JP3303270B2 - 分散補正装置 - Google Patents

分散補正装置

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JP3303270B2 JP06111395A JP6111395A JP3303270B2 JP 3303270 B2 JP3303270 B2 JP 3303270B2 JP 06111395 A JP06111395 A JP 06111395A JP 6111395 A JP6111395 A JP 6111395A JP 3303270 B2 JP3303270 B2 JP 3303270B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、時間幅がピコ秒以下の
光パルスを発生するレーザの共振器または同様な光パル
スを伝搬する光学路のような光学系における波長分散特
性を補正する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、時間幅がピコ秒以下の光パルスの
発生技術の開発が盛んに進められている。その結果、時
間幅の短い光パルスの発生または伝搬に際しては、その
発生または伝搬に使用する光学部品及びその光学部品の
集合体である光学路の波長分散特性がパルスの形状に大
きく影響することが明らかになってきた。例えば、波長
分散特性が急激に変化するような光学路を短い光パルス
が通過すると、波形の変形現象が生ずる。従って、この
ような光学路の波長分散特性を制御(補正)する必要性
が生じる。
【0003】また、波長分散特性が急激に変化する光学
部品を用いたのでは、時間幅の短い光パルスの発生その
ものが困難となる。特に、超短光パルスレーザの共振器
においては、光が共振器中を巡回することに伴って波形
の変形が多数回蓄積されるので、波長分散特性をとりわ
け高精度に制御することが必要である。
【0004】最近の研究によれば、チタンサファイアレ
ーザに代表されるような超短光パルス固体レーザの共振
器の波長分散特性としては2次分散値、即ち伝搬位相の
光周波数に関する2階微分が負であり、かつ3次分散
値、即ち同3階微分が零であることが望ましい。
【0005】ここで、負の2次分散が要請される理由
は、共振器内で光が集束される部位、典型的にはレーザ
媒質中で超短光パルスに伴う高光強度によって誘起され
る位相変調を補償するためである。ここで、対称な光パ
ルスに伴う位相変調は偶数次であるので、その補償に際
して、一般に、奇数次の分散は有害無益である。さら
に、この位相変調は、実際上、ほぼ2次とみなせるの
で、その補償・平坦化に必要なのは2次分散である。
【0006】同様な事情はレーザ共振器の外部でも見ら
れる。例えば、超短光パルスを光ファイバ内を伝搬させ
ることにより意図的に多量の位相変調を起こし、その後
に位相を補償・平坦化することによってパルス幅の圧縮
を行う、いわゆるファイバ圧縮において、位相の補償・
平坦化のためには2次分散値が負であり、かつ3次分散
値が零であることが望ましい。
【0007】以上のような位相の補償・平坦化のために
分散補正装置が用いられる。かかる装置に対する一般的
な要請として、まず、挿入損失が低く、小型であること
が挙げられる。特に、共振器内で用いられる分散補正装
置においては挿入損失が零に近いことが不可欠である。
【0008】また、分散補正装置の生成すべき分散特性
は、 D2 (t)=D2 (o)+D2 (c)3 (t)=D3 (o)+D3 (c) ……(1) と定められる。ここで、D2 (o)は分散補正装置を挿入す
る前の光学系の2次分散値(以下、被補正2次分散値と
称す。)、D2 (c)は分散補正装置の生成する2次分散値
(以下、制御2次分散値と称す。)、D2 (t)は分散補正
装置を挿入することによって得ようとする2次分散値
(以下、所期2次分散値と称す。)を表す。同様にし
て、D3 (o)は被補正3次分散値、D3 (c)は制御3次分散
値、D3 (t)は所期3次分散値を表す。
【0009】前述した各用途に即して、分散補正装置が
生成すべき制御分散値について考える。
【0010】光学路の伝搬に伴う波形変形の抑圧の場
合、所期2次分散値及び所期3次分散値の両方が零であ
るから、必要な制御分散値は被補正分散値の逆、即ちD
2 (c)=−D2 (o)かつD3 (c)=−D3 (o)となる。
【0011】また、レーザ共振器の分散制御の場合、所
期2次分散値D2 (t)は負、所期3次分散値D3 (t)は零で
あるから、必要な制御分散値はD2 (c)=−D2 (o)+D2
(t)かつD3 (c)=−D3 (o)である。
【0012】また、ファイバ圧縮における分散制御の場
合、被補正2次分散値及び被補正3次分散値の両方を零
とみなすことができ、所期2次分散値D2 (t)は負、所期
3次分散値D3 (t)は零であるから、必要な制御分散値は
2 (c)=D2 (t)かつD3 (c)=0である。
【0013】ここで、透明な光学媒質内の伝搬に伴う3
次分散は正の値を取ることを考慮し、これを被補正分散
値として制御3次分散値を導くと、D3 (c)≦0が帰結さ
れる。即ち、零の所期3次分散値を実現するためには、
分散補正装置は零または負の制御3次分散値を発生する
ことが必要である。さらに高光強度によって誘起される
位相変調の補正に負の所期2次分散値が要請され、かつ
通常の光学媒質の2次分散値が正であることを鑑みる
と、現在の分散補正装置の典型的な使用局面での制御2
次分散値は負であるということができる。
【0014】従来の低挿入損失の分散補正装置として
は、例えばOptics Letters, Vol.9, 1984, p.150-152に
記載されたプリズム対があり、このプリズム対を固体レ
ーザ共振器中で使用した例を図2に示す。
【0015】図2中、1はレーザ媒質、2は全反射端面
鏡、3は出力結合鏡、4,5はレーザ媒質1を挟んで配
置される一対の全反射集束鏡であり、これらによってレ
ーザ共振器が構成され、前記レーザ媒質1に外部からの
励起光6を集束光学系7を介して集束し、これを励起す
ることによりパルス発振を行わせ、出力パルス光束8を
得る如くなっている。
【0016】また、図2中、9,10は光線の入出射角
がブリュースタ角となるように頂角が形成された一対の
二等辺プリズムであり、その底面が互いに平行になるよ
うに配置され、挿入損失が原理的に零の分散補正装置を
構成している。
【0017】この分散補正装置により生成される分散量
は、2個のプリズム9,10の頂点間の距離l及び各プ
リズムの挿入量の和をxを用いて、 D2 (p)=A11l+A12x D3 (p)=A21l+A22x ……(2) と表すことができる。ここで、プリズムの挿入量とは、
プリズムの底辺に垂直な方向の移動量をプリズムの頂点
が光線の中心線上にある状態を基点として測った量であ
る。
【0018】式(2)中の係数は、プリズム材質の屈折率
nとその波長(λ)微分を含む式、 A11=−(4λ/πc2)(λ・dn/dλ)2 ……(3) A12=(4λ/πc2)λ2(d2n/dλ2)n/(n2+1) ……(4) A21=(6λ2/π23)λ(dn/dλ)(λ・dn/dλ +λ2・d2n/dλ2) ……(5) A22=−(2λ2/π23)(3λ2・d2n/dλ2+λ3・d3n/dλ3) n/(n2+1) ……(6) によって与えられる。
【0019】前記式(4)と式(6)とを吟味すると、A12
及びA22xの項の寄与は、厚み8{n/(n2+1)}
x分のプリズム材質中の伝搬に伴う2次及び3次分散と
解釈できる。前述のように、挿入量xの基点は光線の中
心線上にあるので、光線が有限の全幅2wを持つ場合、
光線がケラレを蒙らないための最小の挿入量xmが存在
する。これを計算すると、 xm={(n2+1)/n}w ……(7) が導かれ、これを代入すると、A12x及びA22xの項の
寄与は、厚み8w分のプリズム材質中の伝搬に伴う2次
及び3次分散にそれぞれ等しいことが分かる。
【0020】一方、プリズム対に特徴的な分散は、A11
l及びA21lの項である。前者については式(3)によれ
ば、常にA11<0、即ち頂点間の距離lに伴って常に負
の2次分散が生成される。
【0021】後者については、一般に、透明波長領域の
光学材料に対し、dn/dλ<0が成り立つ一方、2階
微分d2n/dλ2の符号は光学材料の分散の正負に従っ
て、正分散媒質ではd2n/dλ2>0、負分散媒質では
2n/dλ2<0となる。また、可視から近赤外波長域
において、透明光学材料のd2n/dλ2は波長に伴って
減少する。従って、係数A21は2次分散が1次分散に超
越する(λ2・d2n/dλ2>−λ・dn/dλ>0)
短波長域でのA21<0から、2次分散が負となる長波長
域でのA21>0へと、波長に従って増加する。
【0022】このようにして生成される制御分散値が式
(1)を満たす条件から、プリズム対における頂点間の距
離l、挿入量の和xに対する線形連立方程式 A11l+A12x=D2 (t)−D2 (o)21l+A22x=D3 (t)−D3 (o) ……(8) が導かれる。この方程式がl≧0かつx≧xmを満たす
解を持てば、プリズム対の設置により所期分散値を達成
することが可能である。従って、式(8)が、この従来の
分散補正装置における設計基本式となっている。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来の分散補正装置では、第1に、必要な所期分散値
が得られる例が希であるという問題がある。
【0024】ここで、図2に示した従来例において、レ
ーザ媒質1が長さ2cmのクロム添加YAG(イットリ
ウム・アルミニウム・ガーネット)結晶ロッドである場
合を考察する。Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya
Fizicheskaya, Vol.54, 1990, p.1500-1506に述べられ
ているように、このレーザ媒質を用いるレーザは波長1.
35μmから1.60μmの範囲で発振が観測されている。
【0025】以下、この波長域の長波長側半分を使用波
長とし、所期2次分散値D2 (t)を−1000fs2から零の範
囲、かつ所期3次分散値D3 (t)を零とする分散補正装置
を検討する。この所期分散値は、モード同期固体レーザ
の動作に通常に要求される値である。
【0026】前述したように、零の所期3次分散値を得
るためには、分散補正装置は零または負の制御3次分散
値を発生することが必要である。式(2)より、このため
には係数A21が負であることが必要であり、さらに式
(5)を考慮すると、λ2・d2n/dλ2>−λ・dn/d
λ>0が必要である。即ち、分散補正装置のプリズム材
質には正の分散媒質、特に零分散波長が使用波長域の長
波長側に遠く離れている正の分散媒質を用いる必要があ
る。波長1.60μmに至るまで、この条件を満たす光学材
料としては、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(Zn
Se)、結晶シリコン(Si)等が知られている。
【0027】図3、図4は従来例の動作特性を示すもの
で、前述した2個のプリズム9,10の材質を硫化亜鉛
とした場合を示す。この従来例において、前記3つの候
補光学材料のうちでは硫化亜鉛が最前の結果を与える。
【0028】前述した所期分散値について式(8)を解い
て各プリズムの挿入量の和xを求め、これを波長の関数
として示したのが図3である。図中、要求されるxは、
2つの境界所期分散値D2 (t)=0fs2及びD2 (t)=−100
0fs2に対応する曲線に挟まれる。また、図中に式(7)に
より与えられる最小挿入量xmを付記した。既に述べた
ように、所期分散値の実現にはx≧xmの成立が必要で
ある。ところが、従来例では必要なxの範囲は最小挿入
量xmよりも小さく、所期分散値を実現することはでき
ない。
【0029】そこで、妥協策として、従来、所期3次分
散値の実現を断念し、所期2次分散値のみを得ることが
行われてきた。この場合、補正誤差として大きな負の3
次分散が残る。この残留3次分散の大きさを最小にする
設計は、例えばOptics Letters, Vol.16, 1991, p.738-
740においてチタンサファイアレーザ共振器について考
察されている。それによれば、挿入量の和xを最小挿入
量xmに等しくとり、式(8)の第1式を解いて2個のプリ
ズムの頂点間の距離lを定めれば良い。
【0030】この方針に従って、前記所期2次分散値に
ついてプリズムの頂点距離(頂点間の距離)lを求め、
これを残留3次分散とともに波長の関数として示したの
が図4である。小さい所期2次分散値を望むほど残留3
次分散の大きさが増し、D2 ( t)=−1000fs2を得る際の
残留3次分散は−10000fs3近くに及ぶ。
【0031】一方、最適なプリズムの頂点距離lの所期
2次分散値に伴う変化量を見ると、D2 (t)=0fs2〜−1
000fs2の範囲で60〜80mm変化する。この位置変化
を光軸を保ったまま連続的に得ることは容易でないの
で、実際は頂点距離lを最小の所期2次分散値(この場
合、D2 (t)=−1000fs2)に対する最適値に固定し、所
期2次分散値の可変性は挿入量の和xを変化させること
により得るという操作法が行われる。この操作法による
場合、残留3次分散は最小の所期2次分散値に伴う大き
さに近い値に固定される。即ち、従来例では所期2次分
散値の如何に拘らず−10000fs3近くの残留3次分散を蒙
ることとなる。
【0032】現在、超短光パルスレーザの共振器中のこ
のような残留3次分散が、発生されるパルスの幅の主た
る制限要因となっている。この事実は、例えばOptics L
etters, Vol.18, 1993, p.54-56においてチタンサファ
イアレーザから発生される幅12.3fsの光パルスを観測す
ることによって実験的に示されている。
【0033】従来の分散補正装置の第2の問題点は、た
とえ所望の所期分散値が得られたとしても、それが狭い
波長範囲に限定されることである。この問題は、例えば
Optics Letters, Vol.18, 1993, p.57-59においてチタ
ンサファイアレーザ共振器の分散補正について論じられ
ている。これによれば、被補正分散値を長さ1cmのチ
タンサファイアレーザロッドの分散にとり、所期分散値
を2次、3次ともに零にとった場合、石英製のプリズム
によって式(8)を満足できる波長範囲は852nmから847
nm、また、BK7製のプリズムでは877nmから880n
mである。
【0034】このように分散補正が達成可能な波長範囲
が狭いことは、分散補正装置を設置するレーザ共振器ま
たは光学路の使用波長範囲を大きく制限する結果とな
る。広い波長範囲のレーザ動作を望む場合には、プリズ
ムの材質を異にする複数の分散補正装置を切り替えて用
いることが必要となり、甚だ利便性を欠くものと言わざ
るを得ない。特にレーザ共振器内での切り替えに際して
は共振器の大幅な再調整が必要となるので、レーザ共振
器内で複数の分散補正装置を切り替えて使用することは
非現実的である。
【0035】さらに付随する問題として、従来例で分散
補正が達成可能な場合は大きな頂点間の距離lが必要と
なる傾向にあることである。前記文献における検討で
は、頂点間の距離lとして、石英製のプリズムに対して
79.7cm、BK7製のプリズムに対して64.2cmが計算
されている。このように長大な分散補正装置は、レーザ
共振器中の大半の空間を占め、超短光パルスレーザの小
型化を阻んでいる。また、分散補正装置によりレーザ共
振器が長大になる結果、その調整が困難となり、長期的
安定性の低下が避けられなかった。
【0036】このように、従来の分散補正装置では、
(1)所望の所期分散値が得られる波長範囲が極めて狭
く、また、(2)装置が長大になるという問題があった。
【0037】本発明の目的は、汎用性に富み、かつ小型
で挿入損失が低い分散補正装置を提供することにある。
【0038】
【課題を解決するための手段】本発明の分散補正装置
は、光学系の光路中に、正の3次分散値を有する第1の
分散性媒質と、正の2次分散値を有する第2分散性媒質
を素材とする2個のプリズムとのみを配置し、光を前記
第1の分散性媒質内を伝搬させ、2個のプリズム内を逐
次的に伝搬させたことを特徴とする。
【0039】また、第1の分散性媒質の少なくとも一方
の端面において、光路と面法線との成す角がブリュース
タ角に一致するように構成する方が良い。また、2個の
プリズムそれぞれの両方の端面においても、光路と面法
線との成す角がブリュースタ角に一致するように構成す
る方が良い。
【0040】また、2個のプリズムの底面に垂直な方向
の平行移動に伴って該2個のプリズムにより生成される
3次分散値の変化と、2個のプリズムの頂点を結ぶ方向
の平行移動に伴って該2個のプリズムにより生成される
3次分散値の変化とが相殺する方向に、該2個のプリズ
ムの少なくとも一方を移動可能に構成する方が良い。
【0041】
【作用】光を第1の分散性媒質内を伝搬させ、かつ正の
2次分散値を有する第2の分散性媒質を素材とする2個
のプリズム内を逐次的に伝搬させる。ここで、第1の分
散性媒質の少なくとも一方の端面は光路、即ち光線と面
法線との成す角がブリュースタ角に一致するよう構成
し、また、2個のプリズムそれぞれの両方の端面も、光
線と面法線との成す角がブリュースタ角に一致するよう
に構成する。これにより、汎用性に富み、かつ小型で挿
入損失が低い分散補正装置の実現が可能となる。
【0042】また、プリズムの挿入量の変化に伴う3次
分散値の変化と、2個のプリズムの頂点間の距離の変化
に伴う3次分散値の変化とが相殺する方向に、該2個の
プリズムの少なくとも一方を移動可能に構成することに
より、一定の所期3次分散値、特に零の所期3次分散値
を保ちつつ、所期2次分散値を連続的に変化させること
が可能となる。
【0043】本発明の分散補正装置は、2個のプリズム
内を逐次的に光を伝搬させる点では、前述した従来の装
値と同一である。しかし、光を伝搬させる第1の分散性
媒質が付加されている点で異なる。従って、何故、この
第1の分散性媒質の付加が必要なのか、以下、その理由
を図5を用いて明らかにする。
【0044】図5は従来例における各光学要素の分散寄
与を示す概念図である。横軸に2次分散D2を、縦軸に
3次分散D3をとって作られる平面(以下、分散平面と
称す。)上に、各光学要素の分散D=(D2,D3)を表
す座標またはベクトルを記入してある。
【0045】被補正分散D(o)=(D2 (o),D3 (o))を
表す点11から所期分散値D(t)=D2 (t),D3 (t))の
逆を表すベクトルを引いた終点が必要な制御分散の逆
(逆制御分散)を表す点12となる。従来例において制
御分散はプリズム対のみによって生成されるので、前記
逆制御分散を表す点はプリズム対に対する逆制御分散−
(p)を表す点でもある。
【0046】前述したように、被補正3次分散は正の値
を取り、また、被補正2次分散は典型的には正なので、
被補正分散D(o)は第1象限にある。また、所期3次分
散は不変的に零、さらに所期2次分散は典型的には負な
ので、所期分散値の逆を表すベクトル−D(t)は水平右
向きとなる。
【0047】以上の結果、逆制御分散を表す点12と原
点を結んだ線の傾きは小さくなる傾向にある。この点を
原点に関して反転した点13が、従来例においてプリズ
ム対が生成すべき制御分散D(p)を表す。
【0048】前述したように、プリズム対により生成さ
れる分散量は式(2)で表され、頂点距離l及び挿入量x
に依存して連続的に変化する。従って、その分散は図5
にハッチングを付して示したように、分散平面上で広が
りを持つ領域で表される。
【0049】図5中、この領域の境界を張る直線のう
ち、原点から右上に伸びる半直線は、l=0の下でxを
零から増していった場合の分散の軌跡(x-線と称
す。)である。前述したように、挿入量xには光線がケ
ラレを蒙らないための最小量xm(式(6))が存在するの
で、プリズム対の分散の実質的な基点は、前述した半直
線上をxmに対応する分だけ進んだ背景分散点14とな
る。また、図5中、背景分散点14から左下に伸びる半
直線は、x=xmの下でlを零から増していった場合の
分散の軌跡(l-線と称す。)である。
【0050】従って、プリズム対の生成する分散は、背
景分散点14を頂点とし、前述の2本の半直線に挟まれ
る領域(頂角が180°を越えない側)で表される。
【0051】所期分散値が実現できるか否かは、前述し
たプリズム対が生成すべき制御分散D(p)を表す点13
が、プリズム対の生成し得る分散領域の内部に属するか
否かと同義である。ここで、点D(p)を領域内に含むた
めには、少なくともl-線が原点と点D(p)を結んだ直線
(p-線と称す。)よりも緩い勾配を持つことが必要で
ある。このことは図5から容易に見て取れる。
【0052】一方、プリズム対の発生する分散が2次元
的自由度を持つためには、x-線の勾配がl-線の勾配よ
りも小さい必要がある。なぜなら、両者の勾配が等しく
なると、プリズム対の発生する分散は直線上に縮退して
しまうからである。結局、以上述べた勾配の大きさの関
係をまとめると、 p-線の勾配>l-線の勾配>x-線の勾配 という関係が所期分散値の実現に必要となる。
【0053】ここで、x-線の勾配は式(2)中の係数を用
いてA22/A12と表され、プリズム材質中の伝搬に伴う
2次分散と3次分散との比である。比をとることにより
材質の屈折率の大きさは打ち消されることになり、この
勾配はほとんど材質の零分散波長の位置だけを反映する
量となる。特に零分散波長から遠くはなれた波長では、
材質によるx-線の勾配の差異は極くわずかである。同
様の性質は、l-線の勾配A21/A11にも成り立ってい
る。
【0054】さて、例えばレーザ共振器内での分散補正
装置の典型的な使用局面において、被補正分散D(o)
レーザ媒質の持つ分散である。従って、被補正分散D
(o)を表す点11と原点とを結んだ線分の勾配、即ち比
3 (o)/D2 (o)も零分散波長の位置だけを反映する量と
なり、特に零分散波長から遠く離れた波長では、プリズ
ム対のx-線の勾配と大差がないことになる。
【0055】逆制御分散(即ち、プリズム対に対する逆
制御分散−D(p))は、この被補正分散D(o)に、所期分
散値の逆を表す水平右向きのベクトル−D(t)を加えて
できるため、p-線の勾配はプリズム対のx-線の勾配よ
りも寧ろ小さくなる傾向にある。この傾向は、前述した
「p-線の勾配>x-線の勾配」という条件と対立する。
それゆえ、必要な所期分散値が得られる例は希となる。
【0056】よしんば、「p-線の勾配>x-線の勾配」
という条件を満たせたとしても、それらの勾配の差はわ
ずかでしかない。ところが、前述した条件から、l-線
の勾配はこれらの中間になければならないので、必然的
にx-線の勾配とl-線の勾配との差もわずかとなる。
【0057】前述したように、係数A11は常にA11<0
であるのに対し、係数A21は波長に従って増加する。そ
の結果、l-線の勾配は波長とともに減じる。ところ
が、正分散域で係数A12>0は長波長で零に近づいてい
くので、x-線の勾配は波長とともに増す。これらの勾
配の波長依存性により、x-線の勾配とl-線の勾配とは
波長とともに近接の度を深め、最終的には一致してしま
う。この波長が所期分散値が実現できる波長の上限を与
える。
【0058】一方、下限の波長はp-線の勾配とl-線の
勾配との一致により定まる。元来、p-線の勾配とx-線
の勾配とは僅差である結果、所期分散値が実現できる波
長の範囲は当然狭くなる。
【0059】また、生成すべき制御分散D(p)を表す点
13が生成し得る分散領域の境界上でなく内部にある場
合、その生成に要する頂点距離及び挿入量の変化は、x
-線の勾配とl-線の勾配とが近接する故に甚大となる。
【0060】例えば、図5で境界からわずかに潜った制
御分散点に達するためには、頂点距離を増して一旦、点
15の最小挿入時分散を経由してから挿入量を増すこと
が必要である。ただでさえ背景分散点14の正の2次分
散を打ち消して負の制御2次分散に達するために大きな
頂点距離を要し、なおかつ制御分散の微調にも頂点距離
を大きく変化させねばならない。このように、従来の分
散補正装置は長大なものとならざるを得なかった。
【0061】発明者は、前述した従来例の問題を回避す
べく検討を進めた結果、p-線の勾配が小さい、換言す
れば2次分散の割に3次分散の小さい制御分散を、プリ
ズム対によって発生しようとしたことに従来例の根本的
問題が胚胎されることをつきとめた。その結果、無理に
l-線の勾配の小さい媒質を選択して用いることとな
り、不可避的に所期分散値が実現できる波長範囲が狭く
なり、装置が長大となったのである。
【0062】そこで、発明者は、従来例の装置に、p-
線の勾配を大きくするため、光路中に第1の分散性媒質
を配置することで、本発明の分散補正装置に至った。こ
こで、第1の分散性媒質に対する条件は、その単位長さ
当たりの2次分散値をb2、同3次分散値をb3とした場
合、分散平面上で点(b2,b3)と原点とを結んだ直線
の横軸正方向から測った方位角が、逆制御分散−D(c)
=(−D2 (c),−D3 (c))に対するそれよりも大きいこ
とである。即ち、 b2<(D2 (t)/D3 (t))b3 ……(9) が成り立てば良い。ここで、前述したように透明な光学
媒質内の伝搬に伴う3次分散は正の値をとるので、b3
>0を前提とした。実施例中で詳述するように、0.8μ
m以長の波長域で、この条件を満たす第1の分散性媒質
を見いだすことは困難ではない。
【0063】3次分散が正である第1の分散性媒質と被
補正分散とから帰結されるp-線の勾配は波長とともに
増す。一方、l-線の勾配は波長とともに減るので、あ
る波長で条件「p-線の勾配>l-線の勾配」が満たされ
れば、より長波長では必ず満たされる。従って、本発明
の分散補正装置の設計、より具体的には第1の分散性媒
質中の伝搬距離dの決定には、使用波長域の短波長端だ
けを考慮すれば良い。
【0064】即ち、使用短波長端λlにおける被補正分
散D(o)、第1の分散性媒質の分散b2,b3、プリズム
対の係数A11,A12,A21,A22及び最小挿入量xm
含む連立方程式 A110+b2d+A12m=D2 (t)−D2 (o)210+b3d+A22m=D3 (t)−D3 (o) ……(10) を頂点距離l0、伝搬距離dについて解く。所期2次分
散値D2 (t)に幅がある場合には、その下限値を式(10)中
に用いる。第1の分散性媒質中の伝搬距離は、こうして
得られるdに選ぶ。同時に得られる頂点距離l0は使用
波長域での最小値を与える。
【0065】他の波長λ≧λlにおける頂点距離lと挿
入量xは、λにおける被補正分散D( o)、第1の分散性
媒質の分散b2,b3、プリズム対の係数A11,A12,A
21,A22及び前記求めた伝搬距離dを含む連立方程式 A11l+A12x+b2d=D2 (t)−D2 (o)21l+A22x+b3d=D3 (t)−D3 (o) ……(11) を頂点距離l、挿入量xについて解いて求められる。こ
うして得られるl、xは必ずl≧l0>0、x≧xmを満
たす、即ち波長λ≧λlで所期分散値は必ず達成され
る。
【0066】先に述べたように所期3次分散値D3 (t)
典型的には零である。このように、一定の所期3次分散
値を得つつ、所期2次分散値D2 (t)を可変とするには、
l、xそれぞれの変化分δl、δxが、比 δx/δl=−A21/A22 ……(12) を保って動く方向に、プリズムの少なくとも一方が平行
移動するように構成する。この関係は、波長λ、伝搬距
離d、所期3次分散値D3 (t)及び被補正3次分散値D3
(o)を一定とする下で、式(11)の第2式の変分をとるこ
とにより導かれる。
【0067】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳
細に説明する。
【0068】
【実施例】図1は本発明の分散補正装置の一実施例を示
すもので、ここでは固体レーザ共振器に適用した例を示
す。
【0069】図中、21はレーザ媒質、22は全反射端
面鏡、23は出力結合鏡、24,25はレーザ媒質21
を挟んで配置される一対の全反射集束鏡であり、これら
によってレーザ共振器が構成され、前記レーザ媒質21
に外部からの励起光26を集束光学系27を介して集束
し、これを励起することによりパルス発振を行わせ、出
力パルス光束28を得る如くなっている。
【0070】また、図中、29は第1の分散性媒質を材
質とするブリュースタロッド、30,31は第2の分散
性媒質を材質とする二等辺プリズムであり、これらによ
り分散補正装置が構成される。
【0071】ここで、ブリュースタロッド29におい
て、その内部の光の伝搬方向と両端面との法線は、90
°−φB(但し、φBはブリュースタ角であり、φB=t
an-11:n1は第1の分散性媒質の屈折率)を成すよ
う構成されている。これにより、ブリュースタロッド2
9への光線の入出射角がブリュースタ角に一致し、図1
の紙面に平行に偏光した光線に対し、該ブリュースタロ
ッド29への入出射に伴う反射損失を原理的に零とでき
る。
【0072】さらに、二等辺プリズム30,31は、頂
角をα=2cot-12(但し、n2は第2の分散性媒質
の屈折率)とする二等辺三角柱に形成され、それらの底
面が互いに平行となるように配置される。これによっ
て、これらプリズムへの光線の入出射角がブリュースタ
角に一致し、図1の紙面に平行に偏光した光線に対し、
それら二等辺プリズム30,31への入出射に伴う反射
損失を原理的に零にできる。
【0073】本発明の分散補正装置では、二等辺プリズ
ム30,31を図6に示す方向に平行移動させることが
できる。
【0074】図6(a)は、所期分散値D(t)を一定に保ち
つつ使用波長を変化させる場合の移動方向を示す。一般
に、二等辺プリズムの平行移動は、その底辺に垂直方向
の移動(挿入ベクトル41)と、2つのプリズムの間を
伝搬する光束42に平行な方向の移動(頂点間ベクトル
43)との合成により表すことができる。
【0075】この場合、プリズムの移動方向44中に含
まれる挿入ベクトル41と頂点間ベクトル43との比
(=ρ1 -1)は、 δx/δl=−(A21−A11σ)/(A22−A12σ) ……(13) で与えられる。ここで、比σ={(db3/dλ)d+
dD3 (o)/dλ}/{(db2/dλ)d+dD2 (o)
dλ}は、プリズム対の生成する制御分散において、2
次分散値の波長による変化と3次分散値の波長による変
化との比である。また、両ベクトルの比は使用波長域の
両端の波長についてそれぞれ式(10)を解き、それらの解
の間でxの差分とlの差分との比をとって求めても良
い。
【0076】図6(b)は、一定の所期3次分散値を得つ
つ所期2次分散値D2 (t)を変化させる場合の移動方向を
示す。この場合のプリズムの移動方向45中に含まれる
挿入ベクトル41’と頂点間ベクトル43’との比(=
ρ2 -1)は、前記式(12)で与えられる。もしσ=0、即
ちプリズム対の生成すべき制御3次分散が波長に依存し
なければ、当然のことながら2つの移動方向44,45
は一致する。
【0077】本実施例において、レーザ媒質21が長さ
2cmのクロム添加YAG(イットリウム・アルミニウ
ム・ガーネット)結晶ロッドである場合を考察する。波
長1.45μmから1.60μmの範囲を使用波長とし、所期2
次分散値D2 (t)を−1000fs2から零の範囲、かつ所期3
次分散値D3 (t)を零とする分散補正を行う。前述したよ
うに、この分散補正は従来の装置では達成不能であっ
た。
【0078】第1の分散性媒質に対する式(9)の条件
は、2次分散が負(b2<0)である媒質により満たさ
れる。本使用波長域では多くの光学ガラスが負の2次分
散を持つ。このうち、本実施例では石英ガラスを選択し
た。また、プリズムの材質である第2の分散性媒質には
大きな正分散を持つ結晶シリコン(Si)を選んだ。使
用波長域の短波長端λl=1.45μmで、所期2次分散値
の最小値D2 (t)=−1000fs2及び光線の全幅2w=2m
mに対する最小挿入量xm=3.77mmを使って式(10)を
解き、必要な石英ガラスの長さとして107mmを得た。
また、この時の頂点距離l0は17.6mmであった。
【0079】図7は本実施例における各光学要素の分散
寄与を示す概念図である。波長λ=1.50μmで所期2次
分散値D2 (t)=−1000fs2を得た場合の各光学要素の分
散を、分散平面上にプロットしてある。図中、第1の分
散性媒質(石英ガラス)の付加により、プリズム対の発
生すべき分散の逆が、元来の逆制御分散51から反時計
回りに移され、第2象限の点52に至っている。その結
果、プリズム対の生成すべき制御分散D(p)53は第4
象限に位置することとなり、l-線の勾配が小さいプリ
ズム媒質に負う必要が全くなくなる。こうして、所期分
散値が実現できる波長範囲が広く、小型の分散補正装置
が可能となった。なお、54は被補正分散、55はプリ
ズム対の背景分散、56はプリズム対の最小挿入時分散
である。
【0080】図8、図9は本実施例の詳細な動作特性を
示すもので、使用波長と所期2次分散値D2 (t)それぞれ
の変化特性を示している。
【0081】図8は、所期分散値D(t)を一定に保ちつ
つ使用波長を変化させる場合の挿入量x及び頂点距離l
を使用波長の関数としてプロットしたグラフである。実
線は所期2次分散値D2 (t)=0fs2、波線はD2 (t)=−1
000fs2の場合をそれぞれ表す。前述した設計の結果、短
波長端λl=1.45μmでD2 (t)=−1000fs2の時、挿入量
xは最小挿入量xmに一致する。それ以外の場合、常に
x>xmが満たされており、所期分散値が達成されるこ
とが分かる。
【0082】また、図示しないが、1.60μmを越えた波
長に対しても所期分散値を達成することができる。挿入
量xと頂点距離lの波長依存性を直線で近似すると、使
用波長の変化にはプリズムの移動方向を、挿入ベクトル
と頂点間ベクトルとの比がρ1=δl/δx=4.5となる方
向にとれば良い。
【0083】また、一定の所期3次分散値(この場合は
零)を得つつ所期2次分散値D2 (t)を変化させる場合に
は、挿入ベクトルと頂点間ベクトルとの比がρ2=δl
δx=1.26となる方向をとれば良い。
【0084】図9は、波長λ=1.50μmにおいて、前述
した挿入ベクトルと頂点間ベクトルとの比がρ2=δl
δx=1.26となる方向の移動による所期2次分散値D2
(t)の変化特性を示したグラフである。プリズム移動量
1mm当たり917fs2の所期2次分散値変化が得られる。
従って、所期2次分散値D2 (t)=0から−1000fs2の範
囲は、僅か1.1mmのプリズム移動量によってカバーす
ることができる。
【0085】本実施例において、プリズム材質に他の光
学材料を用いても前記同様の分散補正を達成することが
できる。例えば、セレン化亜鉛(ZnSe)を用いる
と、短波長端λl=1.45μmで、所期2次分散値の最小
値D2 (t)=−1000fs2に対し必要な石英ガラスの長さは3
9.3mmで、この時の頂点距離l0は74.5mmである。さ
らに硫化亜鉛(ZnS)の場合、石英ガラスの長さを2
5.4mm、頂点距離l0を160mmとすれば良い。
【0086】図1の固体レーザ共振器において、レーザ
媒質21が長さ2cmのチタンサファイア結晶ロッドで
ある場合、幅10fs以下の極超短光パルスを発生するた
めには、使用波長0.8μmで所期2次分散値D2 (t)=−1
00fs2、かつ所期3次分散値D3 (t)=0が要請される。
これを実現するには、例えばブリュースタロッド29と
して長さd=66.3mmのLiSAF(LiSrAl
6)結晶、二等辺プリズム30,31としてLaK3
1ガラス製プリズムを頂点距離l0=574mmで用いれば
良い。ここで、LiSAF結晶内は異常光線として伝搬
させる。この場合、LiSAF結晶の2次分散b2は負
ではないが、使用波長が零分散波長(0.994μm)に近
いため、2次分散の割に3次分散が大きく、式(9)の条
件が満たされる。
【0087】また、図1の固体レーザ共振器において、
レーザ媒質21が長さ300μmのInGaAsP半導体
光増幅器である場合、幅400fs以下の極超短光パルスを
発生するためには、使用波長1.3μmで所期2次分散値
及び所期3次分散値を零とすることが要請される。この
場合、被補正分散は半導体光増幅器の分散であり、被補
正2次分散はD2 (o)=3000fs2、被補正3次分散は零と
みなせる。これを実現するには、例えば長さd=230m
mの石英ガラス製ブリュースタロッドと、セレン化亜鉛
(ZnSe)製プリズム対30,31を頂点距離l0=1
24mmで用いれば良い。この場合、使用波長が石英ガラ
スの零分散波長に近いため、プリズム対は余剰の負の3
次分散を打ち消すだけの役割を果たしている。
【0088】次に、ファイバ圧縮における分散制御への
本発明の適用例を説明する。例えば、被補正2次分散値
及び被補正3次分散値ともに零の下で所期2次分散値D
2 (t)=−500fs2、所期3次分散値D3 (t)=0、使用波長
はλ=1.50μmとする。これを例えば、石英ガラス製ブ
リュースタロッドとセレン化亜鉛(ZnSe)製プリズ
ム対によって実現するには、石英ガラスの長さを35.9m
m、プリズムの頂点距離l0を57.4mmに選べば良い。
【0089】最後に、光学路の伝搬に伴う波形変形の抑
圧への本発明の適用例を説明する。図1の固体レーザ共
振器において、出力結合鏡23の分散による波形変形を
出力パルス光束28から除去することが必要である。こ
れは前述した共振器の分散補正の結果、共振器内を巡回
する光パルスに対しては完全な補正が実現しているが、
出力結合鏡23によって外部に取り出される出力パルス
光束28は、出力結合鏡23のガラス基板の厚み分の分
散を過剰に受けているからである。
【0090】前述したクロム添加YAG(イットリウム
・アルミニウム・ガーネット)結晶ロッドをレーザ媒質
21としたレーザにおいて、出力結合鏡23の基板が厚
さ1cmのBK7ガラスの場合を考察する。例えば、石
英ガラス製ブリュースタロッドとセレン化亜鉛(ZnS
e)製プリズム対を用いると、前記同様の短波長端λl
=1.45μmで、必要な石英ガラスの長さは23.8mm、こ
の時の頂点距離l0は45.4mmである。
【0091】この場合、他の設計法として、頂点距離l
0を共振器内部の2個の二等辺プリズム30,31の頂
点間隔に等しくする方法がある。こうすることにより、
出力結合鏡23上で生じている横色分散を外部で打ち消
すことができるのである。この場合の頂点間隔は、先に
石英ガラス製ブリュースタロッドとセレン化亜鉛(Zn
Se)製プリズム対を用いた共振器分散補正で得た頂点
距離l0=74.5mmに固定される。この条件下で必要な
石英ガラスの長さは44.7mm、過剰挿入量x−xm=1.9
mm分だけ挿入量を増せば良い。
【0092】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の請求項1に
よれば、光学系における光の波長分散特性を補正する分
散補正装置において、光学系の光路中に、第1の分散性
媒質と、正の2次分散値を有する第2の分散性媒質を素
材とする2個のプリズムとを配置し、光を前記第1の分
散性媒質内を伝搬させ、2個のプリズム内を逐次的に伝
搬させたことにより、広い使用波長範囲で所望の所期分
散値を実現することができ、汎用性に富み、小型で挿入
損失が低い装置を提供可能となる。
【0093】また、本発明の請求項2によれば、第1の
分散性媒質の少なくとも一方の端面において、光路と面
法線との成す角がブリュースタ角に一致するように構成
したことにより、第1の分散性媒質による挿入損失を原
理的に零にできる。
【0094】また、本発明の請求項3によれば、2個の
プリズムそれぞれの両方の端面において、光路と面法線
との成す角がブリュースタ角に一致するように構成した
ことにより、2個のプリズムによる挿入損失を原理的に
零にできる。
【0095】また、本発明の請求項4によれば、2個の
プリズムの底面に垂直な方向の平行移動に伴って該2個
のプリズムにより生成される3次分散値の変化と、2個
のプリズムの頂点を結ぶ方向の平行移動に伴って該2個
のプリズムにより生成される3次分散値の変化とが相殺
する方向に、該2個のプリズムの少なくとも一方を移動
可能に構成したことにより、一定の所期3次分散値、特
に零の所期3次分散値を保ちつつ、所期2次分散値を連
続的に変化させることが可能となる。
【0096】本発明は超短光パルスを応用する光学系は
勿論、超短光パルスレーザ共振器、超短光パルス関連測
定器等における波長分散の補正に利用でき、工業的にも
大きな効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分散補正装置の一実施例を示す構成図
【図2】従来の分散補正装置の一例を示す構成図
【図3】図2の装置におけるプリズム挿入量の使用波長
依存性を示す図
【図4】図2の装置における所期2次分散に伴う残留3
次分散値及びプリズム頂点距離の使用波長依存性を示す
【図5】図2の装置における各光学要素の分散寄与を示
す概念図
【図6】プリズムの移動方向を示す図
【図7】図1の装置における各光学要素の分散寄与を示
す概念図
【図8】図1の装置におけるプリズム挿入量及びプリズ
ム頂点距離の使用波長依存性を示す図
【図9】図1の装置における2次分散値のプリズム移動
量依存性を示す図
【符号の説明】
21…レーザ媒質、22…全反射端面鏡、23…出力結
合鏡、24,25…全反射集束鏡、26…励起光、27
…集束光学系、28…出力パルス光束、29…ブリュー
スタロッド、30,31…二等辺プリズム。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01S 3/00 - 3/30 G02B 5/04 G02F 1/35 JICSTファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光学系における光の波長分散特性を補正
    する分散補正装置において、 光学系の光路中に、正の3次分散値を有する第1の分散
    性媒質と、正の2次分散値を有する第2の分散性媒質を
    素材とする2個のプリズムとのみを配置し、 光を前記第1の分散性媒質内を伝搬させ、2個のプリズ
    ム内を逐次的に伝搬させたことを特徴とする分散補正装
    置。
  2. 【請求項2】 第1の分散性媒質の少なくとも一方の端
    面において、光路と面法線との成す角がブリュースタ角
    に一致するように構成したことを特徴とする請求項1記
    載の分散補正装置。
  3. 【請求項3】 2個のプリズムそれぞれの両方の端面に
    おいて、光路と面法線との成す角がブリュースタ角に一
    致するように構成したことを特徴とする請求項1記載の
    分散補正装置。
  4. 【請求項4】 2個のプリズムの底面に垂直な方向の平
    行移動に伴って該2個のプリズムにより生成される3次
    分散値の変化と、2個のプリズムの頂点を結ぶ方向の平
    行移動に伴って該2個のプリズムにより生成される3次
    分散値の変化とが相殺する方向に、該2個のプリズムの
    少なくとも一方を移動可能に構成したことを特徴とする
    請求項1記載の分散補正装置。
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