JP3242349U - 吸収性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】使い捨ておむつ等の吸収性物品を交換する際の作業者の負担を軽減することが可能な吸収性物品を提供すること。【解決手段】本考案の吸収性物品は、肌対向面に配された表面シート2、52、61、非肌対向面に配された裏面シート62及びこれら両シート間に配置された吸収性コア4を具備し、着用者の前後方向に対応する長手方向及び長手方向と直交する幅方向を有し、着用者の腹側に配される腹側部、着用者の背側に配される背側部、及びそれらの間に位置する股下部を有する吸収性物品である。吸収性物品は、2つの当該吸収性物品の少なくとも背側部において、一方の吸収性物品の裏面シートと、他方の吸収性物品の表面シートとの間の、長手方向における静摩擦係数μ11が0.43以下である。【選択図】図3

Description

本考案は、吸収性物品に関する。
一般に、吸収性物品、例えば使い捨ておむつを交換する作業は、作業者にとって大きな負担となる。例えば、使用済みのおむつを交換する際、おむつを着用した着用者と作業台との間におむつの背側部が挟まり、おむつを引き抜くために大きな力が必要になる。特に、おむつ着用者の体重が重いほど、おむつを引き抜くためにより大きな力が必要になる。
また、着用者と作業台との間に、タオル等の布地を敷いて使用済みのおむつを交換する場合、おむつを引き抜いた際に、布地が引き出されてしまったり撓んだりしてしまい、作業台を汚染してしまうおそれがある。
また、おむつを引き抜く際に、着用者の腰部や臀部とおむつが擦れ、皮膚トラブルを発生させるおそれがある。
一方で、着用者の皮膚トラブルを低減するため、滑剤等の油剤を肌対向面に塗布した使い捨ておむつが知られている。例えば、特許文献1には、肌対向面であって、レッグ開口部の周りに滑剤が塗布されたパンツ型の使い捨ておむつが開示されている。また、特許文献2には、肌対向面に、摩擦低減用の油剤が塗布された展開型の使い捨ておむつが開示されている。
また、特許文献3には、おむつの外面側の面(おむつの非肌対向面)の膨らんだ部分が着用者の内股とこすれることに起因した皮膚トラブルを低減させるために、股下部の非肌対向面の一部又は全面に、摩擦低減用の油剤を有する使い捨ておむつが開示されている。
また、特許文献4には、外層シートの表面粗さの平均偏差SMDが3.20μm以下であり、その摩擦係数の平均偏差MMDが0.0085以下である使い捨ておむつが開示されている。
また、特許文献5には、肌対向面側のシートの少なくとも一部に摩擦軽減剤が含有され、摩擦軽減剤を含有する部分の摩擦係数が摩擦軽減剤を含まない部分の摩擦係数に対し40%以下である吸水性物品が開示されている。
また、特許文献6には、メカニカルファスナーのフックテープ又は粘着剤層からなる固定部と接触する被覆シートの面の動摩擦係数が、0.85以上である使い捨ておむつが開示されている。
特開2006-271421号公報 特開2004-305598号公報 特開2010-131081号公報 特開2016-005545号公報 特許第6063236号公報 特許第5420995号公報
使用済みおむつの交換に際して、使用済みおむつを着用した着用者と作業台との間に未使用のおむつを展開して配置し、使用済みのおむつを引き抜き、着用者が未使用のおむつを着用することがある。このようにおむつを交換する場合、使用済みのおむつを引き抜いた際に、未使用のおむつも引き出されてしまい、作業効率の低下を招くおそれがある。また、特許文献1~6には、使用済みおむつの交換の際の作業効率の向上を目的として、当該使用済みおむつと、当該未使用のおむつとの間の摩擦を軽減し得る技術、例えば、おむつの背側部の非肌対向面に対して油剤を塗布する等の技術は開示されていない。
本考案の目的は、使い捨ておむつ等の吸収性物品を交換する際の作業者の負担を軽減することが可能な使い捨ておむつを提供することにある。
本考案は、肌対向面に配された表面シート、非肌対向面に配された裏面シート及びこれら両シート間に配置された吸収性コアを具備し、着用者の前後方向に対応する長手方向及び長手方向と直交する幅方向を有し、着用者の腹側に配される腹側部、着用者の背側に配される背側部、及びそれらの間に位置する股下部を有する吸収性物品であって、吸収性物品は、2つの当該吸収性物品の少なくとも背側部において、一方の吸収性物品の裏面シートと、他方の吸収性物品の表面シートとの間の、長手方向における静摩擦係数μ11が0.43以下である吸収性物品を提供するものである。
本考案の吸収性物品によれば、使い捨ておむつ等の吸収性物品を交換する際の作業者の負担を軽減することが可能となる。
図1は、本考案の一実施形態である展開型使い捨ておむつの伸張した状態を示す非肌対向面の平面図である。 図2は、本考案の一実施形態である展開型使い捨ておむつの伸張した状態を示す肌対向面の平面図である。 図3は、図1のX1-X1線断面図である。 図4は、おむつ1を交換する一手法を説明するための図である。 図5は、引張試験機を用いた静摩擦係数μ11の測定法を示す模式図である。
以下、本考案の吸収性物品である展開型使い捨ておむつの好ましい一実施形態について、図1~図4に基づいて説明する。
展開型使い捨ておむつ1(以下、単に「おむつ1」ともいう。)は、図1に示すように、背側部Aと腹側部Bと股下部Cとを有している。なお、図1は、おむつ1の非肌対向面Oを図示している。図2は、おむつ1の肌対向面Iを図示している。図3は、図1のX1-X1線断面図である。本明細書において、「肌対向面I」とは、おむつ1を着用した着用者の肌側を向くおむつ1の面であり、「非肌対向面O」とは、着用者の肌側とは反対側(着衣側)を向くおむつ1の面である。
おむつ1は、図1、図2に示すように、中心線CLに対して左右対称に形成されている。従って以下の説明では、左右対称な部分については、主に、右側について説明する。
おむつ1は、図1~図3に示すように、液透過性の第1シート2、液不透過性の第2シート3、及び、これらシート2、3間に配された吸収性コア4を有する吸収性本体5と、第3シート61及び第4シート62を有する外包材6とを備えている。外包材6は、図3に示すように、第3シート61を吸収性本体5の非肌対向面Oに配して固定されている。おむつ1の外包材6は、その長手方向(以下「Y方向」という。Y方向:中心線CLに平行な方向をいう。)に、背側部A、腹側部B及び股下部Cを有している。
外包材6は、図1に示すように、その両側縁が、長手方向(Y方向)の中央部において内方に括れた形状の括れ部6d、6dを有しており、長手方向(Y方向)の両端部の幅が、長手方向(Y方向)中央部の幅よりも広くなっている。一対の括れ部6d、6dは、一対の着用者の脚回りに配される部位である。
ここで、股下部Cとは、着用者の股間部に配される部位であり、図1に示すように、一対の括れ部6d、6dに挟まれた領域を示す。背側部Aとは、おむつ1の着用時に、着用者の背側に配される部位であり、腹側部Bとは、着用者の腹側に配される部位である。背側部A及び腹側部Bとは、図1に示すように、股下部Cから長手方向(Y方向)前後方向に延在する領域を示す。図1に示すように、背側部A、腹側部B及び股下部Cは、吸収性物品を展開した状態で、長手方向に三等分した部位である。
外包材6は、図1~3に示すように、おむつ1の外面をなす第4シート62、第4シート62の内面側に配されている第3シート61、及び、両シート61、62間に配設固定された複数本のウエスト部弾性部材63及びレッグギャザー形成用の複数本のレッグ部弾性部材64から形成されている。第4シート62と第3シート61とは、同形同大である。複数本のウエスト部弾性部材63は、背側部A及び腹側部Bに設けられており、各ウエスト部弾性部材63は、伸長状態で、幅方向(X方向)に配設固定されている。幅方向(X方向)は、例えば長手方向(Y方向)に対して直交している。複数本のレッグ部弾性部材64は、図1に示すように、着用者の脚回りに配される部位である、一対の括れ部6d、6dに沿って配されている。各レッグ部弾性部材64は、伸長状態で、配設固定されている。
背側部Aの左右両側には、連設された左右一対のファスニングテープ8、8が設けられている。腹側部Bの外面には、ファスニングテープ8を止着するターゲットテープ9が設けられている。
吸収性本体5は、図3に示すように、液透過性の第1シート2、液不透過性(撥水性も含む)の第2シート3、及び、両シート2、3間に介在された液保持性の吸収性コア4を有しており、実質的に縦長である。吸収性本体5は、図1、図2に示すように、外包材6の背側部Aから腹側部Bに跨って配設されており、吸収性本体5の長手方向(Y方向)両端部は、外包材6の長手方向(Y方向)両端部よりも長手方向(Y方向)内方に後退した位置にある。吸収性本体5は、図3に示すように、吸収性本体5の第2シート3の非肌対向面が、接着剤、ヒートシール、超音波シール等による接合法によって外包材6の第3シート61の肌対向面側に接合されている。
吸収性本体5の長手方向(Y方向)両側部には、図3に示すように、液不透過性又は撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス51、51が設けられている。各側方カフス51の自由端部近傍には、側方カフス形成用の弾性部材52が伸長状態で配設固定されている。側方カフス51は、おむつの着用時に自由端部側が起立し、吸収性本体5の幅方向(X方向)への排泄物の流出を阻止することができる。側方カフス51形成用シートは、図3に示すように、吸収性本体5の幅方向(X方向)外方の所定幅の部分51aが、吸収性コア4の非肌対向面側に巻き込まれて、吸収性コア4と第2シート3との間に固定されている。尚、所定幅の部分51aが、第2シート3と外包材6との間に固定されていてもよい。
図1、図3に示すように、第4シート62は、おむつ1を着用する着用者から最も離れている。第4シート62の第3シート61とは反対側の面は、おむつ1の非肌対向面Oに相当する。図2、図3に示すように、第1シート2、側方カフス形成用の弾性部材52、及び、第3シート61のそれぞれの第4シート62とは反対側の面は、おむつ1の肌対向面Iに相当する。
ここで、おむつ1の非肌対向面Оに配されるシートを総称して裏面シートと称する。すなわち、図1、図3に示すおむつ1では、第4シートが、裏面シートを構成している。おむつ1の肌対向面Iに配されるシートを総称して、表面シートと称する。すなわち、図2、図3に示すおむつ1では、第1シート2と、側方カフス形成用の弾性部材52、及び第3シート61の一部が、表面シートを構成している。このように、表面シート及び裏面シートは、それぞれ1枚のシートで構成されていてもよく、複数のシートが組み合わされて構成されていてもよい。また、おむつ1は、表面シート及び裏面シート間に配置された吸収性コア4を有するが、表面シート及び裏面シートを構成する複数のシートの全てにおいて、両シート間に吸収性コア4が配置されていなくてもよく、それら複数のシートの一部において、両シート間に吸収性コア4が配置されていればよい。
背側部Aは、非肌対向面AOを有している。非肌対向面AOは、図1に斜線で示した領域全体に相当し、上述の非肌対向面Oに含まれる。一例では、非肌対向面AOは、背側部Aにおいて、中心線CLに対して左右対称な領域であり、幅方向(X方向)に、吸収性本体5と同等の幅を有している。背側部Aの非肌対向面AOは、例えば、ウエスト部弾性部材63と重畳する部位の非肌対向面AO1、吸収性本体5と重畳する部位のうち、ウエスト部弾性部材63に近接する部位の非肌対向面AO2、及びウエスト部弾性部材63の吸収性本体5と重畳する部位と、吸収性本体と重畳する部位との間の非肌対向面AO3とを有する。
背側部Aは、肌対向面AIを有している。肌対向面AIは、図2に斜線で示した領域全体に相当し、上述の肌対向面Iに含まれる。一例では、肌対向面AIは、背側部Aにおいて、中心線CLに対して左右対称な領域であり、幅方向(X方向)に、吸収性本体5と同等の幅を有している。肌対向面AIは、2枚の展開型使い捨ておむつ1をそれぞれ伸長した状態で重ね合せた際に、非肌対向面AOと接触する領域である。
本実施形態では、2つのおむつ1の少なくとも背側部Aにおいて、一方のおむつ1の裏面シートと、他方のおむつ1の表面シートとの間の静摩擦係数μ11が0.43以下である。静摩擦係数μ11は、0.20~0.43であることが好ましく、より好ましくは0.20~0.41であり、更に好ましくは0.20~0.38である。静摩擦係数μ11の詳細な測定方法については、後述する。
上記静摩擦係数μ11の値を実現するため、おむつ1においては、例えば、背側部Aの肌対向面AI及び/又は背側部Aの非肌対向面AOの一部又は全面に対して、摩擦低減処理及び/又は表面粗さ低減処理が施される。
おむつ1では、図1に示すように、背側部Aの非肌対向面AOの全面(図1に斜線で示した領域全体)に摩擦低減処理として、摩擦低減用の油剤7が塗布されている。具体的には、おむつ1Aにおいては、油剤7が、最外層シートである第4シート62の背側部Aの非肌対向面AOの全面に塗布されている。
おむつ1においては、更に、油剤7が塗布されている部分7dに、表面粗さを低減する処理が施されている。具体的には、おむつ1においては、第4シート62の非肌対向面における、油剤7の塗布された部分に、圧縮による加工を施し、第4シート62の非肌対向面の表面粗さを低減している。
そのため、おむつ1においては、油剤7が塗布されている部分7dの摩擦及び表面粗さが、腹側部B又は股下部Cの非肌対向面Oの摩擦及び表面粗さに対して低減されている。なお、おむつ1において、油剤が塗布される部分はこれに限定されず、例えば、股下部Cの非肌対向面AOのうち、背側部Aに近接する部位にも塗布されていてもよい。
本実施形態のおむつ1の形成材料について説明する。
第1シート2、第2シート3、側方カフス51形成用シート、第3シート61及び第4シート62としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、第1シート2としては、液透過性の不織布や、開孔フィルム、これらの積層体等を用いることができ、第2シート3としては、樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。側方カフス51形成用シートとしては、伸縮性のフィルム、不織布、織物又はそれらの積層シート等を用いることができる。第3シート61及び第4シート62としては、撥水性の不織布等を用いることができる。
ここで、裏面シート(例えば、第4シート62)の圧縮仕事量WCaに対する表面シート(例えば、第1シート2)の圧縮仕事量WCbの比(すなわち、WCb/WCa)は、2.0~12.0であることが好ましく、より好ましくは5.0~10.0、更に好ましくは6.5~8.5である。圧縮仕事量WCとは、シートの圧縮されやすさを表す値である。一般的に、圧縮仕事量WCが大きいシートほど、着用者の肌に触れたとき柔らかさを感じさせるが、当該シートの表面における摩擦が大きくなる傾向がある。このようにすれば、着用者の肌に触れる表面シート(例えば第1シート)の風合いを損なうことなく、表面シート(例えば第1シート)と裏面シート(例えば第4シート)との間の摩擦を低減し、使用後のおむつの引き出し性を向上することができる。圧縮仕事量WCは、例えば、圧縮試験機であるカトーテック株式会社製のKES-FB3(商品名)を用いて測定できる。
吸収性コア4としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、吸収性コア4としては、パルプ等の繊維材料の繊維集合体又はこれに高吸収性ポリマーを担持させたものを、ティッシュペーパーや透水性の不織布等の被覆材で包んでなるもの等を用いることができる。
側方カフス形成用の弾性部材52、ウエスト部弾性部材63及びレッグ部弾性部材64としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、天然ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン-ポリイソプレン共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン共重合体、アクリル酸エチル-エチレン等のポリエチレン-αオレフィン共重合体等からなる伸縮性の材料等を用いることができる。
背側部Aの非肌対向面AOに塗布される油剤7の成分としては、例えば、流動パラフィン、シリコーンオイル、動植物油(オリーブ油、ホホバ油、ベニバナ油、スクワラン及びスクワレン等)、モノ、ジ、トリグリセライド、脂肪族エーテル(ミリスチル-1,3-ジメチルブチルエーテル、パルミチル-1,3-ジメチルビチルエーテル、ステアリル-1,3-ジメチルブチルエーテル、パルミチル-1,3-メチルプロピルエーテル及びステアリル-1,3-メチルプロピルエーテル等)、イソステアリル-コレステロールエステル等を用いることができ、特にシリコーンオイルが摩擦低減、肌への低刺激の点から好ましい。中でもアミノ基を含む変性シリコーンオイルが摩擦低減の点から最も好ましい。
油剤7の塗布方法としては、スロットコーティング、ダイコーティング、ビード状コーティング、スパイラルコーティング、グラビアコーティング等の公知の塗布方法を用いることができる。油剤は、油剤又は油剤を含有する塗布液として塗布することができる。油剤7の塗布量(乾燥後の塗布量)は、1~50g/m、特に、5~15g/m程度であることが、摩擦低減効果と肌触りの良好さの両立の観点から好ましい。
ファスニングテープ8としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、「マジックテープ(登録商標)」(クラレ社製)等を用いることができる。ターゲットテープ9としては、ファスニングテープ8のフック材と係合可能なループ材(メス部材)を特に制限なく用いることができる。
次に、上述したおむつ1を使用した際の作用効果について説明する。
図4は、おむつ1を交換する一手法を説明するための図である。使用済みのおむつ1の交換に際して、作業者は、展開された未使用のおむつ1を、着用者Hが着用したおむつ1と作業台Tとの間に挿入する。以下、着用者Hが着用したおむつ1を1Aと呼び、未使用のおむつ1を1Bと呼ぶ。
作業者は、おむつ1Aのファスニングテープ8をターゲットテープ9から離脱させた後に、おむつ1Aを引き抜くことになる。このとき、おむつ1Aとおむつ1Bの滑りが悪いと、おむつ1Aとともに、おむつ1Bも引き出されてしまうことがある。この場合、作業者はおむつ1Bを着用者Hの臀部の下方に再度挿入する必要があり、作業効率が悪化する。また、おむつ1Aとおむつ1Bの滑りが悪いと、おむつ1Bをおむつ1Aと作業台Tの間に挿入する作業も円滑に行えない可能性がある。図4の状態においては、おむつ1Aの背側部Aの非肌対向面Oとおむつ1Bの背側部Aの肌対向面Iとが特に大きな力で押し当てられる。
そこで、本実施形態においては、おむつ1の非肌対向面Oに配される裏面シートと肌対向面Iに配される表面シートの静摩擦係数μ11、μ12及びμ13を好適に定めることにより、おむつ1の交換時における作業性を改善する。
本実施形態では、2つのおむつ1の少なくとも背側部Aにおいて、一方のおむつ1Aの裏面シートと、他方のおむつ1Bの表面シートとの間の静摩擦係数μ11が0.43以下である。このような範囲の静摩擦係数μ11であれば、おむつ1Aをおむつ1Bに対し長手方向(Y方向)にスライドさせるとき、おむつ1Aを滑らかに引き抜くことができ、おむつ1の交換時における作業性を改善することができる。また、おむつ1Bをおむつ1Aと作業台Tの間に挿入する作業も容易となる。
2つのおむつ1の少なくとも背側部Aにおいて、一方のおむつ1Aの裏面シートと、他方のおむつ1Bの表面シートとの間の、幅方向(X方向)における静摩擦係数μ12が、前記長手方向における静摩擦係数μ11よりも大きくてもよい(μ11<μ12)。このようにすれば、おむつ1Aとおむつ1Bとが幅方向(X方向)にずれにくくなる。静摩擦係数μ12は、静摩擦係数μ11よりも0.05以上大きいことが好ましく、より好ましくは0.10以上大きい。
2つのおむつ1の腹側部Bにおける、一方のおむつ1Aの裏面シートと他方のおむつ1Bの表面シートとの間の静摩擦係数μ13が、静摩擦係数μ11より大きくてもよい(μ11<μ13)。このようにすれば、使用済みおむつ1の交換に際して、作業者はおむつ1Aの腹側部Bを掴んで引き抜くため、作業者の手がおむつ1Aを掴む手が滑りにくくなり、おむつ1の交換時における作業性を改善することができる。静摩擦係数μ13は、静摩擦係数μ11よりも0.02以上大きいことが好ましく、より好ましくは0.05以上大きい。
静摩擦係数μ11、μ12及びμ13は、以下の方法で測定できる。
<静摩擦係数μ11の測定法>
図5は、引張試験機を用いた静摩擦係数μ11の測定法を示す模式図である。測定は、引張試験機である株式会社島津製作所製のオートグラフAG-X(商品名)を用いて測定できる。
具体的な測定は、以下(1)~(5)のように行う。
(1)同一の構成を有する2枚の吸収性物品(図5におけるおむつ1a及びおむつ1b)を測定サンプルとして準備する。次に、一方の吸収性物品(おむつ1b)を展開した状態で平滑な金属平面の測定台に、非肌対向面Oが接するように取り付ける。すなわち、おむつ1bは、おむつ1bの肌対向面Iが上を向いた状態で測定台に固定する。
(2)次に、おむつ1bの肌対向面I上に、平面視において位置を合わせて、展開した状態の他方の吸収性物品(おむつ1a)を互いに重ね合わせて載置する。このとき、おむつ1bの背側部Aの肌対向面Iと、おむつ1aの背側部Aの非肌対向面Oとが接触した状態になる。
(3)次に、おむつ1aの背側部Aの肌対向面I上であって、その幅方向及び長手方向において中央の位置に重さ590gの円柱状のおもり(直径45mm)を両面テープにて固定する。おもりは、使用済みのおむつの交換の際に、着用者の臀部が使用済みのおむつに対して与える圧力を模して、3.7kPaの圧力をおむつ1a及びおむつ1bに与える。例えば、着用者が新生児、乳児又は幼児である場合、図4のように着用者と作業台とに挟まれた2枚おむつには、2kPa~5kPaの圧力が加わる。
(4)次に、おむつ1aをその肌対向面Iを内側にして、おむつ1aの腹側部Bが上になるように長手方向に二等分に折り返し、その折り返し部分の非肌対向面Oの幅方向において中央の位置にクリップ(コクヨ株式会社製、ダブルクリップ クリ-33(商品名))を挟む。ポリエチレン製の索引用の糸の一端をロードセルに固定し、その一端を滑車に通しておむつ1aに取り付けたクリップに接続する。
(5)次に、ロードセルを300mm/minの速度で上昇させておむつ1aを水平方向へ引張り、おむつ1aが移動し始める瞬間の摩擦力を最大静摩擦係数(Fμs)とし、静摩擦係数(μ11)をμ11=Fμs(最大静摩擦力{gf})/Fn(おもりによる垂直荷重{gf}+おむつ1aの自重による垂直荷重{gf})で測定する。おむつ1aの引張方向は、おむつ1a及びおむつ1bの長手方向とする。
<静摩擦係数μ12の測定法>
静摩擦係数μ12は、静摩擦係数μ11の測定法の(4)において、クリップを挟む位置を長手方向に二等分に折り返したおむつ1aの長手方向において中央の位置にすること、及び、(5)において、おむつ1aの引張方向を、おむつ1a及びおむつ1bの幅方向とすること以外は、長手方向の静摩擦係数μ11と同様の方法で測定する。
<静摩擦係数μ13の測定法>
静摩擦係数μ13は、上記長手方向の静摩擦係数μ11の測定法の(3)において、おもりを固定する位置を、おむつ1aの腹側部Bの肌対向面I上であって、その幅方向及び長手方向において中央の位置にすること、及び、(4)において、おむつ1aを長手方向に二等分に折り返すとき、その肌対向面Iを内側にして、おむつ1aの背側部Aが上になるように折り返すこと以外は、長手方向の静摩擦係数μ11と同様の方法で測定する。
(実施例及び比較例)
以下、本考案の実施例及び比較例について説明する。
実施例、比較例1及び比較例2に係る測定サンプルとなる2枚の使い捨ておむつ(おむつ1a及びおむつ1b)を用いて、静摩擦係数μ11、μ12及びμ13の測定、おむつ交換時の差し込み性・引き出し性の評価、並びに、表面シート及び裏面シートの圧縮仕事量WCb及びWCaの測定を行った。静摩擦係数μ11、μ12及びμ13は、測定サンプルとなる2枚の使い捨ておむつ(おむつ1a及びおむつ1b)を、おむつ1bの表面シートとおむつ1aの裏面シートが当接するように、それぞれ上記測定法に従って5回測定した。静摩擦係数μ11及びμ12のその平均値を下記表1に示した。また、静摩擦係数μ11及びμ13の平均値から、静摩擦係数の差(μ13-μ11)を算出し、その結果を下記表1に示した。おむつ交換時の差し込み性・引き出し性の評価、並びに、表面シート及び裏面シートの圧縮仕事量WCb及びWCaの測定の方法については後述する。
実施例に係る測定サンプルとなる2枚の使い捨ておむつ(おむつ1a及びおむつ1b)としては、展開型の使い捨ておむつの非肌対向面の特定の領域に摩擦低減用の油剤であるシリコーンを100mg(12.5g/m)塗布後、乾燥したものを用いた。実施例に係る測定サンプルには、表面シート、裏面シート、及び吸収体として以下のものを用いた展開型の使い捨ておむつ(重量23g)を2枚用いた。なお、測定サンプルの他の構成は、図1~3に示す実施形態に係る吸収性物品と同様である。表面シートには、芯成分がポリエチレンテレフタレート(PET)であり、鞘成分がポリエチレン(PE)である芯鞘構造を有し、繊維径が16μmである繊維からなる、エアスルー法により作製された坪量24g/mの不織布を使用した。裏面シートには、ポリプロピレン(PP)を主成分とし、繊維径が14μmである繊維からなる、スパンボンド法により作製された坪量21g/mの不織布を使用した。吸収体には、パルプと高吸収性ポリマーの混合体(坪量360g/m)を使用した。
シリコーンとしては、信越化学工業株式会社製のKF-96-100CS(商品名)を用いた。シリコーンは、展開した未使用の使い捨ておむつの外包材の裏面シートが配される非肌対向面において、長手方向に2等分する中心線から背側部を有する方向に100mm、幅方向に2等分する中心線から幅方向にそれぞれ40mmの領域(縦×横:100mm×80mm)に塗布した。
当該シリコーンの塗布は、以下の手順で行った。まず、PETフィルム(スターO.H.Pフィルム(商品名)、株式会社スター商事製)(縦×横:100mm×80mm)の全面に対して筆を用いて、シリコーンを塗布した。次いで、展開した未使用の上記使い捨ておむつの非肌対向面上の上記領域に対して、シリコーンが塗布された面を下にして、当該PETフィルムを載置した。次に、PETフィルム上から、1kgのローラを5往復させ、PETフィルムに塗布されたシリコーンを上記使い捨ておむつの非肌対向面上の上記領域に転写した。このとき、シリコーンを塗布した直後のPETフィルムの重量から、シリコーン転写後のPETフィルムの重量を引いた値を、シリコーンの乾燥前の塗布量とした。なお、シリコーンの乾燥後の塗布量は、7.8g/m2である。
比較例2に係る測定サンプルとなる2枚の使い捨ておむつ(おむつ1a及びおむつ1b)としては、上記実施例に係る展開型の使い捨ておむつの裏面シートのみを変更したものを使用した。当該裏面シートは、芯成分がポリエチレンテレフタレート(PET)であり、鞘成分がポリエチレン(PE)である芯鞘構造を有し、繊維径が12μmである繊維からなる、エアスルー法により作製された坪量24g/mの不織布を使用した。
<おむつ交換時の差し込み性・引き出し性の評価>
実施例1、比較例1及び比較例2に係る測定サンプル(おむつ1a及びおむつ1b)を使用して、5名のパネルによって、乳幼児モデルへの使い捨ておむつの交換を行ってもらい、使い捨ておむつを交換する際の作業者の負担(差し込み性及び引き出し性)の評価を行った。乳幼児モデルとしては、Sサイズの使い捨ておむつ着用乳幼児の平均寸法を模した太もも~胸部までのモデル(重量2.5kg)を用いた。この評価については、図4を用いて説明する。この測定では、測定サンプルとなるおむつ1a及びおむつ1bが、それぞれ図4におけるおむつ1A及びおむつ1Bに対応するように使用した。
初めに、使い捨ておむつ1Aを着用した着用者Hである乳幼児モデルを、タオルケットを敷いた台の上に使い捨ておむつ1Aの背側部Aの非肌対向面Oが接するように仰向けの状態で載置する。次に、作業者であるパネルが、展開した使い捨ておむつ1Bの背側部Aを、着用者Hが着用したおむつ1Aの背側部Aと、タオルケットとの間に股下部側から長手方向に沿って差し込む。この差し込み作業では、おむつ1Bの背側部Aの肌対向面Iとおむつ1Aの背側部Aの非肌対向面Oとが接する向きで、おむつ1Bを差し込む。また、この差し込み作業では、平面視における各おむつ1A及び1Bの位置が一致するまで(すなわち、各おむつ1A及び1Bの長手方向における背側部A側の端部が一致する位置まで)、おむつ1Bを差し込む。続いて、作業者であるパネルは、おむつ1Aのファスニングテープを離脱させた後、おむつ1Aの腹側部Bを掴み、おむつ1Aを長手方向に沿って乳幼児モデルの臀部の下から引き出す。
使い捨ておむつの差し込み性は、上記差し込み作業の際、5名のパネルが、差し込み性がとても良い(おむつ1Bを差し込む際、おむつ1Aに引っ掛かることなくスムーズに差し込める)と感じた場合は「2」、差し込み性がやや良いと感じた場合は「1」、差し込み性がどちらともいえないと感じた場合は「0」、差し込み性がやや良くないと感じた場合は「-1」、差し込み性は良くない(おむつ1Bを差し込む際、おむつ1Aに引っ掛かりスムーズに差し込めない)と感じた場合は「-2」という5段階の数値で評価し、その数値を平均した値である。その結果を下記表1に示した。
使い捨ておむつの引き出し性は、上記引き抜き作業の際、5名のパネルが、引き出し性がとても良い(おむつ1Aを引き出す際、おむつ1Bがずれない)と感じた場合は「2」、引き出し性がやや良いと感じた場合は「1」、引き出し性がどちらともいえないと感じた場合は「0」、引き出し性がやや良くないと感じた場合は「-1」、引き出し性は良くない(おむつ1Aを引き出す際、おむつ1Bも引き出される)と感じた場合は「-2」という5段階の数値で評価し、その値を平均した値である。その結果を下記表1に示した。
<表面シート及び裏面シートの圧縮仕事量WCb及びWCaの測定法>
実施例1、比較例1及び比較例2に係る測定サンプルとなる2枚の使い捨ておむつ(おむつ1a及びおむつ1b)から、おむつ1bの背側部の表面シート、及びおむつ1aの背側部の裏面シートを、コールドスプレーを用いて引き剥がした。次いで、引き剥がした各シートは、アクリル板上に皺を伸ばした状態で、温度23℃、相対湿度50%の環境下で12時間静置した。
次いで、このように調整を行った各シートを用いて、圧縮試験機であるカトーテック株式会社製のKES-FB3(商品名)を用いて圧縮仕事量WCを測定した。まず、各シートから7cm×7cmの試験片を切り出し、試験台に取り付けた。次に、その試験片を面積2cm2の円形平面を有する鋼板間で圧縮した。圧縮速度は、20μm/sec、圧縮最大荷重4.9kPaとした。回復過程も同一速度で測定を行った。圧縮仕事量WCの測定は、各試験片について、3箇所で測定を行い、各シートについて3回測定を行った。ここで、おむつ1aの裏面シートの圧縮仕事量をWCaとし、おむつ1bの表面シートの圧縮仕事量をWCbとして、この合計9点の測定結果の平均値を下記表1に示した。また、圧縮仕事量の比(WCb/WCa)を算出し、その結果を下記表1に示した。
実施例、比較例1及び比較例2に係る静摩擦係数(μ11及びμ12)、静摩擦係数の差(μ13-μ11)、おむつの交換時の差し込み性、おむつの交換時の引き出し性、おむつ1aの裏面シートの圧縮仕事量WCa、おむつ1bの表面シートの圧縮仕事量WCb及びWCb/WCaの測定結果を表1に示す。
Figure 0003242349000002
実施例に係る測定サンプルでは、静摩擦係数μ11は0.43以下であるため、比較例1及び2に係る測定サンプルと比較して、おむつ交換時の差し込み性・引き出し性の評価結果が1.0を超えており良好であった。このことから、実施例1に係る測定サンプルでは、作業者がおむつ交換時に吸収性物品を滑らかに差し込み及び引き出しすることができ、吸収性物品の交換時における作業性を改善することができたとわかる。また、実施例に係る測定サンプルでは、静摩擦係数μ12が静摩擦係数μ11よりも大きいため、吸収性物品の交換時に吸収性物品の交換時に幅方向にずれにくいと考えられる。また、実施例に係る測定サンプルでは、非肌対向面の背側部及び股下部の一部にのみ摩擦軽減用の油剤を塗布しているため、静摩擦係数の差(μ13-μ11)が0よりも大きい。そのため、実施例に係る測定サンプルでは、吸収性物品の交換時に、作業者の手がおむつの腹側部を掴む手が滑りにくいと考えられる。また、実施例に係る測定サンプルでは、圧縮仕事量の比(WCb/WCa)が2.0~12.0であるため、着用者の肌に触れる表面シートの風合いを損なうことなく、表面シートと裏面シートとの間の摩擦を低減することができる。
本考案の使い捨ておむつは、上述の一実施形態の使い捨ておむつ1に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
1…使い捨ておむつ
2…第1シート
3…第2シート
4…吸収性コア
5…吸収性本体
6…外包材
61…第3シート
62…第4シート
63…ウエスト部弾性部材
64…レッグ部弾性部材
7…油剤
8…ファスニングテープ
9…ターゲットテープ

Claims (5)

  1. 肌対向面に配された表面シート、非肌対向面に配された裏面シート及びこれら両シート間に配置された吸収性コアを具備し、着用者の前後方向に対応する長手方向及び前記長手方向と直交する幅方向を有し、着用者の腹側に配される腹側部、着用者の背側に配される背側部、及びそれらの間に位置する股下部を有する吸収性物品であって、
    2つの前記吸収性物品の少なくとも前記背側部において、一方の前記吸収性物品の前記裏面シートと、他方の前記吸収性物品の前記表面シートとの間の、前記長手方向における静摩擦係数μ11が0.43以下である吸収性物品。
  2. 2つの前記吸収性物品の少なくとも前記背側部において、一方の吸収性物品の裏面シートと、他方の吸収性物品の表面シートとの間の、前記幅方向における静摩擦係数μ12が、前記長手方向における静摩擦係数μ11よりも大きい、請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 2つの前記吸収性物品の前記腹側部における、一方の前記吸収性物品の前記裏面シートと他方の前記吸収性物品の前記表面シートとの間の、前記長手方向における静摩擦係数μ13が
    2つの前記吸収性物品の前記股下部又は前記背側部における、一方の前記吸収性物品の前記裏面シートと他方の前記吸収性物品の前記表面シートとの間の、前記長手方向における静摩擦係数μ11よりも大きい、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記背側部の前記裏面シートの一部又は全面は、摩擦低減用の油剤を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  5. 前記吸収性物品は、前記肌対向面側に配された第1シート、前記非肌対向面側に配された第2シート及びこれら両シート間に配置された吸収性コアを有する吸収性本体と、第3シート及び第4シートを有する外包材とを備え、
    前記外包材は、前記第3シートを前記吸収性本体の前記非肌対向面に配して固定されており、
    前記第4シートに、前記油剤が塗布されている請求項4に記載の吸収性物品。
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