JP3199364U - 尺八セット - Google Patents

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Abstract

【課題】同じ唄口(口部)で、一貫して、尺八の唄口への息の吹きかけ方、即ち尺八の音の発し方の練習、さらに尺八の演奏を可能にする尺八セットを提供する。【解決手段】尺八の唄口2cを備える口部2と、口部2に着脱可能に接続する練習用管とからなる。練習用管として、息の吹きかけ方を練習する練習用短管3と、練習用短管3より長く、強い息の吹きかけ方を練習する練習用長管5を備える。さらに、尺八の音階に対応する穴6a、6b、6c、6d、6eが穿設された音階管6を備え、音階管6を口部2に着脱可能に接続する。口部2と、各管との接続が、貫通孔4aを穿設したジョイント4を介して連結されるものであって、貫通孔4aに口部2の下端2h及び各管の上端3b、5a、6fを嵌入させる。【選択図】図1

Description

本考案は、同じ唄口(口部)で、一貫して、尺八の唄口への息の吹きかけ方、即ち尺八の音の発し方の練習、さらに尺八の演奏を可能にする尺八セットに関する。
尺八は、唄口への息の吹きかけ方、即ち唄口の切欠きに吹きかける息の角度、方向、量を調節しながら、尺八側面に穿設された5つの穴(指穴)の開閉を指で操作し、12音階の音を奏でる。尺八の音色は癒しの音である。
尺八の音色は、狩猟民族のような西洋の飛んだり跳ねたりのリズム文化ではなく、農作業時の足をすりながら移動する農耕民族のすり足文化の音で、音から音へと間合いの拍子で日本古来の幽玄なる音色の世界を奏でる。
また、尺八の演奏は、息を長く吐き続けることで、座禅を組んで瞑想した時のようになり、脳を休ませ、とらえどころのない不安のようなストレスから開放され自律神経が安定することは周知の通りで、健康維持に役立つ。そのようなことから、幽玄なる音色を奏でる尺八の演奏に憧れる人々は、沢山いる。
健康を考えると、命の基の呼吸がまず先に頭に浮かび、腹式呼吸をして、代謝を高め、癒しの音色で、心の健康を考えようと、尺八吹奏に関心を抱く人々は多く、時代背景的にも、健康は、国や他人任せでは守れなくなってきているのも事実である。
しかし、初心者が尺八を手にしたとき、全く音を奏でることができず、無理だと諦める者が多いことが知られており、残念なことであった。
尺八は二千年以上の歴史があり、古来より七つの節を持った真竹で製作されている。しかし、この竹尺八にも一長一短がある。近年化学技術の進歩発展により、プラスチック成型、木製の尺八模倣品が作られているが、それぞれ一長一短がある。
(竹製尺八)
自然素材である竹は、曲がり具合や、内径、肉質の厚み、繊維の密度など一本一本違うため、これを正しい音律で、幽玄な音色を醸成できる楽器(尺八)に仕立て上げるのには、長い経験と技術、気力が必要となる。
竹製尺八は、七つの節をくりぬき、息の力だけで、真竹管内の空気分子を振動させ、しかも重量感のある音色を作れる管内の仕立は、内径の大きさ、息のスムーズな流れ、水分を多く含んだ息による耐久性などが考慮されている。真竹の節を抜いて凹凸荒れた管内を、石膏などの硬質なもので塗り固め、盛り上げたり削ったり何度も何度も繰り返しながら研ぎ出し、内面を整えて調律する。表面には漆などを塗って、水分に対し耐久性を持たせている。
この様な工程を経ることで、真竹管内の内表面は硬質に、それを包む中間部は、竹繊維が通った、空気分子を多く含むコルク状、またその外側の尺八表面は硬い外皮という構造になり、共鳴しやすいサンドイッチ構造の円筒となっている。
しかしながらこの構造が竹製尺八の欠点にもなる。内壁、中間部のコルク状、表面の外皮、この三層構造で、中間部のコルク状は空気分子を多く含むため、環境温度の上下による湿度変化で、常に膨張したり、収縮したりする。この構造材質の収縮率の違いで、急激な温度変化に対応できなくなり、尺八が裂けてしまう事があり、尺八の管理には気を使わねばならなかった。
他方、高く軽いシャープな音色を出す、真竹と比べると細く比重の軽い、篠竹を使う篠笛などがある。一方、尺八は重厚な音色を醸し出すため、比重の重い真竹の根の部分、石膏などの硬質部分の割合を多くする。
この事が、力強い息を丹田から押し出す技術のない初心者には、尺八管を思うように振動させることができなく、扱いにくいものにしている。
(プラスチック及び木製尺八)
プラスチック尺八及び木製尺八は、律が安定した均一な仕上がり、工業製品として大量に生産可能で、ランニングコストが下がり、人々に喜ばれる。しかし、竹製を模して型を作っての製作なので、まがい物の感がぬぐえなく、プラスチック成形品も、堅木で作る木製品も、同様に肉厚で、比重が重くなり、竹製と同様初心者には扱いにくいものが殆どである。
そして、竹製の尺八のように、筒が前述の三層構造になっていなく均一であるので、期待した広がりのある、幽玄な音色を出すことはできない。
(塩化ビニル管尺八)
他方、尺八演奏で一番大事なのは唇の形である。次に息を唄口の切り込みに吹き当てる角度、方向とその量である。音階を奏でる指使いは音が発せられるようになってから十分学ぶことができるし、継続して練習することで上達もする。
そこで、考案者は、はじめての尺八の音出しを、スムーズに行えるように、音出しだけに専念できる、塩化ビニル製の練習用尺八(特許文献1)を開発した。
また、古来よりの難解な尺八楽譜を、解りやすい数字譜に置き換え、ハードルを下げ、手軽に楽しく健康増進のために活用できる、尺八用音階早見表(特許文献2)、尺八用楽譜(特許文献3)を開発し、尺八吹奏の道を容易にした。
また、練習用尺八(特許文献1)に合わせて、尺八のように音階を奏でることができる、すなわち音階に対応した穴が穿設された塩化ビニル製尺八も開発した。
塩化ビニルの材料はどこでも簡単に入手でき、また特殊な機械設備がなくても、わずかな工具で、手軽に、律の安定した尺八を超安価で作ることができる。しかも管は硬質で肉厚は3mm程度なので、初心者の出す弱い息でも音出しが可能になる。
しかしながら、長所は欠点にもなり、吹き手が経験を積んで、呼吸力が備わってくると、管厚が3mm程度の普通塩化ビニル管では、その振動を受け止められなくなり、音がひっくり返ってしまい(音割れ)、奏でるような奏法しかできない。ソプラノリコーダの様な吹き方となる。
そこで、考案者は、塩化ビニル管製の尺八の難点を克服すべき、弱い息から、お腹の底からの強い息にまで対応でき、竹尺八にも勝るとも劣らない、重量感があって広がりの感じられる、癒しの音色を出せ、しかも超安価にできる特許文献4の共鳴管付尺八を開発した。
特許文献4の共鳴管付尺八は、尺八と、前記尺八の側面に接続され前記尺八の音を共鳴させるとともに増幅させる内部空洞の筒である共鳴管と、からなることを特徴とする。その結果、主管に共鳴管を密着させ、主管が醸し出す、幽玄な癒しの音色の振動音を共鳴管に共振させ、その音色に幅と重厚さを醸成することができるようになった。息の弱いわずかな主管の振動でも共鳴する事で大きな音が出る。強い息に対しても、振動する体積(重量)が増していることから、音割れすることなく対応できるのである。塩化ビニル管も重量のある特殊な管(ライナー入り)を採用すると、さらに効果的であった。
そこで、問題になるのが、練習用の口部(唄口)と、実際の演奏用の口部(唄口)が異なることで、せっかく習得した息の吹きかけ方では演奏できないことがあり、練習用尺八の練習が無駄になり、再度演奏用尺八でその尺八にあった息の吹きかけ方を習得することが必要になることがあった。
実用新案登録第3175916号公報(練習用尺八) 実用新案登録第3185053号公報(尺八用音階早見表) 実用新案登録第3185768号公報(尺八用楽譜) 実用新案登録第3185768号公報(共鳴管付尺八) 実用新案登録第3197607号公報(マイク付尺八)
そこで、本考案は、同じ唄口(口部)で、一貫して、尺八の唄口への息の吹きかけ方、即ち尺八の音の発し方の練習、さらに尺八の演奏を可能にする尺八セットを提供することを目的とする。
本考案は、上記の課題を解決するために、
(1)
尺八の唄口を備える口部と、前記口部に着脱可能に接続する練習用管と、からなることを特徴とする尺八セット。なお、接続とは、前記口部と練習用管が、直接接続する他、当接状態を維持することも含む概念である。直接接続する手法として、螺合などが例示できる。当接状態を維持する手段として、下記ジョイントなどの他部品を介して前記口部と管が当接する、又は内径を同一にして連結することが例示できる。
(2)
前記練習用管として、息の吹きかけ方を練習する練習用短管と、前記練習用短管より長く、強い息の吹きかけ方を練習する練習用長管を備えることを特徴とする(1)に記載の尺八セット。
(3)
さらに、尺八の音階に対応する穴が穿設された音階管を備え、前記音階管を前記口部に着脱可能に接続することを特徴とする(1)又は(2)に記載の尺八セット。
(4)
前記口部と、前記各管との接続が、貫通孔を穿設したジョイントを介して連結されるものであって、
前記貫通孔に前記口部の下端部及び前記各管の上端部を嵌入させることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の尺八セット。
とした。
本考案は、同一の唄口(口部)で、息の吹きかけ方の基礎、より長く強い吹きかけ方の習得することができ、さらに実際の演奏においても使用できる。その結果、唄口の形状変更による息の吹きかけ方の変更が必要なく、一貫して同じ息の吹きかけ方で音階演奏まで負荷、困難、混乱なく可能になる。また、管が破損しても、唄口まで新調する必要がなくなる。
本考案の一例である尺八セットの構成部品の説明図であり、(A)は口部正面図、(B)は練習用短管正面図、(C)は練習用長管正面図、(D)は音階管正面図、(E)は(B)のA−A‘断面図である。 本考案である尺八セットの構成で組み合わせられる練習用短管ユニットの正面図である。 本考案である尺八セットの構成で組み合わせられる練習用短管ユニットの使用図である。 本考案である尺八セットの構成で組み合わせられる練習用長管ユニットの正面図である。 本考案である尺八セットの練習用長管を用いた体操の説明図である。 本考案である尺八セットの構成で組み合わせられる、尺八演奏可能な尺八ユニットの正面図である。
以下、添付の図面を参照し、本考案の実施の形態について詳細に説明する。なお、本考案は、下記の実施例に限定されるものではない。
図1に示すように、本考案である尺八セット1は、口部2と、練習用短管3と、ジョイント4と、練習用長管5と、音階管6とからなる。なお、練習用短管3と練習用長管5をそれぞれ、或いはまとめて練習用管ともいう。
口部2は、図1(A)に示すように、内筒2aと内筒2aを一部残して内筒2aを内部に嵌めた外筒2bとからなり、内筒2aと外筒2bとの境は段差2gとなる。内筒2aは他の各管と同一直径で、内部空洞径も他の各各と同一とするとよい。内筒2aの下端2hは各管の上端に当接する。
口部2の上部は、一側面は斜めに削られた傾斜部2e、2fとし、傾斜部2eの端部の中央をさらに削り込まれ、正面半楕円形状の切欠き2dを備えて唄口2cとし、唄口2c反一側面には顎に当てる当接部2iとした。当接部2iの角は、緩やかに丸みを帯びた状態に加工され、顎を当てた際に痛みを感じることがない。
内筒2aと外筒2bは、塩化ビニル製のライナー入り硬質塩ビ管とすると、比重が重く、息を強く吹きかけても音割れすることなく、良く響く音が発せられ、さらに温度変化の影響を受けにくく、強度があり落としても破損しにくい好ましい。他の管も同様に、硬質塩ビ管とするとよい。また、塩化ビニル以外のプラスチック製であってもよい。
内筒2a及び外筒2bの肉厚の口部2とすることで、なお一層、音の響き、強度が増す。唇から吹き出され、唄口2cで口部2の内外に二分された息が最初に当たる部分を肉厚にすることで管全体が振動しやすい。尺八全体を均一に肉厚にすると、肺活量、技量を伴わない初心者には、尺八を振動させ音、さらに大音量を発生させることが難しい。尺八の口部2を肉厚にし、接続する管を口部2より肉薄にすると良く響く尺八となる。
具体的には、内筒2a;長さ約55mm、厚み3mm、外径26mm、内径20mmのライナー入り硬質塩ビ管とした。外筒2b;長さ約70mm、厚み5mm、外径35mm、内径26mmライナー入り硬質塩ビ管とした。内筒2aと外筒2bは樹脂用接着剤で接着した。接着することで、一体の口部2となり、音割れすることなく澄んだ音を響かせることができる。
練習用短管3は、図1(B)、(E)に示すように、口部2にジョイント4を介して(ジョイント4内部に嵌入し、口部2の下端2hに上端3bが当接して)着脱可能で、内部に空洞3aが貫通した、指穴の穿設されていない管である。練習用短管3は、図3を参照して後述するように、下端3cを手のひらで開閉して唄口2cへの息の吹きかけ方を練習する管である。なお、以下いずれの管も内部空洞の貫通孔を備える。
具体的には、練習用短管3は、長さ210mm、厚み3mm、外径26mm、内径20mmのライナー入り硬質塩ビ管とした。練習用短管3は、指穴がなく、口部2とジョイントを介して連結し、息を吹きかけるだけで、ハ長調音階の「ド」の音階の音が発する。初心者は、音出しだけに専念することができるようになる。それにより、吹きかける息の強弱、角度、方向、量、特に口をすぼめて長い息を尺八に通し続ける所作を習得することができる。
ジョイント4は、図1(B)−(E)に示すように、内部に貫通孔4aが穿設され管で、口部2と各管を内部で連結する。図1に示すように、各管全てに備えることで、口部2の着脱が容易になる。全ての管に備える場合には接着してもよい。ジョイント4を1つとする場合には、口部2に備え接着してもよい。なお、接着は必須ではない。
また、ジョイント4は、樹脂成形、或いは木材を加工してできる。木材を用いる場合には硬質なものがよく、例えば、ブナ材、カシ材などが例示できる。ジョイント4は、外周を六角形等の角形にすることで、各管の回転、転落を防止することができ望ましい。さらに、ジョイント4は、口部2付近に配置することで、口部2の重量が増し、口部2の肉厚化と同様に大音量化に資する。
練習用長管5は、図1(C)に示すように、口部2にジョイント4を介して(ジョイント4内部に嵌入し、口部2の下端2hに上端5aが当接して)着脱可能で、内部に空洞が貫通した、指穴の穿設されていない管である。練習用長管5は、図4を参照して後述するように、図3の練習用短管3同様に下端3cを手のひらで開閉して唄口2cへの息の吹きかけ方を練習する管である。練習用長管5は、練習用短管3より長く、強い息の吹き方を練習することができる。
具体的には、練習用長管5は、長さ520mm、厚み3mm、外径26mm、内径20mmのライナー入り硬質塩ビ管とした。練習用短管3は、指穴がなく、口部2とジョイントを介して連結し、息を吹きかけるだけで、練習用短管3より1オクターブ低いハ長調音階の「ド」の音階の音が発する。指穴がなくとも、管長が長くなれば息を吐く力を高める必要がある。初心者は、音出しだけに専念して、尺八を強く振動させ、大音量の音を奏でることができるような息の吹きかけ方を習得することができるようになる。
練習用短管3での息の吹きかけ方を習得した後、練習用長管5を用いてより高度な息の吹きかけ方必要とする音階管6で音階を奏でる息の吹きかけ方を習得する。
さらに、練習用短管3と練習用長管5が、1オクターブの差になる長さとすることで、複数人によるハーモニー演奏も可能になる。また、顎の出し引きで和音を奏でることができることから、その和音の違いにより、顎の引き出し加減による音階調節技術も習得することができるようになる。また、各音階の長さの管を用意すれば、ハンドベルのように、複数人で演奏することもできる。
音階管6は、図1(D)に示すように、正面には音階を決める穴6a、6b、6c、6dが4つ、背面には穴6eが1つ穿設される両端が開口した樹脂製、例えば、塩化ビニル製の管で、口部2にジョイント4を介して(ジョイント4内部に嵌入し、口部2の下端2hに上端6fが当接して)着脱可能で、内部に空洞が貫通する。
音階管6は、さらには、温度等による伸縮に耐性の強い、ライナーでライニングされた水道管(ライニング管)が好ましい。ここでは音階管6の内部に埋没するライナーを例示したが、音階管6の内部に硬質樹脂をコーティングした塩化ビニルライニング管であってもよい。ライニング管は、通常の塩化ビニルより重さ、体積が増し、強い息の吹きかけ、振動をも受け止め、音割れを防止することができる。音階管6の長さは自由であり、短いと高音で長いと低音になる。特に、音階管6が短い場合に、音割れが頻発する。また、特許文献4のように共鳴管を備えてもよい。
口部2、各管3,5,6、ジョイント4の表面に、米油、亜麻仁油、柿渋、蜂蝋などの自然素材の保護剤を塗布するとよい。これにより、ジョイント4と各管の連結の接着補助と、光沢を付与することができる。さらに、これら化粧品にも使用できる自然素材を塗布することで、汗の撥水、汚れ付着防止、細菌の増殖を防ぎ、各部材を衛生的に管理することもできる。
次に、図2を参照して、尺八セット1の構成で組み合わせられる練習用短管ユニット1aについて説明する。練習用短管ユニット1aは、口部2の下部をジョイント4の上部側から貫通孔4aに嵌入させ、他方ジョイント4の下部側から練習用短管3の上部を貫通孔4aに嵌入させ、ジョイント4内で、口部2の下端2hと練習用短管3の上端3bとを当接させる。下端2hと上端3bに隙間があったり、口部2と練習用短管3の内周面に段差があったりすると、吹きかけられた息の流れが乱れ綺麗な澄んだ尺八音を奏でることができない。したがって、口部2とジョイント4を介して連結する管(練習用短管3、練習用長管5、特に音階管6)は同一の内径で隙間なく当接させる。ジョイント4内に螺合等させてもよい。なお、練習用短管ユニット1aも尺八セットである。
次に、図3を参照して、練習用短管ユニット1aの使用方法について説明する。まず図3の(A)に示すように、左右の何れかの手で練習用短管3を握り、練習用短管3を握っていない他方の手で練習用短管3の下端3cの開口を塞ぐ。図3では左手8で練習用短管3を握り、右手9で練習用短管3の下端3cの開口を塞いだが、反対であっても構わない。
そして、顎7に唄口2cの当接部2iを当てて練習用短管ユニット1aを前方に押し出し、上唇を唄口の切欠き2d上に乗せて唄口2cの中心が上唇と下唇の真ん中に来るようにし、軽く息を吐きながら練習用短管ユニット1aの下方を自分の方に引き寄せる。
この時、唇の形状は口笛を吹くような形にせず、紙一枚を銜えたような形状にし、唇の力を抜いて、練習用短管ユニット1aの下端3cを前後に移動し、音が鳴る息の流れ、良い角度を探しながら吹く。
より具体的には、口角を左右に約10mmに狭めて口をすぼませた形状にし、腹部を意識して長い息をはき続ける。感覚としては、小鼻を膨らませ、鼻から息を出し続ける気持ちで行う。一般的に息を吹くという感覚は、頬や首を使い、小刻みな呼吸で頬を膨らませ、喉から吹き付ける方法です。この吹き方では、長く息を出し続けることはできなく、尺八の音出しは上手くいかない。
これは尺八吹奏の息の吹きかけ方法の基本であるとともに、健康増進に資する「口すぼめ呼吸法」の習得に繋がる。なお、吸気は口から行わず、必ず鼻から吸引する。ゆっくりとした長い息を吐き続けることにより、体に滞っている二酸化炭素が呼気により排出され、必然的に酸素が取り込まれ、満たされる。細胞レベルでも活性かされ、また自立神経の安定化が図られ、健康な身体の維持に寄与する。口すぼめ呼吸法は、健康増進に繋がることから、尺八の音色の発生だけにとどまらず、呼吸法の改善にもなる。そのため練習用管を接続した口部2からなる尺八セットは、「呼吸笛」として今後認知されるであろう。
したがって、一般的な呼吸法では健康増進に尺八を活用することはできない。尺八では、尺八の音を出すことで、普段できない「口すぼめ呼吸法」を身に付けることで、気道を広げ、肺の中のよどんだ空気を出して一掃し、健康増進を図ることができる。
管長が長くなれば息を吐く力を高める必要があり、腹部の筋肉を使用して、強い息で管を振動させないと音がでなくる。したがって、練習用長管5で音を出すため、全身を使用、特に内蔵の周辺の筋肉を使用するため、血管、リンパ管、内臓諸器官へのマッサージ効果で、代謝が向上し、健康増進に大いに寄与する。
以上の手順で音が出るようになったら、図7の(B)に示すように、塞いでいた練習用短管3の開口を開放したり、塞いだりして、音を確かめながら、吹き出す息の強さを調節してゆく。
上記のような手順で尺八の練習を行い、練習用短管3の開口を塞がなくても音が出るようになれば、実際の尺八を使用しても基本的な音を発することが出来るようになっているので、実際の尺八を使用して指使いや、より高度な吹き方の練習へ移行することができる。
より長く、強い息使いを習得する必要があるときは、練習用短管3をジョイント4から外し、練習用長管5をジョイント4に嵌着させ、口部2と練習用長管5を連結し、さらに長く、強い息使いを練習する。
次に、図4を参照して、尺八セット1の構成で組み合わせられる練習用長管ユニット1bについて説明する。練習用長管ユニット1bは、口部2の下部をジョイント4の上部側から貫通孔4aに嵌入させ、他方ジョイント4の下部側から練習用長管5の上部を貫通孔4aに嵌入させ、ジョイント4内で、口部2の下端2hと練習用長管5の上端5aとを当接させる。下端2hと上端5aに隙間があったり、口部2と練習用長管5の内周面に段差があったりすると、吹きかけられた息の流れが乱れ綺麗な澄んだ尺八音を奏でることができない。
練習用長管ユニット1b練習用短管ユニット1a同様に使用する。下端5bは手のひらで押さえてもよいが、最終的には、手のひらで押さえず音がなるよう、長く強い息使いを習得する。練習用長管ユニット1bも尺八セットである。
次に、図5を参照して、練習用長管5を用いた健康体操について説明する。尺八の吹奏において、呼吸を意識することが、一層健康増進に役に立つ。通常の呼吸は、意識を必要としない自律的な胸主導の呼吸であるが、ここで意識するのは、複式呼吸である。自律的呼吸は、肺の機能により呼吸活動をする。しかし、肺そのものには筋肉はなく、実際の呼吸では肺周辺の筋肉が働いてはじめて呼吸ができる。
したがって、呼吸を助ける筋力の維持、強化は尺八吹奏において、重要な課題である。それら筋力の維持、強化には、ストレッチ、その他運動が必要となる。そこで、尺八吹奏の練習をするため、練習用長管5を用いた棒体操で、尺八吹奏のための筋力の維持、強化を図るとよい。ジョイント4を介して口部2を備えた練習用長管ユニット1b、演奏用の尺八ユニット1cも同様に体操に用いることができる。従来の真竹の尺八は、2本分割され、また繊細で高価なため、とても真竹尺八を体操に用いることはできない。
尺八を用いた体操のメニューは、種々考えられる。例えば、図5(A)に示すように、肩幅程度に両腕を開き、下に置いた尺八を上から強く握り、上方に持ち上げ、背中側の肩の位置まで降ろし、首筋にあて、その状態で頭を前後に振り首筋を伸ばす。さらに、体を左右に振り、背中及び腰のストレッチ動作が例示できる(首筋正し)。また、図5(B)に示す、背筋正しなどもよい。
また、肛門、丹田に力を入れ、練習用長管を握り、腕を地面に対して水平に位置し、スクワットをすることなども例示できる。このときの呼吸は、鼻から空気を吸い込み、できるだけ長く吐き続ける。膝の角度は、太股の筋力で体を支える一番つらい角度とするとよい。
身近にある練習用長管5、音階管6で、棒体操で筋力強化(体幹強化)を図ることで、体を整え、尺八の幽玄な音色を奏でるとともにストレスを解消し、心身共に元気にし、維持する。具体的には、筋肉量の増加、体幹が強化され、腰痛予防、腸の鍛錬、下半身の衰えによる失禁防止などに資する。
次に、図6を参照して、尺八セット1の構成で組み合わせられる尺八演奏可能な尺八ユニット1cについて説明する。尺八ユニット1cは、口部2の下部をジョイント4の上部側から貫通孔4aに嵌入させ、他方ジョイント4の下部側から音階管6の上部を貫通孔4aに嵌入させ、ジョイント4内で、口部2の下端2hと音階管6の上端6fとを当接させる。下端2hと上端6fに隙間があったり、口部2と音階管6の内周面に段差があったりすると、吹きかけられた息の流れが乱れ綺麗な澄んだ尺八音を奏でることができない。特に、口部2と音階管6を連結するときは注意を要する。なお、尺八ユニット1cも尺八セットである。
以上のように、本願発明によって、初心者が短時間で尺八の演奏ができるようになり、尺八人口の増加が見込まれると同時に、健康の増進も図れる呼吸法を会得することができる。他方、尺八の演奏を目指さなくとも(尺八セットに音階管を含めなくとも)、健康増進を目的に、本願尺八セットを使用することもできる。
1 尺八セット
1a 練習用短管ユニット
1b 練習用長管ユニット
1c 尺八ユニット
2 口部
2a 内筒
2b 外筒
2c 唄口
2d 切欠き
2e 傾斜部
2f 傾斜部
2g 段差
2h 下端
2i 当接部
3 練習用短管
3a 空洞
3b 上端
3c 下端
4 ジョイント
4a 貫通孔
5 練習用長管
5a 上端
5b 下端
6 音階管
6a 穴
6b 穴
6c 穴
6d 穴
6e 穴
6f 上端
7 顎
8 左手
9 右手

Claims (4)

  1. 尺八の唄口を備える口部と、前記口部に着脱可能に接続する練習用管と、からなることを特徴とする尺八セット。
  2. 前記練習用管として、息の吹きかけ方を練習する練習用短管と、前記練習用短管より長く、強い息の吹きかけ方を練習する練習用長管を備えることを特徴とする請求項1に記載の尺八セット。
  3. さらに、尺八の音階に対応する穴が穿設された音階管を備え、前記音階管を前記口部に着脱可能に接続することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の尺八セット。
  4. 前記口部と、前記各管との接続が、貫通孔を穿設したジョイントを介して連結されるものであって、
    前記貫通孔に前記口部の下端部及び前記各管の上端部を嵌入させることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の尺八セット。
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