JP3197382U - 水上浮体構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】一定の方向へ流れる水流の一部を偏向させる機能を有する水上浮体構造物を提供する。【解決手段】水上浮体構造物100は、水上に浮かぶ浮体1と、浮体の下側に設けられた導水管2と、浮体の基準方向に対して導水管の軸方向を変更する軸方向変更手段4と、浮体を水上の所定の位置に係留する係留手段と、を備えることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本考案は、水上に配置され、移動可能な水上浮体構造物に関し、特に、水流を制御する機能、水流のエネルギーにより発電する機能、又は消波機能を備えた水上浮体構造物に関する。
ここ数十年間、全国各地の海岸線において、海岸浸食が進行し、膨大な国土が失われている。海岸浸食により、砂礫浜が後退すると、自然環境や景観などが損なわれるばかりでなく、高波や津波の力を減衰する機能を失うため、防災上の影響が非常に大きい。そこで、海岸浸食を抑制するため、海岸線周辺に消波ブロック、離岸堤、潜堤、突堤などの構造物を設置する対策が講じられている。
例えば、特許文献1には、沖側より打ち寄せる波を、斜板の上面に沿ってせり上がらせると同時に突起物に順次衝突させて崩し、波のエネルギーを低減させる有脚式離岸堤が記載されている。
また、特許文献2には、海浜部の砂の移動を制御することができる海底構造物が記載されている。特許文献2に記載の海底構造物は、長尺の板体を折り返して曲折板体を形成し、曲折面が汀線にほぼ並行して対向するように、曲折板体を海底に固定したものであり、海浜部の砂が沖に流出するのを抑制し、岸に向かう砂の流れを遮断することがない、とされている。
一方、近年では、自然エネルギーの一つとして、海流が有するエネルギーが注目されている。海流は、太陽光、風力などの他の自然エネルギーとは異なり、天候、季節又は昼夜の時間帯などに影響されにくく、流速が比較的安定している。したがって、海流エネルギーを利用した海流発電は、発電量がある程度一定しており、電力を安定的に供給できるという利点を有し、大きな期待を集めている。
海流発電装置は、利用目的及び設置場所に応じて様々な態様が提案されており、大別すると、アンカー及び係留索を利用して浮体を水上又は水中に浮遊させる方式と、海底に固定する方式とがある。水上に浮遊させる方式の海流発電装置は、水中に浮遊する方式又は海底に固定する方式の装置に比べて、設置コストが比較的低く、保守整備も容易である。
例えば、特許文献3には、水上に浮遊する方式を採用する海流発電装置が提案されており、海洋水に浮き、互いに接合される複数のユニット(メガフロート)とユニットに設置される複数の水車(発電装置)を備える海流発電装置が記載されている。
また、海岸浸食の問題にも関連するが、昨今の東北地方太平洋沖地震では、大規模な津波が発生し、東北地方太平洋側沿岸部に大きな被害を与えたところである。そして、近い将来発生が予想されている東海地震、東南海地震などでも、巨大な津波が発生すると予測されている。震源地に面する沿岸地域では、津波の被害を軽減するための早急な対策が望まれている。対策の一つとして、消波機能を有する構造物を沿岸部に渡って広範囲に設置し、陸地に到達する前に津波のエネルギーを減衰することが考えられる。このような消波機能を有する構造物としては、特許文献1に記載されているような固定式の構造物のほかに、浮体を利用した浮体式の消波装置も提案されている。
例えば、特許文献4には、水面上に浮揚する単一平板状の浮体の下方に、上下に貫通する孔が多数形成された制御板を入射波の方向に傾斜させて配置し、このように構成された単体の浮消波装置を、所定数量つなぎ合せて係留することが開示されている。
特開2002−138437号公報 特開平9−125336号公報 特開2004−68638号公報 特開2013−87584号公報
特許文献1には、上述したとおり、海岸浸食の対策の一つとして、海岸線付近に設置する構造物が提案されている。かかる構造物によれば、打ち寄せる波を砕波させてエネルギーを逸散させ、陸側を静穏域とすることできるので、砂礫の流出をある程度抑制することができる。
しかしながら、海岸侵食は、そもそも、砂礫収支の均衡が崩れ、砂礫の流失量が供給量を超過することによって生じる。このため、特許文献1に記載のように、消波機能を有する構造物を海底に固定すれば、砂礫の流失を一時的に緩やかにすることができるが、砂礫が供給されなければ、汀線は徐々に後退していく。したがって、海岸浸食を止めるには、砂礫の流出を低減させるばかりでなく、砂礫の供給を確保する必要がある。砂礫を供給する方法の一つとして、砂礫を人工的に補う養浜があるが、波によって運び去られる砂礫は膨大であるので、広い範囲の海岸を保護するのは容易でない。
一般に、砂浜の形成過程には、漂砂の現象が関係している。漂砂は、砂の移動方向によって岸沖漂砂と沿岸漂砂の二種類に分類される。岸沖漂砂は、汀線に対して直角に入射する波や底面に生じる往復流などによって、汀線の直角方向に砂移動が生じるものである。一方、沿岸漂砂は、海岸線に沿う沿岸流などによって輸送され、砂が汀線と平行な下手方向に移動するものである。また、沿岸漂砂として、汀線に対して斜めの方向から入射する波が存在すると、その寄せ波と返し波によって砂はジグザグに運ばれ、汀線と平行方向に砂移動が生じることもある。
特許文献1に記載の構造物のほか、海岸付近に設置される消波ブロック、堤などは、かかる岸沖漂砂及び沿岸漂砂の連続性を遮断するおそれがあり、かえって海岸環境の悪化を招くことがある。さらに、固定式の構造物は、岸沖漂砂及び沿岸漂砂の連続性を遮断し、海岸保全に悪影響を及ぼす、と後に判明したとしても容易に撤去できない。
また、特許文献1に記載の構造物のほか、海岸付近に設置される消波ブロック、堤などは、設置コストが大きいうえに、波の衝突が繰り返されることにより、数年のうちに変形し、沈下することもある。
次いで、特許文献2に記載の海底構造物によれば、沖に向かう水流に沿って砂が移動することを抑制し、岸に向かう水流に沿って砂が移動することを遮断しないので、岸沖漂砂を防止又は抑制することができるとされている。しかしながら、特許文献2に記載の海底構造物は、海底に杭を打ち込んで固定されるものであり、特許文献1に記載の構造物と同様に容易に移動又は撤去することができない。また、構造物の後側(沖合側)で洗掘が進めば、構造物の前後で段差が生じ、やがては岸沖漂砂を遮断してしまう虞がある。
さらに、特許文献2に記載の海底構造物は、沿岸漂砂を妨げることは少ないと考えられるが、汀線に平行に移動する沿岸漂砂が支配的な海岸において、沿岸漂砂を促進する効果を有するものではない。沿岸漂砂は、上手側から下手側への一方向の移動であるので、特許文献2に記載の海底構造物を設置したとしても、上手側からの砂礫の供給が途絶えれば、上手側から徐々に汀線の後退が生じる虞がある。
つまり、海岸浸食を抑止する手段としては、打ち寄せる波のエネルギーを低減するとともに、漂砂の連続性を遮断することなく、砂礫の供給を適切に維持することが重要である。そして、海岸浸食を抑止する手段は、必要に応じて移動又は撤去可能であることが好ましいのである。
一方、特許文献3に記載の海流発電装置によれば、海底固定式の施設などに比べて、建設コストが低く、海流に変動があるときにも、海洋を移動することにより安定して発電することができ、さらに、水車及びユニットを増設することにより、発電量を増大することができる、とされている。
しかしながら、特許文献3の海流発電装置は、海流の速度が比較的大きい場所(例えば、2m/sec〜)での使用を予定したものでもあり、海流の速度が比較的小さい場所で使用するのに適していない。また、特許文献3の海流発電装置は、発電機が一体に構成された比較的大きな水車(直径3m)を採用したものであり、喫水が大きいので、浅海域で使用するのに適していない。また、浅海域で使用した場合、潮汐又は波浪によって、水面下の構造物(水車の羽など)が海底と接触し、破損するおそれもある。
また、特許文献3の水車は、発電機と一体に構成されたものであり、プロペラが比較的大型であることから、製造コストが大きい。かかる海流発電装置では、プロペラの回転によって下流側に旋回流が生じると考えられるが、かかる旋回流は、単に浮体の後方に向かって拡散し、やがては定常的な海流と一体となって消失するのみであり、旋回流を有効に利用する方法については何ら考慮されていない。
そして、特許文献4に記載された浮消波装置によれば、単体の浮消波装置を所定数量つなぎ合せて係留することにより、極めて広い水域での消波効果を期待できるとされている。しかし、当該浮消波装置は、複数のフロートを係留具によって連結した構造であるので、波浪によって各フロートが上下動すると、係留具に大きな負荷がかかる。また、係留具は海水に直接接するため、劣化するおそれがあり、一定期間ごとに保守整備を要すると考えられる。そして、津波発生時において大きな衝撃を受けると、劣化した係留具は連結を喪失し、各フロートが散らばるおそれがあり、この場合、特許文献4に記載の浮消波装置は、所望の消波機能を発揮しえない。
本考案は、上記問題に鑑みてなされてものであって、上記問題の少なくとも一部を解決することができる、移動可能であって製造コストが小さく簡易な構成の水上浮体構造物を提供することを目的とする。より具体的には、本考案の目的の一つは、水流を制御することによって砂礫の堆積を促進することができる水上浮体構造物を提供することである。また、本考案の目的の他の一つは、水流のエネルギーを利用して発電することができる水上浮体構造物を提供することである。さらに、本考案の目的の他の一つは、津波発生時に津波のエネルギーを減衰させるための消波機能を有する水上浮体構造物を提供することである。
前述した課題を解決するため、本考案の水上浮体構造物の一つは、水上に浮かぶ浮体と、前記浮体の下側に設けられた導水管と、前記浮体の基準方向に対して前記導水管の軸方向を変更する軸方向変更手段と、前記浮体を水上の所定の位置に係留する係留手段と、を備える。これによって、導水管に流入する水流を偏向することができる。
上記水上浮体構造物において、前記導水管の内部には、水車が設けられることが好ましい。また、前記水車の回転軸に機械的に接続され、前記水車を回転駆動する電動機を備えることが好ましい。さらに、前記水車の回転軸に機械的に接続され、前記水車の回転エネルギーを電力に変換する発電機を備えることが好ましい。
また、前記電動機は、前記水車の回転エネルギーを電力に変換する発電機を兼用するように構成されてもよい。前記導水管は、前記発電用の水車の上流側と下流側との圧力勾配を増加させ、前記発電用の水車に通流される流量を増大させる流量増大手段を有することが好ましい。前記浮体には、自然エネルギーを電力に変換する発電手段が設けられてもよい。
上記水上浮体構造物において、平行配置された複数の導水管によってそれぞれ構成された複数の管群を備え、前記軸方向変更手段は、前記複数の管群のそれぞれの軸方向を別々に変更するように構成されることが好ましい。これによって、各管群に流入する水流を別々の方向へ偏向することができる。
本考案の水上浮体構造物の他の一つは、浅海域に配置される水上浮体構造物であって、複数のユニットが相互に連結されて構成されたメガフロートと、平行配置された複数の導水管によって構成され、各ユニットの下側に設けられる管群と、前記メガフロートの基準方向に対して各管群の軸方向を変更する軸方向変更手段と、各管群に設けられた水車と、前記水車の回転軸に機械的に接続された電動発電機と、前記メガフロートを水上の所定の位置に係留する係留手段と、を備える。これによって、管群に流入した水流を付勢して旋回流を生成しつつ、管群の軸方向を変更することによって、付勢した旋回流を例えば河口域又は沿岸帯へ向けて偏向することができる。
上記水上浮体構造物において、前記メガフロートは、自然エネルギーを電力に変換する発電手段を備えることが好ましい。また、電力を蓄積する蓄電池を備えてもよい。
さらに、前記複数のユニットは、津波の衝撃又は津波警報を受けると、各々を繋ぐ継手を介して網の目状に展開するように構成されることが好ましい。これによって、到来した津波のエネルギーを減衰することができる。
加えて、前記浮体又は前記メガフロートは、水流の流れ方向に対して前記浮体又は前記メガフロートの基準方向を追従させる安定板を有することが好ましい。前記浮体又は前記メガフロートは、水流の流れを受けることによって生じる旋回力を打ち消すための垂直舵を有することが好ましい。これによって、浮体又はメガフロートは、水流の流れ方向と基準方向との相対角度を一定に保持して係留される。
本考案によれば、軸方向を変更可能な導水管によって水流の一部を河口域又は沿岸帯に向けて偏向させることができる。これにより、河口域又は沿岸帯の海底における砂礫の堆積を促進することができ、漂砂を介した海岸の形成に寄与することができる。その他の効果については、発明を実施するための形態において述べる。
本考案の第1の実施形態の水上浮体構造物を上から観た概略構成図 本考案の第1の実施形態の水上浮体構造物をX軸方向から観た概略構成図 本考案の第2の実施形態の水上浮体構造物をY軸方向から観た概略構成図 旋回流生成用の水車の例を示す説明図 本考案の第3の実施形態の水上浮体構造物をY軸方向から観た概略構成図 発電用の水車(水平軸型)及び流量増大手段の例を示す説明図 発電用の水車(垂直軸型)及び流量増大手段の例を示す説明図 本考案の第4の実施形態の水上浮体構造物をY軸方向から観た概略構成図 本考案の第5の実施形態の水上浮体構造物をY軸方向から観た概略構成図 本考案の第6の実施形態の水上浮体構造物を上から観た概略構成図 本考案の第7の実施形態の水上浮体構造物を上から観た概略構成図 本考案の第8の実施形態の水上浮体構造物を上から観た概略構成図 継手の他の例を示す説明図 本考案の水上浮体構造物の配置の具体例
[本考案の経緯及び概要]
上述したとおり、全国各地で海岸浸食の問題が深刻となっているが、静岡海岸及び清水海岸も海岸浸食が激しい地域の一つである。静岡海岸及び清水海岸は、駿河湾西岸の安倍川の河口から三保砂嘴にかけて伸びる海岸である。特に、清水海岸は、富士山を背景とした美しい景観を有し、世界文化遺産にも登録された三保の松原を擁することから、砂礫浜を保護するための早急な対策が望まれている。また、かつて広大だった砂礫浜を回復することができれば、海岸の有効活用が図られ、観光、レジャー、農業、漁業などの発展も期待でき、地域の活性化にも大きく役立つものと信じる。
静岡海岸及び清水海岸は、安倍川の河口域に堆積した砂礫が沿岸漂砂によって移動することによって形成されたものであると考えられる。すなわち、安倍川から運ばれてきた砂礫は、河口域に堆積し、堆積した砂礫は、汀線に斜めに打ち付ける波によって汀線と平行に北東方向に運ばれ、これにより、砂礫浜が形成されたものである。沿岸漂砂により、海岸を移動する砂礫の量は、一説によれば年間10万m3以上と見積もられている。
ここで、砂礫の供給源となる安倍川は、日本屈指の勾配を有する河川であり、増水時の流れは非常に大きい。また、安倍川が流れ込む駿河湾は、太平洋側に開放され、海岸線から50〜100メートル離れた沖合からは水深が急速に深くなり、海底峡谷へと落ち込んでいく急峻な海底地形を有する。このような安倍川と駿河湾の地形の特徴から、安倍川河口域は、もともと、砂礫が堆積しにくい環境にあると考えられる。
加えて、近代において施工された河川工事などの影響から、上流域の雨量によって河川流の勢いが急激に増減するようになった。このため、減水時には、砂礫は、河口付近のみに局所的に堆積し、増水時には、局所的に堆積した砂礫は、急激な河川流の勢いによって、沖合の急傾斜に落ち込んでしまうと推測される。本来ならば、砂礫は、河口域とそれに接続する沿岸帯の広い範囲に堆積することが好ましいが、現状では、河口付近に集中する上、増水時には押し流されてしまうため、所望の範囲に安定して長く留まることができないと考えられる。
大雨、台風などの場合、安倍川は土砂を含んだ土色の濁流となり、河口付近の一帯の海は土色に染まる。流出した土砂は海岸の形成に寄与せず、ただ海底へと沈んでいく。国土の山河が削られるばかりでなく、海岸もやせ細っていくのであり、残念に思う。
ところで、駿河湾の沖合には世界最大級の黒潮が流れており、駿河湾内には黒潮の付随流が存在し、特に静岡海岸及び清水海岸の沖合には、海岸と平行に北東方向に定常的に流れる比較的流れの強い沿岸海流が存在することが経験的に知られている。
考案者は、子供の頃、静岡海岸沖の海でよく泳いだ経験がある。一度沖に出ると、出発地点に戻るのは困難であり、大きく東方向に流されたものである。自然エネルギーの活用が叫ばれ始めたころ、この経験が思い浮かび、駿河湾におけるこの沿岸海流の存在と海流のエネルギーを利用した発電とが直感的に結びついた。駿河湾は、膨大な海流エネルギーを内包し、その海流はエネルギー源として大きな可能性を秘めているのである。また、駿河湾は、外洋に比べて波が比較的穏やかであり、浮体構造物の配置に適した海域でもある。
加えて、駿河湾沿岸は、南海トラフ(駿河湾トラフ)に起因する東海地震によって、津波の被害を受けることが危惧されており、津波の被害を低減するための方策も喫緊の課題である。
そこで、本考案者は、海岸の近くの浅海域に水上浮体構造物を移動可能に配置し、海岸に対して平行に流れる沿岸海流の一部を人為的に制御し、沖合から海岸側へ向かう流れを発生させることによって、上流から河口付近に運ばれてきた砂礫を、河口域と沿岸帯に広く分散させ、漂砂の移動限界水深以浅の海底において砂礫の堆積を促すことを想起したのである。合わせて、かかる水上浮体構造物において、沿岸海流を活用して発電し、発電した電力を水流の制御に利用するとともに、余剰の電力を陸上に供給できることを想起し、さらに、水上浮体構造物の消波機能によって、津波の被害を低減し得ることを見出した。
[1.水流制御]
本考案の水上浮体構造物の一つは、浅水域に係留され、水流を制御する水上浮体構造物であって、水流の一部を、砂礫の堆積領域の方向へ偏向させるものである。
本明細書において、浅水域とは、水深が概ね50m以下の水域及び海域をいう。ただし、水上浮体構造物は、水深が50m以上の海峡、水道、外洋などに配置してもよい。また、砂礫の堆積領域とは、河口域又は沿岸帯をいう。河口域とは、河川の河口付近とその周辺の海域を含む一帯をいう。沿岸帯とは、汀線から漂砂の移動限界水深(概ね水深7〜10m)までの範囲をいう。また、水流とは、河口域の河川流、沿岸流、沿岸海流のほか、定常的な海流、潮汐流なども含む。
水上浮体構造物は、少なくとも、水上に浮かぶ浮体、複数の導水管、導水管の軸方向を変更する軸方向変更手段、及び係留手段を備える(第1の実施形態)。また、複数の導水管の少なくとも一つ(軸方向が変更される導水管)には水車が設けられてもよい(第2の実施形態)。また、水上浮体構造物は、複数の管群を備え、各管群が別々にその軸方向を変更可能に構成されてもよい(第6の実施形態)。
浮体は、フロート、台船、船舶、浮桟橋、筏などの単体のユニットにより構成してもよいし(図1〜図3等参照)、水上に浮かぶ複数のユニットを相互に連結して構成してもよい(図10〜図12参照)。水上浮体構造物では、特に、浮体として、メガフロートを採用することが好ましい。メガフロートは、一例として、長さ300m×幅60m程度のユニットを所要の数量組み合わせて構成することができる。浮体の大きさについては、設置される場所などに応じて適宜設定してよい。
浮体の形状は、水流の流れ方向に沿って姿勢(浮体の基準方向)を維持できるように構成されることが好ましい。例えば、平板状の直方体、平板状の楕円柱、紡錘体などを採用することができる。浮体を平板状の直方体とすれば(図1等参照)、製造コストを小さくすることでき、好ましい。また、直方体を採用する場合、水流の抵抗を低減するために、一部のユニットの遇部を丸めたり、水流に対して斜めにしたりしてもよい(図10参照)。
浮体の基準方向とは、浮体の寸法を縦(X軸方向)、横(Y軸方向)、高さ(Z軸方向)で表す場合、長手方向となるX軸方向をいう。浮体の平面が円形又は正方形などであり、長手方向を特定できない場合は、浮体のXY平面において左右対称を定める任意の中心線の方向を基準方向としてもよい。
なお、本明細書では、水上浮体構造物が所定の水域に配置される場合、X軸方向の上流側を前、下流側を後、下流側から上流側を見て右側を右、左側を左といい、水に接する側を下側、大気に接する側を上側という。
複数の導水管は、浮体の下側に、浮体の基準方向に対してその軸方向を変更可能に設けられ、水域の表層を流れる水流は複数の導水管に流入する。複数の導水管は、径方向に平行に連結されてもよい。複数の導水管は、例えば、鋼管を採用することができる。導水管の断面形状は、円形であることが好ましい(図2参照)。ただし、これに限定されず、楕円形、矩形、その他の多角形としてもよい。また、いくつかの導水管を一組に束ねて複数の管群を構成し、各管群が別々にその軸方向を変更可能なように構成してもよい(図10及び図11参照)。
導水管の直径(円形の場合)又は高さ(矩形の場合)は、適宜設定することができるが、水上浮体構造物を水深20m以下の浅水域に配置する場合、5m以下とすることが好ましく、3.5m以下とすることがさらに好ましい。また、水上浮体構造物の喫水(水面下に沈んでいる部分の深さ)は、10m以下であることが好ましく、5m以下であることがさらに好ましい。
軸方向変更手段は、複数の導水管の軸方向を浮体の方向に対して変更する手段である。軸方向変更手段は、複数の導水管の全部の軸方向をまとめて変更するように構成されてもよいし(図1参照)、複数の導水管のうちの一部の軸方向を変更するように構成されてもよい。さらに、複数の管群を構成した場合、各管群の軸方向を別々に変更するように構成されてもよい(図10及び図11参照)。
軸方向変更手段としては、例えば、回転テーブルの機構を採用してもよいし(図1参照)、平行四辺形リンク機構を採用してもよい(図10参照)。平行四辺形リンク機構は、並列する導水管に連結された一対の平行連桿によって、一組の導水管の軸方向を一体にして変更可能に構成したものである。ただし、これに限定されず、各種の油圧機構、連結機構などの組み合せを採用することができる。
係留手段は、所定の水域に浮体を係留する手段であり、浮体の端部の少なくとも3箇所以上に設けられる。ここで係留とは、浮体を移動可能に一時的に所定の水域に留め置くことだけでなく、浮体を所定の水域に一定期間又は恒常的に留め置くことを含む。係留手段は、例えば、シンカー、アンカー、錨鎖、揚鎖機などから構成されることが好ましい。水上浮体構造物が配置される水域には通常水流が存在し、かかる水流の流れ方向は、季節又は時間に応じて変化する可能性がある。従って、浮体は、係留手段を用いて、浮体の基準方向を水流の流れ方向に追従できることが好ましい。また、浮体が配置される水域の環境にもよるが、係留手段は、例えば、浮体の端部に設けられる支柱支部部及び支柱支持部に取り付けられる支柱などから構成されてもよい。支柱支部部は、浮体の上下動(波、潮汐などによる)に伴い、浮体に対して支柱を上下に摺動するように構成してもよいし、浮体の上下動に関係なく支柱を固定状態のまま保持するように構成してもよい。また、支柱は浮体が配置される水底に固定するように構成されてもよいし、必要に応じて水底から離せるように構成してもよい。この場合、水上浮体構造物は、移動可能な構造物としてだけでなく、必要に応じて所定の水域に固定又は半固定としながら運用可能な構造物となる。
水上に係留された浮体は、水流から大きな抵抗を受けると、係留手段の把駐力の限界を超えて横滑りする虞もある。このため、浮体の基準方向と水流の流れ方向との相対角度は、抵抗が最も少なくなるように、略0°に保持されることが好ましい(図1等参照)。ただし、これに限定されず、水域の環境(海流、波浪、風など)にもよるが、浮体は、必要に応じて、相対角度が、例えば、0°〜45°の範囲内の一定の角度に保持されるように係留されてもよい。
係留手段は、例えば、揚錨機を介して係留時の錨鎖の長さを調整したり、アンカーの位置をずらしたりすることによって、浮体の基準方向(方位)を変更し、水流との相対角度を保持又は変更することができる(図10参照)。
旋回流生成用の水車は、複数の導水管の少なくとも一つ(軸方向が変更される導水管)の内部に設けられ、導水管に流入した水流に導水管の軸方向の周りの旋回力を付与し、浮体の後方に流出される旋回流を生成する(図3〜図5等参照)。旋回流生成用の水車は、導水管の内部で回転可能に設けられることが好ましい。ただし、これに限定されず、使用の目的態様に応じて、旋回流を生成できれば、導水管に固定されるものであってもよい。
また、水上浮体構造物は、旋回流生成用の水車を回転駆動する電動機を備えることが好ましい。電動機は、電力を受け、伝達機構を介して、導水管に回転可能に設けられた水車を回転駆動し、浮体の後方に、さらに強い旋回流を生成することができる。
以上のとおり、本考案の水上浮体構造物の一つによれば、軸方向変更手段によって、導水管の全部若しくは一部の軸方向、又は管群の軸方向を浮体の基準方向に対して変更することができる。また、係留手段によって、浮体の基準方向を水流の流れ方向に対して変更することができる。
これにより、浅水域に配置された水上浮体構造物は、複数の導水管(又は管群)に流入した水流を、水流の本来の流れ方向とは異なる河口域又は沿岸帯の方向に向けて偏向させることができる。このため、河口域又は沿岸帯における砂礫の堆積を促す効果が期待できる。
また、水上浮体構造物は、係留手段によって、移動可能に構成されるので、砂礫の堆積と海岸の回復状態に応じて、別の場所に再配置することができ、周囲の環境等に悪影響を及ぼすおそれが少ない。また、導水管に旋回流生成用の水車を設けた場合、導水管に流入した水流を旋回流として遠距離に到達させることができ、河口域又は沿岸帯における砂礫の堆積を促進することができる。旋回流生成用の水車は、電動機からの回転駆動力を受けて、旋回流を付勢することができ、砂礫の堆積をさらに促進することができる。
また、船舶及び建造物用の部材(浮体、鋼管、電動機、揚錨機、錨、錨鎖など)を利用することができるので、製造コストを低減することができる。
[2.発電機能]
次いで、本考案の水上浮体構造物の他の一つは、水流制御の機能に加えて、水流を利用して発電する水流発電の機能を備えたものである。水上浮体構造物は、浮体、複数の導水管、複数の導水管の軸方向を変更する軸方向変更手段及び係留手段のほか、発電用の水車及び発電機を備える。
発電用の水車は、水流のエネルギーを回転エネルギーに変換する回転体であり、変換した回転エネルギーを伝達機構を介して発電機に伝達する。発電用の水車は、水平軸の周りに回転する水平軸型であってもよいし、垂直軸の周りに回転する垂直軸型であってもよく、導水管の内部の適宜の位置に設けられる。導水管の断面形状は、水平軸型の発電用の水車を採用する場合、円形とすることが好ましく(図6(A)参照)、垂直軸型の発電用の水車を採用する場合、矩形とすることが好ましい(図7(A)参照)。
ところで、沿岸の浅海域を流れる海流は、一般に、流れが遅く、エネルギー密度は小さい。このため、発電用の水車における通流面の前後で生じる圧力差が大きくなく、高速回転を得ることが難しい。そこで、水上浮体構造物の導水管は、発電に際して、発電用の水車を通流する水流の流量を増大させる流量増大手段を備えることが好ましい。流量増大手段は、例えば、発電用の水車の通流面よりも、導水管の入口及び出口の少なくとも一方を徐々に広げるように構成することによって実現できる(図6(B)(C)及び図7(B)(C)参照)。
発電機は、伝達機構を介して発電用の水車に接続され、発電用の水車の回転を受けて発電する機能を有する。発電機は、浮体の内部又は水面よりも上部に配置されることが好ましい。これにより、発電機が水面下の水密筐体に格納され、水車と一体に構成される場合に比べて、保守整備が容易となる。
発電用の水車は、複数の導水管のうち、軸方向が変更される導水管の内部に設けられてもよいし、軸方向が変更さない導水管の内部に設けられてもよい。また、発電用の水車は、複数の導水管とは無関係に浮体の側面又は下部などに設けられてもよい。
複数の導水管の少なくとも一つ(軸方向が変更される導水管)に旋回流生成用の水車を設けたうえに、複数の導水管の少なくとも他の一つ(軸方向が変更されない導水管)に発電用の水車を設けてもよい(第3の実施形態)。
また、上述したように、複数の導水管の少なくとも一つ(軸方向が変更される導水管)に旋回流生成用の水車が回転可能に設けられる場合、必要に応じて、かかる旋回流生成用の水車の全部又は一部を発電用の水車として機能させることもできる(第4の実施形態)。換言すれば、旋回流生成用の水車と発電用の水車とは相互に兼用可能なように構成される。この場合、旋回流生成用の水車を回転駆動する電動機は、水車からの回転エネルギーを電力に変換できるように構成されることが好ましい。換言すれば、電動機と発電機とは、相互に兼用可能な電動発電機として構成される。すなわち、旋回流生成用の水車は、発電用の水車として機能し、水流のエネルギーを受けて回転し、その回転エネルギーは伝達機構を介して電動発電機に伝達され、電動発電機は、回転エネルギーを電力に変換する。
さらに、水流発電の機能を強化するために、複数の導水管とは無関係に浮体の側面又は下部などに発電用の水車を設けてもよい(第5の実施形態)。
水上浮体構造物において複数の管群を設ける場合、複数の管群の少なくとも一つ(軸方向が変更される管群)に旋回流生成用の水車を設けたうえに、複数の管群の少なくとも他の一つ(軸方向が変更されない管群)に発電用の水車を設けることもできる(第7の実施形態)。
なお、水上浮体構造物において、発電機能を向上させるため、自然エネルギーを利用した発電手段、例えば、波力エネルギーを空気エネルギー、機械的なエネルギー又は位置エネルギーなどに変換する機構、風力エネルギーを回転エネルギーに変換する風車、太陽光エネルギーを電力に変換する太陽電池などを設けることもできる。
以上のとおり、本考案の水上浮体構造物の他の一つによれば、配置された水域を流れる水流を利用して発電することができ、水上発電所として機能させることができる。
[3.消波機能]
本考案の水上浮体構造物の他の一つは、複数のユニットが連結されたメガフロートを採用したものであり、沿岸の浅水域に係留され、通常時及び津波発生時の波のエネルギーを減衰するものである(第8の実施形態)。
水上浮体構造物は、通常時は、複数のユニットが連結された一体の浮体の形態であるが(図12(A)参照)、津波発生時には、複数のユニットが継手を介して網の目状に広範囲に展開する形態となる(図12(B)参照)。これによって、通常時において、浮体の陸地側の海面の消波効果が期待でき、海岸の浸食を防止するとともに、津波発生時においては、分離展開した各ユニットが継手を介して前後、左右、上下に運動しながら、広範囲に渡って津波を包み込むので、津波のエネルギーをある程度減衰する効果が期待できる。
このように、本考案の水上浮体構造物の他の一つによれば、比較的低いコストで数キロ平方メール以上の巨大な浮体を構成することができ、水流制御と水流発電の機能に加えて、通常時及び津波発生時の消波機能を実現することができる。
なお、本考案の水上浮体構造物は、制御装置を備えることが好ましい。制御装置は、各種の構成(例えば、軸方向変更手段、駆動源、旋回流生成用の水車、発電用の水車、発電機、電動機、蓄電池など)、発電機と電動機の切替、送電受電、ユニットの継手の分離展開などを制御する。また、本考案の水上浮体構造物は、通信装置を備えることが好ましい。通信装置は、制御装置と接続され、陸上管理施設からの各種の制御信号を受信し、制御装置が管理する各種の情報(運転状況、センサによって取得された水域の環境など)を陸上管理施設に送信する。
以下、本考案の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
[実施形態1]
図1は、第1の実施形態の水上浮体構造物を上から観た概略構成図である。図1(A)は、導水管が初期位置にある状態を示し、図1(B)は導水管の軸方向が変更された状態を示す。図2は、図1に示す水上浮体構造物をX軸方向(前)から観た概略構成図である。
図1及び図2を参照すると、本実施形態の水上浮上構造物は、浮体1、複数の導水管2、軸方向変更手段4、及び係留手段6を備え、浅水域に係留される。係留位置には、水流8が一定の方向に流れている。
浮体1は、水上に浮くことができるフロートである。複数の導水管2は、鋼管であり、連結部材21を介して径方向に平行に束ねて配置される。複数の導水管2は、軸方向変更手段4(及び連結部材21)を介して、浮体1の下部に設けられる。
導水管の直径は、5m以下とすることが好ましく、3.5m以下とすることがさらに好ましい。水上浮体構造物の喫水(係留手段を除き、水面下に沈んでいる部分の深さ)は、10m以下であることが好ましく、5m以下であることがさらに好ましい。これにより、水上浮体構造物は、水深20m以下の浅水域に配置することができる。また、流入した水流に含まれる砂礫が導水管2の内部に堆積するのを防止するために、導水管2の下面に、孔、スロットなどを設けてもよい。
軸方向変更手段4は、回転テーブルであり、複数の導水管2の軸方向Mを浮体1の基準方向Lに対して左右に変更することができる。係留手段6は、揚錨機61、錨鎖(又は係留ワイヤ)62、アンカー(又はシンカー)63によって構成される。浮体1は、基準方向Lが水流8の流れに沿うように係留される。
続いて、水上浮上構造物の動作について説明する。水上浮体構造物が水上を移動し、所定の水域に配置されるまでの間は、導水管2は、図1(A)に示すように、初期位置に保持されており、導水管2の軸方向Mと浮体1の基準方向Lとは平行な状態にある。このため、移動時の抵抗を低減することができる。導水管2が初期位置にある場合、導水管2に流入した水流は、流れ方向を変えることなく、そのまま、後方へ流れ去る。
次いで、水上浮体構造物が所定の水域に配置された後、水流制御を実施する場合、導水管2は、図1(B)に示すように、軸方向変更手段4によって、基準方向Lに対して軸方向Mを変更する。この場合、導水管2に流入した水流は、本来の水流8の流れ方向とは異なる方向に偏向され、水流の一部が偏向流80となる。水上浮体構造物の基準方向と導水管の軸方向とのなす角は、一定のまま保持してもよいし、必要に応じて変更してもよい。
なお、軸方向変更手段を駆動するための駆動源(図示省略)として、例えば、内燃機関、電動機などを浮体1に設けてもよい。この場合、水上浮体構造物は、所定の水域に配置された状態で、自己が備える駆動源などにより、必要に応じて随時、導水管の軸方向を変更することができる。
また、導水管の軸方向を変更する際に、曳船、重機又は人力を利用して軸方向変更手段を駆動するように構成してもよい。さらに、所定の水域の環境にもよるが、運用時において水上浮体構造物の基準方向と導水管の軸方向とのなす角を変更する必要が少なければ、水上浮体構造物は軸方向変更手段を備えなくてもよく、建造時において導水管の軸方向を所望の方向に設定し、浮体に対して導水管を固定してもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、水流の一部を、例えば、河口域及び沿岸帯に向けて偏向することができるので、河口域及び沿岸帯における砂礫の堆積を促進することができる。また、軸方向変更手段により、導水管の軸方向を適宜変更することができるので、水流の一部を所望の方向へ偏向させることができる。さらに、水上浮体構造物は、基本的には喫水が小さいので、例えば、水深20m以下の浅水域にも配置することができる。
[実施形態2]
図3は、第2の実施形態の水上浮体構造物をY軸方向から観た概略構成図である。本実施形態の水上浮体構造物は、図1及び図2に示した第1の実施形態の水上浮体構造物とは、旋回流生成用の水車3Aを備えた点で相違する。水上浮体構造物は、必要に応じて電動機5Aを備えてもよい。
水車3Aは、導水管2の内部に設けられ、流入した水流に軸回りの旋回力を与える。かかる導水管2(及び水車3A)の構成により、流入した水流を旋回させ、旋回流82として所望の方向に偏向させることができる。これによって、水流8の一部をより遠距離に到達させることでき、堆積領域における砂礫の堆積に強く作用させることができる。旋回流生成用の水車3Aは、種々の構成を採用することができる。
図4は、旋回流生成用の水車3Aの例である。図4(A)に示す水車3Aは、導水管2の内部に軸回りに回転可能に設けられたプロペラの例である。図4(B)に示す水車3Aは、導水管2の内部に軸回りに回転可能に設けられた中空軸羽根車の例である。旋回流生成用の水車3Aは、回転軸及び伝達機構(図示省略)を介して電動機から付与された回転駆動力を用い、流入する水流8を付勢し、より強い旋回流82を生じることができる。さらに、旋回流生成用の水車3Aは、適宜の駆動源とともに、水上浮体構造物の推進装置として利用することができる。
なお、図4に示す例では、旋回流生成用の水車3Aを導水管2の内部に回転可能に設けたが、旋回流を生成するための手段は、回転可能に設けられた水車に限定されない。浮体が配置される水域の環境にもよるが、比較的弱い旋回流で足りる場合は、回転可能に設けられた水車ではなく、例えば、導水管2の内部壁面に螺旋状の斜板を設けたり、導水管2に螺旋水車を固定したりしてもよい。この場合、簡単な構造により、流入した水流に一定の旋回力を付与することができる。
図3の説明に戻ると、電動機5Aは、回転可能に構成された水車3Aの回転軸30及び伝達機構52を介して水車3Aに機械的に接続され、送電線(図示省略)を介して外部から供給された電力を受けて、水車3Aに回転駆動力を付与することができる。また、水車3Aの駆動源は、電動機に限定されず、水上浮体構造物は、電動機5Aの代わり又は電動機5Aとは別に、内燃機関(図示省略)などを備えてもよい。また、水上浮体構造物は、水車3Aの駆動源として、軸方向変更手段の駆動源(図示省略)を利用してもよい。
以上説明したように、本実施形態の水上浮体構造物によれば、旋回流生成用の水車(又は旋回流を生成するための手段)によって、流入した水流を旋回流として後方に放出することができる。さらに、旋回流生成用の水車を回転駆動することにより、旋回流を付勢することもできるので、一定の流速を有する旋回流を、より遠距離に到達させることができ、河口域及び沿岸帯における砂礫の堆積を促進することができる。また、水上浮体構造物は、水車及び駆動源の構成によって自立航行が可能となり、曳船などを用いなくても、適宜の係留位置へ移動することができ、水域を移動する際の曳航の費用の低減することができる。
[実施形態3]
図5は、第3の実施形態の水上浮体構造物をY軸方向から観た概略構成図である。本実施形態の水上浮体構造物は、図3に示した第2の実施形態の水上浮体構造物の構成に加えて、水流8のエネルギーを回転駆動力に変換する発電用の水車3B、発電用の水車3Bの回転によって電力を生成する発電機5Bを設けたものである。また、必要に応じて、電力を蓄積する蓄電池7を設けてもよい。
本実施形態では、複数の導水管の少なくとも一つ(例えば、軸方向が変更される導水管)2Aには旋回流生成用の水車3Aが設けられ、複数の導水管の少なくとも他の一つ(例えば、軸方向が変更されない導水管)2Bには発電用の水車3Bが設けられる。発電用の水車3Bは、水平軸の周りに回転する水平軸型であることが好ましいが、垂直軸の周りに回転する垂直軸型であってもよい。発電用の水車3Bが設けられる導水管2Bは、発電用の水車3Bを通流する水流の流量を増大させる流量増大手段を備えることが好ましい。
図6は、発電用の水車(水平軸型)及び流量増大手段の例を示す説明図である。図6(A)は、水平軸型の発電用の水車3Bとして一般的なプロペラを円筒状の導水管2Bの内部に配置した例である。発電用の水車3Bは、水流のエネルギーを受けて、水平方向に設けられた回転軸30の周りに回転する。水平軸型の発電用の水車3Bは、断面円形の導水管に配置されることが好ましい。
図6(B)は、導水管のXY断面を示し、図6(A)に示す水車3Bについて、流量増大手段を構成した例である。本例の流量増大手段は、円筒状の導水管2Bの中央部に、入口及び出口の径よりも小さい径のくびれを設けることによって構成したものである。
同様に、図6(C)は、導水管のXY断面を示し、図6(A)に示す水車3Bについて、流量増大手段を構成した別の例である。本例の流量増大手段は、円筒形の導水管の入口に、導水管の径よりも大きい拡大部22を設けることによって構成したものである。
図7は、発電用の水車(垂直軸型)及び流量増大手段の例を示す説明図である。図7(A)は、導水管のXY断面を示し、垂直軸型の発電用の水車3Bとしてジャイロミルを断面矩形の直方体の筒で構成された導水管2Bに配置した例である。垂直軸型の発電用の水車3Bとしては、ほかに、ダリウス型、サボニウス型などを利用することもできる。水車3Bは、水流のエネルギーを受けて、垂直方向に設けられた回転軸30の周りに回転する。
図7(B)は、導水管のXY断面を示し、図7(A)に示す水車3Bについて、流量増大手段を構成した例である。本例の流量増大手段は、直方体の筒で構成された導水管2Bの出口側に四角錐台状の拡大部22を設けることによって構成したものであり、垂直転型の水車3Bが直方体の導水管2の狭隘部に回転軸30の周りに回転可能に設けられる。
図5の説明に戻ると、発電機5Bは、回転可能に構成された水車3Bの回転軸30及び伝達機構(図示省略)を介して水車3Bに機械的に接続され、導水管2Bに流入する水流のエネルギーを受けて回転する水車3Bの回転エネルギーを電力に変換する。発電機5Bによって生成された電力は、蓄電池7に蓄積されてもよい。
これにより、本実施形態では、発電用の水車3Bの回転を介して発電機5Bが電力を生成し、蓄電池7が生成された電力を蓄積し、電動機5Aが必要に応じて蓄積した電力を使用して旋回流生成用の水車3Aを駆動し、旋回流82を生成することができる。
また、水流制御(旋回流生成用の水車3Aの回転駆動)に必要な電力を超える電力が発生した場合は、送電装置(図示省略)及び送電線(図示省略)を介して、余剰の電力を陸上の送配電施設に送電するように構成してもよい。また、旋回流生成用の水車3Aと発電用の水車3Bとを伝達機構(図示省略)を介して直接接続し、発電用の水車3Bの回転駆動力の全部又は一部を利用して、旋回流生成用の水車3Aの回転駆動を補助してもよい。
なお、同図では、簡単のため、旋回流生成用の水車3Aを含む一つ導水管2Aと発電用の水車3Bを含む一つの導水管2Bが示されているが、必要に応じて、所望の数量の導水管及び導水管の内部に設けられる旋回流生成用の水車3A及び発電用の水車3BをX軸方向及びY軸方向に並べて配置することができる。
また、水上浮体構造物は、安定板12を備えてもよい。安定板12は、浮体1の下部に基準方向Lと平行に設けられる。安定板12は、浮体1の基準方向(長手方向)を水流8の流れ方向に追従させる機能を有するほか、浮体1を安定させる機能を有する。
さらに、水上浮体構造物は、垂直舵13を備えてもよい。垂直舵13は、安定板12と一体に設けられてもよいし、安定板12とは別に設けられてもよい。垂直舵13は、基準方向に対して左右に向きを変更できるように構成される。導水管2の軸方向が基準方向に対して変更された場合(初期位置以外の傾いた状態にある場合)、浮体には水流の流れを受けることによって生じる左右いずれかの回頭力が生じる。垂直舵13は、基準方向に対して適宜向きを変更することによって、かかる回頭力を打ち消し、浮体1を安定させることができる。
以上説明したように、本実施形態の水上浮体構造物によれば、第2の実施形態の効果に加え、付近を流れる水流のエネルギーによって発電することができ、水流のエネルギーを利用して発電しながら、獲得した電力によって水流制御を実施することができる。このように、本実施形態では、電動機5Aから付与された回転駆動力を受けて旋回流82を生成する水流制御の機能と水流のエネルギーを受けて電力を生成する水流発電の機能との両方を同時に実現することができる。
さらに、本実施形態では、旋回流生成用の水車及び発電用水車は、導水管の内部に格納されるので、波浪による上下動又は干満により、回転体が水底に接し、破損するおそれが少ない。
また、流量増大手段の構成により、発電用の水車に通流する水流の流量を増大させ、発電用の水車の上流側と下流側との圧力勾配を増加させ、より大きな回転駆動力を得ることができる。このため、水上浮体構造物は、比較的流れの遅い水域にも適用することができる。
以上、図5に示す第3の実施形態では、旋回流生成用の水車3Aと発電用の水車3Bとを別々に設ける態様について説明したが、本発明では、旋回流生成用の水車3Aと発電用の水車3Bとを、同一又は類似の水平軸型の回転体として構成し、旋回流生成用の水車3Aと発電用の水車3Bとを相互に兼用可能とすることもできる。また、図5では電動機5Aと発電機5Bとを別々に設ける例を示したが、電動機5Aと発電機5Bとを相互に兼用可能なように構成することもできる。
[実施形態4]
図8は、第4の実施形態の水上浮体構造物をY軸方向から観た概略構成図である。本実施形態の水上浮体構造物は、旋回流生成用の水車3Aが発電用の水車3Bとしても機能する点、及び電動機5Aが発電機5Bを兼用するように電動発電機5として構成された点で、図3に示した第2の実施形態又は図5に示した第3の実施形態の水上浮体構造物と相違する。また、水上浮体構造物は、必要に応じて蓄電池7を設けてもよい。
電動発電機5(5A、5B)は、水車3(3A、3B)の回転軸30及び伝達機構52を介して水車3(3A、3B)と機械的に接続されている。水流制御を実施する場合、電動機5Aとして機能する電動発電機5は、旋回流生成用の水車3Aとして機能する水車3に回転駆動力を付与する。水流発電を実施する場合、発電機5Bとして機能する電動発電機5は、発電用の水車3Bとして機能する水車3からの回転エネルギーを受けて電力を生成する。
また、電動発電機5は、水流発電の実施時に得られた電力を蓄電池7に蓄積し、水流制御の実施時には蓄積された電力を旋回流生成用の水車3Aに回転駆動力を付与し、旋回流を付勢することもできる。
さらに、本実施形態では、軸方向変更手段4は、図8に示すように、上下方向に伸縮可能な連結部材を含み、導水管2の軸方向Mを基準方向Lに対して上下に傾けることができるように構成されてもよい。
なお、図8では、説明のため、導水管2、水車3及び電動発電機5をそれぞれ1つ図示しているが、これに限定されない。導水管2、水車3及び電動発電機5の数量及び配置は、使用の目的態様に応じて適宜変更することができる。
以上説明したとおり、本実施形態の水上浮体構造物によれば、旋回流生成用の水車と発電用の水車を相互に兼用可能に構成するとともに、電動機と発電機とを相互に兼用可能に構成したので、水上浮体構造物に設置される装置を置換又は変更することなく、水流発電の機能と水流制御の機能とを必要に応じて選択的に切替えることができる。
また、水上浮体構造物の運用に際して、導水管に設けられた複数の水車は、水流発電の機能及び水流制御の機能のいずれにも容易に割り当てることができるので、水流発電の機能を実現するために適用する水車と、水流制御の機能を実現するために適用する水車の割合を適宜変更することができ、いずれか一方の機能を重視した運用を実現することもできる。例えば、電力需要が増大する昼間においては水流発電の機能を強化し、反対に、電力需要が減少する夜間においては水流制御の機能を強化することができる。
さらに、本実施形態の水上浮体構造物では、必要に応じて電力を生成し、生成した電力を蓄積することができるので、外部から電力を供給されなくても、自己で発電した電力を利用して、水流制御(軸方向変更手段及び水車の駆動)を実現することができる。
加えて、軸方向変更手段が導水管の仰角変更機能を有するので、旋回流を下方に偏向させることもでき、対象とする砂礫の堆積領域が漂砂の移動限界水深近くの比較的深い海底にある場合、砂礫の堆積領域に旋回流を強く作用させることができる。
[実施形態5]
図9は、第5の実施形態の水上浮体構造物をY軸方向から観た概略構成図である。本実施形態の水上浮体構造物は、発電手段として水車3Cを浮体1の下部に設けた点で、図4又は図5に示した実施形態とは異なる。水車3Cは、回転軸30及び伝達機構52を介して発電機5Bに機械的に接続する。
本実施形態は、水流発電の機能をさらに強化するため、導水管の構成とは無関係に発電用の水車を増設したものである。水車3Cは、水流8のエネルギーを受けて回転する回転体であればよく、例えば、水平軸又は垂直型の回転体を採用することができる。水車3Cの径の形状及び大きさは、導水管の構成(断面形状及び直径)の制約を受けない。本実施形態は、水深が比較的深く、海流の流れが比較的強い海域に好適である。
[実施形態6]
図10は、第6の実施形態の水上浮体構造物を上から観た概略構成図である。本実施形態の水上浮体構造物は、図1及び図2に示した第1の実施形態の水上浮体構造物とは、複数のユニット10によって浮体1を構成した点、いくつかの導水管2を束ねて複数の管群20を構成した点、及び軸方向変更手段によって各管群の軸方向を別々に変更可能に構成した点で相違する。
まず、浮体1は、複数のユニット10を連結して構成される。これにより、浮体1を低コストで大型化することができ、導水管2を多数設けることができる。また、同図に示しように、ユニット10の端部を水流8に対して斜めに構成してもよい。これにより、浮体1が水流8から受ける抵抗が少なくなり、浮体1がより安定する。
また、いくつかの導水管2を連結して構成された複数の管群20が、軸方向変更手段4を介して各ユニット10の下部に設けられる。これにより、本実施形態では、各管群20の軸方向を独立して制御することができ、複数の管群20のうちの一部を基準方向Lとは異なる方向に変更し、他の一部をさらに異なる方向に変更することもできる。
通常、導水管2を基準方向Lに対して傾けると、水流8からの抵抗を受けて、浮体1を左右いずれかに回頭させる力が作用し、浮体1が不安定になることがある。しかしながら、本実施形態では、左右の管群20を左右の外側へ同一の角度だけ傾けることもできるので、浮体1を安定させることができるのである。
[実施形態7]
図11は、第7の実施形態の水上浮体構造物を上から観た概略構成図である。本実施形態の水上浮体構造物は、複数のユニット10を連結して浮体を構成し、各ユニットに管群を設けた第6の実施形態において、各管群20に旋回流生成用の水車3A又は発電用の水車3Bを設け、各ユニットに電動機5A又は発電機5Bを配置したものである。旋回流生成用の水車3Aと発電用の水車3Bとは相互に兼用可能なように構成されることが好まく、電動機5Aと発電機5Bとは相互に兼用可能なように電動発電機として構成されることが好ましい。
同図では、右側の二つのユニット10Aが水流制御の機能を担当し、管群20Aに設けられた旋回流生成用の水車3Aが水流8の一部を旋回流82として所望の方向(河口域及び沿岸帯)に偏向する。また、左側後方のユニット10Bが水流発電の機能を担当し、管群20Bに設けられた発電用の水車3Bが水流8のエネルギーを受けて発電する。さらに、第5の実施形態と同様に、水流発電の機能をさらに強化するため、左側前方のユニット10Cには管群を設けずに、管群の構成とは無関係に発電用の水車3Cを増設することができる。水上浮体構造物は、左側のユニット10B及び10Cにおいて生成した電力の一部を右側の二つのユニット10Aに配置された電動機5A又は蓄電池7に供給し、生成した電力の他の一部を送電装置(図示省略)及び送電線(図示省略)を介して陸上の送配電施設に供給することができる。
また、同図では、発電用の水車3Cはユニット10Cの下部に設けられているが、これに限定されない。発電用の水車3Cは、ユニット10Cなどの側面に配置してもよいし、到来した波の力を捉えるようにユニット10Cなどの上部に配置してもよい。また、ユニット10Cを枠体として構成し、水面が露出する枠体の内側に発電用の水車を半水没状態で配置してもよい。
さらに、ユニット10には、各種の自然エネルギーを利用した発電手段3Dとして、波力発電、風力発電、太陽光発電などの設備を配置してもよい。
なお、同図に示した水上浮体構造物は単なる例示であり、ユニット10、管群20、水車3A、発電用の水車3B、電動機5A、発電機5B及び蓄電池7の形状及び数量は適宜変更することができる。
以上説明したように、本実施形態の水上浮体構造物によれば、第6の実施形態の効果に加え、水流のエネルギーを利用して発電しながら、獲得した電力によって水流の制御をすることができる。また、水流のエネルギーのほかにも、種々の自然エネルギーを利用して発電することができる。また、水流の制御に必要な電力を超える電力が発生した場合は、余剰の電力を陸上の送配電施設に送電することができる。
[実施形態8]
図12は、第8の実施形態の水上浮体構造物を上から観た概略構成図である。本形態の水上浮体構造物は、前述した第6又は第7の実施形態の複数のユニット10を連結した構成において、複数のユニットが継手を介して網の目状に広範囲に展開するように構成したものである。水上浮体構造物は、海洋の状態を感知するためのセンサ、津波警報、陸上管理施設からの各種の指令などを受信するための通信装置(図示省略)、ユニットの展開動作を制御する制御装置(図示省略)を備えることが好ましい。
図12(A)に示すように、浮体1を構成する複数のユニット10は、通常時、連結部材(図示省略)によって相互に密接に連結されている。ただし、使用の目的態様によっては、各ユニットの側面部を相互に密接に連結するのではなく、各ユニットは一定の間隙を有するように接続されてもよい。
次いで、図12(B)に示すように、浮体1を構成する複数のユニット10は、津波発生時、津波の衝撃又は津波警報を受けることによって、連結部材が解除されて分離し、各々を繋ぐ継手15を介して網の目状に展開する。津波発生時に展開した各ユニット10は、それぞれ、継手の長さ(伸縮可能な構成が好ましい)の範囲で平面方向又は上下方向に搖動し、その結果、波のエネルギーを減衰させる。
連結部材(図示省略)は、種々の構成を採用することができ、例えば、火薬の爆発又は圧力の付加により分離する分離ボルト、係止爪、ねじ式、ピン・リンク式などによる連結器を使用することができる。
継手15は、各種の部材及び構造を採用することができる。例えば、波のエネルギーを効果的に減衰させるために、弾性力の高い部材によって構成することが好ましい。具体的には、ゴム製の環状又は板状の部材、ゴム製の伸縮可能な浮き、ばね及びこれらの組み合わせを用いることができる。また、これに限定されず、例えば、金属製の屈曲可能な棒状又は板状の部材、金属製の連環又は鎖、シリンダなどを用いてもよい。
図13は、継手の一例である。図示した継手15は、展開した各ユニットの間を連結するゴム製の蝶番であり、波の上下動に対応してユニット10が上下方向に搖動することを妨げない。この場合、ユニット10は、隣接するユニット10が上昇する波9によって上方向に持ちあげられた場合に他方のユニット10の側面と衝突しないように、側面の一部を斜めに構成することが好ましい。
さらに、継手15は、一定以上の力を受けたとき、切断するように構成してもよい。この場合、ばらばらに展開した各ユニット10は、津波に運ばれて陸地に到達し、ユニット10の喫水と周囲の浸水の高さとが等しくなる位置でユニット10の底部分が着底し、停止する。このため、陸地に運ばれた各ユニット10は、遭難者の一時的な避難場所となりうる。これにより、陸地に押し寄せた津波に伴う多数の漂流物から遭難者を保護することができ、人的被害を低減できる可能性がある。
また、各ユニット10の下面又は導水管には、浸水の高さが比較的大きい位置でもユニットを停止させることができるように、図示しない爪、引っ掛け部材などを設けてもよい。加えて、各ユニットの側面には、遭難者がユニットに接近し、容易によじ登ることができるように、図示しないはしご、ステップ、浮き付きの誘導索などを設けることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態の水上浮体構造物によれば、ユニット10が広範囲に展開するので、津波の衝撃を分散、吸収し、海岸に到達する波のエネルギーをある程度減衰することができる。これにより、陸地の被害を軽減することが期待できる。また、通常時においては、継手15は、ユニット10の接合面内に格納されているので、負荷が連続的にかかることがなく、性能低下を防ぐことができる。また、継手15は、海水と接しないので、腐食のおそれが少ない。このため、保守整備に要するコストを低減することもできる。
また、本考案の水上浮体構造物(例えば、第6乃至第8の実施形態)によれば、メガフロートにより、広い面積を有する人工的な地盤を形成することができる。かかる人工的な地盤には、風力発電、太陽光発電の施設を設けることができ、その他の各種プラントを設けてもよい。また、漁礁として利用することもでき、設置海域の水産資源の保護に役立つ。
以上のとおり、本明細書では複数の形態について説明したが、本考案の適用範囲は、それぞれの形態に限定されるものではなく、例えば、これら複数の形態を組み合せることもできるし、各形態において記載した一部の構成を他の形態に適用することもできる。例えば、図1に示す第1の実施形態において、軸方向変更手段として回転テーブルを使用せずに、図10に示した第6の実施系形態の平行四辺形リンク機構を使用してもよい。また、図1に示した形態の軸方向変更手段に、図8に示した第4の実施形態の導水管の仰角変更の機能を適用してもよい。また、図1に示す形態において、複数の導水管の軸方向をまとめて変更するのではなく、図10に示した形態のように、一部の導水管の軸方向のみを変更し、他の導水管の軸方向を浮体の基準方向に一致させて固定してもよい。
[本考案の水上浮体構造物の配置の具体例]
以下、本考案の水上浮体構造物の配置の具体例について簡単に補足する。 図14は、本考案の水上浮体構造物の配置の具体例である(同図の背景は「海洋台帳 海上保安庁」による)。同図は、駿河湾の静岡・清水海岸の沖合の概ね水深50m以下の浅海域に、複数台の水上浮体構造物100を配置した場合の例を示す。
水上浮体構造物100は、水流(沿岸海流)8の一部を偏向流80として安倍川の河口域及びそれに接続する沿岸帯の方向に偏向する。これにより、河口域及び沿岸帯には、複雑な水流の流れが生じることとなり、河口付近に運ばれてきた砂礫を河口域及び沿岸帯において広く堆積させる効果を期待でき、粒径の小さく比重が軽い砂が、漂砂の移動限界水深を超えて深海に落ち込むのを防ぐこともできると考えられる。このようにして、浅海域に配置された水上浮体構造物100は、静岡・清水海岸及び三保砂嘴の維持形成にも寄与し得るのである。
水上浮体構造物100は、駿河湾内の波の周期及び波高を考慮し、少なくとも長さが500〜1000m級のメガフロートによって構成されることが好ましい。駿河湾内は、比較的波浪が小さいため、上記のようなメガフロートでも大きく動揺することはないと考えらえる。台風の接近又は荒天が予想される場合は、複数台の水上浮体構造物100を集約するように再配置してもよいし、近隣の清水港港内に退避させてもよい。なお、同図では、説明のため、メガフロートの大きさは、背景の地形図の縮尺と一致しておらず、実際の縮尺よりも大きく表示されている。
また、水上浮体構造物100は、海岸線に沿って列状に配置されており、津波発生時に継手を介して展開するように構成すれば、津波のエネルギーを分散し、これによって、陸側の被害を軽減できる可能性がある。また、水上浮体構造物100を河口付近に配置すれば、津波が川の上流に向かって逆流するのを低減することができ、河川両岸の被害を軽減できる可能性がある。
なお、図14に示した配置例は、単なる例示であり、本考案の水上浮体構造物は、他の海域、河川、湖沼などに配置することもできる。また、本考案の水上浮体構造物は、水流制御の機能によって、人為的な水流を生成できるので、湖沼などへの酸素の供給、水質改善などにも利用することができる。
1 浮体
2 導水管
3 水車
4 軸方向変更手段
5A 電動機
5B 発電機
6 係留手段
7 蓄電池
8 水流
10 ユニット
20 管群
80 偏向流
82 旋回流
100 水上浮体構造物

Claims (14)

  1. 水上に浮かぶ浮体と、
    前記浮体の下側に設けられた導水管と、
    前記浮体の基準方向に対して前記導水管の軸方向を変更する軸方向変更手段と、
    前記浮体を水上の所定の位置に係留する係留手段と、を備えることを特徴とする水上浮体構造物。
  2. 前記導水管の内部には、水車が設けられることを特徴とする請求項1に記載の水上浮体構造物。
  3. 前記水車の回転軸に機械的に接続され、前記水車を回転駆動する電動機を備えることを特徴とする請求項2に記載の水上浮体構造物。
  4. 前記水車の回転軸に機械的に接続され、前記水車の回転エネルギーを電力に変換する発電機を備えることを特徴とする請求項3に記載の水上浮体構造物。
  5. 前記電動機は、前記水車の回転エネルギーを電力に変換する発電機を兼用するように構成されたことを特徴とする請求項3に記載の水上浮体構造物。
  6. 前記導水管は、前記発電用の水車の上流側と下流側との圧力勾配を増加させ、前記発電用の水車に通流される流量を増大させる流量増大手段を有することを特徴とする請求項3乃至5の何れか1項に記載の水上浮体構造物。
  7. 前記浮体には、自然エネルギーを電力に変換する発電手段が設けられることを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載の水上浮体構造物。
  8. 平行配置された複数の導水管によってそれぞれ構成された複数の管群を備え、
    前記軸方向変更手段は、前記複数の管群のそれぞれの軸方向を別々に変更するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の水上浮体構造物。
  9. 浅海域に配置される水上浮体構造物であって、
    複数のユニットが相互に連結されて構成されたメガフロートと、
    平行配置された複数の導水管によって構成され、各ユニットの下側に設けられる管群と、
    前記メガフロートの基準方向に対して各管群の軸方向を変更する軸方向変更手段と、
    各管群に設けられた水車と、
    前記水車の回転軸に機械的に接続された電動発電機と、
    前記メガフロートを水上の所定の位置に係留する係留手段と、を備えることを特徴とする水上浮体構造物。
  10. 前記メガフロートは、自然エネルギーを電力に変換する発電手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の水上浮体構造物。
  11. 電力を蓄積する蓄電池を備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の水上浮体構造物。
  12. 前記複数のユニットは、津波の衝撃又は津波警報を受けると、各々を繋ぐ継手を介して網の目状に展開するように構成されたことを特徴とする請求項9乃至11の何れか1項に記載の水上浮体構造物。
  13. 前記浮体又は前記メガフロートは、水流の流れ方向に対して前記浮体又は前記メガフロートの基準方向を追従させる安定板を有することを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の水上浮体構造物。
  14. 前記浮体又は前記メガフロートは、水流の流れを受けることによって生じる旋回力を打ち消すための垂直舵を有することを特徴とする1乃至13の何れか1項に記載の水上浮体構造物。
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