JP3207548B2 - 防食用アノード及び陰極防食方法 - Google Patents

防食用アノード及び陰極防食方法

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JP3207548B2
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彰博 坂西
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は陰極防食方法に関し、特
に船舶、海洋構造物、各種プラントの陰極防食に適用さ
れる同方法に関する。
【0002】
【従来の技術】海水等の電解質溶液に金属が接すると腐
食が発生し、機器・プラントが損傷することになる。こ
のため、構成金属材より電気化学的に卑な電位をもつア
ルミニウム、亜鉛等の犠牲アノードを取付け、構成金属
材を陰極とする陰極防食が施工されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】各種機器・プラントの
構成材としては、炭素鋼の使用が最も多いが、近年ステ
ンレス鋼、チタン等が海水等の電解質溶液環境下で使用
されるケースが増えつつある。腐食の発生を防止するに
は、その金属の自然電位から200mV以上、卑方向へ
電位を引下げることにより略100%腐食は停止すると
言われている。
【0004】しかしながら、ステンレス鋼、チタン等の
耐食材料においては電位を引下げすぎると、水素吸収が
起こり、脆化し、割れやすくなる。一方、アノード材料
として、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムが使用され
るが、これらの自然電位は−1000mVより低い。こ
のため、ステンレス鋼、チタン等の耐食材料を前記のア
ノードにより陰極防食を行なうと、電位が引下げられす
ぎ、水素脆化が発生する危険が極めて高い。
【0005】図11に、各種金属の防食電位領域と危険
領域及びアノードの電位を示す。図11において、炭素
鋼、銅合金はアルミニウムアノード、亜鉛アノードによ
り防食しても過防食の問題はないが、チタン、ステンレ
ス鋼は電位が下がりすぎ、そのままでは水素脆化が発生
することになる。このため電位が下がりすぎないように
する手段が必要である。
【0006】本発明は上記技術水準に鑑み、上述した技
術的課題を解決しうる防食用アノード及び陰極防食方法
を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は犠牲アノードと
被防食体の間にダイオードを並列に複数個配設して電気
的等価回路を形成しうるようにし、犠牲アノードと被防
食体間の電位差情報に基づき前記ダイオードの稼働個数
を増減させることを特徴とする陰極防食方法である。
【0008】
【作用】ダイオードの特性の1例を温度をパラメータと
して図8に示す。図8に示すように、ダイオードはある
一定の電圧以上で電流を流す特性を有しており、また、
温度により電流の立上がり電圧が変化する。
【0009】一方、陰極防食時の電位と電流の関係の1
例を図9に示す。図9において、被防食体がアノードと
電気的に接続されることにより、被防食体の電位はアノ
ード側へ大きく引き下げられ、アノードの電位も若干被
防食体側へ変化する。この結果、被防食体とアノード間
の電位差ΔVは防食の程度により変化し、被防食体の電
位が下がりすぎる程小さくなる。
【0010】ここで、アノードと被防食体の間にダイオ
ードを挿入すると、ダイオードにかかる電圧は前記した
陰極防食時の被防食体とアノード間の電圧ΔVとなるか
ら、被防食体の電位が下がりすぎようとすると、電位差
ΔVが小さくなり、ダイオード特性により防食電流が制
限される。この結果被防食体の電位の下がりすぎ、すな
わち過防食を防止することができる
【0011】しかしながら、挿入するダイオードが単一
の場合、前記図8に見られるように、温度依存性がある
ため、季節あるいは昼夜の違いによって、電流の立上が
り電圧が変化し、被防食体の電位が変動する問題があ
る。このため、本発明はダイオードを被防食体と犠牲ア
ノードとの間に複数個並列に挿入するものであり、図1
0にSSIJ4型ダイオードを並列に接続した場合のダ
イオードの個数をパラメータとした電流−電圧特性の1
例を示すが、ダイオードの個数により電流−電圧特性が
変化することが判る。このことから、アノードと被防食
体間にダイオードを並列に複数個接続し、防食時のアノ
ードと被防食体間の電位差ΔVの情報に基づいて、接続
したダイオードの作動個数を変化させることにより、温
度変化等によるダイオード特性の変化に充分対応するこ
とが可能となり、電位変動を防止できる
【0012】
【実施例】(参考例1)以下、本発明の一参考例を図1
によって説明する。図1はアノード1を被防食体2に取
付けた場合の断面図を示す。図1において、被防食体2
にはアノード1を取り付けるための金属製スラッドボル
ト3が設けられており、ゴムシート等の絶縁シート4を
介して金属製ナット5にてアノード1が取り付けられる
ようになっている。このままであると、アノード1と被
防食体2とが短絡してしまうため、プラスチックの絶縁
板6を設けている。7がダイオードであり、金属製ナッ
ト5の下に位置する個所に、アノード1に穴を設け埋設
されており、ダイオード7の電流出力端8はハンダ等に
よりアノード1と接続される。ダイオード7の電流入力
端9は導電性材料例えば銀、銅等の接触抵抗が低い材料
で構成され、板状となっており、前記金属製ナット5と
絶縁板6の間に設けられている。このため、金属製ナッ
ト5にてアノード1を被防食体2に締付けてアノード1
と被防食体2とが電気的に接続されることになる。10
はアノード1からの電流がナット5へ流入するのを防止
し、かつ絶縁板6、電流入力端9、ダイオード7が電解
質溶液に触れないための充填剤であり、シリコンシーラ
ント等で構成される。なお、ダイオード7の設置数は、
防食所要電流量及びダイオード7の電流容量により決定
される。
【0013】図2は図1に示した特性を有するダイオー
ド{ショットキ・バリア型SSIJ4(シリコン材)}
を具備したアルミニウムアノードにより、ステンレス綱
を防食した場合の電位の状況を示す。図2には、ダイオ
ード無しのアルミニウムアノードを使用した場合も併記
しているが、ダイオード1を具備したアノードを使用す
ることにより、電位の下がりすぎ、すなわち過防食によ
る水素脆化を防止することができ、かつ防食電位も略一
定領域に維持することができることが判る。
【0014】(実施例1) 以下、本発明の一実施例を図3によって説明する。図3
において、1はチタン、ステンレス等の被防食体、2は
アルミニウム、亜鉛等の犠牲アノードであり、電解質溶
液3(例えば海水)に浸漬されている。被防食体1及び
犠牲アノード2はそれぞれリード線4及び5にて、複数
個並列に配設されたダイオード群6及びダイオード群6
に対応して並列に配設されたシーケンサー等よりなるス
イッチング群7に電気的に接続されている。8は被防食
体1と犠牲アノード2間の電位差ΔVを検出する電位差
計であり、リード線9及び10により被防食体1及び犠
牲アノード2と接続されている。11は制御機器であ
り、電位差計8によりリード線12を経て送られる被防
食体1と犠牲アノード2間の電位差ΔVと設定電位差を
比較し、リード線13を経てスイッチング群7のon,
offの個数を自動的にコントロールするものである。
例えば、温度が上昇すると図8に示すダイオードの温度
依存性により、電位の立上がり電圧が小さくなり、電位
差ΔVを小さくするように作用するが、設定電位差と実
体の電位差を等しくなるように制御機器11にて図4〜
図7に示すダイオード特性に基づき、ダイオードの稼働
個数を減少させ、電流の立上がり電圧を大きくさせるも
のである。
【0015】次に、図3の構成において、ダイオード群
6として1FWJ43型ダイオード(オリジン社製商品
名)を24個、犠牲アノード2として表面積20cm2
のアルミニウム合金アノード(日本防蝕工業社製:商品
名アラノード)を2ケ、被防食体1として表面積700
cm2 の15−5PHステンレス鋼を1ケ、スイッチン
グ群7としてMELSEC・F−30シーケンサー(三
菱電機社製商品名)、制御機器11としてPC−980
1パーソナルコンピューター(NEC製商品名)、電解
質溶液3として1/20希釈海水を使用し、被防食体1
と犠牲アノード2間の電位差ΔVを0.55Vに制御
し、かつ2時間毎に防食、無防食を繰返す陰極防食試験
を140時間実施した。このときの結果を図4〜図7に
示す。
【0016】図4は被防食体15−5PHステンレス鋼
の電位変化を、図5は犠牲アノードから被防食体15−
5PHステンレス鋼へ流入する防食電流の変化を、図6
はダイオード群のダイオードの作動個数の変化を、図7
は試験中の大気温及び水温の変化を示すものである。
【0017】図4において、試験期間中15−5PHス
テンレス鋼の防食時の電位は20℃程度の温度変動(図
7参照)、防食電流の経時的な低下(図5参照)がある
にもかかわらず一定に保持されていることが判る。この
とき、ダイオードの作動個数は図6に見られるように変
動している。すなわち、ダイオードの作動個数を増減さ
せることにより、温度変化、経時的な防食電流低下等が
発生しても被防食体の電位を一定に保持することが可能
である。
【0018】
【発明の効果】本発明により、下記の結果が奏される。 被防食体の電位の下がりすぎによる過防食を防止で
きる。 ダイオードの特性及び配設個数を、使用される環
境、防食条件により設定することにより、目的の電位領
域に被防食体を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一参考例である防食アノードの一例を
示す説明図。
【図2】本発明の参考例の効果を示す図表。
【図3】本発明の陰極防食の一実施例の説明図。
【図4】本発明の一実施例の被防食体である15−5P
Hステンレス鋼の電位変化を示す図表。
【図5】本発明の一実施例の犠牲アノードから被防食体
である15−5PHステンレス鋼へ流入する防食電流の
変化を示す図表。
【図6】本発明の一実施例のダイオード群のダイオード
の作動個数の変化を示す図表。
【図7】本発明の一実施例の試験中の大気温及び水温の
変化を示す図表。
【図8】温度をパラメータとしたダイオードの電流−電
圧特性を示す図表。
【図9】陰極防食時の電位と電流の関係を示す図表。
【図10】ダイオードの個数をパラメータとした電流−
電圧特性を示す図表。
【図11】各種金属の防食電位領域、危険領域及びアノ
ードの電位を示す図表。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 崎村 充 長崎県長崎市深堀町五丁目717番地1 長菱エンジニアリング株式会社内 (56)参考文献 特開 昭51−44534(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23F 13/00 - 13/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 犠牲アノードと被防食体の間にダイオー
    ドを並列に複数個配設して電気的等価回路を形成しうる
    ようにし、犠牲アノードと被防食体間の電位差情報に基
    づき前記ダイオードの稼働個数を増減させることを特徴
    とする陰極防食方法。
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