。これを濾過した後、濾過物をメタノールで洗浄して
水中に撹拌しながら懸濁させた。この懸濁水溶液に炭酸
ナトリウムを投入し、液温を50℃に保ちながら撹拌を続
けると懸濁物が溶解し、黄褐色の溶液となった。この黄
褐色溶液をTHFにて抽出した。この時も水層側には塩
化ナトリウムを飽和させておいた。THFの抽出液を減
圧留去することにより、粘稠な液体状態の4−(2−ヒ
ドロキシエチル)オキシベンズアルデヒド12.6gを得
た。液体状態の4−(2−ヒドロキシエチル)オキシベ
ンズアルデヒド20g(0.12mol) を20gのエタノールに撹
拌しながら溶解させ、シアン酢酸エチル14.98 g(0.133
mol)を数滴のピペリジンと共に加え70℃にて加熱しなが
ら、30分間撹拌しながら反応させた。反応後、溶液温度
が室温に下がるまで放冷し、さらに再結晶を行なうため
に冷蔵庫にて冷却すると、2−ヒドロキシエチル(4−
(2−シアノ−2−エトキシカルボニルビニル)フェニ
ル)エーテルの白色微結晶が得られた。この白色微結晶
を濾別し冷エタノールで洗浄した。得られた白色微結晶
を真空乾燥して、2−ヒドロキシエチル(4−(2−シ
アノ−2−エトキシカルボニルビニル)フェニル)エー
テル9.6 gを得た。
【0069】次にこの化合物50g(0.19mol) を500 ml
の三口フラスコ中で乾燥THF400mlに撹拌しながら
溶解させ、トリエチルアミン(TEA)23.3g(0.23mo
l) を加えた。この溶液を撹拌しながら、塩化メタクリ
ロイル24g(0.23mol) を約1時間かけて滴下した。この
時に反応溶液温度が10℃を越えないように氷冷しながら
塩化メタクリロイルの滴下を行なった。滴下終了後は室
温にて撹拌しながら3 時間、反応を行なった。反応溶液
を濾過し、濾液を飽和させた塩化ナトリウム水溶液で洗
浄した。洗浄した濾液を硫酸マグネシウムにて乾燥し、
40℃での減圧留去を行い濾液が200 mlになるまで濃縮
した。この濃縮液を冷蔵庫にて冷却し、再結晶させるこ
とにより2−メタクリロイルエチル(4−(2−シアノ
−2−エトキシカルボニルビニル)フェニル)エーテル
(以下化合物1)の白色粉末48gを得た。化合物1の構
造式を(化8)に示す。
【0070】
【化8】
【0071】実施例2 実施例1に基づき合成した4−(2−ヒドロキシエチ
ル)オキシベンズアルデヒド20g(0.12mol) を20gのエ
タノールに撹拌しながら溶解させ、シアン酢酸メチル1
4.76 g(0.133mol)を数滴のピペリジンと共に加え70℃
にて加熱しながら、30分間撹拌しながら反応させた。反
応後、溶液温度が室温に下がるまで放冷し、さらに再結
晶を行なうために冷蔵庫にて冷却すると、2−ヒドロキ
シエチル(4−(2−シアノ−2−メトキシカルボニル
ビニル)フェニル)エーテルの白色微結晶が得られた。
この白色微結晶を濾別し冷エタノールで洗浄した。得ら
れた白色微結晶を真空乾燥して、2−ヒドロキシエチル
(4−(2−シアノ−2−メトキシカルボニルビニル)
フェニル)エーテル9.6 gを得た。
【0072】次にこの化合物50g(0.20mol) を500 ml
の三口フラスコ中で乾燥THF400mlに撹拌しながら
溶解させ、トリエチルアミン(TEA)23.3g(0.23mo
l) を加えた。この溶液を撹拌しながら、塩化アクリロ
イル20.8g(0.23mol) を約1時間かけて滴下した。この
時に反応溶液温度が10℃を越えないように氷冷しながら
塩化アクリロイルの滴下を行なった。滴下終了後は室温
にて撹拌しながら3 時間、反応を行なった。反応溶液を
濾過し、濾液を飽和させた塩化ナトリウム水溶液で洗浄
した。洗浄した濾液を硫酸マグネシウムにて乾燥し、40
℃での減圧留去を行い濾液が200 mlになるまで濃縮し
た。この濃縮液を冷蔵庫にて冷却し、再結晶させること
によりアクリル酸エチル(4−(2−シアノ−2−メト
キシカルボニルビニル)フェニル)エーテル(以下化合
物2)の白色粉末46gを得た。化合物2の構造式を(化
9)に示す。
【0073】
【化9】
【0074】実施例3 実施例1に基づき4−(2−ヒドロキシエチル)オキシ
ベンズアルデヒド20g(0.12mol) を20gのエタノールに
撹拌しながら溶解させ、マロノニトリル10.14g(0.133m
ol)を数滴のピペリジンと共に加え70℃にて加熱しなが
ら、30分間撹拌しながら反応させた。反応後、溶液温度
が室温に下がるまで放冷し、さらに再結晶を行なうため
に冷蔵庫にて冷却すると、2−ヒドロキシエチル(4−
(2, 2−ジシアノビニル)フェニル)エーテルの白色
微結晶が得られた。この白色微結晶を濾別し冷エタノー
ルで洗浄した。得られた白色微結晶を真空乾燥して、2
−ヒドロキシエチル(4−(2, 2−ジシアノビニル)
フェニル)エーテル9.6 gを得た。
【0075】次にこの化合物50g(0.23mol) を500 ml
の三口フラスコ中で乾燥THF400mlに撹拌しながら
溶解させ、トリエチルアミン(TEA)25.3g(0.25mo
l) を加えた。この溶液を撹拌しながら、塩化メタクリ
ロイル26.13 g(0.25mol) を約1時間かけて滴下した。
この時に反応溶液温度が10℃を越えないように氷冷しな
がら塩化メタクリロイルの滴下を行なった。滴下終了後
は室温にて撹拌しながら3 時間、反応を行なった。反応
溶液を濾過し、濾液を飽和させた塩化ナトリウム水溶液
で洗浄した。洗浄した濾液を硫酸マグネシウムにて乾燥
し、40℃での減圧留去を行い濾液が200 mlになるまで
濃縮した。この濃縮液を冷蔵庫にて冷却し、再結晶させ
ることにより2−メタクリロイルエチル(4−(2, 2
−ジシアノビニル)フェニル)エーテル(以下化合物
3)の白色粉末48gを得た。化合物3の構造式を(化1
0)に示す。
【0076】
【化10】
【0077】実施例4 三口フラスコに水酸化ナトリウム12.28 g(0.307mol)を
溶かした水溶液200mlを入れ、4−ヒドロキシベンズア
ルデヒド25g(0.205mol)を加熱・撹拌しながら添加し
た。その溶液に3−クロロ−1−プロパノール23.25 g
(0.246mol)を滴下し、滴下後溶液温度120 ℃にて加熱還
流を行ない10時間反応をさせた。反応液をテトラヒドロ
フラン(THF)にて抽出した。この時、水層側には塩
化ナトリウムを飽和させておいた。抽出液を減圧留去す
ることにより、THFを除き4−(3−ヒドロキシプロ
ピル)オキシベンズアルデヒドを含む濃縮液を得た。こ
の濃縮液を亜硫酸水素ナトリウムの飽和水溶液中に撹拌
しながら滴下し、30分撹拌し続けた。30分後には白色の
4−(3−ヒドロキシプロピル)オキシベンズアルデヒ
ドに亜硫酸水素ナトリウムが付加した付加化合物が沈澱
した。これを濾過した後、濾過物をメタノールで洗浄し
て水中に撹拌しながら懸濁させた。この懸濁水溶液に炭
酸ナトリウムを投入し、液温を50℃に保ちながら撹拌を
続けると懸濁物が溶解し、黄褐色の溶液となった。この
黄褐色溶液をTHFにて抽出した。この時も水層側には
塩化ナトリウムを飽和させておいた。THFの抽出液を
減圧留去することにより、粘稠な液体状態の4−(3−
ヒドロキシプロピル)オキシベンズアルデヒド14.8gを
得た。
【0078】この4−(3−ヒドロキシプロピル)オキ
シベンズアルデヒド21.6g(0.12mol) を20gのエタノー
ルに撹拌しながら溶解させ、マロノニトリル10.14 g
(0.133mol)を数滴のピペリジンと共に加え70℃にて加熱
しながら、30分間撹拌しながら反応させた。反応後、溶
液温度が室温に下がるまで放冷し、さらに再結晶を行な
うために冷蔵庫にて冷却すると、3−ヒドロキシプロピ
ル(4−(2, 2−ジシアノビニル)フェニル)エーテ
ルの白色微結晶が得られた。この白色微結晶を濾別し冷
エタノールで洗浄した。得られた白色微結晶を真空乾燥
して、3−ヒドロキシプロピル(4−(2, 2−ジシア
ノビニル)フェニル)エーテル9.6 gを得た。
【0079】次にこの化合物50g(0.22mol) を500 ml
の三口フラスコ中で乾燥THF400mlに撹拌しながら
溶解させ、トリエチルアミン(TEA)25.3g(0.25mo
l) を加えた。この溶液を撹拌しながら、塩化メタクリ
ロイル26.13 g(0.25mol) を約1時間かけて滴下した。
この時に反応溶液温度が10℃を越えないように氷冷しな
がら塩化メタクリロイルの滴下を行なった。滴下終了後
は室温にて撹拌しながら3 時間、反応を行なった。反応
溶液を濾過し、濾液を飽和させた塩化ナトリウム水溶液
で洗浄した。洗浄した濾液を硫酸マグネシウムにて乾燥
し、40℃での減圧留去を行い濾液が200 mlになるまで
濃縮した。この濃縮液を冷蔵庫にて冷却し、再結晶させ
ることにより2−メタクリロイルプロピル(4−(2,
2−ジシアノビニル)フェニル)エーテル(以下化合物
4)の白色粉末45gを得た。化合物4の構造式を(化1
1)に示す。
【0080】
【化11】
【0081】実施例5 500 mlの三口フラスコに乾燥THF200 gを入れ、メ
チルメタクリレート(以下MMAと略称する。)25g、
実施例1において合成した化合物1を25g、アゾビスイ
ソブチロニトリル(以下AIBN)0.25gを撹拌しなが
ら溶解させた。溶液を20分間窒素ガスによりバブリング
させた後、窒素ガスによるバブリングを継続しながら5
時間80℃にて反応させた。反応終了後、溶液温度が室温
にまで下がるのを待ち、撹拌を行いながら4 リットルの
メタノール中に反応溶液を投入し、再沈澱させた。30分
ほど撹拌した後、濾過を行い濾過物をメタノール及びエ
タノールにて洗浄した。洗浄した濾過物を50℃、2 時間
真空乾燥し、化合物1とMMAとのコポリマーを約43g
得た。
【0082】実施例6 200 mlの三口フラスコに乾燥THF100 gを入れ、化
合物1を25g、AIBN0.25gを撹拌しながら溶解させ
た。溶液を20分間窒素ガスによりバブリングさせた後、
窒素ガスによるバブリングを継続しながら5 時間80℃に
て反応させた。反応終了後、溶液温度が室温にまで下が
るのを待ち、撹拌を行ないながら2 リットルのメタノー
ル中に反応溶液を投入し、再沈澱させた。30分ほど撹拌
した後、濾過を行い濾過物をメタノール及びエタノール
にて洗浄した。洗浄した濾過物を50℃、2 時間真空乾燥
し、化合物1のホモポリマーを約24g得た。
【0083】実施例7 500 mlの三口フラスコに乾燥THF200 gを入れ、蒸
留精製したスチレン25g、実施例1において合成した化
合物1を25g、AIBN0.25gを撹拌しながら溶解させ
た。溶液を20分間窒素ガスによりバブリングさせた後、
窒素ガスによるバブリングを継続しながら5 時間80℃に
て反応させた。反応終了後、溶液温度が室温にまで下が
るのを待ち、撹拌を行いながら4 リットルのメタノール
中に反応溶液を投入し、再沈澱させた。30分ほど撹拌し
た後、濾過を行い濾過物をメタノール及びエタノールに
て洗浄した。洗浄した濾過物を50℃、2 時間真空乾燥
し、化合物1とスチレンとのコポリマーを約48g得た。
【0084】実施例8 500 mlの三口フラスコに乾燥THF200 gを入れ、グ
リシジルメタクリレート(以下GMAと略称する。)25
g、実施例1において合成した化合物1を25g、AIB
N0.25gを撹拌しながら溶解させた。溶液を20分間窒素
ガスによりバブリングさせた後、窒素ガスによるバブリ
ングを継続しながら室温付近で6 時間反応させた。反応
終了後、撹拌を行いながら4 リットルのメタノール中に
反応溶液を投入し、再沈澱させた。30分ほど撹拌した
後、濾過を行い濾過物をメタノール及びエタノールにて
洗浄した。洗浄した濾過物を50℃、2 時間真空乾燥し、
化合物1とGMAとのコポリマーを約45g得た。
【0085】実施例9 500 mlの三口フラスコに乾燥THF200 gを入れ、メ
チルメタクリレート(以下MMA)25g、実施例2にお
いて合成した化合物2を25g、アゾビスイソブチロニト
リル(以下AIBN)0.25gを撹拌しながら溶解させ
た。溶液を20分間窒素ガスによりバブリングさせた後、
窒素ガスによるバブリングを継続しながら5 時間80℃に
て反応させた。反応終了後、溶液温度が室温にまで下が
るのを待ち、撹拌を行いながら4 リットルのメタノール
中に反応溶液を投入し、再沈澱させた。30分ほど撹拌し
た後、濾過を行い濾過物をメタノール及びエタノールに
て洗浄した。洗浄した濾過物を50℃、2 時間真空乾燥
し、化合物2とMMAとのコポリマーを約41g得た。
【0086】実施例10 500 mlの三口フラスコに乾燥THF200 gを入れ、グ
リシジルメタクリレート(GMA)25g、実施例3にお
いて合成した化合物3を25g、AIBN0.25gを撹拌し
ながら溶解させた。溶液を20分間窒素ガスによりバブリ
ングさせた後、窒素ガスによるバブリングを継続しなが
ら室温付近で6 時間反応させた。反応終了後、撹拌を行
いながら4 リットルのメタノール中に反応溶液を投入
し、再沈澱させた。30分ほど撹拌した後、濾過を行い濾
過物をメタノール及びエタノールにて洗浄した。洗浄し
た濾過物を50℃、2 時間真空乾燥し、化合物3とGMA
とのコポリマーを約45g得た。
【0087】実施例11 500 mlの三口フラスコに乾燥THF200 gを入れ、蒸
留精製したスチレン25g、実施例4において合成した化
合物4を25g、AIBN0.25gを撹拌しながら溶解させ
た。溶液を20分間窒素ガスによりバブリングさせた後、
窒素ガスによるバブリングを継続しながら5 時間80℃に
て反応させた。反応終了後、溶液温度が室温にまで下が
るのを待ち、撹拌を行いながら4 リットルのメタノール
中に反応溶液を投入し、再沈澱させた。30分ほど撹拌し
た後、濾過を行い濾過物をメタノール及びエタノールに
て洗浄した。洗浄した濾過物を50℃、2 時間真空乾燥
し、化合物4とスチレンとのコポリマーを約46g得た。
【0088】実施例12 実施例5で作製したコポリマー5 gを20gのモノクロロ
ベンゼンに溶解した。溶液を厚み0.15mmのガラス基板上
にスピンコーティングし、厚み約10μm の薄膜を作製し
た。作製した薄膜を60℃で2 時間真空乾燥させ溶媒を除
去した後、ホットプレート上に置き90℃に加熱しながら
タングステンワイヤーを用いた帯電器に8 kVを印加し
て、コロナ帯電を行なった。約30分後コロナ帯電は継続
したままホットプレートの温度を室温まで45分かけて降
下させ、その後コロナ帯電を終了した。この試料に波長
1064nmのYAGレーザー光を照射して透過側に発生する
2次高調波を観測した。YAGレーザーの偏光面を試料
への入射面とした場合に入射角が約45度で2次高調波の
強度が最大となり、最大出力10μW の2次高調波が得ら
れた。
【0089】実施例13 実施例5で作製したコポリマー5 gを20gのモノクロロ
ベンゼンに溶解した。溶液を厚み0.15mmのガラス基板上
にスピンコーティングし、厚み約10μm の薄膜を作製し
た。作製した薄膜を60℃で2 時間真空乾燥させ溶媒を除
去した後、ホットプレート上に置き85℃に加熱しながら
タングステンワイヤーを用いた帯電器に8 kVを印加し
て、コロナ帯電を行なった。約30分後コロナ帯電は継続
したままホットプレートの温度を室温まで45分かけて降
下させ、その後コロナ帯電を終了した。この試料に波長
830nm の半導体レーザー光を照射したところ透過側に波
長415nm の2次高調波が観測された。観測された2次高
調波の最大出力は約8 μWであった。
【0090】実施例14 実施例8で作製したコポリマー5 gを、p, p′ −ジ
アミノジフェニルメタン10g(0.05mol) と共に、20gの
モノクロロベンゼンに溶解させた。溶液を厚み0.15mmの
ガラス基板上にスピンコーティングし、厚み約10μm の
薄膜を作製した。作製した薄膜を室温で4 時間真空乾燥
させ溶媒を除去した後、ホットプレート上に置き90℃に
加熱しながらタングステンワイヤーを用いた帯電器に8
kVを印加して、コロナ帯電を行なった。約60分後コロ
ナ帯電は継続したままホットプレートの温度を室温まで
60分かけて降下させ、その後コロナ帯電を終了した。
【0091】この試料に波長1064nmのYAGレーザー光
を照射して透過側に発生する2次高調波を測定した。Y
AGレーザーの偏光面を試料への入射面とした場合に入
射角が約45度で2次高調波の強度が最大となり、約12μ
W の出力強度が得られた。さらに経時変化において、試
料作成1 日後、30日後、90日後に同様に高調波の強度を
測定したが、殆ど変化はなかった。尚、p, p′ −ジ
アミノジフェニルメタンによるドーピング処理を行なわ
ずに作製したコポリマーのみによる厚み約10μm の薄膜
を作製し、同様のポーリング処理を行ない2次高調波を
測定したところ、初期においては約10μW の出力強度を
得ることができたが、3 日後に測定したところ約1 μW
にまで低下していた。
【0092】実施例15 ITOを片面に製膜した1mm 厚、5 ×5cm のガラス基板
素子基材のITOが付いた面にオリゴエチレンオキサイ
ド系のポリアクリレートである水溶性UV硬化樹脂をス
ピンコーティングし、厚み約10μm のバッファ層を作製
した。
【0093】このバッファ層の上に実施例8で作製した
コポリマーのモノクロロベンゼン溶液をスピンコーティ
ングして厚み約5 μm の層(以下導波路層と言う)とし
た。さらに、この導波路層の上に水溶性ネガ型のフォト
レジストを一様にスピナーで塗布し、フォトマスクを用
いて上記レジストを露光した後、水をリムーバーとして
用いることにより幅約4 μm の導波路パターンを形成し
た。不溶化した水溶性フォトレジストを保護層として、
基板の側面部を保護しながら加熱気化したm−フェニレ
ンジアミン( 融点62〜65℃) を、導波路パターンの部分
において露出しているコポリマーの導波路層中に拡散さ
せ、ドーピングを行なった。
【0094】次にこの素子要素をホットプレート上に設
置し、ITOからリードをとり高圧電源のマイナス側に
つなぎ、素子要素表面から約1cm の高さにグリッド付き
タングステンワイヤーを置き、ワイヤーを高圧電源のプ
ラス側、グリッドをマイナス側につないだ。ホットプレ
ートの温度をコポリマーのガラス転移温度付近まで昇温
し、タングステンワイヤーを用いた帯電器を用いコロナ
帯電による分極処理と同時にm−フェニレンジアミンが
部分的にドープされたコポリマー部での架橋反応を行っ
た。この時、帯電器に印加した電圧は8kV であった。加
熱分極処理を約60分間行った後、コロナ帯電は継続した
ままホットプレートの温度を室温まで60分かけて降下さ
せ、コロナ帯電を終了した。さらにこの素子要素を再度
コポリマーのガラス転移温度付近にて20分ほど保持する
ことにより、架橋反応が起きていない領域のコポリマー
の配向緩和を促した。その後、室温まで放冷し、部分的
に架橋構造を有し、双極子モーメントを有するコポリマ
ー側鎖部位が配向した光導波路素子を得た。
【0095】さらに保護層として残っていたレジストの
上部にUV硬化樹脂をスピンコーティングして厚み約10
μm のバッファ層を形成した。この光導波路素子の3次
元導波路部分に波長830nm の半導体レーザーをカプラー
プリズムを用いて入射したところ、チェレンコフ放射モ
ードでの2次高調波が観測された。また経時安定性にお
いても、素子作製30日後において2次高調波の強度変化
は無かった。尚、本実施例における作製例に基づき、m
−フェニレンジアミンによるドーピング処理を行なわず
に作製した素子及びドーピング処理は行なったが、ポー
リング(分極処理)を行なわなかった場合の素子を同様
に作製した。ドーピング処理は行なったが、ポーリング
(分極処理)については行なわずに作製した素子に関し
ては入射角度を変化させながら半導体レーザーを照射し
たが、2次高調波は観測されなかった。また、ドーピン
グ処理を行なわずに作製した素子に関しては作製当初は
チェレンコフ放射による2次高調波が観測されたが、3
日後に測定したところ2次高調波は観測されなかった。
【0096】
【発明の効果】本発明の非線形光学材料の発明によれ
ば、超分極率は大きいにもかかわらず吸収波長端は短
く、有機溶剤への高い溶解性、成膜性に優れた高分子系
の非線形光学材料を提供できる。
【0097】また、高分子化合物が、(化1)で表わさ
れる重合性官能基を有するシアノビニル系芳香族化合物
のホモポリマーである本発明の好ましい態様の非線形光
学材料に於いては、より大きな非線形光学特性を発現し
得る非線形光学材料が提供できる。
【0098】また、高分子化合物が、(化1)で表わさ
れる重合性官能基を有するシアノビニル系芳香族化合物
と、これと共重合可能なコモノマーとのコポリマーを含
む高分子化合物である本発明の好ましい態様の非線形光
学材料に於いては、各種有機溶媒への溶解性が向上し、
成膜性に優れた加工性の良い、またガラス転移温度(T
g)が向上したまたは低められた非線形光学材料が提供
できる。
【0099】また、高分子化合物が、(化1)で示され
る化合物と構造式(化2)で示される化合物とをコモノ
マーとして含むコポリマーを含む高分子化合物である本
発明の好ましい態様の非線形光学材料に於いては、多官
能性モノマーによる処理、分極時の加熱処理により架橋
構造を容易に形成でき、分極処理後の硬化物において配
向緩和が少なく物性の経時安定性に優れた非線形光学材
料が提供できる。
【0100】また、高分子化合物が、前述した(化1)
で表わされる化合物のホモポリマーまたはこれと共重合
可能なコポリマーであって、配向された高分子化合物で
ある本発明の好ましい態様の非線形光学材料に於いて
は、高分子中の非線形光学特性を発揮する側鎖部位によ
る双極子モーメントが配向した優れた非線形光学特性を
発現する非線形光学材料を提供できる。
【0101】また、高分子化合物が、前記(化1)で示
される化合物と前記(化2)で示される化合物とのコポ
リマーと多官能性モノマーとを含む配向された硬化物か
らなる高分子化合物である本発明の好ましい態様の非線
形光学材料に於ては、更に経時安定性に優れ、配向緩和
の少ない非線形光学材料を提供することができる。
【0102】また、前記構成に於いて、多官能性モノマ
−が芳香族ないしは脂肪族ポリアミン類である本発明の
好ましい態様の非線形光学材料に於ては、特にグリシジ
ル基を含むコポリマーに適用した場合に反応効率が良
く、より一層経時安定性に優れ、配向緩和の少ない非線
形光学材料を提供することができる。
【0103】また、前記本発明の第1番目の非線形光学
素子の発明に於いては、非線形光学特性ならびに優れた
高分子系の非線形光学材料を用いた非線形光学素子を提
供できる。
【0104】また、前記本発明の第2番目の非線形光学
素子の発明に於いては、非線形光学特性ならびに経時安
定性に優れ、配向緩和の少ない高分子系の非線形光学材
料を用いた非線形光学素子を提供できる。
【0105】また、前記本発明の第1番目の非線形光学
素子の製造方法によれば、容易に、非線形光学特性に優
れた高分子系の非線形光学材料を用いた非線形光学素子
を製造することができる。
【0106】また、前記本発明の第2番目の非線形光学
素子の製造方法によれば、容易に、非線形光学特性なら
びに経時安定性に優れ、配向緩和の少ない高分子系の非
線形光学材料をを用いた非線形光学素子を製造すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における一実施例の非線形光学材料を用
いた非線形光学素子の製造工程を示す断面工程図であ
る。
【符号の説明】
1 ガラス基板 2 電極層 3 バッファ層 4 グリシジル基を有するコポリマー層 5 フォトレジスト層 6 導波路パターン 7 多官能モノマー 8 導波路部 9 コロナ帯電用針電極 10 ヒーター 11 グリシジル基を有するコポリマー層部 12 バッファ層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 園田 信雄 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/361 CA(STN)

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の式(化1)で表わされる重合性官
    能基を有するシアノビニル系芳香族化合物を重合性単位
    として含む高分子化合物からなる非線形光学材料。 【化1】 (ただし式中、R1はメチル基もしくは水素原子、R2
    (−CH2−)n、nは2もしくは3、R3は−CNもし
    くは−COOR4を表す。ここで、R4は炭素数1〜4の
    直鎖状または分岐状炭化水素基を表す。)
  2. 【請求項2】 高分子化合物が、請求項1に記載の(化
    1)で表わされる重合性官能基を有するシアノビニル系
    芳香族化合物のホモポリマーである請求項1に記載の非
    線形光学材料。
  3. 【請求項3】 高分子化合物が、請求項1に記載の(化
    1)で表わされる重合性官能基を有するシアノビニル系
    芳香族化合物と、これと共重合可能なコモノマーとのコ
    ポリマーを含む高分子化合物である請求項1に記載の非
    線形光学材料。
  4. 【請求項4】 高分子化合物が、請求項1に記載の(化
    1)で示される化合物と下記の構造式(化2)で示され
    る化合物とをコモノマーとして含むコポリマーを含む高
    分子化合物である請求項1に記載の非線形光学材料。 【化2】 (ただし式中、R5 は水素原子または炭素数1〜2の炭
    化水素基を表す。)
  5. 【請求項5】 高分子化合物が、請求項2、3または4
    に記載のホモまたはコポリマーであって、配向された高
    分子化合物である請求項1に記載の非線形光学材料。
  6. 【請求項6】 高分子化合物が、請求項4に記載のコポ
    リマーと多官能性モノマーとを含む配向された硬化物か
    らなる高分子化合物である請求項1に記載の非線形光学
    材料。
  7. 【請求項7】 多官能性モノマーが芳香族ないしは脂肪
    族ポリアミン類である請求項6に記載の非線形光学材
    料。
  8. 【請求項8】 基板、透明電極層、バッファ層、請求項
    2または3に記載のホモまたはコポリマーを含む高分子
    組成物の配向された薄膜層、および、バッファ層がこの
    順に積層されてなる非線形光学素子。
  9. 【請求項9】 基板、透明電極層、バッファ層、請求項
    4に記載のコポリマーを含む高分子組成物の薄膜層、お
    よび、バッファ層がこの順に積層されてなり、前記高分
    子組成物の薄膜層の一部を形成する導波路部分が多官能
    モノマーを含み、配向され硬化された層からなることを
    特徴とする非線形光学素子。
  10. 【請求項10】 透明電極層が形成された基板上にバッ
    ファ層を形成し、更にその上に請求項2または3に記載
    のホモまたはコポリマーを含む高分子組成物の薄膜層を
    形成し、加熱しながら電場印加して前記薄膜層を配向さ
    せ、次いで前記薄膜層上部にバッファ層を形成すること
    を特徴とする非線形光学素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 透明電極層が形成された基板上にバッ
    ファ層を形成し、更にその上に請求項4に記載のコポリ
    マーを含む高分子組成物の薄膜層を形成し、次いで前記
    薄膜層の一部を除いた部分に保護層を形成し、次いで気
    相あるいは液相からの拡散により多官能性モノマーを前
    記保護層で覆われていない前記薄膜層部にドーピング
    し、加熱しながら電場印加して前記薄膜層のドーピング
    された部分を配向、硬化させ、次いで更にこの上にバッ
    ファ層を形成することを特徴とする非線形光学素子の製
    造方法。
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