JP3251195B6 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体洗浄液およびこれを用いた半導体装置の製造方法に関し、特に、半導体装置の製造工程において半導体基板に付着する様々な微粒子を除去するのに用いられる半導体洗浄液およびこれを用いた半導体装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスは、成膜、フォトリソグラフィ、エッチング、酸化、熱処理などの諸工程が繰り返されることによって形成されるが、これらの製造工程において半導体基板は様々な汚染を受ける。そのため、各工程間において汚染除去のための洗浄が行われている。而して、近年の半導体デバイスの大規模化と微細化の傾向により、汚染によるデバイス特性に与える影響は強まってきており、製造歩留りを維持する上で、異物ないし汚染を極力除去できるようにすることが益々重要になってきている。
【0003】
汚染の中で、微粒子系の汚染は、搬送、成膜、ドライエッチング等の過程において発生する。微粒子系の汚染は歩留りに対する影響が大きいため、その完全な除去が望まれているが、例えばコンタクトホール等の微細な凹部に付着した微粒子は、純水リンスや気相系の洗浄ではその除去は困難である。そこで、特に、粒子汚染が発生しやすい成膜やドライエッチングの工程の後では、微粒子除去能力の高い水酸化アンモニウム過酸化水素混合溶液(NH4 OH:H2 O2 :H2 O)(以下、APMと記す)を用いて洗浄を行うことが一般化している。
【0004】
例えば、図5に示すように、シリコン基板1上に、層間絶縁膜として、CVD法により、ドープト酸化膜(PSG、BPSGなど)2、ノンドープ酸化膜(いわゆるNSG)3、ドープト酸化膜4、ノンドープ酸化膜5を堆積し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、基板表面を露出させるコンタクトホール6を開孔し[図5(a)]、APM洗浄を行う[図5(b)]。その後に、コンタクトホール6内を充填する金属膜を例えばCVD法などにより堆積する。この種洗浄に用いられるAPMは、一般に組成比がNH4 OH:H2 O2 :H2 O=x:y:20(x=0.01〜5、y=0.1〜4)等がよく用いられ、60℃〜80℃の温度範囲で使用される。基板の処理時間は、4分〜20分程度である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のAPMは、ノンドープ酸化膜に比較してドープト酸化膜に対するエッチングレートが大きいため、ノンドープ酸化膜とドープト酸化膜とが積層された層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールに対してこの処理液を用いて洗浄を行った場合には、コンタクトホール内壁に、図5(b)に示すように、凹凸段差を生じる。このように凹凸が生じると、ホール内部をプラグ材料で完全に埋め込むことができなくなりボイド発生を招くことになる。また、従来のAPMはエッチングレートが高いため、配線の膜厚減少により断線が生じたり、コンタクトホール底部の導電膜喪失によりコンタクト不良の発生を招くことがあった。このように、APM洗浄により、凹凸段差が生じたり膜厚減少の生じたりする弊害は、学会誌「エアロゾル研究」,11(1)、8−15(1996)pp.8−13に、図8に関連して紹介されている。
【0006】
更に、従来例では、APMを60℃以上で使用しているため、蒸気圧の高いアンモニアが早く蒸発し、APMの組成が変化して洗浄能力が低下していく。これを避けるには、頻繁に(数分毎)アンモニア溶液を補給して組成比を一定に保つようにしなければならない。したがって、本発明の解決すべき課題は、第1に、洗浄により形状変化が発生することを抑制できるようにすることであり、第2に、長期に安定した洗浄能力を維持できる洗浄液を提供できるようにすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した本発明の課題は、従来のAPMに有機酸アンモニウム塩を添加することによって、解決することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
APMに添加する有機酸アンモニウム塩としては、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム等があり、この中の少なくとも1つを添加する。添加する有機アンモニウム塩の濃度は、0.1mol/l〜20mol/lの範囲とする。また、有機酸アンモニウム塩の添加されるAPMの組成は、NH4OH:H2O2:H2O=x:y:20(x=0.01〜5、y=0.1〜4)とする。 また、本発明による洗浄液を用いる場合、必要に応じて、超音波振動を加えつつ洗浄を行う。
【0009】
[作用]APMに有機アンモニウム塩を添加すると、有機アンモニウム塩はAPM溶液に対して緩衝剤として作用するため、ドープト酸化膜とノンドープ酸化膜とのエッチングレート差が緩和され、洗浄処理による微細形状の凹凸を抑制することができる。図1は、APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)に酢酸アンモニウムを添加した場合の、BPSG膜とノンドープCVD酸化膜とのエッチングレートを示す。添加量を増加するに従い、両者のエッチングレート差は抑制され、10mol/l以上添加することによって、BPSG膜とノンドーピンク酸化膜はほぼ同じエッチングレートを示すことがわかる。
【0010】
図2は、図5の従来例の場合と同様に、層間絶縁膜を形成し、コンタクトホール6を開孔してなる半導体基板[図2(a)]に、本発明による洗浄液にて処理を行った場合の状態[図2(b)]をそれぞれ示す断面図である。すなわち、本発明の洗浄液では、ドープト酸化膜とノンドープ酸化膜とのエッチングレートの差が緩和されているため、洗浄処理後に、図2(b)に示されるように、コンタクトホールの内壁に凹凸が形成されることはなくなる。また、本発明の洗浄液によれば、エッチングレートが緩和されることにより、導電体層の膜減りが低減されることにより、断線やコンタクト不良の発生を抑制することができる。そして、液温を30〜60℃と低温に維持しながら洗浄を行う場合には、エッチングレートを一層抑制することができる。この場合に、超音波振動などの機械的な振動を加えるようにすれば、エッチングレートを低く抑えたままで洗浄効果を向上させることができる。但し、30℃以下では、洗浄能力が低下するため、これ以上の温度で用いることが望ましい。
【0011】
APMに添加する有機アンモニウムとして、酢酸アンモニウム以外のものを用いた場合にも図1に示した場合とほぼ同様の結果が得られた。有機アンモニウムの添加されるAPMのもともとのNH4 OHの濃度が低い場合には、添加される有機アンモニウムの添加量が低くても、ドープト酸化膜とノンドープ酸化膜とのエッチングレートの差を少なくすることができる。本発明者の実験によれば、洗浄能力が認められる最低アンモニウム濃度のAPM(NH4OH:H2 O2 :H2 O=0.01:y:20)では、有機アンモニウムの添加量を0.1mol/l程度以上とすることにより、ドープトとノンドープの酸化膜のエッチングレートの差を実用上差し支えのない程度に少なくすることができた。また、本発明においては、有機アンモニウムの添加量を20mol/l以下としているが、この程度の添加量でほぼ飽和しこれ以上の濃度に添加しても意味がないからである。
【0012】
また、本発明による洗浄液では、APM中のアンモニアが蒸発してアンモニア濃度の化学平衡が偏ると、添加した有機酸アンモニウム塩からアンモニウムイオンが解離し、APM中のアンモニウム濃度は安定に保持される。図5に、APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)に酢酸アンモニウムを10mol/lの濃度に添加した洗浄液でのアンモニア濃度の時間推移を実線にて示す。また、これと対比して従来のアンモニアを添加しつつAPMを使用する場合のアンモニア濃度を点線にて示す。従来のAPMでは、5分程度でアンモニア濃度が低下し、5分毎にアンモニアを添加する必要があるのに対し、本発明の溶液では、30分程度までアンモニア濃度は安定に推移するため、頻繁にアンモニアを添加する必要はないことがわかる。
【0013】
【実施例】
[実施例1]APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)に酢酸アンモニウムを10mol/lの濃度に添加した。図4に示すように、シリコン基板11上に、CVD法により、膜厚0.3μmのBPSG膜12、膜厚0.1μmのNSG膜13、膜厚0.4μmのBPSG膜14、膜厚0.2μmのNSG膜15を堆積し、0.25μmのサイズのホール16を開孔した。この半導体基板を上述のように調合された洗浄液を65℃に維持して7分間洗浄した。洗浄後のSEM写真を模写した断面図を図4(a)に示す。ホール16内でのBPSG膜とNSG膜とのエッチング量の差は5Å程度であった。
【0014】
[比較例1]実施例1で用いた半導体基板を、酢酸アンモニウムを添加しないAPM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)を用いて、実施例1と同じ条件で洗浄した。その結果を図4(b)に示す。NSG膜は25Åしかエッチングされないのに対し、BPSG膜は150Å程度エッチングされるため、ホール16内に大きな凹凸が形成された。
【0015】
[比較例2]実施例1で用いた半導体基板を、酢酸アンモニウムを5mol/lの濃度に添加したAPM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)を用いて、実施例1と同じ条件で洗浄した。その結果を図4(c)に示す。NSG膜は20Å程度エッチングされるのに対し、BPSG膜は70Å程度エッチングされるため、比較例1より凹凸は小さくなるものの依然としてホール16内に凹凸が形成された。
【0016】
[実施例2]APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:3:20)にクエン酸アンモニウムを10mol/lの濃度に添加した。図4に示す層間絶縁膜にホールを形成した半導体基板に対し実施例1と同様の条件で、洗浄を行った。洗浄後のホール16内でのBPSG膜とNSG膜とのエッチング量の差は5Å程度であった。
【0017】
[実施例3]APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=0.05:2:20)に酢酸アンモニウムを1mol/lの濃度に添加した。図4に示す層間絶縁膜にホールを形成した半導体基板に対し液温40℃で超音波振動を加えつつ20分間の洗浄を行った。ホール内でのBPSG膜とNSG膜とのエッチング量の差は観測出来ない程度に低かった。また、シリコン酸化膜上にパターニングされた膜厚2000ÅのWSi配線を、上記の条件で洗浄を行ったところ、サイドエッチング量は5Å以下であった。
【0018】
[比較例3]有機アンモニウム塩を添加しないAPM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=0.05:2:20)を用い、液温65℃にて、シリコン酸化膜上にパターニングされた膜厚2000ÅのWSi配線を有する半導体基板を20分間洗浄したところ、200Å程度のサイドエッチングが観測された。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による半導体洗浄液は、APMに有機アンモニウム塩を添加したものであるので、以下の効果を効果を享受することができる。
(1)ドープト酸化膜とノンドープ酸化膜とのエッチングレート差を緩和することができ、両酸化膜が混在する部分で洗浄処理により生じる微細な凹凸段差の発生を抑制することができる。
(2)シリサイド膜などの導電膜のエッチングを抑制することができ、膜減りに起因する断線やコンタクト不良の発生を抑制することができる。
(3)長時間安定に使用できる改良APM洗浄液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作用を説明するための、APM溶液への酢酸アンモニウムの添加量とエッチングレートとの関係を示すグラフ。
【図2】有機酸アンモニウム塩を添加したAPMを用いて洗浄処理をした前後の微細コンタクトホールの状態を示す断面図。
【図3】本発明の洗浄液とAPMとの溶液中のアンモニウムイオン濃度の使用時間依存性を示すグラフ。
【図4】各溶液にてホール内部を処理した後の断面形状SEM写真を模写した断面図。
(a):本発明の実施例、(b):比較例1、(c):比較例2。
【図5】従来のAPMを用いた場合の洗浄前後の微細コンタクトホールの状態を示す断面図。
【符号の説明】
1 シリコン基板
2、4 ドープト酸化膜
3、5 ノンドープ酸化膜
6 コンタクトホール
11 シリコン基板
12、14 BPSG膜
13、15 NSG膜
16 ホール
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体洗浄液およびこれを用いた半導体装置の製造方法に関し、特に、半導体装置の製造工程において半導体基板に付着する様々な微粒子を除去するのに用いられる半導体洗浄液およびこれを用いた半導体装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスは、成膜、フォトリソグラフィ、エッチング、酸化、熱処理などの諸工程が繰り返されることによって形成されるが、これらの製造工程において半導体基板は様々な汚染を受ける。そのため、各工程間において汚染除去のための洗浄が行われている。而して、近年の半導体デバイスの大規模化と微細化の傾向により、汚染によるデバイス特性に与える影響は強まってきており、製造歩留りを維持する上で、異物ないし汚染を極力除去できるようにすることが益々重要になってきている。
【0003】
汚染の中で、微粒子系の汚染は、搬送、成膜、ドライエッチング等の過程において発生する。微粒子系の汚染は歩留りに対する影響が大きいため、その完全な除去が望まれているが、例えばコンタクトホール等の微細な凹部に付着した微粒子は、純水リンスや気相系の洗浄ではその除去は困難である。そこで、特に、粒子汚染が発生しやすい成膜やドライエッチングの工程の後では、微粒子除去能力の高い水酸化アンモニウム過酸化水素混合溶液(NH4 OH:H2 O2 :H2 O)(以下、APMと記す)を用いて洗浄を行うことが一般化している。
【0004】
例えば、図5に示すように、シリコン基板1上に、層間絶縁膜として、CVD法により、ドープト酸化膜(PSG、BPSGなど)2、ノンドープ酸化膜(いわゆるNSG)3、ドープト酸化膜4、ノンドープ酸化膜5を堆積し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、基板表面を露出させるコンタクトホール6を開孔し[図5(a)]、APM洗浄を行う[図5(b)]。その後に、コンタクトホール6内を充填する金属膜を例えばCVD法などにより堆積する。この種洗浄に用いられるAPMは、一般に組成比がNH4 OH:H2 O2 :H2 O=x:y:20(x=0.01〜5、y=0.1〜4)等がよく用いられ、60℃〜80℃の温度範囲で使用される。基板の処理時間は、4分〜20分程度である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のAPMは、ノンドープ酸化膜に比較してドープト酸化膜に対するエッチングレートが大きいため、ノンドープ酸化膜とドープト酸化膜とが積層された層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールに対してこの処理液を用いて洗浄を行った場合には、コンタクトホール内壁に、図5(b)に示すように、凹凸段差を生じる。このように凹凸が生じると、ホール内部をプラグ材料で完全に埋め込むことができなくなりボイド発生を招くことになる。また、従来のAPMはエッチングレートが高いため、配線の膜厚減少により断線が生じたり、コンタクトホール底部の導電膜喪失によりコンタクト不良の発生を招くことがあった。このように、APM洗浄により、凹凸段差が生じたり膜厚減少の生じたりする弊害は、学会誌「エアロゾル研究」,11(1)、8−15(1996)pp.8−13に、図8に関連して紹介されている。
【0006】
更に、従来例では、APMを60℃以上で使用しているため、蒸気圧の高いアンモニアが早く蒸発し、APMの組成が変化して洗浄能力が低下していく。これを避けるには、頻繁に(数分毎)アンモニア溶液を補給して組成比を一定に保つようにしなければならない。したがって、本発明の解決すべき課題は、第1に、洗浄により形状変化が発生することを抑制できるようにすることであり、第2に、長期に安定した洗浄能力を維持できる洗浄液を提供できるようにすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した本発明の課題は、従来のAPMに有機酸アンモニウム塩を添加することによって、解決することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
APMに添加する有機酸アンモニウム塩としては、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム等があり、この中の少なくとも1つを添加する。添加する有機アンモニウム塩の濃度は、0.1mol/l〜20mol/lの範囲とする。また、有機酸アンモニウム塩の添加されるAPMの組成は、NH4OH:H2O2:H2O=x:y:20(x=0.01〜5、y=0.1〜4)とする。 また、本発明による洗浄液を用いる場合、必要に応じて、超音波振動を加えつつ洗浄を行う。
【0009】
[作用]APMに有機アンモニウム塩を添加すると、有機アンモニウム塩はAPM溶液に対して緩衝剤として作用するため、ドープト酸化膜とノンドープ酸化膜とのエッチングレート差が緩和され、洗浄処理による微細形状の凹凸を抑制することができる。図1は、APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)に酢酸アンモニウムを添加した場合の、BPSG膜とノンドープCVD酸化膜とのエッチングレートを示す。添加量を増加するに従い、両者のエッチングレート差は抑制され、10mol/l以上添加することによって、BPSG膜とノンドーピンク酸化膜はほぼ同じエッチングレートを示すことがわかる。
【0010】
図2は、図5の従来例の場合と同様に、層間絶縁膜を形成し、コンタクトホール6を開孔してなる半導体基板[図2(a)]に、本発明による洗浄液にて処理を行った場合の状態[図2(b)]をそれぞれ示す断面図である。すなわち、本発明の洗浄液では、ドープト酸化膜とノンドープ酸化膜とのエッチングレートの差が緩和されているため、洗浄処理後に、図2(b)に示されるように、コンタクトホールの内壁に凹凸が形成されることはなくなる。また、本発明の洗浄液によれば、エッチングレートが緩和されることにより、導電体層の膜減りが低減されることにより、断線やコンタクト不良の発生を抑制することができる。そして、液温を30〜60℃と低温に維持しながら洗浄を行う場合には、エッチングレートを一層抑制することができる。この場合に、超音波振動などの機械的な振動を加えるようにすれば、エッチングレートを低く抑えたままで洗浄効果を向上させることができる。但し、30℃以下では、洗浄能力が低下するため、これ以上の温度で用いることが望ましい。
【0011】
APMに添加する有機アンモニウムとして、酢酸アンモニウム以外のものを用いた場合にも図1に示した場合とほぼ同様の結果が得られた。有機アンモニウムの添加されるAPMのもともとのNH4 OHの濃度が低い場合には、添加される有機アンモニウムの添加量が低くても、ドープト酸化膜とノンドープ酸化膜とのエッチングレートの差を少なくすることができる。本発明者の実験によれば、洗浄能力が認められる最低アンモニウム濃度のAPM(NH4OH:H2 O2 :H2 O=0.01:y:20)では、有機アンモニウムの添加量を0.1mol/l程度以上とすることにより、ドープトとノンドープの酸化膜のエッチングレートの差を実用上差し支えのない程度に少なくすることができた。また、本発明においては、有機アンモニウムの添加量を20mol/l以下としているが、この程度の添加量でほぼ飽和しこれ以上の濃度に添加しても意味がないからである。
【0012】
また、本発明による洗浄液では、APM中のアンモニアが蒸発してアンモニア濃度の化学平衡が偏ると、添加した有機酸アンモニウム塩からアンモニウムイオンが解離し、APM中のアンモニウム濃度は安定に保持される。図5に、APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)に酢酸アンモニウムを10mol/lの濃度に添加した洗浄液でのアンモニア濃度の時間推移を実線にて示す。また、これと対比して従来のアンモニアを添加しつつAPMを使用する場合のアンモニア濃度を点線にて示す。従来のAPMでは、5分程度でアンモニア濃度が低下し、5分毎にアンモニアを添加する必要があるのに対し、本発明の溶液では、30分程度までアンモニア濃度は安定に推移するため、頻繁にアンモニアを添加する必要はないことがわかる。
【0013】
【実施例】
[実施例1]APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)に酢酸アンモニウムを10mol/lの濃度に添加した。図4に示すように、シリコン基板11上に、CVD法により、膜厚0.3μmのBPSG膜12、膜厚0.1μmのNSG膜13、膜厚0.4μmのBPSG膜14、膜厚0.2μmのNSG膜15を堆積し、0.25μmのサイズのホール16を開孔した。この半導体基板を上述のように調合された洗浄液を65℃に維持して7分間洗浄した。洗浄後のSEM写真を模写した断面図を図4(a)に示す。ホール16内でのBPSG膜とNSG膜とのエッチング量の差は5Å程度であった。
【0014】
[比較例1]実施例1で用いた半導体基板を、酢酸アンモニウムを添加しないAPM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)を用いて、実施例1と同じ条件で洗浄した。その結果を図4(b)に示す。NSG膜は25Åしかエッチングされないのに対し、BPSG膜は150Å程度エッチングされるため、ホール16内に大きな凹凸が形成された。
【0015】
[比較例2]実施例1で用いた半導体基板を、酢酸アンモニウムを5mol/lの濃度に添加したAPM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:4:20)を用いて、実施例1と同じ条件で洗浄した。その結果を図4(c)に示す。NSG膜は20Å程度エッチングされるのに対し、BPSG膜は70Å程度エッチングされるため、比較例1より凹凸は小さくなるものの依然としてホール16内に凹凸が形成された。
【0016】
[実施例2]APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:3:20)にクエン酸アンモニウムを10mol/lの濃度に添加した。図4に示す層間絶縁膜にホールを形成した半導体基板に対し実施例1と同様の条件で、洗浄を行った。洗浄後のホール16内でのBPSG膜とNSG膜とのエッチング量の差は5Å程度であった。
【0017】
[実施例3]APM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=0.05:2:20)に酢酸アンモニウムを1mol/lの濃度に添加した。図4に示す層間絶縁膜にホールを形成した半導体基板に対し液温40℃で超音波振動を加えつつ20分間の洗浄を行った。ホール内でのBPSG膜とNSG膜とのエッチング量の差は観測出来ない程度に低かった。また、シリコン酸化膜上にパターニングされた膜厚2000ÅのWSi配線を、上記の条件で洗浄を行ったところ、サイドエッチング量は5Å以下であった。
【0018】
[比較例3]有機アンモニウム塩を添加しないAPM(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=0.05:2:20)を用い、液温65℃にて、シリコン酸化膜上にパターニングされた膜厚2000ÅのWSi配線を有する半導体基板を20分間洗浄したところ、200Å程度のサイドエッチングが観測された。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による半導体洗浄液は、APMに有機アンモニウム塩を添加したものであるので、以下の効果を効果を享受することができる。
(1)ドープト酸化膜とノンドープ酸化膜とのエッチングレート差を緩和することができ、両酸化膜が混在する部分で洗浄処理により生じる微細な凹凸段差の発生を抑制することができる。
(2)シリサイド膜などの導電膜のエッチングを抑制することができ、膜減りに起因する断線やコンタクト不良の発生を抑制することができる。
(3)長時間安定に使用できる改良APM洗浄液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作用を説明するための、APM溶液への酢酸アンモニウムの添加量とエッチングレートとの関係を示すグラフ。
【図2】有機酸アンモニウム塩を添加したAPMを用いて洗浄処理をした前後の微細コンタクトホールの状態を示す断面図。
【図3】本発明の洗浄液とAPMとの溶液中のアンモニウムイオン濃度の使用時間依存性を示すグラフ。
【図4】各溶液にてホール内部を処理した後の断面形状SEM写真を模写した断面図。
(a):本発明の実施例、(b):比較例1、(c):比較例2。
【図5】従来のAPMを用いた場合の洗浄前後の微細コンタクトホールの状態を示す断面図。
【符号の説明】
1 シリコン基板
2、4 ドープト酸化膜
3、5 ノンドープ酸化膜
6 コンタクトホール
11 シリコン基板
12、14 BPSG膜
13、15 NSG膜
16 ホール
Claims (3)
- ノンドープ酸化膜とドープト酸化膜とが積層された層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールであって、その側面に前記ノンドープ酸化膜と前記ドープト酸化膜が露出したコンタクトホールを有する半導体基板を、水酸化アンモニウムと過酸化水素との混合液(組成比、NH 4 OH:H 2 O 2 :H 2 O=x:y:20、ただしx=0.01〜5、y=0.1〜4)に有機酸アンモニウム塩を添加した半導体洗浄液で洗浄することを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 洗浄液の温度を30℃〜60℃に保持して洗浄を行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
- 超音波振動を加えつつ洗浄を行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
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