JP3175977U - 示差走査熱量測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度検出器の交換が必要な場合のメンテナンスコストを抑制できるような構造で、炉体と温度検出器の熱膨張差に起因する昇・降温中のベースラインのドリフトやノイズの発生を防止した示差走査熱量測定装置を提供する。
【解決手段】銀製の炉体1に、コンスタンタン製の温度検出器台10をろう付けし、温度検出器台10にコンスタンタン製の温度検出器4を固定ネジを用いて取り付ける。このような構造によれば、炉体1と温度検出器台10はろう付けされていることから、両部材の間で接触状態等は変化しない。また、温度検出器4と温度検出器台10は、同じ材料であるため接触状態等は変化しない。さらに、温度検出器4は固定ネジで取り付けられていることから、温度検出器4の交換が必要になった場合に温度検出器4のみを交換することができる。
【選択図】図1
【解決手段】銀製の炉体1に、コンスタンタン製の温度検出器台10をろう付けし、温度検出器台10にコンスタンタン製の温度検出器4を固定ネジを用いて取り付ける。このような構造によれば、炉体1と温度検出器台10はろう付けされていることから、両部材の間で接触状態等は変化しない。また、温度検出器4と温度検出器台10は、同じ材料であるため接触状態等は変化しない。さらに、温度検出器4は固定ネジで取り付けられていることから、温度検出器4の交換が必要になった場合に温度検出器4のみを交換することができる。
【選択図】図1
Description
本考案は、示差走査熱量測定装置の特に炉体と温度検出器の接触構造の改良に関する。
示差走査熱量測定(DifferentialScanningCalorimetry、以下、DSCと称す)装置は、加熱炉炉体(以下、炉体と称す)中に試料(以下、サンプルと称す)と基準物質(以下、リファレンスと称す)を置き、所定のプログラムに従って炉体の温度を上昇・下降させ、上昇・下降途上のサンプルとリファレンスの時々刻々の温度および温度差を検出しサンプルのエンタルピ変化を測定する装置である。
リファレンスとしては、昇・降温範囲内で相転移などが無い熱的に安定な物質が選ばれる。サンプルに相転移などの熱的な変化が無い場合には、リファレンスおよびサンプルの温度は共に加熱炉温度に追随してなめらかに変化する。またサンプルに融解などの相転移があり、吸熱・発熱などが生じている場合は、サンプルとリファレンスとの間の温度差は相転移中に急激に変化する。
リファレンスおよびサンプルの温度差からサンプルのエンタルピ変化が測定される。リファレンスおよびサンプルは加熱炉内に設けられた温度検出器上に載置されている。リファレンスおよびサンプルの温度はそれぞれ、温度検出器下面に溶接された2対の熱電対により測定される。熱電対の素材にはたとえばクロメル線およびアルメル線などが使用されている。
図3はDSC本体の炉体1の断面構造の一例である。リファレンスおよびサンプルを内蔵したリファレンス容器2とサンプル容器3は温度検出器4上に載置され、温度検出器4はワッシャ5および押え板6を介設して固定ネジ7にて炉体1内方に固定される。炉体1はヒータ8への通電によって所定のプログラムにより昇・降温される。炉体1の上部は炉蓋9により閉止される。
炉蓋9、炉体1および押え板6の材質は通常、熱伝導率の大きい銀などが使用され、温度検出器4にはコンスタンタンなどが使用されている。炉体1には炉体1の温度を計測する炉体熱電対(図示せず)が埋設される。また温度検出器4の下面にはリファレンス容器2の温度Trを計測するリファレンス側熱電対(図示せず)および、サンプル容器3の温度Tsを計測するサンプル側熱電対(図示せず)が固設され、試料と基準物質との温度差△T=Ts−Trが測定される。Tsおよび△Tの関係を解析することにより、試料のエンタルピ変化が測定される。
従来のDSCの構造は以上のとおりであるが、リファレンス容器2およびサンプル容器3が空の状態で昇温させると、理論上リファレンス容器2およびサンプル容器3間に温度差は発生せず、測定チャート上で温度差に依存するベースラインは水平方向の直線になるはずである。しかし、現実にはDSCの分析最高温度はたとえば800℃に達し、温度変化範囲もマイナス150℃〜プラス700℃と非常に広く、炉体1内部の各部品の線膨張率差によって相互に熱歪が生じる。熱歪によって炉体1と温度検出器4の表面状態や接触状態が変化すると炉体1からリファレンス容器2またはサンプル容器3への単位時間あたりの熱量の移動が不均衡になり、昇・降温中のベースラインのドリフトやノイズが発生する。
線膨張率には温度依存性があるため、その値は各温度で異なる。図4は0℃から800℃の範囲で炉体1およびその内方で使用される主要な材料である銀、コンスタンタン、ステンレス鋼(以下、SUSと称す)の線膨張率を示している。図から判明するようにコンスタンタンとSUSの線膨張率は銀の線膨張率より小さい。
図5は以下に記載する熱膨張差の試算に使用したDSCのモデルで、炉体1の材料を銀、温度検出器4の材料をコンスタンタン、固定ネジ7の材料をSUSとし、円周方向の固定ネジ7間の距離を20mm、軸線方向の固定ネジ7の長さを6mmとしている。
図6は図5のモデルについて、炉体1と温度検出器4の円周方向の熱膨張差を示している。温度の基点は常温(25℃)とし、図4と同じく0℃から800℃の範囲を示した。図から、試算に使用した20mmの長さでは700℃において約0.1mmの熱膨張差が発生することが判る。
図7は炉体1と固定ネジ7間の軸線方向の熱膨張差を示している。700℃で約0.05mmの熱膨張差が発生している。温度検出器4が直径2mmの固定ネジ7(M2ネジ)4本で固定されているとして、上記の軸線方向の熱膨張差0.05mmに相当する力は約6,000N(ニュートン)になる。M2ネジ4本を通常の締め付けトルクでねじ込んだ場合の初期締め付け力は約600Nであるから、上記の熱膨張差の力は締め付け力の約10倍に相当する。但し、上記は銀の膨張の力でSUSの固定ネジ7が伸ばされる例であるが、実際は銀の強度不足でワッシャ5が押え板6に沈みこむ現象があるため、10倍の増加までにはならないものの、かなりの締め付けトルク増加があることが理解される。なお、軸線方向の熱膨張差には温度検出器4も関与するが、温度検出器4は薄い円板で大きな関与は無く無視できる。
一方、温度検出器4は図6のように昇・降温時に円周方向に伸張、または圧縮の力を受け、炉体1と温度検出器4の界面は昇・降温持に相互に滑動する必要があるが、上記の締め付け力の増加で滑動が阻害されると、温度検出器4は一時的に、または恒久的に変形する。この締め付け力の増加は高温域での原子相互拡散による炉体1と温度検出器4と押え板6の相互固着を助長し、固着すると温度検出器4の変形は激しくなる。
固着の発生は昇・降温の繰り返しで、温度検出器4の表面の酸化皮膜を不規則に剥離させ、表面に荒れを生じさせる。このことは実際にコンスタンタン製の温度検出器4で認められている。この表面荒れは炉体1とリファレンス容器2またはサンプル容器3との熱の安定な移動を不規則に阻害し、昇・降温の繰り返しにより固着箇所をより拡大させる。このため前記のように、熱歪によって炉体1と温度検出器4の表面状態や接触状態が変化すると炉体1からリファレンス容器2またはサンプル容器3への単位時間あたりの熱量の移動が不均衡になり、昇・降温中のベースラインのドリフトやノイズが発生する(以上、特許文献1)。
ここで、図3の構造における軸線方向の熱膨張差の発生原因は銀製炉体1とSUS製の固定ネジ7の線膨張係数差によるので、固定ネジ7の材質を銀にすることが可能であれば問題は解決するが、銀は強度が弱く、時効軟化の性質もあり、また適切な締め付け力を得ようとするとネジ頭も変形する。さらに、銀とコンスタンタンの線膨張係数差は大きいため、固定ネジ7に銀を用いると、軸線方向の熱膨張差がいっそう大きくなる問題もある。
一方、図3の構造のように、銀製の炉体1とコンスタンタン製の温度検出器4を、ネジ止めするのではなく、両者をろう付けで固定することによって、炉体と検出器を一体化させる構造とすることも考えられる(特許文献2)。このような構造は、炉体と温度検出器がろう付けで固定されることから、炉体と温度検出器の間に熱膨張差が発生しても、温度検出器と炉体の表面状態や接触状態は変化しないことから、昇・降温中のベースラインのドリフトやノイズの発生を防止することができる。
しかし、測定中に、サンプルから塩素等の腐食性ガスが発生する場合やサンプルが燃焼する場合に、温度検出器は腐食又は酸化により劣化することから、交換が必要になる場合がある。この場合に、炉体と温度検出器がろう付けされている構造では、温度検出器が固定された炉体ごと交換する必要が生じるため、メンテナンスコストが非常に高額となる。
そこで、本考案は、温度検出器の交換が必要な場合のメンテナンスコストを抑制できるような構造で、炉体と温度検出器の熱膨張差に起因する昇・降温中のベースラインのドリフトやノイズの発生を防止することができるDSCを提供することを目的とする。
前記課題を解決するためになされた考案は、試料および参照試料を収容する炉体と、前記炉体を加熱する加熱手段と、前記炉体内に配置され、前記炉体とは異なる材料で作られた温度検出器を備えた示差走査熱量測定装置において、前記炉体内には前記温度検出器と同じ材料で作られ、前記炉体とろう付けされた温度検出器台が配置されており、前記温度検出器は取り外し可能な取付手段によって前記温度検出器台に取り付けられていることを特徴とする。
このように、温度検出器と温度検出器台が同じ材料で作られたものであれば、温度検出器と温度検出器台の間では熱膨張差が発生しないため、両部材の間で表面状態や接触状態は発生しない。また、温度検出器台と炉体は異なる材料であっても、ろう付けされているため、温度検出器台と炉体の間で表面状態や接触状態は変化しない。したがって、昇・降温中のベースラインのドリフトやノイズの発生を防止することができる。
さらに、本考案は、前記取付手段はネジであり、前記温度検出台に固定されていることを特徴とする。
温度検出器が劣化してその交換が必要になった場合にも、温度検出器は他の部材とろう付け等によって固定されているのではなく、温度検出器が当該温度検出器台に載置され、ネジのように取り外し可能な取付手段で取り付けられているため、温度検出器を容易に交換することができる。
前記のように、温度検出器台と炉体、温度検出器台と温度検出器の間の円周方向の表面状態や接触状態の変化を防止できたとしても、軸線方向の熱膨張差によってもこれらの間に表面状態や接触状態の変化は少なからず生じ得るが、温度検出器を温度検出器台に取り付ける際に、温度検出器を通したネジを温度検出器台に固定し、ネジの材料に温度検出器や温度検出器台と熱膨張差が同じか異なってもその差異が大きくない材料を用いれば、軸線方向の熱膨張差も低減することができるため、温度検出器台と炉体、温度検出器台と温度検出器の間の表面状態や接触状態の変化を低減させることができる。
本考案によれば、温度検出器台と炉体、温度検出器台と温度検出器の間の表面状態や接触状態の変化を低減させることができ、炉体と温度検出器の熱膨張差に起因する昇・降温中のベースラインのドリフトやノイズの発生を防止することができるDSCを提供することが可能となる。また、温度検出器が取り外し可能な方法で温度検出器台と締結されているため、メンテナンスコストが高額にならないで済む。
以下、本考案に係る示差走査熱量測定装置の実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。なお、従来技術と共通する部材についての説明は省略するものとする。
炉体1の材料には銀が用いられており、炉体1は所定プログラムで動くヒータ8から加わる熱量によって、温度が昇降する。
温度検出器4の材料には、例えば、コンスタンタンが使用され、銀製の炉体1とは熱膨張差が生じるため、温度検出器4と炉体1を直接締結等すると、温度の変化に伴い表面状態や接触状態に変化が生じ、測定結果にベースラインのドリフトやノイズが発生するおそれがあり、これを防止する必要がある。また、温度検出器4が劣化した場合に交換を容易に行えるようにすることも考慮する必要がある。
そこで、まず、炉体1に、温度検出器4と同じ材料(ここでは、コンスタンタンを使用)で作られた温度検出器台10をろう付けする。
このような構成によれば、温度検出器台10と炉体1はろう付けにより一体となっていることから、両部材の間で熱膨張差が発生しても、両部材の間で擦動などは生じず、表面状態や接触状態に変化は生じない。例えば、ヒータの加熱温度が上昇する場合、前述の通り、銀とコンスタンタンの線膨張率は銀の方が高いことから、炉体1の方が温度検出器台10よりも円周方向へ大きく膨張することになる。しかし、炉体1と温度検出器台10はろう付けされていることから、ろう付け面における両部材の膨張量はほぼ同じになるはずである。この場合、銀とコンスタンタンでは、銀の方が変形し易いことから、ろう付け面においては、温度検出器台10の変化量に炉体1の変化量が概ね従属することになる。なお、炉体1と温度検出器台10の結合方法は、ろう付け以外の方法でも同様の効果が得られる結合方法であればよいため、拡散結合等の結合方法を用いてもよい。
そして、炉体1へろう付けした温度検出器台10に、温度検出器4を取り付ける。ここで、温度検出器4の温度検出器台10への取り付けは、固定ネジ7を、押え板6と温度検出器4に通し、メネジ加工をした温度検出器台10へ固定することにより行う。
ここで、押え板6を用いる理由は、温度検出器4は非常に薄く(例えば、0.1mm〜0.2mm)、ネジ7で直接固定すると均一に押圧し難いことから、温度検出器4より厚い押え板6(例えば、1mm〜2mm)を用いて面で押圧し、均一に押圧する点にある。
なお、温度検出器台10の厚みは、温度変化により変形する際に、炉体1の変化に伴い発生し、温度検出器台10にかかる熱応力によって温度検出器台10が大幅に変形しない程度の厚みにする必要があることから、例えば、3mm〜4mm程度にする。
また、押え板6の材料も温度検出器4と同じ材料(ここでは、コンスタンタン)であることが望ましい。
なお、温度検出器台10の厚みは、温度変化により変形する際に、炉体1の変化に伴い発生し、温度検出器台10にかかる熱応力によって温度検出器台10が大幅に変形しない程度の厚みにする必要があることから、例えば、3mm〜4mm程度にする。
また、押え板6の材料も温度検出器4と同じ材料(ここでは、コンスタンタン)であることが望ましい。
このように、温度検出器4は、同じ材料で作られた温度検出器台10に取り付けられることから、両部材の間で熱膨張差は発生せず、円周方向における部材間の擦動は生じないため、表面状態や接触状態に変化は生じない。また、温度検出器4と押え板6も同じ材料で作られていることから、両部材の間でも表面状態や接触状態に変化は生じない。
さらに、本実施例では、固定ネジ7を、押え板6と温度検出器4に通し、温度検出器台10へ固定しているが、このように軸線方向にネジ止めにすることで、温度検出器4、押え板6、固定ネジ7、温度検出器台10を一体とすると、これらの間における軸線方向における熱膨張差により、部材間の表面状態や接触状態が変化するおそれがある。しかし、本実施例では、温度検出器4、押え板6、温度検出器台10はコンスタンタンを用いていることから、これらの部材間における熱膨張差は発生しない。また、固定ネジ7にはSUSを用いているが、SUSとコンスタンタンの熱膨張差は比較的小さいことから、軸線方向の押圧量の変化による表面状態や接触状態の変化は小さいと考えられるため、円周方向の熱膨張差ほど問題とはならない。なお、本実施例において、固定ネジ7の材料には入手性を考慮してSUS製であることとしたが、その材料にコンスタンタンを用いれば、温度検出器4、押え板6、固定ネジ7、温度検出器台10の全てがコンスタンタン製となるため、これらの間における熱膨張差は発生しないことから、軸線方向の押圧量の変化による表面状態や接触状態の変化も防ぐことができる。
また、温度検出器4は固定ネジ7によって取り付けられていることから、温度検出器4が劣化してその交換が生じた場合にも容易に交換することができるため、メンテナンスの費用も抑制することが可能となる。
1 炉体
2 リファレンス容器
3 サンプル容器
4 温度検出器
5 ワッシャ
6 押え板
7 固定ネジ
8 ヒータ
9 炉蓋
10 温度検出器台
11 ろう
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11 ろう
Claims (2)
- 試料および参照試料を収容する炉体と、
前記炉体を加熱する加熱手段と、
前記炉体内に配置され、前記炉体とは異なる材料で作られた温度検出器を備えた示差走査熱量測定装置において、
前記炉体内には前記温度検出器と同じ材料で作られ、前記炉体とろう付けされた温度検出器台が配置されており、前記温度検出器は取り外し可能な取付手段によって前記温度検出器台に取り付けられていることを特徴とする示差走査熱量測定装置。 - 前記取付手段はネジであり、前記温度検出台に固定されていることを特徴とする請求項1に記載された示差走査熱量測定装置。
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP3175977U true JP3175977U (ja) | 2012-06-07 |
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JP2012001569U Expired - Lifetime JP3175977U (ja) | 2012-03-22 | 2012-03-22 | 示差走査熱量測定装置 |
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