JP3204682U - バイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素scrシステム - Google Patents

バイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素scrシステム Download PDF

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Abstract

【課題】希薄燃焼機関のコールドスタート時の窒素酸化物の浄化性能に優れた尿素SCRシステムを提供する。【解決手段】排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素の酸化の他、噴霧された軽油を燃焼する酸化触媒(DOC)4と、煤を捕集し、蓄積する煤による圧損が所定の値を超える度に軽油を噴霧させて排気温度を上昇させることで煤を燃焼させるディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)又は触媒化燃焼フィルター(CSF)5と、尿素水を噴霧する尿素水噴霧装置3と、尿素水の加水分解で生じるNH3により窒素酸化物を還元除去する選択還元触媒(SCR)6を排気ガスの主流路に配設した尿素SCRシステムにおいて、選択還元触媒(SCR)6の上流の主流路10から小径のバイパス流路11を分岐させ、バイパス流路11内に第二の尿素水噴霧装置7と尿素加水分解触媒8を配置し、かつ該尿素加水分解触媒8の周囲をヒータ9で包囲する。【選択図】図1

Description

本考案は、バイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムに関し、より詳しくは、ディーゼルエンジンからの排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分の内、特にコールドスタート時に発生する窒素酸化物(NOx)の浄化性能に優れたバイパス流路に尿素水噴霧装置、尿素加水分解触媒、及びヒータを組み合わせて配置したコールドスタート対応尿素SCRシステムに関する。
ボイラー、ガスタービン、リーンバーン型ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼機関から排出される排気ガスには、燃料や燃焼空気に由来した様々な有害物質が含まれる。このような有害物質としては炭化水素(HC)、可溶性有機成分(Soluble Organic Fraction:SOFともいう)、煤(Soot)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などがあり、これら有害成分の排出量に対する規制は年々強化されている。それら有害成分の浄化方法としては、排気ガスを触媒に接触させて浄化する方法が実用化されている。
このような希薄燃焼機関では、燃料の種類や供給量、供給のタイミング、空気の量等を制御して有害物質の発生量を抑制することも検討されている。しかし、従来の触媒や制御方法では満足の行く排気ガスの浄化はできていなかった。特に、希薄燃焼機関では、窒素酸化物が排出されやすく、加えて、その規制は益々強化されているが、既存のNOx浄化技術では、自動車に搭載されるディーゼルエンジンの場合、その稼動条件は常に変化することから、有害物質の排出を抑制することは困難である。
更に、近年、温室効果ガスとして知られる二酸化炭素(CO)の排出量の規制も強化されている。COの排出量は、エンジンの稼動に使用する燃料の量に比例するため、燃焼機関では使用する燃料が少なく燃費の良いことが望まれる。ディーゼルエンジンは、燃費がよく、COの排出量の少ない燃焼機関であるが、排気ガスには多量のNOxが含まれる。
ディーゼルエンジンからのNOx排出を抑制するには、機械的に空燃比を小さくし、エンジンに還元成分でもある燃料を多量に供給することも考えられるが、燃費の悪化を招き、COの排出も増やしてしまう。また、このような燃焼制御では、燃費が良いというディーゼルエンジンの利点を生かせなくなる。
ディーゼルエンジン等の希薄燃焼機関から排出される排気ガス中のNOxを浄化する方法としては、NOx(NO及びNO)を含む排気ガスを尿素の分解で発生するアンモニア(NH)成分の存在下で、酸化チタン、酸化バナジウム、ゼオライト等を主成分とする選択還元触媒と接触させて還元脱硝する技術が知られており、選択還元法、または選択触媒還元(Selective Catalytic Reduction:以下、SCRということがある)法といわれている。
このNH成分を還元剤として用いるSCRでは、主として次に示す反応式(1)〜(3)によって、NOxを最終的にNに還元する。
4NO + 4NH + O → 4N + 6HO ・・・(1)
6NO + 8NH → 7N + 12HO ・・・(2)
NO + NO + 2NH → 2N + 3HO ・・・(3)
実際、NH成分によるNOxの浄化では、上記式(3)のようにNOとNOが概ね半分ずつ含まれる雰囲気で反応が促進する(非特許文献1参照)。しかしながら、希薄燃焼機関から排出されるNOx成分の殆どは一酸化窒素(NO)である(特許文献1参照)ことから、NOxを効率的に浄化するため、排気ガス中のNO成分の濃度が増すように、排気ガス流路にNO酸化手段を配置することが提案されている(特許文献2参照)。具体的には、NOの酸化能力の高い白金(Pt)が酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:以下、DOCということがある)として使用される。
このようなNO酸化手段を利用して、有害微粒子成分、NOxを一つの触媒系で同時に浄化する方法も提案されている。その一つが、排気ガス流路中に酸化触媒と、その後段にフィルターを配置し、その後段でアンモニア成分を噴霧し、その後段に配置される選択還元触媒(SCR)でNOxを浄化するものである(特許文献3参照)。
このような触媒配置によって、酸化触媒で排気ガス中のNOをNOに酸化し、微粒子成分を燃焼除去し、NOxを還元浄化するという手段を一つの触媒系で同時に行うことができる。そして、このNOの酸化触媒成分として白金成分が有効とされている(特許文献4、非特許文献2参照)。
このように、NOxの浄化、微粒子成分の浄化手段が提案されているが、いずれの場合もSCRの前方にDOCを配置し、排気ガス中のNO濃度を増してSCRにおけるNOx浄化の効率化を図るものである。
また、ディーゼルエンジンの燃費向上には、煤やSOF(これらをまとめて、以下「微粒子成分」またはPM:Particulate Matterということがある)の浄化技術も影響を与える。微粒子成分は、排気ガスの流路中にディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)を配置し、このフィルターで微粒子成分を濾し取る方法が実用化されている。濾し取られた微粒子成分は、フィルターに堆積するがフィルターに微粒子成分が堆積し続けると、フィルター目詰まりに伴う背圧上昇によってエンジンの出力低下を招いてしまう。そこで、フィルターに堆積した微粒子成分を燃焼除去してフィルターを再生することが検討されている(特許文献3、特許文献4)。
特許文献3、特許文献4のシステムでは、DOCの後段にDPFを配置し、フィルターに堆積した微粒子成分を酸素の他、NOを利用して燃焼除去している。NOを利用するとより低温から微粒子成分を燃焼させることができるので、微粒子成分の燃焼除去が促進されると共に、圧損上昇を抑えてフィルター再生までインターバールを長くすることができる。このように微粒子成分を捕集して燃焼除去するフィルターのうち、触媒成分を被覆したDPFは触媒化燃焼フィルター(CSF:Catalyzed Soot Filter)ともいわれている。
このように、DOCには排気ガス中のHCやCOを酸化除去する目的で、またCSFには排気ガス中の煤やSOFを酸化浄化する目的で、各々白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の貴金属成分が使用されているが、DOCは前述のように排気ガス中のNOをNOに酸化する作用も有する。DOCによりNO量を増加した排気ガスは、後方のSCRにおけるNOx還元浄化や、DPFやCSFにおける微粒子成分の燃焼を促進する。
また、DOCで排気ガス中のHCを利用して排気ガスの温度を上昇させることは、DOCの後方に配置したDPF又はCSFに堆積した微粒子成分の燃焼除去を促進するのに有効である。そのため、ディーゼルエンジンの排気ガス浄化システムでは、DOCにHC成分を供給し、HC成分を燃焼(酸化)させることがある。このような排気ガス温度の上昇のためにHC成分を使用する手段としては、エンジンに燃料を多めに供給し、未燃焼のHCを発生させてDOCに供給する方法や、エンジンからDOCまでの間の配管中で燃料を噴霧して供給する方法がある。
このように、様々なNOxの浄化、微粒子成分の浄化手段が提案されているが、近年、排気ガス規制の強化に伴い、希薄燃焼機関からの排気ガスに対応する排気ガス浄化システムに用いられる触媒の数が増えると共に、個々の触媒の高機能化も必要とされる傾向にある。そのため、DOCやCSFに使用される高価な貴金属の量が増大する傾向にある。
そこで、PtやPdなどの貴金属を含有するDOCやCSFにはCO、HC、煤などの酸化除去性能、NOの酸化性能、及び軽油など未燃の燃料の燃焼性を向上させると同時に、貴金属の使用量を減らすと云う、相反する二つの課題の解決が求められるようになった。
そのため、本出願人は、ディーゼル機関から排出される排気ガスの流路に、酸化手段と、尿素水溶液噴霧手段と、特定の選択還元触媒をこの順序で配置し、該酸化手段である貴金属成分として白金成分またはパラジウム成分を含み、この貴金属成分の量が金属換算で0.1〜3g/L、貴金属成分中の金属換算の白金量が50〜100重量%である酸化触媒により、排気ガス中の炭化水素成分、一酸化炭素、一酸化窒素、亜酸化窒素を酸化して、二酸化窒素濃度を増した後、尿素水溶液噴霧手段から選択還元触媒に尿素水溶液を噴霧供給し、150〜600℃で接触させて、生成したアンモニアによって窒素酸化物を窒素と水に分解することを特徴とする排気ガス浄化方法を提案した(特許文献5参照)。これにより、尿素の加水分解を触媒系の外で行うことなく、シンプルな構成で、規格化され容易に入手可能な尿素水を使用してNOxを浄化できるようになった。
しかし、年々、NOxの排出規制が厳しくなる一方、COの排出量削減、燃料費の節約のため燃費の改善も求められており、ディーゼルエンジンの排気温度はますます低下する傾向にある。そのため、ディーゼルエンジンを稼働させても尿素水噴霧装置近傍の排気ガス温度は数十分という相当長い時間経たないと脱硝に適した温度まで上昇しないため、尿素を噴霧できないコールドスタート時において、相当長い時間排気ガス中のNOxが還元成分であるNHと反応することなく、そのまま排出される事態となっている。
そこで、DPFとSCRの間で排気ガスの一部を分流させ、(1)メインの尿素水噴霧装置を分流管の中に設置し、その手前にサブの尿素水噴霧装置とヒータと加水分解触媒を、この順に並べるか、又は、(2)尿素水噴霧装置とヒータをこの順に分流管の中に並べ、SCRの手前に加水分解触媒を設置した尿素SCRシステムが提案されている(特許文献6参照)。
しかし、上記尿素SCRシステムでは、少量の尿素蒸気を得るためにヒータ熱で伝熱性が低く熱容量の大きな排気ガス自体を加熱しており、尿素SCRシステム(2)では、主流路に(1)よりも大型な尿素加水分解触媒を設置しているので、省エネ、省資源という面でまだ改善の余地があり、また、触媒の種類や形態についての詳細な説明がなく、尿素が十分に加水分解されない場合が想定される。
特開平05−38420号公報 特開平08−103636号公報 特開平01−318715号公報 特表2002−502927号公報 特開2009−262098号公報 特開2006−170013号公報
Catalysis Today 114(2006)3−12 「低温の酸化雰囲気下、Pt触媒のNO酸化性能への担体物質とエージングの影響」(Influence of Support Materials and Aging on NO Oxidation Performance of Pt Catalysts under an Oxidative Atmosphere at Low Temperature), JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN, Vol.40 (2007) No.9 pp.741−748
本考案の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、希薄燃焼機関からの排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分の内、特にコールドスタート時に発生する窒素酸化物(NOx)の浄化性能に優れたバイパス流路に尿素水噴霧装置、尿素の加水分解触媒、ヒータなどを組み合わせて配置したコールドスタート対応尿素SCRシステムを提供することにある。
本考案者らは、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、DOC、DPF(又はCSF)とSCRの触媒を有し、該SCRの上流の排気ガス主流路に尿素水噴霧装置を配置した排気ガス浄化装置において、コールドスタート時に発生する窒素酸化物が効率的に還元除去されるように、前記尿素水噴霧装置の上流で排気ガス流を分岐するバイパス流路を設け、該バイパス流路内に第二の尿素水噴霧装置と、尿素加水分解触媒を配設し、該尿素加水分解触媒の周囲にヒータを設置するとともに、主流路の尿素噴霧装置の上流側に設けた熱電対により、主流路の排気ガス温度を計測し、尿素をNHに十分に転換する温度に到達するまでの間、ヒータを起動させ、尿素加水分解触媒の温度を昇温させることで、生成したNHが窒素酸化物を効率的に還元除去するようになることを見出して、本考案を完成するに至った。
即ち、本考案の第1によれば、排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素の酸化の他、噴霧された軽油を燃焼する酸化触媒(DOC)と、煤を捕集し、蓄積する煤による圧損が所定の値を超える度に軽油を噴霧させて排気温度を上昇させることで煤を燃焼させるディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)又は触媒化燃焼フィルター(CSF)と、尿素水を噴霧する尿素水噴霧装置と、尿素水の加水分解で生じるNHにより窒素酸化物を還元除去する選択還元触媒(SCR)を排気ガスの主流路に配設した尿素SCRシステムにおいて、
選択還元触媒(SCR)の上流の主流路から小径のバイパス流路を分岐させ、バイパス流路内に第二の尿素水噴霧装置と尿素加水分解触媒を配置し、かつ該尿素加水分解触媒の周囲をヒータで包囲してなり、
主流路のメイン尿素水噴霧装置の手前で排気ガス温度を計測し、排気ガス温度が尿素をNHに十分に転換する温度に到達していなければ、ヒータにより尿素加水分解触媒を加熱し、触媒床温度を十分に高めてから第二の尿素水噴霧装置を作動させ、噴霧された尿素からNHへの転換を促進して、コールドスタート時に発生する窒素酸化物を効率的に還元除去することを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
また、本考案の第2によれば、第1の考案において、バイパス流路の口径が、主流路の口径の1/5〜3/4であることを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
また、本考案の第3によれば、第1又は2の考案において、バイパス流路の出口配管が、主流路の内部に突出していることを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
また、本考案の第4によれば、第1〜3のいずれかの考案において、選択還元触媒(SCR)が、尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有することを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
また、本考案の第5によれば、第1〜4のいずれかの考案において、前記尿素加水分解触媒がメタル担体に尿素加水分解材料を塗布した易加熱性尿素加水分解触媒であることを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
また、本考案の第6によれば、第1〜5のいずれかの考案において、前記選択還元触媒(SCR)の後に、さらにアンモニア酸化触媒(AMOX)を配置することを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
また、本考案の第7によれば、第1の考案において、前記排気ガスの主流路に、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)を設けずに、かつ選択還元触媒(SCR)の代わりに、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)の表面に選択還元触媒(SCR)を塗布した選択還元触媒塗布ディーゼル微粒子捕集フィルター(SCR/DPF)を配設したことを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
また、本考案の第8によれば、第1〜7のいずれかの考案において、計測・制御手段には、制御に必要な尿素の噴霧量を、予め記憶させておくことを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
さらに、本考案の第9によれば、第1〜8のいずれかの考案において、計測・制御手段には、制御に必要な軽油噴霧手段からの軽油の噴霧量を、予め記憶させておくことを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
また、本考案の第10によれば、第1〜9のいずれかの考案において、煤を燃焼させるための軽油が、ディーゼルエンジンの筒内又は排気マニホールド内に噴霧されることを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムが提供される。
本考案のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムは、SCRの手前の排気ガスの主流路に小径のバイパス流路を設け、バイパス流路内に第二の尿素水噴霧装置と尿素加水分解触媒を配置し、該尿素加水分解触媒の周囲をヒータで包囲しており、エンジン始動時から主流路の排気ガス温度を計測し、排気ガス温度が尿素をNHに十分に転換する温度に到達するまで、ヒータを作動させ、尿素加水分解触媒の触媒床温度が十分に高くなるようにしているため、第二の尿素水噴霧装置から噴霧される尿素水をNHに十分に転換させることができ、コールドスタート時に発生する窒素酸化物を後段のSCRにより効率的に還元除去することができる。
そのため、ディーゼルエンジンなどの希薄燃焼機関から排出されるHC、CO、NOx、煤などの微粒子成分の内、特にコールドスタート時に発生するNOxの浄化性能が高くなり、既存の装置に対して比較的容易に適用でき経済性にも優れている。
ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)又は触媒化燃焼フィルター(CSF)と選択還元触媒(SCR)の間に設けたバイパス流路に、第二の尿素水噴霧装置及び尿素加水分解触媒を配置した本考案のコールドスタート対応尿素SCRシステムの構成を模式的に示す説明図である。 本考案のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムの他の実施態様であり、バイパス流路の出口配管が主流路の内部まで伸びている構成を模式的に示す説明図である。 本考案のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムの他の実施態様であり、選択還元触媒(SCR)として、尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有する選択還元触媒(SCR)を用いた構成を模式的に示す説明図である。 本考案のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムでの他の実施態様であり、バイパス流路に易加熱性尿素加水分解触媒を配置した構成を模式的に示す説明図である。 本考案のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムの他の実施態様であり、選択還元触媒(SCR)の後方にアンモニア酸化触媒(AMOX)を配置した構成を模式的に示す説明図である。 本考案のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムの他の実施態様であり、選択還元触媒塗布ディーゼル微粒子捕集フィルター(SCR/DPF)を配置した構成を模式的に示す説明図である。 尿素加水分解触媒に尿素水を噴霧した場合の触媒床温度が150〜180℃における経過時間に対するNHの生成量を示す折れ線グラフである。 尿素加水分解材料を有する選択還元触媒に尿素水を噴霧した場合の触媒床温度が150℃におけるNOx浄化性能を示す棒グラフである。
以下、本考案のバイパス流路を利用したコールドスタート対応尿素SCRシステムについて、用いる排気ガス浄化装置をディーゼル自動車用途に適用した場合について詳述するが、本考案は発電など様々な電力源に使用されるディーゼルエンジンにも有効であることはいうまでもない。
I.排気ガス浄化装置I:バイパス流路を利用する基本構成
本考案では、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)を酸化する酸化触媒(DOC)と、煤などの微粒子成分を捕集し、蓄積する煤による圧損が所定の値を超える度に煤を燃焼させるディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)又は触媒化燃焼フィルター(CSF)と、尿素水噴霧装置と、尿素から生成するNHにより排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元除去する選択還元触媒(SCR)を配置した排気ガス浄化装置に、さらに、DPF(又はCSF)−SCR間にバイパス流路を設けるとともに、バイパス流路内に第二の尿素水噴霧装置と、尿素加水分解触媒を配置し、ヒータで尿素加水分解触媒を包囲した排気ガス浄化装置を用いることができ、計測・制御手段を有している。以下、この排気ガス浄化触媒装置を触媒装置Iという。
すなわち、触媒装置Iは、図1のように、ディーゼルエンジン1からの排気ガス主流路10に、酸化触媒(DOC)4とディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF){又は触媒化燃焼フィルター(CSF)}5と、尿素水噴霧装置3を設け、この第一の噴霧装置(メイン尿素水噴霧装置ともいう)3の後方に選択還元触媒(SCR)6を配置し、さらにDPF(又はCSF)の後方で主流路を分岐させ排気ガスバイパス流路11を設け、第二の尿素水噴霧装置(サブ尿素水噴霧装置ともいう)7と尿素加水分解触媒8を設置し、尿素加水分解触媒8の周囲にヒータ9を設置した排気ガス浄化触媒装置である。
その際、系内の排気温度を上昇させて、DPF(又はCSF)5に堆積した煤の燃焼除去を促進するため、軽油噴霧装置2を酸化触媒(DOC)4よりも上流に配置している。軽油噴霧装置2を配置する場所としては、ディーゼルエンジンの筒内に噴霧する場合(図1参照)と、ディーゼルエンジンの排気口から酸化触媒(DOC)の間の配管内に噴霧する場合(図示せず)がある。
触媒装置Iでは、ディーゼルエンジン1の稼働開始より排気ガス中に含まれるNOの一部がDOC4によりNOに酸化され、NHとの反応効率が高められる。但し、排気ガス温度がNHへの加水分解に適した温度に達しないうちは、メイン尿素水噴霧装置3からは尿素水を噴霧しない。その一方で、ディーゼルエンジン1の稼働と同時にバイパス流路内にあるヒータ9が加熱を開始し、尿素加水分解触媒8の触媒床温度が速やかにNHへの加水分解に適した温度に達するようにする。尿素加水分解触媒8の触媒床温度が所定の温度に達すると、サブ尿素水噴霧装置7から尿素水が噴霧され、尿素水は尿素加水分解触媒8によりNHに加水分解される。生成したNHはバイパス流路を流れ、SCR6で窒素酸化物(NOx:NO+NO)をNに還元除去する。また、ヒータ9はPID制御により尿素水加水分解触媒8の触媒床温度を一定に保つよう設定されている。
その後、メイン尿素水噴霧装置3の周辺の排気ガス温度が尿素をNHに十分に転換するのに適した温度に到達すると、メイン尿素水噴霧装置3が稼働を開始し、尿素水を噴霧する。それと同時に、サブ尿素水噴霧装置7は噴霧を止め、ヒータ9への通電も停止する。
一方、酸化触媒(DOC)4は、NOの酸化の他、排気ガス中に含まれるCOやHCの酸化除去も行うし、DPF(又はCSF)5は煤を捕集し、煤の蓄積によりDPF(又はCSF)5の圧損が一定圧を超えるとDPFの後ろに設置してある圧力センサーが作動して軽油噴霧装置2から筒内又は配管内に未燃の軽油がパルス状に噴霧される。噴霧されることで微粒子化した軽油はDOC4で燃焼し、その発熱により排気ガスの温度を一気に上昇させる。高温となった排気ガスによりDPF(又はCSF)5内に蓄積された煤は燃焼除去される。
計測・制御手段は、図示しないが、熱電対、圧力センサー、記憶装置などから構成され、上記一連の動作に必要な温度や圧損の計測を行うとともに、予めエンジンに応じた走行条件などを行って計算しておいたデータを記憶することで、窒素酸化物や煤などの浄化性能を高めるよう機能する。
1.[DOC:酸化触媒]
本考案における酸化触媒(DOC)は、排気ガス中のNO、HC、CO、及び軽油等の未燃の燃料を酸化する貴金属成分を含む酸化触媒であり、貴金属成分として、少なくとも白金成分とパラジウム成分を含有する。
また、本考案ではDOCの貴金属成分の担持量が、一体構造型担体の体積あたりの金属換算で0.5〜4.0g/Lであることが好ましく、0.8g/L〜3.0g/Lであることがより好ましい。貴金属成分の量が少なすぎると、HCやCOの酸化除去性能、NOの酸化性能、及び軽油等の燃料の燃焼性が十分に得られず、貴金属成分の量が多すぎると価格面でのメリットがなくなる恐れがある。
さらに、本考案ではDOCの触媒層の被覆量が、30〜300g/Lであることが好ましく、50〜250g/Lであることがより好ましい。触媒層の被覆量が、30g/L未満であると、担持される白金等の貴金属の分散性が悪化することにより酸化活性が低下し、300g/Lを超えると、セル内が狭くなることで圧損が増大するので好ましくない。
排気ガス浄化装置におけるDOCでは、バリウム(Ba)を助触媒として使用することができる。Baは、イオン化傾向が高い元素の一つであり、電子をPtやPdなどの貴金属に与え、貴金属の還元を促進する。特に、BaはPdとの相性が良く、Pdの活性を促進する働きを有する。
上記貴金属成分や助触媒成分は、無機酸化物(無機母材)に担持され、必要に応じ他の触媒成分と混合し、触媒組成物として構造型担体に被覆される。このように貴金属成分を担持する母材としての無機酸化物は、公知の排気ガス浄化用触媒材料が使用できる。このうち耐熱性が高く、その比表面積値が大きいことで貴金属成分を安定に高分散できる多孔質の無機酸化物が好ましい。
一例として、貴金属や助触媒を担持するための無機酸化物(無機母材)としてアルミナが挙げられる。アルミナの素材としては、γ−アルミナ、β−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナが挙げられ、なかでもγ−アルミナが好ましい。また、γ−アルミナに酸化ランタンなどの希土類酸化物、ジルコニア、セリアなどを添加することが好ましい。特に、酸化ランタンが添加されたγ−アルミナは、耐熱性に優れ、白金成分やパラジウム成分等の貴金属成分を担持させた場合、高温時にも高い触媒活性を維持することが可能である(特開2004−290827号公報)。
本考案において、DOCには活性成分を分散性よく担持するために一体構造型担体、すなわちハニカム構造体(以下、ハニカム担体ともいう)が使用される。
2.[DPF:ディーゼル微粒子捕集フィルター]
本考案における触媒装置Iは、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)をDOCの後段に配置する。
本考案において、DPFとは、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の煤などの微粒子成分(PM)を捕集し、燃焼(酸化)除去するためのセラミック製フィルターである。
セラミック製フィルターとしては、具体的には、通孔開口部の一方を開口し、もう一方を閉口した通孔を集積してハニカム状にした一体型構造を有するウォールフロー型担体が使用される。ウォールフロー型担体は、通孔の壁が多孔質からできていて、煤などの微粒子成分は排気ガスと共に通孔開口部から通孔の中に進入し、排気ガスが通孔壁の多孔質の孔を通過して後方に排出され、微粒子成分は閉口された通孔の中に堆積する。このように堆積した微粒子成分は、前述のとおり、高温の排気ガスにさらされることで燃焼除去される。それによりDPFが再生され、再び排気ガスの中から微粒子成分を補足することができる。
3.[CSF:触媒化燃焼フィルター]
本考案における触媒装置Iは、前記DPFの代わりに、CSF(触媒化燃焼フィルター)をDOCの後段に配置してもよい。
本考案において、CSFとは、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の微粒子成分(PM)を捕集し、燃焼(酸化)除去するための貴金属成分を含む触媒化燃焼フィルターである。CSFは、平均細孔径が10〜60nmのアルミナを一種用いるか、又はその範囲内で細孔径が異なる二種以上を混合したアルミナ混合物を用いて、これに白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)を担持した触媒層を有し、白金とパラジウムの比が重量換算で1:1〜11:4であることが好ましい。
CSFは耐熱性の高いバグフィルターでも良いが、シリカ、アルミナ、炭化珪素、コーディエライトなどの無機酸化物の焼結体を多孔質化して得られたウォールフロータイプのハニカム構造体を触媒化して使用することが望ましい。
CSFには貴金属成分として、少なくとも白金成分とパラジウム成分を含有する。Pt成分を含有させることでCSFでもNO酸化性能を発揮させ、排気ガス中のNO濃度を増し、CSF後段のSCRにおけるNOx還元浄化能力を向上させることができるが、Pt成分にPd成分を加えることで、Pt成分の揮発を抑制することが期待できる。CSFは、白金とパラジウムの比が重量換算で1:1〜11:4であることが好ましく、3:2〜11:4であることがより好ましい。前記DOCの場合と同様に、1:1未満であると白金の含有率の低下に伴うHC、CO、NO等の酸化活性の低下が大きくなり、11:4を超えるとパラジウムが共存しても揮発した白金等の貴金属によるSCRの脱硝性能の低下が大きくなることがある。そして、CSFは、白金の担持量が金属換算で0.05〜2.0g/Lであることが好ましく、0.1〜1.5g/Lであることがより好ましい。
さらに、本考案ではCSFの触媒層を構成する酸化成分の被覆量が、4〜100g/Lであることが好ましく、5〜50g/Lであることがより好ましい。酸化成分の被覆量が、4g/L未満であると、担持される白金等の貴金属の分散性が悪化することにより酸化活性が低下し、100g/Lを超えると、後述するようにフィルターセル壁に無数に開いた細孔が狭くなることで圧損が増大するので好ましくない。
このようなCSFは、本考案ではDOCと同様の「酸化触媒組成物を被覆した構造体」であるといえる。そのため、無機母材については、DOCの項で詳細に述べた多孔質な無機酸化物がすべて使用できる。また、白金等の貴金属の出発塩についてもDOCの項で詳細に述べた原料がすべて使用できる。
また、前記DOCと同様、CSFにもハニカム構造体(一体構造型担体)が使用される。
本考案でDPFを使用するかCSFを使用するかは、ディーゼルエンジンの排気量や排気ガス中に含まれる煤などの微粒子成分の量などによって決まるが、煤などの微粒子成分の酸化除去がCSFの方がDPFより低温で進行することから軽油の噴霧量が少なくてすむこと、DOCで酸化除去できなかったCOや未燃のHCをCSFでさらに酸化除去できることからCSFの使用が好ましい。
4.[SCR:選択還元触媒]
本考案における触媒装置Iは、SCR(選択還元触媒)をDOC、DPF(又はCSF)の後段に配置する。
SCRは、アンモニア成分を還元剤として排気ガス中のNOxを還元浄化するものである。SCR材料としては、ゼオライトやゼオライト類似の化合物(結晶金属アルミノリン酸塩)の他、バナジウム酸化物、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン等の遷移金属酸化物、セリア、ランタン、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム、ネオジム等の希土類酸化物、酸化銅、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化スズ等の卑金属酸化物、またはこれらの複合酸化物等の各種無機材料が挙げられる。また、アルミナやシリカ、及び希土類、アルカリ金属、アルカリ土類等で修飾されたアルミナやシリカと上記酸化物との混合物や複合化物等も挙げられる。また、銅や鉄などの卑金属をゼオライトやゼオライト類似の化合物等にイオン交換した無機材料等も挙げられる。ただし、自動車用途ではバナジウムのような有害な重金属を含まないことが望ましい。
本考案では、SCRがゼオライト又は結晶金属アルミノリン酸塩を含むことが好ましい。また、本考案では、PtやPdなどの貴金属成分は、アンモニア成分を酸化しNOxを生成するので含まないことが好ましい。
本考案において、無機材料としては、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン等の遷移金属酸化物、セリア、ランタン、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム、ネオジム等の希土類酸化物、酸化ガリウム、酸化スズ等の卑金属酸化物、またはこれらの複合酸化物等の中から適宜選択できる。それ以外にも、アルミナやシリカ、及び希土類、アルカリ金属、アルカリ土類等で修飾されたアルミナやシリカは耐熱性に優れ、比表面積が上記酸化物より大きいため、上記酸化物と混合または複合化することで上記酸化物自体の比表面積を増大させることができるので、より好ましい。
なかでも、セリアは、NOx吸着を促進することでNHとNOxのSCR反応を促進できる機能を有する。また、ジルコニアは、その他成分を熱的に安定な状態で高分散させる為の分散保持材料としての効果を期待できる。その他、タングステンの酸化物は、酸性が強く、アルカリ成分である尿素やアンモニアの吸着力が大きいので、脱硝性能が高くなるという作用効果を期待できる。これらの酸化物は単独でも使用できるが、混合もしくは複合化することが好ましい。
本考案において、SCR触媒には活性成分を分散性よく担持するために一体構造型担体、すなわちハニカム構造体(以下、ハニカム担体ともいう)が使用される。
5.[尿素加水分解触媒]
本考案における触媒装置Iは、尿素加水分解触媒をバイパス流路に配置している。
本考案において、尿素加水分解触媒は、希薄燃焼機関から排出される排気ガス中の窒素酸化物を浄化するため、配管内に還元剤として噴霧された尿素水をNHに加水分解することを目的とする。
尿素加水分解触媒としては、酸化チタン(TiO)、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)を混合して生成したペレット(特開2004−108185)、粉砕γ−アルミナ1mm〜2mm(特開2004−202450)、ゼオライト、アルミナ、チタニアのうち1種以上から選ばれた組成物、またはチタニア−バナジウム系、チタニア−バナジウム−タングステン系、チタニア−タングステン系のうち1種以上からなる加水分解成分によって構成される球状・柱状・円筒状のペレットまたはハニカム(特開2005−288397)、酸化チタン担体に酸化タングステンを添加した構造、又は、酸化チタン担体に酸化タングステンを添加し、さらに五酸化バナジウムを添加した構造などが知られている。
また、一般にチタニア系母材は、固体酸性が強いが故に硫黄が付着しにくい母材として知られている。一方、アルミナ系母材は、チタニアと比較して固体酸性が弱いが故に硫黄が吸着しやすい母材としてよく知られている。そのため、ディーゼルエンジンのような排気ガス中に硫黄酸化物が含まれている場合、母材としてはチタニアを初めとして硫黄が付着しにくい固体酸性の強い金属酸化物が一般に使用され、アルミナの様な硫黄が付着しやすい固体酸性の弱い金属酸化物はあまり使用されていない。
本考案でも、これらの上記加水分解触媒の内、硫黄の影響を受け難いチタニア系母材を用いることが望ましい。
本考案において、尿素加水分解触媒の母材として好ましいチタニアは、多孔質無機酸化物の一種であり、また、固体酸性が強いため、硫黄がほとんど吸着しない。結晶構造としては、アナタース型の他、ルチル型、ブルカイト型が挙げられる。
さらに、チタニアは、単独で使用した場合、雰囲気温度の上昇とともにBET比表面積が変化して低下するため、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、酸化バリウム等を少量加えて、BET比表面積が変化しないように耐熱性を向上させたチタニア系複合酸化物を使用することが望ましい。
また、本考案において、チタニア系複合酸化物のBET比表面積、平均細孔径は小さい方が良く、NH吸着量(酸量)、細孔容積は大きい方が、尿素加水分解性能の面で良好な傾向がある。具体的には、BET比表面積としては90m/g以下、細孔容積としては1cc/g以上、平均細孔径としては1000nm以下が好ましい。
尿素加水分解触媒の形状は、特に制限されるわけではないが、一体構造型担体であることが好ましい。本考案に使用される尿素加水分解触媒を調製するには、一般にウォッシュコート法が用いられる。すなわち、触媒材料を必要に応じてバインダーや界面活性剤などの添加剤を水または水に水溶性有機溶媒を加えた溶媒(以下、水系媒体ともいう)と混合してスラリー状混合物にしてから、ハニカム担体へ塗工した後、乾燥、焼成する事により製造される。触媒組成物は一層としてもよいし、二層以上になるように塗布してもよい。
一体構造型担体、すなわちハニカム構造体(以下、ハニカム担体ともいう)とは、多数の通孔が集中したハニカム形状の構造体である。ハニカム担体の全体形状は任意であり、円柱型、四角柱型、六角柱型など、適用する排気系の構造に応じて適宜選択できる。さらに、開口部の孔数は、処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な孔数が決められるが、通常、ディーゼル自動車の排気ガス浄化用途としては、1inch(6.45cm)当たり100〜1500個が好ましく、100〜900個であることがより好ましい。1inch(6.45cm)当たりのセル密度が100個以上であれば、排気ガスと触媒の接触面積を確保することができ、充分な排気ガスの浄化機能が得られ、1inch(6.45cm)当たりのセル密度が1500個以下であれば、著しい排気ガスの圧力損出を生じることがなく内燃機関の性能を損なうことがない。
また、ハニカム担体のセル壁の厚みは、2〜12mil(ミリインチ:0.05〜0.3mm)が好ましく、3〜8mil(0.076〜0.2mm)がより好ましい。
このようなハニカム構造体の材質には、ステンレスなどの金属や、シリカ、アルミナ、炭化珪素、コーディエライトなどのセラミックが使用できるが、本考案には、いずれの材質のハニカム構造体も使用できる。
特に、尿素加水分解触媒では、排気ガスの温度が低く尿素加水分解温度に達しない間はヒータを用いた加熱が必要なために、伝熱性がよく熱容量の小さいステンレスなどのメタル担体やセル壁の厚みの薄いコーディエライトの使用がより好ましい。
6.[メタル担体]
メタル担体は排気ガスの温度上昇で容易に昇温するが、後述するヒータを内蔵するメタル担体を活用すれば、塗布された尿素加水分解触媒を直接加熱することができるので、加熱時間の短縮と加熱コストの節約にもなる。
メタル担体としては、耐熱金属箔製の波板と平板、或いは波板と波板とを組み合わせて多層に巻回して構成したものが挙げられる。
例えば、排気ガスの流れ方向と交差する方向より、ジグザグに切り込みを形成し、流通途中で、排気ガスに乱流を起こさせるように構成した特開昭61−106911号公報、平板部分に細かい波を持たせた特開平2−265652号公報、幅方向に対して傾斜した第1の波板と、波形の傾斜方向を第1の波形と異ならせた第2の波板とを交互に重ねて巻回した実開昭62−66212号公報、平板と波板のうち少なくともいずれか一方に切り抜いた開口を形成して中心部における排気ガスとの接触面積を減少させた特開平2−273546号公報等が提案されている。波板に曲線と孔を設けて中心から外側に流れを惹起させ、担体全体に行き渡らせる特開平3−189926号公報、波板に大小の切り込みを設けて排気ガスに強い渦流化をもたらす乱流を生じる特開平6−339634号公報、波板をセルの長手方向に間隔をあけて複数並設して隣接する該波板のセルの位相を異ならせる共に、前記間隔の部分の平板に貫通孔をあけ、排気ガスに乱流を起こさせる実開平7−37698号公報、ロウ材を用いたNiロウ付けメタル担体の特開平2−71848号公報などがある。
メタル担体は、一般に、セラミック担体に比べ熱衝撃だけでなく、振動、耐衝撃性にも優れているため、セラミック担体に比べセル壁の厚みをさらに薄くすることができ、圧損という面で有利であり、高セル品の使用が可能になる。
その反面、セラミック担体が持つ微細細孔がないため、セラミック担体にくらべ、メタル表面に凹凸が少ないので、塗布した触媒層が剥がれ易い傾向がある。そのため、メタル担体を使用する際には触媒を塗布する前に予め高温で焼成することで表面を荒らしておくか、微細なアルミナを塗布することでメタル表面にアルミナの下地層を形成しておく必要がある。
7.[軽油噴霧装置]
軽油噴霧装置(Gas Oil Injector)は、排気ガスの温度を高めるための軽油を供給するものであって、通常、軽油の貯蔵タンクと配管、その先端に取り付けられた噴霧ノズルから構成される。
軽油噴霧装置の噴霧ノズルの位置は、ディーゼルエンジンの筒内(図1参照)、又は、ディーゼルエンジンの排気口と酸化触媒(DOC)の間の配管内に設置される。軽油噴霧装置が作動するのは、温度センサーの信号を基にマイクロコントローラが酸化触媒(DOC)の昇温を要求してきた場合や、DPF(又はCSF)で捕集された煤などの微粒子成分が多量に蓄積され、燃焼除去が必要になった場合であり、圧力損失をセンサーが検知した信号を受信したときである。
8.[バイパス流路]
本考案において、バイパス流路は、主流路から排気ガスの一部をバイパスさせると共に、バイパス流路に設置したサブ尿素噴霧装置から尿素水を噴霧し、その後段にあるヒータで尿素加水分解触媒を強制的に加熱することにより、尿素の熱分解や加水分解が生じない低温下でも尿素水を強制的にNHに分解して主流路に戻すものである。
バイパス流路を流れる排気ガスの量は、バイパス流路の口径で決まるが、排気ガスが低温下でも発生する窒素酸化物を選択還元触媒によりNHで還元浄化に対応できるためには、バイパス流路の口径は主流路の口径の1/5〜3/4が好ましく、1/4〜2/3がより好ましい。例えば、バイパスさせる排気ガスの量はバイパス流路の口径が1/5の場合、主流路の1/25となり、バイパス流路の口径が3/4の場合、主流路の9/16となる。
バイパス流路の口径が1/5より小さいとバイパス流路を流れる排気ガスの量や断面積が主流路の1/25となるため、バイパス流路内の尿素水濃度が激増する一方、加水分解触媒の容量が激減するので、尿素水からNHへの加水分解性能が低下してしまうので好ましくない。一方、バイパス流路の口径が3/4より大きいと排気ガスを加熱するためのヒータが必要とする消費電力が過大となるので好ましくない。
9.[尿素水噴霧装置]
尿素水噴霧装置(Urea Injector)は、アンモニア源である尿素水を供給するものであって、通常、尿素水の貯蔵タンクと配管、その先端に取り付けられた噴霧ノズルから構成される。さらに、排温が低くても尿素を加水分解できるようヒータを配管内に設置することができる。
尿素水噴霧装置には、メイン尿素水噴霧装置とサブ尿素水噴霧装置の二種があり、メイン尿素水噴霧装置がSCRの上流側の主流路に、サブ尿素水噴霧装置がバイパス流路内の尿素加水分解触媒の上流側に設置される。
尿素水の種類は、特に制限されないが、例えば濃度31.8〜33.3重量%の規格化された尿素水溶液、例えば商品名アドブルー(Adblue)を使用できる。
尿素加水分解触媒8の触媒床温度が所定の温度に達すると、サブ尿素水噴霧装置7のノズルから尿素水が間欠的にノズルからミスト状にバイパス流路内に導入され、排気ガスと混合した状態で下流側に流れ、尿素加水分解触媒8によりNHに加水分解される。生成したNHはバイパス流路を流れ、主流路のSCR6で窒素酸化物(NOx:NO+NO)をNに還元除去する。
その後、メイン尿素水噴霧装置3の周辺の排気ガス温度が尿素をNHに十分に転換するのに適した温度に到達すると、メイン尿素水噴霧装置3が稼働を開始し、尿素水を噴霧する。それと同時に、サブ尿素水噴霧装置7は噴霧を止める。
10.[ヒータ]
ヒータは、尿素加水分解触媒を尿素水の加水分解に適した温度まで加熱するものであり、加熱効率を高めるために、本考案においては尿素加水分解触媒の周囲に配置される。
そのため、ヒータは通常、電熱線を発熱体とするが、同等な機能を有するものであれば特に限定されないが、尿素加水分解触媒の触媒床温度が尿素水の加水分解に適した温度まで迅速に加熱できるに十分な電気容量を有するものが好ましい。
従来の特許文献6に記載の尿素SCRシステムでは、排気ガスの温度が300℃未満の場合、ヒータを通電し、サブの尿素水噴霧装置を稼働させ、少量の尿素水をヒータ熱により尿素蒸気に気化後、加水分解触媒でNHガスと尿素蒸気の混合気にした後、SCRに供給しており、一方、排気ガスの温度が300℃を越えると、ヒータの通電とサブの尿素水噴霧を止め、メインの尿素水噴霧装置を稼働させ、噴霧された多量の尿素液滴をSCRに供給している。
また、排気ガスの温度が300℃程度未満の場合、ヒータを通電し、尿素水噴霧装置を稼働させ、ヒータ熱により少量の尿素水を尿素蒸気に気化後、加水分解触媒でNHガスと尿素蒸気の混合気にした後、SCRに供給し、排気ガスの温度が300℃を越えると、ヒータの通電を止め、尿素水の噴霧量を増やして、噴霧された多量の尿素液滴をSCRに供給しており、これらの手法により低温から高温までの広い温度条件下でNOxを浄化させることができるとしている。
しかし、上記このような尿素SCRシステムでは、少量の尿素蒸気を得るためにヒータ熱で伝熱性が低く熱容量の大きな排気ガス自体を加熱することになり、主流路に大型の尿素加水分解触媒を設置しなければならないこともあり、省エネ、省資源という面でまだ改善の余地があり、また、触媒の種類や形態によっては、尿素が十分に加水分解されない場合が想定される。
本考案では、尿素加水分解触媒の周囲をヒータで包囲しており、エンジン始動時から主流路の排気ガス温度を計測し、排気ガス温度が尿素をNHに十分に転換する温度に到達するまで、ヒータを作動させ、尿素加水分解触媒の触媒床温度が十分に高くなるようにしているため、第二の尿素水噴霧装置から噴霧される尿素水をNHに十分に転換させることができ、コールドスタート時に発生する窒素酸化物を後段のSCRにより効率的に還元除去することができる。また、尿素加水分解触媒としてヒータを内蔵するメタル担体を活用すれば、塗布された尿素加水分解触媒を直接加熱することができるので、加熱時間の短縮と加熱コストの節約にもなる。
11.[計測・制御手段]
本考案では、上記の触媒や噴霧装置の他、これらを効率良く稼働させるために、以下の計測・制御手段を備えている。
本考案においては、ディーゼルエンジンの稼働開始に連動してバイパス流路にあるヒータが尿素加水分解触媒の加熱を開始し、尿素加水分解触媒の触媒床温度が尿素水をNHに加水分解するのに適した温度になるまで昇温させる。尿素加水分解触媒の中心部には熱電対が設置されており、触媒床温度が所定の温度に達したのを検知すると、次にバイパス流路にあるサブ尿素水噴霧装置から尿素水が噴霧される。噴霧されて微粒子化した尿素水は尿素加水分解触媒でNHに加水分解される。
一方、稼働したディーゼルエンジンの排気口から排出される排気ガス中のNOの一部はDOCで酸化されてNOとなる。尿素の加水分解で生成したNHは、バイパス流路を流れ、SCRで窒素酸化物(NOx:NO+NO)をNに還元除去するのに使用される。
主流路のメイン尿素水噴霧装置近傍に熱電対が設置されており、排気ガス温度が上昇して、尿素水を噴霧しても自然にNHに加水分解されるのに適した温度に達したのを検知すると、メイン尿素水噴霧装置から尿素水の噴霧が開始されると同時に、ヒータは加熱を停止し、サブ尿素水噴霧装置も尿素水の噴霧を止める。
その後、運転負荷の低下などによって、主流路のメイン尿素水噴霧装置近傍の温度が後述する所定の温度以下に下がると、メイン尿素水噴霧装置は尿素水の噴霧を停止し、ヒータが稼働を再開し、加水分解触媒の触媒床温度が一定値に達するとサブ尿素水噴霧装置が稼働を開始する。これら一連の動きは、主流路のメイン尿素水噴霧装置近傍に設置した熱電対の温度の上下に連動し、ディーゼルエンジンが稼働を停止するまで続く。
その間、排気ガス中のCOやHCはDOCで酸化除去される。また、煤などの微粒子成分はDPF(又はCSF)で捕集され、蓄積される。煤などの微粒子成分がDPF(又はCSF)内で蓄積され、圧損が一定圧を超えると、DPF(又はCSF)の後方に設置された圧力センサーが圧力異常を検知する。すると、軽油噴霧装置が起動し、軽油を噴霧する。噴霧され、微粒子化した軽油はDOCで燃焼し、排気ガス温度を一気に上昇させる。高温となった排気ガスによりDOC(又はCSF)に蓄積された煤などの微粒子が燃焼して、DOC(又はCSF)は再生され、再び煤などの微粒子を捕集し、DOC(又はCSF)内に蓄積する。
これら一連の作業を時間的に遅滞なく、噴霧量に過不足なく実施するため、触媒装置には用途に応じた計測・制御手段が設けられている。特に、マイクロコントローラ(Microcontroller)は、その制御手段の中核をなしており、各所に展開する温度や圧力などの計測手段から得られる情報を受け、それらの状況に応じて、情報を発信することで正確な制御が行われる。
まず、上記システムには、ディーゼルエンジンから排出されるNOxの排出量を把握するNOxセンサーと随時、NOx濃度をマイクロコントローラに伝達する仕組みが組み込まれている。すなわち、ディーゼルエンジンの稼働状況(回転数、トルクなど)を随時、マイクロコントローラに伝達する仕組みとして、ディーゼルエンジンから排出されるNOxの濃度を測定するNOxセンサーがディーゼルエンジン排出口に設置され、随時、NOx濃度がマイクロコントローラに伝達される。マイクロコントローラは、これらの情報を得てエンジンの仕様(排気量など)を基にNOxの排出量を随時算出し、エンジンの稼働状況とNOxの排出量との関係を求める。
次に、ディーゼルエンジンに設置された本考案のバイパス流路を用いた尿素SCRシステムでは、該システムを稼働させるに当たり、ヒータを加熱して、尿素水がNHに加水分解されるのに適した尿素加水分解触媒の触媒床温度をマイクロコントローラに記憶させる。続いて、ディーゼルエンジンから排出されるNOxの排出量とバイバス流路に設置したサブ尿素水噴霧装置から噴霧する尿素水の噴霧量からNOxの最終排出量を最小にする尿素水の噴霧量とNOxの排出量の関係を求め、マイクロコントローラに記憶させておく。これにより、マイクロコントローラはエンジンの稼働状況に対してバイパス流路の尿素水の最適な噴霧量を指示できる。
同様にして、主流路に設置したメイン尿素水噴霧装置の周辺の排気ガス温度が尿素加水分解触媒なしでも尿素水をNHに加水分解するのに適した温度をマイクロコントローラに記憶させる。次に、主流路に設置した尿素水噴霧装置の周辺の排気ガス温度を上記の温度以上に設定し、ヒータのON−OFFと連動させる。
この場合、ヒータのON−OFFと連動させる温度は、ヒータを稼働させてから尿素加水分解触媒を十分加熱するまでのタイムラグを考慮すると、尿素加水分解触媒なしでも尿素水をNHに加水分解するのに適した温度に設定することが好ましい。
但し、実際の条件で稼働させ、尿素水加水分解触媒の触媒床温度でもまったく問題がない場合は、尿素加水分解触媒の触媒床温度をヒータのON−OFFと連動させてもよい。
軽油の噴霧量についても同様で、上記装置で、実際にディーゼルエンジンを稼働させ、DPF(又はCSF)に煤などの微粒子を蓄積させ、圧力センサーからエンジンの稼働状態などから圧損の許容し得る上限値を求め、その値をマイクロコントローラに記憶させておく。次に、噴霧量を変えながら軽油を噴霧して圧損の戻り具体を調べ、煤などの微粒子を完全に燃焼するのに必要な軽油の燃焼量を求め、マイクロコントローラに記憶させておく。これにより、マイクロコントローラはDPF(又はCSF)の圧損の状態を確認しながら軽油の噴霧について、最適なタイミングと最適な噴霧量を指示できる。
II.排気ガス浄化装置:バイパス流路の出口配管の形態
本考案では、排気ガス浄化装置Iにおいて、バイパス流路の出口配管12を改造して、出口が主流路の内部まで伸びている形状を有する排気ガス浄化装置IIとすることができる(図2参照)。
出口配管12は、先端が主流路の内部まで伸びているために、主流路を流れる排気ガスとバイパス流路を流れる排気ガスの混合を促進することができ、具体的には、主流路を流れるNOx(NO+NO)とバイパス流路を流れるNHとを均一混合して、脱硝反応を促進する作用がある。
なお、バイパス流路の出口配管は、排気ガス浄化装置IIに限定されることなく、後述する排気ガス浄化装置III〜VIのいずれにも適用できる。
12.[バイパス流路出口配管]
本考案では、バイパス流路の出口近傍の主流路において、主流路から流れてくる排気ガス中のNOx(NO+NO)とバイパス流路から流れてくるNHが合流して混ざり合う。装置レイアウトの都合で、両者の混合状態が十分でない場合は、バイパス流路の出口配管を主流路の内部まで伸ばすことにより、NOxとNHの混合状態を改善することができる。
出口配管の形状や位置については特に制限がなく、エンジンの容量や稼働方法、主流路およびバイパス流量の口径、燃料の性状などの影響を考慮しながら、主流路とバイパス流路の排気ガスを最適に混合するための条件を見出すことが好ましい。
具体的には、形状は円筒状、楕円筒状、斜円筒状などのいずれでもよく、バイパス流路から主流路の内部への出口配管の突出長さは、3〜10mmとすることができる。
また、バイパス流路の出口配管は、口径を主流路でさらに絞り、バイパス流路の例えば1/1.5〜1/3とすることができ、これにより排気ガスの流速を速くして、主流路の排気ガスとの混合を促進させることができる。その他に、出口を閉じて、その周りの四方八方に穴を開けて(パンチング)、バイパス流路から排出される排気ガスを四方八方に散らせることにより主流路の排気ガスとの混合を促進させてもよい。
III.排気ガス浄化装置:尿素加水分解機能付SCRの使用
本考案では、排気ガス浄化装置Iにおいて、SCR6の代わりに尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有するSCR13を組み合わせて用いる排気ガス浄化装置IIIとすることができる(図3参照)。
尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有するSCR13は、特に尿素水噴霧装置から噴霧された尿素水の内、NHに転換されなかった尿素水が接触することで、再度NHに加水分解する機会が与えられるので、還元剤の増大をもたらし、NOxの還元除去が促進される。
なお、尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有するSCRは、排気ガス浄化装置IIIに限定されることなく、排気ガス浄化装置IIや後述する排気ガス浄化装置IV〜VIにも適用できる。
13.[尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有するSCR]
本考案では、前述の選択還元触媒に尿素加水分解触媒を加えることにより、尿素加水分解材料を含むSCRを調製することができる。その際、尿素加水分解触媒と選択還元触媒の混合比率は、重量比で1:19〜2:3が好ましく、1:9〜3:7がより好ましい。尿素加水分解触媒と選択還元触媒の混合比率が重量比で1:19より小さいと、尿素加水分解機能が十分に発揮できないことがあり、2:3を上回ると、選択還元触媒の脱硝機能が十分に発揮できないことがある。
なお、尿素加水分解材料、SCRの触媒成分などは前記したとおりであるが、尿素加水分解機能を有する材料としては、従来の尿素加水分解材料のほかに、最近では銅をイオン交換で担持したゼオライト触媒の有効性も知られており、本考案でも使用できる。
IV.排気ガス浄化装置ヒータ付属尿素加水分解触媒の使用
本考案では、排気ガス浄化装置Iにおいて、尿素加水分解触媒8としてヒータ付属尿素加水分解触媒14を配置した排気ガス浄化装置IVを用いることができる(図4参照)。
ヒータ付属尿素加水分解触媒14は、前記従来技術のようにヒータで昇温された排気ガスにより間接的に尿素加水分解触媒を加熱するのではなく、直接触媒を加熱することができるので、加熱時間のさらなる短縮と加熱コストの節約が期待できる。
なお、ヒータ付尿素加水分解触媒は排気ガス浄化装置IVに限定されることなく、排気ガス浄化装置II〜IIIや後述する排気ガス浄化装置V〜VIにも有効である。
14.[ヒータ付尿素加水分解触媒]
本考案では、ヒータを内蔵するメタル担体に尿素加水分解触媒を直接塗布した物であり、塗布の方法は通常のメタル担体への塗布と同様な方法で対応できる。
メタル担体としては、前記のとおり、耐熱金属箔製の波板と平板、或いは波板と波板とを組み合わせて多層に巻回して構成したものが挙げられ、この板の一部にヒータが取り付けられている。付属のヒータは、前記と同様の電熱線あるいは電熱シートを用いたものでよく、メタル担体の少なくとも一部に溶接などで連結される。
本考案においては、ディーゼルエンジンの稼働開始に連動してヒータが尿素加水分解触媒の加熱を開始し、尿素加水分解触媒の触媒床温度が尿素水をNHに加水分解するのに適した温度になるまで昇温させる。尿素加水分解触媒の中心部には熱電対が設置されており、触媒床温度が所定の温度に達したのを検知すると、次にバイパス流路にあるサブ尿素水噴霧装置から尿素水が噴霧され、微粒子化した尿素水は尿素加水分解触媒でNHに加水分解される。
V.[排気ガス浄化装置:AMOX触媒の使用
本考案では、排気ガス浄化装置Iにおいて、SCR6の後方にアンモニア酸化触媒(AMOX)15を加えて、排気ガス浄化装置IIIとすることができる(図5参照)。
AMOX15は、特にNOxに対し、化学量論比以上にNHが加水分解されて、未反応のNHがそのまま排出されて、排気口からのNHの排出が規制値を超える状況が想定される場合に配置される。
なお、AMOXは、排気ガス浄化装置Vに限定されることなく、前記の排気ガス浄化装置II〜IVや、後述する排気ガス浄化装置VIにも適用できる。
15.[AMOX:アンモニア酸化触媒]
本考案においては、SCRでNOxやNHが規制値以下まで浄化し切れない場合にAMOXで追加処理される。
AMOXにはNHの酸化機能を主目的とするが、NOxの浄化機能を有する触媒成分も含まれている。NHの酸化機能を有する触媒としては、貴金属成分として、白金、パラジウム、ロジウムなどから選ばれる一種以上の元素をアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化タングステンなどの一種以上からなる無機材料の上に担持したものが好ましい。また、希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の助触媒を加えて耐熱性を向上させた無機材料を使用することも好ましい。貴金属としての白金及びパラジウムは、優れた酸化活性を発揮するが、比表面積が高く、耐熱性も高い上記無機材料に担持することにより、貴金属成分が焼結し難くなり、貴金属の比表面積を高く維持することができ、活性サイトが増え、高い活性を発揮できるようになる。
一方、NOxの浄化機能を有する触媒としては、SCRの項で述べたゼオライト及び酸化物のすべてが使用できる。
これら二種類の触媒は、均一に混合してハニカム構造体に塗布すればよいが、NHの酸化機能を有する触媒を下層に、NOxの浄化機能を有する触媒を上層に塗布してもよい。
VI.[排気ガス浄化装置:SCR/DPF触媒の使用
本考案では、DPF若しくはCSF5を用いた排気ガス浄化装置Iにおいて、DPF若しくはCSF5を省き、SCR6の代わりに、選択還元触媒塗布ディーゼル微粒子捕集フィルター(SCR/DPF)16を用いた排気ガス浄化装置VIとすることができる(図6参照)。
SCR/DPF16を用いることで、触媒コンバータをコンパクトにできるだけでなく、選択還元触媒をよりエンジンに接近させることができるため、選択還元触媒の触媒床温度の昇温を加速することができる。
なお、SCR/DPFの使用は、排気ガス浄化装置VIに限定されることなく、前記排気ガス浄化装置IIや、後述する排気ガス浄化装置IVでもDPF若しくはCSFの設置が不要になるので、レイアウト面やコスト低減に有効である。
16.[SCR/DPF:選択還元触媒塗布ディーゼル微粒子捕集フィルター]
SCR/DPFは、前述したDPFに選択還元触媒を直接塗布した物である。塗布の方法は通常のハニカム担体への塗布と同様であり、塗布量、塗布の位置などは適宜調整できる。
本考案において、SCR/DPFとは、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の微粒子成分(PM)を捕集し、燃焼(酸化)除去すると同時にNOxをNHでNに還元浄化する選択還元触媒塗布ディーゼル微粒子捕集フィルターである。SCRは、前述した材料をそのまま使用することができる。
SCR/DPFは、耐熱性の高いバグフィルターでも良いが、シリカ、アルミナ、炭化珪素、コーディエライトなどの無機酸化物の焼結体を多孔質化して得られたウォールフロータイプのハニカム構造体を触媒化して使用することが望ましい。
さらに、本考案ではSCR/DPFの触媒層を構成するSCRの被覆量が、4〜100g/Lであることが好ましく、5〜50g/Lであることがより好ましい。SCRの被覆量が、4g/L未満であると、SCRの脱硝性能が悪化し、100g/Lを超えると、フィルターセル壁に無数に開いた細孔が狭くなることで圧損が増大するので好ましくない。
このようなSCR/DPFは、本考案ではSCRと同様の「脱硝触媒組成物を被覆した構造体」であるといえる。そのため、無機母材については、SCRの項で詳細に述べた多孔質な無機酸化物がすべて使用できる。また、銅や鉄などの卑金属についてもSCRの項で詳細に述べた物がすべて使用できる。
前記CSFと同様、SCR/DPFにもハニカム構造体(一体構造型担体)が使用される。特に、通孔開口部の一方を開口し、もう一方を閉口した通孔を集積してハニカム状にしたウォールフロー型担体の使用が望ましい。
但し、SCRに使用されるフロースルー型ハニカム構造体とは異なり、フィルターとしての機能を有するウォールフロー型ハニカム構造体が使用されるため、SCR/DPFとして使用される触媒成分はSCRと同じ機能を有しながら、SCRとは異なる機能も求められる。
実際、ウォールフロー型ハニカム構造体にフロースルー型ハニカム構造体と同じ量の触媒成分を塗布すると、通孔の壁が多孔質からできているとはいえ、圧損が異常に増大してしまい、エンジンの出力を著しく低下させる。そのため、ウォールフロー型ハニカム構造体に触媒成分を塗布する場合、フロースルー型ハニカム構造体に比べ、触媒成分の単位体積当たりの使用量は半分以下にすることが好ましい。
DPFとSCRを直列で使用するかSCR/DPFを使用するかは、ディーゼルエンジンの排気量や排気ガス中に含まれる煤などの微粒子成分の量などによって決まるが、これらの触媒を搭載するスペースのない場合にはSCR/DPFの使用が好ましい。
以上、本考案のシステムの概要を述べたが、どの様なシステムを選ぶかについては、製造コスト、触媒を入れる容器となる触媒コンバーターの容量などの点も総合的に考慮して、最適の組み合わせを選ぶことが好ましい。
以下に実施例を示し、本考案の特徴を一層明確にするが、本考案は、これら実施例の態様に限定されるものではない。
なお、本実施例で尿素加水分解触媒に使用される尿素加水分解材料は、そのBET比表面積、細孔容積、及び平均細孔径を下記に示す方法によって測定した。
<BET比表面積>
尿素加水分解材料粉末のBET比表面積は、Micromeritics社製のTristar3000にて吸着分子としてNを使用し、BET法により算出した。
<細孔分布(細孔径、細孔容積)測定>
尿素加水分解材料粉末の細孔径{モード径(直径)}及び細孔容積は、Micromeritcs社製のTristar3000にて吸着分子としてNを使用し、BJH法により算出した。
<触媒のエンジン評価試験>
尿素加水分解触媒又は尿素加水分解材料を含む選択還元触媒を各々コンバーターに格納後、ディーゼルエンジンの排気口にコンバーターを装着して、以下の要領で尿素水噴霧試験を実施し、触媒のエンジン評価を行った。
下記実施例1の尿素加水分解触媒は、650℃、50時間の電気炉による熱処理を実施し、実施例2の尿素加水分解材料を含む選択還元触媒は650℃、100時間の電気炉による熱処理を実施した。
1.尿素水噴霧試験
1−1.NH生成試験
排気量5Lのディーゼルエンジンの回転数を2,000rpmとし、尿素加水分解触媒の中心部に設置した熱電対で触媒床温度を150℃から180℃まで10℃刻みになるようヒータで加熱することで設定し、その手前に設置したサブ尿素水噴霧管から市販の尿素水を10mL/分で噴霧し続け、当該触媒出口の排気ガスをサンプリング管からサンプリングし、排気ガス中のNH濃度を計測した。
1−2.脱硝性能試験
排気量5Lのディーゼルエンジンの回転数を2,000rpmとし、尿素加水分解材料を含む選択還元触媒の中心部に設置した熱電対で触媒床温度を150℃に固定し、排気ガスバイパス流路に設置したサブ尿素水噴霧管から市販の尿素水を10mL/分で噴霧し続け、当該触媒の前後の排気ガスをサンプリング管からサンプリングし、排気ガス中のNOx濃度を計測し、その差異からNOx浄化率を算出した。
[実施例1]
図1の排気ガス浄化装置Iにおいて、ディーゼルエンジン1からの排気ガス主流路10に、酸化触媒(DOC)4とディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)5のコンバーターを配置し、その後方に、メイン尿素水噴霧装置3を設け、この噴霧装置3の後方に選択還元触媒(SCR)6のコンバーターを配置し、さらにメイン尿素水噴霧装置3の前後に排気ガスバイパス流量11を設け、バイパス流路内にサブ尿素水噴霧装置7と尿素加水分解触媒8のコンバーターを設置し、尿素加水分解触媒8の周囲にヒータ9を設置したものを実施例1の排気ガス浄化装置とした。
なお、本反応で、選択還元触媒(SCR)6を外したコンバーターを配置した理由は、尿素加水分解触媒によるNHの生成量を評価するためである。
また、系内の排気温度を上昇させて、DPF5による煤の燃焼除去を促進するため、軽油噴霧装置2は、酸化触媒(DOC)4よりも上流、すなわち、ディーゼルエンジンの筒内に噴霧するようにした。
<尿素加水分解触媒の製造>
本考案の実施例1に使用された尿素加水分解触媒は以下の様にして製造された。
BET比表面積65m/g、平均細孔径502nm、細孔容積1.1cc/gのチタニア系複合酸化物粉末A(TiO:97重量%、SiO:3重量%)500gに、剥離抑制材として、BET比表面積96m/g、平均細孔径189nm、細孔容積1.7cc/gのチタニア系複合酸化物粉末B(TiO:89重量%、SiO:7重量%、Al:4重量%)500gとチタニアゾルを酸化物換算で100gをボールミルに加えた後、純水を足して所定の粒度までミリングしてスラリーαを得た。
続いて、このスラリーαに一体型担体、すなわち、ハニカムフロースルー型コージェライト担体{300cell/inch(465k/m)、5mil(0.125mm)厚み、143.8mm径×76.2mm長さ、1.238L}を浸漬させ、単位体積あたりの担持量が110g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成して実施例1の尿素加水分解触媒を得た。
得られた実施例1の尿素加水分解触媒還元触媒1個を電気炉内で650℃、50時間、空気雰囲気下で焼成した。
次に、この尿素加水分解触媒をコンバーターに詰め、その後、ディーゼルエンジン(排気量:5L)の排気口に接続して、サブ尿素水噴霧装置から尿素水をパルス噴霧しながら、ヒータで尿素加水分解触媒の触媒床温度を150℃から10℃刻みで振って、経時変化に対するNH生成量を計測した。その結果を図6にまとめた。
図6に示す結果から、尿素加水分解触媒の触媒床温度を150℃以上に加熱することにより、尿素水の一部がNHに加水分解され、触媒床温度を180℃まで30℃上げることにより、150℃の時に比べ、NHが約4倍も加水分解されていた。これらの結果は加熱による加水分解触媒の触媒床温度の上昇が尿素水からNHへの加水分解に非常に有効であることを示唆しており、これに選択還元触媒(SCR)6を組み合わることで、本考案のシステムの優れた脱硝性能も期待できる。
[比較例1]
実施例1において、バイパス流路に尿素加水分解触媒8を設置しないものを比較例1の排気ガス浄化装置とした。
尿素加水分解触媒のない比較例1では、サブ尿素水噴霧装置周辺の排気ガス温度を180℃に加熱した条件下で尿素水を噴霧しても、NHの生成はまったく見られなかった。
[実施例2]
図3の排気ガス浄化装置IIIにおいて、ディーゼルエンジン1からの排気ガス主流路10に、酸化触媒(DOC)4とディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)5、その後方に、メイン尿素水噴霧装置3を設け、この噴霧装置3の後方に尿素加水分解材料を含むSCR13のコンバーターを配置し、さらにメイン尿素水噴霧装置3の前で分岐して排気ガスバイパス流路11を設け、バイパス流路内にサブ尿素水噴霧装置7と尿素加水分解触媒8のないコンバーターを設置し、尿素加水分解触媒8が装入される位置周囲にヒータ9を設置したものを実施例2の排気ガス浄化装置とした。
なお、本反応で、尿素加水分解触媒8を外したコンバーターを配置した理由は、尿素加水分解材料を含むSCR13単独での脱硝性能を評価するためである。
また、系内の排気温度を上昇させて、DPF5による煤の燃焼除去を促進するため、軽油噴霧装置2を酸化触媒(DOC)4よりも上流、すなわち、ディーゼルエンジンの筒内に噴霧するようにした。尿素加水分解材料を含むSCR触媒は、上下二層からなるものであり、次の要領で調製した。
<尿素加水分解材料を含む選択還元触媒の製造>
=下層=
Feを1重量%イオン交換したβ型ゼオライト粉末C(シリカ/アルミナ比=26)4.3kg、Feを4重量%イオン交換したMFI型ゼオライト粉末D(シリカ/アルミナ比=26)6.2kg、チタニア系複合酸化物粉末A 2.0kgに、剥離防止剤としてアモルファスシリカゾルを酸化物換算で0.9kgをボールミルに加えた後、純水を足して所定の粒度までミリングし、スラリーβを得た。
続いて、このスラリーβに一体型担体、すなわち、ハニカムフロースルー型コージェライト担体{300cell/inch(465k/m)、5mil(0.125mm)厚み、266.7mm径×152.4mm長さ、8.514L}を浸漬させ、単位体積あたりの担持量が134g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成して尿素加水分解材料を有する選択還元触媒の下層を得た。
=上層=
セリア−ジルコニア系複合酸化物粉末E(ZrO:65重量%、CeO:24重量%、SiO:1重量%、WO:10重量%)1.3kg、Fe−MFI型ゼオライト粉末D 2.3kg、チタニア系複合酸化物粉末A 2.8kgに、アモルファスシリカゲルを酸化物換算で0.7kgをボールミルに加えた後、純水を足して所定の粒度までミリングし、スラリーγを得た。
続いて、このスラリーγに前記の下層塗布済み品を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が71g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成して尿素加水分解材料を有する選択還元触媒{触媒量:205g/L、Fe−ゼオライト:128g、尿素加水分解材料(チタニア系複合酸化物):48g}を得た。
得られた尿素加水分解材料を有する選択還元触媒2個を電気炉内で650℃、100時間、空気雰囲気下で焼成した。
その後、尿素加水分解材料を含むSCR触媒をコンバーターに詰め、ディーゼルエンジン(排気量:5L)の排気口に接続して、サブ尿素水噴霧装置から尿素水をパルス噴霧しながら、尿素加水分解材料を含むSCR触媒の触媒床温度を150℃に固定させてNOx濃度を計測した。その結果を図7にまとめた。
図7に示す結果から、150℃という極低温領域でも、SCR触媒に含まれる尿素加水分解材料により、尿素水の一部がNHに加水分解され、さらに生成したNHが還元剤として排気ガス中のNOxの一部をNに還元除去していることを示唆しており、これにバイパス流路内にサブ尿素水噴霧装置7と尿素加水分解触媒8を組み合わることで、本考案のシステムの優れた脱硝性能も期待できる。
なお、ハニカムフロースルー型コージェライト担体の代わりに、金属であるステンレス製メタル担体を用いると、加熱効率が大幅に向上する。
[比較例2]
実施例2において、尿素加水分解材料を含む選択還元触媒の製造時、下層及び上層用スラリーから尿素加水分解材料であるチタニア系複合酸化物だけを抜いて、選択還元触媒(SCR)6を製造した{触媒量:157g/L、Fe−ゼオライト:128g/L、下層:114g/L、上層:43g/L}。
また、実施例2において、バイパス流路から尿素加水分解触媒も取り去った。これにより、比較例2の排気ガス浄化装置は、図1の排気ガス浄化装置Iにおいて、尿素加水分解触媒8がない構成ということになる。
SCR6の比較例2では、サブ尿素水噴霧装置周辺の排気ガス温度を150℃に固定した条件下で尿素水を噴霧しても、SCR6によるNOxの浄化はまったく見られなかった。
「評価」
実施例1に記載の尿素加水分解触媒を用いた排気ガス浄化装置Iを用い、触媒床温度に対するNHの積算生成量の関係をまとめた図6によれば、尿素加水分解触媒の触媒床温度をヒータで150℃以上に加熱することにより、尿素水の一部がNHに加水分解され、触媒床温度を180℃まで30℃上げることにより、150℃の時に比べ、NHが約4倍も加水分解されている。
一方、比較例1のように尿素加水分解触媒なしで、サブ尿素水噴霧装置周辺の排気ガス温度を180℃に加熱した条件下で尿素水を噴霧しても、NHの生成は見られなかった。
これらの結果は、180℃以下の低温域での尿素水の加水分解には尿素加水分解触媒が不可欠であると共に、ヒータによる加熱により加水分解触媒の触媒床温度を上昇させることにより尿素水からNHへの加水分解反応が非常に促進されることを示唆しており、本考案のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムの有用性が検証された。
次に、実施例2に記載の尿素加水分解材料を有する選択還元触媒を用いた排気ガス浄化装置IIを用い、触媒床温度とNOx浄化性能の関係をまとめた図7から、150℃の極低温領域でも、尿素加水分解材料により、尿素水の一部がNHに加水分解され、さらに生成したNHが還元剤として排気ガス中のNOxの一部をNに還元除去していることが確認できる。
一方、排気ガス浄化装置IIを改造して、尿素加水分解触媒をなくした比較例2では、選択還元触媒があっても、サブ尿素水噴霧装置周辺の排気ガス温度を150℃に加熱した条件下では、図8から明らかなように、NOxはまったく浄化されなかった。
以上の結果をまとめると、180℃以下の低温域では、尿素加水分解機能を有する触媒材料がないと尿素水はNHに加水分解せず、また、尿素加水分解材料を有していたとしても、ヒータなどで尿素水がNHに十分に加水分解する温度まで加熱しないと、尿素加水分解材料は有効に機能しないことが明らかになった。
さらに、選択還元触媒(SCR)に尿素加水分解材料を加えるか、SCR自体が尿素加水分解機能を有していれば、150℃の極低温領域でも、尿素加水分解材料が尿素水の一部をNHに加水分解し、生成したNHが還元剤として排気ガス中のNOxの一部をNに還元除去しうることが示唆された。
ディーゼルエンジンのコールドスタート時に発生するNOxの量自体は少ないが、規制の関係でそのまま放置できる量ではない。しかし、本考案のように、排気ガスの主流路に大規模な尿素加水分解触媒やヒータを設置せず、主流路に小径からなるバイパス流路を設け、そこに小規模の尿素水噴霧器、尿素加水分解触媒、ヒータを設置したバイパス流路を有する尿素SCRシステムであれば、コールドスタート時に発生するNOxの還元除去に必要とされるNHの量が少なくて済むため有用である。このシステムを構築すれば、主流路の尿素水噴霧器周辺の排気ガス温度が尿素水をNHに十分加水分解されるに適する温度に達するまでは、バイパス流路のヒータで加熱することで尿素加水分解触媒の触媒床温度を効率的に上げることができ、コールドスタート時に発生するNOx量と同程度のNHを発生させ、NOxを選択的にNに還元除去し得ることが期待できる。
さらに、選択還元触媒(SCR)の代わりに、尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有する選択還元触媒(SCR)を使用することにより、150℃の極低温領域からNOxを浄化することも期待できる。
本考案のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステムは、例えばディーゼル自動車用途をはじめ、船舶等の移動体用途や、発電機等の定置用途などに使用可能であり、特にディーゼル自動車用に有用である。
1 ディーゼルエンジン
2 軽油噴霧装置
3 メイン尿素噴霧装置
4 酸化触媒(DOC)
5 ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF){又は触媒化燃焼フィルター(CSF)}
6 選択還元触媒(SCR)
7 サブ尿素水噴霧装置
8 尿素加水分解触媒
9 ヒータ
10 排気ガス主流路
11 排気ガスバイパス流路
12 バイパス流路出口配管
13 尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有する選択還元触媒(SCR)
14 ヒータ付尿素加水分解触媒
15 アンモニア酸化触媒(AMOX)
16 選択還元触媒塗布ディーゼル微粒子捕集フィルター(SCR/DPF)

Claims (10)

  1. 排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素の酸化の他、噴霧された軽油を燃焼する酸化触媒(DOC)と、煤を捕集し、蓄積する煤による圧損が所定の値を超える度に軽油を噴霧させて排気温度を上昇させることで煤を燃焼させるディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)又は触媒化燃焼フィルター(CSF)と、尿素水を噴霧する尿素水噴霧装置と、尿素水の加水分解で生じるNHにより窒素酸化物を還元除去する選択還元触媒(SCR)を排気ガスの主流路に配設した尿素SCRシステムにおいて、
    選択還元触媒(SCR)の上流の主流路から小径のバイパス流路を分岐させ、バイパス流路内に第二の尿素水噴霧装置と尿素加水分解触媒を配置し、かつ該尿素加水分解触媒の周囲をヒータで包囲してなり、
    主流路のメイン尿素水噴霧装置の手前で排気ガス温度を計測し、排気ガス温度が尿素をNHに十分に転換する温度に到達していなければ、ヒータにより尿素加水分解触媒を加熱し、触媒床温度を十分に高めてから第二の尿素水噴霧装置を作動させ、噴霧された尿素からNHへの転換を促進して、コールドスタート時に発生する窒素酸化物を効率的に還元除去することを特徴とするバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  2. バイパス流路の口径が、主流路の口径の1/5〜3/4であることを特徴とする請求項1に記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  3. バイパス流路の出口配管が、主流路の内部に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  4. 前記選択還元触媒(SCR)が、尿素加水分解材料を含むか尿素加水分解機能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  5. 前記尿素加水分解触媒が、メタル担体に尿素加水分解材料を塗布した易加熱性尿素加水分解触媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  6. 前記選択還元触媒(SCR)の後に、さらにアンモニア酸化触媒(AMOX)を配置することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  7. 前記排気ガスの主流路に、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)を設けずに、かつ選択還元触媒(SCR)の代わりに、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)の表面に選択還元触媒(SCR)を塗布した選択還元触媒塗布ディーゼル微粒子捕集フィルター(SCR/DPF)を配設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  8. 計測・制御手段には、制御に必要な尿素の噴霧量を、予め記憶させておくことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  9. 計測・制御手段には、制御に必要な軽油噴霧手段からの軽油の噴霧量を、予め記憶させておくことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
  10. 煤を燃焼させるための軽油が、ディーゼルエンジンの筒内又は排気マニホールド内に噴霧されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のバイパス流路を用いたコールドスタート対応尿素SCRシステム。
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