JP3259029B2 - 不等厚断面形状部材を曲げ非球面を形成する方法 - Google Patents

不等厚断面形状部材を曲げ非球面を形成する方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は曲面の形成方法に関
するもので、詳しくは不等厚断面形状部材を用いた曲面
の形成方法に関するものである。
【0002】本発明の関連する分野は、放射光科学が主
な分野であるが、長大鏡を用いる光学、応用光学にも関
連する。また、鏡の成形の面では弾性体工学あるいは研
磨技術も含まれる。
【0003】近年、電子加速器の一種である電子蓄積リ
ングから放射される放射光が、高性能で純粋な光として
広く利用されている。放射光はそれ自身発散の小さい細
く絞られた光であるが、実際、研究・開発に用いられる
放射光ビームラインでは、さらに強い光を得るために、
集光鏡を用いる。特に、偏向電磁石からの光は水平方向
に扇状に広がって出てくるので、1メーター以上の長い
集光鏡で収束させ、分光器の入射スリットに導く。ま
た、偏向電磁石に接続された分光器ばかりではなく、挿
入型光源に接続された分光器からの出射光は、分解能を
あげるため発散の大きい光となる。この発散の大きい光
を試料上に小さく絞るためにも長い集光鏡が必要とな
る。
【0004】
【従来の技術】放射光ビームラインに必要な斜入射の表
面反射鏡は、従来、切削研磨により成形されてきた。そ
のため、表面形状は球面、円筒面、トロイダル面等、断
面が「円」になる鏡がほとんどである。長さは研磨機械
の制約により通常は500mm以下が望ましく、せいぜ
い700mm程度が限度である。
【0005】ところが、最近、さらに長い鏡が必要とな
り、長さ1000mm以上の鏡が加工され始めている。
ところが、そのような長大鏡の加工は、加工時間がかか
り、非常に高価になるという問題点を有している。
【0006】斜入射反射鏡の収束性から検討すると、従
来から用いられてきた「円」を基本とした形状では、結
像に歪みが生じやすい。そして、長大鏡になる程、結像
の歪みがより顕著になるという問題点を有している。よ
り収差の小さい結像を得るためには、楕円鏡、放物面鏡
等の非球面鏡を用いなければならない。しかし、100
0mmを超える非球面長大鏡の切削研磨は非常に困難
で、歩留まりが悪く、非球面鏡の有効性は理論的には理
解できていても、現実には非球面鏡を集光鏡として採用
することはできなかった。
【0007】切削研磨における問題点を解決する方法と
しては、鏡面の曲げ変形を利用して円筒面や球面、さら
に楕円面を形成する方法が考えられている。以下、曲げ
変形を利用した従来の形成方法について説明する。
【0008】図5は、均等な厚さで一定の幅の板または
梁51をその中心52で支え、両端53を加圧すること
より球面を形成する方法である。この方法は、基本的に
は円筒面を形成する方法であり、放射光ビームラインで
要求される楕円面や放物面のような非球面を作ることは
出来ない。
【0009】図6は、均等な厚さで一定の幅の板または
梁51を両端面より内側の部分54、55で支えて、そ
の外側部分の2個所56、57を加圧する。この場合、
板または梁51の表面は、外側部分2個所56、57へ
の力が同じであれば円筒面となる。この方法も、基本的
には円筒面を形成する方法であり、楕円面や放物面のよ
うな非球面を作ることは出来ない。
【0010】図7は、均等な厚さで一定の幅の板または
梁51を、所定の曲面となるように、多数の加圧点58
で板または梁51を押して成形する方法である。この方
法は、加圧点58の配置を適切に選べば、非球面鏡を形
成することが出来る。しかし、この方法を放射光用の反
射鏡の成形用として使用する場合は、これらの加圧機構
を超高真空槽の中で150度近くまで加熱しなければな
らない。そのため、加圧時の材料の延びをうまく逃がさ
ないと、反射鏡を破損することがあるという問題点があ
る。
【0011】図8は、所定の曲面に加工した2つの型枠
59、60の間に、均等な厚さで一定の幅の板61を挟
み込み、上記型枠を上下から押しつけて成形するという
方法である。この方法は型枠59、60の形を適切に選
べば、非球面鏡を形成することが出来る。しかし、この
方法は、反射鏡自体を直接加工する場合と同様、2つの
型枠59、60の加工が困難であるという問題点を有す
る。
【0012】図9は、厚さが一定で、平面の形状が2等
辺三角形である板62の底辺の2つの端部63を固定
し、もう一方の端部64を押しつける方法である。この
場合、板62の表面は基本的には円筒面になるので、楕
円面や放物面のような非球面を作ることは出来ない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
切削研磨法では長大鏡の作成が困難であり、従来の加圧
法は基本的には円筒面を形成する方法であり、楕円面や
放物面のような非球面を形成することは困難であるとい
う問題点があった。
【0014】したがって、本発明は、上記従来の問題点
に鑑みてなされたもので、特に、収差の小さい斜入射反
射鏡を作るため、簡単な機構で材料を曲げ、楕円面や放
物面を形成する方法を提供することをその目的とする。
【0015】このような曲げによる曲面の形成法を用い
ると、設計値の加圧力もしくは曲げ量を少し変えること
によって、収束性をそれ程落とすことなく収束点の距離
を変化できる。これは、切削研磨や型枠への挟み込みに
よる形成では不可能なことである。特に、放射光に利用
する場合のように斜入射の配置では、光学素子の形状の
微妙な誤差により収束点が設計値と異なる場合があるの
で、曲げ成形鏡による補正が出来れば非常に有効であ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、幅が一定で長
手方向の厚さが変化する不等厚断面形状部材を形成する
ステップと、不等厚断面形状部材の表面が所定の曲面形
状になるように不等厚断面形状部材を湾曲させるステッ
プとを具備する曲面形成方法である。
【0017】さらに、不等厚断面形状部材を形成するス
テップは、材料基板の第1の面を平面に加工するステッ
プと、材料基板の長手方向に所定の厚さの変化をつける
ように、材料基板の第2の面を加工するステップとを具
備する曲面形成方法であり、第1の面は反射鏡として使
用し得るように加工される曲面形成方法であり、湾曲さ
せるステップは不等厚断面形状部材の一端を固定するス
テップと他端を加圧するステップを具備する曲面形成方
法である。
【0018】また、本発明は、幅が一定で中心部から長
手方向の2つの端部に向かって厚さの異なる不等厚断面
形状部材を形成するステップと、中心部を固定するステ
ップと、基板の両端部を加圧し不等厚断面形状部材を湾
曲させるステップを具備する曲面形成方法である。
【0019】さらに、固定するステップは固定される部
分の近傍の厚さが一定である不等厚断面形状部材を支持
部材により挟み込んで固定する曲面形成方法であり、不
等厚断面形状部材を湾曲させるステップにおいて、加圧
される部分の厚さが一定もしくはほぼ一定である不等厚
断面形状部材を使用する曲面形成方法である。
【0020】さらに、機械的機構、もしくは電気駆動素
子によって、不等厚断面形状部材の曲面形状を変化させ
る曲面形成方法である。
【0021】また、本発明は、光学素子の曲面形成方法
であって、幅が一定で長手方向の厚さが変化する不等厚
断面形状部材を形成するステップと、不等厚断面形状部
材の表面が非球面形状になるように不等厚断面形状部材
を湾曲させるステップとを具備する曲面形成方法であ
る。
【0022】また、本発明は、幅が一定で長手方向の厚
さが変化する不等厚断面形状部材と、不等厚断面形状部
材の第1の端部を固定する支持部材と、不等厚断面形状
部材の表面が非球面形状になるように不等厚断面形状部
材を湾曲させる手段とを具備する光学素子である。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下に図面
を参照して説明する。先ず、反射鏡部材である図1に示
す片持ち梁1のたわみについて考える。長さLの梁1の
一方の端部2を固定し、もう一方の端部3に荷重Pをか
ける。梁1の固定点4からxの位置での曲げモーメント
Mは、 M=−P(L−x) …(1) で与えられる。
【0024】一方、位置xでのたわみyと、片持ち梁1
の縦弾性係数E、断面二次モーメントIの関係は
【数1】
【0025】となる。
【0026】片持ち梁1が矩形断面の場合、断面二次モ
ーメントは、梁の幅をb、厚さをhとすると、
【数2】
【0027】ここで、片持ち梁1の厚さhは一定の厚さ
ではなく、位置xにより変化するものとして、hをxの
関数h(x)とおくと、
【数3】
【0028】よって、位置xでのたわみ(変位)yは、
【数4】
【0029】となる。
【0030】曲げた曲線y=f(x)を所定の形、例え
ば楕円、放物線となるように、y=f(x)を定め、式
(5)のyに代入し、式(5)を解くことにより、h
(x)を計算する。h(x)は、例えば代数的に、また
は通常用いられているような計算機による数値計算を用
いるなど、任意の方法により求めることできるが、本発
明は特にh(x)の計算方法について規定するものでは
ない。
【0031】所望の反射鏡形状に対するh(x)が求め
られた後、h(x)に従って反射鏡を形成する材料基板
を加工する。具体的には、図2の場合において、材料基
板のうち反射面となる片面5を平面に加工し、その裏面
6を切削して反射鏡部材である不等厚断面形状部材7の
厚さhがxにより変化し所望の値になるように加工す
る。このようにして不等厚断面の反射鏡部材が形成され
る。
【0032】反射鏡として使用する場合は、平面5の方
を精度よく研磨し鏡面とし、傾斜をつけた裏面6の方か
ら加圧点8を所定の力により加圧して所望の曲面9を得
ることができる。
【0033】求められたh(x)に対応して厚さを連続
的に変えた反射鏡部材を曲げ、所定の表面形状の鏡を形
成する方法の実施例を以下に示す。固定点4からの厚さ
はいずれもの式(5)より計算された値とする。
【0034】図3に示すように幅が一定で長さ方向に最
終的曲面形状に対応して厚さの異なる反射板部材10の
一端部11を支持部材の支点(固定点)12に固定し、
もう一方の端部(加圧点)13を押して、曲面を形成す
る。加圧は例えば機械的機構もしくは電気駆動素子によ
って行うことができる、不等厚断面形状部材である反射
板部材10の曲面形状を変化させるこのとき、支点12
付近は一定の厚さとし、保持しやすくすることができ
る。この場合、反射板部材10の中心14を鏡の中心と
すると、この曲げにより鏡の中心位置と、法線方向が変
化する。
【0035】図4は、幅一定で、左右の長さ方向に最終
的曲面形状f(x)に対応して厚さh(x)の異なる不
等厚断面形状部材である反射板部材10の中心部15を
支点12により固定し、加圧点である左右の2点16、
17を加圧して曲面を形成する。このとき、中心部15
のごく短い範囲は一定の厚さとし、保持しやすくするこ
とができる。なお、厚さh(x)の変化、加圧力、加圧
点の変位は左右同じである必要はなく、この場合、中心
部15に対し形状が非対称の曲面が形成される。この場
合、鏡中心位置および法線方向ともに曲げによって変化
しない。
【0036】なお、上記図3および図4に示したいずれ
の方法においても、支点12の部分の平坦部の長さは、
全体の曲面形成の誤差の範囲に収まる短い長さとする。
また、加圧点13、16は基板先端18より5mm〜1
0mm内側とし、加圧点13、16、17の数mm内側
から基板先端18までは平坦面とするのが望ましい。
【0037】以上本発明のいくつかの実施例について図
示しまた説明したが、本発明の技術的範囲を逸脱せず
に、種々の変形が可能であることは明らかである。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、この発明に係る反
射鏡によれば、次のような効果を奏する。不等厚断面の
基板を曲げ、1000mmを超える非球面鏡を形成する
本発明による方法は、切削研磨による方法より簡単であ
る。また、基板表面の鏡面になる面の研磨は基本的には
平面鏡を研磨する場合と同じなので、表面精度は切削研
磨の場合より格段とよくなる。表面精度は斜入射反射鏡
では散乱光の混入に影響するが、表面精度の良い本方法
の鏡は散乱光をより少なくできる。
【0039】反射光ビームラインでは、シシテム全体を
超高真空にするため、150度から200度の加熱(ベ
ーク)を24時間以上も行う。本発明による方式では、
金属できつく押しつけられているのは固定点のごく近傍
だけであり、加圧点においては長さ方向には延びは全く
自由である。ゆえに、ベークによる金属部分と基板の膨
張の差による基板の破損を避けることが可能となる。
【0040】従来技術による非球面形成法、例えば図7
に示す多点加圧法、図8に示す型枠挟み込み法に比べ、
加圧点が1あるいは2点と少ないので、曲げ機構を超高
真空システム内に納めたとしても、真空装置の外部か
ら、例えば回転導入端子で機械的に、あるいはピエゾ素
子で電気的に容易に変位量を変えることが出来る。誤差
の範囲であれば、この調整によって焦点距離を変え、最
適の収束像を得ることが出来る。さらに、加熱処理によ
る機械的なずれも簡単に修正できる。
【0041】かかる特徴を有する本発明の非球面鏡は、
非球面集光鏡、長大斜入射集光鏡、放射光ビームライン
用前置集光鏡、放射光ビームライン用後置集光鏡、可変
焦点光学素子、および非球面光学素子等に好適に使用す
ることができる、
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の不等厚断面基板を示す図である。
【図3】本発明の一実施例を示す図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す図である。
【図5】一点支持の従来例を示す図である。
【図6】二点支持の従来例を示す図である。
【図7】多点加圧法に係るの従来例を示す図である。
【図8】型枠挟み込み法に係る従来例を示す図である。
【図9】2等辺三角形の反射鏡基板を用いた従来例を示
す図である。
【符号の説明】
1 … 片持ち梁 2、3 … 梁の端部 4 … 固定点 5 … 片面 6 … 裏面 7 … 不等厚断面形状部材 8 … 加圧点 9 … 曲面 10 … 反射板部材 11 … 端部 12 … 支点(固定点) 13 … 端部(加圧点) 14 … 基板の中心 15 … 中心部 16、17 …加圧点 18 … 基板先端 51 … 均等な厚さで一定の幅の板または梁 52 … 板または梁の中心 53 … 板または梁の両端 54、55 …内側部分 56、67 …外側部分 58 … 加圧点 59、60 …型枠 61 …均等な厚さで一定の幅の板 62 …2等辺三角形の板 63、64 …端部

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 幅が一定で長手方向厚さが所望の値で
    変化するが一方の端部の部材固定部分は一定厚とした不
    等厚断面形状部材を形成するステップと、前記部材固定
    部分を支持部材に挟み込んで固定するステップと、前記
    不等厚断面形状部材の表面が所定の曲面形状になるよう
    にもう一方の端部を加圧して前記不等厚断面形状部材を
    湾曲させるステップとを具備することを特徴とする曲面
    形成方法。
  2. 【請求項2】 前記不等厚断面形状部材を形成するステ
    ップは、材料基板の第1の面を平面に加工するステップ
    と、前記材料基板の長手方向に所定の厚さの変化をつけ
    るように、前記材料基板の第2の面を加工するステップ
    とを具備することを特徴とする請求項1記載の曲面形成
    方法。
  3. 【請求項3】 前記第1の面は反射鏡として使用し得る
    ように加工されることを特徴とする請求項2記載の曲面
    形成方法。
  4. 【請求項4】 幅が一定で中心部から長手方向2つの
    端部に向かって厚さが所望の値で変化するが中心部の部
    材固定部分は一定厚とした不等厚断面形状部材を形成す
    るステップと、前記部材固定部分を支持部材に挟み込ん
    固定するステップと、前記不等厚断面形状部材の両端
    部を加圧し前記不等厚断面形状部材を湾曲させるステッ
    プを具備することを特徴とする曲面形成方法。
  5. 【請求項5】 加圧される部分の厚さが一定もしくはほ
    ぼ一定である不等厚断面形状部材を使用することを特徴
    とする請求項または請求項記載の曲面形成方法。
  6. 【請求項6】 前記不等厚断面形状部材を湾曲させるス
    テップにおいて、機械的機構もしくは電気駆動素子によ
    って前記不等厚断面形状部材の曲面形状を変化させるこ
    とを特徴とする請求項1記載の曲面形成方法。
  7. 【請求項7】 光学素子の曲面形成方法であって、幅が
    一定で長手方向厚さが所望の値で変化するが一方の端
    部の部材固定部分は一定厚とした不等厚断面形状部材を
    形成するステップと、前記部材固定部分を支持部材に挟
    み込んで固定するステップと、前記不等厚断面形状部材
    の表面が非球面形状になるようにもう一方の端部を加圧
    して前記不等厚断面形状部材を湾曲させるステップとを
    具備することを特徴とする光学素子の曲面形成方法。
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