JP3318245B6 - 光学的情報記録再生方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学的情報記録再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平9ー138946号公報には、光学的情報記録再生方法が記載されている。この光学的情報記録再生方法は、記録信号振幅mや記録パワーPのオフセットの影響により最適記録パワーを設定できないという課題を解決しようとするものである。この光学的情報記録再生方法は、光学的情報記録媒体に対して記録パワーPを逐次変化させながらパターンをテスト記録し、これを再生して記録パワーPに対応した記録信号振幅mをモニターし、規格化された傾斜g(P)をg(P)=(Δm/m)/(ΔP/P)に従って求め、若しくはh(P)=(Δm/m)/ΔPに従ってh(P)を求め、g(P)若しくはh(P)に基づいて記録パワーの過不足を評価することにより最適記録パワーを決定して設定する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平9ー138946号公報には、上記光学的情報記録再生方法において、記録パワーに対応した再生信号振幅mの規格化傾斜g(P)に基づいて最適記録パワーを決定する具体的な手法については言及していない。この具体的な手法は、一例として、g(P)が光学的情報記録媒体としての光ディスクの固有の所定値Gtに等しくなる記録パワーを探し、Ptに基づいて最適記録パワーを決定することになる。
【0004】
しかし、具体的には、例えば記録パワーを光ディスク上の場所を変えて10通り変化させてパターンを記録し、それらの場所からの再生信号の振幅に対してそれぞれg(P)を計算しても、たかだか10個のデータが得られるだけであり、これらからPtを検索するのは困難である。また、光ディスクの記録感度ばらつき、欠陥、ゴミ、キズや、再生信号測定のばらつき、等により、10個のg(P)データはばらつくことが予想される。g(P)は単調性(単調減少または単調増加)が保証されるかどうかも不明である。したがって、上記光学的情報記録再生方法では、信頼性のある最適記録パワーを得ることができないことがあり、不都合である。
【0005】
本発明は、様々な原因により再生信号振幅の測定値にばらつきがあっても正確な最適記録パワーを決定することができる光学的情報記録再生方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、光学的情報記録媒体に対して記録パワーPを逐次変化させながら未記録部と記録部とからなるパターンをテスト記録し、このテスト記録したパターンから情報を再生して記録パワーPに対応した再生信号振幅mをモニターし、Pとmの関係から最適記録パワーを設定する光学的情報記録再生方法であって、各Pと測定したmの複数の組み合わせから、mをPの連 続関数m(P)として関数近似するステップと、このス テップで関数近似されたm(P)を使って次の(1)式
(dm/dP)*(P/m)=所定値・・・(1)
ただし、dm/dPはm(P)をPで微分した関数
を満 たす根であるPtargetに応じた値を最適記録パワ ーとするステップとを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の光学的情報記録再生方法において、前記m(P)はPの2 次式として関数近似することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の光 学的情報記録再生方法において、前記2次式をa*P +b*P+cとし、該2次式a*P +b*P+cの係 数a、b、cと前記所定値から、前記(1)式の根を計 算し、この根に応じた値を最適記録パワーとすることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1、2また は3記載の光学的情報記録再生方法において、前記m、 あるいは前記再生信号の前記未記録部に対応する信号レ ベル、あるいはこれらの両方が、それぞれ所定値以下と なるmとPの組み合わせを、前記関数近似の対象から除 ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1から4ま でのいずれか1つに記載の光学的情報記録再生方法にお いて、前記根が複数あってあらかじめ定められたPの範 囲にひとつだけ入っているとき、そのひとつの根に応じ た値を最適記録パワーとし、前記根がひとつも前記範囲 に入っていないか、前記根が前記範囲に複数入っている ときは、どの根に応じた値も最適記録パワーとして採用 しないことを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、レーザ光源からの 出射光を対物レンズにより光学的情報記録媒体の記録面 に集光することで、該記録面に対するデータの記録、再 生を行い、前記記録面からの反射光に応じたデータ信号 を増幅するRF検出手段と、該RF検出手段から出力さ れる信号のピークレベルを検出するピークレベル検出手 段と、前記RF検出手段から出力される信号のボトムレ ベルを検出するボトムレベル検出手段と、前記ピークレ ベル検出手段および前記ボトムレベル検出手段からの出 力信号を取り込み、パワー指令を出力するコントローラ と、前記パワー指令に対応したパワーで前記レーザ光源 を駆動するレーザパワー制御手段とを有する光学的情報 記録再生装置であって、
前記コントローラは、
前記光学 的情報記録媒体の所定の領域に、前記レーザパワー制御 手段による前記レーザ光源の記録パワーPを逐次変化さ せて未記録部と記録部とからなるパターンデータを複数 回記録させるために、前記パターンデータをテスト記録 させる毎に前記パワー指令を逐次変化させ、
各記録パワーPに対する再生データ振幅mを次の(2)式
m=(pk−bt)/pk・・・(2)
ただし、pkは各記録パワーPに対する前記パターンデ ータを記録した領域のデータ再生信号を前記RF検出手 段により増幅して前記ピークレベル検出手段で検出した ピークレベル、
btは各記録パワーPに対する前記パタ ーンデータを記録した領域のデータ再生信号を前記RF 検出手段により増幅して前記ボトムレベル検出手段で検 出したボトムレベル
により求め、
各記録パワーPと前記 再生データ振幅mの複数の組み合わせから、mをPの連 続関数m(P)として関数近似し、
次の(3)式
(dm/dP)*(P/m)=所定値・・・(3)
ただし、dm/dPはm(P)をPで微分した関数
を満 たす根であるPtに応じた値を求め、 前記Ptを最適記 録パワーとするものである。
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は後述する第1の実施形態に 対する比較例を示す。図1において、101は光学的情報記録媒体としての光ディスクである。この光ディスク101は回転駆動手段としての回転モータ102により回転駆動され、光ピックアップ104内の図示しない光源、例えばレーザ光源から出射された光ビームが対物レンズ103により光ディスク101の記録面に集光されることで光ディスク101の記録面に対するデータの記録、再生が行われる。
【0014】
109は上記レーザ光源のパワーを制御手段としてのコントローラ108からのパワー指令pにより制御するレーザパワー制御手段からなる光源制御手段である。このレーザパワー制御手段109はコントローラ108からのパワー指令pに対応するパワー(供給電力)で上記レーザ光源を駆動して図示しないデータ変調手段からのパルス信号により記録データに応じて上記レーザ光源を変調する。
【0015】
光ピックアップ104は、レーザ光源から出射された光ビームを対物レンズ103により光ディスク101の記録面に集光し、光ディスク101の記録面からの反射光を受光部で受光して光電変換することにより、光ディスク101の記録面からの反射光に応じたデータ信号を得る。このデータ信号は、RF検出回路105により増幅されてピークレベル検出手段としてのピーク検出回路(P/H)106により、その上側のピークレベルが検出される。
【0016】
また、RF検出回路105からのデータ信号はその下側のピークレベル(ボトムレベル)がボトムレベル検出手段としてのボトム検出回路(B/H)107により検出され、ピーク検出回路106の出力信号pk及びボトム検出回路107の出力信号btがコントローラ108に入力される。コントローラ108は、一般的なマイクロコンピュータであり、CPU、プログラムROM、データRAM、A/D変換器、D/A変換器などからなる。コントローラ108は、ピーク検出回路106の出力信号pk及びボトム検出回路107の出力信号btをA/D変換器でA/D変換して取り込み、パワー指令pをD/A変換器でD/A変換してレーザパワー制御手段109へ出力する。
【0017】
図2は本実施形態のアルゴリズムを示す。以後、演算子表記には以下の記号を使うことがある。
【0018】
*:乗算
/:除算
sqrt(x):xの平方根
ステップ201でコントローラ108がレーザパワー制御手段109へのパワー指令pを逐次変化させながら、レーザパワー制御手段109がデータ変調手段からのパルス信号によりレーザ光源を未記録部と記録部とからなるパターンのデータに応じて変調して光ピックアップ104により光ディスク101上の所定の領域に未記録部と記録部とからなるパターンをテスト記録させる。その所定の領域はパワー校正エリア(PCA:Power Calibration Area)と呼ぶことがある。
【0019】
この場合、コントローラ108がパワー指令pによりレーザ光源のパワー(記録パワー)Pを例えば4mWから11mWまで0.5mWずつ変化させて光ディスク101上の所定の領域にデータを15回記録させる。しかし、このレーザ光源のパワーPの範囲や、きざみ、あるいは光ディスク101上のどの領域にデータを記録させるか、等は設計上の選択事項である。
【0020】
次に、ステップ202で、光ピックアップ104が光ディスク101上にステップ201でデータを記録させた領域からデータを再生し、光ピックアップ104からのデータ信号がRF検出回路105により増幅されてピーク検出回路106及びボトム検出回路107によりピークレベルpk及びボトムレベルbtがそれぞれ検出される。この記録パワーP対ピークレベルpk及びボトムレベルbtの関係は例えば図3に示す表のようになる。
【0021】
図3の表において、Pは0.1mW単位(すなわち、40で4.0mW)に相当するが、この単位換算は設計上の事項である。また、pk、btは無単位であるが、これも設計上の事項であり、例えば0.01V単位などとしてもよい。iはインデックスである。図3に示す記録パワーP(Power)対ピークレベルpk及びボトムレベルbtの関係をプロットすると、図4に示すようになる。
【0022】
次に、ステップ203では、コントローラ108は、図3の表において、ピーク検出回路106からのpkについて所定値より低いデータを排除して所定値以上のものを選択し、ピーク検出回路106からのpk及びボトム検出回路107からのbtの各組み合わせ(データ信号が同じでiが同じであるもの同士)からそれぞれ(pk−bt)/pkを求めてこれらの(pk−bt)/pkについて所定値より低いデータを排除して所定値以上のものを選択する。
【0023】
例えば、pkに対する所定値を100のしきい値とすると、図3の表ではi=8のデータが排除される。これは、光ディスク101上に欠陥やキズ等があって、その場所の再生データレベルが不安定であるデータを排除して、後の計算や判定の信頼性を上げる効果がある。また、(pk−bt)/pkは変調度mという。再生データ振幅を評価するのに、光ディスク101の反射率そのものの影響は除きたいから、再生データ振幅(pk−bt)を再生データのピークレベルpkで規格化したものがmであり、以後再生データ振幅はmで評価する。異常値(i=8のデータ)を排除して変調度を計算した結果は図5の表に示すようになる。ここで、データ個数Nは14となる。
【0024】
次に、ステップ204で、コントローラ108は、図5の表から記録パワーPに対応したmの規格化傾斜gamma=(Δm/Δp)*(p/m)を計算する。実際的には、コントローラ108は、i番目のgammaを(i−1)番目のmと(i+1)番目のmから傾斜を求め、i番目で規格化する。これはi番目のデータに対して対称にした方が正確な計算ができるためである。
【0025】
その式としてはgamma(i)=(m(i+1)−m(i−1))/(p(i+1)−p(i−1))*p(i)/m(i)となり、この計算をコントローラ108で行う。ここで、0番目とN番目のgammaは上式では計算できないので捨て、データ個数Nは12となる。データは図6に示す表のようになる。
【0026】
次に、ステップ205で、コントローラ108は、関数近似データとして、P(i)をx(i)とし、gamma−Gt(ただしGtはgammaの目標となる所定値)をy(i)とすることで、P(i)とgammaとGtから連続関数を近似する。gamma=GtとなるP(i)を求めたいので、gamma−Gt=0となるP(i)を求めるため、gamma−Gtを関数近似する。
【0027】
次に、ステップ206で、コントローラ108は、x(i)、y(i)(データ個数12個)から2次回帰計算によりyをxの2次式y=a*x2+b*x+cとして近似し、その係数a、b、cを求める。ここに、a*x2+b*x+c=0が、求めるPである。
【0028】
次に、ステップ207で、コントローラ108は、上記2次式y=a*x2+b*x+cの根Pp、Pmを
Pp=−b+sqrt(b2−4*a*c)/(2*a)
Pm=−b−sqrt(b2−4*a*c)/(2*a)
なる式で計算する。2次式の根は2つである。
【0029】
次に、ステップ208で、コントローラ108は、2つの根Pp、Pmのうち、正しい方を求めてこれをPt(gamma=Gtとなる記録パワーP)を採用する。ここでは、コントローラ108は、あらかじめ定めたパワー範囲R1〜R2の間にPp、Pmのどちらか一方だけが入っているときにはその一方をPtとして採用し、R1〜R2の間にPp、Pmの両方が入っている時、及びR1〜R2の間にPp、Pmの両方が入っていない時にはエラー(求めるパワーが存在しなかった)とする。これは請求項7に係る発明に対応する。
【0030】
上記エラーは、光ディスク101が不正な光ディスクであったり、何らかのハードウェア不良が発生したり、光ディスク101上のPCAに大きなキズなどがあってパターンを光ディスク101上のPCAに正しく記録できなかったりする等により発生する。このような場合は、ステップ201からリトライするか、あるいは記録パワーとして固定パワーを採用するか、光ディスク101を不良として排出するか、様々な対策が考えられる。いずれにせよ、ステップ208の判断により、不正な記録パワーが採用されず、良好な記録や、レーザ光源の保護、光ディスク101記録膜の保護など多くの効果がある。
【0031】
図7は、この比較例において、gamma=Gt=1.3としたときに、これに相当するパワーP0の求まる様子を示す。gammaの測定値プロットはかなりばらつきがあり、そのままでは正しいパワーP0が求まらない。gammaを2次近似した曲線(a)により、gamma=Gt=1.3となるパワーをP0とすることで、パワーのばらつきが抑えられる。
【0032】
この比較例は、光学的情報記録媒体としての光ディスク101に対して記録パワーPを逐次変化させながら未記録部と記録部とからなるパターンをテスト記録し、このテスト記録したパターンから情報を再生して記録パワーPに対応した再生信号振幅mをモニターし、Pとmの関係から最適記録パワーを設定する光学的情報記録再生装置において、各Pに対してそのPで規格化したPの変化量に対する、そのPに対応するmで規格化したmの変化量gammaを
gamma=(Δm/m)/(ΔP/P)
なる式で計算し、得られたPとgammaの複数の組み合わせからgammaをPの連続関数として関数近似し、この連続関数が所定値となるPの根に応じた値を最適記録パワーとするので、光ディスクの記録感度ばらつき、欠陥、ゴミや、再生信号測定ばらつき、等により再生信号振幅の測定データがばらついても、正確な最適記録パワーが得られる。また、関数近似により、少ない個数のデータで最適記録パワーを決定することができ、テスト記録時間及び再生信号振幅の評価時間を短縮することができる。
【0033】
また、この比較例は、上記光学的情報記録再生装置において、前記m、あるいは前記再生信号の前記未記録部に対応する信号レベル、あるいはこれらの両方が、それぞれ所定値以下となるmとPの組み合わせを、前記関数近似の対象から除くので、光ディスク上の欠陥やゴミ、キズ等があって、その場所に記録したテスト信号の再生信号に信頼性が欠けていても、そのデータを排除して計算することができ、より正確に最適記録パワーを得ることができる。
【0034】
次に、本発明を適用した光学的情報記録再生装置の実施形態を説明する。この実施形態は請求項1〜6に係る発明を適用した光学的情報記録再生装置の実施形態である。この実施形態の背景は、図7に示すように、規格化傾斜gammaが、再生データ振幅mの測定ばらつきや、光ディスク101上の記録感度ばらつきによる再生信号振幅ばらつき、などの影響を増幅する傾向にあることである。
【0035】
これは、gammaという量が、再生信号振幅mを記録パワーPで微分した量を基本とするため、どうしてもノイズを増幅しがちであることに起因する。図7を見ても、mのばらつきに比べて、gammaのばらつきの方がかなり大きいことがわかる。このようなgammaを元にして最適記録パワーを決定したのでは、いかに関数近似をしても最適記録パワーのばらつきを抑えられない懸念がある。そこで、gammaでなくmの方を関数近似するのが実施形態である。
【0036】
この実施形態では、上記比較例において、図2に示すアルゴリズムの代りに図8に示すアルゴリズムが実行される。ステップ701〜703は上記ステップ201〜203と同じである。ステップ704では、コントローラ108は、関数近似対象となる、x(i)をP(i)とし、y(i)をm(i)とすることで、P(i)とm(i)から連続関数を近似する。図5によれば、データ個数は14個である。
【0037】
次に、ステップ705で、コントローラ108は、x(i)、y(i)から2次回帰計算によりyをxの2次式y=a*x2+b*x+cとして近似し、その係数a、b、cを求める。次に、ステップ706で、コントローラ108は、
Pp=(−b*(Gt−1)+sqrt(b*(Gt−1)2−4*a*(G
t−2)*c*Gt)/2*a*(Gt−2)・・・(1a)
Pm=(−b*(Gt−1)−sqrt(b*(Gt−1)2−4*a*(G
t−2)*c*Gt)/2*a*(Gt−2)・・・(1b)
なる式を計算する。この式の論理的背景に関しては後述するが、このPp、Pmのどちらかが、求めるパワーPt、すなわちgamma=Gtとなるパワーである。
【0038】
次に、ステップ707で、ステップ208と同様に、コントローラ108は、2つの根Pp、Pmのうち、正しい方(gamma=Gtとなる記録パワーP)を求めてこれをPtとして採用する。ここでは、コントローラ108は、あらかじめ定めたパワー範囲R1〜R2の間にPp、Pmのどちらか一方だけが入っているときにはその一方をPtとして採用し、R1〜R2の間にPp、Pmの両方が入っている時、及びR1〜R2の間にPp、Pmの両方が入っていない時にはエラー(求めるパワーが存在しなかった)とする。これは請求項7に係る発明に対応する。
【0039】
ここで、上式(1a)(1b)が成立する理論的背景を記す。求めたいのは、規格化傾斜gamma=(dm/dp)*(p/m)がgamma=Gt(Gtは光ディスク101固有の所定値)となるパワーPtである。そこで、gamma=(dm/dp)*(p/m)=Gtを、mがPの2次式
m=a*P2+b*P+c
であるとして解析的に計算する。dm/dPはPの微分であるので、
dm/dP=2*a*P+b
である。したがって、
gamma=(2*a*P+b)*(P/(a*P2+b*P+c)=Gt・
・・(2)
となる。
【0040】
式(2)をさらに計算すると、
a*(Gt−2)*P2+b*(Gt−1)*P+c*Gt=0
が得られる。この式の根が式(1a)(1b)となる。言い換えれば、式(1a)(1b)は、再生信号振幅mを記録パワーPの2次式として関数近似し、この式からmの規格化傾斜gamma=(dm/dP)*(P/m)が所定値Gtに等しくなるパワーPを求める式である。
【0041】
この実施形態のアルゴリズムは、規格化傾斜gammaを直接に計算せず、振幅mの方を関数近似した係数だけから目標パワーPtを求めるため、gammaを計算したときに生ずるばらつきを小さく抑えられる。図9は、この実施形態のようにm(P)を2次近似した係数a、b、cを使って、式(2)によるgammaをプロットした曲線(b)を示す。図9において、曲線(c)はプロットしたmを2次近似したもの、(a)は比較例と同じで、mから直線に求めたgammaを2次近似したものを示す。
【0042】
gammaの目標値Gtを1.3としたとき、式(1a)(1b)から計算されるパワーPt(PmまたはPp)は、P0bとなり、比較例で計算されるP0aとは異なる値になる。これは、曲線(a)がgammaのプロットから近似したもので、gammaのばらつきを反映してしまっているのに比べ、曲線(b)がmのプロットから近似したもの(曲線(c))からgammaを計算しているので、ばらつきの影響が小さくなっているためである。
【0043】
この実施形態は、請求項3に係る発明を適用した光学的情報記録再生装置の実施形態であって、光学的情報記録媒体としての光ディスク101に対して記録パワーPを逐次変化させながら未記録部と記録部とからなるパターンをテスト記録し、このテスト記録したパターンから情報を再生して記録パワーPに対応した再生信号振幅mをモニターし、Pとmの関係から最適記録パワーを設定する光学的情報記録再生方法を適用した光学的情報記録再生装置であって、各Pと測定したmの複数の組み合わせから、mをPの連続関数m(P)として関数近似し、次の(1)式
(dm/dP)*(P/m)=所定値・・・(1)
ただし、dm/dPはm(P)をPで微分した関数を満たす根Ptarget(Pm、Ppのいずれか一方)に応じた値を最適記録パワーとするので、mをまず関数近似した結果からPtargetを求めることになり、測定したmに対して規格化傾斜を求める場合のように測定ばらつきが増幅されてしまうことがなく、再生信号振幅の測定ばらつきに対してより正確に最適記録パワーを得ることができる。
【0044】
また、この実施形態は、請求項4に係る発明を適用した光学的情報記録再生装置の実施形態であって、請求項3記載の光学的情報記録再生方法を適用した光学的情報記録再生装置において、前記m(P)はmの2次式として関数近似するので、計算が簡単であり、低コストにできる。また、計算時間も早いため、テスト、再生信号振幅の評価時間を短縮できる。
【0045】
また、この実施形態は、請求項5に係る発明を適用した光学的情報記録再生装置の実施形態であって、請求項4記載の光学的情報記録再生方法を適用した光学的情報記録再生装置において、前記2次式をa*P+b*P+cとし、該2次式a*P+b*P+cの係数a、b、cと前記所定値から、前記(1)式の根を計算し、この根に応じた値を最適記録パワーとするので、規格化傾斜gamma自体を計算することなく、直接に最適記録パワーを計算でき、処理が単純になり、低コストにでき、処理時間も早くなる。
【0046】
また、この実施形態は、請求項6に係る発明を適用した光学的情報記録再生装置の実施形態であって、請求項3、4または5記載の光学的情報記録再生方法を適用した光学的情報記録再生装置において、前記m、あるいは前記再生信号の前記未記録部に対応する信号レベル、あるいはこれらの両方が、それぞれ所定値以下となるmとPの組み合わせを、前記関数近似の対象から除くので、光ディスク上の欠陥やゴミ、キズ等があって、その場所に記録したテスト信号の再生信号に信頼性が欠けていても、そのデータを排除して計算することになり、より正確に最適記録パワーを得ることができる。
【0047】
また、この実施形態は、請求項1から6までのいずれかに記載の光学的情報記録再生方法を適用した光学的情報記録再生装置において、前記根が複数あってあらかじめ定められたPの範囲にひとつだけ入っているとき、そのひとつの根に応じた値を最適記録パワーとし、前記根がひとつも前記範囲に入っていないか、前記根が前記範囲に複数入っているときは、どの根に応じた値も最適記録パワーとして採用しないので、不正な光ディスクや、何らかのハードウェア不良、PCAエリアに大きなキズなどがあって、正しく記録できなかった、等の予期できない不具合があっても、不正な記録パワーを採用せず、良好な記録や、レーザ光源の保護、光ディスク記録膜の保護など多くの効果がある。
【0048】
次に、上記図2のステップ201、201、203、204の具体的処理を説明する。図10はステップ201の処理例で、P(i)(i=0・・・14)に記録パワー値として図3のPが入っているとすれば、コントローラ108がレーザパワー制御手段109へのパワー指令pを逐次変化させてPを0番から14番まで逐次変えながら、レーザパワー制御手段109がデータ変調手段からのパルス信号によりレーザ光源を未記録部と記録部とからなるパターンのデータに応じて変調して光ピックアップ104により光ディスク101上の異なる場所sector(i)に未記録部と記録部とからなるパターンを書き込む。
【0049】
図11はステップ202の処理例であり、ステップ201でコントローラ108が光ディスク101上のパターンを書き込んだ場所sector(i)を順次に探索(Seek)して光ピックアップ104によりパターンを再生し、それぞれの場所からの再生信号のピークデータpkとボトムデータbtをピーク検出回路106及びボトム検出回路107により測定し、これをコントローラ108がpk(i)、bt(i)としてメモリに格納する。これが図3の表となる。
【0050】
図12はステップ203の処理例である。コントローラ108は、図3の表を参照し、0番目から14番目までのデータに対して、振幅amp(i)=pk(i)−bt(i)とし、pk(i)が所定値const1より大きく、かつ変調度m=amp/pkが所定値const2より大きいときのみ、mとpの組み合わせを採用する。言い換えると、そうでないデータを排除する。jは、採用したデータの表における順番を0から順に詰めるインデックスである。この結果、図5の表ができる。
【0051】
図13はステップ204の処理例であり、コントローラ108は図5の表の0番目(先頭)とN番目(最後)を除き、規格化傾斜を計算する。この結果、図6の表ができる。なお、上記実施形態において、図3の表などの数値例、Gtなど各種所定値、具体的な計算式、等は、上記のものに限定されるものではなく、各請求項に係る発明の範囲内で様々な変形が可能である。
【0052】
上記比較例及び実施形態で求めたパワーPtは、そのまま最適記録パワーとして用いるのではなく、Ptに光ディスク固有の定数ρを乗じて、Pt*ρを最適記録パワーとするのが好ましい場合がある。このように、Ptからさらに演算等により最適記録パワーを修正するのは、装置設計上の選択事項である。本発明の範囲はPtに応じた値を最適記録パワーとすることにある。
【0053】
【発明の効果】
以上のように請求項1に係る発明によれば、光学的情報記録媒体に対して記録パワーPを逐次変化させながら未記録部と記録部とからなるパターンをテスト記録し、このテスト記録したパターンから情報を再生して記録パワーPに対応した再生信号振幅mをモニターし、Pとmの関係から最適記録パワーを設定する光学的情報記録再生方法であって、各Pに対してそのPで規格化したPの変化量に対する、そのPに対応するmで規格化したmの変化量gammaを
gamma=(Δm/m)/(ΔP/P)
なる式で計算し、得られたPとgammaの複数の組み合わせからgammaをPの連続関数として関数近似し、この連続関数が所定値となるPの根に応じた値を最適記録パワーとするので、光ディスクの記録感度ばらつき、欠陥、ゴミや、再生信号測定ばらつき、等により再生信号振幅の測定データがばらついても、正確な最適記録パワーが得られる。また、関数近似により、少ない個数のデータで最適記録パワーを決定することができ、テスト記録時間及び再生信号振幅の評価時間を短縮することができる。
【0054】
請求項2に係る発明によれば、請求項1記載の光学的情報記録再生方法において、前記m、あるいは前記再生信号の前記未記録部に対応する信号レベル、あるいはこれらの両方が、それぞれ所定値以下となるmとPの組み合わせを、前記関数近似の対象から除くので、光ディスク上の欠陥やゴミ、キズ等があって、その場所に記録したテスト信号の再生信号に信頼性が欠けていても、そのデータを排除して計算することができ、より正確に最適記録パワーを得ることができる。
【0055】
請求項3に係る発明によれば、光学的情報記録媒体に対して記録パワーPを逐次変化させながら未記録部と記録部とからなるパターンをテスト記録し、このテスト記録したパターンから情報を再生して記録パワーPに対応した再生信号振幅mをモニターし、Pとmの関係から最適記録パワーを設定する光学的情報記録再生方法であって、各Pと測定したmの複数の組み合わせから、mをPの連続関数m(P)として関数近似し、次の(1)式
(dm/dP)*(P/m)=所定値・・・(1)
ただし、dm/dPはm(P)をPで微分した関数
を満たす根Ptargetに応じた値を最適記録パワーとするので、mをまず関数近似した結果からPtargetを求めることになり、測定したmに対して規格化傾斜を求める場合のように測定ばらつきが増幅されてしまうことがなく、再生信号振幅の測定ばらつきに対してより正確に最適記録パワーを得ることができる。
【0056】
請求項4に係る発明によれば、請求項3記載の光学的情報記録再生方法において、前記m(P)はmの2次式として関数近似するので、計算が簡単であり、低コストにできる。また、計算時間も早いため、テスト、再生信号振幅の評価時間を短縮できる。
【0057】
請求項5に係る発明によれば、請求項4記載の光学的情報記録再生方法において、前記2次式をa*P2+b*P+cとし、該2次式a*P2+b*P+cの係数a、b、cと前記所定値から、前記(1)式の根を計算し、この根に応じた値を最適記録パワーとするので、規格化傾斜gamma自体を計算することなく、直接に最適記録パワーを計算でき、処理が単純になり、低コストにでき、処理時間も早くなる。
【0058】
請求項6に係る発明によれば、請求項3、4または5記載の光学的情報記録再生方法において、前記m、あるいは前記再生信号の前記未記録部に対応する信号レベル、あるいはこれらの両方が、それぞれ所定値以下となるmとPの組み合わせを、前記関数近似の対象から除くので、光ディスク上の欠陥やゴミ、キズ等があって、その場所に記録したテスト信号の再生信号に信頼性が欠けていても、そのデータを排除して計算することになり、より正確に最適記録パワーを得ることができる。
【0059】
請求項7に係る発明によれば、請求項1から6までのいずれかに記載の光学的情報記録再生方法において、前記根が複数あってあらかじめ定められたPの範囲にひとつだけ入っているとき、そのひとつの根に応じた値を最適記録パワーとし、前記根がひとつも前記範囲に入っていないか、前記根が前記範囲に複数入っているときは、どの根に応じた値も最適記録パワーとして採用しないので、不正な光ディスクや、何らかのハードウェア不良、PCAエリアに大きなキズなどがあって、正しく記録できなかった、等の予期できない不具合があっても、不正な記録パワーを採用せず、良好な記録や、レーザ光源の保護、光ディスク記録膜の保護など多くの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例を示すブロック図である。
【図2】同比較例のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】同比較例の記録パワー対ピークレベル及びボトムレベルの関係を示す図である。
【図4】同比較例の記録パワー対ピークレベル及びボトムレベルの関係をプロットした特性図である。
【図5】同比較例の異常値を排除して変調度を計算した結果を示す図である。
【図6】同比較例のgammaを計算した結果を示す図である。
【図7】同比較例において、gamma=Gt=1.3としたときに、これに相当するパワーP0の求まる様子を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図9】同実施形態のmから直線に求めたgammaを2次近似した曲線(a)、gammaをプロットした曲線(b)、プロットしたmを2次近似した曲線(c)を示す図である。
【図10】図2のステップ201の処理例を示すフローチャートである。
【図11】図2のステップ202の処理例を示すフローチャートである。
【図12】図2のステップ203の処理例を示すフローチャートである。
【図13】図2のステップ204の処理例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
101 光ディスク
104 光ピックアップ
106 ピーク検出回路
107 ボトム検出回路
108 コントローラ

Claims (6)

  1. 光学的情報記録媒体に対して記録パワーPを逐次変化させながら未記録部と記録部とからなるパターンをテスト記録し、このテスト記録したパターンから情報を再生して記録パワーPに対応した再生信号振幅mをモニターし、Pとmの関係から最適記録パワーを設定する光学的情報記録再生方法であって、各Pと測定したmの複数の組み合わせから、mをPの連続関数m(P)として関数近似するステップと、このステップで関数近似されたm(P)を使って次の(1)式
    (dm/dP)*(P/m)=所定値・・・(1)
    ただし、dm/dPはm(P)をPで微分した関数
    を満たす根であるPtargetに応じた値を最適記録パワーとするステップとを有することを特徴とする光学的情報記録再生方法。
  2. 請求項1記載の光学的情報記録再生方法において、前記m(P)はPの2次式として関数近似することを特徴とする光学的情報記録再生方法。
  3. 請求項2記載の光学的情報記録再生方法において、前記2次式をa*P+b*P+cとし、該2次式a*P+b*P+cの係数a、b、cと前記所定値から、前記(1)式の根を計算し、この根に応じた値を最適記録パワーとすることを特徴とする光学的情報記録再生方法。
  4. 請求項1、2または3記載の光学的情報記録再生方法において、前記m、あるいは前記再生信号の前記未記録部に対応する信号レベル、あるいはこれらの両方が、それぞれ所定値以下となるmとPの組み合わせを、前記関数近似の対象から除くことを特徴とする光学的情報記録再生方法。
  5. 請求項1から4までのいずれか1つに記載の光学的情報記録再生方法において、前記根が複数あってあらかじめ定められたPの範囲にひとつだけ入っているとき、そのひとつの根に応じた値を最適記録パワーとし、前記根がひとつも前記範囲に入っていないか、前記根が前記範囲に複数入っているときは、どの根に応じた値も最適記録パワーとして採用しないことを特徴とする光学的情報記録再生方法。
  6. レーザ光源からの出射光を対物レンズにより光学的情報記録媒体の記録面に集光することで、該記録面に対するデータの記録、再生を行い、前記記録面からの反射光に応じたデータ信号を増幅するRF検出手段と、該RF検出手段から出力される信号のピークレベルを検出するピークレベル検出手段と、前記RF検出手段から出力される信号のボトムレベルを検出するボトムレベル検出手段と、前記ピークレベル検出手段および前記ボトムレベル検出手段からの出力信号を取り込み、パワー指令を出力するコントローラと、前記パワー指令に対応したパワーで前記レーザ光源を駆動するレーザパワー制御手段とを有する光学的情報記録再生装置であって、
    前記コントローラは、
    前記光学的情報記録媒体の所定の領域に、前記レーザパワー制御手段による前記レーザ光源の記録パワーPを逐次変化させて未記録部と記録部とからなるパターンデータを複数回記録させるために、前記パターンデータをテスト記録させる毎に前記パワー指令を逐次変化させ、
    各記録パワーPに対する再生データ振幅mを次の(2)式
    m=(pk−bt)/pk・・・(2)
    ただし、pkは各記録パワーPに対する前記パターンデータを記録した領域のデータ再生信号を前記RF検出手段により増幅して前記ピークレベル検出手段で検出したピークレベル、
    btは各記録パワーPに対する前記パターンデータを記録した領域のデータ再生信号を前記RF検出手段により増幅して前記ボトムレベル検出手段で検出したボトムレベル
    により求め、
    各記録パワーPと前記再生データ振幅mの複数の組み合わせから、mをPの連続関数m(P)として関数近似し、
    次の(3)式
    (dm/dP)*(P/m)=所定値・・・(3)
    ただし、dm/dPはm(P)をPで微分した関数
    を満たす根であるPtに応じた値を求め、
    前記Ptを最適記録パワーとすることを特徴とする光学的情報記録再生装置。
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