JP3174396B2 - 電子エネルギー損失微細構造測定方法および装置 - Google Patents
電子エネルギー損失微細構造測定方法および装置Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子線を試料表面に照
射し、試料表面において非弾性散乱された電子のエネル
ギーを分析することにより電子エネルギー損失微細構造
を測定する方法および装置に関する。
射し、試料表面において非弾性散乱された電子のエネル
ギーを分析することにより電子エネルギー損失微細構造
を測定する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子エネルギー損失微細構造(以後、E
ELFSと称す)は、高エネルギーの電子(一次電子)
が原子に入射すると、原子を構成している芯電子が連続
状態ヘ励起された二次電子となり、前記原子の周囲に存
在する原子によって散乱をうけ干渉することによって発
現する。この二次電子の干渉現象は、広域X線吸収微細
構造(以後、EXAFSと称す)の発現原理と同じであ
る。したがって、EXAFSと同様に、EELFSを物
質の局所構造の解析手段として用いることができる。
ELFSと称す)は、高エネルギーの電子(一次電子)
が原子に入射すると、原子を構成している芯電子が連続
状態ヘ励起された二次電子となり、前記原子の周囲に存
在する原子によって散乱をうけ干渉することによって発
現する。この二次電子の干渉現象は、広域X線吸収微細
構造(以後、EXAFSと称す)の発現原理と同じであ
る。したがって、EXAFSと同様に、EELFSを物
質の局所構造の解析手段として用いることができる。
【0003】EELFSの原理を理解するために理論的
な研究が進められている。第1図は電子が原子に入射
し、非弾性散乱された場合について電子の運動量ベクト
ルを示し、pは入射電子の運動量ベクトル、p′は散乱
電子の運動量ベクトル、Δpはpとp′の差である運動
量変化ベクトルである。Δpが十分小さい場合には、非
弾性散乱電子の強度はEXAFSの場合と同様に双極子
近似により記述でき、EELFSとEXAFSとは等価
になる。したがって、EELFS測定により得られたデ
ータ、即ち、非弾性散乱電子における損失エネルギーと
強度との関係に対し、EXAFSに用いられるのと同様
なデータ処理手法を適用して、EELFS測定データを
解析することができる。この解析の結果としては、動径
分布関数がおもに得られる。Δpを小さくするために
は、入射電子の非弾性散乱における散乱角(運動量ベク
トルpとp´のなす角)を小さくする、あるいは、pと
p´を小さくする必要がある。
な研究が進められている。第1図は電子が原子に入射
し、非弾性散乱された場合について電子の運動量ベクト
ルを示し、pは入射電子の運動量ベクトル、p′は散乱
電子の運動量ベクトル、Δpはpとp′の差である運動
量変化ベクトルである。Δpが十分小さい場合には、非
弾性散乱電子の強度はEXAFSの場合と同様に双極子
近似により記述でき、EELFSとEXAFSとは等価
になる。したがって、EELFS測定により得られたデ
ータ、即ち、非弾性散乱電子における損失エネルギーと
強度との関係に対し、EXAFSに用いられるのと同様
なデータ処理手法を適用して、EELFS測定データを
解析することができる。この解析の結果としては、動径
分布関数がおもに得られる。Δpを小さくするために
は、入射電子の非弾性散乱における散乱角(運動量ベク
トルpとp´のなす角)を小さくする、あるいは、pと
p´を小さくする必要がある。
【0004】EELFSの測定方法は、試料を透過した
電子をエネルギー分析する透過型と、試料から反射した
電子をエネルギー分析する反射型の2つに分類される。
Δpを小さくするため、透過型EELFS測定装置で
は、透過電子のうち、前方に散乱された電子を検出す
る。また、反射型EELFS測定装置では、試料表面と
平行に近くなるほどの低角度で電子を試料表面に入射さ
せ、同様な低角度で散乱された電子を検出する。
電子をエネルギー分析する透過型と、試料から反射した
電子をエネルギー分析する反射型の2つに分類される。
Δpを小さくするため、透過型EELFS測定装置で
は、透過電子のうち、前方に散乱された電子を検出す
る。また、反射型EELFS測定装置では、試料表面と
平行に近くなるほどの低角度で電子を試料表面に入射さ
せ、同様な低角度で散乱された電子を検出する。
【0005】従来のこの種の反射型EELFS測定装置
の構成を第2図に示す。201は電子銃、202はエネ
ルギー分析器、203は試料台及び試料、204は真空
槽である。エネルギー分析器202は真空槽204に固
定されている。電子銃201から発生させた電子を試料
203の表面に入射させ、その表面で散乱された電子を
エネルギー分析器202に導く。エネルギー分析器20
2を制御することにより、散乱電子における損失エネル
ギーと強度との関係を測定する。従来のこの種の装置で
は、電子の試料表面ヘの入射角、エネルギー分析器に導
かれる散乱電子の散乱角がほぼ固定されており、このた
めに電子銃や試料の取り付け角度や位置に対しては微調
整するための機構が備えられている。
の構成を第2図に示す。201は電子銃、202はエネ
ルギー分析器、203は試料台及び試料、204は真空
槽である。エネルギー分析器202は真空槽204に固
定されている。電子銃201から発生させた電子を試料
203の表面に入射させ、その表面で散乱された電子を
エネルギー分析器202に導く。エネルギー分析器20
2を制御することにより、散乱電子における損失エネル
ギーと強度との関係を測定する。従来のこの種の装置で
は、電子の試料表面ヘの入射角、エネルギー分析器に導
かれる散乱電子の散乱角がほぼ固定されており、このた
めに電子銃や試料の取り付け角度や位置に対しては微調
整するための機構が備えられている。
【0006】ところで、従来、EELFSの原理は双極
子近似により解釈されていた。双極子遷移振幅の大きさ
は、双極子モーメントのベクトルの方向に依存してい
る。すなわち、二次電子の始状態がs状態にある場合、
双極子遷移振幅の大きさは、二次電子の放出方向が双極
子モーメントのベクトルの方向に平行であれば大きく、
垂直であれば小さくなる。EELFS測定において、二
次電子の放出量は、運動量変化ベクトルΔpと平行な方
向には多く、垂直な方向には少なくなる。このことか
ら、従来の反射型EELFS測定方法あるいは装置で
は、試料表面と平行に近くなるほどの低角度で電子を試
料表面に入射させ、同様な低角度で散乱された電子を検
出しているためにΔpの方向は試料表面にほぼ垂直とな
り、試料表面にほぼ垂直な方向に存在する原子に関する
情報が得られる。また、従来の透過型EELFS測定方
法あるいは装置でも、試料により前方に散乱された電子
を検出しているためにΔpの方向は試料表面にほぼ垂直
となり、試料表面にほぼ垂直な方向に存在する原子に関
する情報が得られる。
子近似により解釈されていた。双極子遷移振幅の大きさ
は、双極子モーメントのベクトルの方向に依存してい
る。すなわち、二次電子の始状態がs状態にある場合、
双極子遷移振幅の大きさは、二次電子の放出方向が双極
子モーメントのベクトルの方向に平行であれば大きく、
垂直であれば小さくなる。EELFS測定において、二
次電子の放出量は、運動量変化ベクトルΔpと平行な方
向には多く、垂直な方向には少なくなる。このことか
ら、従来の反射型EELFS測定方法あるいは装置で
は、試料表面と平行に近くなるほどの低角度で電子を試
料表面に入射させ、同様な低角度で散乱された電子を検
出しているためにΔpの方向は試料表面にほぼ垂直とな
り、試料表面にほぼ垂直な方向に存在する原子に関する
情報が得られる。また、従来の透過型EELFS測定方
法あるいは装置でも、試料により前方に散乱された電子
を検出しているためにΔpの方向は試料表面にほぼ垂直
となり、試料表面にほぼ垂直な方向に存在する原子に関
する情報が得られる。
【0007】このように、双極子近似に基づいた理論を
根拠としたEELFS測定方法あるいは装置では、非弾
性散乱を生ずる原子と試料表面にほぼ垂直な方向に存在
する原子とに関する情報だけしか得られないという問題
点がある。
根拠としたEELFS測定方法あるいは装置では、非弾
性散乱を生ずる原子と試料表面にほぼ垂直な方向に存在
する原子とに関する情報だけしか得られないという問題
点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、双極
子近似を含み、さらに一般性のあるEELFSの理論を
確立し、この理論に基づくEELFSの理諭解析を行っ
た結果を根拠として、非弾性散乱を生ずる原子とこの原
子に対して様々な方向に存在する原子とに関する情報を
得ることができる電子エネルギー損失微細構造測定方法
および装置を提供することにある。
子近似を含み、さらに一般性のあるEELFSの理論を
確立し、この理論に基づくEELFSの理諭解析を行っ
た結果を根拠として、非弾性散乱を生ずる原子とこの原
子に対して様々な方向に存在する原子とに関する情報を
得ることができる電子エネルギー損失微細構造測定方法
および装置を提供することにある。
【0009】
【問題を解決するための手段】本発明は、運動量変化ベ
クトルΔpがΔp〜Oと近似できないほど大きな値とな
るEELFS測定を対象とした理論解析法を開発し、こ
の理論解析法を用いたEELFSの理論解析結果を根拠
として、非弾性散乱原子と、この非弾性散乱原子に対し
て特定した方向に存在する原子とに関する情報が得られ
るようにしたことにあり、このために特許請求の範囲の
各請求項に記載の本発明を完成した。
クトルΔpがΔp〜Oと近似できないほど大きな値とな
るEELFS測定を対象とした理論解析法を開発し、こ
の理論解析法を用いたEELFSの理論解析結果を根拠
として、非弾性散乱原子と、この非弾性散乱原子に対し
て特定した方向に存在する原子とに関する情報が得られ
るようにしたことにあり、このために特許請求の範囲の
各請求項に記載の本発明を完成した。
【0010】運動量変化ベクトルΔpが大きなEELF
S測定において、EELFSから試料の原子構造に関す
る正確な情報を得るためには、EELFSの挙動を正確
に表す表式を求め、この表式を解析することによって、
測定条件と、得られるEELFS信号と、試料の原子構
造との間の関係を明らかにする必要がある。
S測定において、EELFSから試料の原子構造に関す
る正確な情報を得るためには、EELFSの挙動を正確
に表す表式を求め、この表式を解析することによって、
測定条件と、得られるEELFS信号と、試料の原子構
造との間の関係を明らかにする必要がある。
【0011】まず、EELFSの挙動を表す表式を、量
子力学を用いて求めた。非弾性散乱断面積の計算を既約
テンソル展開を用いて行い、Δpが大きい場合にも適用
できるEELFSの正確な表式を得た。そのなかで、二
次電子の後方散乱による干渉効果を記述するEELFS
振幅の成分を次式に示す。
子力学を用いて求めた。非弾性散乱断面積の計算を既約
テンソル展開を用いて行い、Δpが大きい場合にも適用
できるEELFSの正確な表式を得た。そのなかで、二
次電子の後方散乱による干渉効果を記述するEELFS
振幅の成分を次式に示す。
【0012】
【数1】
【0013】式(1)は、Δp→Oの極限においてEX
AFSの表式と一致し、EXAFSの表式をさらに一般
化したものである。
AFSの表式と一致し、EXAFSの表式をさらに一般
化したものである。
【0014】反射型EELFS測定で得られる信号を式
(1)を用いてシミュレートし、運動量変化ベクトルΔ
pとEELFS信号との関係を調べた結果について説明
する。
(1)を用いてシミュレートし、運動量変化ベクトルΔ
pとEELFS信号との関係を調べた結果について説明
する。
【0015】第3図は本シミュレーションに用いた原子
構造のモデルを示す。試料表面上にXY座標を設定して
いる。A、B、Cは炭素原子であり、炭素原子Aにおい
て入射電子が非弾性散乱を起こす。炭素原子AおよびB
は試料表面上に、CはAの下方にある。炭素原子A−B
間の距離は1.54Å、A−C間の距離は3.08Åで
あり、シミュレーション結果をわかりやすくするため、
A−B間、A−C間の距離を故意に大きく違えている。
入射電子のエネルギーは2000eV、入射角度85
度、二次電子のエネルギー範囲は50〜350eVであ
る。検出角θによって運動量変化ベクトルΔpの値が異
なる。幾種類かの検出角θに対してEELFS信号をシ
ミュレートした。シミュレーションで得たEELFS信
号を二次電子の波数についてフーリエ変換し、炭素原子
Aを原点とした動径分布関数を求めた。その結果を第4
図に示す。第4図の曲線に現れているピークの位置は、
炭素原子Aと炭素原子Aの周囲に存在する炭素原子B、
Cとの距離、即ち、原子間距離を反映している。検出角
θが60度以下と小さい場合には試料表面にある炭素原
子Bまでの距離が、θが70度以上と大きい場合には炭
素原子Aの下方にある炭素原子Cまでの距離が曲線のピ
ーク値に優勢に現れている。このことは、検出角θの設
定により運動量変化ベクトルΔpの方向を適切に選ぶこ
とによって、非弾性散乱原子の周囲に存在する原子のう
ち、特定の方向に存在する原子に関する情報を選択して
得ることができることを示している。
構造のモデルを示す。試料表面上にXY座標を設定して
いる。A、B、Cは炭素原子であり、炭素原子Aにおい
て入射電子が非弾性散乱を起こす。炭素原子AおよびB
は試料表面上に、CはAの下方にある。炭素原子A−B
間の距離は1.54Å、A−C間の距離は3.08Åで
あり、シミュレーション結果をわかりやすくするため、
A−B間、A−C間の距離を故意に大きく違えている。
入射電子のエネルギーは2000eV、入射角度85
度、二次電子のエネルギー範囲は50〜350eVであ
る。検出角θによって運動量変化ベクトルΔpの値が異
なる。幾種類かの検出角θに対してEELFS信号をシ
ミュレートした。シミュレーションで得たEELFS信
号を二次電子の波数についてフーリエ変換し、炭素原子
Aを原点とした動径分布関数を求めた。その結果を第4
図に示す。第4図の曲線に現れているピークの位置は、
炭素原子Aと炭素原子Aの周囲に存在する炭素原子B、
Cとの距離、即ち、原子間距離を反映している。検出角
θが60度以下と小さい場合には試料表面にある炭素原
子Bまでの距離が、θが70度以上と大きい場合には炭
素原子Aの下方にある炭素原子Cまでの距離が曲線のピ
ーク値に優勢に現れている。このことは、検出角θの設
定により運動量変化ベクトルΔpの方向を適切に選ぶこ
とによって、非弾性散乱原子の周囲に存在する原子のう
ち、特定の方向に存在する原子に関する情報を選択して
得ることができることを示している。
【0016】ここで、第4図の曲線に現れているピーク
の位置は、第3図のモデルからみて、原子間距離を正し
く表していない。正しい原子間距離は、第4図のピーク
位置に対して、式(1)を用いて計算された正確な位相
のずれの補正を施すことによって求めることができる。
の位置は、第3図のモデルからみて、原子間距離を正し
く表していない。正しい原子間距離は、第4図のピーク
位置に対して、式(1)を用いて計算された正確な位相
のずれの補正を施すことによって求めることができる。
【0017】運動量変化ベクトルΔpを変化させる要素
としては、入射電子の運動量ベクトルpの方向、散
乱電子の運動量ベクトルp´の方向、pの大きさ、
p´の大きさの4つがある。本発明では、1回のEEL
FS測定において、運動量変化ベクトルΔpの方向を、
任意に設定したある方向に保った状態で行う。この1回
のEELFS測定中におけるΔpの方向の変化が無視で
きるような測定系を組むことが必要である。これは、入
射電子の加速電圧を比較的高くして、pの方向あるいは
p´の方向を変化させることによって、運動量変化ベク
トルΔpの方向を選択することで実現できる。より具体
的には、電子銃、エネルギー分析器、例えば試料台等の
試料保持手段の相互の回転位置関係を変化させる回転機
構を設け、これら相互の位置関係を変化させることによ
り、運動量変化ベクトルΔpの方向を可変可能とした装
置を例示することができる。
としては、入射電子の運動量ベクトルpの方向、散
乱電子の運動量ベクトルp´の方向、pの大きさ、
p´の大きさの4つがある。本発明では、1回のEEL
FS測定において、運動量変化ベクトルΔpの方向を、
任意に設定したある方向に保った状態で行う。この1回
のEELFS測定中におけるΔpの方向の変化が無視で
きるような測定系を組むことが必要である。これは、入
射電子の加速電圧を比較的高くして、pの方向あるいは
p´の方向を変化させることによって、運動量変化ベク
トルΔpの方向を選択することで実現できる。より具体
的には、電子銃、エネルギー分析器、例えば試料台等の
試料保持手段の相互の回転位置関係を変化させる回転機
構を設け、これら相互の位置関係を変化させることによ
り、運動量変化ベクトルΔpの方向を可変可能とした装
置を例示することができる。
【0018】
【実施例】本発明の実施例による電子エネルギー損失微
細構造測定装置の構成を第5図に示す。501は電子
銃、502は試料台、503は試料、504はエネルギ
ー分析器、505は真空槽、506は電子銃501から
発生した電子線、507は電子線506が試料503面
を照射する位置であり、508及び509は試料台50
2の持つ回転機構IおよびIIを示し、510はエネルギ
ー分析器504の持つ回転機構を示す。上記電子銃50
1は真空槽505に固定されており、試料台502、エ
ネルギー分析器504は、真空槽505内に設置されて
いる。試料台502は回転機構I508およびII509
を備えている。回転機構I508は電子線照射位置50
7を通り、試料表面と平行な軸を中心とする回転であ
り、電子線506の試料503面への入射角を変化させ
るように試料台502を回転する。回転機構II509
は、電子線照射位置507を通り、試料表面に垂直な軸
を中心とする回転であり、電子線506の試料503面
への入射角を一定に保つように試料台502を回転す
る。エネルギー分析器504は、試料台502の回転機
構I508と同一の回転軸をもつ回転機構510を備え
ている。これらの回転機構はすべてモーターによって駆
動され、それらの回転量を外部から制御できる。
細構造測定装置の構成を第5図に示す。501は電子
銃、502は試料台、503は試料、504はエネルギ
ー分析器、505は真空槽、506は電子銃501から
発生した電子線、507は電子線506が試料503面
を照射する位置であり、508及び509は試料台50
2の持つ回転機構IおよびIIを示し、510はエネルギ
ー分析器504の持つ回転機構を示す。上記電子銃50
1は真空槽505に固定されており、試料台502、エ
ネルギー分析器504は、真空槽505内に設置されて
いる。試料台502は回転機構I508およびII509
を備えている。回転機構I508は電子線照射位置50
7を通り、試料表面と平行な軸を中心とする回転であ
り、電子線506の試料503面への入射角を変化させ
るように試料台502を回転する。回転機構II509
は、電子線照射位置507を通り、試料表面に垂直な軸
を中心とする回転であり、電子線506の試料503面
への入射角を一定に保つように試料台502を回転す
る。エネルギー分析器504は、試料台502の回転機
構I508と同一の回転軸をもつ回転機構510を備え
ている。これらの回転機構はすべてモーターによって駆
動され、それらの回転量を外部から制御できる。
【0019】第5図に示した電子エネルギー損失微細構
造測定装置の制御ブロック図を第6図に示す。601は
エネルギー分析器、602は電子銃、603は試料台、
604は真空槽、605はコンピューター、606はイ
ンターフェースである。エネルギー分析器601、電子
銃602、試料台603、真空槽604は、それぞれ、
エネルギー分析器504、電子銃501、試料台50
2、真空槽505をブロックで示したものである。コン
ピューター605は、インターフェース606を介し
て、エネルギー分析器601、電子銃602、試料台6
03を制御する。制御項目は、エネルギー分析器601
では上記回転機構による回転角、エネルギー分析のため
の動作条件および電子線検出量などであり、電子銃50
2では加速電圧、電子線電流値などであり、試料台60
3では回転機構I及びIIよる回転角などである。
造測定装置の制御ブロック図を第6図に示す。601は
エネルギー分析器、602は電子銃、603は試料台、
604は真空槽、605はコンピューター、606はイ
ンターフェースである。エネルギー分析器601、電子
銃602、試料台603、真空槽604は、それぞれ、
エネルギー分析器504、電子銃501、試料台50
2、真空槽505をブロックで示したものである。コン
ピューター605は、インターフェース606を介し
て、エネルギー分析器601、電子銃602、試料台6
03を制御する。制御項目は、エネルギー分析器601
では上記回転機構による回転角、エネルギー分析のため
の動作条件および電子線検出量などであり、電子銃50
2では加速電圧、電子線電流値などであり、試料台60
3では回転機構I及びIIよる回転角などである。
【0020】つぎに、本実施例によるEELFS測定方
法を説明する。測定条件として、電子銃501の加速電
圧を2kV、電子銃501から出射した電子線の試料5
03への入射角を87度に設定している。コンピュータ
ー605は電子線の試料503への入射角が87度にな
るように、試料台502(603)の回転機構Iを制御
する。つぎに、コンピューター605は、エネルギー分
析器504(601)の回転機構を制御し、検出角θが
85度になるように、エネルギー分析器504を設定す
る。ここで、エネルギー分析器504が散乱電子を取り
込む角度は高々±2度であり、エネルギー分析器504
は検出角θ=85゜の方向に散乱された電子を検出す
る。即ち、散乱電子の運動量ベクトルp′の方向を定め
ていることになる。この状態において、試料503面に
電子線を照射し、試料503によって散乱された電子の
エネルギーを、エネルギー分析器504をコンピュータ
ー605により制御して分析する。この結果、コンピュ
ーター605には、電子エネルギー損失スペクトルが読
み込まれる。この電子エネルギー損失スペクトル上にの
っている電子エネルギー損失微細構造の部分について、
コンピューター605によりフーリエ変換を施し、動径
分布関数を求める。このようにしてた求めた動径分布関
数は、第4図のθ=85゜に相当し、試料503面にほ
ぼ垂直な方向の動径分布関数が得られる。つぎに、コン
ピューター605により、検出角θが0度となるよう
に、即ち、試料503面の垂直方向に散乱した電子を検
出するように、エネルギー分析器504(601)の回
転角を制御する。この状態において、前回と同様にして
動径分布関数を求める。このようにしてた求めた動径分
布関数は第4図のθ=0°に相当し、試料503面にほ
ぼ平行な方向の動径分布関数が得られる。ここでは、検
出角θ=85゜と0゜の場合を説明したが、そのほかの
検出角θに対しても同様にして、動径分布関数を求める
ことができる。
法を説明する。測定条件として、電子銃501の加速電
圧を2kV、電子銃501から出射した電子線の試料5
03への入射角を87度に設定している。コンピュータ
ー605は電子線の試料503への入射角が87度にな
るように、試料台502(603)の回転機構Iを制御
する。つぎに、コンピューター605は、エネルギー分
析器504(601)の回転機構を制御し、検出角θが
85度になるように、エネルギー分析器504を設定す
る。ここで、エネルギー分析器504が散乱電子を取り
込む角度は高々±2度であり、エネルギー分析器504
は検出角θ=85゜の方向に散乱された電子を検出す
る。即ち、散乱電子の運動量ベクトルp′の方向を定め
ていることになる。この状態において、試料503面に
電子線を照射し、試料503によって散乱された電子の
エネルギーを、エネルギー分析器504をコンピュータ
ー605により制御して分析する。この結果、コンピュ
ーター605には、電子エネルギー損失スペクトルが読
み込まれる。この電子エネルギー損失スペクトル上にの
っている電子エネルギー損失微細構造の部分について、
コンピューター605によりフーリエ変換を施し、動径
分布関数を求める。このようにしてた求めた動径分布関
数は、第4図のθ=85゜に相当し、試料503面にほ
ぼ垂直な方向の動径分布関数が得られる。つぎに、コン
ピューター605により、検出角θが0度となるよう
に、即ち、試料503面の垂直方向に散乱した電子を検
出するように、エネルギー分析器504(601)の回
転角を制御する。この状態において、前回と同様にして
動径分布関数を求める。このようにしてた求めた動径分
布関数は第4図のθ=0°に相当し、試料503面にほ
ぼ平行な方向の動径分布関数が得られる。ここでは、検
出角θ=85゜と0゜の場合を説明したが、そのほかの
検出角θに対しても同様にして、動径分布関数を求める
ことができる。
【0021】前記のEELFS測定では、電子線の試料
503への入射角が87度になるようにしたが、この入
射角をその他の角度にする場合には、試料台502(6
03)の回転機構Iを制御することによって行う。この
ときの検出角θの設定は、コンピューター605が試料
台502の設定角を考慮してエネルギー分析器504
(601)の回転機構を制御することにより行う。
503への入射角が87度になるようにしたが、この入
射角をその他の角度にする場合には、試料台502(6
03)の回転機構Iを制御することによって行う。この
ときの検出角θの設定は、コンピューター605が試料
台502の設定角を考慮してエネルギー分析器504
(601)の回転機構を制御することにより行う。
【0022】つぎに、前述の検出角θを変化させた測定
に加え、試料台502(603)の回転機構IIにより試
料503を回転させてEELFS測定を行うことによっ
て、試料503に対する運動量変化ベクトルΔpの方向
を任意に設定でき、したがって、試料503上の散乱原
子に対して任意の方向の動径分布関数を求めることがで
きる。
に加え、試料台502(603)の回転機構IIにより試
料503を回転させてEELFS測定を行うことによっ
て、試料503に対する運動量変化ベクトルΔpの方向
を任意に設定でき、したがって、試料503上の散乱原
子に対して任意の方向の動径分布関数を求めることがで
きる。
【0023】以上の本発明の実施例では反射型EELF
S測定装置を対象としたが、透過型EELFS装置にお
いても同様に運動量変化ベクトルΔpを変化させるよう
な構成とすることができ、非弾性散乱原子の任意の方向
の動径分布関数を求めることができる。
S測定装置を対象としたが、透過型EELFS装置にお
いても同様に運動量変化ベクトルΔpを変化させるよう
な構成とすることができ、非弾性散乱原子の任意の方向
の動径分布関数を求めることができる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、電
子エネルギー損失微細構造(EELFS)測定において
電子の運動量変化ベクトルが無視できるほど小さくない
場合においてもEELFS測定が可能であり、これを利
用したEELFS測定装置を提供できる。これによっ
て、非弾性散乱原子の周りの3次元的な構造に対する情
報が得られ、双極子近似が成立しないような場合にも正
確な構造解析ができるという効果がある。
子エネルギー損失微細構造(EELFS)測定において
電子の運動量変化ベクトルが無視できるほど小さくない
場合においてもEELFS測定が可能であり、これを利
用したEELFS測定装置を提供できる。これによっ
て、非弾性散乱原子の周りの3次元的な構造に対する情
報が得られ、双極子近似が成立しないような場合にも正
確な構造解析ができるという効果がある。
【図1】第1図は、電子が原子に入射し、非弾性散乱さ
れた場合の電子の運動量ベクトルを示した図、
れた場合の電子の運動量ベクトルを示した図、
【図2】第2図は、従来の反射型EELFS測定装置の
構成概要を示した図、
構成概要を示した図、
【図3】第3図は、運動量変化ベクトルΔpとEELF
S信号との関係をシミュレートした原子構造のモデルを
示した図、
S信号との関係をシミュレートした原子構造のモデルを
示した図、
【図4】第4図は、シミュレーションで得たEELFS
信号を二次電子の波数についてフーリエ変換し、炭素原
子Aを原点として求めた動径分布関数の結果を示した
図、
信号を二次電子の波数についてフーリエ変換し、炭素原
子Aを原点として求めた動径分布関数の結果を示した
図、
【図5】第5図は、本発明の電子エネルギー損失微細構
造測定装置の構成概要一例を示した図、
造測定装置の構成概要一例を示した図、
【図6】第6図は、第5図の電子エネルギー損失微細構
造測定装置とその制御装置をブロックで示した図であ
る。
造測定装置とその制御装置をブロックで示した図であ
る。
201・・・電子銃、202・・・エネルギー分析器、
203・・・試料、204・・・真空槽、501・・・
電子銃、502・・・試料台、503・・・試料、50
4・・・エネルギー分析器、505・・・真空槽、50
6・・・電子線、507・・・電子線照射位置、508
・・・回転機構I 509・・・回転機構II、510・・・回転機構 601・・・エネルギー分析器、602・・・電子銃、
603・・・試料台、604・・・真空槽、605・・
・コンピュータ、606・・・インターフェース。
203・・・試料、204・・・真空槽、501・・・
電子銃、502・・・試料台、503・・・試料、50
4・・・エネルギー分析器、505・・・真空槽、50
6・・・電子線、507・・・電子線照射位置、508
・・・回転機構I 509・・・回転機構II、510・・・回転機構 601・・・エネルギー分析器、602・・・電子銃、
603・・・試料台、604・・・真空槽、605・・
・コンピュータ、606・・・インターフェース。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 生垣 哲郎 神奈川県横浜市戸塚区戸塚町4501 東ソ ー戸塚社宅A−104 (72)発明者 藤川 高志 神奈川県横浜市旭区今宿東町810−1 サニーヒル今宿1−303 (56)参考文献 特開 昭63−190239(JP,A) 生垣哲郎 他,「X線吸収スペクトル と比較した高速電子エネルギー損失スペ クトルについて理論的研究 吸着系への 応用」,真空(1990),Vol.33,N o.3,P314−P317 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 23/20 - 23/207 JICSTファイル(JOIS)
Claims (2)
- 【請求項1】 電子を試料表面に入射させ、前記試料表
面において非弾性散乱された電子のエネルギーを分析す
ることにより電子エネルギー損失微細構造を測定する方
法において、試料表面に入射させた電子の運動量ベクト
ルと試料表面において非弾性散乱された電子の運動量ベ
クトルとの差である運動量変化ベクトルの方向を変化さ
せて、非弾性散乱原子の周囲に存在する原子のうち、非
弾性散乱原子に対して特定の方向に存在する原子に関係
する電子エネルギー損失微細構造を検出することを特徴
とする電子エネルギー損失微細構造測定方法。 - 【請求項2】 試料を保持する試料保持手段と、試料に
電子線を照射する電子銃と、試料表面において非弾性散
乱された電子のエネルギーを分析する電子エネルギー分
析器とを備えた電子エネルギー損失微細構造測定装置に
おいて、試料表面の電子線照射位置を変えることなく該
試料への電子線の入射角を変更可能とした上記電子銃と
試料保持手段の相対的な回転手段と、試料からの散乱電
子の検出角を変更可能とした上記電子エネルギー分析器
と試料保持手段の相対的な回転手段とを設けたことを特
徴とする電子エネルギー損失微細構造測定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14272792A JP3174396B2 (ja) | 1992-06-03 | 1992-06-03 | 電子エネルギー損失微細構造測定方法および装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14272792A JP3174396B2 (ja) | 1992-06-03 | 1992-06-03 | 電子エネルギー損失微細構造測定方法および装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05332959A JPH05332959A (ja) | 1993-12-17 |
JP3174396B2 true JP3174396B2 (ja) | 2001-06-11 |
Family
ID=15322187
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14272792A Expired - Fee Related JP3174396B2 (ja) | 1992-06-03 | 1992-06-03 | 電子エネルギー損失微細構造測定方法および装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3174396B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8364421B2 (en) | 2008-08-29 | 2013-01-29 | Schlumberger Technology Corporation | Downhole sanding analysis tool |
JP6359002B2 (ja) * | 2015-12-14 | 2018-07-18 | 株式会社Tslソリューションズ | Ebsd検出装置 |
CN113406119B (zh) * | 2021-05-06 | 2022-05-31 | 中国科学院金属研究所 | 用于过渡族金属氧化物精细结构表征的电子能量损失谱学分析方法 |
-
1992
- 1992-06-03 JP JP14272792A patent/JP3174396B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
生垣哲郎 他,「X線吸収スペクトルと比較した高速電子エネルギー損失スペクトルについて理論的研究 吸着系への応用」,真空(1990),Vol.33,No.3,P314−P317 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05332959A (ja) | 1993-12-17 |
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