JP3243342B2 - 光電子放出物質、光電子放出体及び光電子放出装置 - Google Patents

光電子放出物質、光電子放出体及び光電子放出装置

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JP3243342B2 JP21091093A JP21091093A JP3243342B2 JP 3243342 B2 JP3243342 B2 JP 3243342B2 JP 21091093 A JP21091093 A JP 21091093A JP 21091093 A JP21091093 A JP 21091093A JP 3243342 B2 JP3243342 B2 JP 3243342B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、紫外線等の光を照射し
て電子を放出させるための光電子放出物質、光電子放出
体及び光電子放出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属、その合金、半導体等に光を照射す
ると、光のエネルギを吸収して、その物質中から電子が
放出される場合がある。この電子を光電子といい、この
現象を光電子放出といい、この物質を光電子放出物質と
いう。
【0003】光電子放出物質の具体例は本発明者等によ
って多数提案されている。例えば、特開昭63−549
59号公報によると、一般的に、光電子放出物質は、放
射線または紫外線の照射によって光電子を放出するもの
であれば何でも良く、光電的な仕事関数の小さいもの程
好ましい。そして、このような光電子放出物質の具体例
として、Ba、Sr、Ca、Y、Gd、Au、In、S
n等のいずれかまたはこれらの化合物または合金が使用
可能である。これらは、単独でまたは2種以上を複合し
て用いられ、効果や経済性の面でも比較的優れている。
前記化合物としては、BaO、In2 3 等の酸化物、
YB6 等のほう化物、ZrC等の炭化物がある。
【0004】このような光電子放出物質を用いた装置で
は、例えばガス流中の微粒子や、ウィルス、バクテリヤ
等の微生物等を荷電することができる。光電子放出によ
って荷電された微粒子や、微生物を含んだ前記ガス流
を、ネット状のイオン交換フィルタに通すことによっ
て、荷電された微粒子や微生物を効率良く捕集すること
ができる。従って、前記イオン交換フィルタを通過した
ガス流は、前記微粒子や微生物をほとんど含んでおら
ず、装置(例えばクリーンベンチ)内部の必要な箇所に
上記ガス流を供給することによって、その場所を高い清
浄度に保つことができる。
【0005】また、特開平4−171062号公報によ
ると、前記特開昭63−54959号公報に記載された
物質の他に、U、B、Euまたはこれらの化合物、合金
等も光電子放出物質として使用可能である。
【0006】さらに、特開平5−68875号公報に
は、光電子放出物質として新たにWとその化合物、合金
等が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の従来の
光電子放出物質では、照射光に対する光電子放出の効率
が必ずしも高いとは言えなかった。そこで、本発明は、
照射光に対する光電子放出の効率が十分に高い光電子放
出物質、光電子放出体及び光電子放出装置を提供するこ
とを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を達成するため
に、本発明の光電子放出物質は、酸素が混合されている
Auからなる。
【0009】また、本発明の光電子放出体は、紫外線透
過物質からなる母材と、前記母材の少なくとも一部を除
く表面に形成されており酸素が混合されているAu膜と
を具備する。
【0010】前記光電子放出体において、前記母材の表
面と前記Au膜との間に、前記母材及び前記Au膜に対
して、前記母材に対する前記Au膜の付着力よりも強い
付着力を有する導電性膜を形成するようにしてもよい。
【0011】また、前記母材がガラス材であってもよ
く、あるいは前記導電性膜は、In23 またはSnO
2 を含有する物質の中から選択された1種類以上の物質
から構成されるようにしてもよい。
【0012】さらに、前記母材がガラス材から構成する
と共に、前記導電性膜を、In2 3 またはSnO2
含有する物質の中から選択された1種類以上の物質から
構成することも前記課題の解決手段として有効である。
【0013】また、本発明の光電子放出装置は、紫外線
透過物質からなる母材の少なくとも一部を除く表面に、
酸素が混合されているAu膜が形成されている光電子放
出体と、前記一部から前記母材内へ紫外線を導入し、前
記母材側からこの母材と前記Au膜との界面に紫外線を
入射させる紫外線源とを具備する。
【0014】さらに、本発明の光電子放出装置におい
て、前記母材の表面と前記Au膜との間に、前記母材及
び前記Au膜に対して、前記母材に対する前記Au膜の
付着力よりも強い付着力を有する導電性膜を形成するよ
うにしてもよい。
【0015】
【作用】酸素が混合されているAuは、従来の純粋なA
u等の光電子放出物質よりも高い効率で光電子放出を行
うことが可能である。また、紫外線透過物質からなる母
材と、前記母材の表面に形成され、酸素が混合されてい
るAu膜とから光電子放出体を構成することにより、光
電子放出の効率を向上させることができるだけでなく、
前記Au膜を十分に薄く形成しても機械的な強度が比較
的高いので、取り扱い上好都合である。
【0016】さらに、前記母材の表面と前記Au膜との
間に、前記母材及び前記Au膜に対して、前記母材に対
する前記Au膜の付着力よりも強い付着力を有している
導電性膜を形成すれば、前記母材上における前記Au膜
の電気的な連続性を補強することができると共に、前記
Au膜と前記母材との付着力が向上する。
【0017】また、前記光電子放出装置では、Au膜に
対して紫外線を照射する方向と、前記Au膜が光電子を
放出する方向とが互いに逆なので、これらが同じである
場合に比べて紫外線源を光電子放出体に容易に接近させ
ることができ、紫外線エネルギの利用効率が高い。ま
た、光電子の放出方向に紫外線源が存在しないように構
成することができるので、荷電する微粒子等をAu膜の
近傍へ自由に導入することが可能になり、好都合であ
る。
【0018】なお、前記光電子放出装置において、Au
膜と母材の表面との間に導電性膜を設けた場合には、前
記Au膜と前記母材との付着力が向上するので、装置と
しての機械的な耐久性が向上して取り扱い上好都合であ
るだけでなく、Au膜の電気的な連続性が補強される。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
ながら説明する。
【0020】〔第1実施例〕図1には、紫外線を透過す
る直方体形状の母材10の一面10A上に酸素が混合さ
れているAu薄膜11を形成して成る本発明の第1実施
例に係る光電子放出板12が示されている。母材10が
紫外線を透過するものとしたのは、Au薄膜11に光電
子放出を行わせるための照射光として専ら紫外線が使用
されるためである。Au薄膜11の前記照射光として紫
外線を使用するのは、紫外線以外の波長域の光をAu薄
膜11に照射しても光電子放出量は極端に少なく、例え
ば波長185nm、254nm等にピークを持つ紫外線
をAu薄膜11に照射することによってはじめて多量の
光電子放出を行うことが可能となるためである。
【0021】母材10としては、紫外線を透過させ、そ
の表面及び/又はその近傍に導電性物質及び光電子放出
物質が付加できるものであればよい。このような母材1
0としては、例えば合成石英、サファイアガラス、UV
透過ガラス、ホウ硅酸ガラス等のガラス材、アクリル樹
脂等の高分子材、MgF2 等を用いることが可能であ
り、中でも性能、コスト上の理由からガラス材が好まし
い。
【0022】紫外線照射によって光電子を放出する光電
子放出物質としての、酸素が混合されているAuを、薄
膜状に形成したAu薄膜11の形成方法には特に限定は
ないが、例えばスパッタリング法を用いることができ
る。スパッタリングによって、Au薄膜11が母材10
上に形成される。酸素ガスを含む雰囲気(0.4パスカ
ル(Pa))中でAu薄膜11の成膜を行うことによっ
て、Au薄膜11中に酸素が含有されて後述するように
非晶質状態となる。
【0023】次に、2次イオン質量分析(SIMS)装
置を用いて、10nmの膜厚のAu薄膜11を備えた光
電子放出板12における、矢印X(図1)で示した深さ
方向の各物質の濃度分布にほぼ対応する2次イオン強度
を測定した。
【0024】この結果が、図3(B)に示されている。
比較例として、100%のArガス雰囲気(0.4P
a)中でスパッタ成膜した同じ膜厚のAu薄膜の測定結
果は図3(A)に示した。図3(A)において、純粋な
AuからなるAu薄膜中に(103 に対応する程度の)
酸素と少量のケイ素が分布しているように見えるのは次
のような理由による。
【0025】SIMSの1次イオンビームによるスパッ
タリングの深さは、ビーム断面の中央部で深く周辺部で
浅くなる傾向があり、また実験に用いたAu薄膜の膜厚
が10nmと非常に薄いために、1次イオンビームがA
u薄膜をスパッタリングしているときに、前記中央部は
Au薄膜の下層のガラス基板に到達してしまい、ガラス
基板中に分布する酸素やケイ素が2次イオンとして検出
されるのである。そして前記酸素の2次イオン強度はほ
ぼ103 である。
【0026】この点を考慮すると、見かけ上の酸素の2
次イオン強度の値から前記の103を減算した値が、酸
素に関する2次イオン強度の真の値(その深さにおける
実際の酸素濃度にほぼ対応する値)であると理解するべ
きである。
【0027】図3(A)及び(B)の縦軸は対数目盛り
になっており、100%の酸素ガス雰囲気中で成膜した
Au薄膜11からは前記103 の約10倍の酸素が検出
されたことが分かる。これにより、酸素ガス100%雰
囲気中でAu薄膜11を成膜すると、確実にAu薄膜1
1中に酸素が取り込まれることが明らかとなった。
【0028】さらにAu薄膜11をX線回折法で調べる
と、酸化金(Au2 3 等)の回折ピークは認められな
かったので、Au薄膜11は酸化金ではなく、酸素を含
有(混合)することにより非晶質状態となったAuであ
ることが分かる。
【0029】また、図3(A)を参照すると、Au薄膜
の表面(同図中、横軸の0nmに対応する)付近では酸
素、ケイ素が偏析しているように見えるが、これは前記
に説明したような装置または測定上の理由によるもので
あり、実際にはAu薄膜11の前記表面付近に酸素、ケ
イ素は存在しておらず、したがって前記表面付近でこれ
らの濃度が特に高いということもない。図3(B)につ
いても、Au薄膜11の表面付近で酸素、ケイ素が特に
偏析しているものではないという点は同様である。
【0030】酸素ガス100%雰囲気中で石英ガラス上
に成膜したAu薄膜11に、表面性測定機を用いて、引
っかき試験を行った。ステンレスボール圧子に500g
の加重をかけて行われた引っかき試験ではAu薄膜11
の剥離は起こらず、十分な耐久性を示した。
【0031】他方、雰囲気ガスのArガスとO2 ガスの
比(Ar/O2 )を変化させてそれぞれについて膜厚5
nmのAu薄膜を成膜しておき、このAu薄膜の光電子
放出量(pA)と前記SIMSの2次イオン強度を測定
し、酸素と金の2次イオン強度から両者の2次イオン強
度の比(O/Au)を求めた。これらの結果を次の表1
に示す。
【0032】
【表1】
【0033】ただし、表1において雰囲気ガス比(Ar
/O2 )の単位はSCCMである。また、雰囲気ガス比
(Ar/O2 )50/0は従来の純粋なAuに対応する
比較例であり、本発明の光電子放出物質としては、雰囲
気ガス比(Ar/O2 )が40/10、25/25、0
/50のものが該当し得るが、前記雰囲気ガス比のAr
に対するO2 の割合が25/25以上のものが好まし
い。表1中の2次イオン強度比を算出するための2次イ
オン強度を測定した際の条件を次の表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】表1から分かるように、前記の100%A
rガス雰囲気中で成膜したAu薄膜についての2次イオ
ン強度比(O/Au)に比べて1.70倍程度(≒5.
6/3.3)の酸素量(対Au比)では光電子放出量へ
の影響は少ないが7.6倍(≒25.0/3.3)の酸
素量になると、光電子放出量は1.86倍(≒657/
354)になる。100%の酸素ガス雰囲気中で成膜さ
れたAu薄膜についての酸素量は、100%Arガス雰
囲気中で成膜したAu薄膜についての酸素量の約9.5
倍(≒31.3/3.3)となり、その光電子放出量は
約3.1倍(≒1113/354)となる。
【0036】また、母材10として石英ガラスを用い、
100%の酸素ガス雰囲気(0.4Pa)中でAu薄膜
を10nmの膜厚でスパッタ成膜した光電子放出板12
を用いた場合には、光電子放出量は1052ピコアンペ
ア(pA)となり、Arガス雰囲気(0.4Pa)中で
成膜した従来のAu薄膜と比較して約3.5倍となっ
た。
【0037】Au薄膜中に酸素が取り込まれることによ
って光電子放出量が増加するのは、Au薄膜中に取り込
まれた酸素が、Au原子核の回りの電子の拘束を弱め、
光電子の放出を容易にしているためと考えられる。
【0038】母材10の一面10Aに沿った方向の連続
性が十分であれば、図1に示したように、Au薄膜11
を母材10上に直接に形成したこの第1実施例でも、十
分に効果的な光電子放出が可能である。
【0039】しかしながら、図4に示すように島状であ
って一面10Aに沿って不連続な場合には、十分な光電
子放出効果を得ることができない。これは、光電子放出
板12を応用した多くの装置において、Au薄膜11か
ら放出された光電子によって帯電した微粒子がAu薄膜
11上に補集されるので、Au薄膜11はアースしてお
く必要があり、しかもAu薄膜11の全体に対してアー
スを行うためにはAu薄膜11の全体が電気的に単一性
を有することが必要であるにも拘らず、これが達成され
ていないことによる。
【0040】〔第2実施例〕そこで、本発明の第2実施
例に係る光電子放出板21では、図2に示すように、光
電子放出板12の母材10とAu薄膜11との間に導電
性薄膜20が形成されている。
【0041】Au薄膜11と母材10との間に導電性薄
膜20が形成されていれば、Au薄膜11が、図5に示
すような島状であって一面10Aに沿って不連続になっ
ていても、導電性薄膜20によって島状の各Au薄膜1
1が電気的に接続されている。このため導電性薄膜20
を用いた光電子放出板21では、常に、十分な光電子放
出効果を得ることができる。
【0042】導電性薄膜20は、導電性を有し、酸素を
含むAu薄膜11と共に母材10上に薄膜状に形成でき
る物質であって、電場の存在下において光電子放出物質
に紫外線を照射した場合に光電子放出が効果的に起こる
物質であることを要する。これに加えて、母材10に対
してもAu薄膜11に対しても、母材10に対するAu
薄膜11の付着力よりも強い付着力を有していると共
に、紫外線に対して透明であることが必要である。この
ような物質としては、酸化インジウム(In2 3
系、酸化スズ(SnO2 )系の物質を利用することがで
き、例えばSnをドープしたIn2 3 膜(ITO
膜)、SbをドープしたSnO2 膜等が使用可能であ
る。
【0043】このような導電性薄膜20が設けられてい
るので、Au薄膜11の導体としての単一性が確保され
るだけでなく、付着力が強くなってAu薄膜11の耐久
性が向上する。これによって、従来不可能であったAu
薄膜11の表面11Aの清掃が可能となる。したがっ
て、光電子放出板21を、微粒子を荷電して除去するよ
うな清浄化装置に用いる場合に特に好適である。
【0044】導電性薄膜20が紫外線に対して透明であ
るので、図2に一点鎖線で示した方向のみならず実線で
示した方向から紫外線(UV)を照射した場合でも、紫
外線がAu薄膜11の表面11Aに到達することがで
き、表面11Aから光電子24を支障無く放出すること
ができる。したがって、光電子放出板21を用いた装置
では、設計の自由度が高い。
【0045】この第2実施例において、母材10として
石英ガラスを用い、導電性薄膜20としては、市販され
ている直流マグネトロンスパッタ装置でITO膜を5n
mの膜厚でスパッタリングしたものを用い、Au薄膜1
1としては、雰囲気ガスとしてのArガスと酸素ガスと
が1:1の割合で混合されている雰囲気中で、膜厚5n
mにスパッタ成膜されたAu薄膜を用いるようにしても
よい。この場合、前記ITO膜は、10重量%の酸化す
ずと90重量%の酸化インジウムとを混合して焼結した
ターゲットを、アルゴンと酸素とを1:0.01の割合
で混合した全圧0.4Paのガスでスパッタリングして
成膜する。
【0046】このようにして得られた光電子放出板21
に紫外線を照射し、放出される光電子の量を電流値とし
て検出することによって、光電子の放出量を測定した。
その結果、Arガスのみで成膜した従来のAu薄膜に比
べて1.86倍である657pAの光電子放出量が得ら
れた。また、測定時の電気回路の電界強度を上げること
によって光電子放出量はさらに増大した。
【0047】なお、Au薄膜11の膜厚は5〜15nm
が好ましく、5〜10nmがさらに好ましい。5nm未
満の膜厚にするとAu薄膜11は島状になりやすく、一
方、15nmを越えると、図2に実線で示した方向から
母材10及び導電性薄膜20を介して照射される紫外線
UVがAu薄膜11中で減衰され、場合によってはAu
薄膜11の表面11Aまで到達できなくて光電子放出の
効率がかえって低下する。
【0048】前記のようにAu薄膜11が島状となって
も電気的な連続性を有していれば本発明の実施例と成り
得るが、電気的な特性、機械的な耐久性等の観点から見
て、Au薄膜11は図1及び図2に示したように、厚さ
が均一な膜である方がさらに好ましい。
【0049】〔第3実施例〕本発明の第3実施例に係る
光電子放出装置22では、図6に示すように、母材10
の一面10Aに導電性薄膜20、Au薄膜11を順次に
積層して成る光電子放出板21と、母材10の他面10
Bの近傍に配置され、紫外線UVを他面10Bに照射す
る紫外線ランプ23とを備えている。他面10Bから母
材10内に入射した紫外線UVは、導電性薄膜20を経
てAu薄膜11に入射して光電子24を放出させる。こ
の光電子24の放出によって埃等の微粒子26を荷電す
ることができる。
【0050】この光電子放出装置22では、紫外線UV
を照射する側と光電子24を放出する方向が重複しない
ので、これらが同じである場合に比べて紫外線ランプ2
3を光電子放出板21に容易に接近させることができ、
紫外線エネルギの利用効率が高い。紫外線UVの波長等
の条件が一定であれば、ある一定の光束の変化範囲では
光電子放出量は光束にほぼ比例するので、紫外線エネル
ギの利用効率の向上は光電子放出効果の向上に直結す
る。また光電子24を放出する方向に紫外線ランプ23
等の障害物がないので、微粒子26を含んだ空気等をA
u薄膜11の近傍へ自由に導入することができて好都合
である。
【0051】なお、図6では母材10の一面10Aにの
み導電性薄膜20及びAu薄膜11を被覆するようにし
たが、他の面10C、10D等を含む母材10の6つの
面の全てに導電性薄膜20及びAu薄膜11を被覆する
ことが可能である。この場合、紫外線UVを母材10内
に導入するために、紫外線UVの入射用として何れかの
面の一部に少なくともAu薄膜11を被覆しない領域を
設けておけばよい。また、図6における光電子放出板2
1を光電子放出板12で置換して光電子放出装置を構成
できることは当然である。
【0052】さらに、母材10の形状は上述の直方体に
限らず、用途に応じて種々の変形を行うことができる。
上述のように、Au薄膜11はAu薄膜中の酸素の濃度
を上げることによって光電子放出量を高めることができ
るので、従来のAu等の光電子放出物質に比べて光電子
放出効果を向上することが可能となる。光電子放出効果
が高ければ、微粒子26の荷電効果も向上され、光電子
放出装置22を適用した装置を小型にすることができる
等の様々な利点がある。
【0053】
【発明の効果】以上に詳説したように、本発明の光電子
放出物質によれば、従来の光電子放出物質よりも高い効
率で光電子を放出することができるので、微粒子の荷電
等を効率的に行うことができる。
【0054】また、本発明の光電子放出体によれば、酸
素が混合されているAu膜を母材の少なくとも一部を除
く表面に形成したので、光電子放出の効果が増大され、
微粒子の荷電等の性能のさらなる向上を達成でき、しか
も本発明の光電子放出体を用いる装置の設計の自由度を
高めることが可能となる。このため、微粒子を荷電して
除去するタイプの清浄化装置に本発明を応用した場合、
従来程度の清浄度を従来よりも短時間で実現することが
でき、また従来よりも高い清浄度を容易に達成すること
ができる。
【0055】また、Au膜と母材との間に導電性膜を形
成した場合には、Au膜の全体が導体としての単一性を
確保できると共に、Au膜の耐久性を高めることができ
る。したがって、Au膜が不連続な島状となった場合で
も、Au膜の高い荷電性能を確実に保つことができ、な
おかつ耐久性の向上によって従来では不可能であったA
u膜表面の汚れを清掃によって除去することが可能とな
るため、長期間にわたって高い性能を安定的に発揮する
ことができ、取り扱いが容易となる等の利点がある。
【0056】さらに、本発明の光電子放出装置では、十
分に近い場所から紫外線を光電子放出体に照射すること
が容易となり、紫外線エネルギの利用効率が高く、また
光電子の放出方向に紫外線源が存在しないので、荷電す
る微粒子等をAu膜の近傍へ自由に導入することができ
て荷電効果等の性能を向上することができる。
【0057】また、光電子放出体として、母材表面とA
u膜との間に導電性膜を形成したものを用いた光電子放
出装置においては、Au膜と母材との付着力が向上する
ので、装置としての機械的な耐久性が向上して取り扱い
上好都合であるだけでなく、Au膜の電気的な連続性が
補強され、信頼性も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る光電子放出板を示す
断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る光電子放出板を示す
断面図である。
【図3】光電子放出板の深さ方向における元素の分布を
2次イオン質量分析によって測定した結果のグラフであ
り、(A)(B)は本発明の夫々比較例及び第1実施例
を示している。
【図4】導電性薄膜が無い場合にAu薄膜が島状となっ
た状態を示す断面図である。
【図5】導電性薄膜が有る場合にAu薄膜が島状となっ
た状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る光電子放出装置の概
略図である。
【符号の説明】
10 母材 10A 一面(母材の表面) 10B 他面(母材の表面) 10C、10D 面(母材の表面) 11 Au薄膜(Au膜) 12、21 光電子放出板(光電子放出体) 20 導電性薄膜(導電性膜) 22 光電子放出装置 23 紫外線ランプ(紫外線源) 24 光電子 UV 紫外線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 敏明 神奈川県藤沢市本藤沢四丁目2番1号 株式会社荏原総合研究所内 (72)発明者 鈴木 英友 神奈川県藤沢市本藤沢四丁目2番1号 株式会社荏原総合研究所内 (72)発明者 坂本 和彦 埼玉県浦和市南元宿2丁目4番1号 (56)参考文献 特開 平5−68875(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 1/34

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸素が混合されているAuからなること
    を特徴とする光電子放出物質。
  2. 【請求項2】 紫外線透過物質からなる母材と、 前記母材の少なくとも一部を除く表面に形成されており
    酸素が混合されているAu膜とを具備することを特徴と
    する光電子放出体。
  3. 【請求項3】 前記母材の表面と前記Au膜との間に、
    前記母材及び前記Au膜に対して、前記母材に対する前
    記Au膜の付着力よりも強い付着力を有する導電性膜が
    形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光電
    子放出体。
  4. 【請求項4】 前記母材がガラス材であることを特徴と
    する請求項2または3に記載の光電子放出体。
  5. 【請求項5】 前記導電性膜は、In2 3 またはSn
    2 を含有する物質の中から選択された1種類以上の物
    質から成っていることを特徴とする請求項3に記載の光
    電子放出体。
  6. 【請求項6】 前記母材がガラス材であると共に、前記
    導電性膜は、In23 またはSnO2 を含有する物質
    の中から選択された1種類以上の物質から成っているこ
    とを特徴とする請求項3に記載の光電子放出体。
  7. 【請求項7】 紫外線透過物質からなる母材の少なくと
    も一部を除く表面に、酸素が混合されているAu膜が形
    成されている光電子放出体と、 前記一部から前記母材内へ紫外線を導入し、前記母材側
    からこの母材と前記Au膜との界面に紫外線を入射させ
    る紫外線源とを具備する光電子放出装置。
  8. 【請求項8】 前記母材の表面と前記Au膜との間に、
    前記母材及び前記Au膜に対して、前記母材に対する前
    記Au膜の付着力よりも強い付着力を有する導電性膜が
    形成されていることを特徴とする請求項7に記載の光電
    子放出装置。
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