JP3183717B2 - 腫瘍細胞の存在の有無の判定方法 - Google Patents

腫瘍細胞の存在の有無の判定方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、正常な外分泌腺細胞ま
たは組織中のLFA−1の存在の有無を判定すること、
または、該細胞または組織から分泌される分泌液中のL
FA−1の存在の有無を判定することを特徴とする腫瘍
細胞の存在の有無の判定方法に関する。さらに、該方法
を含む白血病などの癌の診断方法および該方法に用いる
キットに関する。
【0002】
【従来の技術】リンパ球機能関連抗原−1(lymphocyte
function associated antigen-1, LFA-1, 国際抗体分
類CD11a/CD18)は、インテグリン(integrin)β−2
(白血球インテグリン)ファミリ−に属し、末梢血液白
血球、リンパ組織およびいくつかの組織マクロフア−ジ
で見出されたものである(文献1)。LFA-1は、免疫反
応または炎症の際の、リンパ球−リンパ球間、リンパ球
−マクロファ−ジ間、または白血球−血管内皮細胞間の
細胞間相互作用に寄与する最も重要な接着分子のひとつ
である。また、LFA-1はα鎖(CD11a)およびβ鎖(CD1
8)からなるヘテロダイマ−である。
【0003】細胞間接着分子−1(intercellular adhe
sion molecule-1、ICAM-1、CD54)、ICAM-2およびICAM-
3は、LFA-1の生体内リガンドとして知られている。LFA-
1が種々の細胞/組織で見出されているのに対して、ICA
M-1のようなLFA-1リガンドは、血管内皮細胞およびサイ
トカイン活性化ケラチノサイトを含む種々の細胞に分布
している(文献5、6)。LFA-1リガンドは造血系細胞
および非造血系細胞のいずれでも発現されているが、非
造血系細胞でのLFA-1の発現は未だ報告されていない。
【0004】最近、LFA-1が造血系腫瘍細胞株で発現さ
れていることが報告されている(文献24)。また、細
胞から放出された可溶性ICAM-1(sICAM-1)が、細胞上
のICAM-1と腫瘍細胞上のLFA-1との結合を阻害するの
で、sICAM-1が癌の診断薬となりうることが示唆されて
いる(文献25)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】担癌患者の血液中の腫
瘍関連抗原(AFP、CEA、CA19-9、CA125他)の検出が広
く行なわれているが、これらは良性疾患にも検出され、
特異性の点で問題がある。よって、さらに特異性の高い
腫瘍関連抗原の発見、およびその抗原の検出に基づく精
度の高い癌の診断方法が望まれている。
【0006】また、これらの検査においては、患者から
採取した血液をサンプルとするので、血液採取など患者
に負担がかかる。よって、より簡便に採取できるサンプ
ルを試料とする癌の診断方法が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、非造血系
細胞のLFA-1に関する研究を行なううちに、膵臓腺癌患
者の種々の正常な外分泌組織にLFA-1が存在することを
見出した。LFA-1は正常な外分泌腺に局在し、その発現
は組織浸潤白血球またはリンパ球によるものではないこ
とが明らかになった。
【0008】正常な外分泌組織でのLFA-1の発現をさら
に確認するために、LFA-1のα鎖およびβ鎖に対するモ
ノクロ−ナル抗体を用いて、23例の悪性疾患患者と1
1例の良性疾患患者を調べたところ、悪性疾患患者の全
例で正常な外分泌腺においてLFA-1が発現されており、
良性疾患患者の全例で外分泌腺ではLFA-1が発現されて
いないことが確認された。さらに、LFA-1の発現は、原
発腫瘍または転移腫瘍由来の腫瘍細胞を有する器官に存
在する正常な外分泌腺において認められるだけでなく、
悪性疾患患者由来の腫瘍細胞を有しない器官の正常外分
泌組織においても認められた。例えば、膵臓癌患者であ
れば、腫瘍細胞が存在する膵臓中の正常な外分泌腺にLF
A-1の発現が観察されるだけでなく、腫瘍細胞が存在し
ない胃などの正常外分泌組織においても認められる。
【0009】すなわち、本発明により、悪性疾患患者の
外分泌組織中の正常な外分泌腺細胞がLFA-1を特異的に
発現してることが示された。
【0010】免疫組織学的分析により外分泌腺でのLFA-
1の発現が確認されたが、悪性疾患患者の正常な外分泌
腺にみられるLFA-1分子が、分泌や出血により外分泌腺
に移動した白血球産物である可能性が残る。しかし、細
胞表面および細胞質にLFA-1分子を発現する非造血系細
胞株が存在したので、その可能性は極めて低い。
【0011】LFA-1遺伝子の転写制御機構が明らかにな
っていないので、悪性疾患患者の外分泌腺にLFA-1が発
現される理由は不明である。腫瘍細胞または宿主細胞由
来の組織的に循環する因子が、外分泌腺におけるLFA-1
遺伝子の発現を誘発している可能性がある。TNF、IL-
1、またはIFN-γといった炎症性サイトカインが、種々
の細胞で、LFA-1の受容体であるICAM-1を含む表面分子
の発現を制御している(文献6、11−13)。従っ
て、これらのサイトカインが、LFA-1インデュ−サ−で
ある可能性がある。しかし、結核やウイルス性肝炎など
の微生物感染の際に血清中に大量の炎症性サイトカイン
が検出されるが(文献14−16)、外分泌腺における
LFA-1の発現はそのような感染症ではみられない(表
3)。よって、炎症性サイトカインが外分泌腺のLFA-1
インデュ−サ−であるとは考えられない。形質転換成長
因子-β(transforming growth factor-β、TGF-β)
は、種々の細胞に対して様々な機能を発現する腫瘍由来
因子として知られているが(文献17、18)、TGF-β
もまたLFA-1インデュ−サ−である可能性がある。
【0012】種々の細胞表面分子は、細胞質膜上に存在
するだけでなく、血清中に可溶化して存在している(文
献19−21)。可溶化したLFA-1分子が外分泌腺から
分泌されると、それが、呼吸器上皮におけるライノウイ
ルスおよびその細胞表面受容体(ICAM-1)との相互作用
を含むLFA-1またはICAM-1関連現象を制御すると推定さ
れる。
【0013】本発明は、生体内の腫瘍細胞の存在によ
り、その生体内の正常な外分泌腺にLFA-1が発現される
という発見に基づく。すなわち、腫瘍細胞がLFA-1を発
現しているという知見とは根本的に異なる発見に基づく
ものである。従って本発明は、正常な外分泌腺細胞また
は組織中のLFA-1の存在の有無を判定すること、また
は、該細胞または組織から分泌される分泌液中のLFA-1
の存在の有無を判定することを特徴とする腫瘍細胞の存
在の有無の判定方法を提供する。
【0014】正常な外分泌腺細胞とは、腫瘍化していな
い細胞を意味する。正常な外分泌腺組織とは、主に、腫
瘍細胞を含んでいない外分泌腺組織を意味する。しか
し、腫瘍細胞の転移などにより、正常な外分泌腺組織の
一部に腫瘍細胞が存在することがあるが、外分泌腺組織
中の正常な外分泌腺細胞が腫瘍細胞の存在によりLFA-1
を発現しており、本発明の方法に適用できる限り、腫瘍
細胞を含んでいる外分泌腺組織も、正常な外分泌腺組織
に包含される。腫瘍とは、主に悪性腫瘍を意味するが、
良性腫瘍を排除するものではない。
【0015】外分泌腺とは、汗腺、脂腺、唾液腺(耳下
腺、舌下腺、顎下腺)、食道腺、胃腺(噴門腺、幽門
腺)、十二指腸腺、小腸腺、膵腺、気管腺、気管支腺、
肺胞上皮腺、胆管など、全ての消化腺・生殖腺、汗腺・
粘液腺・絹糸腺を意味し、全ての外分泌腺を包含する。
【0016】LFA-1の存在の有無を判定するための試料
としては、通常、上記外分泌腺細胞または組織が存在す
る組織を用いることができる。すなわち、胃腺、汗腺、
皮脂腺、毛腺などが存在する、胃上皮の生検標本、毛根
など、採取が簡便な組織を用いればよい。さらには、気
管支上皮、肺胞上皮、十二指腸腺、膵臓小胞、総胆管な
どを試料としてもよい。本発明に用いる試料には、腫瘍
を有していると推定される組織に限定されず、任意の外
分泌腺細胞または組織を用いることができ、従来法に比
べ、試料の採取が容易になる。
【0017】また、LFA-1は外分泌腺から外分泌液中に
分泌されるので、汗腺から分泌される汗、皮脂腺から分
泌される皮脂、唾液腺から分泌される唾液などを試料と
すれば、LFA-1の存在の有無の判定がさらに容易にな
る。
【0018】LFA-1はα鎖およびβ鎖からなるヘテロダ
イマ−であり、このうちβ鎖はMac-1などの分子と共通
のもので、α鎖がLFA-1に特異的なものであるので、LFA
-1の存在の有無の判定は、α鎖に基づくのが好ましい。
また、後記実施例および表1および表2に示されるとお
り、α鎖(CD11a)に対する抗体を用いた方が、LFA-1の
存在の有無の判定において、好結果が得られた。
【0019】LFA-1の存在の有無の判定は、通常のタン
パク質検出方法に従い、LFA-1を検出することにより行
なうことができる。LFA-1を検出しうるタンパク質検出
方法としては、以下の方法などが挙げられる。
【0020】免疫組織化学染色法 LFA-1の存在の有無の判定には、すべての免疫組織化学
染色法を適用できる。酵素、放射性同位元素、螢光色素
などで標識した抗LFA-1抗体を用いて組織を染色する直
接法、抗LFA-1抗体を反応させた後、該抗体と反応する
標識抗体を用いる間接法のいずれをも適用することがで
きる。好適な方法としては、アビジン−ビオチン(AB
C)法、ストレプトアビジン−ビオチン(SAB)法、ペル
オキシダ−ゼ抗ペルオキシダ−ゼ(PAP)法が挙げられ
る。
【0021】EIAおよびRIA 正常な外分泌腺の抽出液や分泌液を試料とすれば、EI
AやRIAにより該試料中のLFA-1の存在の有無を判定
できる。ビ−ズ、ボ−ル、プレ−トなどに固相化した抗
LFA-1抗体と、酵素、放射性同位元素、螢光色素などで
標識した抗LFA-1抗体を用いるサンドイッチ法や、固相
化した抗LFA-1抗体に標識LFA-1と試料中のLFA-1を競合
反応させる競合法などが好適である。
【0022】ウエスタンブロッティング 正常な外分泌腺の抽出液や分泌液を、ナイロン膜やセル
ロ−ス膜にブロットした後、酵素、放射性同位元素、螢
光色素などで標識した抗LFA-1抗体を用いてLFA-1を検出
する(直接法)か、抗LFA-1抗体を反応させた後、該抗
体と反応する標識抗体を用いてLFA-1を検出する(間接
法)ことにより、試料中のLFA-1の存在の有無を判定で
きる。
【0023】免疫沈降法 正常な外分泌腺の抽出液や分泌液を、試験管などの容器
中で抗LFA-1抗体と免疫沈降反応させ、レ−ザ−ネフロ
メ−タ−などを用いて沈降度を測定する。ゲル内で免疫
沈降反応させるオクタロニ−法も適用できる。
【0024】LFA-1を検出しうるタンパク質検出方法と
しては、以上のものが好適な例として例示されるが、LF
A-1の存在の有無の判定はこれらタンパク質検出方法に
限定されるものではなく、LFA-1を検出しうる全て検出
方法が包含される。例えば、正常な外分泌腺細胞からmR
NAを抽出し、LFA-1遺伝子(文献26)とハイブリダイ
ズしうるプライマ−を用いて、RT-PCR法に従い該mRNAか
らLFA-1 cDNAを増幅することにより、LFA-1を検出しう
る。
【0025】LFA-1の存在の有無の判定は、LFA-1と特異
的に反応する試薬を用いると、より正確、簡便に行なう
ことができる。該試薬としては、ICAM-1、ICAM-2、ICAM
-3、sICAMなど天然のLFA-1リガンドや、LFA-1に対する
抗体を用いることができるが、入手の容易性などの点か
ら、抗体が好ましい。抗体は、ポリクロ−ナル抗体およ
びモノクロ−ナル抗体のいずれも用いることができる
が、モノクロ−ナル抗体が好ましい。さらに、前記の理
由から、LFA-1のα鎖に対する抗体が好ましい。
【0026】後記実施例に示されるように、LFA-1は悪
性腫瘍患者の外分泌腺に特異的に検出され、外分泌腺以
外の組織では検出されず(表1および表2)、かつ、良
性疾患患者の外分泌腺および外分泌腺以外の組織のいず
れでも検出されない(表3)。従って、本発明の方法
は、白血病などの癌の診断に有用である。
【0027】本発明は、上記方法に用いる、LFA-1と特
異的に反応する試薬を含有するキットを提供する。この
キットは、通常のタンパク質検出キットと同様に提供さ
れうる。すなわち、LFA-1と特異的に反応する試薬の他
に、発色剤などを含む検出用試薬、反応用緩衝液、溶解
液、希釈液、洗浄液、反応停止液など、LFA-1の検出に
必要なものを含みキット化すればよい。LFA-1と特異的
に反応する試薬は、酵素、放射性同位元素、螢光色素な
ど検出可能な標識化合物により標識されているものが好
ましい。また、該試薬は、標識化合物により標識されて
いるもの(抗体など)と特異的に結合しうるものであっ
てもよい。該試薬としては、前記のとおりICAMなど天然
のLFA-1リガンドや、LFA-1に対する抗体を用いることが
できるが、入手の容易性などの点から、抗体が好まし
い。
【0028】本明細書で引用した文献は以下のとおり。
【0029】文献 1:Kishimoto TK ら、Adv lmmunol 1
989, 46:149-182. 文献 2:Simmons D ら、Nature 1988, 331:624-627 文献 3:Staunton DE ら、Nature 1989, 339:61-64 文献 4:de Fougerrolles AR ら、J Exp Med 1991, 17
4:253-267 文献 5:AR, Springer TA、J Exp Med 1992, 175:185-1
90. 文献 6:Symington FW ら、J Immunol 1991, 146:2169-
2175 文献 7:Dustin ML ら、J Exp Med 1988, 167:1323-134
0 文献 8:Tedder TF ら、Eur J Immunol 1986, 16:1539-
1543 文献 9:Dorken B ら、Oxford Univ Press, Vienna, Au
stria 1989. 文献10:Yamada A ら、Cell lmmunol in press. 文献11:Matsuyama T ら、J Exp Med 1989, 170:1133-1
148 文献12:Pober JS ら、J lmmunol 1986, 137:1893-1896 文献13:Mantovani A ら、Immunol today 1989, 10:370
-375 文献14:Scuderi P ら、Lancet 1986, 2:1364-1365 文献15:Shimamoto K ら、Chest 1991, 99:1103-1107 文献16:Kakumu S ら、Clin Immunopathol 1990, 56:54
-65 文献17:Hilton DJ ら、J Cell Bioche 1991, 46:21-26 文献18:Hooper WC、Leuk Res 1991, 15:179-184 文献19:Seth R ら、Lancet 1991, 338:83-84 文献20:Rubin LA ら、J lmmunol 1985, 136:3172. 文献21:Fujimoto J ら、J Exp Med 1983, 159:752 文献22:Staunton DE ら、Cell 1990, 61:243-54. 文献23:Marlin SD ら、Nature 1990, 3
44:70−72 文献24:Strassmann G ら、J Immunol 1986, 136:432
8 文献25:カナダ特許公開第2,008,368号 文献26:Larson, SR ら、J Cell Biol 1989, 108:703-7
12
【0030】
【実施例】
材料と方法抗体 モノクロ−ナル抗体2F12(anti-CD11a, IgG1)(文献
6)、10F12(anti-CD18, IgG1)(文献6)、HVS6B6
(anti-CD11a, IgG1)(文献10)および8F2(anti-CD49
d, IgG1)(文献11)は、S.F.Schlossman博士およびC.M
orimoto博士(Dana-Farber Cancer Institute, Boston,
MA)から提供いただいた。モノクロ−ナル抗体YH-384
(anti-CD11a, IgG3)、JML-H11(anti-CD11b, IgG2a)
(文献9)およびYH-370(anti-CD54, IgG1)は本発明
者らが調製したものである。アフィニティ−精製したウ
サギ抗マウスIgGポリクロ−ナル抗体は、Jackson Immun
o-Research Laboratories(West Grove, PA)から購入
した。FITC標識F(ab’)2山羊抗マウスIgは、Tago(Burl
ingame, CA)から購入した。
【0031】免疫組織学的試験 本発明に用いた解剖標本は、Kojiro博士(Department o
f Pathology, KurumeUniversity)から提供いただい
た。組織学的試験のため、ホルマリン固定し、パラフィ
ンに包埋した。凍結切片の調製には、OCT化合物(Miles
Elkhart, IN)浸漬標本を用いた。クリオスタット切片
を5μmに切断、風乾し、室温で5分間、クロロホルム-
アセトン(1:1)で固定した。全ての切片をラップ
し、使用するまで−80℃で保存した。
【0032】間接免疫ペルオキシダ−ゼ染色は、アビジ
ンビオチン複合体(ABC)キット(Vector Laboratorie
s, Burlingame, CA)またはストレプトアビジンビオチ
ン複合体(SAB)キット(Dako, Glostrup, Denmark)を
用いて行なった。染色前に、ホルマリン固定切片を0.
1%ペプシン(Pepsin A, 1:60,000, Sigma, St Louis,
MO)で処理した。
【0033】細胞株と細胞培養 膵臓細胞株PANC-IはH.Tsuda博士(Kurume University H
ospital)から提供いただいた。その他の非造血系細胞
株は、Japanese Cancer Research Resources Bank(JCR
B, Tokyo)から分与された。細胞株は、非働化FCSを1
0%含むRPMI1640培地または新生子牛血清を5〜20%
含むE-MEM中で37℃で維持した。免疫螢光分析のた
め、細胞を70%コンフルエンシ−(confluency)まで
培養し、0.25%トリプシン(1:250、DIFCO、Detroi
t、Mich)-0.5mM EDTA-PBS(pH7.6)を用いて採取
し、染色に用いた。
【0034】フロ−サイトメトリ−分析 細胞表面抗原(LFA-1、Mac-1など)の発現を、間接免疫
螢光法により検出した。要約すると、1×106個の細
胞を、適切なモノクロ−ナル抗体と、4℃で30分間培
養した。この細胞を氷冷PBSで洗浄し、FITC標識山羊抗
マウスIg抗体(1:125希釈)で、4℃で20分間染色し
た。洗浄後、その細胞を1%ホルムアルデヒド-PBSで固
定し、分析まで4℃で保存した。この細胞をフロ−サイ
トメ−タ−CYTRON(Ortho、Westwood、MA)で分析し
た。
【0035】細胞質抗原の発現は、以下の方法で検出し
た。細胞スミアをサイトスピン(1500rpm、5分)により
調製し、5分以上風乾した。この細胞を、室温で5分間
メタノ−ル-アセトン(1:1)で固定し、間接免疫螢光法
により染色した。染色したサンプルを螢光顕微鏡で調べ
た。
【0036】結果膵臓外分泌腺でのLFA-1分子の発現 LFA-1αとLFA-1βは造血系細胞上に広く分布している。
LFA-1の発現が造血系細胞に限定されるかどうかを明ら
かにするため、膵臓腺癌患者由来の種々の異なる組織標
本を、抗LFA-1α、抗LFA-1β、および抗CD11b(Mac-1)
で染色した。その結果、モノクロ−ナル抗体2F12に認識
されるLFA-1αは、SAB法で茶色粒子として正常な膵臓外
分泌腺で強く発現されていた。同様に、LFA-1αのエピ
ト−プである が2F12認識エピト−プとは異なるHVS6B6
エピト−プは、膵臓小胞の上皮および細胞質で明らかに
発現されていたが、ランゲルハンス島では全く発現され
ていなかった。明確に染色された細胞が浸潤白血球とは
異なることを、ヘマトキシリンを用いる核染色により細
胞形態学的に確認した。
【0037】LFA-1はαβヘテロダイマ−であるが、α
鎖(CD11a)が正常な外分泌腺の上皮および細胞質で検
出された。β鎖(CD18)は比較的弱く検出された。CD11
bを認識するH11抗体は、膵臓の外分泌腺および実質細胞
のいずれをも染色しなかった。抗YH-370(CD54)および
抗8F2(CD49d)(いずれのIgアイソタイプも2F12抗体ま
たはHVS6B6抗体と同じ)は、この組織標本の染色におい
て陰性であった。従って、以下の実験では、2F12抗体お
よびHVS6B6抗体をLFA-1α鎖発現の検出に用いた。
【0038】悪性疾患患者由来の組織上のLFA-1分布 正常な外分泌組織上のLFA-1の発現が膵臓腺癌患者の膵
臓に限定されるかどうかを明確にするため、13例の他
の悪性疾患患者由来の組織上のLFA-1の発現を調べた。
表1および表2に示すとおり、正常な外分泌腺上でのLF
A-1の発現は、膵臓に限定 されるものではなく、悪性疾
患患者の胃腺、十二指腸腺、総胆管、気管支上皮および
肺胞上皮でも検出された。これらの結果は、正常な外分
泌腺上のLFA-1の発 現が腫瘍を有している器官に限定さ
れず、転移の有無にかかわらず他の器官でも検出される
ことを示している。膵臓のランゲルハンス島のような内
分泌腺や、細尿管、糸球体、肝実質細胞のような非外分
泌組織は、LFA-1のα鎖とβ鎖のいず れも発現していな
かった。表3に示すとおり、良性疾患患者の外分泌腺で
はLFA-1は発現されていない。
【0039】さらに、舌癌患者(舌に原発巣があり、転
移は観察されていない症例)の顎下腺において、腺組織
に染色像が観察された。また、同症例の頚部皮膚組織に
おいて、毛根および汗腺に陽性染色像が認められた。
【0040】外分泌腺上のLFA-1の発現と悪性疾患との関係 悪性疾患患者由来の外分泌腺でのLFA-1の発現が確認さ
れたが、外分泌腺でのLFA-1の発現が悪性疾患と相関す
るかどうかは不明であった。悪性疾患とは対照的に、3
例の異なる良性腫瘍について調べた外分泌組織のすべて
がLFA-1α鎖とβ鎖のいずれも発現していなかった。こ
れらの結果は、外分泌腺上でのLFA-1の発現と病理学的
悪性度との相関を示している。
【0041】胃の内視鏡生検標本が患者から入手可能で
あるので、6例以上の胃の良性疾患および9例の胃の悪
性疾患由来の胃標本を、外分泌腺でのLFA-1の発現が腫
瘍細胞の分化段階と相関するかどうかについて調べた。
α鎖β鎖のいずれも、胃潰瘍のような胃の良性疾患由来
の胃生検標本からは検出されなかった。対照的に、胃の
悪性疾患の9例すべてにおいて、その外分泌腺でLFA-1
が発現されていた。LFA-1の発現と悪性疾患の段階には
関連はないようである。
【0042】培養細胞株でのLFA-1の分布 免疫組織学的分析により、悪性疾患患者の正常な外分泌
腺でLFA-1が発現していることが明らかになったが、白
血球由来LFA-1分子が外分泌腺へ移動している可能性が
残る。従って、LFA-1を発現する非造血系細胞株を探索
すべく、LFA-1の発現につき、19の非造血系細胞株を
調べた。試験に用いた非造血系細胞株のうち、PANC-Iお
よびMKN45以外の株は、その表面または細胞質にLFA-1お
よびCD11bを発現していなかった。PANC-IおよびMKN45
は、その表面上に、LFA-1α鎖の2F12エピト−プおよびH
VS6B6エピト−プを発現しており、細胞質中ではさらに
強く発現している。PANC-Iは膵臓管細胞腫瘍であり、MK
N45は胃起源の腺癌細胞株である。培養上澄中に分泌さ
れる成分の生化学的および免疫化学的定量により、両細
胞株が外分泌機能を維持していることが明らかになっ
た。免疫組織学的分析に加え、これらの結果は、外分泌
腺で発現されるLFA-1分子が外分泌腺細胞自体によって
産生されていることを示している。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【発明の効果】本発明は白血病などの癌の臨床診断に有
用である。患者が悪性腫瘍を有しているならば、胃のよ
うな外分泌組織の正常な外分泌腺でLFA-1を発現してい
るので、その生検標本をLFA-1につき抗体で染色すれ
ば、癌の診断が可能になる。さらに、LFA-1は外分泌液
中に分泌されるので、汗腺、皮脂腺などから分泌される
汗、皮脂を診断試料とすることができ、簡便な診断が可
能になる。また、毛根部には毛腺、汗腺、皮脂腺などが
存在するので、毛根も診断試料とすることができる。本
発明の用いる試料は、腫瘍細胞を有していると推定され
る組織に限定されないので、従来の方法と比べ、試料の
採取が容易である。
フロントページの続き (72)発明者 横山 三男 福岡県久留米市西町北畑1015−1−601 (56)参考文献 特開 平3−157397(JP,A) 特表 平4−501365(JP,A) Clinical and Expe rimental Immunolog y,85,3−8(1991) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/574 G01N 33/53 BIOSIS(DIALOG) CA(STN)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正常な外分泌腺細胞または組織中のLF
    A−1の存在の有無を判定すること、または、該細胞ま
    たは組織から分泌される分泌液中のLFA−1の存在の
    有無を判定することを特徴とする腫瘍細胞の存在の有無
    の判定方法。
  2. 【請求項2】 該外分泌腺組織が腫瘍細胞を含んでいな
    いことを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
  3. 【請求項3】 該外分泌腺細胞または組織が存在する組
    織中のLFA−1の存在の有無を判定することを特徴と
    する請求項1に記載の判定方法。
  4. 【請求項4】 該LFA−1がLFA−1のα鎖である
    ことを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
  5. 【請求項5】 LFA−1と特異的に反応する試薬によ
    りLFA−1の存在の有無を判定することを特徴とする
    請求項1に記載の判定方法。
  6. 【請求項6】 該試薬が抗体である請求項5に記載の判
    定方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の方法を
    含む癌の診断方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の方法に
    用いる、LFA−1と特異的に反応する試薬を含有する
    キット。
  9. 【請求項9】 該試薬が抗体である請求項8に記載のキ
    ット。
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