JP3243653U - 隔離袋 - Google Patents

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Abstract

本発明は、医療従事者の2次感染が発生するおそれがなく、処置の際の操作性が良好な隔離袋を提供することを課題とする。本発明の隔離袋(3)は、潰れた状態と広げた状態に選択的に形状を変更可能な柔軟性を有する隔離袋である。隔離袋は、立体的に広げた状態で被処置者の頭部を収容可能な大きさの閉塞空間を有する袋本体(11)と、袋本体に固定されて袋本体を立体的に広げた状態に袋本体の形状を保持して袋本体を自立させることが可能でかつ立体的に広げた状態から平面状に潰れた状態に袋本体の形状を変更可能な可撓性を有する補強部材(12A、12B)を有する。袋本体には被処置者の頭部が挿入される第1開口孔(22a)と、処置者の手あるいは腕が挿入される第2開口孔(23a、23b)と、陰圧供給装置に接続される接続孔(22b)が形成されている。

Description

本発明は、人体の頭部を挿入して外部と隔離することができる閉塞空間を備えた透明の隔離袋に関する。
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が世界的に蔓延し、現在も感染者数は増加の一途を辿っている。新型コロナ下の医療処置においては、フェースガードやNIOSH(米国労働安全衛生研究所)規格に合格したマスク、いわゆるN95マスク、二重手袋、ガウンなどにより医療従事者は感染から自己防衛を行ってきた。しかしながら、COVID-19患者や他の指定感染症の患者(以下、患者という。)の診察、検査や手術の際に生じる患者から空気中に飛散された分泌物、いわゆるエアロゾルが高い頻度で発生する処置や手技に対する有効かつ確実な防御方法は未だに開発されていない。
医療機関では、患者から生じるエアロゾルによる医療従事者への2次感染症の発生が懸念されている。特に、手術患者の麻酔導入、人工呼吸患者の上気道の処置や上部消化管内視鏡手術においては、医療従事者がエアロゾルに暴露されるリスクが高く、有効な予防策が求められている。従来、医療機関では、直方体の枠組みや透明のアクリルボックスを患者の首から上(以下、頭部)や上半身に被せて、さらに、その上から透明のビニールシートを掛けて、患者の頭部や上半身を覆い、壁面部に形成された開口孔から医療従事者の手や腕を挿入して治療などの処置を行うようにしていた。また、救急車の患者室内に設置され、天井部および周壁部と、救急車の患者室内の天井部分に設けられた換気口に接続される接続部とを備え、患者が載置されたストレッチャ架台の全体を収容する大きさに形成され、天井部分から吊り下げ支持されたものが開示されている(特許文献1)。
特許第6753547号公報
しかしながら、直方体の枠組みやアクリルボックスにビニールシートを被せたものは、処置中のエアロゾルによる2次感染に対しては有効であるが、患者の処置後に直方体の枠組みやアクリルボックスからビニールシートを取り外して廃棄する際に、エアロゾルの飛散による医療従事者の2次感染が発生するおそれがある。また、再利用するために直方体の枠組みやアクリルボックスを洗浄する際に、2次感染が発生するおそれがある。また、アクリルボックスは剛性が極めて高い剛体であり、容易に変形しないので、医療従事者がアクリルボックスに形成された開口孔から医療従事者の手や腕を挿入して治療や検査などの処置を行う際に、手や腕の動作範囲が制限され、枠組みやアクリルボックス内における処置の作業性や医療機器の操作性が悪いという問題がある。
また、特許文献1に記載のものは、患者が載置されたストレッチャ架台の全体を収容する大きさに形成され、天井部分から吊り下げ支持されているので、比較的に大型となり、飛散したエアロゾルの付着面積も大きくなり、再利用する際の消毒や、利用後の廃棄の際に2次感染が発生するおそれがある。また、ストレッチャ架台の全体を収容しているので、処置の作業性および医療機器の操作性が悪いという問題がある。さらに、患者が吐血や嘔吐した場合に、血や嘔吐物が床面やベッドに付着し、それを片付ける医療従事者が2次感染するおそれもある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、患者の治療や検査などの処置を行う際に、医療従事者の2次感染が発生するおそれがなく、処置の作業性および医療機器の操作性が良好な隔離袋を提供することを課題とする。
(1)本発明に係る隔離袋は、平面状に潰れた状態と立体的に広げた状態に選択的に形状を変更可能な柔軟性を有する隔離袋であって、透明の樹脂シートによって形成され、立体的に広げた状態で被処置者の頭部を収容可能な大きさの閉塞空間を有する袋本体と、該袋本体に固定され、前記袋本体を立体的に広げた状態に前記袋本体の形状を保持して前記袋本体を自立させることが可能でかつ立体的に広げた状態から平面状に潰れた状態に前記袋本体の形状を変更可能な可撓性を有する補強部材と、を有し、前記袋本体には、前記被処置者の頭部を前記閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第1開口孔と、処置者の手あるいは腕を前記閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第2開口孔と、前記閉塞空間内を陰圧状態にする陰圧供給装置に接続される接続孔と、が形成されていることを特徴とする。
上記(1)に記載した本発明に係る隔離袋は、平面状に潰れた状態と立体的に広げた状態に選択的に形状を変更可能な柔軟性を有する隔離袋であって、透明の樹脂シートによって形成され、立体的に広げた状態で被処置者の頭部を収容可能な大きさの閉塞空間を有する袋本体と、袋本体に固定され、袋本体を立体的に広げた状態に袋本体の形状を保持して袋本体を自立させることが可能でかつ立体的に広げた状態から平面状に潰れた状態に袋本体の形状を変更可能な可撓性を有する補強部材を有している。そして、袋本体には、被処置者の頭部を閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第1開口孔と、処置者の手あるいは腕を閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第2開口孔と、閉塞空間内を陰圧状態にする陰圧供給装置に接続される接続孔が形成されている。なお、透明には半透明も含まれる。
この構成により、患者の頭部が第1開口孔から閉塞空間内に挿入され、医療従事者の手や腕が第1開口孔から閉塞空間内に挿入され、隔離袋内で患者の治療や検査などの処置を行うことができる。また、陰圧供給装置により接続孔を介して陰圧が閉塞空間内に供給されるので、閉塞空間内が陰圧状態で維持される。閉塞空間内の陰圧が維持されると、患者から飛散するエアロゾルなどの微粒子が隔離袋の開口孔から外部に漏出することが阻止され、エアロゾルなどの微粒子による医療従事者の2次感染が防止される。また、本発明に係る隔離袋は、透明の樹脂シートによって形成されているので、隔離袋の外部から閉塞空間の内部を目視することができ、医療従事者が患者を目視しながら処置を行うことができる。また、隔離袋が柔軟性を有しているので、医療従事者の手や腕が第2開口孔から閉塞空間内に挿入されて医療従事者が処置を行う際に、手や腕の動作範囲が狭い範囲に制限されずに、動作範囲を広くすることができ、隔離袋内における医療機器の操作性や処置の作業性が良好となる。また、袋本体は、袋状であるので、患者が吐血や嘔吐した場合に、吐血した血や嘔吐した嘔吐物が床面やベッドに付着したり、周囲にまき散らされたりするのを防ぐことができ、医療従事者への2次感染を防止できる。
また、本発明に係る隔離袋は、袋本体に固定され、袋本体を立体的に広げた状態に袋本体の形状を保持して袋本体を自立させることが可能でかつ立体的に広げた状態から平面状に潰れた状態に袋本体の形状を変更可能な可撓性を有する補強部材を有している。したがって、補強部材により隔離袋が補強され、自立した状態で設置でき、隔離袋の閉塞空間が広く確保される。したがって、隔離袋を簡単に設置することができ、閉塞空間内部における操作性、作業性、および視認性も高まる。
(2)本発明に係る隔離袋は、前記第1開口孔を閉塞した状態に固定可能な第1フラップと、前記第2開口孔を閉塞した状態に固定可能な第2フラップとを有することを特徴とする。
上記(2)に記載した本発明に係る隔離袋は、第1開口孔を閉塞した状態に固定可能な第1フラップと、前記第2開口孔を閉塞した状態に固定可能な第2フラップとを有している。この構成により、医療従事者の患者への処置が終了した後、第1フラップにより第1開口孔を閉塞し、第2フラップにより第2開口孔を閉塞して、隔離袋を密閉状態にすることができる。
密閉された隔離袋内の空気が陰圧供給装置により吸引され、隔離袋が収縮して潰れた状態となる。収縮して潰れた隔離袋は、コンパクトになり、容易に廃棄できる。そして、隔離袋の外表面はエアロゾルなどの微粒子の付着がなく、隔離袋の全体が所定の廃棄場所に廃棄されるので、医療従事者などへの2次感染のおそれが解消される。また、従来のような直方体の枠組みやアクリルボックスの洗浄を行う必要がなく、洗浄作業に伴う2次感染のおそれが解消される。
(3)本発明に係る隔離袋は、袋本体には、医療器具を挿入可能な大きさを有して開口する第3開口孔が形成されており、前記第3開口孔を閉塞した状態に固定する第3フラップを有することを特徴とする。
上記(3)に記載した本発明に係る隔離袋は、袋本体には、医療器具を挿入可能な大きさを有して開口する第3開口孔が形成されており、第3開口孔を閉塞した状態に固定する第3フラップを有する。この構成により、医療従事者の患者への処置が終了した後、第3フラップにより第3開口孔を閉塞して、隔離袋を密閉状態にすることができる。したがって、隔離袋内の空気が陰圧供給装置により吸引されることにより、隔離袋を短時間で収縮させて潰れた状態とすることができる。
(4)本発明に係る隔離装置は、処置台と、該処置台の上に載置される隔離袋と、該隔離袋の閉塞空間内を陰圧状態にする陰圧供給装置とを有する隔離装置であって、前記隔離袋は、透明の樹脂シートによって形成され、立体的に広げた状態で被処置者の頭部を収容可能な大きさの閉塞空間を形成する袋本体と、該袋本体に固定され、前記袋本体を立体的に広げた状態に前記袋本体の形状を保持して前記袋本体を自立させることが可能でかつ立体的に広げた状態から平面状に潰れた状態に前記袋本体の形状を変更可能な可撓性を有する補強部材と、を有し、前記袋本体には、前記被処置者の頭部を前記閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第1開口孔と、処置者の手あるいは腕を前記閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第2開口孔と、前記閉塞空間内を陰圧状態にする陰圧供給装置に接続される接続孔と、が形成されていることを特徴とする。
(5)本発明に係る隔離袋の廃棄方法は、前記隔離袋の閉塞空間内を陰圧状態にする工程と、前記隔離袋の前記第1開口孔と前記第2開口孔を閉塞する工程と、前記陰圧状態により前記隔離袋の形状を立体的に広げられた状態から前記平面状に潰れた状態に変更させる工程と、前記平面状に潰れた状態の前記隔離袋を廃棄する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、患者の治療や検査などの処置を行う際に、医療従事者の2次感染が発生するおそれがなく、処置の際の操作性が良好な隔離袋を提供することができる。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の実施形態に係る隔離袋の斜視図であり、患者が載置された寝台に適用された状態を示す。 本発明の実施形態に係る隔離袋の斜視図であり、図2(a)は、袋本体の対向壁面部側から見た隔離袋の斜視図を示し、図2(b)は、袋本体の壁面部側から見た隔離袋の斜視図を示す。 本発明の実施形態に係る隔離袋の第1フラップの斜視図であり、図3(a)は、第1フラップの分解斜視図を示し、図3(b)は、第1フラップを第1開口孔が形成された壁面部に貼り付ける方法を説明する説明図を示す。 本発明の実施形態に係る隔離袋の第2フラップの斜視図であり、図4(a)は、第2フラップの分解斜視図を示し、図4(b)は、第2フラップを第2開口孔が形成された壁面部に貼り付ける方法を説明する説明図を示す。
本実施形態に係る隔離袋3について図面を参照して説明する。
まず、実施形態に係る隔離袋3が適用される隔離装置10の概略について説明する。
隔離装置10は、図1に示すように、処置台1と、陰圧供給装置2と、隔離袋3とを備えている。隔離装置10は、救急車の車内や病院の救命救急室内に設置されている。
処置台1は、処置を受ける患者(被処置者)が仰向けに横たわることができる大きさを有しており、所定の厚みのある長方形で患者が載置される載置部1aと、所定の高さで載置部1aを支える複数の脚1bとを備え、床などの基盤に移動可能に置かれている。処置台1は、救急車によって搬送される架台と車輪が組み合わされたストレッチャであってもよい。
陰圧供給装置2は、真空ポンプなどのポンプ2aを有している。ポンプ2aは、隔離袋3内の空気を排出し、目的とする陰圧(MPa)の状態、即ち、隔離袋3の閉塞空間の内圧(MPa)を大気圧(MPa)よりも低い状態に保つためのものである。陰圧供給装置2は、ポンプ2aによって隔離袋3内を陰圧にすることで、閉塞空間内で発生したエアロゾルなどの微粒子が各開口孔から隔離袋3の外に排出されることを防止している。つまり、隔離袋3の閉塞空間を陰圧にすることによって、各開口孔を通して隔離袋3の外部から閉塞空間内に空気が吸い込まれている状態とし、各開口孔から外部へのエアロゾルの排出が防止されている。陰圧供給装置2は、陰圧の強さを調整することができ、例えば処置時に選択される弱レベルと、隔離袋3を潰す際に選択される強レベルの少なくとも2段階に調整することができる。
陰圧供給装置2は、隔離袋3内の空気を排出する排出管2bと、排出管2bと隔離袋3との接続部分に設けられたHPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)2cとを備えている。
HPAフィルター2cは、図示しない円盤部と、円盤部の中心から互いに離反する方向に突出した一対のパイプとを有している。HPAフィルター2cは、一方のパイプが吸気口となり、他方のパイプが排気口となっており、隔離袋3内に吸気側が配置され、隔離袋3の接続孔22bから排気口のパイプが突出するように固定される。HPAフィルター2cは、円盤部の片面が隔離袋3の内側面に貼り付けられているフィルター固定用接着テープ4に押し付けられて接続孔22bを密封した状態で固定される。HPAフィルター2cの排気口のパイプは、隔離袋3の外側において、排出管2bに接続される。
HPAフィルター2cは、隔離袋3から吸引した空気中からウィルスや、ゴミ、塵埃などの細かな粒子を取り除き、隔離袋3が置かれた室内の清浄度を保つ機能を有している。
陰圧供給装置2は、図1に示すように、患者の頭部が隔離袋3の閉塞空間内に挿入されて処置がなされ、処置終了により隔離袋3から出されるまでの間など、必要に応じて稼働し、隔離袋3内の陰圧状態を維持する。陰圧供給装置2により隔離袋3内が陰圧状態になっても、後述する各開口孔が隔離袋3に形成されているので、各開口孔に生ずる隙間の部分から外気が閉塞空間内に流入し、過度に陰圧になることはなく、隔離袋3が収縮して閉塞空間が小さくなって、患者の呼吸を妨げることもない。
隔離袋3は、平面状に潰れた状態と立体的に広げた状態に選択的に形状を変更可能な柔軟性を有している。隔離袋3は、図1および図2(a)、図2(b)に示すように、広げた状態で人体の頭部を収容して隔離することができる大きさの閉塞空間を形成する構造を備えており、アーチ状の立体形状を有している。隔離袋3は、袋本体11と、可撓性のある複数の補強部材12A、12Bと、柔軟性を有する第1フラップ13と、第2フラップ14と、第3フラップ15、第4フラップ16とを有している。
補強部材12A、12Bは、袋本体11に固定され、陰圧が掛けられた状態であっても袋本体11を立体的に広げた状態に維持可能、つまり、立体的に広げた状態、即ち自立した状態に袋本体11の形状を保持可能でかつ立体的に広げた状態から平面状に潰れた状態に袋本体11の形状を変更可能な可撓性を有する。補強部材12A、12Bは、本発明に係る隔離袋の可撓性のある複数の補強部材に対応する。
袋本体11は、透明な樹脂シートによって形成され、補強部材12A、12Bによって立体的に広げて自立した状態で患者の頭部を収容して外部から隔離可能な大きさの閉塞空間を形成する。袋本体11は、所定の厚みを有するポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)のシート、いわゆるビニールシートからなり、透明または半透明で柔軟性を有している。
袋本体11は、処置台1の載置部1aに当接した状態で載せられる底壁面部21と、載置部1aから離隔する方向に向かって底壁面部21に対して垂直に折れ曲がり、患者の頭部を挿入する側に位置する壁面部22と、壁面部22と対向して位置する対向壁面部23と、壁面部22と対向壁面部23とをアーチ状に繋ぐアーチ状壁面部24とを有している。
なお、アーチ状壁面部24の断面形状は、アーチ状だけでなく、円弧状、半円状、放物線状またはΩ字形状などの滑らかな曲線を描く形状であってもよい。また、袋本体11は、底壁面部21及びアーチ状壁面部24の代わりに、円筒状に連続した形状の壁面部を有していてもよい。袋本体11は、各壁面部により囲まれた閉塞空間を有する立体形状となる。
袋本体11には、複数の開口孔22a~22b、23a、23b、23c,24aが設けられている。袋本体11の壁面部22には、図2(a)、図2(b)に示すように、底壁面部21の近傍に患者の頭部を閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する開口孔(第1開口孔)22aと、陰圧供給装置2の排出管2bを接続するための開口孔(接続孔)22bが形成されている。本実施例では、開口孔22aは直径φ250mm、開口孔22bはφ30mmの大きさに設定されている。
また、対向壁面部23には、中央部分に位置し、医療従事者(処置者)の手や腕を閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する開口孔(第2開口孔)23a、23bが形成されている。開口孔23aのややななめ右上に開口孔23c(φ40mm)が形成されており、麻酔器からの蛇管を通すことができるようになっている。そして、アーチ状壁面部22の一方端部T1側の壁部には、内視鏡検査器などの医療器具を閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する開口孔24a(φ20mm)が形成されている。また、アーチ状壁面部24の他方端部T2側の壁面には、医療従事者の手や腕を閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する開口孔(第2開口孔)22cが形成されている。なお、開口孔24aは一方端部T1に対向する他方端部T2で底壁面部21の近傍部分に形成されてもよく、開口孔22cは、一方端部T1で底壁面部21の近傍の中央部分に形成されてもよい。本実施形態では、開口孔22c、23a、23bはφ100mmの大きさに設定されている。
これら複数の開口孔22a~22c、23a、23b、23c、24a、は、壁面部22、対向壁面部23、アーチ状壁面部24に設けられており、隔離袋3を載置した状態において底壁面部21よりも高い位置に配置されるように形成されている。したがって、患者が吐血した血や嘔吐した嘔吐物が開口孔から隔離袋3の外部に漏れ出るのを防ぐことができる。特に、接続孔22bは、HPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)接続されており、壁面部21よりも所定高さだけ高い位置に形成されており、患者が吐血した血や嘔吐した嘔吐物によって塞がれるのを防ぐことができる。そして、これら複数の開口孔22a~22c、23a、23b、23c、24a、は、本実施形態では、縦の切り込みと横の切り込みが孔の中心で交差するように、壁面部に十字に切り込みを入れることによって形成されており、円形に開口する孔と比較してより密閉性が保たれるようになっている。また、十字の切り込みの代わりに、円形に開口する孔に、十字のスリットを有する柔らかい透明または半透明のポリ塩化ビニルシートを装着して塞ぐような構成としてもよい。
補強部材12Aは、アルミニウム(Al)などの金属材料やポリエチレン(PE:polyethylene)などのプラスチック材料からなる。補強部材12Aは、所定の厚みおよび幅を有する細長い帯状に形成され、または所定の太さを有する針金を複数平行に並べて扁平状に形成されており、可撓性を有している。補強部材12Aは、片面に粘着剤が塗布されており、位置a1、a2の2か所でアーチ状壁面部24の内側または外側に貼り付けられている。補強部材12Aは、袋本体11のアーチ状壁面部24の両側の縁に沿って全縁に亘ってそれぞれ延在するように位置している。
位置a1は、図2(a)、図2(b)に示すように、アーチ状壁面部24における壁面部22とアーチ状壁面部24とが接続する縁の近傍であり、位置a2は、アーチ状壁面部24における対向壁面部23とアーチ状壁面部24とが接続する縁の近傍である。
補強部材12Bは、補強部材12Aと同様の材料で同様の幅に形成され、補強部材12Aよりも短く形成されており、位置b1、b2、b3、b4の4か所で底壁面部21の内側または外側に貼り付けられている。
位置b1は、位置a1に設けられた補強部材12Aの一方端部T1側の端部に接続する位置であり、位置b2は、位置a2に設けられた補強部材12Aの一方端部T1側の端部に接続する位置であり、位置b3は、位置a1に設けられた補強部材12Aの他方端部T2側の端部に接続する位置であり、位置b4は、位置a2に設けられた補強部材12Aの他方端部T2側の端部に接続する位置である。
各補強部材12A、12Bは、各壁面部に貼り付けられることにより、各壁面部の機械的強度が高まり、隔離袋3の全体の剛性が高まる程度に補強される。各補強部材12A、12Bによって、袋本体11は立体的に広げられた場合に自立した状態を維持することができる程度の剛性を有している。補強部材12A、12Bは、袋本体11が立体的に広げられて底壁面部21が処置台1の上面に接面するように処置台1に載置された場合に、袋本体11を支持して自立した姿勢状態に維持することができる。
第1フラップ13は、壁面部22の開口孔22aを開放した状態から閉塞した状態に固定可能な構成を有している。第1フラップ13は、壁面部22の外側面に設けられ、図3(a)に示すように、蓋本体31と、両面接着テープ32、33とにより構成されている。また、第1フラップ13は、図1に示すように、開口孔22aを開放させた状態で、蓋本体31の端部を患者の胴体や腕の部分に貼り付けることにより、患者に固定する機能を有している。
蓋本体31は、隔離袋3の袋本体11と同じ材質の樹脂シートによって構成されており、例えば、透明または半透明のポリ塩化ビニルからなり、開口孔22aよりも大きな面積を有する方形に形成されている。蓋本体31は、図2(b)に示すように、端部が袋本体11の底壁面部21よりも外側方向に突出するように壁面部22に取り付けられている。
両面接着テープ32は、所定の幅および長さを有する帯状の4枚の接着テープ32aと各接着テープ32aを覆う剥離紙32bとにより構成されている。両面接着テープ32は、蓋本体31の4辺に、それぞれその外形からはみ出さないように貼り付けられている。なお、4枚の接着テープ32aを覆う各剥離紙32bが、互いに重なり合う各端の部分は、剥離紙32bが部分的に折り返され、各接着テープ32aが蓋本体31に貼り付けられる。
両面接着テープ33は、所定の幅および長さを有する帯状のt1、t2、t3、t4からなる4枚の接着テープ33aと各接着テープ33aを覆う剥離紙33bとにより構成されている。両面接着テープ33は、4枚が開口孔22aを囲むようにして壁面部22に貼り付けられる。
両面接着テープ33のt1は、開口孔22aの底壁面部21側に底壁面部21と平行して位置し、t2は、開口孔22aの底壁面部21と離隔する側に底壁面部21と平行して位置する。t3は、底壁面部21に対して垂直方向に延在し、t1、t2の各端部の上側に重なるようにして位置し、t4は、底壁面部21に対して垂直方向に延在し、t3に対向する側で、t1、t2の各他端部の上側に重なるようにして位置する。
蓋本体31は、図3(b)に示すように、開口孔22aの底壁面部21と離隔する側に底壁面部21と平行して位置するR1部分の剥離紙32bが剥離され、接着テープ32aで壁面部22に貼り付けられる。したがって、蓋本体31は、接着テープ32aで壁面部22に貼り付けられたR1部分以外の部分は、壁面部22から離隔しており、蓋本体31で、開口孔22aを開閉することができる。また、蓋本体31は、R1部分に対向する側のR2部分の剥離紙32bを剥離することで、接着テープ32aにより患者の胴体や腕の部分に貼り付けられる。
第1フラップ13により、壁面部22の開口孔22aを塞ぐ際は、患者の胴体や腕の部分に貼り付けられたR2部分を患者から剥がし、図3(a)に示す両面接着テープ32の各剥離紙32bを接着テープ32aから剥離させ、図3(b)に示すように、蓋本体31を、壁面部22に近接する方向に回動させ、蓋本体31の接着テープ32aを壁面部22に当接させ蓋本体31を壁面部22に接着する。これにより、壁面部22の開口孔22aが第1フラップ13により閉塞される。
第2フラップ14は、対向壁面部23の開口孔23bを閉塞した状態に固定可能な構成を有している。第2フラップ14は、対向壁面部23の外側面に設けられ、図4(a)に示すように、蓋本体41と、両面接着テープ42とにより構成されている。蓋本体41は、蓋本体31と同様、隔離袋3の袋本体11と同じ材質の樹脂シートによって構成されており、例えば、透明または半透明のポリ塩化ビニルからなり、開口孔23bよりも大きな面積を有する方形に形成されている。蓋本体41は、その一辺に沿って所定の幅で接着剤が塗布された接着領域41aを有しており、接着剤で袋本体11の対向壁面部23の外側表面の開口孔23bの近傍に接合されるように構成されている。
両面接着テープ42は、蓋本体41の接着領域41aを除いた領域の大きさと同形状に形成され、接着テープ42aと剥離紙42bとにより構成されている。両面接着テープ42は、中央部分に開口孔23bとほぼ同形状で、接着テープ42aおよび剥離紙42bを貫通する貫通孔42cが形成されている。
貫通孔42cを設けることで、第2フラップ14が対向壁面部23に接着され開口孔23bが塞がれた際に、接着テープ42aが露出する面がなくなる。両面接着テープ42は、蓋本体41の接着領域41aを除いた領域全体に接合されるように構成されている。
第2フラップ14により、対向壁面部23の開口孔23bを塞ぐ際は、図4(a)に示すように、まず、両面接着テープ42の剥離紙42bを接着テープ42aから剥離させ、蓋本体41を、接着領域41aを中心として、図4(b)に示すように、蓋本体41が開口孔23bにそれぞれ近接する方向になるように回動させ、蓋本体41の接着テープ42aを対向壁面部23に当接させ蓋本体41を対向壁面部23に接着する。これにより、対向壁面部23の開口孔23aが第2フラップ14により閉塞される。
第2フラップ14により、開口孔23b、23cを塞ぐには、開口孔23aを塞ぐ方法と同様に行われる。また、アーチ状壁面部24に形成された開口孔24aを塞ぐ方法も、開口孔23aおよび開口孔23b、23cと同様の方法で行われる。
第3フラップ15は、図2(b)に示すように、アーチ状壁面部24の外側面に設けられ、第2フラップ14と同様に構成されており、図示しないが、蓋本体と、両面接着テープとにより構成されている。第3フラップ15は、アーチ状壁面部24の開口孔24aを塞ぐ機能を有している。蓋本体は、蓋本体31と同様、隔離袋3の袋本体11と同じ材質の樹脂シートによって構成されており、例えば、透明または半透明のポリ塩化ビニルからなり、開口孔24aよりも大きな面積を有する方形に形成されている。蓋本体は、その一辺に沿って所定の幅で接着剤が塗布された接着領域を有しており接着剤で袋本体11のアーチ状壁面部24の外側表面の開口孔24aの近傍に接合されるように構成されている。
両面接着テープは、蓋本体の接着領域を除いた領域の大きさと同形状に形成され、図示しない接着テープと剥離紙とにより構成されている。両面接着テープは、中央部分に開口孔24aとほぼ同形状で、接着テープおよび剥離紙を貫通する貫通孔が形成されている。両面接着テープは、蓋本体の接着領域を除いた領域全体に接合されるように構成されている。
第3フラップ15により、アーチ状壁面部24の開口孔24aを塞ぐ際は、第2フラップ14と同様、まず、両面接着テープの剥離紙を接着テープから剥離させ、蓋本体を、接着領域を中心として、蓋本体が開口孔24aをそれぞれ近接する方向になるように回動させ、蓋本体の接着テープをアーチ状壁面部24に当接させ蓋本体をアーチ状壁面部24対に接着する。これにより、アーチ状壁面部24の開口孔24aが第3フラップ15により閉塞される。
第4フラップ16は、図2(a)に示すように、壁面部22の外側面に設けられ、第2フラップ14と同様に構成されており、図示しないが、蓋本体と、両面接着テープとにより構成されている。第4フラップ16は、壁面部22の開口孔22cを塞ぐ機能を有している。蓋本体は、蓋本体31と同様、隔離袋3の袋本体11と同じ材質の樹脂シートによって構成されており、例えば、透明または半透明のポリ塩化ビニルからなり、開口孔22cよりも大きな面積を有する方形に形成されている。蓋本体は、その一辺に沿って所定の幅で接着剤が塗布された接着領域を有しており接着剤で袋本体11の壁面部22の外側表面の開口孔22cの近傍に接合されるように構成されている。
両面接着テープは、蓋本体の接着領域を除いた領域の大きさと同形状に形成され、図示しない接着テープと剥離紙とにより構成されている。両面接着テープは、中央部分に開口孔22cとほぼ同形状で、接着テープおよび剥離紙を貫通する貫通孔が形成されている。両面接着テープは、蓋本体の接着領域を除いた領域全体に接合されるように構成されている。
第4フラップ16により、壁面部22の開口孔22cを塞ぐ際は、第2フラップ14と同様、まず、両面接着テープの剥離紙を接着テープから剥離させ、蓋本体を、接着領域を中心として、蓋本体が開口孔22cにそれぞれ近接する方向になるように回動させ、蓋本体の接着テープを壁面部22に当接させ蓋本体を壁面部22に接着する。これにより、壁面部22の開口孔22cが第4フラップ16により閉塞される。
次いで、隔離装置10を使用する方法と、使用後に隔離袋3を廃棄する方法について図面を参照して説明する。
まず、図2に示すように、隔離袋3を立体的に広げる。隔離袋3は、各補強部材12A、12Bによって、袋本体11が立体的に広げられた場合に自立した状態を維持することができる。そして、袋本体11を自立させた状態で、開口孔22bを密封するようにHPAフィルター2cが装着される。そして、排出管2bを介してHPAフィルター2cと陰圧供給装置2とが接続され、陰圧供給装置2から隔離袋3内に陰圧の供給が開始され、隔離袋3内が大気圧よりも気圧が低い陰圧状態にされる。隔離袋3は、開口孔23a、23b、22cが開放されているので、これの開口孔を介して外部から袋本体11の内部に空気が入り込む。したがって、過度の陰圧状態とはならず、立体的に広げられた形状を保つことができる。
そして、処置台1の上に横向きに寝そべらせた患者の頭部が開口孔22aから隔離袋3の中に挿入されるように、隔離袋3を移動させて、図1に示すように、処置台1の上に載置される。そして、第1フラップ13を患者の胴体や腕の部分に貼り付けて固定する。かかる状態でセット完了となり、次いで患者に内視鏡検査器を入れて撮像するなどの患者の処置が行われる。隔離装置10をセットする作業や患者の処置は、例えば医療従事者である医師によって行われる。内視鏡検査が終了すると、内視鏡検査器を患者から抜去して隔離袋3から取り出して回収する作業が行われる。内視鏡検査器は、隔離袋3から取り出される際に医療従事者が消毒用エタノールを染み込ませたガーゼで内視鏡検査器本体を拭きながら取り出し、次亜塩素酸によって再度滅菌して次の患者に使用される。
次に、隔離袋3を廃棄する方法について説明する。隔離袋3を廃棄する方法は、隔離袋3の閉塞空間内を陰圧状態にする工程と、隔離袋3の開口孔22aと開口孔23a、23b、23c、24aを閉塞する工程と、陰圧状態により隔離袋3の形状を立体的に広げられた状態から平面状に潰れた状態に変更させる工程と、平面状に潰れた状態の隔離袋3を廃棄する工程とを含む。
具体的には、隔離袋3が処置台1に載置されている状態で、患者の処置が終了すると、陰圧をかけたまま患者の胴体や腕の部分に貼り付けられた第1フラップ13を患者から剥がす。次いで、患者の頭部が隔離袋3から出される。患者の頭部が隔離袋3から出され、閉塞空間が空になった状態で、図3(a)に示す両面接着テープ32のR1部分以外の各剥離紙32bを接着テープ32aから剥離させ、図3(b)に示すように、蓋本体31を、壁面部22に近接する方向に回動させ、蓋本体31の接着テープ32aを壁面部22に当接させ蓋本体31を壁面部22に接着する。これにより、壁面部22の開口孔22aが第1フラップ13により閉塞される。
続いて、第2フラップ14を用いて開口孔23a、23bがそれぞれ閉塞され、開口孔24aから挿入された器具が取り外され、第3フラップ15によって開口孔24aが閉塞される。次いで、開口孔22cから挿入された器具が取り外され、第4フラップ16によって開口孔22cが閉塞される。第1フラップ13、第2フラップ14、第3フラップ15および第4フラップ16による各開口孔の閉塞の順は同時であってもよく、前後してもよい。
全ての開口孔が閉塞されると、隔離袋3は密閉状態となる。隔離袋3は、陰圧供給装置2により閉塞空間内の空気が吸引されているので、広げられた状態から次第に萎んで潰され、その外形が収縮して小さくなる。隔離袋3の外形が最も小さくなったところで、陰圧供給装置2による空気の吸引が停止される。陰圧供給装置2による空気の吸引が停止されると、陰圧供給装置2の排出管2bと隔離袋3との接続が解除され、排出管2bが隔離袋3から離脱される。次いで、隔離袋3は、その外形が最も小さくなった状態のまま、処置台1から移動され、所定の廃棄場所に廃棄される。
以下、実施形態に係る隔離袋3の効果について説明する。
隔離袋3は陰圧供給装置2との協働により負圧隔離装置を構成する。実施形態に係る隔離袋3は、自立した状態で、人体の頭部を挿入して隔離収容することができる閉塞空間を備えた柔軟性のある透明の隔離袋からなり、患者の頭部を挿入するための開口孔22aと、器具を挿入するための開口孔22c、24aと、医療従事者の手や腕を挿入するための開口孔23a、23b、22cと、陰圧供給装置2に接続される接続孔22bとを備えている。
この構成により、患者の頭部が開口孔22aから閉塞空間内に挿入され、外部から隔離された状態とすることができる。そして、患者の頭部が外部から隔離された状態で開口孔24aから内視鏡検査器、開口孔23cから麻酔器、人工呼吸器などの器具が挿入され、医療従事者の手や腕が開口孔23a、23b、22cから閉塞空間内に挿入され、隔離袋3内で患者の治療や検査などの処置が行われる。実施形態に係る隔離袋3に人体の頭部部分だけを挿入して隔離収容することができるので、比較的に小型で自立した状態で隔離装置10を構成することができるという効果が得られる。実施形態に係る隔離袋3は、小型で自立しているので、吊り下げ構造が不要となり、より小型化され構造が簡単になるという効果が得られる。したがって、麻酔挿管処置や心肺蘇生法(CPR:Cardio Pulmonary Resuscitation)などの救命救急処置に使用することができるという効果が得られる。特に、CPR時の胸骨圧迫は、エアロゾルの拡散が懸念されるが、隔離袋3に人体の頭部が入っていることでエアロゾルの拡散を防止することができるという効果が得られる。
実施形態に係る隔離袋3は、陰圧供給装置2により接続孔22bを介して陰圧(MPa)が閉塞空間内に供給されるので、閉塞空間内が陰圧状態で維持される。閉塞空間内の陰圧が維持されると、患者から飛散するエアロゾルなどの微粒子が隔離袋3の外部に漏出することが阻止され、エアロゾルなどの微粒子による医療従事者の2次感染が防止されるという効果が得られる。また、陰圧供給装置2にはHPAフィルター2cが設けられているので、隔離袋3内の空気中からゴミ、塵埃などの細かな粒子がHPAフィルター2cにより取り除かれ、ポンプ2aから手術室内への細かな粒子の排出が阻止され、手術室などの室内の清浄度を保つことができるという効果が得られる。
実施形態に係る隔離袋3は、透明で柔軟性があるので、隔離袋3の外部から閉塞空間の内部を目視することができ、例えば、内視鏡検査器の挿入時の視野を確保することができ、医療従事者が患者を目視しながら処置が行われるという効果が得られる。また、医療従事者の手や腕が開口孔23a、23b、22cから閉塞空間内に挿入された際に、隔離袋3が柔軟性を有しているので、医療従事者の処置の際に手や腕の動作範囲が拡がり、例えば、麻酔挿管時の器具の操作性が良好となるという効果が得られる。また、開口孔23a、23b、22cから、補助者の手や腕を挿入することができるため、内視鏡検査器や鎮静時の呼吸などを補助する作業がよりスムーズに行われるという効果が得られる。
また、実施形態に係る隔離袋3は、第1フラップ13と、第2フラップ14と、第3フラップ15、第4フラップ16とを有している。この構成により、医療従事者の患者への処置が終了した後、第1フラップ13により開口孔22aが閉塞され、第2フラップ14により開口孔23a、23b、23cが閉塞され、第3フラップ15により開口孔24aが閉塞され、第4フラップ16により開口孔22cが閉塞される。
その結果、隔離袋3は密閉状態となる。密閉された隔離袋3内の空気が陰圧供給装置2により吸引され、隔離袋3が潰れて収縮するので一人の医療従事者で簡単に持ち運びができるという効果が得られる。収縮した隔離袋3の外表面はエアロゾルなどの微粒子の付着がなく、外部環境を汚染することなく全体が所定の廃棄場所に簡単に廃棄される。したがって、隔離袋3の閉塞空間内で、エアロゾルが発生してウィルスが放出されても、医療従事者が被ばくする可能性が極めて少なくなり、医療従事者などへの2次感染のおそれが解消されるという効果が得られる。また、麻酔挿管時に使用した管などの使用済の医療用品を隔離袋3の閉塞空間内に残したまま、隔離袋3と一緒に廃棄することができるという効果が得られる。また、従来のように直方体の枠組みや透明のアクリルボックスが隔離袋3の内部に配置されていないので、枠組みやアクリルボックスを洗浄する手間が省け、洗浄する際の感染リスクを排除することができる。
そして、隔離袋3は、閉塞空間内部に患者の頭部を収容して外部から完全に隔離しているので、処置中に患者が吐血したり嘔吐した場合に、吐血した血や嘔吐した嘔吐物を隔離袋3の閉塞空間内に止めておき、外部に漏れるのを防いだ状態で廃棄することができる。したがって、血や嘔吐物が床面や処置台1にまき散らされることがなく、血や嘔吐物を片付けるときの2次感染を防止できるという効果が得られる。
また、実施形態に係る隔離袋3は、複数の柔軟性のある補強部材12A、12Bを有している。この構成により、複数の補強部材12A、12Bにより隔離袋3が補強され、隔離袋3の閉塞空間がより広く確保され、閉塞空間内部の視認性も高まるという効果が得られる。補強部材12A、12Bは柔軟性を有しているので、陰圧供給装置2により隔離袋3内の空気が吸引され、隔離袋3が収縮する際に、収縮の妨げにならないという効果が得られる。
なお、隔離袋3の有用性について、簡易陰圧ボックスを作製し、効果の確認を行った。まず、事前に、粉塵計、いわゆるパーティクルカウンター(Particle counter)を用いて被検者に超音波ネブライザーによる塩化ナトリウムからなる生理食塩液、いわゆる生食の吸入を5分間行わせて、30秒毎に咳をさせて、簡易陰圧ボックスの外部のエアロゾルと同じ大きさの粒子の発生数を簡易陰圧ボックスの有無で比較した。その結果、簡易陰圧ボックス使用によりエアロゾルと同じ大きさの粒子の発生数は1/5に低下し、簡易陰圧ボックス使用の有用性が確認された。
なお、超音波ネブライザーは、超音波振動子から発生した超音波振動エネルギーが冷却水を通して薬液表面に集中し、振動の作用、いわゆるキャビテーション効果により薬液が霧化されるという機能を有している。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1 処置台、2 陰圧供給装置、3 隔離袋 2a ポンプ、2c HPAフィルター、10 隔離装置、11 袋本体、12A、12B 補強部材、13 第1フラップ、14 第2フラップ、15 第3フラップ、16 第4フラップ、22a、22b、23a、23b、23c、24a 開口孔

Claims (5)

  1. 平面状に潰れた状態と立体的に広げた状態に選択的に形状を変更可能な柔軟性を有する隔離袋であって、
    透明の樹脂シートによって形成され、立体的に広げた状態で被処置者の頭部を収容可能な大きさの閉塞空間を有する袋本体と、
    該袋本体に固定され、前記袋本体を立体的に広げた状態に前記袋本体の形状を保持して前記袋本体を自立させることが可能でかつ立体的に広げた状態から平面状に潰れた状態に前記袋本体の形状を変更可能な可撓性を有する補強部材と、を有し、
    前記袋本体には、
    前記被処置者の頭部を前記閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第1開口孔と、
    処置者の手あるいは腕を前記閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第2開口孔と、
    前記閉塞空間内を陰圧状態にする陰圧供給装置に接続される接続孔と、が形成されていることを特徴とする隔離袋。
  2. 前記第1開口孔を閉塞した状態に固定可能な第1フラップと、
    前記第2開口孔を閉塞した状態に固定可能な第2フラップと
    を有することを特徴とする請求項1に記載の隔離袋。
  3. 前記袋本体には、医療器具を挿入可能な大きさを有して開口する第3開口孔が形成されており、
    該第3開口孔を閉塞した状態に固定する第3フラップを有する
    ことを特徴とする請求項2に記載の隔離袋。
  4. 処置台と、該処置台の上に載置される隔離袋と、該隔離袋の閉塞空間内を陰圧状態にする陰圧供給装置とを有する隔離装置であって、
    前記隔離袋は、
    透明の樹脂シートによって形成され、立体的に広げた状態で被処置者の頭部を収容可能な大きさの閉塞空間を形成する袋本体と、
    該袋本体に固定され、前記袋本体を立体的に広げた状態に前記袋本体の形状を保持して前記袋本体を自立させることが可能でかつ立体的に広げた状態から平面状に潰れた状態に前記袋本体の形状を変更可能な可撓性を有する補強部材と、を有し、
    前記袋本体には、
    前記被処置者の頭部を前記閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第1開口孔と、
    処置者の手あるいは腕を前記閉塞空間内に挿入可能な大きさを有する第2開口孔と、
    前記閉塞空間内を陰圧状態にする陰圧供給装置に接続される接続孔と、が形成されていることを特徴とする隔離装置。
  5. 前記隔離袋の閉塞空間内を陰圧状態にする工程と、
    前記隔離袋の前記第1開口孔と前記第2開口孔を閉塞する工程と、
    前記陰圧状態により前記隔離袋の形状を立体的に広げられた状態から前記平面状に潰れた状態に変更させる工程と、
    前記平面状に潰れた状態の前記隔離袋を廃棄する工程と、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の隔離袋の廃棄方法。
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