ここで、定流量弁の吐出口は大気解放で、流体は水とし、第1室6に水圧が印加されて通水を開始する状況を考察(以下同様)すると、可動弁体5は第1室6から第2室10側に動作をし、この定流量弁装置Bから吐出する瞬間流量を所定の流量に制御するために、ニードル弁42が弁座43との間で適度に流れを絞る状況を作り出す。この時、可動弁体42の動作は比較的瞬間的に行われるため、勢い余ってニードル弁42が弁座部43に衝突する恐れがある。
特に、第2室10に気泡が存在しているような場合には、主弾性部材15のセット荷重により規定される第1室6と第2室10の間の所定差圧より大きい圧力が第1室6に印加されると、可動弁体5はニードル弁42が弁座部43に衝突するまで動作をし、第1室6と第2室10の差圧(ΔP)が所定差圧になるまではニードル弁42が弁閉状態となり、第1室6と第2室10の差圧が所定差圧となった後にニードル弁42は適度な絞り状態の位置に制御されていくことになる。
その理由は、以下のメカニズムによる。
前記の差圧ΔPが所定差圧に制御された時の第2室10の圧力においては、最初に存在していた前記気泡のサイズ(体積)が小さなものになっているはず(定流量弁装置への水圧印加により、ボイルシャルルの法則に従って圧力の上昇に反比例して気体の体積は減少する)であり、水圧印加後に、気泡のサイズの減少分に応じた水が、オリフィス44を通じて第1室6から第2室10に向けて供給されなければならない。ところが、この定流量弁のオリフィス44は微少流量を制御するために、非常に小さな小孔であるなど流量(Cv値)の小さなものになっているので、第1室6に水圧が印加された時に、オリフィス44を通じた第1室6から第2室10への水の供給は遅れがちになり、その遅れの間は、第1室6に印加された水圧を可動弁体5が受け止めて、ニードル弁42を通じて、弁座部43が水圧を集中的に支えることになる。
以上の理由から、ニードル弁42は、通水開始の度に、弁座43との衝突を繰り返すことになる。また、この衝突の力は、ニードル弁42の径に比べてかなり大きい受圧面積をもつ可動弁体5にかかる差圧ΔPにより発生し、第1室6への供給圧が大きければ、それ
だけ大きな衝突力がニードル弁42及び弁座部43に集中して作用することになる。
これにより、この従来の技術の範囲では、ニードル弁42が弁座部43に食い込んでロックしてしまったり、ニードル弁42が磨耗したり折れてしまったり、弁座部43が磨耗したり変形したりという問題が発生しがちで、定流量弁装置としての性能の安定性・信頼性に問題を有していた。
上記問題に対して、先端のニードル弁42を可動弁体5から切り離し、可動ニードル化を考えることができるが、合理的な部品配置を考案しなければ、構造が複雑化し、高コストなものになってしまう。
また、例えば、毎分1ミリリットルレベルの微少流量を制御する定流量弁装置は、それに相応して、例えば、0.1mm以下の小さなオリフィスを備えている。
小さな径のオリフィスは、その径を越えるサイズの粒径を有する異物を通すことが出来ず、つまりを生じて機能を喪失する懸念を有している。
そこで、特許文献1では、定流量弁内部に長手のパイプを利用したオリフィスを形成し、そのオリフィス径を大きくする技術が開示されている。また、定流量弁内部にコンパクトに且つ多数のオリフィスを直列に連接し、オリフィス径を大きくする技術が本出願人によって出願されている。
しかし、これによっても水質によっては、オリフィスに埃やスケールの堆積の懸念が問題点として残ってしまう。
上述の問題に対しては、特許文献2が示すようなオリフィスを清掃するクリーニングピンの技術が有効である。
しかし、特許文献2の技術では、微少流量を制御しようとする場合に、オリフィスとオリフィスに挿通されたクリーニングピンのクリアランスが小さなものになってしまうために、堆積物の除去には効果的な構造であるにも関わらず、前記クリアランス部分への異物のつまりのリスクは返って大きくなってしまう。
したがって、この特許文献2の装置では、通水を停止した時には、バネの力でクリーニングピンがオリフィスから抜け出し、再び通水する時には流れの差圧によって再びオリフィスにクリーニングピンが挿通されオリフィスを清掃するという機構となっている。これによりこの特許文献2の装置でも、異物の詰り状態からの脱却が行われやすくなるが、しかし、このような機構であるがために、同文献にも示されるように、給水圧の低い段階ないしクリーニングピンがオリフィスに挿通される前段階においては、定流量機能が損なわれる結果となっている。
また、ひとつのオリフィスの場合に、絞り効果を引き出すために、オリフィス孔を長手に製作し、クリーニングピンとのクリアランス部分の流通方向の距離を稼ぎ、流体の粘性・流路の壁面抵抗に依拠したものがある(先行文献2の構造の場合)。しかし、それでは、流体粘性の温度特性によりオリフィスの流量(Cv値)も大きな温度特性を持つことになり、定流量弁装置のオリフィスに使用するにはとても不都合なものである。定流量弁装置の機能である定流量性が流体の温度によって大きく左右されてしまう結果を生むようになる。
本考案は、上記の問題点に鑑みて成されたものであり、性能の安定性および高い信頼性を備えた微少流量域の定流量制御装置を提供すること、延いては、定流量制御装置の保守メンテナンス性の向上、メンテナンスフリーを実現することが可能な定流量制御装置を提供することを目的とする。
前記の課題を有利に解決するために、第1参考考案の定流量制御装置では、上流側流体通路から流体が流入される流入口を有する第1ハウジングとダイアフラムと該ダイアフラムに一体的に取付けられた可動弁体により形成される第1室と、下流側流体通路に連通する吐出口を有する第2ハウジングと前記ダイアフラムと前記可動弁体により形成される第2室と、前記第1室と前記第2室を連通し流体が通過することで前記第1室と前記第2室との間に圧力差を生じさせる絞り部と、前記第2室と下流側流体通路とを連通する通路に臨んで設けられ、前記可動弁体に備えられたニードル弁に対応して設けられる弁座と、前記可動弁体を前記ニードル弁と前記弁座が開弁する方向に所定の弾性力で付勢する主弾性部材と、を備えた流体の流量を所定流量に制御する定流量制御装置において、前記ニードル弁は前記可動弁体に、前記可動弁体の可動方向と同一の方向に進退自在に保持され、該ニードル弁の前記弁座方向への進出は前記可動弁体の所定の位置で規制される構成となっており、前記絞り部は前記可動弁体に設けられ、前記可動弁体に設けられたニードル弁弾性部材が、前記ニードル弁を前記弁座方向に付勢し、前記第1室と前記第2室との差圧が、前記主弾性部材の付勢力によって規定される所定の差圧を超える場合に、前記ニードル弁が前記弁座に密着着座した状態で前記可動弁体は前記第2ハウジングに備えられた可動弁体受部まで前記弁座方向に可動し前記可動弁体受部に受けられて、超過差圧分の力を該可動弁体受部が受けるように構成されたことを特徴とする。
第2参考考案では、第1参考考案の定流量制御装置において、前記絞り部は、前記可動弁体の本体とは別個の部品が当該可動弁体の本体に組み込まれて形成され、前記ニードル弁弾性部材の前記ニードル弁と反対側の端部は、前記可動弁体に一体的に固定された前記絞り部によって受けられていることを特徴とする。
第3参考考案では、第1参考考案または第2参考考案の定流量制御装置において、前記絞り部のオリフィスは、前記ニードル弁の可動方向である軸線上に配置され、該オリフィスにはクリーニングピンが遊挿され、そのクリーニングピンの一方の端部は、前記ニードル弁に設けられたクリーニングピン受け部によって軸方向の位置規制を受けていることを特徴とする。
第4参考考案では、第1参考考案の定流量制御装置において、前記絞り部のオリフィスにはクリーニングピンが遊挿され、このクリーニングピンの軸方向の端部は、前記第1ハウジング及び又は前記第2ハウジングにより、クリーニングピンはその軸方向の位置が規制されていることを特徴とする。
第5参考考案では、第1参考考案〜第4参考考案のいずれかの定流量制御装置において、前記絞り部には、複数の略同径のオリフィスが同軸上に直列に並ぶように配置され、この複数のオリフィスの間には、該オリフィスの内径より大きな内径を有する空間からなる渦流室が設けられ、この渦流室とその両側のオリフィスとに渡ってクリーニングピンが遊挿されていることを特徴とする。
第1考案の定流量制御装置においては、上流側流体通路から流体が流入される流入口を有する第1ハウジングとダイアフラムと該ダイアフラムに一体的に取付けられた可動弁体により形成される第1室と、下流側流体通路に連通する吐出口を有する第2ハウジングと前記ダイアフラムと前記可動弁体により形成される第2室と、前記第1室と前記第2室を連通し流体が通過することで前記第1室と前記第2室との間に圧力差を生じさせる絞り部と、前記第2室と下流側流体通路とを連通する通路に臨んで設けられ、前記可動弁体に備えられたニードル弁に対応して設けられる弁座と、前記可動弁体を前記ニードル弁と前記弁座が開弁する方向に所定の弾性力で付勢する主弾性部材と、を備えた流体の流量を所定流量に制御する定流量制御装置において、前記絞り部のオリフィスにはクリーニングピンが遊挿され、このクリーニングピンの軸方向の端部は、前記第1ハウジング及び又は前記第2ハウジングにより、クリーニングピンはその軸方向の位置が規制されていることを特徴とする。
第2考案の定流量制御装置では、上流側流体通路から流体が流入される流入口を有する第1ハウジングとダイアフラムと該ダイアフラムに一体的に取付けられた可動弁体により形成される第1室と、下流側流体通路に連通する吐出口を有する第2ハウジングと前記ダイアフラムと前記可動弁体により形成される第2室と、前記第1室と前記第2室を連通し流体が通過することで前記第1室と前記第2室との間に圧力差を生じさせる絞り部と、前記第2室と下流側流体通路とを連通する通路に臨んで設けられ、前記可動弁体に備えられたニードル弁に対応して設けられる弁座と、前記可動弁体を前記ニードル弁と前記弁座が開弁する方向に所定の弾性力で付勢する主弾性部材と、を備えた流体の流量を所定流量に制御する定流量制御装置において、前記絞り部には、複数の略同径のオリフィスが同軸上に直列に並ぶように配置され、この複数のオリフィスの間には、該オリフィスの内径より大きな内径を有する空間からなる渦流室が設けられ、この渦流室とその両側のオリフィスとに渡ってクリーニングピンが遊挿されていることを特徴とする。
(1)第1参考考案〜第5参考考案では、進退移動可能なニードル弁としていることで、次の(a)〜(c)の効果がある。
(a)ニードル弁の弁座への繰り返しの衝突による、ニードル弁または弁座の磨耗・変形・折損を格段に低減し、前記の繰り返し作動耐久性能は飛躍的に向上する。
(b)ニードル弁の弁座への食いつきを無くすことができる。
(c)第1室と第2室間において大きな差圧ΔPが発生した場合に、「超過」した差圧ΔPによる可動弁体が弁座方向へ移動してニードル弁が弁座に着座した場合のΔPによるストレスを、ニードル弁部と弁座部が集中的に受けることなく、ニードル弁部は後退するように逃げて、第2ハウジングの可動弁体受部によって可動弁体の構造的に強い部分でかつ広い面積で分散的に受けることができる。これにより弁部機能の信頼性が向上する。
第2参考考案のように、第1参考考案の定流量制御装置において、絞り部は、前記可動弁体の本体とは別個の部品が当該可動弁体の本体に組み込まれて形成され、前記ニードル弁弾性部材の前記ニードル弁と反対側の端部は、前記可動弁体に一体的に固定された前記絞り部によって受けられているので、次の(a)〜(f)のような効果がある。
(a)可動弁体には独立パーツとしての絞り部を固定することができるため、進退移動可能なニードル弁が進退自在に保持される可動弁体の部屋の入口付近に絞り部を固定して、その絞り部により、ニードル弁弾性部材の受け手段を兼ねる構造とすることができる。
すなわち、可動弁体の本体とは、別個の部品からなる絞り部を可動弁体に組み込むだけで、組み込まれた絞り部によって、ニードル弁弾性部材の一端側を受ける部分と、絞り部としての作用との2つの機能を発揮させることができ、合理的な構造の定流量制御装置とすることができる。
また、ニードル弁弾性部材のニードル弁と反対側の端部を可動弁体に設けた絞り部により支承して、ニードル弁を後退移動可能に支承することができる。
(b)進退移動可能なニードル弁は、可動弁体から突き出る方向にニードル弁弾性部材によって付勢されているが、このような進退移動可能なニードル弁においては、付勢手段であるニードル弁弾性部材の進退移動可能なニードル弁とは反対側端部の受け手段が必要であるが、前記のように構成することにより、構造が簡単であると共にコンパクトであり、かつ低コストで進退移動可能なニードル弁式の定流量弁装置を提供することができる。
(c)共通の可動弁体に、様々な種別の絞り部を取付けることによって、任意の流量の定流量弁装置を安価に提供することができ、コスト的なメリットを出すことができる。
(d)絞り部を、コンパクトでシンプル、異方性のないパーツにすることができるので、プラスチックの射出成形等によりこれを製作する場合でも、高度な精度が要求されるオリフィス径寸法などを精度良く作ることができる。
(e)中心軸線の同軸上に絞り部等を構成する構成部品を並べた場合には、軸線に対して直角方向では各パーツの方向性を無くすことが出来、組み立てに際して方向を気にする必要がなく、組み立ての簡単化を実現することができる。
(f)また、前記(e)の場合では、組み立て位置精度の狂いのために、動作中にクリーニングピンと絞り部のオリフィス(孔)との異常な摩擦、こすれ、ひっかかりを発生させる恐れがない。
第3参考考案のように、第1参考考案または第2参考考案において、前記絞り部のオリフィスは、前記ニードル弁の可動方向である軸線上に配置され、該オリフィスにはクリーニングピンが遊挿され、そのクリーニングピンの一方の端部は、前記ニードル弁に設けられたクリーニングピン受け部によって軸方向の位置規制を受けており、すなわち、クリーニングピンを進退移動可能なニードル弁が受ける構造があることで、次の(a)〜(e)の効果がある。
(a)進退移動可能なニードル弁が可動弁体との間で可動する時に、クリーニングピンと絞り部との間の相対位置変更がなされる動作を起こすことができる。
(b)進退移動可能なニードル弁が動作する時は、差圧ΔPがメインスプリングである主弾性部材によって規定される所定差圧を超えたときであり、この時にクリーニングピンが動作すると、差圧の大きさゆえに、クリーニングピンが動作してスケール等を擦り取る力が大きくなって、より効果的なオリフィス内面の清掃が可能である。
(c)同時に、進退移動可能なニードル弁が可動弁体との間で可動しない時、すなわち定流量制御時は、クリーニングピンと絞り部との間の相対位置変更が強制されないので、可動弁体の可動(定流量制御)に対して、精度を乱す因子となるクリーニングピンと可動弁体との間の摩擦、こすれ、ひっかかり等が発生する恐れをなくすことができ、高精度な制御が可能になる。
(d)しばしばある利用条件では、通水初期(給水圧を加えた時)に、上記(b)の状態を一度経過して、次に定流量制御状態に移るので毎回の使用に当たって、オリフィス内面がクリーニングされてから次に上記(c)に記述したような高精度な定流量制御に移るということが実現される。
(e)絞り部のオリフィスは、ニードル弁の可動方向である軸線上に配置されているため、絞り部とクリーニングピンとニードル弁弾性部材を同じ軸線上に配置することがで、コンパクトな構造とすることができる。
第4考案によると、第1考案の定流量装置において、絞り部のオリフィスにはクリーニングピンが遊挿され、このクリーニングピンの軸方向の端部は、前記第1ハウジング及び又は前記第2ハウジングにより、クリーニングピンはその軸方向の位置が規制されており、すなわち、クリーニングピンの軸方向移動をハウジング部材が規制することで、次の(a)〜(c)の効果がある。
(a)クリーニングピンの軸方向の移動がハウジング部材により規制されることで、定流量弁装置の利用の間に、絞り部を固定した可動弁体の給水圧変動に伴う可動によって、クリーニングピンと絞り部の間の相対位置変更がなされる動作がなされ、クリーニングピンの清掃機能が確実に効果的に発揮される。
(b)また、クリーニングピンは、その径方向にはハウジング部材に位置規制を受けない。したがって、オリフィス内部を全方向に遊動することになる。これにより効果的にオリフィス内面をクリーニングピンが清掃することができる。
(c)また、オリフィス孔の偏った位置にクリーニングピンが移動すれば、オリフィス内壁面とクリーニングピンの隙間は局所的に大きくなることが出来、それだけ大きな粒径の異物を詰ることなく流すことができる。
第5参考考案によると、第1参考考案〜第4参考考案の定流量装置において、前記絞り部には、複数の略同径のオリフィスが同軸上に直列に並ぶように配置され、この複数のオリフィスの間には、該オリフィスの内径より大きな内径を有する空間からなる渦流室が設けられ、この渦流室とその両側のオリフィスとに渡ってクリーニングピンが遊挿されているので、次の(a)〜(e)の効果がある。
(a)渦流室とその両側のオリフィスに渡ってクリーニングピンが挿入されているので、渦流室の軸方向両側のオリフィス径を大きくして、クリーニングピンとオリフィスとの間隙においての異物の目詰まりを防止することができ、クリーニングピンは安定した動作を行うことができる。
(b)微少流量を制御するために非常に小さく設定されていたオリフィスとクリーニングピンのクリアランスを、複数のオリフィスを直列に配置しクリーニングピンを挿入することで、ひとつのオリフィスの場合に比べて、大きくすることができるので、粒径のある異物がクリアランス部分に詰ってしまう恐れを低減することができる。
(c)上記クリアランス部分の面積は、オリフィス1個の場合と同じ絞り効果を発揮するのに、オリフィスを2個にする場合には略√2倍に、3個にする場合には略√3倍に、それ以上にする場合も同様に大きくすることが出来ることが確認されている。このように、前記の様なクリアランス部分の面積増加に相当する分だけオリフィス径を大きくできたり、また、クリーニングピンを細くできたりすることで、クリアランス寸法を、大きくすることができる。
(d)また、このような定流量弁装置は、上流側にストレーナーが設置されて使用されることが多いが、使用すべきストレーナーのメッシュサイズを大きくすることもできる。これにより、メッシュそのもののコスト低減が図れるとともに、メッシュサイズが小さいものに比べてストレーナーの詰まりが起きにくくなり、ストレーナーの保守メンテナンス性の向上を図ることができる。また、メッシュサイズを大きくすることが出来れば、このような定流量弁を使用したシステム全体の圧力損失を小さくすることにも寄与する。
(e)また、本考案によれば、複数のオリフィスを使用することで絞り効果を効果的に引き出しているので、オリフィスを長手方向に伸ばす必要はなく、絞り効果における粘性影響部分を極力押さえた設計が可能である。これにより、温度特性の小さな定流量弁装置が可能である。
第1考案の定流量制御装置によると、前記第4参考考案について上記した内容と同様な効果がある。
第2考案の定流量制御装置によると、前記第5参考考案について上記した内容と同様な効果がある。
次に、本考案を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4には、本願の第1参考実施形態の定流量制御装置Aが示されている。
上流側流体通路1から流体が流入される流入口2を有する第1ハウジング3とダイアフラム4と該ダイアフラム4に一体的に取付けられた可動弁体5により第1室6が形成されている。
下流側流体通路7に連通する吐出口8を有する第2ハウジング9と前記ダイアフラム4と前記可動弁体5により第2室10が形成されている。
図1に示す状態は、第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧より小さく、主弾性部材15により可動弁体5が第1ハウジング3側に移動した状態で、ニードル弁13が弁座14から浮いている状態を示す縦断正面図である。図2(a)(b)は、微小流量を流す定流量状態に制御されている状態であり、同図(a)はニードル弁13の周方向の一部が弁座14に当接・摺動しながら定流量状態に制御されている状態を示す縦断正面図、同図(b)はその一部を拡大して示す図である。図3は、第1室6側の圧が急激に高くなり、ニードル弁13が弁座14に密着・着座している状態で、かつニードル弁13が可動弁体から浮き上がると共に可動弁体が第2ハウジングの可動弁体受部に当接している状態を示す縦断正面図である。
第1参考実施形態の定流量制御装置Aは、第1ハウジング3と第2ハウジング9の周壁端部間に周縁部が挟持されたダイアフラム4を備えていると共にそのダイアフラム4に一体に取り付けられている可動弁体5を備えている。
前記の可動弁体5は、第1ハウジング3と第2ハウジング9により形成されるハウジング内において第1室6側から第2室10側に向かって前進または後退可能に、ハウジング内周壁にガイドされて摺動移動可能にされている。
第1ハウジング3の流入口2と、可動弁体5に設けられたニードル弁13と、第2ハウジング9に設けられた弁座14およびこれに接続する通路12並びに吐出口8とは、同じ中心軸線となるように配置されている。
可動弁体5には、その中央部に、第2室10側に連通する凹部18が設けられ、その凹部18の底部19には、貫通孔20が設けられ、ニードル弁13の基端側軸部が摺動可能に嵌合されている。前記凹部18には、ニードル弁13が配置された状態で、コイルバネからなるニードル弁弾性部材16が収納配置されて蓋材21が固定されて、前記ニードル弁弾性部材16により、ニードル弁13は凹部18の底部19に向かって付勢されているので、ニードル弁13の先端部は、可動弁体5における前記凹部18の底部19から軸方向外側に突出した状態で、弁座14側に向かって配置されている。
前記蓋材21の可動弁体5に対する固定方法としては、可動弁体5の凹部18に、溶着してもよく、凹部18に雌ねじ孔を設けると共に蓋材21の外周部に雄ねじ部を設け、蓋材2を凹部18にねじ込んで固定してもよく、スナップ止めあるいは圧入するようにしてもよい。前記の蓋材21および可動弁体5の材質としては、例えば、金属製あるいは合成樹脂製としてもよい。
可動弁体5と第2ハウジング9との間には、コイルバネからなる主弾性部材15が設けられて、主弾性部材15により可動弁体5を第1室6側に向かって押圧し、図示しない第1ハウジング3に備えられたストッパーまで可動弁体5を移動させ、ニードル弁13を弁座14から離反させ開弁方向に付勢している。
そして、前記第1室6と前記第2室10を連通し流体が通過することで前記第1室6と前記第2室10との間に圧力差を生じさせる絞り部11を備えている。
前記の絞り部11は、可動弁体5にニードル弁13と平行に設けられている。前記の絞り部11は、可動弁体5における第2室6側に設けられた小径凹部22の端部に固定された第1室側オリフィス23を有する筒状蓋材24と、小径凹部22の底部に設けられた第2室側オリフィス25と、これらのオリフィスを遊挿状態で貫通し、第1ハウジング3の天板26内面に近接し、第2ハウジング9における弁座14周囲に設けられた可動弁体受け部17と同面上にその外側に設けられたクリーニングピン受部17Aに当接する長さを有するクリーニングピン27とを備えている。すなわち、クリーニングピン27の軸方向の長さは、天板26内面から第2ハウジング9側のクリーニングピン受け部17Aまでの距離よりもわずかに短い長さとされている。また、第1室側オリフィス23と、第2室側オリフィス25との間に環状の渦流室28を備えている。
前記弁座14は、前記第2室10と下流側流体通路7とを連通する通路12に臨んで設けられ、前記可動弁体5に備えられたニードル弁13に対応して設けられている。
第2ハウジング9と可動弁体5とに係合するように設けられたコイルスプリングからなる主弾性部材15は、前記可動弁体5を前記ニードル弁13と前記弁座14が開弁する方向に所定の弾性力で付勢する部材である。
前記ニードル弁13は、前記可動弁体5に、前記可動弁体5の可動方向と同一の方向に進退自在に保持されている。具体的には、ニードル弁弾性部材16によりニードル弁13を前進可能に押圧し、ニードル弁弾性部材16が押圧されて短縮することで後退可能にされている。前記のニードル弁13の前記弁座14方向への進出は、ニードル弁13におけるフランジ29が前記可動弁体5における凹部18の底部19に支承されることでストップされ、所定の位置で規制される構成となっている。
前記絞り部11は、前記可動弁体5に固定され、ニードル弁弾性部材16が、前記ニードル弁13を前記弁座方向に付勢し、該ニードル弁弾性部材16の前記ニードル弁13と反対側の端部は、前記蓋材21によって受けられている。
前記のような定流量制御装置Aでは、図2に示すように、第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧を越えてくると、可動弁体5と共にニードル弁13が第2室側に向かって押圧されて弁座14に向かって移動し、ニードル弁13の周方向の一部が弁座14に当接・摺動移動して流れをしぼりながら、第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧になるように、すなわち、定流量状態に制御する。図2(b)に拡大して示すように、ニードル弁13の周方向では、ニードル弁13と弁座14との間には、微小間隙Gが形成されて、その微小間隙Gにより流量制御されて、定流量制御状態となる。この状態で、さらに可動弁体5が弁座14側に向かって移動すると、ニードル弁13の基端側がニードル弁弾性部材16を短縮するようにしてニードル弁13が後退移動し、可動弁体5の底部19の底面(第2ハウジング9側の面)は、図3に示すように、第2ハウジング9に設けられた可動弁体受部17に当接するまで前進移動可能にされている。
すなわち、前記第1室6と前記第2室10との差圧が、ニードル弁が閉動作をしてもなお、前記主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧を超えてしまう場合に、前記ニードル弁13が前記弁座14に密着着座した後も、前記可動弁体5は前記第2ハウジング9に備えられた可動弁体受部17まで前記弁座方向に可動して超過差圧分の力を該可動弁体受部17が受けるように構成されている。そのため、ニードル弁13が弁座14に食い込んで、離脱不能になることはなく、安定した動作をする定流量制御装置Aとなっている。
第1参考実施形態の定流量装置Aでは、クリーニングピン27の端部は、第1ハウジング3と第2ハウジング9とに挟まれて、クリーニングピン27の軸方向の位置が規制され、クリーニングピン27は、オリフィス23、25に対してその半径方向に移動可能にされている。
図5から図8には、本願の第2参考実施形態の定流量制御装置Aが示されている。図5〜図7は、それぞれ第1参考実施形態における図1〜図3に対応する状態の図である。
この形態の絞り部11は、複数の略同径のオリフィス23、25が同軸上に直列に並ぶように配置した形態で、同軸上に直列に配置された複数のオリフィス23、25の間には、前記オリフィス23、25の内径より大きな内径を有する空間からなる渦流室28が設けられ、この渦流室28とその両側のオリフィス23、25とに渡ってクリーニングピン27が挿入されている形態とされている。
より具体的には、可動弁体5における中央部には、第1室6側から第2室10側に向かって凹む複数段(図示の場合は2段)の段付き凹部30が形成されており、前記段付き凹部30は、第1室6側よりに、大径凹部31を備え、これに接続するように小径凹部32を備え、前記小径凹部32に接続する環状溝33を備えている。
可動弁体5における大径凹部31の部分で固定される大径キャップ36と、その大径キャップ36に固定される小径キャップ39とは、前記実施形態における蓋材21と可動弁体5との固定関係と同様に、溶着、凹部側の雌ねじ部とこれにねじ込まれる雄ねじ部とのねじ接合、あるいはスナップ止め等により固定されるが、例えば、ねじ接合の場合には次のようにすればよい。
前記大径凹部31の内周壁面には、雌ねじ34が形成されている。前記の環状溝33に、Oリング35が嵌合配置されている。前記Oリング35を押圧する底部を有する大径キャップ36は、その雄ねじ部が前記大径凹部31にねじ込み固定されている。
前記の大径キャップ36の内側には、大径凹部37とこれに接続する小径凹部38aが形成され、大径キャップ36の大径凹部37の内周壁面には、雌ねじ38が形成されている。
前記の大径キャップ36における雌ねじ38に、小径キャップ39における雄ねじ部がねじ込み固定されている。前記の小径キャップ39の底部40には、第1室6側にオリフィス23が形成され、前記オリフィス23を備えた底部40の裏面(第2室側10の裏面)には、前記オリフィス23の径よりも大径の凹部41が形成され、大径キャップ36の底部50の第1室6側の面に、小径キャップ39における底部40の第2室10側の面(前述底部40の裏面と同一面)が当接されることで、前記凹部41による渦流室28が形成されている。大径キャップ36の底部50と、小径キャップ39の底部40の第2室10側の面の周縁部に設けられた環状段部51における第2室側の面と間には、Oリングが押圧されるように介在されている。
前記の小径キャップ39の底部40中央には、第1室側よりに位置するオリフィス23が形成され、大径キャップ36のオリフィス25と小径キャップ39におけるオリフィス23とに渡ってクリーニングピン27が配置され、前記クリーニングピン27の一端部は、ニードル弁13に設けられたテーパー状凹部に遊嵌状態で嵌合され、前記クリーニングピン27の他端部は、第1ハウジング3における天板26から第1室側に突出するように設けられた支承凸部45に、図5に示す状態(第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧より小さく、主弾性部材15を第1室6側に移動させた状態)では、近接する位置となるように設定されている。
前記の大径キャップ36および小径キャップ39とニードル弁13並びにクリーニングピン27は、同軸状に配置されている。前記の大径キャップ36とニードル弁13のフランジ29との間に、コイルバネからなるニードル弁弾性部材16が介在されて、前記ニードル弁13を常時、可動弁体5における凹部18の底部19の上面側に向かって押圧している。
この形態では、小径キャップ39におけるオリフィス23と、大径キャップ36のオリフィス25と、これらの間に形成される渦流室28とこれらに渡って挿入配置されているクリーニングピン27とにより、絞り部11が形成されている。
この形態では、オリフィス25を有する大径キャップ36と、オリフィス23を有する小径キャップ39とは、可動弁体5とは別個の独立したパーツで、大径キャップ36のオリフィス25の径および長さと、小径キャップ39におけるオリフィス23の径と長さと、クリーニングピンの径等を変えた各種の設定とすることにより、オリフィスとクリーニングピンで形成される様々な絞り部11とすることができ、そのような様々な種別の絞り部11を取り替えることによって、任意の流量の定流量弁装置を提供でき、様々な流量設定等の要求に対して安価に対応可能で、コスト的なメリットを出すことができる。
その他の構成は、前記参考実施形態と同様であるので、同様な要素には同様な符号を付している。
この第2参考実施形態においては、オリフィス25を有する大径キャップ36に、オリフィス23を有する小径キャップ39を、同軸状に直列に配置する形態を示したが、適宜、オリフィスを有する中径キャップを、大径キャップ36と小径キャップ39との間に介在させてもよい。
図9には、本考案の第1実施形態の定流量制御装置Aが示されている。
図9に示す第1実施形態と、図1に示す第1参考実施形態と相違する部分は、図9の形態では、図1の形態における蓋材21とニードル弁弾性部材16が省略されており、また、可動弁体5に一体にニードル弁13を設けた形態とされ、底部19には開口部が設けられていない形態とされている。
また、可動弁体5に設けた絞り部11は、筒状蓋材24および第2室側オリフィス25が省略され、可動弁体5に、第2室10側に開口する凹部46が設けられ、その凹部46の軸方向における第1室側端部寄りに、可動弁体5と一体に上面板47が設けられ、その上面板47に第1室側オリフィス23が設けられている。
前記第1室側オリフィス23にクリーニングピン27が遊嵌状態で挿入され、前記第1参考実施形態と同様、前記クリーニングピン27の長さは、第1ハウジング3の天板26内面と第2ハウジング9における弁座14周囲に設けられたテーパー状凹部のクリーニングピン受け部17Aとの間の距離よりも、わずかに短くされている。
前記以外の部分は、第1参考実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付している。
この形態では、主弾性部材15は可動弁体5を介してニードル弁13を開弁方向に付勢している。第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧を越えてくると、可動弁体5と共にニードル弁13が第2室側に向かって押圧されて弁座14に向かって移動し、ニードル弁13の周方向の一部が弁座14に当接・摺動移動して流れをしぼりながら、第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧になるように、すなわち、定流量状態に制御する。図2(b)に示す状態と同様、ニードル弁13の周方向では、弁座14とニードル弁13との間に微小隙間が形成され、その微小間隙により流量制御されて、定流量制御状態となる。
図9に示す状態は、第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧より小さい場合で、主弾性部材15により、可動弁体5を第1室6側に移動させた状態である。微小流量を流しながら定流量状態に制御された状態は、図2(b)あるいは図6(b)に示す状態と同様である。
この形態は、給水圧の急上昇の頻度が少なく、第1室6から第2室10への流体の流通(Cv値)が比較的大きい場合(すなわち、第1室6から第2室10への流体の供給が比較的スムーズで早い場合)に適用でき、構造が単純な分だけ、部品点数が少なく、安価に作ることができる。
前記以外の部分は、第1参考実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号
を付している。
図10には、本考案の第2実施形態の定流量制御装置Aが示されている。
図10に示す第2実施形態と、図5に示す第2参考実施形態と相違する部分は、図10の形態では、図5の形態におけるニードル弁弾性部材16を省略し、可動弁体5に一体にニードル弁13を設けた形態とされている点で相違している。
また、クリーニングピン27は短くされ、その一端側は、第1ハウジング3に設けた支承凸部45に設けた凹部または雌ねじ孔等に圧入またはねじ込みあるいは溶着等により固定され、前記クリーニングピン27の他端部は、可動弁体5における凹部18内に位置して自由端とされ、ニードル弁弾性部材16が省略されたことにより、その端部を支承するために大径キャップ36に設けられていた截頭円錐状の凸部が大径キャップ36から除かれ、平坦面とされている。
この形態では、前記実施形態と同様に、主弾性部材15は可動弁体5を介してニードル弁13を開弁方向に付勢している。第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧を越えてくると、可動弁体5と共にニードル弁13が第2室側に向かって押圧されて弁座14に向かって移動し、ニードル弁13の周方向の一部が弁座14に当接・摺動移動して流れをしぼりながら、第1室6と第2室10の差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧になるように、すなわち、定流量状態に制御する。図6(b)に示す状態と同様、ニードル弁13の周方向では、弁座14とニードル弁13との間に微小隙間が形成され、その微小間隙により流量制御されて、定流量制御状態となる。
前記以外の部分は、第2参考実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付している。
図10に示す状態は、第1室6と第2室10との差圧が主弾性部材15の付勢力によって規定される所定の差圧が小さい場合で、主弾性部材15により、可動弁体5を第1室6側に移動させた状態である。微小流量を流しながら定流量状態に制御された状態は、図2(b)あるいは図6(b)に示す状態と同様である。
この形態は、給水圧の急上昇の頻度が少なく、第1室6から第2室10への流体の流通(Cv値)が比較的大きい場合(すなわち、第1室6から第2室10への流体の供給が比較的スムーズで早い場合)に適用でき、構造が単純な分だけ、部品点数が少なく、安価に作ることができる。