JP3181363B2 - 赤外線センサおよびその製造方法 - Google Patents

赤外線センサおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、非接触で被計測対象の
温度を計測するサーモボロメータ型の赤外線センサおよ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、非接触の体温計等に用いて好適な
赤外線センサを半導体微細加工技術を利用して作製する
技術が種々開発されている。この赤外線センサとして
は、サーモボロメータ型やサーモパイル型等種々の形式
のものがある。この中でもサーモボロメータ型の赤外線
センサは、サーミスタ効果を持つ物質により赤外線セン
サ感応膜を形成し、受光した赤外線による上昇温度を電
気抵抗値の変化で測定し、赤外線量を知るものであり、
センサを容易に小型化できる点で他の形式のものより優
れている。
【0003】このサーモボロメータ型の赤外線センサで
は、赤外線感温膜の熱容量が小さく、しかもそこから外
部に伝達する熱量が小さければ、それだけ温度上昇が大
きくなり、微量な赤外線に対して応答感度が高くなる。
このため、従来では、半導体材料により形成された支持
基板上に微細加工技術を用いて非常に小さな架橋部を形
成し、さらにこの架橋部の上に赤外線感応膜を形成した
構造となっている。すなわち、素子の感熱部分を支持基
板から浮かせた架橋構造とすることにより応答感度の改
善を図るものである。
【0004】一方、計測にあたっては、被測定物から放
出される微量な赤外線を対象とするため、種々の工夫が
必要となる。たとえば、一個のセンサに全く同じ2個の
赤外線感応膜を設け、一方の赤外線感応膜に赤外線を入
射させ、他方の赤外線感応膜には赤外線が入射しないよ
うに遮蔽を施す。これら赤外線が入射された赤外線感応
膜の出力と、赤外線が入射されない赤外線感応膜の出力
とを絶えず比較することにより、電気的なノイズおよび
熱的な外乱を除去して正味の赤外線量を検出することが
できる。
【0005】このような赤外線センサでは、一方の赤外
線感応膜に効率良く赤外線が入射されるように種々の工
夫がなされるが、実用的な点から言えば、微細な架橋構
造を機械的・物理的に保護する必要がある。そのため、
従来は、この架橋構造の保護のために、キャンのような
容器に赤外線センサ素子を収容していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のように従来の赤
外線センサでは、センサ素子を容器に収容していたが、
このように容器にセンサを収容した場合には、非接触体
温計などに用いると、熱伝導の問題、大きさの制約、コ
ストの点などで問題があった。そのため、簡便な方法に
より低コストでセンサ素子を保護することができる実装
方法が望まれていた。
【0007】ところで、この種の赤外線センサでは、セ
ンサ素子の表側には、一対の赤外線感応膜の一方に選択
的に赤外線を入射させるため、赤外線選択入射手段とし
ての蓋が必要である。一方、センサ素子の裏側は、架橋
構造の製作時に、ヒドラジン水溶液等による異方性エッ
チングを行うため、通常は任意の形状と大きさに開口さ
れているが、ここを通しての赤外線の反射や吸収の影響
を低減させるために、やはり蓋により封止することが望
ましい。
【0008】このようなことから、次のような方法が考
えられる。すなわち、一枚のシリコンウエハに数百個の
センサ素子を同時に形成し、このウエハ状態でプローバ
等により電気的特性を検査し、良品と不良品との区別を
行い、その後ダイシングソーによりセンサ素子を1個1
個切り離して分離する。その後、分離されたセンサ素子
を洗浄し、表面(赤外線入射側)の蓋を接合させるとと
もに、裏面側に蓋を接合させる。
【0009】しかしながら、このような方法では、次の
ような問題があった。すなわち、上述のダイシングソー
の工程では、一般に、シリコンウエハの切断時にチップ
と回転刃との間で発生する熱を取るためや、潤滑、切屑
を除去する等の理由で冷却水を供給するが、この冷却水
によって架橋構造が壊れる。この場合、チップに予めエ
レクトロンワックスを塗ることで架橋構造を保護するこ
とができるが、この後このワックスを除去したり洗浄し
たりする必要があるため、この時点で架橋構造が壊れる
という問題があった。
【0010】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
ので、その目的は、安定した架橋構造を有するとともに
小型かつ安価な赤外線センサを提供することにある。
【0011】本発明は、また、架橋構造を破損すること
なく、小型かつ安価な赤外線センサを製造することがで
きる方法を提供することを目的とする。
【0012】本発明による赤外線センサは、空洞部を有
するシリコン基板の空洞部上に架橋部を設け、該架橋部
に赤外線感応膜を形成して赤外線検知部を構成するとと
もに、シリコン基板の両面にそれぞれ表蓋および裏蓋を
接合したことにより赤外線検知部を密封するようにした
ものである。
【0013】この赤外線センサでは、赤外線検知部が
蓋および裏蓋により密封されているため、架橋部および
赤外線感応膜が保護される。
【0014】センサ本体の支持基板としては、シリコ
ン、ゲルマニウム等の半導体基板が用いられるが、容易
にしかも安価に手に入れることが可能なシリコン基板を
用いることが好ましい。また、赤外線感応膜はアモルフ
ァスゲルマニウム(a−Ge)、アモルファスシリコン
(a−Si)や多結晶シリコン等の膜により形成され
る。この赤外線感応膜の成膜には、スパッタリング、イ
オンビームスパッタリング、CVD(化学的気相成長
法)等が用いられる。
【0015】架橋部は、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコ
ン窒化膜 (SiNy) 、シリコンオキシナイトライド(SiOxN
y)膜等により形成することができるが、特にシリコンオ
キシナイトライド膜により形成することが好ましい。シ
リコンオキシナイトライド膜は、シリコン酸化膜とシリ
コン窒化膜との両者の性質を持ち、そのため応力バラン
スが良く、安定した架橋構造を形成することが可能とな
る。この架橋部を形成する方法としては、支持基体に堀
込み部を形成し、この堀込み部を一旦埋め戻して犠牲層
を形成し、この犠牲層の上に架橋部のパターンを形成す
るとともにこの架橋部パターンの上に赤外線感応膜を形
成し、その後犠牲層を取り去り、架橋部とする方法があ
る。また、支持基体の一面に架橋部のパターンおよび赤
外線感応膜を形成した後、他面からエッチングして架橋
部パターン下に空洞部を設けることにより架橋部を形成
し、さらに他面に空洞部を覆うように蓋部材を設ける方
法があり、この方法が前者の方法に比べて製造工程上は
容易である。
【0016】蓋部材は、シリコン等の半導体材料や、金
属等種々の材質を用いることができるが、特に安価で材
質が安定しているシリコン基板を用いることが望まし
い。但し、シリコン基板を用いて蓋部材を作製し、これ
を体温計に用いた場合には、人体から放射される波長1
0μm付近の赤外線に対する透過率は約50%である。
したがって、一個のセンサに全く同じ2個の赤外線感応
膜を設け、一方の赤外線感応膜に赤外線を入射させ、他
方の赤外線感応膜には赤外線が入射しないように遮蔽を
施す構成とする場合には、蓋部材の遮蔽を施す側にはア
ルミニウム(Al)等により形成される赤外線遮蔽膜を
形成する必要がある。
【0017】また,本発明による赤外線センサの製造方
法は、半導体ウエハに、架橋部上に赤外線感応膜を有す
る複数のセンサ素子を形成する工程と、半導体ウエハと
略同じ大きさの裏蓋を半導体ウエハに接合する工程と、
センサ素子各々を密封するように複数の表蓋で封止する
工程と、密封されたセンサ素子を切り分ける分離工程と
を備えている。
【0018】この製造方法では、センサ素子各々を分離
する分離工程(ダイシング工程)の前に、蓋部材により
センサ素子を密封しておき、この状態でダイシングを行
うので、冷却水の浸入を阻止することができ、架橋部の
破損を防止できる。また、その後の赤外線センサの取扱
いや、プローブへの実装時においても、架橋部が蓋部材
により保護されているため、破損するがなくなる。
【0019】センサ本体への蓋部材の接合は、接着材や
半田等を用いて行うことができるが、陽極接合法により
行うようにしてもよい。この方法によれば、センサ本体
の内部を真空状態に封止することができるため、空気の
対流の影響を無くすことができ、センサ特性が向上す
る。
【0020】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。
【0021】図2は本発明の一実施例に係る赤外線セン
サの組立前の分解斜視図であり、図1はその組立後の状
態を表すものである。
【0022】本実施例の赤外線センサは、センサ本体1
の表面に表蓋2を接合し、一方裏面には裏蓋3を接合し
て構成したものである。センサ本体1には全く同じ構造
の一対の架橋部10a、10bが設けられ、これら架橋
部10a、10bの各中央部の上には赤外線感応膜11
a、11bが形成されている。架橋部10a、10bの
周囲には複数の電極パッド12が設けられており、これ
ら電極パッド12は赤外線感応膜11に電気的に接続さ
れている。表蓋2はシリコン基板によりセンサ本体1よ
り若干小さめに形成されている。表蓋2の裏面には図に
おいて右側の赤外線感応膜11aに対向する側の半分に
アルミニウム膜により形成された赤外線遮蔽膜13が形
成されている。裏蓋3も同じくシリコン基板により形成
され、センサ本体1と同等の大きさを有している。
【0023】この赤外線センサでは、赤外線は表面側か
ら表蓋2を透過して一方の赤外線感応膜11b側のみに
選択的に入射される。この赤外線が入射される赤外線感
応膜11bと入射されない赤外線感応膜11aとの差動
出力を電極パッド12を通して求めることにより、真の
赤外線量を検出することができる。なお、裏面側から入
射しようとする赤外線は裏蓋3により遮蔽される。
【0024】本実施例の赤外線センサでは、センサ本体
1の表裏にそれぞれ、シリコンにより形成された表蓋2
および裏蓋3を接合し、内部の架橋部10a、10bお
よび赤外線感応膜11a、11bを保護する構造として
いる。したがって、従来のキャン等の容器に収容したも
のに比べて、著しく小型化を図ることができるととも
に、製造価格も安価になる。
【0025】図3ないし図5は上記赤外線センサの製造
工程を表すものである。
【0026】まず、図3(A)に示すような結晶面方位
(110)のシリコン基板(シリコンウエハ)31を用
意した。次に、このシリコン基板31の表面にプラズマ
CVD法(化学的気相成長法)により図3(B)に示す
ような膜厚2μmのシリコンオキシナイトライド膜32
を形成した。続いて、シリコンオキシナイトライド膜3
2上に図3(C)に示すような多数の赤外線感応膜33
を一定間隔で形成した。すなわち、ゲルマニウム(G
e)をターゲットとしてスパッタリングを行い、シリコ
ンオキシナイトライド膜32上にアモルファスゲルマニ
ウム(aーGe)膜を形成し、続いて500°Cでアニ
ール処理を行い、アモルファスゲルマニウムの多結晶化
を促進した。続いて、反応性イオンエッチングを行って
多結晶化されたアモルファスゲルマニウム膜のパターニ
ングを行った。
【0027】次に、シリコン基板31を50°Cに加熱
して、真空蒸着法によりシリコン基板31の表面および
裏面にそれぞれ、図3(D)に示すように膜厚0.05
μmのクロム(Cr)膜34a、膜厚1.0μmの銅
(Cu)膜34bおよび膜厚11μmのニッケル(N
i)膜34cを順次積層して積層接合膜34を形成し
た。ここで、クロム層34aは下地との接着層、銅層3
4bは導電層、またニッケル層34cは銅層34bの酸
化防止膜となるものである。その後、表面の積層接合膜
34のみをパターニングし、各赤外線感応膜33の周囲
に積層接合膜34を選択的に残存させた。
【0028】次に、図示しないが、シリコン基板31の
表面に電極配線層および電極パッドを形成した後、シリ
コンオキシナイトライド膜32を架橋形状にパターニン
グした。続いて、これにより形成されたシリコンオキシ
ナイトライド膜32の開口部を介してシリコン基板31
を選択的にエッチングし、図4(A)に示すように空洞
部35を形成するとともに、架橋部32aを形成した。
このエッチングはヒドラジン水溶液を用いた異方性エッ
チングにより行った。なお、この異方性エッチングは水
酸化カリウム水溶液を用いて行うようにしてもよい。
【0029】次に、図4(B)、(C)に示すような裏
蓋36をシリコン基板31の裏面に半田接合法により接
合した。この裏蓋36はシリコン基板31と同じ大きさ
とし、あらかじめシリコン基板31と同様に、真空蒸着
法によりクロム37a、銅膜37bおよびニッケル膜3
7cよりなる積層接合膜37を形成しておいた。
【0030】裏蓋36を接合させた後、複数のセンサ素
子をプローブ検査により個別に検査し、良品を選択し
た。そして良品とされたセンサ素子個々の表面に、図5
(A)に示すような表蓋38をフリップチップボンダに
より接合させ、架橋部33aおよび赤外線感応膜33を
覆った。この表蓋38も裏蓋36と同様に、あらかじめ
真空蒸着法によりクロム39a、銅膜39bおよびニッ
ケル膜39cよりなる積層接合膜39を形成しておい
た。全てのセンサ素子に表蓋38を接合させた後、図5
(B)に示すようにこれら素子をダイシングソーにより
個々に切り離し、図5(C)に示すような、表蓋38お
よび裏蓋36により両面が保護されたセンサ素子を得
た。
【0031】このような方法により本実施例では、ダイ
シング時に発熱等の防止のために冷却水を流しても、あ
らかじめ表蓋38および裏蓋36により覆われているた
め、架橋部32aが殆ど損傷することがなく、歩留り
も、チップに分離した後に蓋を接合する場合では50%
であったものが、98%と著しく向上した。また、切り
離し後のチップの取り扱いも格段に向上した。
【0032】なお、上記実施例においては、シリコン基
板31の両面に表蓋38および裏蓋36を接合し、内部
の架橋部32aおよび赤外線感応膜33を保護するよう
にしたが、前述の犠牲層を用いて架橋部を形成する方法
による場合には、シリコン基板31の裏面側は閉塞され
ているため、蓋部材としては表蓋38のみでよい。ま
た、上記実施例では、表蓋38を予め分割しておき、セ
ンサ素子各々に被せ、その後ダイシングソーにより個々
に分離するようにしたが、これはシリコン基板31と裏
蓋36と表蓋38とをそれぞれウエハ状態で互いに接合
させ、その後素子ごとに個々に分離するようにしてもよ
い。さらに、上記実施例においては、赤外線がセンサ本
体1の表面側から入射するタイプの赤外線センサを用い
て説明したが、赤外線センサ本体1の裏面側から入射す
るタイプのものにも適用できることは勿論である。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように請求項1記載の赤外
線センサによれば、架橋部に赤外線感応膜を形成して赤
外線検知部を構成するとともに、シリコン基板の両面に
それぞれ表蓋および裏蓋を接合して赤外線検知部を密封
するようにしたので、内部の架橋部および赤外線感応膜
を確実に保護することができるとともに、小型かつ安価
な赤外線センサを提供できるという効果がある。
【0034】また、請求項2記載の赤外線センサの製造
方法によれば、センサ素子各々を分離する前に、蓋部材
で内部の架橋部および赤外線感応膜を密封するようにし
たので、分離工程時における冷却水の侵入を阻止するこ
とができる。したがって、架橋部の破損を防止でき、製
造歩留りが著しく向上するとともに、その後の取り扱い
が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る赤外線センサを表す斜
視図である。
【図2】図1の赤外線センサの分解斜視図である。
【図3】図1の赤外線センサの製造工程を表す縦断面図
である。
【図4】図1の赤外線センサの製造工程を表す縦断面図
である。
【図5】図1の赤外線センサの製造工程を表す縦断面図
である。
【符号の説明】
1 センサ本体 2、38 表蓋 3、36 裏蓋 10a、10b、33 赤外線感応膜 11a、11b、32a 架橋部 12 電極パッド 13 赤外線遮蔽膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−1535(JP,A) 特開 昭63−263426(JP,A) 特開 平1−96549(JP,A) 特開 平3−210437(JP,A) 特開 昭59−8381(JP,A) 特開 昭61−251049(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01J 1/02 G01J 5/02 H01L 27/14 H01L 31/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 空洞部を有するシリコン基板の空洞部上
    に架橋部を設け、該架橋部に赤外線感応膜を形成して
    外線検知部を構成するとともに、前記シリコン基板の両
    面にそれぞれ表蓋および裏蓋を接合したことにより前記
    赤外線検知部を密封したことを特徴とする赤外線セン
    サ。
  2. 【請求項2】 半導体ウエハに、架橋部上に赤外線感応
    膜を有する複数のセンサ素子を形成する工程と、前記半導体ウエハと略同じ大きさの裏蓋を前記半導体ウ
    エハに接合する工程と、 前記センサ素子各々を密封するように複数の表蓋で封止
    する工程と、 前記密封されたセンサ素子を切り分ける分離工程とを備
    えたことを特徴とする赤外線センサの製造方法。
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