JP3246677B2 - 光エコーメモリ記録再生装置及び方法 - Google Patents

光エコーメモリ記録再生装置及び方法

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JP3246677B2 JP19610892A JP19610892A JP3246677B2 JP 3246677 B2 JP3246677 B2 JP 3246677B2 JP 19610892 A JP19610892 A JP 19610892A JP 19610892 A JP19610892 A JP 19610892A JP 3246677 B2 JP3246677 B2 JP 3246677B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大容量、超高速動作を
特徴とする光エコーメモリ装置において、時系列光パル
スデータ信号を純光学的に生成して光エコー媒体に実時
間で書き込む方法と、該光エコー媒体から読みだされた
超高速時系列光パルスデータ信号を空間ビットパターン
にシリアル・パラレル変換して且つ光増幅をすることな
どによりS/N比を向上させて実時間で検出する方法を
用いることにより、ピコ秒時間領域以下での超高速光エ
コーメモリの実時間記録・再生を可能にする光エコーメ
モリ記録再生装置ないし方法に関する。。
【0002】
【従来の技術】光エコーメモリは、例えば、応用物理、
第6巻、第1号、p21−36(1991)において解
説されているように、大容量、超高速動作の光メモリ素
子として期待されている。特に、ピコ秒時間領域で動作
可能な超高速光エコーメモリは、潜在的に1テラビット
/秒の動作性能をもつため、光情報処理分野への応用が
期待できる。しかしながら、ピコ秒時間領域以下の超高
速時系列光データ信号の生成及び検出は困難であり、実
用的な超高速光エコーメモリ実現への障害の一つとなっ
ている。
【0003】従来、光エコーメモリの書き込み(記録)
に用いる光データパルス列は、cwレーザにAO(音響
光学)変調器あるいはEO(電気光学)変調器で適当な
強度変調を与えるか、モードロックレーザのパルス列か
らAO(またはEO)変調器で適当なパルスを抜き取る
ことによって作られている。また、二台の独立したパル
スレーザを用いて、両者のパルス間の間隔を変えて、一
ビットづつデータを書き込んでいく方法も報告されてい
る(M.Mitsunaga,et al.,Opti
cs Letters Vol.15,195(199
0))。ピコ秒時間領域の光データ信号の書き込みで
は、実時間書き込みは困難であるため、一ビット毎に記
録励起光パルスと書き込み光パルス間の光路差を変え
て、所望のビット数だけ書き込みを繰り返す方法が行わ
れている(S.Saikan,etal.,Optic
s Letters Vol.14,841(198
9)、及び特開平3−183033)。
【0004】一方、光エコーメモリの読み出し(再生)
の際、再生されたエコー信号の検出は光電子増倍管や高
速フォトダイオードとデジタルオシロスコープの組み合
わせによって行われる。ピコ秒時間領域の超高速光エコ
ーメモリにおけるエコー信号の検出は、ストリークカメ
ラによる測定(P.Saari et al.,Jou
rnal of Optical Society o
f AmericaB Vol.3,527(198
6))、あるいは参照光との相互相関を取ることにより
エコー時間波形を得る方法(S.Saikan,et
al.,Optics Letters Vol.1
4,841(1989)、及び特開平3−18303
3)がある。
【0005】図13に、ピコ秒時間領域の光データ信号
を記録・再生する光エコーメモリ装置の従来例を示す。
まず、書き込み時においては、レーザから発せられた光
パルスはビームスプリッタ131によって二分割され、
一方は記録励起光132、他方はデータ光133とな
る。データ光133の光路上には可変の時間遅延手段1
34が置かれており、データ光133は記録励起光13
2に対してある時間遅れで光エコーメモリー媒体135
に入射する。これにより一ビットのデータが記憶され
る。次に、時間遅延手段134により、記録する情報に
応じて記録励起光132に対する遅延時間を変え、次の
光パルスにより、一ビット目と同様に書き込みを行う。
この作業を所望の回数繰り返すことによって、所望のビ
ット数のデータを媒体135に書き込むことができる。
【0006】一方、読み出し時には、132は再生励起
光、133はプローブ光として用いられる。書き込み時
同様、レーザからの光パルスはビームスプリッタ131
によって二分割され、プローブ光133は可変の時間遅
延手段134によって再生励起光132に対する遅延時
間を付加されて、二つの光束132,133はエコーメ
モリー媒体135に互いの光路が交わるように入射され
る。このとき、読み出されるエコー信号は、書き込み時
の記録励起光とデータ光との間の遅延時間だけ、再生励
起光132から遅れて発せられる。よって、媒体135
中に記録された信号が再生励起光132とプローブ光1
33の遅延時間に対応したところに存在すれば、プロー
ブ光133とエコー信号との合成光が出力され、これが
検出器136で検出できる。この原理により、プローブ
光133の時間遅延をパルスごとに変化させながら読み
出しの手順を繰り返せば、媒体135中に書き込まれて
いるピコ秒時間領域の光データ信号を再現することがで
きる。
【0007】
【発明が解決しようとしている課題】以上述べたよう
に、従来行われている光エコーメモリの実時間記録再生
は、AO(またはEO)変調器による光信号生成、光電
子増倍管や高速フォトダイオードとデジタルオシロスコ
ープの組み合わせによる光信号検出等の電気的手段を用
いるために、ナノ秒以下の超高速光信号を扱うことは困
難である。また、従来のピコ秒時間領域での光エコー記
録再生は、図13に示した様に実時間動作ではない。
【0008】従って、本発明の目的は、電気的な動作速
度に制限させることなく、ピコ秒時間領域での実時間記
録再生が可能な光エコーメモリ記録再生装置ないし方法
を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の光エコーメモリ記録再生装置ないし方法は、時系列
光パルスデータ信号の実時間での光学的な生成手段ない
し方法と、時系列光パルスデータ信号を空間パターン信
号に変換することによって実時間で検出する検出手段な
いし方法とを含む光エコーメモリ記録再生装置ないし方
法において、前記検出手段ないし方法が、時系列のビッ
ト信号としての光データパルス列を空間的に拡げ且つ波
頭を傾け、同じく空間的に拡げられた参照光パルスと空
間的に交わるように直接、非線形光学効果を有する媒体
に入射し、個々のデータパルスと参照光パルス間の時間
相関に依存した非線形光学効果を被った出力光を空間情
報として検出することを特徴とする。より具体的には、
時系列光パルスデータ信号の光学的な生成手段ないし方
法が、一個の光パルスを空間的に分散した光パルス群に
拡げ、それらに空間的なビット信号情報を持たせた後、
それらの光パルス群に相対的時間差をつけてから時間遅
延を与えて集光したり、一個の光パルスを空間的に分散
した光パルス群に拡げるために回折格子とホログラムの
いずれかを用いる時系列光パルスデータ信号の生成手段
ないし方法を含んだり、空間的なビット信号情報をもた
せるために空間光変調器を用いる時系列光パルスデータ
信号の生成手段ないし方法を含んだり、空間的なビット
信号情報をもたせるための空間光変調器として、液晶シ
ャッターアレイ、音響光学(AO)変調器、電気光学
(EO)変調器のいずれかの透過率を制御できるものを
用いる時系列パルスデータ信号の生成手段ないし方法を
含んだり、非線形光学効果が第二高調波発生である時系
列光パルスデータ信号の検出手段ないし方法を含んだ
り、非線形光学効果が二光子吸収効果である時系列光パ
ルスデータ信号の検出手段ないし方法を含んだり、非線
形光学効果が過渡的エネルギー結合である時系列パルス
データ信号の検出手段ないし方法を含んだり、非線形光
学効果が過渡的フォトリフラクティブ効果である時系列
光パルスデータ信号の検出手段ないし方法を含んだりす
る。
【0010】
【実施例】図1は、本発明の実施例を示したものであ
り、同図に於いて、1は光源であるピコ秒パルスレー
ザ、2はビームスプリッタ、3は時系列信号を付与され
る光パルス、4は記録励起光パルスないし再生励起光パ
ルス、5は空間ビットパターンを時系列光信号に変換す
るための時系列信号生成手段、6は生成された時系列デ
ータ信号の光パルス列、7は光エコーメモリ媒体、8は
再生されたエコー信号、9は再生されたエコー信号を空
間パターンに変換するためのシリアル・パラレル変換手
段、10は空間パターンにシリアル・パラレル変換され
た再生信号、11は再生信号を検出する手段、12,1
3,14はシャッターである。
【0011】1)記録方法 光エコーメモリ媒体への記録(書き込み)は以下の手順
で行われる。図1において、パルスレーザ1から出力さ
れた単発の光パルスは、ビームスプリッタ2によって二
つのパルスに分割される。その一方のパルス3は、書き
込み時には開いているシャッター12を通過して、時系
列信号生成手段5に入射する。
【0012】図2に時系列信号生成手段5の詳細を示
す。同図に於いて、21はビームスプリッタ、22は回
折格子、23はコリメータレンズ、24は空間光変調
器、25は階段状の表面をもった反射鏡である。一個の
光パルス3は、ビームスプリッタ21を透過し、回折格
子22によって複数の回折光束に分割される。このと
き、各回折光束の強度が均一になるようにホログラムを
用いるのが望ましい。各光束はコリメータレンズ23で
一次元の平行光束となり、空間光変調器24に入射す
る。空間光変調器24は、各光束に対応したセグメント
に分れており、各セグメントが1ビットの空間データを
表す。図1の例では、7ビットの空間データ列(101
1001)を示している。
【0013】ここで、空間光変調器24は、ピンホール
列、液晶シャッターアレイ、AO(あるいはEO)変調
器等、透過率を制御できるものならばよく、データセッ
トごとに書き換えられるものが望ましい。特に、空間パ
ターンをもった入力光パルスによって透過率の空間分布
を形成できる非線形光学媒体を空間光変調器24として
使用すれば、電気的な動作速度に律速されないさらに高
速な動作が可能である。
【0014】空間光変調器24によって、透過(1)な
いし遮断(0)された各光束のうち透過(1)のものだ
けが反射鏡25に到達する。反射鏡25は段階状の表面
を有し、各光束に一定間隔の光路差すなわち時間遅延を
生じさせる。反射鏡25で反射された透過光束は同じ光
学系を戻り、レンズ23によって同一光路上に集光され
る。このとき、各透過光束には一定間隔の時間遅延が生
じているために、空間的には集められるが、時間的には
或る一定の遅れをもつので、時系列データ信号のパルス
列6が生成される。以上の過程により一つの光パルスか
ら光データパルス列を生成することができる。
【0015】尚、図2の例では、各光束の時間遅延のた
めに段階状の反射鏡25を用いているが、その他の方法
を用いることも可能である。図3にその一例を示す。同
図に於いて、31は屈折率nが段階状に分布した透明媒
質で、32は平面反射鏡である。各光束は、媒質31の
屈折率の異なる場所を透過するため、光路差Δl=2d
(nm+1−nm)を生じる。図4もその一例である。同図
に於いて、41は段階状に一定間隔で厚みの異なる透明
媒質、42は平面反射鏡である。各光束は、それぞれ異
なる厚さの媒質41を通ることにより、光路差Δl=2
n(dm+1−dm)を生じる。
【0016】以上の手段により生成された時系列データ
信号のパルス列6は、図1に示すように、記録励起光4
に対して或る角度をもって光エコーメモリ媒体7に入射
する。このとき、データパルス列6の入射は記録励起光
4の入射から適切な時間t12だけ遅れることが望まし
い。ここで必要な遅延時間は媒体7の物理的性質によっ
て決まるものであり、ピコ秒領域での光エコーメモリ媒
体として有望な色素分散高分子媒体を用いる場合、数百
フェムト秒から数百ピコ秒の程度である。この遅延時間
12は、ビームスプリッタ2から媒体7までの記録励起
光4の光路長と信号を付与される光パルス3及びデータ
パルス列6の光路長に適切な光路差をつけることによっ
て実現でき、上記の遅延時間に対応して0.1mmから
10cmの程度となる。また、媒体7として上記の色素
分散高分子媒体を使用する場合、現在までのところ媒体
7を10K程度以下に冷却する必要があり、媒体7は液
体ヘリウム・クライオスタット中に置かれる。なお、媒
体7を透過した記録励起光4とデータパルス列6は書き
込み時には不要なのでシャッター13及びシャッター1
4を閉じておくことによりブロックされるが、これは本
発明に必須なものではない。
【0017】2)再生方法 光エコーメモリの再生(読み出し)は、任意の記録保持
時間t23の後、以下の手順で行われる。なお、メモリの
最大記録保持時間は媒体7の物理的性質によって決ま
り、色素分散高分子媒体を使用する場合は数秒の程度以
上である。
【0018】図1において、パルスレーザ1から出力さ
れた単発の光パルスは、ビームスプリッタ2によって二
つのパルスに分割されるが、その一方のパルス3は、読
みだし時には不要であり、閉じているシャッター12に
よってブロックされる。他方の励起光4は、再生励起光
として媒体7に入射する。このとき、再生励起光4は、
書き込み時の記録励起光と同じ入射配置すなわち同じ波
数ベクトルを持つ。ここで、記録励起光、書き込みデー
タ光、再生励起光の波数ベクトルをそれぞれK1,K2
3とすると、エコー信号の波数ベクトルK4は、光エコ
ーの原理より、 K4=−K1+K2+K3 となる。今、記録励起光と同じ波数ベクトルの再生励起
光を用いるのでK1=K3だから、K4=K2となり、再生
されたエコー信号8は、書き込みデータ光6と同一光路
上に発生することになる。なお、周知のように、再生励
起光4の入射からエコー信号8の発生までに要する時間
34は、記録励起光に対する書き込みデータ光の遅延時
間t12に等しい。透過した再生励起光4と再生されたエ
コー信号8は、それぞれ読み出し時には開いているシャ
ッター13、14を通過し、ミラーによって互いに直交
する光路配置に変えられた後、シリアル・パラレル変換
手段9に入射する。
【0019】図5にシリアル・パラレル変換手段9の詳
細を示す。同図に於いて、51は一次元のコリメータレ
ンズ、52はビームスプリッタ、53はブレーズド格
子、54はシートビームとなった再生励起光パルス、5
5はシートビームとなりブレーズド格子53によって波
頭の傾いたエコー信号パルス列、56はx軸方向に集光
するための一次元レンズ、57は非線形光学媒体であ
る。
【0020】再生励起光4及びエコー信号8は、それぞ
れコリメータレンズ51によってシートビームとなる。
このとき、それぞれのビームはx軸方向において上下に
分離している。エコー信号8は、ブレーズド格子53で
入射方向に反射されるが、このとき光路長の違いによっ
て波頭が傾き、シートビームの両端で相対的な時間遅延
が生じる。再生励起光とエコー信号パルス列は、ビーム
スプリッタ52を介して平行ビームとなる。このとき、
再生励起光パルス54の波頭とエコー信号パルス列55
の全てのパルスの波頭が重なり合いを持つようにあらか
じめ両者の光路長を適切に調節しておく必要がある。再
生励起光パルス54とエコー信号パルス列55は、一次
元レンズ56によってx軸方向に集光され、非線形光学
媒体57に入射する。
【0021】ここで、非線形光学媒体57は、二光束の
時間的な重なり(時間相関)に依存した非線形光学効果
を有する媒体を用いる。すなわち、再生励起光パルス5
4の波頭とエコー信号パルス列55の個々のパルスの波
頭とが時間的に同時に媒体57に入射する位置(図中5
4と55の交点に対応した媒体57の位置)で、顕著な
非線形光学効果を生じるような媒体を用いる。再生励起
光パルス54とエコー信号パルス列55の相関による非
線形光学効果を受けることにより空間パターンを持った
出力光10が発生する。非線形光学効果により出力光の
発生ないし変調の生じる位置は、時系列データパルスの
個々のパルス間の時間間隔に対応するため、時系列信号
は空間列のデータパターンに変換される。
【0022】以上の手段により空間パターンに変換され
たエコー信号10は、図1に示す様に検出手段11によ
って検出される。ここで、検出手段11としてフォトダ
イオードアレイ等の光・電気変換素子を用いれば電気信
号として検出できるが、光学的な空間パターンのまま光
学的手法による演算、処理に用いることができることは
言うまでもない。
【0023】さて、実際に得られる空間パターン10及
び検出手段11で検出する場合の検出方法は、図5にお
ける非線形光学媒体57で生じる非線形光学効果の種類
によって異なる。図6は、シリアル・パラレル変換手段
9における非線形光学効果として第二高調波発生(SH
G)を用いる場合の要部概略図である。同図において、
61はSHG媒体である。この例では、SHG媒体61
は、互いに平行な偏波方向を持つ再生励起光パルス54
とエコー信号パルス列55の入射各2θに対し、その二
等分先方向に最大のSHG効率を示すように非平行の位
相整合がなされ、また、二光束の偏波方向に対して最大
の効率を示すようにカットしたものを用いている。
【0024】二光束の相関により発生したSHG光は検
出手段11で検出されるが、ここでSHG光の拡がりが
問題となる場合は、検出手段11の前にx軸方向だけ集
光するレンズを用いるか、SHG媒体と検出器を一体化
させた素子を用いればよい。また、SHG媒体61と検
出器11を一体化させた素子を用いればよい。また、S
HG媒体としては、LiNbO3,KDP,LiIO3
BBO等を用いることができるが、使用する光パルスの
波長等に応じて最適な材料を選ぶことが望ましい。
【0025】図7は非線形光学効果として二光子吸収
(TPA)効果を用いた場合の要部概略図を示す。図7
において、71はTPA媒体である。再生励起光パルス
54とエコー信号パルス列55は一般に互いにコヒーレ
ントであるので、二光束の干渉による過渡的な屈折率格
子の形成に伴う過渡的エネルギー移動を防ぐために光パ
ルス54,55の偏光は互いに直交させる。このために
は、二光束の一方ないし両方の光路に半波長板を挿入
し、一方の偏光方向が他方に対して90度回転するよう
に調節すればよい。なお、図7の例では、二光束はそれ
ぞれy軸、x軸方向に偏波しているが、互いに直交して
いればどのような偏光方向でも同様の結果が得られる。
【0026】再生励起光パルス54とエコー信号パルス
列55の重なりがもっとも大きくなるとき、すなわち二
光束の波頭が同時に入射した時に、媒体71の持つTP
A効果によって両光束はより顕著な光吸収を被る。この
TPA効果の検出は再生励起光54を光検出することに
よって行なう。これは、エコー信号パルス列55の方を
検出した場合、全てのデータパルスの時間積分された値
が検出されてしまうため、TPA効果を受けたパルスの
判別ができなくなるためである。なお、SN比を向上さ
せるためには、再生励起光パルス54の強度を再生励起
光パルス単独では二光子吸収が生じない程度に小さく
し、エコー信号パルス列55の個々のパルス強度をそれ
に比べて十分大きく再生増幅しておくことが望ましい。
【0027】図8はNd:YAGレーザ(1.064μ
m)の光パルス(半値全幅28.7ピコ秒)を二光束に
分けて、GaAs単結晶に入射させたときの一方の光束
(プローブ光束)の透過率変化を、二光束間の時間遅れτ
に対して測定した結果である。このとき、プローブ光束
の強度はもう一方の光束(ポンプ光束)の強度に較べて非
常に小さく、プローブ光束単独では二光子吸収が生じな
い条件で測定を行なった。同図に示されたように、TP
A効果は二光束間の時間相関に依存しており、プローブ
光束の透過率は、二光束間の時間ずれがないときに最小
となる。従って、上記の方法により、二光束によるTP
A効果を光データパルス列の検出に用いることができ
る。なお、この場合、検出される信号は負論理となる。
また、本実施例ではGaAsを用いた実験結果を示した
が、TPA効果を有する他の媒体、例えばCdTe,I
nP等の半導体やBaTiO,KNbO,SBN,
KNSBN等の絶縁体等を用いても同様の効果を得るこ
とができるので、使用する光パルスの波長等によって最
適な材料を選ぶのが望ましい。
【0028】図9は非線形光学効果として過渡的エネル
ギー結合(TET)を用いた場合の要部概略図である。
同図において、91はTET媒体である。TETは、光
カー効果による屈折率変化、例えば半導体中の自由キャ
リアのプラズマ効果を用いることによって実現できる。
再生励起光パルス54とエコー信号パルス列55はコヒ
ーレントであり、互いに平行な偏波とする。図中には二
光束がx軸方向に平行偏波した例を示しているが、二光
束がともに平行な偏波であれば他の方位であっても同様
の効果が得られる。
【0029】図10は、TETの原理を示した図であ
る。なお、同図では簡単のためにシートビームではなく
中心対称のビームの場合を示しているが、図5および図
9で示された再生励起光パルス54とエコー信号パルス
列55の波頭が交わったところでも同様の効果が生じ
る。まず、二光束I1,I2(I1>I2)によりTET媒
体中に干渉じまが生じるが、この干渉じまの明暗に従っ
て該TET媒体中に光カー効果(二次電気光学効果)に
よる屈折率格子が形成される。この屈折率格子は干渉じ
まと同位相(もしくは逆位相)であるため、二光束の強
度間の結合は生じないが位相間の結合を引き起こすこと
が知られている。このときの位相結合は二光束の強度に
対して、 d(ψ1−ψ2)/dz∝Γ(I1−I2)/I0 (1) なる関係がある。ここでψ1,ψ2およびI1,I2はそれ
ぞれ光束1と光束2の位相および強度で、Гは干渉じま
と位相ずれのない屈折率格子によるビーム結合の利得、
0=I1+I2である。式(1)で示された関係によ
り、強度の異なる二光束によってTET媒体中に生じる
干渉じまは、図10(a)に示されたようにz軸に対し
て線形に傾くことになる。この状態をt=0とし、一方
の光束の強度が時間的に変化すると、時間t>0におい
て、図10(b)に示されたように位相間の結合の結果
として干渉じまの傾きが変化する。この傾きの変化に屈
折率格子分布が追従しようとするが、屈折率格子の緩和
時間τが有限であるためにt>τの時間範囲では干渉じ
まと元の屈折率格子の間に過渡的な位相ずれが生じて、
二光束間に過渡的な強度間の結合が生じる。
【0030】具体的には、常に強度の強い光束から弱い
光束への過渡的エネルギー移動が生じる。図11は、こ
のようなTETを時間に関する過渡的エネルギー移動の
変化として示したものである。図11に示されたよう
に、tがτに対してそれほど大きくない時間では、顕著
な過渡的エネルギー移動が生じる。すなわち、強い再生
励起光パルス54を用いて、エコー信号パルス列55と
媒体91中で干渉じまを形成すれば、両者の波頭が交わ
ったところでエコー信号パルス列55の増幅が生じる。
ここで、エコー信号パルス列55を検出手段11によっ
て空間的に検出する。このとき、検出される光強度は全
てのデータパルスの時間積分値となるが、TETにより
十分大きな増幅が可能なのでS/N比良く空間パターン
を検出できる。また、エコー信号パルス列55の強度の
方を強くして再生励起光パルス54側で検出すればS/
N比はより向上する。
【0031】図12は、Nd:YAGレーザ(1.06
4μm)の光パルス(パルス幅28.7ピコ秒)を二光
束に分けて、CdTe単結晶に入射させたときの一方の
光束(プローブ光束)の透過率変化を、二光束間の時間
遅れτに対して測定した結果である。このとき、プロー
ブ光束の強度はもう一方の光束(ポンプ光束)の強度に
較べて小さい条件で測定を行なった。同図において、白
丸は自由キャリア格子に起因したエネルギー移動のみが
観測される偏波方向、黒丸はそれに過渡的フォトリフラ
クティブ効果が競合する偏波方向での測定結果である。
【0032】なお、過渡的フォトリフラクティブ効果
は、干渉じまに従って発生した光励起キャリアが拡散な
いしドリフトによって移動し、それが不純物準位からの
励起である場合はその不純物イオンと励起キャリア間
で、バンド間励起(二光子吸収も含む)である場合は電
子−正孔間で過渡的に空間電界が形成され、この電界に
より生じた一次電気光学(ポッケルス)効果を介した屈
折率格子によるエネルギー結合である。従って、過渡的
フォトリフラクティブ効果では電気光学定数の非対称性
から結晶の方位によってエネルギー移動の方向が異なる
が、この例では、TETによるエネルギー移動と同じポ
ンプ光束からプローブ光束へのエネルギー移動が生じる
結晶方位としている。
【0033】図12に示されたようにポンプ光束に対し
プローブ光束がわずかに先行して媒体に入射したときに
顕著な透過率の増加、すなわちエネルギー増幅が観測さ
れる。これは、弱いプローブ光束と強いポンプ光束の先
行した裾の部分で格子が書かれ、その後にポンプ光束の
大部分が到達することにより、実効的な回折効率が大き
くなるためである。従って、図9において、実際には再
生励起光パルス54とエコー信号パルス列55の波頭が
交わったところよりわずかにy軸方向にずれた位置でエ
コー信号パルス列55の増幅が生じることになる。その
ため、図9における検出手段11はあらかじめy軸方向
に位置の補正をしておくか、あるいは二光束間の光路差
を補正すればよい。
【0034】また、図12の例では、エネルギーの増幅
は2倍程度であるが、二光束間の強度比をより大きくす
ることによって数十倍から数百倍の増幅を生じさせるこ
とも可能である。以上のように、過渡的エネルギー移動
を利用することによって、光データパルス列55を空間
的に検出することができる。
【0035】なお、TET媒体として、CdTeの他に
GaAs,InP等の半導体材料を用いることができ
る。また、電気光学効果による屈折率格子を介した過渡
的フォトリフラクティブ効果だけによっても同様の効果
が得られる。ただし、前述したように、過渡的フォトリ
フラクティブ効果によるエネルギー移動の方向は結晶の
方位によって決定されるので、それにより光検出する側
も決まることになる。過渡的フォトリフラクティブ効果
を本発明に利用する場合、BaTiO3,SBN,KN
SBN,KNbO3等の絶縁体を用いることができる。
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、以上説明したように光
エコーメモリの潜在的な大容量、超高速性の特徴を損じ
ることなく、ピコ秒時間領域以下の超高速光エコーメモ
リの記録再生を実時間で行なうことができる。したがっ
て、現在の電子情報処理分野への適用はもちろん、将来
的な光情報処理技術への適合も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における概略図。
【図2】本発明の実施例における時系列信号生成手段の
要部概略図。
【図3】本発明の光パルスの時間遅延を実現するための
他の例の要部概略図。
【図4】本発明の光パルスの時間遅延を実現するための
他の例の要部概略図。
【図5】本発明の実施例におけるシリアル・パラレル変
換手段の要部概略図。
【図6】本発明の実施例におけるシリアル・パラレル変
換手段に係わるSHGを利用する例の説明図。
【図7】本発明の実施例におけるシリアル・パラレル変
換手段に係わるTPA効果を利用する例の説明図。
【図8】本発明の実施例におけるシリアル・パラレル変
換手段に係わるTPA効果におけるプローブ光の透過率
変化を説明する説明図。
【図9】本発明の実施例におけるシリアル・パラレル変
換手段に係わるTETを利用する例の説明図。
【図10】TETの原理を説明する説明図。
【図11】TETにおける過渡的エネルギー移動の変化
を説明する説明図。
【図12】TETにおけるプローブ光の透過率変化を説
明する説明図。
【図13】従来の光エコーメモリ記録再生装置の概略
図。 1 ピコ秒パルスレーザ 2 ビームスプリッタ 3 時系列信号を付与される光パルス 4,54 記録励起光パルスまたは再生励起光パル
ス 5 時系列信号生成手段 6 時系列光信号パルス列 7 光エコーメモリ媒体 8,55 再生されたエコー信号 9 シリアル・パラレル変換手段 10 空間パターンに変換された再生信号 11 検出手段 12,13,14 シャッター 21,52 ビームスプリッタ 22 回折格子 23 コリメータレンズ 24 空間光変調器 25 階段状表面を持つ反射鏡 31 屈折率が階段状に変化した透明媒質 32,42 平面反射鏡 41 厚みが階段状に変化した透明媒質 51 一次元コリメータレンズ 53 ブレーズド格子 56 一次元レンズ 57 非線形光学媒体 61 SHG媒体 71 TPA媒体 91 TET媒体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−106718(JP,A) 応用物理 Vol.60,No.1, p.p.21−28 応用物理 Vol.60,No.1, p.p 41−44 東京大学工学部総合試験所年報第50巻 (1991)p.79−85 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/35 - 3/02 G11B 11/00 JICSTファイル(JOIS)

Claims (18)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 時系列光パルスデータ信号の実時間での
    光学的な生成手段と、時系列光パルスデータ信号を空間
    パターン信号に変換することによって実時間で検出する
    検出手段とを含む光エコーメモリ記録再生装置におい
    て、前記検出手段が、時系列のビット信号としての光デ
    ータパルス列を空間的に拡げ且つ波頭を傾け、同じく空
    間的に拡げられた参照光パルスと空間的に交わるように
    直接、非線形光学効果を有する媒体に入射し、個々のデ
    ータパルスと参照光パルス間の時間相関に依存した非線
    形光学効果を被った出力光を空間情報として検出するこ
    とを特徴とする光エコーメモリ記録再生装置。
  2. 【請求項2】 時系列光パルスデータ信号の光学的な生
    成手段が、一個の光パルスを空間的に分散した光パルス
    群に拡げ、それらに空間的なビット信号情報を持たせた
    後、それらの光パルス群に相対的時間差をつけてから時
    間遅延を与えて集光することを特徴とする請求項1記載
    の光エコーメモリ記録再生装置。
  3. 【請求項3】 一個の光パルスを空間的に分散した光パ
    ルス群に拡げるために回折格子とホログラムのいずれか
    を用いる時系列光パルスデータ信号の生成手段を含むこ
    とを特徴とする請求項2記載の光エコーメモリ記録再生
    装置。
  4. 【請求項4】 空間的なビット信号情報をもたせるため
    に空間光変調器を用いる時系列光パルスデータ信号の生
    成手段を含むことを特徴とする請求項2記載の光エコー
    メモリ記録再生装置。
  5. 【請求項5】 空間的なビット信号情報をもたせるため
    の空間光変調器として、液晶シャッターアレイ、音響光
    学(AO)変調器、電気光学(EO)変調器のいずれか
    の透過率を制御できるものを用いる時系列パルスデータ
    信号の生成手段を含むことを特徴とする請求項4記載の
    光エコーメモリ記録再生装置。
  6. 【請求項6】 非線形光学効果が第二高調波発生である
    時系列光パルスデータ信号の検出手段を含むことを特徴
    とする請求項1記載の光エコーメモリ記録再生装置。
  7. 【請求項7】 非線形光学効果が二光子吸収効果である
    時系列光パルスデータ信号の検出手段を含むことを特徴
    とする請求項1記載の光エコーメモリ記録再生装置。
  8. 【請求項8】 非線形光学効果が過渡的エネルギー結合
    である時系列パルスデータ信号の検出手段を含むことを
    特徴とする請求項1記載の光エコーメモリ記録再生装
    置。
  9. 【請求項9】 非線形光学効果が過渡的フォトリフラク
    ティブ効果である時系列光パルスデータ信号の検出手段
    を含むことを特徴とする請求項1記載の光エコーメモリ
    記録再生装置。
  10. 【請求項10】 時系列光パルスデータ信号の実時間で
    の光学的な生成方法と、時系列光パルスデータ信号を空
    間パターン信号に変換することによって実時間で検出す
    る検出方法とを含む光エコーメモリ記録再生方法におい
    て、前記検出方法が、時系列のビット信号としての光デ
    ータパルス列を空間的に拡げ且つ波頭を傾け、同じく空
    間的に拡げられた参照光パルスと空間的に交わるように
    直接、非線形光学効果を有する媒体に入射し、個々のデ
    ータパルスと参照光パルス間の時間相関に依存した非線
    形光学効果を被った出力光を空間情報として検出するこ
    とを特徴とする光エコーメモリ記録再生方法。
  11. 【請求項11】 時系列光パルスデータ信号の光学的な
    生成方法が、一個の光パルスを空間的に分散した光パル
    ス群に拡げ、それらに空間的なビット信号情報を持たせ
    た後、それらの光パルス群に相対的時間差をつけてから
    時間遅延を与えて集光することを特徴とする請求項10
    記載の光エコーメモリ記録再生方法。
  12. 【請求項12】 一個の光パルスを空間的に分散した光
    パルス群に拡げるために回折格子とホログラムのいずれ
    かを用いる時系列光パルスデータ信号の生成方法を含む
    ことを特徴とする請求項11記載の光エコーメモリ記録
    再生方法。
  13. 【請求項13】 空間的なビット信号情報をもたせるた
    めに空間光変調器を用いる時系列光パルスデータ信号の
    生成方法を含むことを特徴とする請求項11記載の光エ
    コーメモリ記録再生方法。
  14. 【請求項14】 空間的なビット信号情報をもたせるた
    めの空間光変調器として、液晶シャッターアレイ、音響
    光学(AO)変調器、電気光学(EO)変調器のいずれ
    かの透過率を制御できるものを用いる時系列パルスデー
    タ信号の生成方法を含むことを特徴とする請求項13記
    載の光エコーメモリ記録再生方法。
  15. 【請求項15】 非線形光学効果が第二高調波発生であ
    る時系列光パルスデータ信号の検出方法を含むことを特
    徴とする請求項10記載の光エコーメモリ記録再生方
    法。
  16. 【請求項16】 非線形光学効果が二光子吸収効果であ
    る時系列光パルスデータ信号の検出方法を含むことを特
    徴とする請求項10記載の光エコーメモリ記録再生方
    法。
  17. 【請求項17】 非線形光学効果が過渡的エネルギー結
    合である時系列パルスデータ信号の検出方法を含むこと
    を特徴とする請求項10記載の光エコーメモリ記録再生
    方法。
  18. 【請求項18】 非線形光学効果が過渡的フォトリフラ
    クティブ効果である時系列光パルスデータ信号の検出方
    法を含むことを特徴とする請求項10記載の光エコーメ
    モリ記録再生方法。
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