JP3224330U - 分流子および鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】型開き時に鋳造品を分流子に残り易くできると共に、鋳造品にガス欠陥を生じ難くできる分流子を提供する。【解決手段】上下方向と交わる軸線Cを中心として固定型4に設けられる鋳込口8の内部を摺動するプランジャチップ9と対向するように、固定型に対して軸線方向に移動する可動型10に固定されることで、固定型と可動型との間のキャビティ16へ溶湯を案内する流路17を固定型との間に形成可能な分流子20は、軸線方向のうちプランジャチップ側を向く端面と、端面の周縁から軸線方向に延びて軸線まわりに設けられる外周面と、外周面の一部を下方へ凹ませて軸線方向の一端が端面側に開口すると共に流路の壁面の一部を形成する溝部と、を備え、溝部は、軸線方向および上下方向に垂直な左右方向における溝部の幅を端面へ向かって狭くするアンダーカット部を備えている。【選択図】図1
Description
本考案は、型開き時に鋳造品が残り易い分流子、及び、その分流子を有する鋳造装置に関するものである。
鋳造装置は、略水平な軸線を中心とした鋳込口が固定型に設けられ、その固定型に対して軸線方向に移動する可動型に分流子が固定され、鋳込口の内部を摺動するプランジャチップが分流子と軸線方向に対向している。この鋳造装置を用いた鋳造時には、プランジャチップに押された鋳込口の内部の溶湯が、分流子と固定型との間の流路を通って、固定型と可動型との間のキャビティへ案内され、その溶湯が硬化して鋳造品が形成される。特許文献1には、固定型に対して可動型を第1方向に移動させて型開きするとき、その鋳造品が固定型にとられることなく可動型および分流子に残るように、流路の壁面を形成する分流子の一部に下方へ凹む保持凹部を設けることが開示されている。
しかしながら、上記特許文献1では、保持凹部が上方へのみ開口しているので、離型剤などの液体が保持凹部に残り易い。保持凹部に液体が残ったまま鋳造すると、その液体が溶湯の熱で蒸発してガスが生じ、そのガスによって鋳造品にガス欠陥が生じるおそれがある。
本考案は上述した問題点を解決するためになされたものであり、型開き時に鋳造品を分流子に残り易くできると共に、鋳造品にガス欠陥を生じ難くできる分流子および鋳造製品を提供することを目的とする。
この目的を達成するために本考案の分流子は、上下方向と交わる軸線を中心として固定型に設けられる鋳込口の内部を摺動するプランジャチップと対向するように、前記固定型に対して軸線方向に移動する可動型に固定されることで、前記固定型と前記可動型との間のキャビティへ溶湯を案内する流路を前記固定型との間に形成可能なものであって、前記軸線方向のうち前記プランジャチップ側を向く端面と、前記端面の周縁から前記軸線方向に延びて前記軸線まわりに設けられる外周面と、前記外周面の一部を下方へ凹ませて前記軸線方向の一端が前記端面側に開口すると共に前記流路の壁面の一部を形成する溝部と、を備え、前記溝部は、前記軸線方向および前記上下方向に垂直な左右方向における前記溝部の幅を前記端面へ向かって狭くするアンダーカット部を備えている。
請求項1記載の分流子は、軸線方向のうちプランジャチップ側を向く端面と、端面の周縁から軸線方向に延びて軸線まわりに設けられる外周面と、を備えている。そして、キャビティへ溶湯を導く流路の壁面の一部を形成する溝部は、外周面の一部を下方へ凹ませて形成されている。この溝部の左右方向の幅を端面へ向かって狭くするアンダーカット部が溝部に設けられている。これにより、鋳造後に固定型に対して可動型を軸線方向に移動させて型開きし、溶湯を硬化させた鋳造品を取り出すとき、溝部の軸線方向の一端が端面側に開口していても、溝部の内部で溶湯が硬化した鋳造品の一部がアンダーカット部に引っ掛かることで、鋳造品が固定型にとられることなく、鋳造品を分流子に残り易くできる。
さらに、溝部の軸線方向の一端が端面側に開口しているので、離型剤などの液体が溝部に入っても、その液体を端面側へ排出し易くできる。これにより、その液体が鋳造時に溶湯の熱で蒸発してガスを生じることに起因し、鋳造品にガス欠陥が生じることを抑制できる。
請求項2記載の分流子によれば、請求項1記載の分流子の奏する効果に加え、次の効果を奏する。アンダーカット部の左右方向の幅が端面へ向かって段差状に狭くなる場合には、その段差に液体が残り易くなることがある。しかし、アンダーカット部の左右方向の幅が端面へ向かって次第に狭くなることで、段差状のアンダーカット部と比べてアンダーカット部に液体を残り難くできる。その結果、鋳造時に液体が蒸発したガスによるガス欠陥を鋳造品に生じ難くできる。
請求項3記載の分流子によれば、請求項1又は2に記載の分流子の奏する効果に加え、次の効果を奏する。溝部は、端面から軸線方向に延びて上方を向く底面部を有する第1溝部と、第1溝部の底面部の一部を下方へ凹ませた第2溝部と、を備えている。第2溝の軸線方向の一端が端面側に開口し、アンダーカット部が第2溝部に形成されているので、型開き時に鋳造品の一部が第2溝部のアンダーカット部に引っ掛かって鋳造品を分流子に残り易くできると共に、第2溝部に入った液体を排出し易くして、液体が蒸発したガスによるガス欠陥を鋳造品に生じ難くできる。
ここで、鋳造品の一部が引っ掛かる部位を第2溝部に代えて、底面部から突出する突起とする場合には、その突起の端面側に当たった溶湯によって突起の近傍の溶湯の流れが複雑になり易い。そうすると、突起の近傍のガスを溶湯が巻き込んで、鋳造品にガス欠陥が生じ易くなることがある。これに対して、鋳造品の一部が引っ掛かる部位を、底面部の一部を凹ませた第2溝部とすることで、底面部に突起を設ける場合と比べて、第2溝部の近傍でガスを溶湯に巻き込み難くできる。その結果、鋳造品にガス欠陥を生じ難くできる。
請求項4記載の分流子によれば、請求項1又は2に記載の分流子の奏する効果に加え、次の効果を奏する。溝部は、端面から軸線方向に延びて上方を向く底面部と、底面部の左右方向の両縁から立ち上がって端面に連なる一対の側壁部と、を備えている。この一対の側壁部の少なくとも一方には、左右方向に凹む壁凹部が端面から離れた位置に形成されている。壁凹部の位置における一対の側壁部の片方の側壁部ともう片方の側壁部との間の左右方向の距離に対して、壁凹部の端面側に連なる位置における一対の側壁部の片方の側壁部ともう片方の側壁部との間の左右方向の距離が狭くなることによってアンダーカット部が形成されている。液体が底面部を主に流れるため、側壁部に設けた壁凹部に液体を残り難くできる。その結果、鋳造時に液体が蒸発したガスによるガス欠陥を鋳造品に生じ難くできる。
ここで、壁凹部の代わりに側壁部から突出する突起によってアンダーカット部を形成する場合には、その突起の端面側に当たった溶湯によって突起の近傍の溶湯の流れが複雑になり易く、突起の近傍のガスを溶湯が巻き込み易くなる。これに対して、壁凹部によってアンダーカット部が形成されているので、側壁部に突起を設ける場合と比べて、壁凹部の近傍でガスを溶湯に巻き込み難くできる。その結果、鋳造品にガス欠陥を生じ難くできる。
また、分流子から鋳造品を軸線方向に外す場合には、鋳造品を強く引っ張る必要があったり、鋳造品の一部が引っ掛かるアンダーカット部が破損したりすることがある。これに対して、壁凹部が上方へ向かって外周面に開口しているので、鋳造品に対して分流子を下方へ移動させることで分流子から鋳造品を外すことができる。これにより、分流子から鋳造品を外し易くできると共に、アンダーカット部の破損を抑制できる。
請求項5記載の鋳造装置は、請求項1から4のいずれかに記載の分流子と、固定型と、可動型と、プランジャチップと、を備え、請求項1から4のいずれかに記載の分流子の奏する効果と同様の効果を奏する。
請求項6記載の鋳造装置は、請求項3又は4に記載の分流子と、固定型と、可動型と、プランジャチップと、を備え、請求項3又は4に記載の分流子の奏する効果に加え、次の効果を奏する。分流子は、可動型に対して上下方向へ移動可能に可動型に取り付けられている。これにより、鋳造後に固定型に対して可動型を軸線方向に移動させて、分流子および可動型に鋳造品が残った状態で、可動型に対して分流子を下方へ移動させることによって、第2溝部や壁凹部に入り込んだ鋳造品の一部を第2溝部や壁凹部から上下方向に抜くことができる。その結果、分流子から鋳造品を外し易くできると共に、アンダーカット部から軸線方向に鋳造品を無理抜きしてアンダーカット部が破損することを防止できる。
以下、本考案の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して鋳造装置1について説明する。図1は第1実施形態における分流子20を有する鋳造装置1の断面図である。なお、各図面上の矢印U,D,F,B,L,R方向は、それぞれ鋳造装置1の上方、下方、前方、後方、左方、右方を示している。前後方向および左右方向はそれぞれ水平方向である。
図1に示すように、鋳造装置1は、ダイカスト等の鋳造法に用いられて鋳造品2を成形する装置である。鋳造装置1は、固定型4と、固定型4に対して前後方向に移動可能な可動型10と、溶湯(図示せず)を押すプランジャチップ9と、プランジャチップ9と前後方向に対向するように可動型10に固定される分流子20と、を主に備えている。
固定型4は、固定盤(図示せず)に固定される固定主型5と、固定主型5に嵌め込まれる固定入子6と、固定主型5を貫通する円筒状のスリーブ7と、を備えている。可動型10は、可動盤(図示せず)に固定される可動主型11と、可動主型11に嵌め込まれる可動入子12と、可動主型11に対して上下方向に移動可能な保持部13と、可動主型11及び可動入子12を貫通する押出ピン14と、を備えている。
駆動装置(図示せず)により固定盤に対して可動盤を前後方向に移動させることで、固定型4に対して可動型10が前後方向に移動する。固定型4に対して可動型10を前後方向に移動させて型閉めした状態で、固定型4の固定入子6と、可動型10の可動入子12との間にキャビティ16が形成される。このキャビティ16の形状によって鋳造品2の製品形状が決まる。また、押出ピン14の先端がキャビティ16に面している。
スリーブ7は、上下方向と交わる略水平な軸線Cを中心とした略円筒状の部位であり、キャビティ16の下方に配置される。このスリーブ7の内側に軸線Cを中心とした鋳込口8が形成されている。この軸線Cに沿った軸線C方向が前後方向である。また、図1には、軸線Cを含んで左右方向に垂直な断面が図示されている。鋳込口8の後端部(可動型10側の端部)は、可動型10に向かうにつれて次第に拡径する、軸線Cを中心とした円錐面状の拡径部8aによって形成されている。
プランジャチップ9は、鋳込口8の内部を軸線Cに沿って前後方向(軸線C方向)に摺動する部材であり、その鋳込口8の壁面に全周に亘って密着している。保持部13は、分流子20が取り付けられる部位である。固定型4と可動型10とを型閉めした状態では、プランジャチップ9と分流子20とが前後方向に対向するように、保持部13を介して分流子20が可動型10に固定される。
分流子20は、プランジャチップ9に押された溶湯を受け、その溶湯をキャビティ16へ案内する部材である。分流子20は、プランジャチップ9と対向する本体部21と、本体部21の後部(プランジャチップ9とは反対側)に取り付けられるコア部22と、を備えている。本体部21とコア部22との間には、分流子20を冷却する冷媒が通る冷却空間23が形成され、その冷却空間23へ冷媒を送る往路24及び復路25が、コア部22及び保持部13の内部に形成されている。
鋳造装置1を用いた鋳造時には、まず、固定型4と可動型10とを前後方向に離した型開き状態で、キャビティ16を形成する固定入子6や可動入子12の表面に離型剤を吹き付ける。次いで、固定型4と可動型10とを前後方向に近づけて型閉めし、鋳込口8の内部に溶湯を注入する。次いで、その溶湯をプランジャチップ9によって分流子20へ向かって押す。そうすると、鋳込口8の内部の溶湯が、固定型4のスリーブ7と分流子20の本体部21との間の流路17や、固定入子6と可動入子12との間の流路18を通ってキャビティ16に充填される。
そして、キャビティ16に充填された溶湯が硬化して鋳造品2が成形された後、固定型4と可動型10とを前後方向に離して型開きして、製品取り出し装置(図示せず)でビスケット2bを把持しながら、分流子20が取り付けられた保持部13を可動型10に対して下方へ移動させる。最後に、押出ピン14によって鋳造品2を押して、可動型10から鋳造品2を外す。なお、鋳造直後の鋳造品2には、流路17,18内の溶湯が硬化したランナ2aと、プランジャチップ9と分流子20との間の溶湯が硬化したビスケット2bとが付いている。このランナ2aやビスケット2bは、鋳造品2の製品形状とは関係ない部位であり、鋳造後に鋳造品2から取り除かれる。
次に図1に加えて図2(a)及び図2(b)を参照して、分流子20について更に詳しく説明する。図2(a)は分流子20の断面図である。図2(b)は図2(a)の矢印IIb方向から見た分流子20の平面図である。なお、図2(a)及び図2(b)では、分流子20のコア部22を省略し、本体部21のみを図示している。
分流子20の本体部21は、プランジャチップ9と対向する端面28が閉じた筒状の部材である。本体部21の内周面26は後方へ開口し、この内周面26の内側にコア部22を挿入することで、内周面26とコア部22との間に冷却空間23が形成される。
本体部21は、端面28と、端面28の周縁から後方へ延びて軸線Cまわりに設けられる外周面29と、外周面29の一部を凹ませた第1溝部32及び第2溝部36と、を備えている。端面28は、前方(軸線C方向のプランジャチップ9側)を向いて軸線Cと交わる。端面28は、プランジャチップ9に押された溶湯が最初に当たる部位である。この端面28に溶湯が当たることで溶湯の流れる向きが変わる。端面28は、上方および後方へ向かって傾斜し、溶湯を分流子20の上方および後方へ導く。
外周面29は、軸線Cに垂直な断面が軸線Cを中心とした円形状に形成されている。外周面29の後端部は、軸線Cを中心とした円柱面状に形成されている。外周面29には、その円柱面に対して径方向内側へ段差状に凹み端面28側を向いた段差面30と、その段差面30と端面28とを連結して端面28へ向かうにつれて次第に縮径する円錐面31と、が形成されている。分流子20の一部をスリーブ7の鋳込口8に挿入したとき、段差面30とスリーブ7の後端とが密着し、鋳込口8の拡径部8aと円錐面31とが密着する。
段差面30とスリーブ7の後端との上部に隙間が形成されることで、その隙間によって流路17の一部が形成される。また、外周面29の上部を下方へ凹ませた第1溝部32及び第2溝部36によって、分流子20と拡径部8aとの間に隙間が形成され、その隙間によって流路17の一部が形成される。
第1溝部32は、外周面29の円錐面31の上部を下方へ凹ませて前端を端面28に開口させた部位であり、流路17の壁面の一部を形成する。第1溝部32は、端面28から後方へ延びて上方を向く第1底面部33と、その第1底面部33の左右方向の両側からそれぞれ立ち上がって端面28に連なる一対の第1側壁部34,35と、を備えている。
第1底面部33は、段差面30と端面28とを滑らかに繋ぐと共に、軸線Cを水平とした場合に端面28へ向かうにつれて下降傾斜している。第1側壁部34と第1側壁部35との間の左右方向の距離(第1溝部32の左右方向の幅)は、端面28へ向かうにつれて次第に広くなっている。これらの結果、一対の第1側壁部34,35、第1底面部33、拡径部8aに囲まれた流路17を上流(前方)で広く下流(後方)で狭くできるので、鋳込口8からキャビティ16へ溶湯を案内し易くできる。
第2溝部36は、第1底面部33の一部を下方へ凹ませて前端を端面28側に開口させた部位であり、流路17の壁面の一部を形成する。第2溝部36は、上方を向く第2底面部37と、その第2底面部37の左右方向の両側からそれぞれ立ち上がる一対の第2側壁部38,39と、を備えている。
第2底面部37は、軸線Cを水平とした場合に端面28へ向かって下降傾斜している。一対の第2側壁部38,39は、平面視において、端面28へ向かうにつれて互いに近づくように傾斜している。第2側壁部38と第2側壁部39との間の左右方向の距離(第2溝部36の左右方向の幅)は、後方側(端面28から離れた側)の最大距離W1と比べて端面28側の最小距離W2が狭くなっている。さらに、第2側壁部38と第2側壁部39との間の左右方向の距離は、前後方向の全長に亘って、端面28へ向かうにつれて次第に狭くなっている。この一対の第2側壁部38,39によって、第2溝部36の左右方向の幅を端面28へ向かって小さくするアンダーカット部が形成されている。
以上のような分流子20を有する鋳造装置1によれば、鋳造時に流路17を流れる溶湯が、その流路17の壁面の一部を形成する第2溝部36内に充填され、溶湯が硬化した鋳造品2の一部が第2溝部36に嵌まる。この第2溝部36の第2側壁部38と第2側壁部39との間の左右方向の距離が端面28へ向かって狭くなっているので、溶湯が硬化した後に固定型4と可動型10とを前後方向に離して型開きするとき、第2溝部36が端面28側へ開口していても、第2溝部36の内部の鋳造品2の一部が一対の第2側壁部38,39に引っ掛かる。その結果、固定型4に鋳造品2がとられることなく、可動型10に固定された分流子20に鋳造品2を残した状態で型開きできる。可動型10には鋳造品2を取り外すための押出ピン14があるので、型開き時に可動型10に鋳造品2を残しておくことで、鋳造品2を鋳造装置1から容易に取り外すことができる。
なお、第2側壁部38と第2側壁部39との間の最大距離W1と最小距離W2との差が小さい場合には、鋳造直後の鋳造品2はまだ柔らかいため、鋳造品2の一部が一対の第2側壁部38,39に引っ掛かっていても、押出ピン14で鋳造品2を強く押したりすれば、鋳造品2のランナ2aを変形させたりして、分流子20から前方に鋳造品2を取り外すことができる。
第2溝部36は、第1底面部33の一部を下方へ凹ませた部位なので、鋳造品2に対して分流子20を下方へ移動させることで、鋳造品2の一部が一対の第2側壁部38,39に引っ掛かることなく、分流子20から鋳造品2を外すことができる。保持部13によって分流子20を可動型10に対して上下方向に移動できるので、型開き後に可動型10に残った鋳造品2から分流子20を外し易くできる。さらに、一対の第2側壁部38,39の間から前方へ鋳造品2を無理抜きして一対の第2側壁部38,39が破損することを防止できる。
鋳造品2の一部を引っ掛けるための第2溝部36の前端が端面28側に開口しているので、離型剤などの液体が第2溝部36に入っても、その液体を端面28側へ排出し易くできる。これにより、第2溝部36に残った液体が鋳造時に溶湯の熱で蒸発してガスを生じることに起因し、そのガスによるガス欠陥が鋳造品2に生じることを抑制できる。
ここで、第2側壁部38と第2側壁部39との間の左右方向の距離が端面28へ向かって段差状に狭くなる場合には、その段差に液体が残り易くなることがある。本実施形態では、第2側壁部38と第2側壁部39との間の左右方向の距離が端面28へ向かうにつれて次第に狭くなっているので、第2溝部36内に液体を残り難くできる。その結果、鋳造時に液体が蒸発したガスによるガス欠陥を鋳造品2に生じ難くできる。
さらに、第1溝部32及び第2溝部36が端面28側に開口し、第1底面部33及び第2底面部37が端面28へ向かって下降傾斜しているので、第1溝部32や第2溝部36内の液体を端面28側へより排出し易くできる。その結果、鋳造時に液体が蒸発したガスによるガス欠陥を鋳造品2に生じ難くできる。
ここで、鋳造品2の一部が引っ掛かる部位を第2溝部36に代えて、第1底面部33から突出する突起とすることが考えられる。しかし、この場合には、鋳造時に突起の端面28側に当たった溶湯によって、突起の近傍の溶湯の流れが複雑になり易い。そうすると、突起の近傍のガスを溶湯が巻き込んで、鋳造品2にガス欠陥が生じ易くなることがある。
これに対して本実施形態では、鋳造品2の一部が引っ掛かる部位を、第1底面部33の一部を凹ませた第2溝部36によって形成しているので、第1底面部33に突起を設ける場合と比べて、第2溝部36の近傍でガスを溶湯に巻き込み難くできる。その結果、鋳造時にガス欠陥を生じ難くできる。
次に図3(a)及び図3(b)を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、第2溝部36の左右方向の幅が端面28へ向かって次第に狭くなることによって、鋳造品2の一部が引っ掛かるアンダーカット部が形成される場合について説明した。これに対して第2実施形態では、第2溝部42の左右方向の幅を段差状に小さくするアンダーカット部45について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3(a)は第2実施形態における分流子40の断面図である。図3(b)は図3(a)の矢印IIIb方向から見た分流子40の平面図である。なお、図3(a)及び図3(b)では、分流子40のコア部22を省略して本体部41のみを図示している。
分流子40の本体部41は、プランジャチップ9(図1参照)と対向する端面28が閉じた筒状の部材である。本体部41は、端面28と、外周面29と、外周面29の一部を凹ませた第1溝部32及び第2溝部42と、を備えている。
第2溝部42は、第1溝部32の第1底面部33の一部を下方へ凹ませて前端を端面28側に開口させた部位であり、流路17(図1参照)の壁面の一部を形成する。第2溝部42は、相互比較して左右方向の幅W3が広い幅広部43と、左右方向の幅W4が狭い2本の幅狭部44と、を備えている。
幅広部43は、上方を向く第2底面部43aと、その第2底面部43aの左右方向の両側からそれぞれ立ち上がる一対の第2側壁部43b,43cと、を備えている。幅狭部44は、上方を向く第2底面部44aと、その第2底面部44aの左右方向の両側からそれぞれ立ち上がる一対の第2側壁部44b,44cと、を備えている。
第2底面部43aと第2底面部44aとは、滑らかに繋がっている。第2底面部43aは、軸線Cを水平とした場合に端面28へ向かって下降傾斜している。第2底面部44aは、左右方向に垂直な断面が軸線Cと略平行に形成され、軸線Cを水平にした場合に略水平となる。
一対の第2側壁部43b,43cは、平面視において互いに略平行に配置され、第2側壁部43bと第2側壁部43cとの間の左右方向の距離(幅広部43の左右方向の幅)W1が略一定に形成されている。一対の第2側壁部44b,44cは、平面視において互いに略平行に配置され、第2側壁部44bと第2側壁部44cとの間の左右方向の距離(幅狭部44の左右方向の幅)W2が略一定に形成されている。なお、左側の幅狭部44のうち左側の第2側壁部44bと、幅広部43の左側の第2側壁部43bとが、平面視において直線状に繋がっている。また、右側の幅狭部44のうち右側の第2側壁部44cと、幅広部43の右側の第2側壁部43cとが、平面視において直線状に繋がっている。
幅広部43と幅狭部44との境界には、幅広部43の左右方向の幅W3よりも、幅広部43の端面28側に連なる幅狭部44の左右方向の幅W4を狭くするアンダーカット部45が形成されている。アンダーカット部45は、第2溝部42の左右方向の幅を端面28へ向かって段差状に狭くしている。
この分流子40を有する鋳造装置を用いて鋳造する場合、第1実施形態と同様に、溶湯の硬化後に固定型4と可動型10とを前後方向に離して型開きするときに、第2溝部42が端面28側へ開口していても、第2溝部42の内部の鋳造品2の一部がアンダーカット部45に引っ掛かる。その結果、分流子40に鋳造品2を残した状態で型開きできる。さらに、第2溝部42が端面28側へ開口しているので、第2溝部42に入った液体を端面28側へ排出し易くでき、鋳造時に液体が蒸発したガスによるガス欠陥を鋳造品2に生じ難くできる。
また、幅狭部44の第2底面部44aは、下降傾斜していないが水平に形成されているので、幅狭部44内の液体を端面28側へ十分に排出し易くできる。その結果、鋳造時に液体が蒸発したガスによるガス欠陥を鋳造品2に生じ難くできる。また、端面28へ向かって下降傾斜する第1底面部33の一部を凹ませた第2溝部42の第2底面部44aが略水平に形成されているので、端面28側へ開口する第2溝部42の前後方向の長さを短くできる。その結果、第1底面部33に切削加工などを施して第2溝部42を形成し易くできる。
アンダーカット部45は、第2溝部42の左右方向の幅を端面28へ向かって段差状に狭くしているので、第2溝部42の内部の鋳造品2の一部をアンダーカット部45に引っ掛け易くできる。その結果、型開き時に分流子20に鋳造品2をより残り易くできる。
次に図4(a)及び図4(b)を参照して第3実施形態について説明する。第1,2実施形態では、第1溝部32の第1底面部33の一部を凹ませた第2溝部36,42に、一対の第2側壁部38,39によるアンダーカット部や段差状のアンダーカット部45が設けられる場合について説明した。これに対して第3実施形態では、第2溝部36,42がなく、分流子50の外周面29の一部を下方へ凹ませた溝部52にアンダーカット部が設けられる場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4(a)は第3実施形態における分流子50の断面図である。図4(b)は図4(a)の矢印IVb方向から見た分流子50の平面図である。なお、図4(a)及び図4(b)では、分流子50のコア部22を省略して本体部51のみを図示している。
分流子50の本体部51は、プランジャチップ9(図1参照)と対向する端面28が閉じた筒状の部材である。本体部51は、端面28と、外周面29と、外周面29の一部を凹ませた溝部52を備えている。
溝部52は、外周面29の円錐面31の上部を下方へ凹ませて前端を端面28に開口させた部位であり、流路17の壁面の一部を形成する。溝部52は、端面28から後方へ延びて上方を向く底面部33と、その底面部33の左右方向の両側からそれぞれ立ち上がって端面28に連なる一対の側壁部53,54と、を備えている。なお、第3実施形態における底面部33は、第1実施形態における第1底面部33と同一である。
一対の側壁部53,54には、それぞれ左右方向に凹む壁凹部55が端面28から離れた位置に形成されている。第3実施形態における側壁部53,54は、壁凹部55が形成されている以外は、第1実施形態における第1側壁部34,35と同一である。壁凹部55の位置における側壁部53と側壁部54との間の左右方向の距離(溝部52の左右方向の幅)W5に対して、壁凹部55の端面28側に連なる位置における側壁部53と側壁部54との間の左右方向の距離W6が狭くなることによって、アンダーカット部56が形成されている。
この分流子50を有する鋳造装置を用いて鋳造する場合、第1実施形態と同様に、溶湯の硬化後に固定型4と可動型10とを前後方向に離して型開きするときに、溝部52が端面28側へ開口していても、溝部52の内部の鋳造品2の一部がアンダーカット部56に引っ掛かる。その結果、分流子50に鋳造品2を残した状態で型開きできる。さらに、溝部52が端面28側へ開口しているので、溝部52に入った液体を端面28側へ排出し易くでき、鋳造時に液体が蒸発したガスによるガス欠陥を鋳造品2に生じ難くできる。
また、壁凹部55の代わりに側壁部53,54から突出する突起によって、溝部52の左右方向の幅が端面28へ向かって狭くなるアンダーカット部を形成しても良い。この場合には、その突起の端面28側に当たった溶湯によって突起の近傍の溶湯の流れが複雑になり易く、突起の近傍のガスを溶湯が巻き込み易くなることがある。
これに対して本実施形態では、壁凹部55によってアンダーカット部56が形成されているので、側壁部53,54に突起を設ける場合と比べて、壁凹部55の近傍でガスを溶湯に巻き込み難くできる。その結果、鋳造品2にガス欠陥を生じ難くできる。
溝部52の底面部33を液体が主に流れるため、側壁部53,54を凹ませた壁凹部55に液体を残り難くできる。そのため、アンダーカット部56を形成するために壁凹部55を側壁部53,54に設けたとしても、その壁凹部55に入った液体が鋳造時に蒸発してガスとなることに起因したガス欠陥を鋳造品2に生じ難くできる。
壁凹部55は、上方へ向かって外周面29の円錐面31に開口している。これにより、鋳造品2に対して分流子50を下方へ移動させることで分流子50から鋳造品2を外すことができる。第1実施形態のように、保持部13によって分流子50を可動型10に対して上下方向に移動することで、型開き後に可動型10に残った鋳造品2から分流子50を外し易くできる。さらに、アンダーカット部56の間から前方へ鋳造品2を無理抜きしてアンダーカット部56が破損することを防止できる。
底面部33の一部を凹ませるのではなく、側壁部53,54の一部を壁凹部55により凹ませているので、内周面26から底面部33までの本体部51の肉厚が部分的に薄くなることを防止できる。よって、鋳造品2の一部を引っ掛けるために壁凹部55及びアンダーカット部56を形成したとしても、本体部51の肉厚の管理を容易にできる。
以上、実施形態に基づき本考案を説明したが、本考案は上記形態に何ら限定されるものではなく、本考案の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、キャビティ16や分流子20の各部の寸法や形状などを適宜変更しても良い。また、冷却空間23や往路24、復路25を省略し、本体部21とコア部22とを一体成形しても良い。押出ピン14を省略し、ランナ2aやビスケット2bをつかんで可動型10から鋳造品2を取り外しても良い。
固定主型5と固定入子6とを一体成形しても良い。固定主型5とスリーブ7とを一体成形しても良い。可動主型11と可動入子12とを一体成形しても良い。軸線Cが略水平(上下方向と垂直)である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、軸線Cを水平面に対して傾け、上下方向に対して軸線Cを非垂直にしても良い。
上記形態では、分流子20,40,50の一部がスリーブ7の鋳込口8に挿入される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、分流子の端面28をスリーブ7の後端に密着させても良い。そして、プランジャチップ9と分流子の端面28とが前後方向(軸線C方向)に対向する場合に限らず、分流子の外周面29の一部を下方へ凹ませた第1溝部32の第1底面部33や第1側壁部34,35等と鋳込口8の内周面とを滑らかに繋げ、プランジャチップ9と端面28とを対向しないようにしても良い。
上記第1実施形態では、第2側壁部38と第2側壁部39との間の左右方向の距離(第2溝部36の左右方向の幅)が、前後方向の全長に亘って端面28へ向かうにつれて次第に狭くなっている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2側壁部38と第2側壁部39との左右方向の距離が端面28へ向かうにつれて狭くなる部位(アンダーカット部)が、第2側壁部38,39の一部にあっても良い。また、平面視において、第2側壁部38,39の両方が端面28へ向かうにつれて互いに近づくように傾斜する場合に限らず、端面28へ向かうにつれて第2側壁部38,39の一方のみが他方へ近づくように傾斜しても良い。
上記第2実施形態では、1本の幅広部43と2本の幅狭部44とが繋がっている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。幅広部43及び幅狭部44の本数や配置を適宜変更しても良い。また、幅広部43と幅狭部44との境界である段差状のアンダーカット部45を、端面28へ向かうにつれて次第に左右方向の幅が小さくなるアンダーカット部としても良い。
上記第3実施形態では、側壁部53,54の両方に壁凹部55が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。側壁部53,54のいずれか一方に壁凹部55を形成しても良い。但し、側壁部53,54の両方に壁凹部55を設けることで、型開き時に鋳造品2を分流子50に残り易くできる。
上記第1,2実施形態では、第1溝部32の第1底面部33に第2溝部36,42を設け、端面28へ向かうにつれて第2溝部36,42の幅が狭くなる第2側壁部38,39(アンダーカット部)やアンダーカット部45を第2溝部36,42に設ける場合について説明した。また、上記第3実施形態では、溝部52の側壁部53,54に壁凹部55を設けてアンダーカット部56を形成する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではない。第2溝部36,42や壁凹部55を設けず、第1溝部(溝部)32の一対の第1側壁部(側壁部)34,35に、端面28へ向かうにつれて第1溝部32の左右方向の幅(第1側壁部34と第1側壁部35との間の左右方向の距離)が狭くなるアンダーカット部を設けても良い。
1 鋳造装置
4 固定型
8 鋳込口
9 プランジャチップ
10 可動型
16 キャビティ
17 流路
20,40,50 分流子
28 端面
29 外周面
32 第1溝部(溝部の一部)
33 第1底面部(底面部)
36,42 第2溝部(溝部の一部)
38,39 第2側壁部(アンダーカット部)
45 アンダーカット部
52 溝部
53,54 側壁部
55 壁凹部
56 アンダーカット部
C 軸線
4 固定型
8 鋳込口
9 プランジャチップ
10 可動型
16 キャビティ
17 流路
20,40,50 分流子
28 端面
29 外周面
32 第1溝部(溝部の一部)
33 第1底面部(底面部)
36,42 第2溝部(溝部の一部)
38,39 第2側壁部(アンダーカット部)
45 アンダーカット部
52 溝部
53,54 側壁部
55 壁凹部
56 アンダーカット部
C 軸線
Claims (6)
- 上下方向と交わる軸線を中心として固定型に設けられる鋳込口の内部を摺動するプランジャチップと対向するように、前記固定型に対して軸線方向に移動する可動型に固定されることで、前記固定型と前記可動型との間のキャビティへ溶湯を案内する流路を前記固定型との間に形成可能な分流子であって、
前記軸線方向のうち前記プランジャチップ側を向く端面と、
前記端面の周縁から前記軸線方向に延びて前記軸線まわりに設けられる外周面と、
前記外周面の一部を下方へ凹ませて前記軸線方向の一端が前記端面側に開口すると共に前記流路の壁面の一部を形成する溝部と、を備え、
前記溝部は、前記軸線方向および前記上下方向に垂直な左右方向における前記溝部の幅を前記端面へ向かって狭くするアンダーカット部を備えていることを特徴とする分流子。 - 前記アンダーカット部は、前記左右方向の幅が前記端面へ向かって次第に狭くなることを特徴とする請求項1記載の分流子。
- 前記溝部は、前記端面から前記軸線方向に延びて上方を向く底面部を有する第1溝部と、
前記第1溝部の前記底面部の一部を下方へ凹ませて前記軸線方向の一端が前記端面側に開口する第2溝部と、を備え、
前記アンダーカット部は、前記第2溝部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分流子。 - 前記溝部は、前記端面から前記軸線方向に延びて上方を向く底面部と、
前記底面部の前記左右方向の両縁から立ち上がって前記端面に連なる一対の側壁部と、を備え、
一対の前記側壁部の少なくとも一方には、前記左右方向に凹む壁凹部が前記端面から離れた位置に形成され、
前記アンダーカット部は、前記壁凹部の位置における一対の前記側壁部の片方の前記側壁部ともう片方の前記側壁部との間の前記左右方向の距離に対して、前記壁凹部の前記端面側に連なる位置における一対の前記側壁部の片方の前記側壁部ともう片方の前記側壁部との間の前記左右方向の距離が狭くなることによって形成され、
前記壁凹部は、上方へ向かって前記外周面に開口していることを特徴とする請求項1又は2に記載の分流子。 - 請求項1から4のいずれかに記載の分流子と、前記固定型と、前記可動型と、前記プランジャチップと、を備えていることを特徴とする鋳造装置。
- 請求項3又は4に記載の分流子と、前記固定型と、前記可動型と、前記プランジャチップと、を備えている鋳造装置であって、
前記分流子は、前記可動型に対して前記上下方向へ移動可能に前記可動型に取り付けられていることを特徴とする鋳造装置。
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