本考案の課題は、高能率かつ高性能なスライス作業を維持しつつ、パン片スライス時に発生するパン屑による弊害を安価かつ容易に抑制ないし除去しうるパンスライス装置を提供することにある。
課題を解決するための手段及び考案の効果
上記課題を解決するために、本考案のパンスライス装置は、
水平面に対して板面が鋭角に傾斜した姿勢で設けられ、ブロック状のパン塊を所定のスライス厚の複数のパン片にスライスする円板状の回転スライサーと、
その回転スライサーを回転駆動するスライサー回転装置と、
それら回転スライサー及びスライサー回転装置を搭載し、位置固定のガイドフレームに案内されて前記回転スライサーの傾斜姿勢と平行な軌道に沿って往復移動するスライダーと、
そのスライダーを往復駆動するスライサー往復駆動装置とを備え、
前記スライダーには、前記回転スライサーの板面に対して油脂類を塗布、滴下、噴射等により給油する給油部材が該板面に対向して配置され、その給油部材は前記スライダーにより前記回転スライサーと一体的に往復移動することを特徴とする。
このように、回転スライサーの傾斜姿勢と平行な軌道に沿ってスライダーが往復移動する傾斜丸刃回転方式において、回転スライサーの板面に対向するようにスライダーに配置された給油部材が回転スライサーと一体的に往復移動することにより、傾斜丸刃回転方式に基づく高能率かつ高性能なスライス作業を維持しながら、パン片スライス時に発生するパン屑による弊害を安価かつ容易に抑制ないし除去することができる。
すなわち、パン屑が回転スライサーの板面に付着(堆積)しにくくなり、パン屑の保有水分や粘着力による悪影響を受けにくくなって、回転スライサーの切れ味(スライス性能)が長期にわたり持続する(回転スライサー寿命の延期)ので、スライス面の平坦が維持されてパン片の変形が抑制ないし防止される(商品価値の持続)。また、パン屑が回転スライサーの板面等に散乱・付着(堆積)しにくくなり、回転スライサー等でのカビや錆の発生が抑制ないし防止される(衛生状態の向上)から、パン屑を除去するためにスライス作業を頻繁に中断(運転を停止)することからの解放(作業能率の向上)も可能となる。
なお、給油部材には、油脂類を回転スライサーの板面(上下面すなわち表裏面)に塗布するブラシやパッド、油脂類を回転スライサーの板面に滴下したり噴射したりするノズルやパイプ等を含む。また、油脂類には、例えば大豆油、菜種油、胡麻油、落花生油、コーン油等の植物油や食品用離型油の他、バター、マーガリン等の脂肪も含む。
上記給油部材が、回転スライサーの傾斜姿勢において最高位となる部位の近傍(例えば周縁部)に配置されることにより、給油部材への給油スペースを広く取れるとともに、給油部材で給油された油脂類が板面全体に広がりやすくなる。
上記給油部材が、回転スライサーの板面に接触して配置され、回転スライサーの回転に連れて油脂類を板面に塗布する場合には、給油された油脂類が板面に定着しやすい。
上記給油部材が、油脂類を含浸させたフェルト製のオイルパッドである場合には、パン片製造コスト(そのうち特にメンテナンス費用)を安価にしながら、油切れを防止できる。
上記スライダーには、回転スライサーの板面に付着したパン屑を除去する除去部材が板面に対向して配置され、その除去部材はスライダーにより回転スライサーと一体的に往復移動することができる。
このように、除去部材によりパン屑を除去することによって、傾斜丸刃回転方式に基づく高能率かつ高性能なスライス作業を維持しながら、パン片スライス時に発生するパン屑による弊害を安価かつ容易に抑制ないし除去することができる。
なお、除去部材には、回転スライサーの板面(上下面すなわち表裏面)からパン屑を掻き落すスクレーパーや、パン屑を吹き飛ばすエアガン、噴射ノズル等を含む。スクレーパーは、(例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)のような)硬質プラスチック製であっても、(例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムのように柔軟性を有する)ゴム製又はエラストマー製であってもよい。
上記除去部材が、回転スライサーの傾斜姿勢において最高位となる部位の近傍(例えば周縁部)に配置されることにより、除去部材の取付スペースを広く取れるとともに、除去部材で除去されたパン屑が板面から脱落しやすくなる。
上記除去部材が、回転スライサーの板面に接触又は近接して配置され、回転スライサーの回転に連れて板面からパン屑を掻き落す場合には、除去されたパン屑が板面から脱落しやすい。
上記除去部材が、硬質プラスチック製のスクレーパーである場合には、パン片製造コスト(そのうち特にメンテナンス費用)を安価にしながら、長期にわたり安定したパン屑除去が行える。なお、スクレーパーに黒色等(白色以外の)着色を施しておけば、パン片やパン屑(白色)との見分けが容易となり、スクレーパーの破片がサンドイッチ等の製品に混入するのを防止できる。
上記給油部材が、除去部材よりも回転スライサーの回転方向下流側に配置されるときには、除去部材によってパン屑を除去した後の清浄な板面に給油部材からの給油が行われるので、パン屑による弊害を一層効率的に抑制ないし除去しうる。
上記給油部材及び除去部材が、それぞれ回転スライサーの周縁部に配置される場合には、回転スライサー(丸刃)の刃先部分に対するパン屑の除去と給油とが十分に行われる。
上記給油部材及び除去部材が、それぞれ回転スライサーの両側の板面に配置される場合には、回転スライサー(丸刃)の上下両面すなわち表裏両面に対するパン屑の除去と給油とが十分に行われる。
以下、本考案の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。図1は本考案に係るパン塊搬送装置を含むパンスライス装置の一実施例を示す概略正面図である。図1に示すパンスライス装置1は、図示しないオーブン等でブロック状に焼き上げたパン塊100を、例えばサンドイッチに適したスライス厚αの複数のパン片101にスライスするために用いられる。なお、ブロック状のパン塊100は一般的には直方体に似た形状であり、そのスライス面は擬似的な矩形状となるが、以下の記載においてはパン塊100を正四角柱形状、そのスライス面を正方形として扱う場合がある。
このパンスライス装置1は、パン塊100を下方へ間欠的に送るパン塊送り装置2と、パン塊送り装置2で送られたパン塊100の下端部をスライスする円板状の回転スライサー3と、回転スライサー3を往復駆動するスライサー往復駆動装置4と、回転スライサー3でスライスされた複数のパン片101を順次下流に搬送する搬送コンベア5とを備えている。搬送コンベア5は、回転スライサー3の下方に位置する第一ベルトコンベヤ51と、その下流側に位置する第二ベルトコンベヤ52と、さらにその下流側に位置する第三ベルトコンベヤ53と、さらに下流側にてサンドイッチ工程へ向かう第四ベルトコンベヤ54とを含む。
第二ベルトコンベヤ52には、パン片101の耳部102を切断する耳落とし装置6が設けられている。第二ベルトコンベヤ52(上流側のコンベヤ)の終端部(下流側端部)及び第三ベルトコンベヤ53(下流側のコンベヤ)の始端部(上流側端部)に跨って、耳部102をパン粉104に粉砕する破砕装置7と、パン粉104を風力によって所定の位置に運ぶ風力搬送装置8とが設けられている。なお、パンスライス装置1には、パン塊100を1個ずつパン塊送り装置2へ供給するパン塊供給装置91と、耳落とし装置6による耳落とし前に第一ベルトコンベヤ51上のパン片101の位置を一定の状態に揃える整列装置92と、1個のパン塊100から最初と最後にスライスされる端部パン片105(図7参照)を第一ベルトコンベヤ51上から除去する除去装置93も設けられ、パン塊供給装置91はパン塊送り装置2とともにパン塊100を回転スライサー3へ搬送するパン塊搬送装置95を構成している。
また、第三ベルトコンベヤ53にはバター塗布装置94が設けられ、ホッパー94a内に貯留されたバター(例えばからしバター)を回転する転写ローラー94bの表面に一時的に塗り、耳部102を切り落とされた耳なしパン片103のスライス面にそのバターを塗布する(一種の転写形態をとる)。補助ローラー94cは、転写ローラー94bの押し付けによる耳なしパン片103及び第三ベルトコンベヤ53の下方への撓み量を所定範囲内に留めるために、転写ローラー94bと対向する形で第三ベルトコンベヤ53と下面側で接している。転写ローラー94bはモータ等によって回転駆動されるが、補助ローラー94cは非駆動の遊転状態であってもよい。
円板状の回転スライサー3は、第一ベルトコンベヤ51の搬送面51a(水平面)に対して、板面(表面3a及び裏面3b;図5参照)がスライス開始側ほど高くなるように、傾斜角θで鋭角(θ=5°〜30°程度)に傾斜した姿勢で設けられている。スライサー往復駆動装置4は、回転スライサー3を傾斜した姿勢と平行な鋭角傾斜方向へ往復駆動する。スライサー往復駆動装置4は、斜め下向きとなる往ストロークで回転スライサー3にスライス動作を行わせ、斜め上向きとなる復ストロークで退避動作を行わせる。パン塊送り装置2は、上方からパン塊100を回転スライサー3の往復駆動の軌道と交差する向き(図では直交する向き)に、スライス厚αに対応する距離ずつ間欠的に送る。このようにパン塊100を送る向きと回転スライサー3の傾斜軌道とが直交しているので、直角切りのパン片101にスライスされる。また、パン塊送り装置2の送り方向は、第一ベルトコンベヤ51の搬送面51aに垂直な方向に対して、傾斜角θの傾きを有している。
パン塊供給装置91は、複数の縦枠91bで連結され、固定の案内枠91cにガイドされて、第一ベルトコンベヤ51の搬送面51a(水平面)と平行な水平方向に周回移動する垂直コンベヤ91aを有する。直方体形状あるいは正四角柱形状のパン塊100を縦枠91b間に1個ずつ挿入し、垂直コンベヤ91aを周回させると、先頭のパン塊100は案内枠91cによってパン塊送り装置2の上方で斜め(傾斜角θ)に姿勢変更されて落下し、パン塊送り装置2へ供給される。
図6は本考案に係るパン塊送り装置の概略構成を示す正面図である。パン塊送り装置2は、パン塊100を挟持するためのパン塊挟持面21aを対向して設けた一対の送りベルト21と、その一対の送りベルト21を同期させて間欠的に下向きに送るための歯車伝動装置23(駆動装置)とを含む。送り用モータ22の回転を各送りベルト21へ同時に伝達するために、歯車伝動装置23は1本の駆動軸24上に3組の歯車(図ではかさ歯車)が配置され、送りベルト21にはタイミングベルトが用いられている。また、送りベルト21のパン塊挟持面21aには碁盤目状に複数の突起21bが形成され、パン塊100の表面に突起21bを押し付けてパン塊100のずり落ち等を防ぐことにより、パン片101のスライス厚αを一定に維持している。なお、送りベルト21のパン塊挟持面21aは、パン塊100の4つの側面のうち、対向するいずれか2面を挟持すればよい。
図2はパンスライス装置の要部(主として回転スライサー及びスライサー往復駆動装置)の概略構成を示す正面図及び底面図である。回転スライサー3は、第一ベルトコンベヤ51(搬送面51a)に対してスライス開始側ほど高くなるように鋭角に傾斜した姿勢(傾斜角θ)で往復移動枠31(スライダー)に支持され、往復移動枠31に固定されたスライサーモータ32によりスライサー回転用タイミングベルト33(スライサー回転装置)を介して回転駆動される。往復移動枠31は、第一ベルトコンベヤ51に対してスライス開始側ほど高くなるように鋭角に傾斜した鋭角傾斜方向に沿って往復動するように、位置固定の固定枠41(ガイドフレーム)で案内される。スライサー往復駆動装置4は、往復移動枠31と固定枠41とに連結されており、往復移動枠31と共に回転スライサー3とスライサーモータ32とを一体的に、鋭角傾斜方向において固定枠41に案内させつつ往復動させる。
具体的には、固定枠41に固定された往復駆動用モータ42の回転は、ベルト43により、固定枠41に回転可能に支持された駆動軸44及び駆動軸44と一体の回転アーム45に伝達される。往復移動枠31には2本のアーム保持レール31bが前後方向(第一ベルトコンベヤ51の進行方向と直交する方向)に固定され、回転アーム45の先端部45aはアーム保持レール31b,31bの間(すなわち溝)に前後方向へスライド可能に挿入されている。往復移動枠31には2つの直線レール31aが左右方向(第一ベルトコンベヤ51の進行方向)に平行に固定され、これらの直線レール31aは固定枠41に平行に固定された左右方向の2つの直線ガイド41aで各々案内される。移動側の直線レール31aと固定側の直線ガイド41aとによって直線状案内部材(通称リニアガイド)を形成しているが、固定側をレール、移動側をガイドとしてもよい。
したがって、回転アーム45が図2(B)の位置から図3の位置へと180°回転するとき、回転アーム45の先端部45aがアーム保持レール31b,31b間を前後方向へ摺動するとともに、直線レール31aと直線ガイド41aとの摺動案内によって往復移動枠31は固定枠41に対して左右方向に直線移動する。このように、固定枠41で回転スライサー3とスライサーモータ32とを一体的に案内して往復動させることにより、スライス時における回転スライサー3の回転及び鋭角傾斜方向での往復動(鋭角傾斜軌道)が安定するので、パン片101のスライス面が見た目にもきれいになる。なお、回転アーム45とアーム保持レール31b,31bとは往復スライダクランク機構を構成しているが、アーム保持レール31b,31bの間をカムの溝と考えた場合には、回転アーム45の先端部45aをカムホロワとして捉えることもできる。
図2には長孔とねじによる傾斜角θの調節機構46も記載されている。調節機構46により回転スライサー3及びスライサー往復駆動装置4の傾斜角θを例えば±5°程度の範囲内で調節して、パン塊100の焼き方、パン片101の大きさ(特にスライス厚α)等に応じてパン片101の落下姿勢を微調整することができる。
また、図2に示すように、往復移動枠31の先端部(パン塊送り装置2側)には板状のパン片ガイド34(案内部材)が固定され、回転スライサー3の往復動と同期して一体的に移動する。このパン片ガイド34の先端は、パン塊100に切り込む回転スライサー3の刃先の直後方かつ直下に位置する。パン片ガイド34は、スライス時において回転スライサー3でスライスされるパン片101が斜め姿勢で第一ベルトコンベヤ51上に落下するようにパン片101をガイドするとともに、回転スライサー3の下面側に位置するスライサー回転用ベルト33、プーリ33a、回転軸33b等がパン片101と干渉しないようにカバーする。パン片ガイド34は、回転スライサー3の傾斜軌道に対し仰角となる案内角δを形成して交差する(δ=10°〜60°程度)ように配置されている。
ここで、パン片ガイド34の案内角δ(例えばδ≒30°)は傾斜軌道の傾斜角θ(例えばθ≒15°)よりも大に設定されているので、回転スライサー3によってスライスされるパン片101をスライス開始側(第一ベルトコンベヤ51の搬送方向では下流側)ほど下向きとなるような斜め姿勢にガイドすることができる(図4(a)参照)。このように、パン片ガイド34によってパン片101を斜め姿勢にガイドし、最初に着地する側を定めることができるのでパン片101の落下姿勢が安定し、落下位置の乱れを小さくすることができる。
さらに、往復移動枠31の先端部には板状のパン塊ストッパ35(保持部材)も延設され、回転スライサー3と一体的に移動する。このパン塊ストッパ35は、パン塊100の下端部を下側から支持する支持部35aと、回転スライサー3でスライスされたパン片101を通過させる矩形状の窓孔35bとを有する。支持部35aでパン塊100を下側から支持することによって、例えばパン片101が厚み方向に必要以上に圧縮されないように送りベルト21の送り力を加減することができ、パン片101のスライス厚αの不揃いを防止することができる。ただし、パン塊送り装置2によるパン塊100の間欠送り及び保持によってパン片101のスライス厚αが確保できる場合には、支持部35aを設けなくてもよい。
そして、窓孔35bは回転スライサー3の下方においてパン片ガイド34と対向して配置されている。窓孔35bとパン片ガイド34との対向配置により、回転スライサー3によってスライスされるパン片101を、回転スライサー3のプーリ33a、回転軸33b等との干渉から保護しつつパン片ガイド34で斜め下向きにガイドし、窓孔35bへ誘導することが容易となる。
なお、図3に示すように、パン塊100のスライス面を一辺の長さLSの正方形と考えたとき、切断に必要なスライサー直径DMは、
DM>21/2×LS
と表される。また、切断に必要な回転スライサー3の移動ストロークST(すなわち回転アーム45の旋回直径)は、
ST>21/2×LS
と表される。このように、この実施例ではパン片ガイド34を有しているので、スライサー直径DMは一辺の長さLSの21/2≒1.41倍より大きければよく、移動ストロークSTはスライサー直径DMと同等又はそれ以上となる。
図4はパン塊からパン片をスライスする動作を示す説明図である。パン塊送り装置2がパン塊100をスライス厚α分送って停止した状態で、回転スライサー3が鋭角傾斜軌道に沿った往ストロークによりパン塊100の下端部からパン片101をスライスする(図4(A))。回転スライサー3のスライス動作時には、窓孔35bは、回転スライサー3でスライスされパン片ガイド34でガイドされるパン片101を通過(落下)させるとともに、支持部35aは、スライス動作を妨げないようにパン塊送り装置2の向こう側に退避している。
次に、回転スライサー3が復ストロークによりパン塊100から退避するとともに、パン塊送り装置2がパン塊100を次のスライス厚α分送る(図4(B))。回転スライサー3の退避時には、支持部35aはパン塊送り装置2の下方に位置し、次にスライスするスライス厚αを保った状態でパン塊100の下端部を保持するとともに、窓孔35b及びパン片ガイド34は回転スライサー3とともに退避している。
パン塊送り装置2が停止した状態で、再び回転スライサー3が鋭角傾斜軌道に沿った往ストロークを移動してパン塊100の下端部から次のパン片101をスライスする(図4(C))。このように、パン塊送り装置2によるパン塊100の送り動作と回転スライサー3によるスライス動作とを協調して行うことにより、スライス作業が効率的に行える。なお、パン塊100から複数のパン片101をスライスして最後に残った端部パン片105(図7参照)が所定のスライス厚αに満たない場合、送りベルト21による送りや保持ができなくなっても、支持部35aによって端部パン片105を支持することができる。このとき回転スライサー3の往ストローク移動によって端部パン片105をスライスすることはできないが、端部パン片105はパン片ガイド34でガイドされ窓孔35bを通過して、第一ベルトコンベヤ51上に落下する。
そして、回転スライサー3によってスライスされたパン片101は搬送面51aに対し鋭角に傾いた姿勢(例えば10°〜30°程度の斜め姿勢)で第一ベルトコンベヤ51上に落下し、平行に保持されて下流へ搬送される。具体的には、回転スライサー3によってスライスされるパン片101は、パン片ガイド34によってスライス開始側(第一ベルトコンベヤ51の搬送方向では下流側)ほど下向きとなるような斜め姿勢にガイドされる(図4(A))。斜め姿勢で落下するパン片101は、斜め方向の下方側端部101aにて第一ベルトコンベヤ51の搬送面51a(の搬送下流側)に着地し(図4(B))、着地した下方側端部101aを支点として上方側端部101bが下向きに回動して搬送面51a(の搬送上流側)に着地することにより、スライス面全体が円滑に搬送面51aに保持される(図4(C))。
このように、搬送面51aに対してパン片101が落下するときには、パン片ガイド34によってパン片101は斜め姿勢にガイドされ、パン片101は全体が撓んで折れ曲がったり端部が垂れ下がったりせずに安定した斜め姿勢で落下する。すなわち、斜め姿勢の低い側の端部(下方側端部101a)から搬送面51aに着地し、すぐに高い側の端部(上方側端部101b)も着地するので、落下姿勢が乱れにくく落下位置の乱れも小さくなる。
図5は給油部材としてのオイルパッド及び除去部材としてのスクレーパーの概略構成を示す説明図である。スライダー31の底板31cに設けられた開口31dには起立壁31eが固定され、この起立壁31eには、先端部が二股に分割形成されたオイルパッド36(オイルの塗布具)が取り付けられ、その先端部は回転スライサー3の上下板面(表面3a(上面)及び裏面3b(下面))に各々対向するように配置されている。
具体的には、このオイルパッド36はフェルト製であり、回転スライサー3の傾斜姿勢において最高位となる部位の周縁部に、板面3a,3bに対し上下から各々接触状態で挟みつけるように配置され、含浸した植物油又は食品用離型油(油脂類としてのオイル)を回転スライサー3の回転に連れて板面3a,3bに各々塗布(給油)している。オイルパッド36はパッドケース36aに収容され、パッドケース36aはノブねじ36b(取付部材)等によって起立壁31eに取り付けられるので、オイルパッド36はスライダー31により回転スライサー3と一体的に往復移動する。また、オイルタンク36e内のオイルは、給油モータ36cで駆動される給油ポンプ36dから給油ホース36fを経て給油ノズル36gへ供給され、給油ノズル36gから滴下してオイルパッド36を含浸する。
このようなオイル塗布によって、スライス時に発生するパン屑101aが回転スライサー3の板面3a,3bに付着(堆積)しにくくなり、回転スライサー3の切れ味(スライス性能)が長期にわたり持続し寿命も延びるので、スライス面の平坦が維持されてパン片101の変形が防止される。また、パン屑101aが回転スライサー3の板面3a,3b等に散乱・付着(堆積)しにくくなり、回転スライサー3等でのカビや錆の発生が防止されるから、パン屑101aの除去作業に割く時間を軽減できる。なお、ノブねじ36b等でオイルパッド36及び/又はパッドケース36aを上下移動させることによって、板面3a,3bに対するオイルパッド36の接触面積、接触面圧等を調節することができる。
図5に示すように、起立壁31eには、上下2枚のスクレーパー37(パン屑掻き落し具)が取り付けられ、それらの先端部は回転スライサー3の上下板面(表面3a(上面)及び裏面3b(下面))に各々対向するように配置されている。
具体的には、これらのスクレーパー37は硬質プラスチック(例えば、黒色に着色されたポリカーボネート(PC))製であり、回転スライサー3の傾斜姿勢において最高位となる部位の周縁部に、板面3a,3bに対し上下から各々接触状態で挟みつけるように配置され、板面3a,3bに付着したパン屑101aを回転スライサー3の回転に連れて除去する。上下のスクレーパー37はL字形のスクレーパー取付板37aの上下に振り分けて配置され、スクレーパー37及び取付板37aは蝶ボルト37b(取付部材)等によって起立壁31eに取り付けられるので、スクレーパー37はスライダー31により回転スライサー3と一体的に往復移動する。
このように、スクレーパー37によりパン屑101aを除去することによって、スライス時に発生するパン屑101aによる弊害を未然に防止できる。なお、蝶ボルト37b等でスクレーパー37及び取付板37aを上下移動させることによって、板面3a,3bに対するスクレーパー37の接触面積、接触面圧等を調節することができる。
ところで、オイルパッド36はスクレーパー37よりも回転スライサー3の回転方向下流側に配置されるので、スクレーパー37によってパン屑101aを除去した後の清浄な板面3a,3bにオイルパッド36からのオイル塗布が行われるので、上記したパン屑101aによる弊害を効果的に排除できる。また、オイルパッド36及びスクレーパー37が、それぞれ回転スライサー3の外周縁部に配置されるので、パン屑101aの除去と給油により回転スライサー3の刃先部分が重点的に保護される。さらに、オイルパッド36及びスクレーパー37が、それぞれ回転スライサー3の両側の板面3a,3bに配置されるので、回転スライサー3の上下両面すなわち表裏両面3a,3bに対するパン屑101aの除去と給油とが十分に行われる。
図7はスライスされたパン片の搬送状態を示す平面図である。上記したように、第一ベルトコンベヤ51の搬送面51aに対してパン片101が斜め姿勢で落下する場合、特に正面視におけるパン片101の落下姿勢が安定する。ただし、この場合においても平面視での落下位置(落下姿勢)が第一ベルトコンベヤ51の進行方向から少しずれる(平行にならない)ときがある。そこで耳落とし処理をする前に第一ベルトコンベヤ51上のパン片101の位置を第一ベルトコンベヤ51の進行方向と平行な状態に揃えるために、整列装置92が設けられている。
具体的には、図7に示す整列装置92は、第一ベルトコンベヤ51の進行方向において、パン片101の左右両側に各々配置された整列板92aと、各整列板92aを進退させるエアシリンダ92cとを有している。図7に示す整列装置92において、左右の整列板92aがパン片101の左右側面に同期して接触することによって、パン片101を進行方向に対して真っ直ぐの状態に素早く揃えることができる。
図7に戻り、整列装置92の搬送方向下流側には、端部パン片105の除去装置93が設けられている。具体的には、除去装置93は、端部パン片105を進行方向の一側方から押す押出板93aと、その押出板93aを進退させるエアシリンダ93bとを有している。パン塊100の大きさ(高さ)とパン片101のスライス厚から端部パン片105の発生時期(除去装置93への到達時期)は予めわかっている(あるいはセンサによって到達を検知できる)ので、所定のタイミングでエアシリンダ93bを伸長させれば、押出板93aによって端部パン片105を押し出して端部パン片回収容器93cに取り出すことができる。
図8は図7に続く搬送状態を示す平面図である。図7に示す整列装置92によって姿勢を整えられたパン片101は、第一ベルトコンベヤ51(搬送面51a)から後続の第二ベルトコンベヤ52(搬送面52a)へ移しかえられる。第二ベルトコンベヤ52の途中には搬送面52a上のパン片101の耳部を切断する耳落とし装置6が設けられている。耳落とし装置6は第二ベルトコンベヤ52の上側に配置された耳落とし刃62と、第二ベルトコンベヤ52の下側で耳落とし刃62が当たる領域に配置された弾性部材67とを有する。図8に示すように、弾性部材67はパン片101のスライス面よりも広い面積を有している。
耳落とし刃62は矩形(図ではほぼ正方形)の枠状に配置される。具体的には、4枚の刃体62a,62b,62c,62dを井桁状に組み合わせて配置し、そのうちの対向する2辺(図では62a,62cの2枚)についてはパン片101の外縁に達するまで、あるいは外縁を超えるまで長く形成されている。第二ベルトコンベヤ52を停止させた状態において、耳落とし刃62を構成する刃体62a,62b,62c,62dを静止状態のパン片101に同時に押し当てることにより4辺の耳部102が互いに分離した状態で同時に切断される。また、弾性部材67は第二ベルトコンベヤ52のコンベヤガイド(図示せず)等に固定して配置され、ゴム板、ウレタンシート等を用いることができる。
図9は耳落とし装置の概略構成を示す正面図及び側面図である。防振部材61bを介して耳落とし刃62を一体的に支持する昇降フレーム61は、上下方向に往復動するように位置固定の固定フレーム66で案内される。
具体的には、固定フレーム66に固定された耳落とし用モータ63の回転は、モータ63に直結された円形の回転板64に伝達される。回転板64と昇降フレーム61とを揺動アーム65で接続する。揺動アーム65の一端部(下端部)は昇降フレーム61に揺動可能に連結される。揺動アーム65の他端部(上端部)は、回転板64の中心から偏心した位置で回転板64と回転可能に連結される。昇降フレーム61には2つの直線レール61aが上下方向に平行に固定され、これらの直線レール61aは固定フレーム66に平行に固定された上下方向の2つの直線ガイド66aで各々案内される。移動側の直線レール61aと固定側の直線ガイド66aとによって直線状案内部材(通称リニアガイド)を形成しているが、固定側をレール、移動側をガイドとしてもよい。
したがって、回転板64が図9の実線の状態から(正逆いずれかに)半回転すると、直線レール61aと直線ガイド66aとの摺動案内によって、昇降フレーム61は固定フレーム66に対して下方(仮想線の位置)に直線移動する。さらに、(正逆いずれかに)半回転すると、直線レール61aと直線ガイド66aとの摺動案内によって、昇降フレーム61は固定フレーム66に対して上方(元の実線の位置)に直線移動する。
図10は耳落とし刃の概略構成を示す説明図である。耳落とし刃62において、長辺の刃体62a,62cの左右両端部には、各刃体62a,62cの先端部を保護するプロテクター62e(保護具)がそれぞれ取り付けられている。具体的には、刃体62a,62cの両端部において、プロテクター62eは刃体62a,62cを挟んで前後に各々設けられ、一対のプロテクター62e,62eの下端縁と刃体62a,62cの刃部先端縁とが一致する状態で、ボルト・ナット等の固定具62fで一体化されている。
プロテクター62eの下端縁と刃体62a,62cの刃部先端縁とを一致させてあるので、耳落とし時にプロテクター62eの下端縁が第二ベルトコンベヤ52の搬送面52aに触れる(乗る)と、刃体62a,62cの刃部先端はそれ以上下降しない(実際には、第二ベルトコンベヤ52の弾性(撓み)によって、わずかに下降した位置で停止する)。プロテクター62eによって、刃体62a,62cひいては耳落とし刃62全体の第二ベルトコンベヤ52への食い込みを防止できる。
さらに図11はパン片から耳落としする動作を示す説明図である。耳落とし刃62が第二ベルトコンベヤ52の上方で待機する状態において、次のパン片101が第二ベルトコンベヤ52で運ばれてくる(図11(A))。パン片101が弾性部材67が設けられた領域に達すると、第二ベルトコンベヤ52を停止させ、耳落とし用モータ63を駆動して耳落とし刃62を下降させる(図11(B))。耳落とし刃62の下限ストローク位置では、弾性部材67は耳落とし刃62がパン片101を押圧する力を第二ベルトコンベヤ52の沈み込みを許容しつつ弾性的に支えることにより、また、プロテクター62eの下端縁が第二ベルトコンベヤ52の搬送面52aに触れて下降停止することにより(図10参照)、耳落とし刃62の先端が第二ベルトコンベヤ52の搬送面52aにわずかに触れるまで下降して、パン片101の耳部102のみを切断する(図11(C))。耳落とし用モータ63を駆動して耳落とし刃62を上昇させるとともに、第二ベルトコンベヤ52による搬送を再開する(図11(D))。このように、弾性部材67によって耳落とし刃62が第二ベルトコンベヤ52に食い込まないように弾性的に支えることができるから、安全かつ衛生的であり、第二ベルトコンベヤ52の耐久性も損なわれない。
図8に戻り、第二ベルトコンベヤ52の終端部(下流側端部)と第三ベルトコンベヤ53の始端部(上流側端部)とは、耳なしパン片103の受け渡し可能な隙間βを介して接続されている。また、第三ベルトコンベヤ53の搬送幅(ベルト幅)は耳なしパン片103の幅よりわずかに広い程度、言い換えればパン片101の幅と同じ程度に形成されている。
したがって、耳なしパン片103は第二ベルトコンベヤ52から第三ベルトコンベヤ53へ慣性によって乗り移ることができる。一方、耳落とし刃62によってすでに切断されている耳部102は、耳なしパン片103が第三ベルトコンベヤ53へ乗り移ったときの衝撃で耳なしパン片103から分離してばらばらとなり、隙間β、あるい第三ベルトコンベヤ53の両側部から落下する。なお、落下した耳部102は破砕装置7の耳部回収容器71に回収され、粉砕機72でパン粉104に粉砕された後、風力搬送装置8のブロワ81によって管路82内を風力搬送されてパン粉回収容器83に回収される(図1参照)。さらに、第三ベルトコンベヤ53では、バター塗布装置94の転写ローラー94bによって耳なしパン片103のスライス面にバターが塗布され、サンドイッチ工程(図1参照)へ移行する。
図12はパン塊搬送装置の他の例の概略構成を示す説明図である。図12に示すパン塊搬送装置195は、パン塊100をパン塊送り装置2へ搬送するパン塊供給装置191と、パン塊供給装置191から受け取ったパン塊100を回転スライサー3へ送るパン塊送り装置2とを有し、このうちパン塊送り装置2は図1に示すものと同様である。
パン塊供給装置191は、外周に多数の仕切り板191a1を取り付けたベルトコンベアであり、隣接する仕切り板191a1間にパン塊100を1個ずつ横長状に載置して紙面前方から後方へ搬送する搬入コンベヤ191aと、外周に複数(図では2個)のバケット191b1を取り付けたベルトコンベアであり、搬入コンベヤ191aから受け取ったパン塊100をバケット191b1で上方へ搬送する昇降コンベヤ191bと、直方体形状のバケットであり、昇降コンベヤ191bから受け取ったパン塊100を横長状に保持して水平移動する水平コンベヤ191cと、直方体形状の筒状容器であり、長手方向中間部の揺動軸191d1周りで鹿威しのように揺動して水平コンベヤ191cから受け取ったパン塊100を送り方向に姿勢変更する揺動コンベヤ191dと、を含んで構成される。水平コンベヤ191cはパン塊100を横長状に保持して水平移動するので、パン塊100を送り方向に姿勢変更する際の保持面積が大きくなり、姿勢変更時の乱れを抑制できる。
ところで、上記したパンスライス装置では、パン片のスライス厚を一定に維持しつつ、スライス作業が効率的に行えることを目的として、パン塊送り装置とパン塊供給装置とを備えるパン塊搬送装置を単独の考案として把握することもできる。例えば、
水平面に対して板面が鋭角に傾斜した姿勢で設けられた円板状の回転スライサーで所定のスライス厚の複数のパン片にスライスするために、擬似的な直方体形状で縦長ブロック状のパン塊を保持して、前記回転スライサーの上方側から前記板面と交差する送り方向に沿って斜め下向きに送るパン塊送り装置と、そのパン塊送り装置の上方側に設けられ、パン塊を1個ずつ当該パン塊送り装置へ供給するパン塊供給装置とを備えるパン塊搬送装置であって、
前記パン塊送り装置は、パン塊の4つの側面のうち対向する2つの側面に対応して各々設けられ、パン塊に対向する表面に突出して設けられた複数の突起でパン塊を挟持する一対の送りベルトと、その一対の送りベルトを同期させて間欠的に下向きに送る駆動装置とを有する一方、
前記パン塊供給装置はパン塊を保持して水平に移動し、
前記パン塊供給装置で水平方向に搬送され、前記一対の送りベルトの上方に達したパン塊は前記送り方向に姿勢変更され、前記パン塊供給装置から前記一対の送りベルトの間に落下し、前記複数の突起の先端部がパン塊の側面を押圧することにより、前記一対の送りベルトはパン塊を両側から挟持して前記回転スライサーへ送ることを特徴とするパン塊搬送装置である。
このように、パン塊供給装置では水平搬送され、パン塊送り装置では一対の送りベルトで両側から挟持されて斜め下向きに送られるので、パン塊が斜めに姿勢変更することによって重力がパン塊を傾ける方向に作用しても、回転スライサーへ搬送される途中のパン塊の型崩れや変形を抑制ないし防止でき、ひいてはスライス厚を一定に維持しつつ斜めスライス作業を効率的に行え、かつ斜めスライス後のパン片の姿勢を安定させることができる。
なお、パン塊供給装置が、パン塊を横長状に保持して水平移動する水平コンベヤを有する場合には、パン塊を送り方向に姿勢変更する際の保持面積が大きいので、姿勢変更時の乱れを抑制することができる。
あるいは、パン塊供給装置が、連結構成された縦枠の間に複数のパン塊を1個ずつ縦長状に保持して水平移動する垂直コンベヤを有する場合には、パン塊を送り方向に姿勢変更する際の変更角度が小さくてすむので、姿勢変更時の乱れを抑制することができる。
以上の説明では、オイルパッド36(給油部材)とスクレーパー37(除去部材)とをともにスライダー31に設けた場合について述べたが、いずれか一方のみを設けた場合であっても、本考案の課題解決に貢献し得る。
なお、図12に示す実施例において、図1〜図11に示す実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略している。また、上記各実施例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。