JP3249208B2 - 非線形光学装置 - Google Patents

非線形光学装置

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JP3249208B2 JP32993392A JP32993392A JP3249208B2 JP 3249208 B2 JP3249208 B2 JP 3249208B2 JP 32993392 A JP32993392 A JP 32993392A JP 32993392 A JP32993392 A JP 32993392A JP 3249208 B2 JP3249208 B2 JP 3249208B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は非線形光学装置、更に詳
細には光データ・情報処理や光通信システムにおいて将
来的に用いられる光スイッチや光メモリ、あるいは光信
号演算処理装置などの非線形光学装置に関する。
【0002】
【従来の技術】非線形光学効果とは、物質中の電気分極
Pが、下記式(数1)のように光の電界強度Eに比例す
る項以外にE2 、E3 の高次項を持つために起こる効果
がある。
【0003】
【数1】 P=χ(1) E+χ(2) 2 +χ(3) 3 +・・・・・
【0004】特に第3項は、3次の非線形効果としてよ
く知られている第3高調波発生(周波数ωの入射光に対
して3ωの光を放出する現象)を示すと共に、下記(数
2)で示される光の強度に依存した屈折率nの変化をも
たらす。
【0005】
【数2】n=n0 +n2 I n2 は式(数1)の3次非線形感受率χ(3) に対して、
下記式(数3)で表される非線形屈折率である:
【0006】
【数3】n2 =(6π2 /cn0 2 )χ(3) ×107
【0007】但し、n0 は線形の屈折率、cは光速であ
る。単位は、n2 をcm2 /W、χ(3)を cgs−esu とし
た。
【0008】この3次の非線形光学効果を有する光学媒
質と、光共振器、偏光子、あるいは反射鏡などの他の光
学素子とを組合せると光双安定素子、光制御光スイッ
チ、光変調器、あるいは位相共役波発生装置など、光情
報処理や光通信システムにおいて将来的に用いられる重
要なデバイスを構築し得る。
【0009】以下、3次非線形光学効果(非線形屈折率
変化)を応用した非線形光学装置の中から、光制御光ス
イッチである光カーシャッタスイッチについて、その従
来例を説明する。
【0010】光カーシャッタスイッチとは、図2に示し
たように、入力光をゲートパルス光でゲーティングし、
ゲートパルスの時間波形に対応した出力光を得ようとす
るものである。図2中、12aと12bは互いに偏光軸
が直交するよう配置された2枚の偏光子からなる直交偏
光子系であり、11は長さ1mmのガラスセル内に封入さ
れたCS2 (二硫化炭素)液体である。この構成におい
ては、ゲートパルス光Pgが入射している間だけ、偏光
子12aを通過した入力光の直線偏波が、非線形屈折率
媒質11の屈折率変化によって楕円偏波に変わり、その
ために光の一部が直交偏光子12bを通過することがで
きる。すなわち入力光はゲート光のパルスによって光ス
イッチされる。
【0011】入力光の瞬間透過率T及び位相変化量Δφ
はゲート光の偏光方向と入力光の偏光方向が45°傾い
た時に最大となる。この場合、T、Δφ、n2 .eff は
下記式(数4)、(数5)、(数6):
【0012】
【数4】T= sin2 (Δφ/2)
【0013】
【数5】Δφ=(4πn2.eff LIg)/λ
【0014】
【数6】n2.eff =n2// −n2
【0015】で表される。但し、Lは光学媒質長、λは
入力光波長、Igはゲート光パワー密度、n2// 及びn
2 ⊥はゲート光の偏光方向と平行及び垂直方向での媒質
の非線形屈折率である。なお、式(数4)から、Δφが
十分小さいときには、下記式(数7):
【0016】
【数7】T ∝ {χ(3) 2 ・L2 ・{Ig}2
【0017】であることが分かる。
【0018】本発明者らが従来型のCS2 光カーシャッ
タを追試した結果では、λ=0.83μm、L=1mm、
Ig=10kWとしたときに、瞬間プローブ光透過率T=
0.3%が得られた。このCS2 光カーシャッタの応答
速度はピコ秒程度の高速応答を示すことが確認されてお
り、したがって瞬間写真撮影や高速分光などの測定系に
盛んに用いられている。しかしながら、従来のカー媒質
は、非線形効率は必ずしも大きくなく、したがって極め
て大きなゲート光強度が必要とされるという欠点があっ
た。そこで、3次の非線形光学効果が大きく、加工性に
富み、しかも使用可能な波長範囲が広い材料の開発が熱
望されており、現在活発な材料開発研究が行われてい
る。
【0019】3次の非線形光学効果を有する材料のうち
では、芳香環や2重、3重結合などのπ電子共役系をも
つ有機材料が、最近特に注目されている。例えば、ポリ
(2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール ビス(p
−トルエンスルホネート)(略称PTS)は、3次非線
形感受率χ(3) の値として、χ(3) =1×10-10 esu
という大きな値(前記CS2 より2桁大きな値)を持
つ。更に、この非線形光学効果のメカニズムが、吸収や
分子、結晶との相互作用によるものではなく、純粋な分
子内π電子分極に由来するものであるため、光信号の強
度変化に追随可能な応答速度は10-14 sec 程度以下と
極めて高速であり、しかも使用可能な波長範囲が広いと
いう長所を有する〔文献:フィジカル レビュー レタ
ーズ (Phys. Rev. Let.)、第36巻、第956頁(19
76)〕。
【0020】したがって、π電子共役系をもつ有機材料
が、光非線形光学装置の実現のための多くの候補材料の
なかで最も有望な材料系と考えられている。しかしなが
ら、これらのπ電子共役有機高分子材料の多くは、不溶
不融で加工性に乏しく、所望の形状、表面平滑性、高光
透過率などを有する光学媒質を得ることは非常に困難で
あるという欠点を有している。実際、PTSを光学媒質
とする非線形光学装置はいまだに実現されていない。
【0021】一方、π電子共役有機高分子以外で、大き
な非線形光学効果を有する有機材料としては、ドナー・
アクセプター型(DA型)π共役分子がある。ジエチル
アミノニトロスチルベン(DEANS)やジエチルアミ
ノニトロスチレン(DEANST)がその例である〔ケ
ミカル フィジクス レターズ(Chem. Phys. Let.)、
第165巻、第171頁(1990)、米国特許第49
97595号明細書(1991),栗原、戒能「新規有
機非線形光学材料DEANST」第50回応用物理学会
学術講演会28p−ZP−1(1989)、及び、神
原、小林、久保寺、栗原、戒能「新規有機非線形光学材
料DEANSTを用いた光Kerrシャッタ動作」同講
演会28p−ZP−2、神原ほか「非線形光ファイバ及
び非線形光学装置」特願平3−45449号明細書に詳
しい〕。これらの分子は、有機溶媒やポリメタクリル酸
メチル(PMMA)などに分散・含有させることによっ
て、著しく加工性・光透過性の向上した光学素子を提供
することができた〔神原浩久(H.Kanbara)ほか、OE
'92、16B1−5(1992)〕。しかしなが
ら、π電子共役高分子と比べると、χ(3) 値が1桁以上
小さいという問題点があった。
【0022】ところが、最近、本発明者らは、下記一般
式(化1):
【0023】
【化1】
【0024】〔R1 、R2 は、炭素数2以上6以下の直
鎖状あるいは分岐鎖状の炭化水素基、R3 は、Cw 2w
(wは、4以上12以下の整数)、(CH2 q OCO
NH(CH2 p NHCOO(CH2 q 、あるいは
(CH2 q OCO(CH2 pCOO(CH2
q (p、qは、2以上6以下の整数)、で表される置換
基、πはジスアゾ、トリスアゾ、テトラキスアゾ、ある
いはペンタキスアゾ系のπ共役系である〕で表される非
線形高分子化合物を開発し、この化合物が、光学媒質と
して求められる、π電子共役高分子の利点である高χ
(3) 値と、DA型低分子の分散・含有材料の利点である
易加工性・高光透過性とを兼ね備えたものであることを
示した。すなわち、この化合物を適用すれば、高効率・
高速で、高い光透過性を示し、しかも使用可能な波長範
囲が広い非線形光学装置を実現することができることを
示した。しかし、いまだ、実際に非線形光学装置へ適用
した例は示しておらず、また、薄膜の厚みも高々数μm
であり、高効率な非線形光学装置を構成するには必ずし
も十分と言えるものではなかった。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、高いχ(3) 値と、易加工性・高光透過性と
を両立させた膜媒質を簡便に作製し、これを用いた高効
率な非線形光学装置を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明は非線形光学装置に関する発明であって、非線形屈
折率を有する光学媒質と、光学素子とで構成される非線
形光学装置において、非線形屈折率を有する光学媒質と
して、下記一般式(化1):
【0027】
【化1】
【0028】〔式中、R1 、R2 は、炭素数2以上6以
下の直鎖状あるいは分岐鎖状の炭化水素基、R3 は、C
w 2w(wは、4以上12以下の整数)、(CH2 q
OCONH(CH2 p NHCOO(CH2 q 、ある
いは(CH2 q OCO(CH2 p COO(CH2
q (p、qは、2以上6以下の整数)、で表される置換
基、πはジスアゾ、トリスアゾ、テトラキスアゾ、ある
いはペンタキスアゾ系のπ共役系である〕で表される非
線形高分子化合物より作製された非線形薄膜を用いるこ
とを特徴とする。
【0029】本発明は、前記課題を解決するために、非
線形屈折率を有する光学媒質と、偏光子や光共振器、あ
るいは反射鏡などの光学素子とで構成される非線形光学
装置において、非線形屈折率を有する光学媒質として、
一般式(化1)で表される非線形高分子化合物におけ
る、該一般式(化1)の水素がフッ素若しくは重水素で
置換された非線形高分子化合物、又は、一般式(化2)
の非線形高分子化合物:
【0030】
【化2】
【0031】〔式中、R1 、R2 、R3 及びπは式(化
1)と同義、R5 はR3 と同義、R4はCw 2W(w
は、4以上12以下の整数)、アリーレン環、若しく
は、アリーレン環を含むCw 2W(wは、4以上12以
下の整数)で表される置換基である〕、又は、一般式
(化2)の水素がフッ素若しくは重水素で置換された非
線形高分子化合物、又は、これら種の非線形高分子化
合物を、高分子化合物、例えばポリウレタンやポリメチ
ルメタクリレート(略称PMMA)に分散させたもの、
又は、種の非線形高分子化合物を分散させる高分子化
合物の水素をフッ素若しくは重水素で置換したものを適
用した。
【0032】本発明によれば、スピンコーティング法や
キャスティング法により、光学特性を良好に保ったま
ま、簡便な方法で十分な厚さに形成できるので、非線形
光学装置も高効率に動作させることができる。一般式
(化2)のような形、あるいは、ポリウレタンやPMM
A等の高分子化合物に分散させた形とすることは、厚膜
化(すなわち装置の高効率化)及び高光透過性獲得に有
効であるという利点を有する。
【0033】また、本発明によれば、水素をフッ素ある
いは重水素で置換することにより、材料の赤外領域(特
に通信波長帯)での吸収を下げることができ、特に長い
媒質を用いる場合に、水素をそのまま用いる場合に比べ
て、非線形光学装置の使用範囲を拡大させることができ
る。
【0034】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明に係わる非線
形光学装置の特長を、一般式(化1)で表される非線形
高分子化合物の中から、下記一般式(化3)で表される
化合物(以下、PU−STADという)等を用いて詳細
に説明する。なお、本発明は、このPU−STAD以外
の化合物、すなわち、下記一般式(化4)、(化5)等
を用いても、ほぼ同様の結果が得られた。なお、本発明
は、下記実施例に限定されるものではなく、その要旨を
逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは言
うまでもない。
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
【0037】
【化5】
【0038】実施例1(参考例) 本実施例は、図3に示す有機薄膜製造装置(スピンコー
ティング法による)を用い、PU−STAD膜を作製し
た。図3中、21はスピンコート装置、22は回転数・
回転時間制御部、23は赤外線ランプ、24は温度制御
部、25は熱電対、26は赤外線照射タイミング制御部
を示す。この装置は、スピンコーティング装置に赤外線
加熱装置を連動させ、加熱温度・加熱のタイミングとそ
の時間・回転数を任意に組合せることができるように設
計されている。PU−STAD膜は、以下に示すよう
に、加熱温度・加熱のタイミングとその時間・回転数を
設定して作製した。すなわち、あらかじめ、60℃に赤
外線加熱したガラス基板に、5μm径のテフロンフィル
タでろ過したPU−STADの30wt%ジメチルアセト
アミド(DMAc)溶液を滴下し、赤外線加熱を一時停
止し、毎分1000回転で100秒間、次に赤外線加熱
(60℃)を再開し、毎分1500回転で250秒間、
回転させ、厚さ11.6μmの薄膜を得た。
【0039】得られた膜の光学特性を調べたところ、後
に述べる非線形光学装置構成に不可欠な光学的均一・平
坦性を備えており、レーザ光の直線偏波の薄膜通過時の
偏光保持率は、50dB以上と極めて良好であった。高
パワーのレーザを照射した場合も、膜の耐性は以下の実
施例に示す実験を行うのに十分であった〔なお、保護膜
として、CaF2 を適宜真空蒸着することにより(厚み
3μm)、更に耐性を上げることも行った〕。
【0040】図4にPU−STAD膜の透過率スペクト
ルを示すが、波長が0.8μm以上では、吸収がほとん
どなく、媒質長が1mm程度までは、素子構成に何の障害
にならないことが分かった。図4において、縦軸は透過
率、横軸は波長(nm)を示す。
【0041】本実施例では、60℃加熱を行う際に、赤
外線を用いたが、遠赤外線等、同様の原理に基づいて基
板を加熱できるものを利用すれば、薄膜作製には同等の
効果があることが確認された。また、本実施例では、P
U−STADを溶解させる溶媒にDMAcを使用した
が、この他、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキ
シド、N−メチルピロリドン等の極性溶媒を用いても同
様の結果が得られた。なお、本実施例の最大のポイント
は、スピンコート法により、10μmを超える厚さを有
する薄膜が、均一かつ平坦に作製できたことである。図
3の装置を用いないで作製した、他の多くの高χ(3)
機薄膜は、均一性や平坦性を優先させると、膜厚が高々
1μm程度であり、高効率な光学装置構成には不十分で
あったことを考えると本発明の利点が良く分かる。
【0042】実施例2 PU−STADは、一般式(化2)の形にすることによ
って(以下、共重合型PU−STADという)、より高
効率な光学媒質を作製することができた。本実施例で
は、下記各式(化6):(化7):(化8)=2:5:
7として共重合型PU−STADを合成した。
【0043】
【化6】
【0044】
【化7】HO(CH2 6 OH
【0045】
【化8】OCNCH2 (CH2 4 CH2 NCO
【0046】この場合、(化6)の濃度は40wt%(P
U−STADの半分位)と小さくなるが、実施例1と同
様の方法で膜を作製したところ、PU−STADの場合
よりも数倍以上厚い膜が得られたので、結局、膜全体の
χ(3) 値を2倍以上に向上させることができた(厚膜化
効果)。光透過率も数倍以上に向上した。
【0047】実施例3 PU−STADの水素をフッ素化したもの〔以下、PU
−STAD(F8)という〕も、(化6):(化7):
(化9)=4:11:15として共重合型PU−STA
D(F8)を合成したが、(化6)の濃度は28wt%と
なるものの、膜を作製したところ、実施例2と同様に、
膜全体のχ(3) 値は2倍以上に向上した。
【0048】
【化9】OCNCH2 (CF2 4 CH2 NCO
【0049】PU−STADの水素を重水素化したもの
〔以下、PU−STAD(D8)という〕も、、上記の
(化6)の濃度が減少するものの、厚膜化効果により、
膜全体のχ(3) 値が2倍以上に向上した。なお、上述し
た様に、厚膜化効果により光透過率が向上するが、それ
だけでは、1.3μmや1.55μmのような通信波長
帯での吸収を低減させるのは十分ではなく、ここに示し
たフッ素化及び重水素化が有効である(実施例6で説明
する)。
【0050】実施例4 前記実施例2及び実施例3で示した厚膜化効果は、PU
−STADや共重合型PU−STADをポリウレタンに
分散させた高分子化合物等にも認められ、膜自体のχ
(3) 値が向上した。本実施例で、共重合型PU−STA
D(F8)をポリウレタンと20:17の重量比で混ぜ
てコンポジットを作製したところ、(化5)の重量比は
15wt%と小さくなったが、これを用いて作製した膜
は、厚膜化効果により膜全体のχ(3)値が1.5倍以上
に向上した。光透過率も数倍以上に向上した。共重合さ
せていないPU−STAD、PU−STAD(F8)、
PU−STAD(D8)、共重合PU−STADなどに
おいても、厚膜化効果が認められ、膜全体のχ(3)
が、1.5倍以上に向上し、光透過率も数倍以上に向上
した。なお、得られた膜の光学特性を実施例1と同様に
調べたところ、後に述べる非線形光学装置構成に不可欠
な光学的均一・平坦性を備えており、レーザ光の直線偏
波の薄膜通過時の偏光保持率は、50dB以上と極めて
良好であった。、高パワーのレーザを照射した場合も、
膜の耐性は以下の実施例に示す実験を行うのに十分であ
った(実施例2及び実施例3も同様に良好であった)。
【0051】実施例5(参考例) 本実施例では、より厚いPU−STAD膜をキャスティ
ング法により作製した結果を示す。キャスティング膜
は、PU−STAD粉末をペレット状に固め、これを2
枚の表面疎水処理(シランカプリング処理)したガラ
ス(スペーサ:1mm)に挟んでプレスし、120℃で1
0分間加熱することにより作製した。ガラスに挟まれた
膜は、後に容易に取り出すことが可能である。本実施例
においても、得られた膜の光学特性を調べたところ、後
に述べる光学装置構成に不可欠な光学的均一・平坦性を
備えており、レーザ光の直線偏波の薄膜通過時の偏光保
持率は、50dB以上と極めて良好であった。なお、本
実施例の方法でも、実施例2から実施例4のいずれかで
合成した共重合型PU−STAD、コンポジットしたP
U−STAD等を用いて膜を作製する場合、共重合させ
ていないPU−STADや、コンポジットしていないP
U−STAD等の場合よりも厚い膜が得られ、膜全体の
χ(3) が1.5倍以上に向上した(スペーサの間隔を数
倍に拡大した)。
【0052】実施例6 実施例1において、波長0.8μm以上では、媒質長1
mm程度までは、吸収の問題がないことを示した。しかし
ながら、それ以上の素子を作製する場合には、特に通信
波長帯において、分子の水素に基づく吸収が無視できな
くなる場合がある。そこで、本実施例において、PU−
STADの水素をフッ素化及び重水素化したところ、吸
収を大幅に低減させた。実施例3で作製したPU−ST
AD膜を用い、波長1.55μmでの吸収損失を測定し
たところ、3.1dB/cmであったが、フッ素化を行う
と、吸収損失が1dB/cm以下に低減された。PU−S
TAD、共重合型PU−STAD、コンポジットしたP
U−STAD(この場合は、PU−STADとPU−S
TADを分散させる高分子化合物の片方又は両方)にお
いても、フッ素化により吸収損失が数分の1になり、1
dB/cm以下に低減された。重水素化においても、同様
の効果が認められ、吸収損失が数分の1になり、1dB
/cm以下に低減されることが、通信波長帯(1.3μm
等)で確認された。なお、χ(3) 値は、フッ素化や重水
素化によっては減少しなかった。また、本方法によれ
ば、群遅延分散をも低減させることができた。
【0053】実施例7 本実施例では、本発明の実施例1及び実施例2で作製し
たPU−STAD膜を用いて光カーシャッタスイッチ動
作を観測した結果を示す。図1は、本発明の光カーシャ
ッタスイッチ装置40の特性を測定する実験系である。
プローブ光41としては、波長0.98μmの半導体レ
ーザ光、ゲート光42としては、波長1.064μmの
Nd3+−YAGレーザ光(6nsec、10Hz)を用いた。
検出器43としては、応答速度2nsecの光電子倍増管を
用いた。実施例1で作製したPU−STAD膜を用いて
光カーシャッタを構成したところ、図5に示す様に、ス
イッチングしているのが確認され、プローブ光透過率T
値は式(数7)に従い、ゲート光パワーの2乗(すなわ
ち、Igの2乗)に比例して増大していることが分かっ
た。
【0054】さて、式(数7)によれば、より小さいゲ
ートパワーでスイッチングさせるには、光学媒質の長さ
を長くすればよいが、実施例2で作製したPU−STA
D膜(媒質長1mm)を用いたところ、必要なゲート光パ
ワーが2桁低減され、位相変化量πが実現できた。この
時のゲート光パワーは、4.5kWであった。この結果か
ら、PU−STADのχ(3) の値として5×10-11 es
u であることが見積られた。なお、本発明の非線形光学
装置は、通信波長帯でも同様に動作すること(フッ素化
及び重水素化した媒質を適用)、及び、半導体レーザを
用いてもスイッチングすることが確かめられ、装置の大
幅なコンパクト化が可能であった。
【0055】応答速度に関しては、ゲート光をピコ秒
(10Hz)Dyeレーザ、検出器をストリークカメラ
(検出限界2psec)を用いて調べたが、PU−STAD
膜は、検出限界以下で応答していることが分かった。有
機固体材料の応答速度は、一般に、前述のように、10
-14 sec 程度と極めて高速であることが知られている
が、本実施例で用いたPU−STAD膜の応答速度も同
様であると考えられる。なお、この光カーシャッタスイ
ッチは、ピコ秒以下のスイッチングスピードを有するた
め、信号光に100GHz 以上の変調をかける変調機能、
100GHz 以上の繰返し周波数をもつ信号光パルス列か
ら任意の信号パルスを取り出し、低繰返しのパルス列に
変換するデマルチプレクシング機能、いくつかの低繰返
し光パルス例を100GHz 以上の光パルス列に多重化す
るマルチプレクシング機能等を実現することができる。
【0056】実施例8 図6は、本発明の非線形光学装置の1実施例である光双
安定装置を説明する図であって、本発明で用いる非線形
屈折率媒質61は、実施例2で作製したPU−STAD
薄膜であり、本発明装置においては、入力光を約90%
反射し、残りを透過させる誘電体多層蒸着膜ミラー62
a、62bを対向させて配置した外部光共振器である。
PU−STAD薄膜は、実施例2により作製し、大きさ
を10×10×1mm3 とした。なお、63は入力光、6
4は出力光を意味する。図7は該装置のリミッタ動作特
性を示す図、図8は双安定動作特性を示す図である。図
6に示した装置を動作させるには、入力光波長をわずか
変化させるか、あるいは共振器長(ミラー間隔)をわず
か変化させて共振条件を調整すれば良い。本実施例の場
合には、波長1.064μmのYAGレーザ光を使用し
たので、調整は共振器長を変化させる方法によった。入
力光強度Piと出力光強度Ptとの間には図7及び図8
で示したようなリミッタ動作及び双安定動作が得られ
た。各図中の矢印はPiの増加時、及び減少時のPtの
特性を現す経路を示す。
【0057】動作に必要な最小入力光強度(Pimin
は解析的に、下記式(数8)で与えられる。
【0058】
【数8】Pimin =(Kλ)/(n2 L)
【0059】〔但し、λは光の波長、Lは光学媒質長、
K(≒0.001)は鏡の反射率と共振器長調整で決ま
る係数〕
【0060】本実施例では、λ=1.064μm、L=
1mm、n2 =1×10-12 cm2 /Wであるから、Pi
min ≒1×106 W/cm2 と求まる。この値は、本実施
例の装置が、半導体レーザを用いても十分動作可能であ
ることを示しているが、実際、実施例3と同様にそれが
確認された〔フッ素化及び重水素化した媒質を適用して
通信波長帯での動作も確認した)。なお、装置の反応速
度は、光学媒質の応答時間τ(<10-14 sec)と共振器
光子寿命tp との大きい方で決まるが、式(数9):
【0061】
【数9】tp =−Lop/(ClnR)
【0062】(但し、Lopは共振器の光学長、Cは光
速、Rはミラーの反射率)から計算されるtp が、6×
10-11 sec であり、tp >τであるから、この値が装
置の応答速度となる。しかしながら、実施例1で作製し
た膜(厚さ10μm)を用いた場合は、tp が6×10
-13 sec と低減し、装置の高速化に有利である。そこ
で、装置の高速化の目的には、実施例1で作製した膜を
用いることとした。装置の応答速度を調べたところ、1
-12 sec 以下であることが確かめられた。
【0063】実施例9 図9は、位相共役波発生装置の実施例を説明する図であ
る。図中符号72aと72bは半透過鏡、73は全反射
鏡、71は、実施例2で作製したPU−STAD膜から
なる非線形屈折率媒質である。この構成は縮退4光波混
合と呼ばれる光学装置であって、非線形屈折率を有する
媒質に、A1,A2(Alと反対方向),Ap(傾入
射)の3つの光波が入射すると、Apに対して空間位相
項のみが共役である第4の光波(Ac)が発生する。本
実施例においても、装置の高速安定性、及び低パワー動
作が確認され、画像情報処理技術における像修正や、実
時間ホログラフィなどへの有効な手段となり得ることが
示された。
【0064】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明によれ
ば、光スイッチ、光双安定素子、あるいは位相共役波発
生装置など将来の光情報処理あるいは光通信分野で重要
な位置を占める非線形光学装置を、通信波長帯を含む広
い波長範囲で、高速・高効率に動作させ、実用に供する
ことができる。本発明は、一般式(化1)で表される非
線形高分子化合物が、導波路構造にしなくても十分な高
効率非線形光学装置を構成できるため、光学媒質の作製
が、スピンコーティング法、あるいはガラスに挟んでの
キャスティング法のみによって、簡便に行えるという特
長を有している。また、導波路構造にしなくてもよいこ
とは、導波路に特有の、結合損の低減化、シングルモー
ド化等の問題が全くないという特長をも有している。た
だし、本発明によれば、スピンコート法により、3イン
チSi(表面熱処理)ウェハ等に、容易に大面積の薄膜
が作製できるので、導波路を作製することは可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光カーシャッタスイッチの構成図であ
る。
【図2】従来の光カーシャッタスイッチの構成図であ
る。
【図3】本発明で用いた有機薄膜の製造装置の1例の構
成図である。
【図4】PU−STAD膜の透過スペクトルを示すグラ
フである。
【図5】PU−STAD膜を用いた光カーシャッタにお
けるプローブ光透過率のゲート光パワー依存性を示す図
である。
【図6】本発明の光双安定装置の構成図である。
【図7】図6の光双安定装置のリミッタ動作特性を示す
図である。
【図8】図6の光双安定装置の双安定動作特性を示す図
である。
【図9】本発明の位相共役波発生装置の構成図である。
【符号の説明】
11:非線形屈折率媒質、12a、12b:偏光子、2
1:スピンコート装置、22:回転数・回転時間制御
部、23:赤外線ランプ、24:温度制御部、25:熱
電対、26:赤外線照射タイミング制御部、40:光カ
ーシャッタスイッチ装置、41:プローブ光、42:Y
AGレーザ、43:検出器、61:非線形屈折率媒質、
62a、62b:誘電体多層蒸着膜ミラー、63:入力
光Pi、64:出力光Pt、71:非線形屈折率媒質、
72a、72b:半透過鏡、73:全反射鏡
フロントページの続き (72)発明者 戒能 俊邦 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−305631(JP,A) Appl.Phys.Lett., 1992年10月19日,vol.61 No. 16,p.1901−1903 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/29 - 1/39 JICSTファイル(JOIS)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非線形屈折率を有する光学媒質と、光学
    素子とで構成される非線形光学装置において、非線形屈
    折率を有する光学媒質として、下記一般式(化1): 【化1】 〔式中、R1 、R2 は、炭素数2以上6以下の直鎖状あ
    るいは分岐鎖状の炭化水素基、R3 は、Cw 2w(w
    は、4以上12以下の整数)、(CH2q OCONH
    (CH2p NHCOO(CH2q 、あるいは(CH
    2q OCO(CH2p COO(CH2q (p、q
    は、2以上6以下の整数)、で表される置換基、πはジ
    スアゾ、トリスアゾ、テトラキスアゾ、あるいはペンタ
    キスアゾ系のπ共役系である〕で表される非線形高分子
    化合物における、該一般式(化1)の水素が、フッ素あ
    るいは重水素で置換された非線形高分子化合物から作製
    した非線形薄膜を用いることを特徴とする非線形光学装
    置。
  2. 【請求項2】 非線形屈折率を有する光学媒質と、光学
    素子とで構成される非線形光学装置において、非線形屈
    折率を有する光学媒質として、下記一般式(化2): 【化2】 〔式中、R1 、R2 は、炭素数2以上6以下の直鎖状あ
    るいは分岐鎖状の炭化水素基、R3 とR5 は、Cw 2w
    (wは、4以上12以下の整数)、(CH2qOCO
    NH(CH2p NHCOO(CH2q 、あるいは
    (CH2q OCO(CH2p COO(CH2
    q (p、qは、2以上6以下の整数)で表される置換
    基、R4 は、Cw 2w(wは、4以上12以下の整
    数)、アリーレン環、あるいは、アリーレン環を含むC
    w 2w(wは、4以上12以下の整数)で表される置換
    基、πはジスアゾ、トリスアゾ、テトラキスアゾ、ある
    いはペンタキスアゾ系のπ共役系である〕で表される非
    線形高分子化合物より作製した非線形薄膜を用いること
    を特徴とする非線形光学装置。
  3. 【請求項3】 請求項に記載の非線形光学装置におい
    て、非線形屈折率を有する光学媒質として、該一般式
    (化2)で表される非線形高分子化合物の水素が、フッ
    素あるいは重水素で置換された非線形高分子化合物を用
    いることを特徴とする非線形光学装置。
  4. 【請求項4】 非線形屈折率を有する光学媒質と、光学
    素子とで構成される非線形光学装置において、非線形屈
    折率を有する光学媒質として、高分子化合物に請求項1
    〜請求項のいずれか1項に記載の該非線形高分子化合
    物を分散させた非線形薄膜を用いることを特徴とする非
    線形光学装置。
  5. 【請求項5】 請求項に記載の非線形光学装置におい
    て、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の該非線
    形高分子化合物を分散させる該高分子化合物の水素がフ
    ッ素あるいは重水素で置換されていることを特徴とする
    非線形光学装置。
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