JP3229562B2 - 亜鉛の形態別定量方法 - Google Patents

亜鉛の形態別定量方法

Info

Publication number
JP3229562B2
JP3229562B2 JP07693897A JP7693897A JP3229562B2 JP 3229562 B2 JP3229562 B2 JP 3229562B2 JP 07693897 A JP07693897 A JP 07693897A JP 7693897 A JP7693897 A JP 7693897A JP 3229562 B2 JP3229562 B2 JP 3229562B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zinc
amount
sample
iron
acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP07693897A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10267910A (ja
Inventor
京子 藤本
眞 志村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP07693897A priority Critical patent/JP3229562B2/ja
Publication of JPH10267910A publication Critical patent/JPH10267910A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3229562B2 publication Critical patent/JP3229562B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電炉ダストやその
回収ダストあるいは亜鉛焙焼鉱などの亜鉛含有試料中の
金属亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、亜鉛フェライト、ケイ
酸亜鉛などを形態別に定量する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】亜鉛焙焼鉱中の亜鉛の形態別定量方法と
しては、伊藤らにより下記の方法が提唱されている(日
本鉱業会誌,104(1988),543 )。すなわち、マスプラッ
ト氏液(NH4Cl −NH4OH 溶液)で試料中の酸化亜鉛を溶
出した後、溶出残分から酢酸溶液によりケイ酸亜鉛を溶
出し、最後にこの残渣を水酸化ナトリウムで溶解後、熱
水で煮沸することにより、亜鉛フェライトを溶出し、別
途、試料を塩酸で溶解して全亜鉛量を求め、これから上
記亜鉛化合物の量を差し引いた残りを硫化亜鉛とする方
法(以下「方法1」と記す)である。
【0003】また、亜鉛末中の酸化亜鉛と金属亜鉛の分
別定量については、試料を水銀の存在下で塩化アンモニ
ウム−アンモニア水溶液と反応させ、酸化亜鉛のみを溶
出させる方法(分析化学,15(1966),441 )(以下「方
法2」と記す)や、微粉末試料に固体の硫酸鉄(III)
〔Fe2(SO4)3 〕を加えて硫酸鉄(II)〔FeSO4 〕と硫酸亜
鉛(ZnSO4 )とし、鉄(II)を定量する方法(「無機化学
全書」VIII-I,亜鉛,p376 ,丸善)(以下「方法3」
と記す)などがある。
【0004】機器分析法としては、粉末X線回折法によ
り、試料と同じ半値幅になるように加熱結晶化された標
準酸化亜鉛を用いて作成した検量線を使用して亜鉛末中
の酸化亜鉛を定量する方法(分析化学,29(1980),824
)(以下「方法4」と記す)などが報告されている。
しかし、前記した「方法1」は、金属亜鉛を含む試料に
は適用できない。
【0005】これは、金属亜鉛は、マスプラット氏液に
は難溶なので残分中に含まれ、以降の操作ではケイ酸亜
鉛、亜鉛フェライトおよび硫化亜鉛と分別することが困
難なためである。また、この方法を単に酸化亜鉛と金属
亜鉛の分別に用いようとした場合でも、試料中に、例え
ば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの塩化物、硫酸
塩が共存すると、金属亜鉛の一部がマスプラット氏液に
溶解し、酸化亜鉛との分別ができない。
【0006】「方法2」は、金属亜鉛と酸化亜鉛の分別
定量には有用であるが、金属亜鉛の固定に水銀を使用す
るため環境上問題があり、残分中の亜鉛化合物を分別定
量する際にも水銀が妨害となる。「方法3」も、金属亜
鉛と酸化亜鉛の分別定量には有用であるが、試料量を増
大させると金属亜鉛および酸化亜鉛の溶解時に起こるp
Hの上昇により、溶解に使用した鉄(III) が水酸化物と
して沈澱し、反応を妨害したり、生成した鉄(II)を巻き
込んで金属亜鉛定量値に負の誤差を与える。
【0007】そのため、多量の酸化亜鉛と共存する少量
の金属亜鉛を定量しようとする場合には、感度が不足
し、十分な分析精度が得られない。「方法4」は、上述
の湿式分析法により分析値が得られた標準試料を検量線
とする相対分析法であり、試料の組成や結晶状態の変動
する実際試料への適用は実用的には困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記した従
来技術の問題点を解決し、亜鉛を主成分とする粉末試料
あるいは顆粒状試料など亜鉛含有試料中の金属亜鉛、亜
鉛化合物を簡便に形態別に定量分析する方法を提供する
ことを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、亜鉛含有
試料を、3価の鉄〔以下鉄(III) とも記す〕および錯形
成剤を含有する溶液中で反応せしめ、生成した2価の鉄
〔以下鉄(II)とも記す〕の量を定量することにより試料
中の金属亜鉛量を求めることを特徴とする金属亜鉛の定
量方法である。
【0010】第2の発明は、金属亜鉛および/または酸
化亜鉛(ZnO )を含有する試料を、3価の鉄および錯形
成剤を含有する溶液中で反応せしめ、得られた溶液の不
溶解残分の酸による分別溶解および/またはアルカリに
よる分別溶解により、硫化亜鉛(ZnS )、亜鉛フェライ
ト(ZnFe2O4 )およびケイ酸亜鉛(Zn2SiO4 )から選ば
れる少なくとも1種を形態別に定量することを特徴とす
る亜鉛の形態別定量方法である。
【0011】前記第1の発明または第2の発明において
は、錯形成剤の添加量が、前記亜鉛含有試料中の金属亜
鉛の亜鉛量および酸化亜鉛の亜鉛量の合計量に対してモ
ル比で1/10以上であることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。本発明者らは、塩化物などの共存物質の影響を受
けない簡便な金属亜鉛の定量法を検討し、金属亜鉛が塩
化物を含む溶液に溶解し易いこと、および、冷水中に懸
濁する亜鉛の微粉末に少量の固体の鉄(III) 塩を加える
と、水素の発生を伴わずに、例えば下記式[1] で示され
る酸化還元反応が定量的に生じて鉄(II)の塩と亜鉛(II)
の塩が生成する事実に着目した。
【0013】 Zn+2FeCl3 →ZnCl2 +2FeCl2 ………[1] すなわち、試料を、常温で鉄(III) 溶液に溶解し、試料
中の金属亜鉛によって還元され生成した鉄(II)を、例え
ば下記式[2] で示される酸化還元滴定で定量することに
より、間接的に金属亜鉛を定量する方法について検討し
た。 6FeCl2 +K2Cr2O7 +14HCl →6FeCl3 +2KCl +2CrCl3 +7H2O …[2] (上記滴定時は、K2Cr2O7 が濃度既知の規定液を用い
る。)しかし、この場合、試料中に共存する酸化亜鉛
が、溶解時に、下記式[3] で示されるように、酸を消費
して溶液のpHを上昇させるため、鉄(III) が水酸化物
として沈澱して反応を妨害したり、生成した鉄(II)が鉄
(III) の水酸化物の沈澱に巻き込まれて金属亜鉛の定量
値に負の誤差を与えるという問題があった。
【0014】 ZnO +2H+ →Zn2++H2O ………………[3] そのため、多量の酸化亜鉛が共存する試料では試料量を
低減しなければならず、精度の低下や微量の金属亜鉛を
定量する際の感度不足の原因となった。そこで、試料中
の金属亜鉛の亜鉛量および酸化亜鉛の亜鉛量の合計量に
対して、モル比で1/10量以上の鉄(III) の錯形成剤を添
加したところ、鉄水酸化物の沈澱を生ずることなく、精
度の良い分析が可能になった。
【0015】さらには、後記のように、試料の溶解が迅
速になり、分析所要時間が短縮されるばかりでなく、錯
形成剤として例えばクエン酸使用時には、検量線の勾配
が約1.5倍増大し、分析の高感度化が達成された。すな
わち、本発明の要旨は、亜鉛含有試料を、3価の鉄〔鉄
(III) 〕および錯形成剤を含有する溶液と反応させて金
属亜鉛、酸化亜鉛を選択的に溶解し、金属亜鉛の還元作
用によって生成した2価の鉄〔鉄(II)〕の量を定量する
ことにより金属亜鉛量を、また、不溶解残分を酸、アル
カリにより分別溶解し、硫化亜鉛、亜鉛フェライト、ケ
イ酸亜鉛を形態別に求める亜鉛の形態別定量法である。
【0016】本発明における3価の鉄としては、塩化第
二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄など3価の鉄を含有する
塩などが例示され、3価の鉄を含有する水溶性の化合物
であれば、特に制限されるものではない。また、本発明
における錯形成剤としては、少なくとも3価の鉄と錯体
を形成し、さらには、それ自身の場合でも、亜鉛や鉄と
錯体を形成した場合でも水への溶解度が大きく、中性、
常温で水素を解離しないものが望ましい。
【0017】すなわち、本発明における錯形成剤として
は、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン
酸など有機酸、またはそれらの塩類など、トリエタノ
ールアミンなど脂肪族アミン類、EDTAなどコンプ
レクサン類、またはそれらの塩類が挙げられる。また、
これらを2種以上併用してもよい。
【0018】錯形成剤の添加量は、亜鉛含有試料中の金
属亜鉛の亜鉛量および酸化亜鉛の亜鉛量の合計量に対し
てモル比で1/10以上であることが好ましい。錯形成剤
は、多量に添加しても問題は少なく、特に上限は規定さ
れない。錯形成剤の添加量が、亜鉛含有試料中の金属亜
鉛の亜鉛量および酸化亜鉛の亜鉛量の合計量に対してモ
ル比で1/10より小さい場合には、錯形成剤の添加量に
よって金属亜鉛の定量値が変動し、分析精度を低下させ
る。
【0019】なお、錯形成剤としてクエン酸のような弱
酸を用いた場合には、反応時の昇温によりその一部が酸
として働き、金属亜鉛を溶解して分析値に低値を与える
ので、反応時に溶液の温度制御を行うことが好ましい。
また、鉄(III) −クエン酸錯体は、光により還元され鉄
(II)−クエン酸錯体となるので、クエン酸は予め鉄(II
I) 溶液に加えるのではなく、試料と同時に、または試
料を溶液に添加した後、溶液に添加することが好まし
い。
【0020】この鉄(III) −錯形成剤溶液は、金属亜
鉛、酸化亜鉛(ZnO)、塩化亜鉛(ZnCl 2)および硫酸亜鉛
(ZnSO4)のいずれをも、他の亜鉛化合物に対して選択的
に溶解する。このうち、塩化亜鉛と硫酸亜鉛は水に易溶
なので、事前に水または温水で抽出、除去できる。
【0021】残滓中には硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛および亜
鉛フェライトが存在するので、これらは亜鉛焙焼鉱の分
析法に準じて分別定量することができる。鉄(III) −錯
形成剤溶液による酸化亜鉛と金属亜鉛の溶解は、通常の
マスプラット氏液による溶解に比べて非常に迅速で、同
量の試料を溶解した場合、酸化亜鉛の溶解はマスプラッ
ト氏液を用いて溶解する場合の1/10以下の時間で終了す
る。
【0022】また、マスプラット氏液は、アンモニアを
使用するので排気設備を必要とするが、本発明の方法で
はその必要がないので分析設備も簡便で、作業環境上も
好ましい。なお、本発明において、亜鉛含有試料を、3
価の鉄および錯形成剤を含有する溶液中で反応せしめた
後定量する2価の鉄としては、塩化第一鉄、硫酸第一
鉄、硝酸第一鉄など2価の鉄を含有する塩の2価の鉄イ
オン、2価の鉄を含む錯イオンなどが例示され、2価の
鉄であれば、特に制限されるものではない。
【0023】また、前記した第2の発明における試料中
の金属亜鉛および/または酸化亜鉛(ZnO )の含有量は
特に制限されるものではない。さらには、前記した第2
の発明は、硫化亜鉛(ZnS )、亜鉛フェライト(ZnFe 2O
4 )およびケイ酸亜鉛(Zn2SiO4 )から選ばれる少なく
とも1種である目的とする分析成分の所要分析精度に影
響を及ぼす量以上の金属亜鉛および/または酸化亜鉛
(ZnO )を含有する試料に、より好ましく適用される。
【0024】また、反応後の溶液中の不溶解残分の酸に
よる分別溶解、アルカリによる分別溶解または両者の選
択は目的成分に応じて行うことができる。以下、本発明
方法の分析処理手順を、試料中に金属亜鉛、酸化亜鉛、
硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛および亜鉛フェライトを含有する
場合について、具体的に記述する。
【0025】(1):試料中の金属亜鉛量に対してモル比
で2倍量以上の鉄(III) を含む水溶液に、金属亜鉛の亜
鉛量および酸化亜鉛の亜鉛量の合計量に対して1/10量
(モル比)以上の錯形成剤および試料を添加する。 (2):密栓し、水冷しながら超音波攪拌する。 (3):例えば孔径 0.2μm 程度のフィルタでろ過する。
【0026】フィルタ孔径は、 0.1μm 〜数μm 程度ま
で、試料に合わせて、できるだけ迅速に未溶解の試料を
ろ別できるものを選択する。 (4):ろ液の酸濃度を調整し、濃度既知の規定液(例え
ばK2Cr2O7 水溶液やKMnO4 水溶液)を用いて鉄(II)を酸
化還元滴定し、金属亜鉛量を求める。 (5):残滓に希酢酸溶液を加え、室温で攪拌する。
【0027】(6):例えば孔径 0.2μm 程度のフィルタ
でろ過し、ろ液中の亜鉛濃度からケイ酸亜鉛量を求め
る。フィルタ孔径は、 0.1μm 〜数μm 程度まで、試料
に合わせて、できるだけ迅速に未溶解の試料をろ別でき
るものを選択する。 (7):残滓を、水酸化ナトリウムで融解し、熱水で抽出
する。
【0028】(8):例えば孔径 0.2μm 程度のフィルタ
でろ過し、ろ液中の亜鉛濃度から亜鉛フェライト量を求
める。フィルタ孔径は、 0.1μm 〜数μm 程度まで、試
料に合わせて、できるだけ迅速に未溶解の試料をろ別で
きるものを選択する。 (9):残滓を、混酸(塩酸+硝酸)で溶解し、溶液中の
亜鉛濃度から硫化亜鉛の量を求める。
【0029】(10):前記したように、全亜鉛量を別に求
め、上記の化合物相当量を差し引くことにより酸化亜鉛
量が求められる。(4) の溶液中の鉄(II)は、容量法の
他、1,10 −フェナントロリンなどを用いて吸光光度法
により求めることもできる。また(6) 、(8) 、(9) 、(1
0)の溶液中の亜鉛の定量法としては、容量法などの湿式
法の他、原子吸光法やプラズマ発光、プラズマ質量分析
法などを用いることもできる。
【0030】なお、下記実施例に示すように、試料中の
亜鉛化合物の形態を、事前に、X線回折法などにより確
認しておくことにより、前記した操作は適宜簡略化を図
ることが可能である。
【0031】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。 (実施例1) 〔亜鉛ダスト中の金属亜鉛、酸化亜鉛および硫化亜鉛の
分別定量;〕亜鉛の存在形態をX線回折で調べ、金属亜
鉛、酸化亜鉛および硫化亜鉛から成ることを確認した。
【0032】塩化鉄(III) 1%水溶液50mlにクエン酸1
gと試料 0.5gを添加し、密栓して水冷しながら10分間
超音波撹拌した。なお、上記したクエン酸の添加量は、
後記の金属亜鉛の亜鉛量および酸化亜鉛の亜鉛量の合計
量に対してモル比で1/10量以上であった。孔径 0.2μm
のフィルタで吸引ろ過し、ろ液および残渣に分けた。
【0033】JIS M 8213(:鉄鉱石中の酸化第一鉄定量
方法)中の鉄(II)分析方法に準じて、ろ液に混酸(塩酸
+硫酸+リン酸)を加えて酸濃度を調整した後、ジフェ
ニルアミンスルホン酸ナトリウムを指示薬として、0.01
67Mの二クロム酸カリウム標準溶液で鉄(II)を滴定し
た。純金属亜鉛量を段階的に変化させ、上記と同様の操
作を行って別途作成した検量線を用いて、試料中の金属
亜鉛含有量を求めた。
【0034】上記の残渣に混酸〔塩酸+硝酸(1+
1)〕10mlを加えて加熱溶解し、不溶解残渣をろ別後、
プラズマ発光分析法により溶液中の亜鉛濃度を測定し、
硫化亜鉛量に換算した。別個に試料1gに混酸〔塩酸+
硝酸(2+1)〕20mlを加えて加熱溶解後、過塩素酸5
mlを加えて、白煙処理し、ケイ酸を脱水した。
【0035】ろ紙(5C)でろ過してろ液および残渣に分
けた。残渣は灰化後、フッ化水素酸を数滴加えてケイ酸
を除去し、二硫酸カリウム2gを加えて融解した。次
に、塩酸(1+1)20mlを加えて融成物を溶解し、ろ液
と合わせて、溶液中の亜鉛をプラズマ発光分光法により
定量し、全亜鉛量を求めた。
【0036】次に、得られた全亜鉛量から金属亜鉛量と
硫化亜鉛量を差し引いて酸化亜鉛量を求めた。金属亜鉛
の分析に用いた検量線の一例を図1に示す。横軸は金属
亜鉛量、縦軸は反応後に生成した鉄(II)量である。鉄(I
II) の錯形成剤としてクエン酸を添加した場合(●)お
よび無添加の場合(○)の例を併せて示す。
【0037】クエン酸添加時の検量線の勾配(分析感
度)は、無添加時に比べて約 1.5倍増大し、本発明は、
微量の金属亜鉛分析時に特に有効であることがわかる。
また分析結果の一例を表1に示すが、定量精度も良好で
ある。
【0038】
【表1】
【0039】金属亜鉛分析に要する時間は、試料1本当
たり約30分程度で、これまでの分析方法に比べても非常
に迅速簡便である。さらに硫化亜鉛の分析結果の例を表
2に示すが、含有率1%程度でも相対標準偏差が4%未
満で、分析試料内の偏析の影響も考慮すると非常に精度
よく分析できている。
【0040】
【表2】
【0041】(実施例2) 〔スクラップ溶解用電気炉ダスト中の酸化亜鉛および亜
鉛フェライトの分別定量;〕亜鉛の存在形態をX線回折
で調べ、酸化亜鉛および亜鉛フェライトからなることを
確認した。
【0042】塩化鉄(III) 1%水溶液50mlに、クエン酸
1gと試料 0.5gを添加し、密栓して水冷しながら10分
間超音波撹拌した。なお、上記したクエン酸の添加量
は、後記の酸化亜鉛の亜鉛量に対してモル比で1/10量以
上であった。孔径 0.2μm のフィルタで吸引ろ過し、ろ
液中の亜鉛をプラズマ発光法により定量し、酸化亜鉛量
を求めた。
【0043】残渣を灰化後、過酸化ナトリウム3gを加
えて融解した。次に、塩酸(1+1)10mlで融解物を溶
解し、溶液中の亜鉛をプラズマ発光法により定量して亜
鉛フェライトの量を求めた。別個に試料1gに混酸〔塩
酸+硝酸(2+1)〕20mlを加えて加熱溶解後、過塩素
酸5mlを加えて、白煙処理し、ケイ酸を脱水した。
【0044】ろ紙(5C)でろ過してろ液および残渣に分
けた。残渣は灰化後、フッ化水素酸を数滴加えてケイ酸
を除去し、二硫酸カリウム2gを加えて融解した。次
に、塩酸(1+1)20mlを加えて融成物を溶解し、ろ液
と合わせて、溶液中の亜鉛をプラズマ発光分光法により
定量し、全亜鉛量を求めた。
【0045】得られた全亜鉛量は、上記で求められた酸
化亜鉛量および亜鉛フェライト量の両者から求められた
亜鉛量の合計値とほぼ等しく、本発明が亜鉛の形態別定
量方法として有効であることがわかった。 (実施例3) 〔亜鉛焙焼鉱中の酸化亜鉛、ケイ酸亜鉛、亜鉛フェライ
トおよび硫化亜鉛の分別定量;〕亜鉛の存在形態をX線
回折で調べ、酸化亜鉛、ケイ酸亜鉛、亜鉛フェライトお
よび硫化亜鉛から成ることを確認した。
【0046】塩化鉄(III) 1%水溶液50mlに、クエン酸
1gと試料 0.5gを添加し、10分間超音波攪拌した。な
お、上記したクエン酸の添加量は、後記の酸化亜鉛の亜
鉛量に対してモル比で1/10量以上であった。孔径 0.2μ
m のフィルタで吸引ろ過し、ろ液中の亜鉛をプラズマ発
光分光法により定量し、酸化亜鉛量を求めた。
【0047】残渣に5%酢酸100ml を加え、室温で1時
間攪拌した。孔径 0.2μm のフィルタで吸引ろ過し、ろ
液中の亜鉛をプラズマ発光分光法により定量し、ケイ酸
亜鉛量を求めた。残渣を灰化後、水酸化ナトリウム3g
を加えて融解した。次に、熱水50mlを加えて融成物を加
熱溶解し、亜鉛フェライトを抽出した。
【0048】孔径 0.2μm のフィルタで吸引ろ過し、ろ
液中の亜鉛をプラズマ発光分光法により定量し、亜鉛フ
ェライト量を求めた。残渣を混酸〔塩酸+硝酸(1+
1)〕10mlを加えて加熱溶解し、不溶解残渣をろ別後、
ろ液中の亜鉛をプラズマ発光分光法により定量し、硫化
亜鉛量を求めた。
【0049】別個に、試料1gに混酸〔塩酸+硝酸(2
+1)〕20mlを加えて加熱溶解後、過塩素酸5mlを加え
て、白煙処理し、ケイ酸を脱水した。ろ紙(5C)でろ過
してろ液および残渣に分けた。残渣は灰化後、フッ化水
素酸を数滴加えてケイ酸を除去し、二硫酸カリウム2g
を加えて融解した。
【0050】塩酸(1+1)20mlを加えて融成物を溶解
し、ろ液と合わせて、溶液中の亜鉛をプラズマ発光分光
法により定量し、全亜鉛量を求めた。得られた全亜鉛量
は、上記で求められた酸化亜鉛量、ケイ酸亜鉛量、亜鉛
フェライト量および硫化亜鉛量から求めた亜鉛量の合計
とほぼ等しく、本発明が亜鉛の形態別定量法として有用
であることがわかった。
【0051】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、ダ
ストなど粉末試料中の亜鉛化合物(金属亜鉛、酸化亜
鉛、硫化亜鉛、亜鉛フェライト、ケイ酸亜鉛)が簡便に
分別定量可能である。特に、金属亜鉛の定量において
は、無機塩化物、鉛などの金属など他の共存成分の影響
を受けず、含有量が0.01〜100 %までの広範な濃度域に
渡って簡便に高精度の分析が可能である。
【0052】また、従来長時間を要していた亜鉛の形態
別定量分析が、このように簡便に実施できるようになっ
たことにより、亜鉛ダスト処理メーカーなどの工程管理
やプロセス評価、製品管理などに大きく寄与することが
期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属亜鉛の分析の検量線の一例を示すグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−59490(JP,A) 特開 昭57−80558(JP,A) 特開 昭64−1950(JP,A) 特開 平6−281582(JP,A) 特開 昭54−134694(JP,A) 特開 昭61−296267(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 31/00 - 31/22 G01N 33/20

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛含有試料を、3価の鉄および錯形成
    剤を含有する溶液中で反応せしめ、生成した2価の鉄の
    量を定量することにより試料中の金属亜鉛量を求めるこ
    とを特徴とする金属亜鉛の定量方法。
  2. 【請求項2】 錯形成剤の添加量が、前記亜鉛含有試料
    中の金属亜鉛の亜鉛量および酸化亜鉛の亜鉛量の合計量
    に対してモル比で1/10以上であることを特徴とする請
    求項1記載の金属亜鉛の定量方法。
  3. 【請求項3】 金属亜鉛および/または酸化亜鉛(ZnO
    )を含有する試料を、3価の鉄および錯形成剤を含有
    する溶液中で反応せしめ、得られた溶液の不溶解残分の
    酸による分別溶解および/またはアルカリによる分別溶
    解により、硫化亜鉛(ZnS )、亜鉛フェライト(ZnFe2O
    4 )およびケイ酸亜鉛(Zn2SiO4 )から選ばれる少なく
    とも1種を形態別に定量することを特徴とする亜鉛の形
    態別定量方法。
  4. 【請求項4】 錯形成剤の添加量が、前記亜鉛含有試料
    中の金属亜鉛の亜鉛量および酸化亜鉛の亜鉛量の合計量
    に対してモル比で1/10以上であることを特徴とする請
    求項3記載の亜鉛の形態別定量方法。
JP07693897A 1997-03-28 1997-03-28 亜鉛の形態別定量方法 Expired - Fee Related JP3229562B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP07693897A JP3229562B2 (ja) 1997-03-28 1997-03-28 亜鉛の形態別定量方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP07693897A JP3229562B2 (ja) 1997-03-28 1997-03-28 亜鉛の形態別定量方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10267910A JPH10267910A (ja) 1998-10-09
JP3229562B2 true JP3229562B2 (ja) 2001-11-19

Family

ID=13619689

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP07693897A Expired - Fee Related JP3229562B2 (ja) 1997-03-28 1997-03-28 亜鉛の形態別定量方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3229562B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101701914A (zh) * 2009-10-29 2010-05-05 江西稀有金属钨业控股集团有限公司 一种矿石中钙元素的分析检测方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10267910A (ja) 1998-10-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Moshier Analytical Chemistry of Niobium and Tantalum: International Series of Monographs on Analytical Chemistry
CN104792647B (zh) 碲化铜中铜、碲、金和银含量的测定方法
JP3229562B2 (ja) 亜鉛の形態別定量方法
JP2002372518A (ja) 白金族元素の定量方法
Evdokimova et al. The rhenium determination in copper and molybdenum ores and concentrates by ICP atomic emission spectrometry
Abbey Determination of thorium in rocks: the arsenazo III reaction in perchlorate medium
Sato et al. Extraction and spectrophotometric determination of molybdenum (VI) with malachite green and p-chloromandelic acid
Nazarenko et al. Photometric determination of tungsten in rocks with trihydroxyfluorones
Codell et al. Analytical Chemistry of Titanium Alloys
Bagshawe Ferrous metallurgical analysis. A review
Challis et al. Absorptiometric determination of magnesium in titanium and its alloys
Mahanta et al. ICP-OES Determination of Nb, Ta, Ti, Fe, Mn, W, and Sn in Columbite and Tantalite Minerals After Decomposition and Dissolution With a Novel Flux and Complexing Agent
KR950014634B1 (ko) 용강 슬래그 탈산재(Aluminum dross)중에 함유되어 있는 금속알루미늄과 산화알루미늄의 분리분석방법
Enclis et al. Determination of trace quantities of bismuth in lead and copper
LeVier Analytical Testing
Owens et al. Spectrophotometric Determination of Beryllium with 2-Phenoxyquinizarin-3, 4´-disulfonic Acid
Clennell The Chemistry of Cyanide Solutions Resulting from the Treatment of Ores
Codell et al. Determination of Sulfur in Titanium
Stefova et al. Determination of nickel in urine and blood serum by electrothermal atomic absorption spectrometry
Smyth et al. Selected Analytical Problems Involving Inorganic Analytes which Contain Elements from Groups IA–VIIIA and the Lanthanides
WO2020183261A1 (en) Method for recovering gold and copper from electronic components
Dulski Classical Wet Analytical Chemistry
Hernandez-Mendez et al. Titrimetric determination of microgram amounts of bismuth by thiocyanate amplification after precipitation as Bi (SCN) 6 [N (C4H9) 4] 3
Kahn et al. Rapid Photometric Determination of Chromium in Alloy Steels and Bronzes
CN115561188A (zh) 一种岩石矿物样品中微量银的测定方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees