JP3301963B2 - 重症化侵襲のスクリーニング方法 - Google Patents

重症化侵襲のスクリーニング方法

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JP3301963B2
JP3301963B2 JP12004098A JP12004098A JP3301963B2 JP 3301963 B2 JP3301963 B2 JP 3301963B2 JP 12004098 A JP12004098 A JP 12004098A JP 12004098 A JP12004098 A JP 12004098A JP 3301963 B2 JP3301963 B2 JP 3301963B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外傷、感染症、自
己免疫性疾患、悪性腫瘍を始めとする炎症性疾患等の重
症化の可能性を簡便にスクリーニングすることが可能な
スクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】生体に対して、異物体(全ての非自己で
ある物質)が侵襲(invasion)した場合、該生体は、侵
襲した異物体の種類、量等の条件に応じて、外傷;感染
症、敗血症;自己免疫性疾患;悪性腫瘍等の炎症性疾患
の発生を引き起こす可能性がある。この場合、該疾患等
が重症化するか否かを、簡便に、しかも出来る限り早期
に下すことが、臨床的には極めて重要である。該疾患等
が重症化するか否かよって、その後の治療の方針(例え
ば、患者への肉体的、精神的ないし経済的な負担が大き
い薬物、治療を施すか否か;副作用の大きい薬物を使用
するか否か;等)が大きく異なることとなるからであ
る。
【0003】例えば、上記した疾患の臨床経過中におい
て、時として発生する重要臓器の機能不全は、該臨床の
行方に多大な影響を及ぼすものであるが、他方、その該
疾患等が重要臓器の機能不全を合併するか否かを早期に
見極めることは極めて困難であるため、臨床担当医を大
いに困惑させている。
【0004】最近、該機能不全の予兆ないし警告信号と
して、systemic inflammatory response syndrome(S
IRS)の概念が提唱されている(Members of the Am
erican College of Chest Physicians/Society of Crit
ical Care Medicine Consensus Conference Committe
e; American College of Chest Physicians/Societyof
Care Medicine Consensus Conference: Definitions f
or sepsis and organfailure and guidelines for the
use of innovative therapies in sepsis.Crit Care
Med, 20:864~874,1992)。
【0005】SIRSの前述した概念は、sepsis(敗血
症)に関する治験のためのentry criteriaとして掲げ
られた基準値であったが、近年では、重症化のwarning
signとして考えられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らの研究によ
れば、SIRSの基準値を満たした症例の中には自然治
癒していくものも多く、臨床的にはさほど有用でなかっ
た。すなわち、このSIRSの状態となった症例であっ
ても、自然軽快するものや、さらに重症化するものの双
方があり、したがって、このSIRSの診断が即重症化
につながるとは言い難い状況である。
【0007】上記観点から、外傷、感染症、自己免疫性
疾患、悪性腫瘍を始めとする炎症性疾患等の重症化の可
能性を簡便、且つ患者への負担を低くしつつ判定するこ
とが、強く求められていた。
【0008】本発明の目的は、外傷、感染症、自己免疫
性疾患、悪性腫瘍を始めとする炎症性疾患等の重症化の
可能性を簡便にスクリーニングすることが可能なスクリ
ーニング方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究の
結果、重症患者において、「血球を貪食したPHP(pe
ripheral hemophagocyte)が末梢血中に出現する」とい
う新規な現象を見出した。
【0010】本発明者らは、更に研究を続けた結果、こ
の「PHPによる血球の貪食」現象の有無が、systemic
inflammatory response syndrome(SIRS)の侵襲の
重症化を予測するために極めて効果的であることを見出
した。
【0011】本発明の重症化侵襲のスクリーニング方法
は、上記知見に基づくものであり、より詳しくは、末梢
血中において、血球を貪食したPHPの存在の有無を検
出することを特徴とするSIRSの重症化侵襲のスクリ
ーニング方法である。
【0012】本発明において、前記侵襲としては、あら
ゆる疾患の人体への攻撃または開始のいずれかが例示さ
れる。また、該疾患としては、外傷、感染症、薬剤、熱
傷、膵炎、自己免疫性疾患、悪性腫瘍等のいずれかが例
示される。
【0013】前記外傷は、典型的には、身体への物理的
損傷または創傷であり;前記感染症は、典型的には、細
菌感染、ウィルス感染、寄生虫感染、真菌感染、リッケ
ッチヤ感染、トキソプラズマ感染症のいずれかであり;
前記薬剤は、典型的には、現在市販されている全ての薬
剤のいずれかであり;前記熱傷は、典型的には、火、化
学物質、電気、放射線のいずれかであり;前記自己免疫
性疾患は、典型的には、自己の組織成分(自己抗原)に
対する特異的な液性または細胞性免疫応答を特徴とする
状態のものである。
【0014】本発明において、前記自己免疫性疾患とし
ては、膠原病、突発性間質性肺炎、突発性肺繊維症のい
ずれかが例示され、該膠原病としては、全身性エリテマ
トーデス(SLE)、慢性関節性リュウマチ、強皮症のいず
れかが例示される。
【0015】本発明者らの知見によれば、今回新たに見
出された末梢血中のPHPは、Hemophagocytic Syndro
me(HPS)と総称される血球貪食を伴う組織球増殖性
疾患の主体をなし、骨髄等の細網内皮系組織で認められ
る単球系由来の細胞(参考文献:Reiner AP and Spivak
JL: Hematophagic histiocyosis; a report of 23
new patients and a review of the literature. Medi
cine 1988; 67:369~388)と同様のものと
推定される。
【0016】このPHPは、Manoharanの細網内皮系細
胞の分類(参考文献:ManoharanA, Catovsky D: Histio
cytic medullary reticulosis revisited. Disorders o
f the monocytemacrophage system. Haematol Blood T
ransfus 27:205~210,1981)によれば、sta
ge5に相当するphagocyteと考えられた。また、このP
HPが貪食する血球も、原因疾患との関連性が低かった
ため、無作為であると考えられた。
【0017】本発明における血球貪食の病態生理は未だ
不明確ではあるが、本発明者らは、高サイトカイン血症
により活性化されたマクロファージ・組織球が自己血球
を貪食するものと推定し、更に、この血球貪食が、我々
が直接確認できるところの、自己臓器傷害の証拠と考え
た。本発明は、上記したPHPを、臨床経過中に重症化
する症例の末梢血中に確認したことに基づくものであ
り、このPHPは、自己臓器傷害つまり、重症化の指標
となり得ると推定された。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、必要に応じて図面を参照し
つつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載におい
て量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り
重量基準とする。
【0019】(HPS)一般にHemophagocytic Syndro
me(HPS)と総称される血球貧食を伴う組織球増殖性
疾患は、Familial(家族性)hemophagocytic lymphohi
stiocyosis(FHL)であるprimaryHPSと、seconda
ryHPSとに二大別される。後者のsecondaryHPS
は、ウィルス・細菌感染の他、悪性腫瘍等、様々な原因
で生じる事が報告されている。近年、その病態にはサイ
トカインの関与が指摘され、治療法の見直しが唱えられ
るようになってきた。現在における診断基準は未だ厳し
く、HPSを難治性としている理由の1つと考えられる
ようになり、最近では、そのクラス分類が重要であると
さえ言われるようになっている。
【0020】(現在のHPS) (I)現在、上記HPSは、活性化したマクロファージ
・組織球が反応性に増殖・分化し、さらに自己血球を貧
食し、発熱、血球減少、肝機能障害、高LDH・フェリ
チン血症、等の特有な所見を呈してくる症候群とされて
いる。
【0021】(II)該HPSの原因は多種多様であり、
上記したFHLたるprimaryHPSと、種々の細菌、ウ
ィルスの感染、悪性腫瘍や薬剤投与後に続発するsecond
aryHPSとが含まれている。
【0022】(III)種々の原因により招来された高サ
イトカイン血症は、マクロファージ・組織球を活性化し
ている。高値が報告されているサイトカインは、インタ
ーロイキン(interleukin;IL)−1β、インターフ
ェロン(interferon;INF)−γ、可溶性インターロ
イキン−2レセプター、インターロイキン−6,monocy
te-macrophage colony stimulating factor(M−CS
F)−α等が挙げられる。
【0023】(IV)ウイルス感染やリンパ腫では、活性
化T細胞からIL−2、INF−γ、M−CSF等が分
泌され、細菌感染では好中球や活性化マクロファージか
らのエラスターゼ、IL−1β、TNF(tumor necros
is factor)−α、IL−6等が分泌され、更に、サイ
トカインネットワークを形成する。
【0024】(V)発熱、血圧低下、傾眠傾向等の臨床
症状はそれぞれのサイトカインの作用により発現してい
ると考えてられている。各サイトカインは各々の生物活
性を持ち、症例の呈する臨床症状と高値を指摘されたサ
イトカインには相関関係がある。(参考文献:津田弘
之:血球貪食症候群の特集によせて. 日常診療と血液7
(8):pp983~988,医薬ジャーナル社, 東京,199
7; Tsuda H: Hemophagocytic syndrome (HPS) in child
ren and adults. International Journal of Hematolog
y 65:215~226,1997; 今宿晋作: 血球貪食症候群とは, 血液・腫瘍科,33
(6), pp433~439,1996; 今宿晋作:リンパ
系腫瘍に伴う血球貪食症候群におけるサイトカインの関
与,臨床医, 22(7), 1996)。
【0025】(VI)HPSの診断基準として挙げられて
いる汎血球減少、高LDH血症及び高フェリチン血症
は、単球・マクロファージの増殖・分化、さらに活性化
したマクロファージによる血球貧食によるものとされて
いる。この機序は未だに不明であるが、サイトカインを
介した非特異的な血球貧食、または抗体を介した特異的
な血球貧食によるとされている(参考文献:熊倉俊一,
ほか:自己免疫関連血球貪食症候群, 医学のあゆみ,17
7(10),pp683~689, ,1996)。
【0026】HPSは、難治性(死亡率30%)であ
り、更に、その原因が多種多様であり;機序が不明であ
り;診断基準が厳しく;治療方針が確立されていないこ
とが問題となっている。
【0027】現在、HPSの対策としては、(a)原因
による病系の分類(上記したprimaryHPSとsecondary
HPSとに分類);(b)病態病期分類;(c)早期診
断による早期治療;(d)病系病態病期分類に沿った治
療法の確立が急務とされている。これらの対策のうち、
(a)原因による病系の分類は、原因治療のためには重
要であるが、今宿、河、津田らによりほぼ分類済みであ
る。(参考文献:今宿晋作: 血球貪食症候群とは,血液
・腫瘍科, 33(6), pp433~439, 1996;
Tsuda H: Hemophagocytic syndrome (HPS) in child
ren and adults.International Journal of Hematology
65:215~226,1997; 河敬世, ほか: 血液
悪性腫瘍と血球貪食症候群,医学のあゆみ, 177(1
0),pp673~676,,1996)。
【0028】上記(b)〜(d)が進まない原因として
は、貧食機序がいまだ不明である事が考えられるが、こ
の貧食には、上記(III)・(IV)で述べたサイトカイ
ンのネットワークが存在関与していること、また、上記
(V)・(VI)ような臨床症状を呈することから、これ
らを指標として現在の診断基準が提唱されている(参考
文献:Tsuda H: Hemophagocytic syndrome (HPS) in
children and adults. International Journal of Hem
atology 65:215~226,1997; 今宿晋作: 血球貪食症候群とは, 血液・腫瘍科,33
(6), pp433~439,1996; 今宿晋作: 血球貪食(hemophagocytic)症候群, 小児科診
療,56(増刊号), pp200, , 1993)。
【0029】この「現在の診断基準」の内容は、一週間
の高熱の持続、高LDH血症、高フェリチン血症、骨髄
穿刺によるhemophagocyteの証明等がある。しかしなが
ら、この診断基準は、病態がある程度進行した後に発現
する検査値、ないしは検査に侵襲を伴うものであり、結
果的に厳しい(容易に実施できない;早期には診断でき
ない)ものとなっている。
【0030】現在では、上記(c)早期診断早期治療、
(d)病系病態病期分類に沿った治療法の確立の目的
で、(b)病態病期分類(診断基準の見直し病態のクラ
ス分類)が急務であるとされており、その基盤にあるサ
イトカインの測定の有用性が指摘されている(しかしサ
イトカイン測定は高コストである)。
【0031】更に、本発明者らの知見によれば、(d)
病系病態病期分類に沿った治療法の確立については、現
在の診断基準でHPSの診断を得た段階からの分類によ
る治療開始及び治療法では、現在の治療法に変化を与え
るものではなく、救命率の改善はそれほど望めない。従
って、(c)早期診断早期治療が救命率向上に重要であ
る。
【0032】(末梢血)末梢血(peripheral blood)と
は、血管を流れている血液を言う。骨髄液に対する用語
である。
【0033】より詳しくは、「末梢血」とは、骨髄を出
た全ての血液であって、血管を流れている血液(例え
ば、耳朶血、静脈血、動脈血、等)である。末梢血の採
血場所は、特に制限されないが、代表的な採血場所は、
四肢の動脈または静脈である。末梢血は、赤血球、白血
球、血小板等を主成分として含み、これらの成分の正常
値は、通常は赤血球350万〜450万/μl、白血球
4000〜6000/μl、血小板15万〜35万/μ
l程度である(このような「末梢血」の詳細について
は、例えば、柴田進「図解血液病学」第30頁(199
6年)金芳堂、を参照することができる)。
【0034】他方、上記「骨髄液」とは、骨の髄質の液
体であり、通常は、骨髄穿刺により採取されるものであ
る。該骨髄液の採取場所は、典型的には、乳幼児では脛
骨上部、腰椎棘突起;小児では胸骨上部、後腸骨稜、腸
骨稜;成人では胸骨板部、腸骨稜等が挙げられる。骨髄
液は、有核細胞15万〜35万/μl、骨髄巨核球50
〜150/μl等を主成分として含む。骨髄液を観察す
ると、やや粘調な血液中に細胞集塊たる白っぽい小塊
や、脂肪が混じっている(このような「骨髄液」の詳細
については、例えば、柴田進「図解血液病学」第38頁
(1996年)金芳堂、を参照することができる)。
【0035】したがって、上記した「末梢血」と「骨髄
液」とは、その採取場所で識別できることはもちろん、
その成分から識別することも可能である。
【0036】(貪食細胞)貪食細胞(ないし食細胞、ph
agocyte)は、異物体(自己体の健全な細胞以外の固形
状物体)が生体を侵襲した場合に、該異物体を処理する
細胞の総称である。代表的な細胞に大食細胞(マクロフ
ァージ)があり、主として清掃細胞となり壊死組織や変
性細胞を摂取する単核細胞(組織球と単球)が挙げられ
る。ここに、該「異物体」としては、一般に、外来性の
寄生体(細菌、真菌、ウィルス等)、非生物体(ほこ
り、煤煙等)、自己の老朽細胞等が挙げられる。
【0037】(貪食作用)貪食作用(ないし食作用)
は、食作用とも言われ、異物を細胞体が細胞質内に取り
込む作用を言う。その主要な過程は、(1)異物の細胞
膜への接着(接着因子を介した現象で、該接着因子を橋
わたしにしてくっつき合った状態)、(2)細胞内への
摂取(異物を細胞質内へ取り込んだ状態で、顕微鏡下に
観察することで確認できる)、(3)細胞内消化(取り
込んだ異物を、吸収同化可能な物質に変化させる)の3
段階に分けられる。
【0038】上記した貪食細胞ないし貪食作用の詳細に
ついては、例えば、大谷 杉士ら編「ドーランド図説医
学大辞典」第1396頁(1980年)廣川書店; 後
藤稠ら編「最新医学大辞典」第676頁(1987年)
医歯薬出版株式会社を参照することができる。
【0039】(血球)血球とは、血液中に浮遊している
細胞をいい、通常は赤血球、白血球、血小板に分類され
る。本発明のスクリーニング法においては、血球(例え
ば、赤血球、白血球、血小板で、成熟度については限定
されない)を貪食するPHPの存在の有無を検出するこ
とに特徴がある。ここで形態学的と限定したのは、観察
上のことである(このような「血球」の詳細について
は、例えば、柴田進「図解血液病学」第2頁、第21〜
23頁(1996年)金芳堂; 後藤 稠ら編「最新医
学大辞典」第395頁(1987年)医歯薬出版株式会
社、を参照することができる)。
【0040】(PHP)PHP(peripheral hemophago
cyte)は、末梢血中に発見した食細胞(phagocyte)で
あるが、上記の貪食(食)細胞(phagocyte)とは異な
り、血球を貪食している貪食(食)細胞(phagocyte)
である。通常、末梢血中では認められない細胞である。
【0041】本発明のスクリーニング法において、病因
となっているPHPは単球由来である。単球・組織球の
発生分化については種々の説があるが、本発明者らの知
見による推定は、以下の通りである。すなわち、単球発
生の首座は骨髄であり、ここで感作された単球は分化増
殖し、次第に数を増し、ついには、末梢血中に滲出して
くる。単球のライフサイクルの詳細は不明であるが、未
熟な単芽球から単球に成熟し末梢に出てくるまでに約7
日間を要し、血中に滞留する時間(半減期)は約3日と
推定され、さらに組織に侵入した細胞の寿命は、数ヶ月
と推定されている。
【0042】この単球の生理的発生分化を考慮すると、
何らかの侵襲が身体に加わった場合、高サイトカイン血
症が惹起され、これによって活性化された単球が、分化
増殖能及び貧食能を獲得し、組織球・マクロファージへ
分化増殖し、次第に数を増しHPSの病態を形成する。
発熱は高サイトカイン血症、汎血球減少は組織球による
貧食の結果であり、高LDH血症・高フェリチン血症は
更に貧食が進んだ状態である。その首座が肝・脾・リン
パ節に移動した場合、それぞれの臓器での炎症性変化に
伴う臓器障害が見られるようになるものと推定される。
【0043】(PHPの検出)本発明において正常細胞
(血球)を貪食すべきPHPは、基本的に、従来の榛器
(フローサイトメトリー法、レーザー法、細胞画像解析
システム(例えば、コールター社製の商品名:MICR
0−21、等)を使用することにより、好適に検出可能
である。本発明においては、これら従来の機器に、PH
Pを認識させた後に使用すればよい。例えば、上記した
コールター社製のMICR0−21細胞画像解析システ
ムにおいて、コンピュータに画像データを取り込み、処
理するプログラムを適宜作成して、該システムに適用す
ればよい。
【0044】PHPの検出時、細胞の染色は従来の方
法、例えばロマノスキー染色(ギムザ染色、ライトギム
ザ染色、メイギムザ染色等)を用いて行えばよい。より
明確な分類を可能とするため、特殊な染色方法(例え
ば、該細胞に特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫
染色法)を用いることも可能である。また、遠心分離に
よる分離検出法を、上記検出方法に組み合わせてもよ
い。
【0045】
【実施例】実施例1 1997年1月〜1997年12月までに、熊本県熊本
市の江南病院外来を受診あるいは入院した患者の中から
任意に1000例を選択しPHPを検索したところ4症例
が陽性であったが、4症例全て下記(表1)に示すSI
RSの診断基準(米国胸部疾患学会による診断基準)を
満たしていた。さらに、SIRSの診断基準を満たして
いた症例中から、PHPを認めた群(PHPを認めた症
例群より任意に10例選択した)と、認めなかった群
(PHPを認めなっかった症例群より任意に10例選択
した)の2群(合計20症例)について、年齢、原因疾
患、治療内容、罹患期、転帰について比較検討した。
【0046】
【表1】
【0047】SIRSの診断は、上記(表1)に基づ
き、診断を得た日を発症日(0日)とした。この発症日
より主治医の判断で血液検査の依頼が出た際にスメア標
本をとり、末梢血中にPHPを認めた場合を陽性とし
(+)と示し、認めない場合を陰性とし(−)と示し
た。また、 PHPが確認された日を出現日として示し
た。
【0048】SIRSの状態を脱し、CRP(C-reactive
protein)が1.0mg/dl以下となり、主治医の判断で治
療中止となった日を軽快日とし、発症日から軽快日また
は死亡日までを罹患期とした。治療内容は、症例の病態
に合わせ主治医が必要十分と判断した内容であり、罹患
期に使用された薬剤の概要を示した。
【0049】上記研究の結果、重症化したSIRS症例
の末梢血中に、血小板、赤血球や単球を含む白血球等の
血球を貪食したphagocyteを認めた。この貪食を示す顕
微鏡写真(倍率:500倍)を、図1および2の写真に
示す。
【0050】PHPに貪食される細胞の種類が単一であ
る場合を認めることはあったが、原因疾患との関連は認
められず、一定ではなかった。
【0051】上記した全SIRS症例(20症例)の年
齢は22〜92才で、平均は71.6±16.6才、陽性
群の平均は78.4±11.5才、陰性群の平均は63.
2±18.4才で年齢に有意差を認めなかった。出現日
の平均は3.4±1.1日であった。治療内容に関して
は、明らかに陽性群で多種多量の薬剤を必要とした。陽
性群における死亡例を除く罹患期の平均は、16.6±
8.5日、陰性群の罹患期の平均は4.9±2.7日であ
り、有意差を認めた(p<0.01)。転帰においては、
陽性群に2症例の死亡例が含まれていた。(下記表2参
照)。
【0052】
【表2】
【0053】上記したPHP陽性群と陰性群の臨床経過
について比較検討において、年齢は、来院した患者群の
関係上、高齢者が対象となったため陽性群の平均年齢は
高齢となったが、両群には有意差は認められなかった。
他方、治療内容、罹患期、転帰には明らかに差を認め、
陽性群では、長期の罹患期に加え、高価で多種多様の薬
剤を必要とし、死亡例も見られた。
【0054】出現日については、生理学上、単球系細胞
が活性化・増殖し末梢血中に出現してくるのは約7日
後、さらに侵襲が加われば、その早さは2〜3倍にも成
るとされており、今回の結果も含め、発症日より約1週
間の検索は重要であり、特に2〜5日目の検索には注意
が必要と考えられた。
【0055】上記した比較検討の結果から、PHPによ
る血球の貪食の有無は、充分に重症化の指標となると判
断された。
【0056】実施例2 本発明者らの知見によれば、今回新たに見出された末梢
血中のPHPは、Hemophagocytic Syndrome(HPS)
と総称される血球貪食を伴う組織球増殖性疾患の主体を
なし、骨髄等の細網内皮系組織で認められる単球系由来
の細胞(参考文献:Reiner AP and Spivak JL: Hematop
hagic histiocyosis; a report of 23new patients a
nd a review of the literature. Medicine 1988;
67:369~388)と同様のものと推定しており、さ
らに、PHPは、生理学上骨髄由来のものであると推測
し、SIRSの診断基準を満たしていた症例中から、イ
ンフォームドコンセントのもとに、骨髄におけるhemoph
agocyteの出現比率に対する末梢血のPHPの有無を検
討した(下記表3参照)。
【0057】
【表3】
【0058】上記表3に示したように、骨髄におけるhe
mophagocyteの出現比率の約1.0%前後を境にして、末
梢血のPHPの有無に差を認めた。
【0059】上記した骨髄におけるhemophagocyteの出
現比率に対する末梢血のPHPの有無の検討から、全て
のSIRSの症例において骨髄ではhemophagocyteが出
現しており、さらに、hemophagocyteが骨髄で増生して
くる早期からPHPが認められることが明らかになった
(早期と判断した根拠は、骨髄で0.9%の出現率の時
PHPは陰性であり、しかもその時点ではSIRS症例
でも外来にて経口投与薬にて対処しているレベルである
からである)。さらに、骨髄における出現率が3.0%
を越えるとHPSとなる。また、現在HPSの原因疾患
としては血液学的な報告が多く、他種の疾患については
疑問視されていたが、本発明者らによれば、SIRSを
認めた肺炎、穿孔性腹膜炎、術後縫合不全、急性膵炎症
例で末梢血中にhemophagocyteが出現しその後DIC(d
isseminated intravascular coagulation)を合併した
症例を経験している。従って、どんな疾患にもSIRS
の後HPSは起こる可能性があり、HPSはSIRSの
部分症であることが確認された(下記表4及び図3参
照)。
【0060】
【表4】
【0061】さらに、前述のように、末梢血中にhemoph
agocyteが出現しその後PHPによる血球貪食が血小板
の減少を招来することによりDICを合併した症例を経
験していることから、侵襲時の重要臓器機能不全の発症
機序において、マクロファージ自身による血球貪食によ
る汎血球減少、さらにはDICを合併してくる病態を付
加すべきではないかと考えた(図4参照)。
【0062】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、末梢血
中において血球を貪食するPHPの存在の有無を検出す
ることを特徴とする重症化侵襲のスクリーニング方法が
提供される。
【0063】本発明のスクリーニング方法は、患者への
負担が少ない末梢血液像を用い、しかも特徴的な形態を
有するPHPを利用するため、他の細胞との区別が容易
である。加えて、末梢血液像におけるPHPは、スメア
標本の辺縁、引き終わりに集まる傾向を有するため、該
「辺縁」ないし「引き終わり」部分の観察を行うことに
より、簡便にPHPの観察が可能である。
【0064】したがって、本発明によれば、外傷、感染
症、自己免疫性疾患、悪性腫瘍を始めとする炎症性疾患
等に関するSIRSの重症化の可能性を、簡便にスクリ
ーニングすることが可能となり、これらの疾患の早期発
見、および症状に適した早期治療の可能性を著しく高め
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大型の成熟したhistiocyte(組織球)が、血小
板、赤血球、単球等を貪食している様子を示す末梢血の
顕微鏡写真(倍率:500倍)である(Monoharan分類
でstage5)。
【図2】大型の成熟したhistiocyteが、好中球、単球等
を貪食している様子を示す末梢血の顕微鏡写真(倍率:
500倍)である(Monoharan分類でstage5)。
【図3】本発明者らの知見に基づく、侵襲に対する生体
反応の相互関係を示す図である。
【図4】本発明者らの知見に基づく、侵襲時の重要臓器
機能不全の発症機序を示す図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/49 G01N 33/50 BIOSIS(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 末梢血中において、血球を貪食したPH
    P(peripheral hemophagocyte)の存在の有無を検出する
    ことを特徴とする、systemic inflammatoryresponse sy
    ndrome(SIRS)の重症化侵襲のスクリーニング方法。
  2. 【請求項2】 前記systemic inflammatory response s
    yndrome(SIRS)がHemophagocytic syndrome(HPS)
    である請求項1記載のスクリーニング方法。
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