JP3172764B2 - コネクティングロッドの製造方法 - Google Patents

コネクティングロッドの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、特にビ−ム部の断面
がH形状をしたエンジン用コネクティングロッド(以降
“コンロッド”と略称する)の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来技術とその課題】エンジン部品としてのコンロッ
ドは、図6に示す如く、クランクシャフト孔が形成され
た大端部,ピストンの接続部となる小端部,並びに前記
大端部と小端部とを連結するビ−ム部とから成ってお
り、通常は図7に示す工程をたどる熱間鍛造で製造され
るが、エンジンによっては焼結鍛造の採用もなされてい
る。ただ、何れの方法による場合も、鍛造のしやすさか
ら、コンロッドのビ−ム部は図8に示したようなI形断
面とされるのが一般的である。
【0003】しかしながら、最近、自動車等に対する低
燃費化要求,振動・騒音の低減要求は一段と厳しさを増
しており、これに伴って自動車等の部品に関する軽量化
が重要な課題となっているが、コンロッドについても例
外ではなかった。そこで、コンロッドのビ−ム部断面を
“前記図8に示したI形状”から“図9に示すようなH
形状”にして軽量・高強度化を図ったところの、「H型
コンロッド」が提案されている。なお、図10は、上記H
型コンロッドの一部破断平面図である。
【0004】ところが、このH型コンロッドのビ−ム部
の溝は鍛圧方向に所謂“アンダ−カット”となってお
り、そのため金型構成上の制約から従来の鍛造法では成
形が不可能で、多大な手数とコストを伴う機械加工の併
用が不可欠あった。
【0005】それ故、H型コンロッドの製造は、特開平
2−129305号公報に記載されているように、まず
“H型コンロッドをクランクシャフト孔の軸線に垂直な
面で2分割した形状の1対の分割体”を粉末冶金法(焼
結鍛造法)により製造し、この1対の分割体(焼結体)
を、両分割体の分割面を互いに衝合した状態にロウ付け
して(図11参照)一体化する方法によらねばならなかっ
た。しかし、焼結鍛造法では高価な粉末を素材とするた
めコンロッドの製造コストが高くなり、一部の競技用車
両に使用するエンジン以外への適用はなされていなかっ
た。
【0006】このようなことから、本発明が目的とした
のは、ビ−ム部がH断面形状を有するコンロッドを量産
エンジンに適用可能な低コストで生産し得る手段を確立
することであった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成すべく鋭意行われた本発明者の研究結果等を基に完成
されたものであり、「クランクシャフト孔が形成された
大端部とピストン接続部たる小端部、 並びに前記大端部
と小端部とを連結するビ−ム部とから成り、 かつ該ビ−
ム部の断面形状が“前記クランクシャフト孔の中心軸に
垂直なフランジ部”と“ウェブ部”を有するH形状を成
したコンロッドの鍛造成形に当たり、 前記大端部と小端
部を形成すると共にビ−ム部をほぼ矩形に成形した中間
素材に対し、 a) 上記ビ−ム部のウェブ部形成面を両面方向から圧縮
してウエブ部の厚さ寸法を整えた後、 ウエブ面を拘束し
た状態で、 この面に垂直な方向からビ−ム部を圧縮して
フランジ部の厚さ寸法を整える, b) 前記ビ−ム部のフランジ部となる両面を拘束した状
態で、 フランジ面と直交するウェブ部形成面をその両面
方向から圧縮してフランジ部及びウェブ部を同時に形成
する, のうちの何れかの成形を施すことにより、 大掛かりな機
械加工や焼結鍛造法によることなく、 H断面形状ビ−ム
部を有するコンロッドを高い材料歩留にて高能率生産で
きるようにした点」に大きな特徴を有している。
【0008】即ち、本発明法では、大端部に形成された
クランクシャフト孔の軸線(図8,図9のm)が垂直と
なるように置いた際の両側面にコンロッド長手方向へ延
びる溝が形成された“ビ−ム部がH形断面をしているコ
ンロッド”、つまり“H型コンロッド”を製造するに当
たって、まずビ−ム部をH型断面に成形する加工を残す
矩形断面に成形し、また大端部,小端部の部位を成形し
た後、H型凹部を形成する際に次の何れかの手法が採ら
れる。
【0009】〔第1の手法〕図1で示すように、1工程
目にクランクシャフト孔の軸線(図9のm)とコンロッ
ド長手方向軸線(図9のn)との垂線方向から圧縮し、
2工程目でクランクシャフト孔の軸線(図9のm)方向
から圧縮してH断面を形成する方法。 〔第2の手法〕図2で示すように、ビ−ム部のフランジ
部となる両面(図2の左右面)を拘束した状態で、クラ
ンクシャフト孔の軸線(図9のm)とコンロッド長手方
向軸線(図9のn)との垂線方向から圧縮し、一工程で
所定寸法のフランジ部とウェブ部からなるH断面を同時
に形成する方法。
【0010】そして、これら何れの方法によっても、従
来の鍛造法ではH型ビ−ム部の溝がアンダ−カットにな
るために鍛造成形できなかった“H型コンロッド”が極
めて容易に、かつ精度良く成形することが可能となる。
【0011】以下、実施例によって本発明をより具体的
に説明する。
【実施例】図3に示すような金型(コンテナ1, 1′、 上
下工具2, 2′、 側面工具3, 3′)を準備し、H型コンロ
ッドの製品形状と同じ体積配分を行うと共に“大端部と
ビ−ム部のつなぎ部分”及び“小端部とビ−ム部のつな
ぎ部分”は断面積を5%増とした純鉛製の素材を用い
て、H型コンロッドの鍛造成形試験を行った。これは鋼
の熱間加工を想定して行ったものであり、成形挙動が実
質的に鋼の熱間加工と変わらないことは良く知られてい
る。なお、金型での圧縮には油圧プレスを使用し、成形
は常温にて加工速度:0.1mm/secで実施した。
【0012】実験例1 コンテナ1, 1′と側面工具3, 3′(3, 3′間距離は仕上
げ形状よりも大きめに設定する)をボルトで締結し、そ
の中に図4で示す体積配分に予成形された素材をセット
した後、上下工具2, 2′により上下から圧縮してコンロ
ッドビ−ム部のウェブ部を所定の寸法(図5のtW )に
まで成形した〔図1の左図参照〕。次いで、コンテナ1,
1′と上下工具2, 2′をボルトで締結してから側面工具
3,3′を解放し、更に該側面工具を交換した後、この交
換した側面工具で圧縮することによりフランジ部を所定
の寸法(図5のtf )にまで成形した〔図1の右図参
照〕。これにより、前記図9及び図10に示す形状のH型
コンロッドへの成形を円滑に行うことができた。なお、
この実験例では、第1工程目でフランジ部を厚めに成形
し、続く第2工程目で所定の寸法に仕上げているが、1
工程目成形時に成形されるフランジ部の形状・寸法は任
意とすることができる。
【0013】実験例2 コンテナ1, 1′と側面工具3, 3′(3, 3′間距離は仕上
寸法と同じ図5のtWに設定する)をボルトで締結し、
前記実験例1の場合と同じく、その中に図4で示す体積
配分に予成形された素材をセットした後、上下工具2,
2′により上下から圧縮してコンロッドビ−ム部のウェ
ブ部を所定の寸法(図5のtW )にまで成形した〔図2
参照〕。この結果、実験例1の場合と同様、前記図9及
び図10に示す形状のH型コンロッドへの成形を円滑に行
うことができた。
【0014】ところで、上記実験例では成形素材として
鉛を用いたが、本発明法においては素材の種類や加工時
の素材温度を任意とできることは言うまでもない。
【0015】
【発明の効果】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、従来は鍛造成形が不可能とされていたH形の断面形
状を持つコンロッドを能率の良い鍛造成形にて低コスト
で量産することが可能となるなど、産業上有用な効果が
もたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鍛造成形法の説明図である。
【図2】本発明に係る鍛造成形法の別例に関する説明図
である。
【図3】実施例で使用した金型の概要説明図である。
【図4】実施例で製造したコンロッド及び成形素材の体
積配分図である。
【図5】H型コンロッドのビ−ム部断面の説明図であ
る。
【図6】コンロッドの各部説明図である。
【図7】従来型コンロッドの製造方法に関する説明図で
ある。
【図8】従来型コンロッドの説明図である。
【図9】H型コンロッドの説明図である。
【図10】H型コンロッドの一部破断平面図である。
【図11】一対の分割体をロウ付けして製造したH型コン
ロッドのビ−ム部断面に関する説明図である。
【符号の説明】
1 コンテナ 1′コンテナ 2 上工具 2′下工具 3 側面工具 3′側面工具 m クランクシャフト孔の軸線 n コンロッド長手方向軸線 tf フランジ厚さ tw ウェブ厚さ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−129305(JP,A) 特開 昭62−3846(JP,A) 特開 昭61−253138(JP,A) 特開 平6−190492(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21J 1/00 - 13/14 B21J 17/00 - 19/04 B21K 1/00 - 31/00 F16C 7/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クランクシャフト孔が形成された大端部
    とピストン接続部たる小端部、並びに前記大端部と小端
    部とを連結するビ−ム部とから成り、かつ該ビ−ム部の
    断面形状が“前記クランクシャフト孔の中心軸に垂直な
    フランジ部”と“ウェブ部”を有するH形状を成したコ
    ネクティングロッドの鍛造成形に当たり、前記大端部と
    小端部を形成すると共にビ−ム部をほぼ矩形に成形した
    中間素材に対し、上記ビ−ム部のウェブ部形成面を両面
    方向から圧縮してウエブ部の厚さ寸法を整えた後、ウエ
    ブ面を拘束した状態で、この面に垂直な方向からビ−ム
    部を圧縮してフランジ部の厚さ寸法を整えることを特徴
    とする、コネクティングロッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 クランクシャフト孔が形成された大端部
    とピストン接続部たる小端部、並びに前記大端部と小端
    部とを連結するビ−ム部とから成り、かつ該ビ−ム部の
    断面形状が“前記クランクシャフト孔の中心軸に垂直な
    フランジ部”と“ウェブ部”を有するH形状を成したコ
    ネクティングロッドの鍛造成形に当たり、前記大端部と
    小端部を形成すると共にビ−ム部をほぼ矩形に成形した
    中間素材に対し、上記ビ−ム部のフランジ部となる両面
    を拘束した状態で、フランジ面と直交するウェブ部形成
    面をその両面方向から圧縮してフランジ部及びウェブ部
    を同時に形成することを特徴とする、コネクティングロ
    ッドの製造方法。
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