JP3214152B2 - 制動力制御装置 - Google Patents

制動力制御装置

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JP3214152B2
JP3214152B2 JP11194793A JP11194793A JP3214152B2 JP 3214152 B2 JP3214152 B2 JP 3214152B2 JP 11194793 A JP11194793 A JP 11194793A JP 11194793 A JP11194793 A JP 11194793A JP 3214152 B2 JP3214152 B2 JP 3214152B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、制動時の車両の操縦
安定性を向上させることができる制動力制御装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来の制動力制御装置としては、例えば
実開昭59−155264号公報に記載されているよう
に、左右のブレーキ差圧により車両ヨー特性を制御する
ものがある。具体的には、所定値以上の操舵角が与えら
れて制動が行われた場合に、旋回外輪の増圧タイミング
を遅らせて制動時の回頭性を向上させるように制御して
いる。
【0003】しかしながら、上記従来の制動力制御装置
には前輪操舵及び左右制動力差によって生じるヨーレー
トが車速に依存することが考慮されておらず、ヨーレー
トを適性値に制御することが困難であると共に、発生し
たヨーレートの過渡的な特性を改善することが難しいと
いう未解決の課題がある。斯る課題を解決するために、
特開平2−70561号公報に記載される制動力制御装
置が提案されている。この制動力制御装置によれば、車
速や操舵角から目標ヨーレートを設定し、その目標ヨー
レートと実際の車両に発生するヨーレートとが一致する
ように,前輪又は後輪の左右輪のうち何れか一方の制動
力に対して他方の制動力を相対的に調整して相対制動力
差が発生するように制動力を制御することにより、車速
に依存して発生したヨーレートの過渡特性が改善される
という利点がある。
【0004】ちなみに、前記制動力制御装置では、左右
輪の何れか一方の制動力に対して他方の制動力を相対的
に調整するために、左右両輪の制動力の合計が例えばブ
レーキ操作によって得られる総制動力と異なり、運転者
のブレーキ操作感覚に悪影響を与える虞れがある。この
点に関して、本出願人は先に特開平3−281467号
公報に記載した制動力制御装置を提案し、斯る問題を解
決している。この制動力制御装置によれば、前記左右輪
の目標制動力を算出するにあたり前記目標ヨーレートと
発生ヨーレートとを一致させるための目標制動力差を設
定することにより、前記総制動力が変化しないように左
右輪の相対制動力差を目標制動力差に一致させることが
できる。具体的には,前記設定された目標制動力差に応
じて左右輪の夫々に配設されている何れか一方のホイル
シリンダの制動圧を増圧アクチュエータによって増圧
し、他方のホイルシリンダの制動圧を減圧アクチュエー
タによって減圧するようにしている。
【0005】このような制動力制御装置では、各アクチ
ュエータやその駆動回路の失陥等の異常により,システ
ムが正常に動作できなくなった場合(フェイル状態)を
想定し、そのようなフェイル状態では即時に,制動力を
制御しない通常のブレーキ操作による制動力となるフェ
イルセーフ制御が講じられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこのよう
な制動力制御装置におけるフェイルセーフ制御では、例
えば左右輪の制動力の制御中,特に左右輪の制動力差が
大きく生じているようなときにフェイル状態に陥ると、
即座に制動力が通常のブレーキ操作によるものとなる,
即ち左右輪の制動力差が零となるため、ヨーレートが急
激に変化して車両の挙動が不安定になるという虞れがあ
る。
【0007】この発明は、前記問題点に着目してなされ
たものであり、前記のように左右輪の制動力差が大きく
生じているような場合のフェイルセーフ制御にあって
も、ヨーレートの急激な変化を抑制し、車両の挙動を安
定化し得るフェイルセーフ制御の可能な制動力制御装置
を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のうち請求項1に係る制動力制御装置は、図
1の基本構成に示すように、車両の操舵状態を検出する
操舵状態検出手段と、車両の前後方向速度を検出する速
度検出手段と、前記操舵状態検出手段及び速度検出手段
からの信号を入力して車両の運動目標値を設定する運動
目標値設定手段と、前輪及び後輪の少なくとも一方に配
設された左右の制動手段と、前記運動目標値設定手段で
設定された運動目標値を制御対象となる車両で実現する
ために必要な前記制動手段の目標制動力を算出する目標
制動力算出手段と、前記左右の制動手段の制動力を前記
目標制動力と一致するように独立に制御するための制動
力増加手段と制動力減少手段とを制御する制動力制御手
段とを備えた制動力制御装置において、前記制動力増加
手段及び制動力減少手段の異常を検出する異常検出手段
を備え、前記目標制動力算出手段は、前記異常検出手段
が前記制動力増加手段及び制動力減少手段の何れか一方
の異常を検出したときに,異常時の車両の運動状態に応
じて何れか異常でない前記制動力増加手段及び制動力減
少手段で達成すべき前記左右の制動手段の目標制動力を
算出する異常時目標制動力算出手段を備えたことを特徴
とするものである。
【0009】また、本発明のうち請求項2に係る制動力
制御装置は、前記異常時目標制動力算出手段が、前記異
常検出の前後とも前記運動目標値に追従するために必要
な目標制動力を算出する第1異常モード目標制動力算出
手段を備えたことを特徴とするものである。また、本発
明のうち請求項3に係る制動力制御装置は、前記異常時
目標制動力算出手段が、前記異常検出後に前記運動目標
値が急激に変化しないために必要な目標制動力を算出す
る第2異状モード目標制動力算出手段を備えたことを特
徴とするものである。
【0010】また、本発明のうち請求項4に係る制動力
制御装置は、前記異常時目標制動力算出手段が、前記異
常検出後に非制御の通常制動力まで次第に変化する目標
制動力を算出する第3異状モード目標制動力算出手段を
備えたことを特徴とするものである。また、本発明のう
ち請求項5に係る制動力制御装置は、前記異常時目標制
動力算出手段が、前記操舵状態検出手段や速度検出手段
等から得られる車両の運動状態に応じて前記各異常モー
ド目標制動力算出手段を選択して設定する異常モード設
定手段を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
【作用】本発明の制動力制御装置においては、前記運動
目標値設定手段で車両の操舵状態(例えば操舵角検出
値)と、車両の前後方向速度(例えば車速)とに基づい
て運動目標値(例えばヨーレート)を設定し、この運動
目標値と実際に車両に発生する運動値とを一致させるよ
うに車両の左右輪の目標制動力差が発生させるべく、前
記目標制動力算出手段で目標制動力を算出する。そして
前記制動力制御手段は、例えば増圧アクチュエータ等の
制動力増加手段と減圧アクチュエータ等の制動力減少手
段とを用いてホイルシリンダの制動圧を増減圧すること
により,左右の制動手段の制動力がこの目標制動力で一
致するように各輪の制動手段を独立に制御する。
【0012】一方、前記異常検出手段が制動力増加手段
及び制動力減少手段の各アクチュエータや駆動回路の失
陥等の異常を検出した場合,即ちフェイル状態では、前
記異常時目標制動力算出手段が,異常でない前記制動力
増加手段及び制動力減少手段で達成すべき前記左右の制
動手段の目標制動力を車両の運動状態に応じて算出す
る。この異常時の目標制動力を算出するにあたって、例
えば異常検出前の車両に発生するヨーレートが大きい場
合,即ち車速と目標制動力差とが共に大きい場合は、ヨ
ーレート,即ち運動目標値に追従する目標制動力差が発
生するように,前記第1異状モード目標制動力算出手段
で目標制動力を算出する。また、異常検出前の車両に発
生するヨーレートが小さい場合,即ち車速若しくは目標
制動力差の何れかが小さい場合は、例えば制御中の制動
力を非制御の通常制動力に一定の割合で戻すように,前
記第3異常モード目標制動力算出手段で異常検出後に次
第に変化する目標制動力を算出する。更に、車速及び目
標制動力差が両運動状態の中庸をなすような場合は、例
えば前記運動目標値に追従するように設定される目標制
動力差に対してこれをやや小さめに設定し、この小さめ
に設定された目標制動力差が発生するように前記第2異
常モード目標制動力算出手段で前記運動目標値が急激に
変化しないために必要な目標制動力を算出する。そし
て、このような車両の運動状態に応じた異常モード目標
制動力算出手段の選択設定は、前記異常モード設定手段
にて行う。従って、各輪に対する目標制動力は変化する
ものの何れの場合にも制御対象である左右輪に発生して
いた制動力差の変動は車両の運動状態に応じて小さくな
り、運動値(ヨーレート)の急激な変化が抑制されるか
ら、車両の挙動変化も緩やかになる。従って、例えばこ
のフェイル状態を何らかの手段で運転者に認識せしめて
も、車両挙動変化の緩やかなフェイルセーフ制御によっ
て運転者への心理的影響を緩和し、所謂パニック状態の
誘因を防止することが可能となる。
【0013】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図2はこの発明の一実施例を示す油圧・電気系
統図である。図中、1FL,1FRは前輪に取付けられ
た左右の制動手段としてのホイルシリンダ、1RL,1
RRは後輪に取付けられた左右の制動手段としてのホイ
ルシリンダであり、このうち前輪側のホイルシリンダ1
FL,1FRに供給されるブレーキ液圧は二つのアクチ
ュエータ2、15によって制御され、後輪側のホイルシ
リンダ1RL,1RRに供給されるブレーキ液圧は一方
のアクチュエータ2だけによって制御される。
【0014】このうち一方のアクチュエータ2は図3に
示すように、従来のアンチスキッド制御用アクチュエー
タと同様の構成を有し、他方のアクチュエータ15を介
して前輪側のホイルシリンダ1FL,1FRを個別に制
御する二つの3ポート3位置電磁方向切換弁3FL及び
3FRと、後輪側のホイルシリンダ1RL及び1RRを
同時に制御する3ポート3位置電磁方向切換弁3Rとを
備えている。これらの電磁方向切換弁3FL〜3Rはホ
イルシリンダ1FL〜1Rのブレーキ液圧をマスタシリ
ンダ5のブレーキ液圧以下に制御するためのものであ
り、その用途からこのアクチュエータ2は減圧用のアク
チュエータと言える。
【0015】そして、電磁方向切換弁3FL及び3FR
のPポートがブレーキペダル4に連結されている2系統
マスタシリンダ5の一方の系統に接続され、また電磁方
向切換弁3FL及び3FRのAポートが個別に他方のア
クチュエータ15に接続され、さらにBポートがモータ
(図示せず)によって回転駆動される油圧ポンプ7Fを
介してマスタシリンダ5の一方の系統に接続されてい
る。
【0016】また、電磁方向切換弁3RのPポートが前
記2系統マスタシリンダ5の他方の系統に接続され、ま
た電磁方向切換弁3RのAポートがホイルシリンダ1R
L及び1RRに接続され、Bポートがモータ(図示せ
ず)によって回転駆動される油圧ポンプ7Rを介してマ
スタシリンダ5の他方の系統に接続されている。さら
に、電磁方向切換弁3FL及び3FRのPポートと油圧
ポンプ7Fとの間の管路にアキュムレータ8Fが接続さ
れ、Bポートと油圧ポンプ7Fとの間の管路にリザーバ
タンク9Fが接続され、同様に電磁方向切換弁3RのP
ポートと油圧ポンプ7Rとの間の管路にアキュムレータ
8Rが接続され、Bポートと油圧ポンプ7Rとの間の管
路にリザーバタンク9Rが接続されている。
【0017】ここで、前輪側電磁方向切換弁3FL,3
FRの夫々は、図3に示すようにノーマル位置の第1の
切換位置でマスタシリンダ5と他方のアクチュエータ1
5とを直接接続してブレーキ液圧をマスタシリンダ5の
ブレーキ液圧まで増圧する増圧状態とし、第2の切換位
置で他方のアクチュエータ15とマスタシリンダ5及び
油圧ポンプ7Fとの間を遮断してブレーキ液圧を保持す
る保持状態とし、さらに第3の切換位置で他方のアクチ
ュエータ15とマスタシリンダ5との間を油圧ポンプ7
Fを介して接続することにより、ブレーキ液をマスタシ
リンダ5側に戻す減圧状態とし、これらの切換位置が後
述する制動圧制御装置16から供給される3段階の電流
値によって切換制御される。
【0018】また、後輪側電磁方向切換弁3Rは、ノー
マル位置の第1の切換位置でマスタシリンダ5とホイル
シリンダ1RL,1RRとを直接接続してホイルシリン
ダ1RL,1RRのブレーキ液圧をマスタシリンダ5の
ブレーキ液圧まで増圧する増圧状態とし、第2の切換位
置でホイルシリンダ1RL,1RRとマスタシリンダ5
及び油圧ポンプ7Rとの間を遮断してホイルシリンダ1
RL,1RRのブレーキ液圧を保持する保持状態とし、
さらに第3の切換位置でホイルシリンダ1RL,1RR
とマスタシリンダ5との間を油圧ポンプ7Rを介して接
続することにより、ホイルシリンダ1RL,1RR内の
ブレーキ液をマスタシリンダ5側に戻す減圧状態とし、
これらの切換位置が後述する制動圧制御装置16から供
給される3段階の電流値によって切換制御される。
【0019】また、他方のアクチュエータ15は図4に
示すように、従来のトラクションコントロール用アクチ
ュエータと同様の構成を有し、前記一方のアクチュエー
タ2からのブレーキ液圧を前輪側のホイルシリンダ1F
L,1FRに入力したりこのアクチュエータ15からの
出力を遮断したりする切換え弁21FL及び21FR
と、前輪側のホイルシリンダ1FL及び1FRのブレー
キ液圧をマスタシリンダ5のブレーキ液圧以上まで個別
に制御する3ポート3位置電磁方向切換弁22FL及び
22FRとを備えており、その用途から増圧用のアクチ
ュエータと言える。
【0020】そして、電磁方向切換弁22FL及び22
FRのAポートは前記切換え弁21FL,21FRとホ
イルシリンダ1FL,1FRとを接続する管路に接続さ
れ、その間には同切換え弁21FL及び21FRを切換
えるプランジャ型ピストン23FL及び23FRと絞り
弁24FL及び24とが介在されている。またこの電磁
方向切換弁22FL及び22FRのBポートはブレーキ
液リザーバタンク25Fのブレーキ液を加圧する油圧ポ
ンプ26Fに接続され、さらにPポートが同リザーバタ
ンク25Fに接続されている。
【0021】また、前記油圧ポンプ26Fと3ポート3
位置電磁方向切換弁22FL及び22FRとの間の管路
には圧力スイッチ27が設けられると共にアキュームレ
ータ28が接続されており、油圧ポンプ27により加圧
されたブレーキ液はアキュームレータ28に蓄圧される
ようにしてある。さらに、前記アキュームレータ28は
リリーフ弁29を介してリザーバ25Fに接続されてい
る。そして前記圧力スイッチ27の信号は後述する制動
圧制御装置16に入力されており、ブレーキ液圧が第一
の所定値P0 を下回ると,同スイッチ27からの信号に
基づいて制動圧制御装置16から出力された油圧ポンプ
駆動信号により,油圧ポンプ26Fが駆動され、ブレー
キ液圧が第二の所定値P1 (>P0 )を上回ると,同ス
イッチ27からの信号に基づいて駆動信号が停止され
る。さらにブレーキ液圧が第三の所定値P2 (>P1
を上回ると,圧力スイッチ27からの信号に基づいて制
動圧制御装置16から出力されたリリーフ弁駆動信号に
より,リリーフ弁29が駆動し、アキュームレータ28
内のブレーキ液がリザーバタンク25Fにリリーフされ
る。
【0022】一方、各電磁方向切換弁22FL及び22
FRの夫々は、図4に示すように第3の切換位置では前
記プランジャ型ピストン23FL,23FRとアキュー
ムレータ28とを連通して同ピストン23FL,23F
Rのロッドを前進させ、このピストン23FL,23F
Rのロッドにより切換え弁21FL,21FRを切換え
て,前記減圧用アクチュエータ2側への出力を遮断する
と同時に、同ピストン23FL,23FR内のブレーキ
液をホイルシリンダ1FL,1FRに加圧供給してマス
タシリンダ5のブレーキ液圧以上まで増圧する。また、
第2の切換位置では前記プランジャ型ピストン23F
L,23FRとアキュームレータ28とが遮断されて同
ピストン23FL,23FRのロッドはその位置に停止
し、ホイルシリンダ1FL,1FRのブレーキ液圧が保
持される。また、ノーマルの第1の切換位置では、前記
プランジャ型ピストン23FL,23FRとリザーバタ
ンク25Fとが連通されて同ピストン23FL,23F
R中のブレーキ液圧がリリーフされ、同ピストン23F
L,23FRのロッドが後退してホイルシリンダ1F
L,1FRが減圧され、それと同時に切換え弁21F
L,21FRが定常位置に戻って減圧用アクチュエータ
2からのブレーキ液圧がホイルシリンダ1FL,1FR
に入力される。これらの切換位置は後述する制動圧制御
装置16から供給される3段階の電流値によって切換制
御される。なお、プランジャ型ピストン23FL,23
FRの切換位置には逆止弁を用い、アキュームレータ2
8のブレーキ液圧とマスタシリンダ5のブレーキ液圧と
の差圧により同ピストン23FL,23FRのロッドが
自動的に前進/後退するようにしてある。また、前記増
圧状態では絞り弁24FL,24FRを切換えて絞り側
にし、プランジャ型ピストン23FL,23FRがゆっ
くりと前進するようにしてある。
【0023】そして本実施例では、これらの各アクチュ
エータ2,15の夫々に,当該アクチュエータを構成す
る各構成部品及び駆動回路の異常を検出し、このうち,
どれか一つでも異常が検出された場合をフェール状態と
して該当するアクチュエータの機能及び作用を停止する
異常検出回路6a,6bが設けられている。具体的には
図2に明示するように前記減圧用アクチュエータ2には
異常検出回路6aが,増圧用アクチュエータ15には異
常検出回路6bが,夫々取付けられており、これらの異
常検出回路6a,6bは、該当するアクチュエータ2,
15の構成部品や駆動回路の失陥等の異常があった場合
に各アクチュエータ2,15の機能を停止して当該アク
チュエータの出力側のブレーキ液圧を非制御状態にする
と共に,異常検出信号fd1,fd2を制動圧制御装置
16に向けて出力する。
【0024】一方、車両には図2に示すように、ステア
リングホイール10の操舵角を検出して、ステアリング
ホイール10が中立位置にあるときに零の電圧、この中
立位置から右切りしたときに操舵角に応じた負の電圧、
及び中立位置から左切りしたときに操舵角に応じた正の
電圧の検出信号を出力して,操舵角検出値θを検出する
操舵状態検出手段としての操舵角センサ11が配設され
ている。また、車速に応じた検出信号を出力して車速検
出値VX を検出する速度検出手段としての車速センサ1
2、またブレーキペダル4の踏込状態に応じた検出信号
を出力してブレーキ踏込検出値SBを検出するブレーキ
スイッチ13が取付けられている。更に、各ホイルシリ
ンダ1FL,1FR,1RLのシリンダ圧に応じた検出
信号を出力して圧力検出値PFL,PFR,PR を検出する
圧力センサ14FL,14FR,14R、2系統マスタ
シリンダ5の夫々の系のシリンダ圧に応じた検出信号を
出力して圧力検出値PMCF 及びPMCR を検出する圧力セ
ンサ14MCF,14MCRが取付けられている。
【0025】制動圧制御装置16は、図5に示すよう
に、各センサ11,12,13,14FL〜14MC
F,14MCRの各検出信号と前記異常検出回路6a,
6bの異常検出信号とが入力されるマイクロコンピュー
タ19と、このマイクロコンピュータ19から出力され
る制御信号CSFL1 ,CSFR1 及びCSR が個別に入力
されて,前述した減圧用アクチュエータ2の電磁方向切
換弁3FL,3FR及び3Rのソレノイドを駆動するフ
ローティング形の定電流回路20FL1,20FR1及
び20Rと、同マイクロコンピュータ19から出力され
る制御信号CSFL2,CSFR2 が個別に入力されて,前
述した増圧用アクチュエータ15の電磁方向切換弁22
FL,22FRのソレノイドを駆動するフローティング
形の定電流回路20FL2,20FR2とを備えてい
る。
【0026】マイクロコンピュータ19は図5に示すよ
うに、少なくともA/D変換機能を有する入力インタフ
ェース回路19a、D/A変換機能を有する出力インタ
フェース回路19b、演算処理装置19c及び記憶装置
19dを備えている。この演算処理装置19cは、操舵
角センサ11からの操舵角検出値θ,車速センサ12か
らの車速検出値VX ,ブレーキスイッチ13からのブレ
ーキ検出値SB及び圧力センサ14MCF,14MCR
からのマスタシリンダ圧検出値PMCF ,PMCR並びに図
8,図9に示す制御マップに基づいて図7の処理を実行
して,左右前輪及び後輪の目標制動力としての目標ホイ
ルシリンダ圧P* FR,P* FL及びP* Rを算出し、これ
ら目標ホイルシリンダ圧P* FR,P* FL及びP* R と圧
力センサ14FR,14FL,14R,14MCF及び
14MCRのシリンダ圧検出値P FR,PFL,PR ,P
MCF 及びPMCR とに基づいて図10及び図11の処理を
実行して、前記減圧用アクチュエータ2の電磁方向切換
弁3FL,3FRを制御する制御信号CSFL1 ,CS
FR1 を出力し、且つ電磁方向切換弁3Rに対しては制御
信号CSR を出力し、増圧用アクチュエータ15の電磁
方向切換弁23FL,23FRを制御する制御信号CS
FL2 ,CSFR2 を出力する。
【0027】次に、上記実施例の動作を説明する。先
ず、この実施例において車両の運動目標値としてヨーレ
ートと横方向運動値の算出について説明する。車両の運
動を、図6に示すように、ヨーイング及び横方向の2自
由度と考えた場合、これらの運動方程式は下記1式及び
2式で表すことができる。
【0028】 IZ ・ψ"(t)=Cf ・Lf −Cr ・Lr +Tf ・(BFL(t) −BFR(t))/2 ……… (1) M・V'y(t) = 2( Cf +Cr ) −M・Vx(t)・ψ'(t) ……… (2) ここでIZ は車両ヨー慣性モーメント、ψ'(t)はヨーレ
ート、Lf は車両重心と前車軸との間の距離、Lr は車
両重心と後車軸との間の距離、Tf は前輪トレッド、B
FL(t) は左前輪制動力、BFR(t) は右前輪制動力、Mは
車両重量、Vy(t) は車両横方向速度、V'y(t) は車両
横方向加速度、Vx(t) は車両前後方向速度である。
【0029】また、Cf 及びCr は、前輪及び後輪のコ
ーナリングフォースであって、下記3式及び4式で表す
ことができる。 Cf = Kf {θ(t) /N−(Vy +Lf ・ψ'(t))/Vx(t)}……… (3) Cr =−Kr (Vy −Lr ・ψ'(t))/Vx(t) ……… (4) なお、θ(t) は操舵角、Nはステアリングギヤ比、Kf
は前輪コーナリングパワー、Kr は後輪コーナリングパ
ワーである。
【0030】この3式及び4式を前記1式及び2式に代
入し、ヨーレートψ'(t)、横方向速度Vy(t)に関する微
分方程式と考えると、それらは下記5式及び6式で表現
することができる。 ψ"(t)=a11・ψ'(t)+a12・Vy(t)+b1 ・θ(t) +bpl・ΔBf (t) ……… (5) V'y(t) =a21・ψ'(t)+a22・Vy(t)+b2 ・θ(t) ……… (6) 但し、 ΔBf (t) =BFL(t) −BFR(t) …… (7.1) a11=−2(Kf ・Lf 2 +Kr ・Lr 2 )/(IZ ・Vx ) …… (7.2) a12=−2(Kf ・Lf −Kr ・Lr )/(IZ ・Vx ) …… (7.3) a21=−2(Kf ・Lf −Kr ・Lr )/(M・Vx )−Vx …… (7.4) a22=−2(Kf +Kr )/(M・Vx ) …… (7.5) b1 =2・Kf ・Lf /(IZ ・N) …… (7.6) b2 =2・Kf /(M・N) …… (7.7) bpl=Tf /(2・Iz ) …… (7.8) 通常の車両を考えると前輪制動力差ΔBf (t) は零であ
るため、前記5式のΔBf (t) の項を無視すると操舵角
θ(t) に対するヨーレートψ'(t)の伝達関数は微分演算
子Sを用いて下記8式で表される。
【0031】 同様にして、操舵角θ(t) に対する車両横方向速度Vy
(t) の伝達関数は微分演算子Sを用いて下記9式で表さ
れる。
【0032】 これら8式、9式の伝達関数は(一次)/(二次)の形
であるから、車両前後方向速度VX が大きくなる程,操
舵角入力θ(t) に対する発生ヨーレートψ'(t)及び車両
横方向速度Vy (t) は振動的になり、車両操縦性及び安
定性が悪化することが分かる。即ち、前記8式、9式の
分母の一次の項に係る係数{−( a11+a2 2 ) }は、制御
系の減衰係数ζに相当し、このため係数{−( a11+
a22 ) }に前記7.2式,7.5式に示すa11及びa22
を代入すると、これらa11,a22が常に負の値となるこ
とから、減衰係数ζは正の減衰であり、且つ車両前後方
向速度Vx が大きくなる程減衰係数ζは零に近づくこと
になる。つまり、車両前後方向速度Vx が大きくなる
程、制御系の減衰係数ζが小さくなるため、ヨーレート
ψ'(t)及び車両横方向速度Vy (t) は振動的(減衰し難
い状態)になる。
【0033】そこで、例えば目標ヨーレートψ'r(t) を
操舵角入力θ(t) に対してオーバシュート及びアンダシ
ュートの無い1次遅れ系とし、且つ定常値を通常の車両
と等しく設定すれば、目標ヨーレートψ'r(t) は下記1
0式で表すことができる。 ψ'r(t) =H0 ・θ(t) /(1+τt ) ………(10) 但し、H0 は定常ヨーレートゲインで、スタビリティフ
ァクタAを用いることにより、下記11式によって定義
される。
【0034】 H0 =Vx /{(1+A・Vx 2)・L・N) ………(11) ここで、Lはホイールベースであり、またスタビリティ
ファクタAは、下記12式で表される。 次に左右前輪の制動力差ΔBf (t) を用いて、車両の発
生ヨーレートψ'(t)を目標ヨーレートψ'r(t) に一致さ
せるための目標制動力を算出する方法について説明す
る。目標ヨーレートの微分値ψ"r(t) は前記10式を変
形した下記13式で求めることができる。
【0035】 ψ"r(t) =H0 ・θ(t) /τ−ψ'r(t) /τ ………(13) 操舵角入力θ(t) と左右前輪制動力差ΔBf (t) による
発生ヨーレートψ'(t)が、目標ヨーレートψ'r(t) に一
致すると仮定すれば、各々の微分値ψ"(t),ψ"r(t) も
一致すると考えられる。従って、ψ"r(t) =ψ"(t)、
ψ'r(t) =ψ'(t)と仮定し、また前記仮定が成立する時
の横方向速度Vy (t) を目標横方向速度Vyr(t) と定義
して、これらを前記5式及び6式に代入することによ
り、下記14式及び15式を得ることができる。
【0036】 ψ"r(t) =a11・ψ'r(t) +a12・Vyr(t) +b1 ・θ(t) +bpl・ΔBf (t) ………(14) Vyr'(t)=a21・ψ'r(t) +a22・Vyr(t) +b2 ・θ(t) ………(15) そして、上記15式に前記14式を代入すれば、左右前
輪の制動力差ΔBf (t) は下記16式で求めることがで
きる。
【0037】 ΔBf (t) =(ψ"r(t) −a11・ψ'r(t) −a12・Vyr(t) −b1 ・θ(t) ) /bpl ………(16) この16式で求めた左右前輪の制動力差ΔBf (t) を発
生させるためには、左右前輪のホイルシリンダ圧に差圧
を生じさせればよく、ホイルシリンダ圧Pと制動力Bf
との関係は、車輪の慣性モーメントを無視すれば、下記
17式で求めることができる。
【0038】 Bf =kp ・P=2・μp ・Ap ・rp ・P/R ………(17) kp =2・μp ・Ap ・rp /R ………(18) 但し、kp はホイルシリンダ圧と制動力との比例定数で
あり、μp はブレーキパッド及びディスクロータ間摩擦
係数、Ap はホイルシリンダ面積、rp はディスクロー
タ有効半径、Rはタイヤ半径である。
【0039】したがって、左右前輪のホイルシリンダ圧
の目標差圧をΔP(t) とすれば、この目標差圧ΔP(t)
は、 ΔP(t) =ΔBf (t) /kp ………(19) で表すことができる。そして、上記19式で求められた
目標差圧ΔP(t) とマスタシリンダ圧PMCF(t) とか
ら、全制動力が変化しないように,即ち左右前輪のホイ
ルシリンダ圧の和がマスタシリンダ圧の二倍になるよう
に、左右前輪の目標ホイルシリンダ圧P * FL (t),P*
FR (t)及び後輪の目標ホイルシリンダ圧P* R (t) を下
記20式〜22式に従って設定する。
【0040】 P* FL (t)= max(PMCF (t) +ΔP(t) /2、 ΔP(t) 、0)……(20) P* FR (t)= max(PMCF (t) −ΔP(t) /2、−ΔP(t) 、0)……(21) P* R (t) =PMCR (t) ………(22) 但し、前記20式〜22式における max(A、B、C)
はA,B,Cの最大値を選択する意味である。
【0041】次にフェール状態において,異常検出前後
の車両の運動状態に応じた目標ホイルシリンダ圧の設定
手段について説明する。まず前記したように目標ヨーレ
ートψ'r及び車両の発生ヨーレートψ' は車両前後方向
速度(車速)Vx に伴って増加する。一方、目標ヨーレ
ートψ'r及び発生ヨーレートψ' の増加に伴って前記1
9式までで算出される目標差圧ΔPも増加する。このよ
うな条件下にあって,車速Vx が大きく又は目標差圧Δ
Pが大きい場合には目標ヨーレートψ'r及び発生ヨーレ
ートψ' も大きいとすれば、この目標ヨーレートψ'r及
び発生ヨーレートψ' の大きい状況下でフェール状態に
陥り,早期に非制御の通常制動力に復元するなどして左
右前輪の制動力差が急激に変化すると、前記コーナリン
グフォースに関与するコーナリングパワの急激な変化と
共に車両の挙動が不安定になる。従って、このような車
両の運動状態では,フェール前後で発生ヨーレートψ'
が目標ヨーレートψ'rに追従することを重視して、左右
前輪の制動力差が変化しないように,即ち目標差圧ΔP
が生じるように左右前輪の目標ホイルシリンダ圧P* FL
(t),P* FR (t)を設定すべきである。この場合を第1
異常モードと定義する。逆に,車両前後方向速(車速)
Vx に応じて目標差圧ΔPが或るレベル以下である場合
には、車両の旋回,非旋回に関わらず車両の運動は安定
していると判断されるから,早期に非制御の通常制動力
に復元するように目標差圧ΔPを収束してもよく、例え
ば当該異常検出前の目標ホイルシリンダ圧P* FL (t),
* FR (t)を一定の割合で,マスタシリンダ圧P
MCF (t) まで変化させてもよい。この場合を第3異常モ
ードと定義する。また、両者の中庸となるような場合に
は、例えば前記目標差圧ΔPを“1”以上の定数で除算
するなどして小さめに設定し,この小さめに設定された
目標差圧ΔPが達成されるように左右前輪の目標ホイル
シリンダ圧P* FL (t),P* FR (t)を設定すればよい。
この場合を第2異常モードと定義する。
【0042】ところで、前記減圧用アクチュエータ2及
び増圧用アクチュエータ15の何れか一方がフェールし
ている状況下で,このような異常時の目標ホイルシリン
ダ圧P* FL (t),P* FR (t)を達成するためには、何れ
か他方のフェールしていないアクチュエータを用いて行
う必要がある。このうち,具体的に前記目標差圧ΔPを
ホイルシリンダ圧の減圧若しくは増圧のみによって達成
する場合、減圧若しくは増圧制御されない輪のホイルシ
リンダ圧は即座に通常マスタシリンダ圧に変化する。こ
こで、前記減圧のみを施して目標差圧ΔPを達成するた
めの目標ホイルシリンダ圧P* FL (t),P* FR (t)を得
る場合には,マスタシリンダ圧PMCF (t) から目標差圧
を減算した値を減圧制御対象となるホイルシリンダ圧に
設定すればよいが、この場合には全制動力はマスタシリ
ンダ圧PMCF (t) の2倍値以下となり,全体的な制動力
が減少するため、この制動力減少が運転者に与える心理
的な影響について考慮する必要がある。一方、前記増圧
のみを施して目標差圧ΔPを達成するための目標ホイル
シリンダ圧P* FL (t),P* FR (t)を得る場合には,マ
スタシリンダ圧PMCF (t) に目標差圧を加算した値を増
圧制御対象となるホイルシリンダ圧に設定すればよい
が、この場合には全制動力がマスタシリンダ圧P
MCF (t) の2倍値以上となり、全体的な制動力が増加す
ると共に,増圧制御対象となる車輪がロックする傾向に
なるから、これらを考慮しなければならない。以上の理
由により、本実施例では前記減圧用アクチュエータ2が
フェールした場合と,増圧用アクチュエータ15がフェ
ールした場合とで異なる制御マップを用い、各制御マッ
プに従って該当するフェール前後の車両の運動状態にお
ける前記各異常モードを設定することとした。勿論、こ
れらの諸条件が総合的に考慮されている場合には一つの
制御マップで増圧及び減圧に係る各異常モードを設定す
ることとしてもよい。
【0043】増圧用アクチュエータ15がフェールした
場合,即ち減圧用アクチュエータ2でホイルシリンダ圧
を制御する場合の異常モード設定の制御マップを図8
に、減圧用アクチュエータ2がフェールした場合,即ち
増圧用アクチュエータ15でホイルシリンダ圧を制御す
る場合の異常モード設定の制御マップを図9に示す。図
8の減圧用アクチュエータ2でホイルシリンダ圧を制御
する制御マップでは、車速Vx が所定値V0 以上で且つ
目標差圧の絶対値|ΔP|が所定値|ΔP2 |以上のエ
リア,及び車速Vx が前記所定値V0 で目標差圧の絶対
値|ΔP|が前記所定値|ΔP2 |となる点と車速Vx
が前記所定値V0 よりも大きい所定値V2で目標差圧の
絶対値|ΔP|が前記所定値|ΔP2 |よりも小さい所
定値|ΔP 0 |となる点とを結ぶ線分よりも車速Vx 並
びに目標差圧の絶対値|ΔP|が大きいエリアを第1異
常モード(異常モード1)エリアとし、目標差圧の絶対
値|ΔP|が前記所定値|ΔP0 |未満のエリア,及び
車速Vx が零で目標差圧の絶対値|ΔP|が前記所定値
|ΔP2 |よりもやや小さい所定値|ΔP1 |となる点
と車速Vx が前記所定値V2 よりも小さく且つ前記所定
値V0 よりも大きい所定値V1 で目標差圧の絶対値|Δ
P|が前記所定値|ΔP0 |となる点とを結ぶ線分より
も車速Vx 並びに目標差圧の絶対値|ΔP|が小さいエ
リアを第3異常モード(異常モード3)エリアとし、両
者の中間エリアを第2異常モード(異常モード2)エリ
アとした。但し、何れの場合も前記総制動力の減少方向
への変動を規制するために目標差圧の絶対値の上限値|
ΔP|max を設定した。
【0044】一方、図9の増圧用アクチュエータ15で
ホイルシリンダ圧を制御する制御マップでは、車速Vx
が所定値V'0以上で且つ目標差圧の絶対値|ΔP|が所
定値|ΔP'2|以上のエリア,及び車速Vx が前記所定
値V'0で目標差圧の絶対値|ΔP|が前記所定値|Δ
P'2|となる点と車速Vx が前記所定値V0 よりも大き
い所定値V2 で目標差圧の絶対値|ΔP|が前記所定値
|ΔP'2|よりも小さい所定値|ΔP'0|となる点とを
結ぶ線分よりも車速Vx 並びに目標差圧の絶対値|ΔP
|が大きいエリアを第1異常モード(異常モード1)エ
リアとし、目標差圧の絶対値|ΔP|が前記所定値|Δ
P'0|未満のエリア,及び車速Vx が零で目標差圧の絶
対値|ΔP|が前記所定値|ΔP'2|よりもやや小さい
所定値|ΔP'1|となる点と車速Vx が前記所定値V'2
よりも小さく且つ前記所定値V'0よりも大きい所定値
V'1で目標差圧の絶対値|ΔP|が前記所定値|ΔP'0
|となる点とを結ぶ線分よりも車速Vx 並びに目標差圧
の絶対値|ΔP|が小さいエリアを第3異常モード(異
常モード3)エリアとし、両者の中間エリアを第2異常
モード(異常モード2)エリアとした。但し、何れの場
合も前記総制動力の増加方向への変動を規制するために
目標差圧の絶対値の上限値|ΔP' |max を設定した。
【0045】次に各異常モードにおける目標制動力,具
体的にはホイルシリンダ圧の算出手段について説明す
る。まず、第1異常モードでは運動の目標値となる目標
ヨーレートψ'rに車両の発生ヨーレートψ' を一致させ
ればよいのであるから,前記19式で得られる目標差圧
ΔPをそのまま適用することができる。この場合、フェ
ールしたアクチュエータによって増減圧されるホイルシ
リンダ圧はマスタシリンダ圧となるから,フェールして
いないアクチュエータによってホイルシリンダ圧を増減
圧し、これによって前記目標差圧ΔPを達成する。従っ
て、増圧用アクチュエータ15がフェールした場合の第
1異常モードにおける左右前輪の目標ホイルシリンダ圧
* FL(t),P* FR (t)及び後輪の目標ホイルシリンダ
圧P* R (t) は下記23式〜25式に従って算出するこ
とができる。
【0046】 P* FL (t)= max{ min(PMCF (t) +ΔP(t) 、PMCF (t) )、0} ………(23) P* FR (t)= max{ min(PMCF (t) −ΔP(t) 、PMCF (t) )、0} ………(24) P* R (t) =PMCR (t) ………(25) 但し、前記23式〜25式における min(A、B、C)
はA,B,Cの最小値を選択する意味である。
【0047】一方、減圧用アクチュエータ2がフェール
した場合の第1異常モードにおける左右前輪の目標ホイ
ルシリンダ圧P* FL (t),P* FR (t)及び後輪の目標ホ
イルシリンダ圧P* R (t) は下記26式〜28式に従っ
て算出することができる。 P* FL (t)= max(PMCF (t) +ΔP(t) 、PMCF (t) 、0) ………(26) P* FR (t)= max(PMCF (t) −ΔP(t) 、PMCF (t) 、0) ………(27) P* R (t) =PMCR (t) ………(28) 次に第2異常モードでは、前記19式までで算出される
目標差圧ΔPに対して,これを設定された定数で除算す
るなどして小さめに設定することで、発生ヨーレート
ψ' を目標ヨーレートψ'rに追従させながら,全体的な
制動力の変動,即ち負の加速度変動を抑制することがで
きる。従って、増圧用アクチュエータ15がフェールし
た場合の第2異常モードにおける左右前輪の目標ホイル
シリンダ圧P* FL (t),P* FR (t)及び後輪の目標ホイ
ルシリンダ圧P* R (t) は,パラメータαを用いて下記
29式〜31式に従って算出することができる。
【0048】 P* FL (t)= max{ min(PMCF (t) +ΔP(t) /α、PMCF (t) )、0} ………(29) P* FR (t)= max{ min(PMCF (t) −ΔP(t) /α、PMCF (t) )、0} ………(30) P* R (t) =PMCR (t) ………(31) 一方、減圧用アクチュエータ2がフェールした場合の第
2異常モードにおける左右前輪の目標ホイルシリンダ圧
* FL (t),P* FR (t)及び後輪の目標ホイルシリンダ
圧P* R (t) は,パラメータβを用いて下記32式〜3
4式に従って算出することができる。
【0049】 P* FL (t)= max(PMCF (t) +ΔP(t) /β、PMCF (t) 、0) ………(32) P* FR (t)= max(PMCF (t) −ΔP(t) /β、PMCF (t) 、0) ………(33) P* R (t) =PMCR (t) ………(34) 但し、このα,βは,αorβ≒1でヨーレート重視,α
orβ≫1で負の加速度重視(αroβ=∞で通常ブレー
キ)となるパラメータである。ここでは実用上,1<α
orβ≦2,好ましくは1<αorβ≦1.3の範囲内で可
変とし、前記各制御マップにおいて目標差圧の絶対値|
ΔP|の大きさに合わせて設定されることとした。な
お、このパラメータα,βは予め所定値に固定しておい
てもよい。
【0050】次に第3異常モードでは,フェール直後の
発生ヨーレートが急激に変化しないようにしながら早期
に通常ホイルシリンダ圧に復帰するために、フェール直
前の目標差圧ΔPを一定の割合で零に収束する必要があ
ることから、当該フェール直前の目標差圧をΔP(to)と
し,時間に係る比例係数をk1 として、増圧用アクチュ
エータ15がフェールした場合の第3異常モードにおけ
る左右前輪の目標ホイルシリンダ圧P* FL (t),P* FR
(t)及び後輪の目標ホイルシリンダ圧P* R (t) は,下
記25式〜37式に従って算出することができる。
【0051】 P* FL (t)= max{min(PMCF (t) +(ΔP(to)−k1t)、PMCF (t))、0} ………(35) P* FR (t)= max{min(PMCF (t) −(ΔP(to)−k1t)、PMCF (t))、0} ………(36) P* R (t) =PMCR (t) ………(37) 一方、当該フェール直前の目標差圧をΔP(to)とし、時
間に係る比例係数をk 2 として,減圧用アクチュエータ
2がフェールした場合の第3異常モードにおける左右前
輪の目標ホイルシリンダ圧P* FL (t),P* FR (t)及び
後輪の目標ホイルシリンダ圧P* R (t) は,下記38式
〜40式に従って算出することができる。
【0052】 P* FL (t)= max(PMCF (t) +(ΔP(to)−k2t)、PMCF (t) 、0) ………(38) P* FR (t)= max(PMCF (t) −(ΔP(to)−k2t)、PMCF (t) 、0) ………(39) P* R (t) =PMCR (t) ………(40) しかしながら、前記のように各異常モードにおいて目標
ホイルシリンダ圧の算出式が多様化すると,その分だけ
演算の所要時間が長くなる虞れがあるため、これらの演
算式を以下のようにして簡潔化する。
【0053】まず、第1異常モードにおいては前記第2
異常モードの目標ホイルシリンダ圧演算式29〜34式
の各パラメータα,βを夫々“1”に設定することで,
当該第1異常モードにおける各演算式を当該29〜34
式で代用することができる。一方、前記第3異常モード
における比例係数k1 ,k2 を復帰時定数とすれば,演
算間隔ΔTが一定として,夫々減算される値は下記4
1,42式の目標増減圧ΔP* 1 ,ΔP* 2 で表され
る。
【0054】 ΔP* 1 =k1 ・ΔT ………(41) ΔP* 2 =k2 ・ΔT ………(42) 従って、例えばタイマ割込みによって行われる演算処理
において,フェール直前の目標差圧を含む目標差圧の前
回値をΔP(n-1) とし、この目標差圧の前回値ΔP(n-
1) に夫々目標増減圧ΔP* 1 ,ΔP* 2 を加減算した
値を今回の目標差圧ΔPとし、更に前記第2異常モード
の目標ホイルシリンダ圧演算式29〜34式の各パラメ
ータα,βを夫々“1”に設定することで,当該第3異
常モードにおける各演算式を当該29〜34式で代用す
ることができる。
【0055】従って、前記の演算を、前記マイクロコン
ピュータ19の演算処理装置19cで、図7の目標ホイ
ルシリンダ圧演算処理を実行することにより、通常時に
は車両モデルにおける目標ヨーレートを満足する各輪の
目標ホイルシリンダ圧を算出し、異常時には車両の運動
状態に応じたフェールセーフ制御を可能とする目標ホイ
ルシリンダ圧を算出することができる。なお、図中,F
は異常モードフラグを示し、F=0で正常モード,F=
1で第1異常モード,F=2で第2異常モード,F=3
で第3異常モードを夫々表すが、同時にこの演算処理で
は該当モードに応じた目標ホイルシリンダ圧の算出手段
選定にも用いる。
【0056】即ち、図7の目標ホイルシリンダ圧演算処
理は、所定周期ΔT(例えば5msec)毎のタイマ割込処
理として実行され、先ずステップS60で、操舵角セン
サ11の操舵角検出値θ及び車速センサ12の車速検出
値VX を読込み、次いでステップS61に移行して車速
検出値Vと予め設定された車両の諸元とから前記7.2
式〜7.6式の演算を行って、係数a11〜a22を算出す
る。ここで、前記7.2式〜7.6式における車両の諸
元によって決定される定数部a11V 〜a22V は下記4
3.1式〜43.4式によって予め算出しておく。
【0057】 a11V =−2(Kf ・Lf 2 +Kr ・Lr 2 )/IZ ……(43.1) a12V =−2(Kf ・Lf −Kr ・Lr )/IZ ……(43.2) a21V =−2(Kf ・Lf −Kr ・Lr )/M ……(43.3) a22V =−2(Kf +Kr )/M ……(43.4) 次いで、ステップS62に移行して、車速検出値Vx
と、予め前記12式に基づいて算出されたスタビリティ
ファクタA及び車両の諸元によって決定されるホイール
ベースL、ステアリングギヤ比Nとに基づいて前記11
式の演算を行って定常ヨーレートゲインH0 を算出する
と共に、算出された定常ヨーレートゲインH0 に基づい
て前記13式の演算を行うことにより、目標ヨーレート
の微分値ψ"r(n) を算出し、さらに算出された微分値
ψ"r(n) と目標ヨーレートの前回値ψ'r(n-1) とから下
記44式に従って現在の目標ヨーレートψ'r(n) を算出
し、これを記憶装置19dに形成した目標ヨーレート記
憶領域に更新記憶する。
【0058】 ψ'r(n) =ψ'r(n-1) +ψ"r(n) ・ΔT ………(44) ここで、ΔTはタイマ割込周期である。次いで、ステッ
プS63に移行して、前記ステップS61で算出した係
数a21及びa22と、前記ステップS62で算出した目標
ヨーレートψ'r(n) と横方向速度の前回値Vyr(n-1) と
から前記15式の演算を行って横方向加速度Vyr'(n)を
算出し、この算出された横方向加速度Vyr'(n)と横方向
速度の前回値Vyr(n-1)とから下記45式の演算を行っ
て現在の横方向速度Vyr(n) を算出し、これを記憶装置
19dの横方向速度記憶領域に更新記憶する。
【0059】 Vyr(n) =Vyr(n-1) +Vyr'(n)・ΔT ………(45) 次いで、ステップS64に移行して、前記16式に従っ
て前輪左右の制動力差ΔBf を算出し、算出された制動
力差ΔBf と予め18式に従って算出された比例定数k
p とに基づいて前記19式の演算を行うことにより、目
標差圧ΔPを算出する。
【0060】次いで、ステップS65に移行して、前記
各異常検出回路6a,6bからの異常検出信号fd1,
fd2が出力されていないか否かを判別し、異常検出信
号fd1,fd2が出力されていない場合にはステップ
S66に移行し、そうでない場合にはステップS67に
移行する。前記ステップS66では、異常検出信号fd
1,fd2が出力されていないのであるから前記異常モ
ードフラグを“0”にリセットしてからステップS68
に移行する。
【0061】前記ステップS68では,前記ステップS
64で算出された目標差圧ΔPを目標差圧の前回値ΔP
(n-1) として記憶装置19dに更新記憶してからステッ
プS69に移行して、前記20式〜22式の演算を行う
ことにより正常モードF=0における左前輪の目標ホイ
ルシリンダ圧P* FLを(PMCF +ΔP/2)又はΔP又
は0のいずれか大きい値に設定し、右前輪の目標ホイル
シリンダ圧P* FRを(PMCF −ΔP/2)又はΔP又は
0のいずれか大きい値に設定し、後輪の目標ホイルシリ
ンダ圧P* R をマスタシリンダ圧PMCR に設定してか
ら,タイマ割込演算処理を終了する。
【0062】一方、前記ステップS67では、例えばイ
ンストゥルメントパネルに配設された警告灯を点灯させ
るためなどの警報信号を出力する。次いでステップS7
0に移行して、前記異常検出回路6a,6bによって異
常が検出されたアクチュエータ,即ちフェールしたアク
チュエータが増圧用アクチュエータ15か,減圧用アク
チュエータ2か,或いはそれらの双方かを判別し、増圧
用アクチュエータ15がフェールしている場合にはステ
ップS71に移行し、減圧用アクチュエータ2がフェー
ルしている場合にはステップS72に移行し、双方がフ
ェールしている場合にはステップS73に移行する。
【0063】前記ステップS71では、異常モードフラ
グF=3であるか否かを判別し、異常モードフラグF=
3である場合にはステップS74に移行し、そうでない
場合にはステップS75に移行する。前記ステップS7
5では、異常モードフラグF=1であるか否かを判別
し、異常モードフラグF=1である場合にはステップS
76に移行し、そうでない場合にはステップS77に移
行する。
【0064】前記ステップS77では、フェール直前の
目標差圧,即ち前記ステップS64で算出された目標差
圧ΔP及び車速Vx から,前記図8に示す減圧用制御マ
ップに基づいて各異常モードを設定し、第1異常モード
(異常モード1)である場合には前記ステップS76に
移行し、第2異状モード(異常モード2)である場合に
はステップS78に移行し、第3異常モード(異常モー
ド3)である場合には前記ステップS74に移行する。
【0065】前記ステップS76では、前記29〜31
式におけるパラメータαを“1”に設定してから,ステ
ップS79に移行し、前記目標差圧ΔPを目標差圧の前
回値ΔP(n-1) として記憶装置19dに更新記憶してか
ら,ステップS80に移行する。前記ステップS78で
は、前記29〜31式におけるパラメータαを1<α≦
1.3の範囲で,前記図8の制御マップに従って設定し
てから,ステップS81に移行し、前記目標差圧ΔPを
目標差圧の前回値ΔP(n-1) として記憶装置19dに更
新記憶してから,前記ステップS80に移行する。
【0066】一方、前記ステップS74では、記憶装置
19dに記憶されている目標差圧の前回値ΔP(n−1)を
読込み、その絶対値|ΔP(n−1)|と予め設定されてい
る減圧用目標加減圧ΔP* 1 とを比較し、目標差圧の前
回値の絶対値|ΔP(n−1)|が減圧用目標加減圧ΔP*
1 より小さい場合は前記ステップS73に移行し、そう
でない場合はステップS82に移行する。
【0067】前記ステップS82では、目標差圧の前回
値ΔP(n−1)が正であるか否かを判定し、目標差圧の前
回値ΔP(n−1)が正である場合にはステップS83に移
行し、そうでない場合はステップS84に移行する。前
記ステップS83では、下記46式に基づいて目標差圧
の前回値ΔP(n−1)から減圧用目標加減圧ΔP* 1 を減
じた値を目標差圧ΔPに設定してからステップS85に
移行する。
【0068】 ΔP=ΔP(n−1)−ΔP* 1 ………(46) 前記ステップS84では、下記47式に基づいて目標差
圧の前回値ΔP(n−1)に減圧用目標加減圧ΔP* 1 を和
した値を目標差圧ΔPに設定してから前記ステップS8
5に移行する。 ΔP=ΔP(n−1)+ΔP* 1 ………(47) 前記ステップS85では、前記29〜31式におけるパ
ラメータαを“1”に設定すると共に異常モードフラグ
Fを“3”にセットしてから,ステップS86に移行
し、前記目標差圧ΔPを目標差圧の前回値ΔP(n-1) と
して記憶装置19dに更新記憶してから,前記ステップ
S80に移行する。
【0069】前記ステップS80では、前記ステップS
64で算出された若しくはステップS83,S84で設
定された目標差圧ΔPと,前記ステップS76,S7
8,S85で設定されたパラメータαとを用いて前記2
9〜31式の演算を行うことにより、各異常モードにお
ける左前輪の目標ホイルシリンダ圧P* FLを,(PMCF
+ΔP/α)及びPMCF の何れか小さい値と0との何れ
か大きい値に設定し、右前輪の目標ホイルシリンダ圧P
* FRを,(PMCF −ΔP/α)及びPMCF の何れか小さ
い値と0との何れか大きい値に設定し、後輪の目標ホイ
ルシリンダ圧P* R をマスタシリンダ圧PMCR に設定し
て、タイマ割込演算処理を終了する。
【0070】一方、前記ステップS72では、異常モー
ドフラグF=3であるか否かを判別し、異常モードフラ
グF=3である場合にはステップS87に移行し、そう
でない場合にはステップS88に移行する。前記ステッ
プS88では、異常モードフラグF=1であるか否かを
判別し、異常モードフラグF=1である場合にはステッ
プS89に移行し、そうでない場合にはステップS90
に移行する。
【0071】前記ステップS90では、フェール直前の
目標差圧,即ち前記ステップS64で算出された目標差
圧ΔP及び車速Vx から,前記図9に示す増圧用制御マ
ップに基づいて各異常モードを設定し、第1異常モード
(異常モード1)である場合には前記ステップS89に
移行し、第2異状モード(異常モード2)である場合に
はステップS91に移行し、第3異常モード(異常モー
ド3)である場合には前記ステップS87に移行する。
【0072】前記ステップS89では、前記32〜34
式におけるパラメータβを“1”に設定してから,ステ
ップS92に移行し、前記目標差圧ΔPを目標差圧の前
回値ΔP(n-1) として記憶装置19dに更新記憶してか
ら,ステップS93に移行する。前記ステップS91で
は、前記32〜34式におけるパラメータβを1<β≦
1.3の範囲で,前記図9の制御マップに従って設定し
てから,ステップS94に移行し、前記目標差圧ΔPを
目標差圧の前回値ΔP(n-1) として記憶装置19dに更
新記憶してから,前記ステップS93に移行する。
【0073】一方、前記ステップS87では、記憶装置
19dに記憶されている目標差圧の前回値ΔP(n−1)を
読込み、その絶対値|ΔP(n−1)|と予め設定されてい
る増圧用目標加減圧ΔP* 2 とを比較し、目標差圧の前
回値の絶対値|ΔP(n−1)|が減圧用目標加減圧ΔP*
2 より小さい場合は前記ステップS73に移行し、そう
でない場合はステップS95に移行する。
【0074】前記ステップS95では、目標差圧の前回
値ΔP(n−1)が正であるか否かを判定し、目標差圧の前
回値ΔP(n−1)が正である場合にはステップS96に移
行し、そうでない場合はステップS96に移行する。前
記ステップS96では、下記48式に基づいて目標差圧
の前回値ΔP(n−1)から増圧用目標加減圧ΔP* 2 を減
じた値を目標差圧ΔPに設定してからステップS98に
移行する。
【0075】 ΔP=ΔP(n−1)−ΔP* 2 ………(48) 前記ステップS97では、下記49式に基づいて目標差
圧の前回値ΔP(n−1)に増圧用目標加減圧ΔP* 2 を和
した値を目標差圧ΔPに設定してから前記ステップS9
8に移行する。 ΔP=ΔP(n−1)+ΔP* 2 ………(49) 前記ステップS98では、前記32〜34式におけるパ
ラメータβを“1”に設定すると共に異常モードフラグ
Fを“3”にセットしてから,ステップS99に移行
し、前記目標差圧ΔPを目標差圧の前回値ΔP(n-1) と
して記憶装置19dに更新記憶してから,前記ステップ
S93に移行する。
【0076】前記ステップS93では、前記ステップS
64で算出された若しくはステップS96,S97で設
定された目標差圧ΔPと,前記ステップS89,S9
1,S98で設定されたパラメータβとを用いて前記3
2〜34式の演算を行うことにより、各異常モードにお
ける左前輪の目標ホイルシリンダ圧P* FLを(PMCF
ΔP/β)とPMCF と0との何れか大きい値に設定し、
右前輪の目標ホイルシリンダ圧P* FRを(PMCF −ΔP
/β)とPMCF と0との何れか大きい値に設定し、後輪
の目標ホイルシリンダ圧P* R をマスタシリンダ圧P
MCR に設定して、タイマ割込演算処理を終了する。
【0077】更に前記ステップS73では、左前輪の目
標ホイルシリンダ圧P* FLをマスタシリンダ圧PMCF
設定し、右前輪の目標ホイルシリンダ圧P* FRをマスタ
シリンダ圧PMCF に設定し、後輪の目標ホイルシリンダ
圧P* R をマスタシリンダ圧PMCR に設定してからステ
ップS100に移行し、異常モードフラグFを“1”に
セットしてからタイマ割込演算処理を終了する。
【0078】従って、今、直進走行状態を継続している
ものとすると、車速センサ12からの車速検出値Vx は
車速に応じた値となるが、操舵角センサ11からの操舵
角検出値θは零であり、さらに目標ヨーレートの前回値
ψ'r(n-1) 及び横方向速度の前回値Vyr(n-1) も零とな
っている。このため、ステップS62で算出された定常
ヨーレートゲインH0 は車速に応じた値となるが、目標
ヨーレートの微分値ψ"r(n) は、前記13式の右辺第1
項の操舵角検出値θが零であり且つ目標ヨーレートの前
回値ψ'r(n-1) も零であるので零となり、したがって目
標ヨーレートの現在値ψ'r(n) も零となる。これに応じ
てステップS63で算出する横方向加速度Vyr(n) 及び
横方向速度Vyr(n) も零となり、ステップS64で算出
される左右前輪制動力差ΔBf 及び目標差圧ΔPも零と
なり、続くステップS69において車両が非制動状態で
あるので、圧力センサ14MCF,14MCRで検出さ
れるマスタシリンダ圧PMCF ,PMCR は零であり、目標
ホイルシリンダ圧P* FL,P* FR及びP* R は零に設定
される。
【0079】ところが、直進走行状態からブレーキペダ
ル4を踏込んで制動状態に移行すると、マスタシリンダ
5のマスタシリンダ圧PMCF ,PMCR が上昇することに
より、ステップS69で車輪の目標ホイルシリンダ圧P
* FL,P* FR及びP* R は、夫々マスタシリンダ圧P
MCF ,PMCF ,PMCR と等しく設定される。一方、車両
が直進定速走行状態からステアリングホイール10を例
えば左切りすることにより、左旋回状態となると、これ
に応じて操舵角センサ11からステアリングホイール1
0の操舵角に応じた正方向に増加する操舵角検出値θが
検出されることになるので、ステップS62で算出され
る目標ヨーレートの微分値の現在値ψ"r(n) が車速に応
じた定常ヨーレートゲインH0 と操舵角検出値θとに応
じた値となり、目標ヨーレートの現在値ψ'r(t) も正方
向に増加する値となる。それに伴い、ステップS63で
算出される横方向加速度の現在値Vyr'(n)は、車両諸元
や車速により正方向又は負方向に変化し、これに応じて
横方向速度の現在値Vyr(n) も正方向又は負方向に変化
する。
【0080】上記の値に基づきステップS64で、左右
前輪の制動力差ΔBf 及び目標差圧ΔPが算出され、そ
れに基づいてS69で左前輪の目標ホイルシリンダ圧P
* FLを(PMCF +ΔP/2)又はΔP又は0のいずれか
大きい値に設定し、右前輪の目標ホイルシリンダ圧P*
FRを(PMCF −ΔP/2)又はΔP又は0のいずれか大
きい値に設定し、後輪の目標ホイルシリンダ圧P* R
マスタシリンダ圧PMC R に設定し、これらに応じて各ホ
イルシリンダ1FL、1FR及び1Rのホイルシリンダ
圧を制御することにより、車速と操舵角に応じた適性な
ヨーレート及び横方向運動を発生することができる。
【0081】次に、直進走行状態からステアリングホイ
ール10を右切りして右旋回状態としたときには、操舵
角センサ11の操舵角検出値θが負の値となることによ
り、目標ヨーレートの微分値ψ"r(n) 、目標ヨーレート
ψ'r(n) が負の値となるが基本的には前記左旋回と同様
に制御される。一方、これらの状態からステップS65
で異常検出信号fd1 ,fd2 が検出されると,ステッ
プS67で異常警報信号が出力され、次いでステップS
70で異常が検出されたアクチュエータが判別される。
ここで例えば増圧用アクチュエータ15がフェールして
いる場合にはステップS71,S75へと移行するが,
未だ異常モードフラグは“0”であるからステップS7
7に移行し、図8に示す制御マップに基づいて異常モー
ドが設定される。なお、この制御マップでは,制動及び
旋回中の車両において、急勾配の下り坂等による急激な
車速上昇並びに危険回避等のための急激なステアリング
ホイールの切り増しがない限り、第1異常モードから第
2異常モード,第3異常モードの順に移行するものと考
えられる。そして第1異常モードが設定されると前記ス
テップS64で算出された目標差圧ΔPに応じて,ステ
ップS76,S79,S80で当該目標差圧ΔPを達成
するための目標ホイルシリンダ圧P* FR,P* FR,P*
R が設定されるから、車両の発生ヨーレートが目標ヨー
レートに追従して車速と操舵角に応じた適性なヨーレー
ト及び横方向運動を発生することができる。また、前記
ステップS77で第2異常モードが設定されると,前記
ステップS64で算出された目標差圧ΔPに対して,ス
テップS78で設定されるパラメータαを用いて目標ホ
イルシリンダ圧P* FR,P* FR,P* R が設定されるか
ら、或る程度,車両の発生ヨーレートを目標ヨーレート
に追従させながら全制動力の変動が抑制される。
【0082】一方、前記ステップS77で第3異常モー
ドが設定されると,ステップS74からステップS82
〜S84を経て、正常モード,第1異常モード,第2異
常モードを含めて,記憶されている目標差圧の前回値Δ
P(n-1) を減圧用目標加減圧ΔP1 * 分だけ小さくした
目標差圧ΔPが設定され、ステップS80ではこの目標
差圧ΔPを発生する目標ホイルシリンダ圧P* FR,P*
FR,P* R が設定される。このように一度,第3異常モ
ードが設定されるとステップ85で異常モードフラグF
が“3”にセットされるから、異常検出信号が解除され
ていない次のタイマ割込演算では,ステップS71で強
制的にステップS74に移行し、以下,前記目標差圧の
前回値ΔP(n-1) を減圧用目標加減圧ΔP1 * 分ずつ小
さく設定された目標差圧ΔPを発生する目標ホイルシリ
ンダ圧P* FR,P* FR,P* R が設定される。従って、
目標差圧ΔPは一定の割合で次第に小さくなり、やがて
目標差圧の前回値ΔP(n-1) が減圧用目標加減圧ΔP1
* より小さくなった時点で,ステップS74からステッ
プS73に移行して目標ホイルシリンダ圧P* FR,P*
FRはマスタシリンダ圧PMCF に等しく設定される。
【0083】逆に減圧用アクチュエータ2がフェールし
た場合には,前記ステップS70からステップS72に
移行するが、ステップS90で異常モードが設定される
と,それ以後は凡そ前記増圧用アクチュエータ15がフ
ェールした場合と同様の制御が行われる。ところで、前
記異常モード3で目標ホイルシリンダ圧P* FR,P* FR
はマスタシリンダ圧PMCF に等しく設定されると,ステ
ップS100で異常モードフラグFは“1”にセットさ
れるから、フェール直後の制動圧制御が終了すると,車
両はステップS67で警報信号を出力しながらステップ
S75或いはステップS88で強制的に第1異常モー
ド,即ちヨーレート重視の制御が行われる。この場合、
運転者はシステムの異常を認識し,しかもフェール直後
の所謂パニック状態からは開放されているから、ブレー
キペダルの操作感覚に若干の違和感を持ったとしても,
通常のヨーレート制御が可能であることに不安感を持つ
ことはないであろう。
【0084】そして、各アクチュエータの異常が解除さ
れれば前記ステップS66で異常モードフラグは“0”
にリセットされ、正常な制動力制御が実行される。な
お、双方のアクチュエータがフェールした場合には,前
記ステップS70からステップS73を経てステップS
100で異常モードフラグFは、第1異常モードを示す
“1”にセットされるが、各アクチュエータの異常が解
除されないかぎり,この処理手順を繰り返すから,目標
ホイルシリンダ圧P* FR,P* FRはマスタシリンダ圧P
MCF に等しく設定された状態が保持される。
【0085】従ってこの図7の処理において、ステップ
S61〜S63が本発明の目標運動値設定手段に対応
し、ステップS64,S66〜S100が目標制動力算
出手段に対応し、ステップS65が異常検出手段に対応
し、ステップS64,S70〜S100が異常時目標制
動力算出手段に対応し、ステップS77並びにステップ
S90が異常モード設定手段に対応し、ステップS6
4,S76,S79,S80並びにステップS89,S
92,S93が第1異常モード目標制動力算出手段に対
応し、ステップS64,S78,S81,S80並びに
ステップS91,S94,S93が第2異常モード目標
制動力算出手段に対応し、ステップS73,S74,S
82〜S86,S80並びにステップS87,S95〜
S99,S93が第3異常モード目標制動力算出手段に
対応している。
【0086】そして本実施例では、上記演算に基づいて
設定された目標ホイルシリンダ圧P * FL,P* FR及びP
* R を満足するように前輪側及び後輪側について夫々図
10及び図11の制動力制御処理を行うことにより、車
両のヨーレート、横方向運動値等の運動値を目標運動値
に一致させるか、或いは車両の車輪のスリップを所定の
状態に制御することができる。なお、図10は左前輪の
ホイルシリンダ1FLに対する制動力制御処理を、図1
1は後輪のホイルシリンダ1RL,1RRに対する制動
力制御処理を表しており、右前輪のホイルシリンダ1F
Rに対する制動力制御処理は,図10と全く同様に行わ
れるからここでは図示を割愛する。
【0087】前記図10の前輪側制動力制御処理は、前
記図7の目標シリンダ圧演算処理と同様に所定周期ΔT
のタイマ割込処理として左右輪側で個別に実行される。
即ち、ステップS18でブレーキスイッチ13がオン状
態であるか否かを判定し、ブレーキスイッチ13がオフ
状態であるときには、非制動状態であると判断してステ
ップS19に移行して、出力する制御信号の保持時間を
表す変数TP を“1”に設定し、次いでステップS20
に移行して最終目標シリンダ圧P* FLと実際のシリンダ
圧PFLとの誤差を監視する周期を表す変数mを“1”に
設定してからステップS21に移行して、前記増圧用ア
クチュエータ15に対して“0”の減圧信号としての制
御信号CSFL2 を定電流回路20FL2に出力してステ
ップS22に移行する。
【0088】このステップS22では、変数TP が正で
あるか、“0”であるか、さらには負であるかを判定す
る。そして、TP >0であるときには、ステップS23
に移行して前記減圧用アクチュエータ2に対して“0”
の増圧信号としての制御信号CSFL1 を定電流回路20
FL1に出力し、次いでステップS24に移行して変数
P から“1”を減算して新たな係数TP を算出し、こ
れを記憶装置19dに形成した係数記憶領域に更新記憶
してからステップS25に移行して、変数mから“1”
を減算した値を新たな変数mとして記憶装置19dに形
成した変数記憶領域に更新記憶してからタイマ割込処理
を終了してメインプログラムに復帰する。また、ステッ
プS22の判定結果がTP =0であるときには、ステッ
プS26に移行して、減圧用アクチュエータ2に対して
第1の所定電圧VS11 の保持信号としての制御信号CS
FL1 を出力してから前記ステップS25に移行してメイ
ンプログラムに復帰する。一方、ステップS22の判定
結果がTP <0であるときには、ステップS27に移行
して、減圧用アクチュエータ2に対して第1の所定電圧
S11 より高い第2の所定電圧VS12 の減圧信号として
の制御信号CSFL1を出力し、次いでステップS28に
移行して変数TP に“1”を加算した値を新たな変数T
P として記憶装置19dに形成した変数記憶領域に更新
記憶してから前記ステップS25に移行してメインプロ
グラムに復帰する。
【0089】また、前記ステップS18の判定結果でブ
レーキスイッチ13がオン状態であるときには、車両が
制動状態であるものと判断してステップS29に移行
し、前述した目標シリンダ圧演算処理で算出された最終
目標ホイルシリンダ圧P* FLがマスタシリンダ圧PMCF
と一致しているか否かを判定し、両者が一致していると
きには前記ステップS19に移行し、両者が不一致であ
るときにはステップS30に移行する。
【0090】このステップS30では、変数mが正であ
るか否かを判定し、m>0であるときにはステップS3
4に移行し、m≦0であるときにはステップS31に移
行する。このステップS31では、最終目標ホイルシリ
ンダ圧P* FLと現在のシリンダ圧検出値PFLとの誤差P
err (=P* FL−PFL)を算出してからステップS32
に移行する。
【0091】このステップS32では、誤差Perr を基
準値P0 で除算した値を四捨五入する下記50式に従っ
て変数TP を算出する。 TP =INT(Perr /P0 ) ………(50) 次いで、ステップS33に移行して変数mを正の所定値
0 に設定してから前記ステップS34に移行する。
【0092】このステップS34では、最終目標シリン
ダ圧P* FLがマスタシリンダ圧PMC F 以上であるか否か
を判定し、P* FL≧PMCF であるときには前記ステップ
S21に移行し、P* FL<PMCF であるときにはステッ
プS35に移行する。このステップS35では前記減圧
用アクチュエータ2に対して“0”の増圧信号としての
制御信号CSFL1 を定電流回路20FL1に出力してス
テップS36に移行する。
【0093】このステップS36では、変数TP が正で
あるか、“0”であるか、さらには負であるかを判定す
る。そして、TP <0であるときには、ステップS37
に移行して前記増圧用アクチュエータ15に対して
“0”の減圧信号としての制御信号CSFL2 を定電流回
路20FL2に出力し、次いでステップS38に移行し
て変数TP に“1”を加算した新たな係数TP を算出
し、これを記憶装置19dに形成した係数記憶領域に更
新記憶してから前記ステップS25に移行して、変数m
から“1”を減算した値を新たな変数mとして記憶装置
19dに形成した変数記憶領域に更新記憶してからタイ
マ割込処理を終了してメインプログラムに復帰する。ま
た、ステップS36の判定結果がTP =0であるときに
は、ステップS39に移行して、増圧用アクチュエータ
15に対して第1の所定電圧VS21 の保持信号としての
制御信号CSFL2 を出力してから前記ステップS25に
移行してメインプログラムに復帰する。一方、ステップ
S36の判定結果がTP >0であるときには、ステップ
S40に移行して、増圧用アクチュエータ15に対して
第1の所定電圧VS21 より高い第2の所定電圧VS22
増圧信号としての制御信号CSFL2 を出力し、次いでス
テップS41に移行して変数TP から“1”を減算した
値を新たな変数TP として記憶装置19dに形成した変
数記憶領域に更新記憶してから前記ステップS25に移
行してメインプログラムに復帰する。
【0094】ここで、図10の処理が左右前輪の制動力
制御手段に対応している。従って、車両が非制動状態で
走行している状態では、ブレーキスイッチ13がオフ状
態であるので、ステップS18からステップS19及び
S20を経てステップS21に移行して“0”の制御信
号CSFL2 (又はCSFR2 )が定電流回路20FL2
(又は20FR2)に減圧信号として出力される。この
ため、定電流回路20FL2(又は20FR2)から励
示電流が出力されず、増圧用アクチュエータ15の電磁
方向切換弁22FL(又は22FR)はノーマル位置を
維持している。
【0095】続くステップS22に移行するとTP >0
であるので、ステップS23に移行して“0”の制御信
号CSFL1 (又はCSFR1 )が定電流回路20FL1
(又は20FR1)に増圧信号として出力される。この
ため、定電流回路20FL1(又は20FR1)から励
磁電流が出力されず、減圧用アクチュエータ2の電磁方
向切換弁3FL(又は3FR)はノーマル位置を維持
し、前輪側のホイルシリンダ1FL(又は1FR)がマ
スタシリンダ5と連通状態となっている。このとき、ブ
レーキペダル4を踏込んでいないので、マスタシリンダ
5から出力されるマスタシリンダ圧PMCF は零となって
おり、各ホイルシリンダ1FL(又は1FR)のホイル
シリンダ圧も零となっており、制動力を発生することは
なく、非制動状態を継続する。
【0096】この状態から、ブレーキペダル4を踏込ん
で制動状態とすると、図10のステップS18からステ
ップS29に移行し、図7の目標シリンダ圧演算処理で
算出された目標ホイルシリンダ圧P* FL(又はP* FR
が夫々マスタシリンダ5のマスタシリンダ圧PMCF と一
致するか否かを判定する。この判定は、車輪がスリップ
していない状況下で車両が直進走行状態であるか旋回状
態であるかを判定することになり、直進走行状態で図7
の処理において目標ホイルシリンダ圧P* FL(又はP*
FR)がマスタシリンダ圧PMCF と等しく設定された場合
はステップS29からステップS19に移行し、前述し
た非制動状態と同様に制御信号CSFL1(又はC
FR1 )を共に零として電磁方向切換弁3FL(又は3
FR)をノーマル位置とすることにより、マスタシリン
ダ5と各ホイルシリンダ1FL(又は1FR)とを連通
状態として、各ホイルシリンダ1FL(又は1FR)の
ホイルシリンダ圧PFL(又はPFR)をマスタシリンダ圧
MCF と等しい値まで上昇させ、両ホイルシリンダ1F
L及び1FRで等しい制動力を発生させる。
【0097】ところが、左右前輪のいずれかがスリップ
するとか、車両が旋回状態で制動状態とするか又は制動
状態で旋回状態とするかに移行して、前述した図7の処
理において目標ホイルシリンダ圧P* FL (又はP* FR)
がマスタシリンダ圧PMCF と異なる値に設定された場合
は、このホイルシリンダ1FL(又は1FR)に対する
処理においては、ステップS29からステップS30に
移行し、前回のステップS25の処理で変数mが“0”
に設定されていることにより、ステップS31に移行す
る。このため、各目標ホイルシリンダ圧P* FL (又はP
* FR)と圧力センサ14FL(又は14FR)の圧力検
出値PFL(又はPFR)との誤差Perr を算出し(ステッ
プS31)、これを許容範囲を表す設定値P0 で除して
変数TPを算出し(ステップS32)、次いで変数mを
正の所定値m0 に設定して(ステップS33)からステ
ップS34に移行する。
【0098】そして目標ホイルシリンダ圧P* FL (又は
* FR)がマスタシリンダ圧PMCF以下である場合はス
テップS21に移行して、制御信号CSFL2 (又はCS
FR2)を零として増圧用アクチュエータ15を減圧モー
ドにし、ステップS22に移行する。このとき、各圧力
センサ14FL(又は14FR)の圧力検出値PFL(又
はPFR)が目標ホイルシリンダ圧P* FL(又はP* FR
に達していないときには、変数TP が正の値となるの
で、ステップS23に移行して制御信号CSFL1(又は
CSFR1 )を零として、減圧用アクチュエータ2の増圧
モードを継続する。この旋回状態と制動状態とが継続し
てこのフローが繰り返されると、ステップS24で変数
P が“1”ずつ減算され、ステップS25で変数mが
“1”ずつ減算されるが、変数TP が零となると、ステ
ップS22からステップS26に移行して第1の所定電
圧VS11 の制御信号CSFL1 (又はCSFR1 )を定電流
回路20FL1(又は20FR1)に保持信号として出
力する。このため、定電流回路20FL1(又は20F
R1)から所定電圧VS11 に応じた励磁電流が電磁方向
切換弁3FL(又は3FR)に出力されることにより、
これら電磁方向切換弁3FL(又は3FR)が第2の切
換位置に切換えられ、ホイルシリンダ1FL(又は1F
R)とマスタシリンダ5との間が遮断されて、ホイルシ
リンダ1FL(又は1FR)のシリンダ圧PFL(又はP
FR)が一定値に維持される保持モードとなり、この保持
モードがステップS20で変数mが“0”となるまで継
続される。
【0099】その後、変数mが“0”となると、再度ス
テップS31に移行し、この時点で誤差圧力Perr が設
定圧力P0 の1/2未満となるとステップS32で算出
される変数TP が“0”となり、ステップS22からス
テップS26に移行して増圧モードを経ることなく前述
した保持モードとなり、ホイルシリンダ1FL(又は1
FR)のホイルシリンダ圧PFL(又はPFR)が目標ホイ
ルシリンダ圧P* FL(又はP* FR)に維持される。
【0100】また、各ホイルシリンダ1FL(又は1F
R)のホイルシリンダ圧PFL(又はPFR)が目標ホイル
シリンダ圧P* FL(又はP* FR)より高い場合には、ス
テップS31で算出される誤差Perr が負の値となるの
で、変数TP も負の値となり、ステップS22からステ
ップS27に移行して所定電圧VS12 の制御信号CS
FL1 (又はCSFR1 )を減圧信号として出力し、このた
め定電流回路20FL1(又は20FR1)から所定電
圧VS12 に応じた励磁電流が電磁方向切換弁3FL(又
は3FR)に供給されるので、これが第3の切換位置に
切換えられる。従って、ホイルシリンダ1FL(又は1
FR)が油圧ポンプ7Fを介してマスタシリンダ5に連
通されることになり、ホイルシリンダ1FL(又は1F
R)のシリンダ圧PFL(又はPFR)が減圧される減圧モ
ードとなり、これは変数TP が“0”となるまで維持さ
れる。
【0101】一方、目標ホイルシリンダ圧P* FL (又は
* FR)がマスタシリンダ圧PMCF以上である場合はス
テップS34からステップS35に移行して、制御信号
CS FL1 (又はCSFR1 )を零として減圧用アクチュエ
ータ2を増圧モードにし、ステップS36に移行する。
このとき、各圧力センサ14FL(又は14FR)のホ
イルシリンダ圧PFL(又はPFR)が目標ホイルシリンダ
圧P* FL(又はP* FR)に達していないときには、前記
ステップ32で算出された変数TP が正の値であるので
ステップS40に移行して、増圧用アクチュエータ15
に対して前記第2の所定電圧VS22 の制御信号CSFL2
(又はCSFR2 )を増圧信号として出力し、これにより
定電流回路20FL2(又は20FR2)から所定電圧
S22 に応じた励磁電流が電磁方向切換弁22FL(又
は22FR)に供給されるので、これが第3の切換位置
に切換えられる。従って、アキュームレータ28内のブ
レーキ液がプランジャ型ピストン23FL(又は23F
R)に加圧供給され、同ピストン23FL(又は23F
R)のロッドが切換え弁21FL(又は21FR)を切
換えてホイルシリンダ1FL(又は1FR)と減圧用ア
クチュエータ2とが遮断され、これと同時にホイルシリ
ンダ1FL(又は1FR)にプランジャ型ピストン23
FL(又は23FR)内のブレーキ液が加圧供給される
ことにより、ホイルシリンダ1FL(又は1FR)のホ
イルシリンダ圧PFL(又はPFR)が増圧される増圧モー
ドとなる。
【0102】この旋回状態と制動状態とが継続してこの
フローが繰り返されると、ステップS41で変数TP
“1”づつ減算され、ステップS25で変数mが“1”
づつ減算されるが、変数TP が零となると、ステップS
36からステップS39に移行して第1の所定電圧V
S21 の制御信号CSFL2 (又はCSFR2 )を定電流回路
20FL2(又は20FR2)に保持信号として出力す
る。このため、定電流回路20FL2(又は20FR
2)から所定電圧VS21 に応じた励磁電流が増圧用アク
チュエータ15の電磁方向切換弁22FL(又は22F
R)に出力されることにより、これら電磁方向切換弁2
2FL(又は22FR)が第2の切換位置に切換えら
れ、プランジャ型ピストン23FL(又は23FR)と
アキュームレータ28との間が遮断されて同ピストン2
3FL(又は23FR)のロッド及び切換え弁21FL
(又は21FR)はその位置に保持され、ホイルシリン
ダ1FL(又は1FR)のホイルシリンダ圧PFL(又は
FR)が一定値に維持される保持モードとなり、この保
持モードがステップS25で変数mが“0”となるまで
継続される。
【0103】その後、変数mが“0”となると、再度ス
テップS31に移行し、この時点で誤差圧力Perr が設
定圧力P0 の1/2未満となると前回と同様にステップ
S32で算出される変数TP が“0”となり、ステップ
S36からステップS39に移行して増圧モードを経る
ことなく前述した保持モードとなり、ホイルシリンダ1
FL(又は1FR)のホイルシリンダ圧PFL(又は
FR)が最終目標ホイルシリンダ圧P* FL(又は
* FR)に維持される。
【0104】また、各ホイルシリンダ1FL(又は1F
R)のホイルシリンダ圧PFL(又はPFR)が目標ホイル
シリンダ圧P* FL(又はP* FR)より高い場合には、ス
テップS31で算出される誤差Perr が負の値となるの
で、変数TP も負の値となり、ステップS36からステ
ップS37に移行して制御信号CSFL2 (又はC
FR 2 )を零として、電磁方向切換弁22FL(又は2
2FR)をノーマルの第1の切換位置に戻す。これによ
りプランジャ型ピストン23FL(又は23FR)とリ
ザーバタンク25Fとが連通されてリリーフされ、同ピ
ストン23FL(又は23FR)のロッドが後退するこ
とにより切換え弁21FL(又は21FR)が定常位置
に切換えられる。従って、ホイルシリンダ1FL(又は
1FR)のホイルシリンダ圧PFL(又はPFR)が減圧さ
れる減圧モードとなり、これが変数TPが“0”となる
まで維持される。
【0105】一方、前記図11の後輪側制動力制御処理
も、前記図7の目標シリンダ圧演算処理と同様に所定周
期ΔTのタイマ割込処理として実行される。即ち、ステ
ップS42でブレーキスイッチ13がオン状態であるか
否かを判定し、ブレーキスイッチ13がオフ状態である
ときには、非制動状態であると判断してステップS43
に移行して、出力する制御信号の保持時間を表す変数T
P を“1”に設定し、次いでステップS44に移行して
後輪の最終目標ホイルシリンダ圧P* R と実際のホイル
シリンダ圧PR との誤差を監視する周期を表す変数mを
“1”に設定してからステップS45に移行する。
【0106】このステップS45では前記減圧用アクチ
ュエータ2に対して“0”の増圧信号としての制御信号
CSR を定電流回路20Rに出力し、次いでステップS
46に移行して変数TP から“1”を減算して新たな係
数TP を算出し、これを前記記憶装置19dに形成した
係数記憶領域に更新記憶してからステップS47に移行
して、変数mから“1”を減算した値を新たな変数mと
して記憶装置19dに形成した変数記憶領域に更新記憶
してからタイマ割込処理を終了してメインプログラムに
復帰する。
【0107】また、前記ステップS42の判定結果でブ
レーキスイッチ13がオン状態であるときには、車両が
制動状態であるものと判断してステップS48に移行
し、前述した目標シリンダ圧演算処理で算出された最終
目標ホイルシリンダ圧P* R がマスタシリンダ圧PMCR
と一致しているか否かを判定し、両者が一致していると
きには前記ステップS43に移行し、両者が不一致であ
るときにはステップS49に移行する。
【0108】このステップS49では、変数mが正であ
るか否かを判定し、m>0であるときにはステップS5
3に移行し、m≦0であるときにはステップS50に移
行する。このステップS50では、最終目標ホイルシリ
ンダ圧P* R と現在のホイルシリンダ圧検出値PR との
誤差Perr (=P* R −PR )を算出してからステップ
S51に移行する。
【0109】このステップS51では、誤差Perr を基
準値P0 で除算した値を四捨五入する前記60式に従っ
て変数TP を算出する。次いで、ステップS52に移行
して変数mを正の所定値m0 に設定してから前記ステッ
プS53に移行する。このステップS53では、変数T
P が正であるか、“0”であるか、さらには負であるか
を判定する。そして、TP >0であるときには、前記ス
テップS45に移行して前記減圧用アクチュエータ2を
増圧状態とする。また、ステップS53の判定結果がT
P =0であるときには、ステップS54に移行して、減
圧用アクチュエータ2に対して第1の所定電圧VS1R
保持信号としての制御信号CS R を出力してから前記ス
テップS47に移行してメインプログラムに復帰する。
一方、ステップS53の判定結果がTP <0であるとき
には、ステップS55に移行して、減圧用アクチュエー
タ2に対して第1の所定電圧VS1R より高い第2の所定
電圧VS2R の減圧信号としての制御信号CSR を出力
し、次いでステップS56に移行して変数TP に“1”
を加算した値を新たな変数TP として記憶装置19dに
形成した変数記憶領域に更新記憶してから前記ステップ
S47に移行してメインプログラムに復帰する。
【0110】ここで、図11の処理が後輪の制動力制御
手段に対応している。従って、車両が非制動状態で走行
している状態では、ブレーキスイッチ13がオフ状態で
あるので、ステップS42からステップS43及びS4
4を経てステップS45に移行すると、“0”の制御信
号CSR が定電流回路20Rに増圧信号として出力され
る。このため、定電流回路20Rから励磁電流が出力さ
れず、減圧用アクチュエータ2の電磁方向切換弁3Rは
ノーマル位置を維持し、後輪側のホイルシリンダ1R
L,1RRがマスタシリンダ5と連通状態となってい
る。このとき、ブレーキペダル4を踏込んでいないの
で、マスタシリンダ5から出力されるマスタシリンダ圧
MCR は零となっており、各ホイルシリンダ1RL,1
RRのホイルシリンダ圧も零となっており、制動力を発
生することはなく、非制動状態を継続する。
【0111】この状態から、ブレーキペダル4を踏込ん
で制動状態とすると、図11のステップS42からステ
ップS48に移行し、図7の目標シリンダ圧演算処理で
算出された目標ホイルシリンダ圧P* R がマスタシリン
ダ5のマスタシリンダ圧PMC R と一致するか否かを判定
する。この判定により目標ホイルシリンダ圧P* R がマ
スタシリンダ圧PMCR と等しい場合はステップS48か
らステップS43に移行し、前述した非制動状態と同様
に制御信号CSR を零として電磁方向切換弁3Rをノー
マル位置とすることにより、マスタシリンダ5と各ホイ
ルシリンダ1RL,1RRとを連通状態として、各ホイ
ルシリンダ1RL,1RRのホイルシリンダ圧PR をマ
スタシリンダ圧PMCR と等しい値まで上昇させ、両ホイ
ルシリンダ1RL及び1RRで等しい制動力を発生させ
る。
【0112】ところが、車輪がスリップするとか、車両
が旋回状態で制動状態とするか又は制動状態で旋回状態
とするかに移行して、前述した図7の処理において目標
ホイルシリンダ圧P* R がマスタシリンダ圧PMCR と異
なる値に設定された場合は、ステップS48からステッ
プS49に移行し、前回のステップS47の処理で変数
mが“0”に設定されていることにより、ステップS5
0に移行する。このため、目標ホイルシリンダ圧P* R
と圧力センサ14Rの圧力検出値PR との誤差Perr
算出し(ステップS50)、これを許容範囲を表す設定
値P0 で除して変数TP を算出し(ステップS51)、
次いで変数mを正の所定値m0 に設定して(ステップS
52)からステップS53に移行する。
【0113】このとき、圧力センサ14Rの圧力検出値
R が目標ホイルシリンダ圧P* Rに達していないとき
には、変数TP が正の値となるので、ステップS45に
移行して制御信号CSR を零として、減圧用アクチュエ
ータ2の増圧モードを継続する。この旋回状態と制動状
態とが継続してこのフローが繰り返されると、ステップ
S46で変数TP が“1”づつ減算され、ステップS4
7で変数mが“1”づつ減算されるが、変数TP が零と
なると、ステップS53からステップS54に移行して
第1の所定電圧VS1R の制御信号CSR を定電流回路2
0Rに保持信号として出力する。このため、定電流回路
20Rから所定電圧VS1R に応じた励磁電流が電磁方向
切換弁3Rに出力されることにより、同電磁方向切換弁
3Rが第2の切換位置に切換えられ、ホイルシリンダ1
RL,1RRとマスタシリンダ5との間が遮断されて、
ホイルシリンダ1RL,1RRのシリンダ圧PR が一定
値に維持される保持モードとなり、この保持モードがス
テップS47で変数mが“0”となるまで継続される。
【0114】その後、変数mが“0”となると再度ステ
ップS50に移行し、この時点で誤差圧力Perr が設定
圧力P0 の1/2未満となるとステップS51で算出さ
れる変数TP が“0”となり、ステップS53からステ
ップS54に移行して増圧モードを経ることなく前述し
た保持モードとなり、ホイルシリンダ1RL,1RRの
ホイルシリンダ圧PR が目標ホイルシリンダ圧P* R
維持される。
【0115】また、各ホイルシリンダ1RL,1RRの
ホイルシリンダ圧PR が目標ホイルシリンダ圧P* R
り高い場合には、ステップS50で算出される誤差P
err が負の値となるので、変数TP も負の値となり、ス
テップS53からステップS55に移行して所定電圧V
S2R の制御信号CSR を減圧信号として出力し、このた
め定電流回路20Rから所定電圧VS2R に応じた励磁電
流が電磁方向切換弁3Rに供給され、これが第3の切換
位置に切換えられる。従って、ホイルシリンダ1RL,
1RRが油圧ポンプ7Rを介してマスタシリンダ5に連
通されることになり、ホイルシリンダ1RL,1RRの
ホイルシリンダ圧PR が減圧される減圧モードとなり、
これは変数TP が“0”となるまで維持される。
【0116】前記制動力制御による本発明の効果を確認
したシミュレーション結果を図12乃至図17に示す。
また、夫々の制御による車速時間変化を図18に,前後
加速度時間変化を図19に示す。これらのシミュレーシ
ョンの条件は、所定時刻から0.2秒後に制動を開始
し、約0.35秒後に各マスタシリンダ圧PMCF ,PMC
R が所定値60kg/cm2 に達し、その後,0.7秒後に
操舵角θが正の所定値30deg.になるように操舵を開始
し,即ち左切りし、更にその後,1.2秒後に異常検出
回路6bが増圧用アクチュエータ15の異常を検出して
フェイル状態に陥った場合を仮定した。図12乃至図1
7の各図の上段にはヨーレートの時間変化を示し、その
図中,一点鎖線は非制御のヨーレート時間変化を,破線
は目標ヨーレート時間変化を示す。また各図の中段には
目標差圧の時間変化を示す。また各図の下段にはホイル
シリンダ圧の時間変化を示し、その図中,実線は右前輪
ホイルシリンダ圧時間変化を,破線は左前輪ホイルシリ
ンダ圧時間変化を示す。
【0117】図12は本実施例においても採用される正
常モードの制動力制御のものである。即ち,前提した
1.2秒後に異常が検出されない場合を想定すればよ
い。またこの場合の車速時間変化は図18aに,前後加
速度時間変化は図19aに示す。同図から明らかなよう
に、設定される目標差圧ΔPに対して,その1/2ずつ
がマスタシリンダ圧(=60kg/cm2 )に増減されてホ
イルシリンダ圧が設定され、結果として車両の発生ヨー
レートは目標ヨーレートによく一致している。また、総
制動力の変動がないから前後加速度は一定であり、車速
も一様に低下している。
【0118】図13は本実施例の比較例として、フェー
ルすると即時に通常ブレーキ圧,所謂非制御の制動力に
変化したものである。またこの場合の車速時間変化は図
18bに,前後加速度時間変化は図19bに示す。同図
から明らかなように、フェールと同時に目標差圧ΔPは
零となり、これに伴ってホイルシリンダ圧はマスタシリ
ンダ圧(=60kg/cm2 )に一致し、その結果,発生ヨ
ーレートは非制御のヨーレートに対して著しいオーバシ
ュートを起こし、このことから車両の挙動,特に高速巡
行時の車両挙動が不安定になることが想定される。しか
しながら総制動力の変動がないから前後加速度は,正常
モードと同様に一定であり、車速も一様に低下してい
る。
【0119】図14は本実施例における第1異常モード
の制動力制御によるものである。またこの場合の車速時
間変化は図18cに,前後加速度時間変化は図19cに
示す。同図から明らかなように、この第1異常モードに
おける目標差圧ΔPは,演算及び応答のタイムラグに応
じた分だけ,前記正常モードのそれよりも大きめに設定
されている。そして、増圧制御されていた左前輪のホイ
ルシリンダ圧がマスタシリンダ圧(=60kg/cm2 )に
等しくなるため、減圧制御対象となる右前輪のホイルシ
リンダ圧を減圧することで,前記目標差圧を達成し、こ
れによりごく僅かな応答遅れはあるものの,発生ヨーレ
ートは目標ヨーレートによく一致している。これに対し
て総制動力の変動が大きいために,前後加速度はフェー
ル前後で大きく変化し、また総制動力が減少するために
車速の低下率は小さくなる。
【0120】図15は本実施例の比較例として,前記第
2異常モードにおいて,目標ホイルシリンダ圧算出に使
用されるパラメータα=2としたものである。また、図
16は本実施例として,前記第2異常モードにおいて,
目標ホイルシリンダ圧算出に使用されるパラメータα=
1.25としたものである。また、前者の車速時間変化
は図18dに,前後加速度時間変化は図19dに示し、
後者の車速時間変化は図18eに,前後加速度時間変化
は図19eに示す。両者の目標差圧ΔPは,フェール直
後では前記第1異常モードの制動力制御と同様に設定さ
れるが、各パラメータαの設定の相違によって,前者の
右前輪のホイルシリンダ圧は後者のそれよりもやや大き
めに設定されるから、総制動力は前者が大きく,後者が
小さくなり、その結果,車両前後加速度並びに車速の低
下率は後者より前者が大きくなる。従って、このような
車速の経時変化の相違に伴って経時点での目標差圧は後
者より前者が大きくなることが分かる。また、発生ヨー
レートは何れも非制御のそれをオーバシュートすること
はないが、目標ヨーレートとの偏差は前者の方が後者よ
りも大きい。更にフェール前後の前後加速度の変動は前
者の方が後者よりも小さい。これらの点を総括すれば、
発生ヨーレートが大きいほど,即ち車速や操舵角が大き
いほど,パラメータαを“1”に近づけて回頭性を向上
し、発生ヨーレートが小さいほど,即ち車速や操舵角が
小さいほど,パラメータαを“1”より大きくして安定
性の向上と制動距離短縮を図るのが望ましい。従って、
前記本実施例の制御マップにおいても,このような方向
で各パラメータα,βを設定することが考慮されてい
る。
【0121】図17は本実施例における第3異常モード
の制動力制御によるものである。またこの場合の車速時
間変化は図18fに,前後加速度時間変化は図19fに
示す。同図から明らかなように、この第3異常モードに
おける目標差圧ΔPは,前記正常モードのフェール直前
の目標差圧を一定の割合で小さくして設定され、2.1
秒後に零に収束される。従って、減圧制御対象となる右
前輪のホイルシリンダ圧もこの目標差圧を達成するよう
に制御される。一方、発生ヨーレートは非制御のヨーレ
ートに対してオーバシュートが発生するが、目標ヨーレ
ートに対する偏差は,前記即時通常ブレーキ制御のそれ
に比して比較的小さく、しかも発生ヨーレートが目標ヨ
ーレートに対して収束している時点でオーバシュートが
発生している。また、フェール直後の前後加速度変動は
大きいものの、その後,一定の割合で正常モード若しく
は非制御のそれに近づくために、車速の低下率が大き
く,制動距離が短縮されることが想定される。従って、
発生ヨーレートと目標ヨーレートとの偏差が小さい,即
ち車両の走行安定時には早期に通常ブレーキ圧に復帰す
ることによって制動距離の短縮を図ることができる。
【0122】なお、前記実施例では異常モードとして第
1〜第3異常モードを設け、これらを第1異常モードか
ら第3異常モードに向けて移行した後は,再び第1異常
モードで制動力制御することとしたが、設けられる異常
モードは,各異常モードの如何なる組合わせであっても
よく、何れか二つの異常モードを組合わせて設けてもよ
いし、或いは一つの異常モードだけを採用してもよい。
更に、夫々の異常モードは互いに移行し合う必要は必ず
しもなく、例えばフェール直後に設定された異常モード
で制動力の制御を継続してもよい。従って、例えばフェ
ール状態では第1異常モード目標制動力算出手段だけで
目標ホイルシリンダ圧を算出し、これによりヨーレート
重視の制動力制御を可能とし続けることも可能である。
ちなみに、異常モードが一つだけの場合は異常モード設
定手段は不要である。
【0123】また、上記実施例においては、前輪側の左
右輪の制動力差を制御するようにした場合について説明
したが、これに限らず後輪又は前後輪の左右制動力差を
制御するようにしてもよい。また、制動力制御としては
前後輪の制動力配分を制御することによりヨーレートを
目標値になるようにするものでもよい。
【0124】また、前記ヨーレート制御は本実施例のよ
うなフィードフォワード制御に限らず、例えば車両発生
ヨーレートをヨーレートセンサにより検出して、この検
出値をフィードバックして制御するフィードバック制御
を採用してもよい。また、制御対象となる車両の運動状
態量としてはヨーレートだけに限らず、例えば横方向速
度(横加速度)等の他の運動状態量を設定してもよい。
【0125】また、制動力制御としては前記運動状態量
制御に加えて例えばアンチスキッド制御等の他の制御を
付加してもよい。さらに、上記実施例においては、車両
の操舵状態検出手段として操舵角センサ11を適用した
場合について説明したが、これに限定されるものではな
く、操舵角センサに代えて実際の車輪の転舵角(実舵
角)を検出するようにしてもよく、この場合には、前述
した3式,7.6式及び7.7式におけるステアリング
ギヤ比Nを省略する。
【0126】またさらに、上記実施例においては、速度
検出手段として車速センサ12を適用した場合について
説明したが、これに限らず車輪速度、車両前後加速度等
を検出して車両前後方向速度を算出することもできる。
なおさらに、上記実施例においては、制動圧制御装置1
6としてマイクロコンピュータを適用した場合について
説明したが、これに限定されるものではなく、比較回
路、演算回路、論理回路等の電子回路を組み合わせて構
成することもできる。
【0127】
【発明の効果】以上説明してきたように本発明の制動力
制御装置によれば、例えば異常検出前の車速と目標制動
力差とが共に大きい第1異常モードでは,運動目標値に
追従する目標制動力差が発生するように目標制動力を算
出し、異常検出前の車速若しくは目標制動力差の何れか
が小さい第3異常モードでは,非制御の通常制動力に一
定の割合で戻すように目標制動力を算出し、車速及び目
標制動力差が両運動状態の中庸をなすような第2異常モ
ードでは,小さめに設定された目標制動力差が発生する
ように目標制動力を算出するために、左右輪に発生して
いた制動力差の変動は車両の運動状態に応じて小さくな
り、同時に車両の挙動変化を緩やかにして運転者への心
理的影響を緩和することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の基本構成を示す概略構成図である。
【図2】この発明の一実施例を示す系統図である。
【図3】図2における減圧用アクチュエータの油圧系統
図である。
【図4】図2における増圧用アクチュエータの油圧系統
図である。
【図5】制動圧制御装置の一例を示すブロック図であ
る。
【図6】車両の運動モデルの説明図である。
【図7】制動圧制御装置のうち目標制動力算出の処理手
順の一例を示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートにおいて増圧用アクチュ
エータがフェールした場合に異常モードを設定するため
の制御マップである。
【図9】図7のフローチャートにおいて減圧用アクチュ
エータがフェールした場合に異常モードを設定するため
の制御マップである。
【図10】制動圧制御装置のうち前輪の目標制動力制御
の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】制動圧制御装置のうち後輪の目標制動力制御
の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】本実施例の正常モードで行われるヨー特性,
目標差圧特性,ホイルシリンダ圧特性のシミュレーショ
ンの説明図である。
【図13】本実施例の比較例として即時通常ブレーキ圧
に変更制御する場合に行われるヨー特性,目標差圧特
性,ホイルシリンダ圧特性のシミュレーションの説明図
である。
【図14】本実施例の第1異常モードで行われるヨー特
性,目標差圧特性,ホイルシリンダ圧特性のシミュレー
ションの説明図である。
【図15】本実施例の第2異常モードに対する比較例で
行われるヨー特性,目標差圧特性,ホイルシリンダ圧特
性のシミュレーションの説明図である。
【図16】本実施例の第2異常モードで行われるヨー特
性,目標差圧特性,ホイルシリンダ圧特性のシミュレー
ションの説明図である。
【図17】本実施例の第3異常モードで行われるヨー特
性,目標差圧特性,ホイルシリンダ圧特性のシミュレー
ションの説明図である。
【図18】図12〜図17のシミューレーションで得ら
れる車速特性の説明図である。
【図19】図12〜図17のシミューレーションで得ら
れる前後加速度特性の説明図である。
【符号の説明】
1FL〜1RRはホイルシリンダ(制動手段) 2は減圧用アクチュエータ(制動力増加手段) 3FL〜3Rは電磁方向切換弁 4はブレーキペダル 5はマスタシリンダ 6a,6bは異常検出回路(異常検出手段) 7F,7Rは油圧ポンプ 8F,8Rはアキュームレータ 9F,9Rはリザーバタンク 10はステアリングホイール 11は操舵角センサ(操舵状態検出手段) 12は車速センサ(速度検出手段) 13はブレーキスイッチ 14FL〜14MCRは圧力センサ(制動圧検出手段) 15は減圧用アクチュエータ(制動力減少手段) 16は制動圧制御装置 21FL、21FRは切換え弁 22FL、22FRは電磁方向切換弁 23FL、23FRプランジャ型ピストン 24FL、24FRは絞り弁 25Fはリザーバタンク 26Fは油圧ポンプ 27は圧力スイッチ 28はアキュームレータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/00 - 8/96

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の操舵状態を検出する操舵状態検出
    手段と、車両の前後方向速度を検出する速度検出手段
    と、前記操舵状態検出手段及び速度検出手段からの信号
    を入力して車両の運動目標値を設定する運動目標値設定
    手段と、前輪及び後輪の少なくとも一方に配設された左
    右の制動手段と、前記運動目標値設定手段で設定された
    運動目標値を制御対象となる車両で実現するために必要
    な前記制動手段の目標制動力を算出する目標制動力算出
    手段と、前記左右の制動手段の制動力を前記目標制動力
    と一致するように独立に制御するための制動力増加手段
    と制動力減少手段とを制御する制動力制御手段とを備え
    た制動力制御装置において、前記制動力増加手段及び制
    動力減少手段の異常を検出する異常検出手段を備え、前
    記目標制動力算出手段は、前記異常検出手段が前記制動
    力増加手段及び制動力減少手段の何れか一方の異常を検
    出したときに,異常時の車両の運動状態に応じて何れか
    異常でない前記制動力増加手段及び制動力減少手段で達
    成すべき前記左右の制動手段の目標制動力を算出する異
    常時目標制動力算出手段を備えたことを特徴とする制動
    力制御装置。
  2. 【請求項2】 前記異常時目標制動力算出手段は、前記
    異常検出の前後とも前記運動目標値に追従するために必
    要な目標制動力を算出する第1異常モード目標制動力算
    出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の制動
    力制御装置。
  3. 【請求項3】 前記異常時目標制動力算出手段は、前記
    異常検出後に前記運動目標値が急激に変化しないために
    必要な目標制動力を算出する第2異状モード目標制動力
    算出手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記
    載の制動力制御装置。
  4. 【請求項4】 前記異常時目標制動力算出手段は、前記
    異常検出後に非制御の通常制動力まで次第に変化する目
    標制動力を算出する第3異状モード目標制動力算出手段
    を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記
    載の制動力制御装置。
  5. 【請求項5】 前記異常時目標制動力算出手段は、前記
    操舵状態検出手段や速度検出手段等から得られる車両の
    運動状態に応じて前記各異常モード目標制動力算出手段
    を選択して設定する異常モード設定手段を備えたことを
    特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の制動力制御
    装置。
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