JP3172567B2 - 低エネルギー電子分光を用いて炭化水素膜の光学バンドギャップを測定する方法 - Google Patents
低エネルギー電子分光を用いて炭化水素膜の光学バンドギャップを測定する方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低エネルギー電子分光
法を用いて光電子放出を起こす励起エネルギーのしきい
値を測定することにより、炭化水素膜の光学バンドギャ
ップ(opticalband gap)を簡易に測定することができる
新規な方法に関する。
法を用いて光電子放出を起こす励起エネルギーのしきい
値を測定することにより、炭化水素膜の光学バンドギャ
ップ(opticalband gap)を簡易に測定することができる
新規な方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来よ
り水素化したアモルファス炭素膜(以下、炭化水素膜と
いう)について、紫外、可視吸収スペクトルを測定して
これらの膜の光学バンドギャップを求める研究がなされ
ている。そのうち、種々のプラズマ条件下、自己バイア
スを変化させてRFプラズマCVDにより合成された膜
の構造と光学バンドギャップとの関係について多くの文
献が知られている。Dischlerらは、かかる光学バンドギ
ャップが膜中に存在する結合水素の含有量に比例して変
化することを記載している(Appl.Phys.Lett.42、636頁、
1983年)。更に、拡張X線吸収微細構造、NMR及び赤
外スペクトル等の結果よりかなりの量の二重結合が膜中
に存在することが発表されている(J.FinkらによるSoli
d State Commun. 47,687頁、1983 年)。一方で、Robert
son らは炭化水素膜中の二重結合は膜の光学バンドギャ
ップのエネルギーを低下することを理論的に説明してい
る(Phys. Review B35, 2946頁、1987年)。これらのこ
とより、膜の化学構造を議論し、ダイヤモンド合成等の
炭素膜を用いた応用技術の開発を進めるために光学バン
ドギャップを測定することは極めて有効になる。しかし
ながら、ダイヤモンド合成に関していえば、このような
技術により結晶状のダイヤモンドや、ダイヤモンドと黒
鉛状炭素とからなる膜、グラファイトを含む膜、ダイヤ
モンドライク膜等の種々の形態の合成物が得られるた
め、それらの合成技術を検討する上で得られた膜の光学
バンドギャップを個別に検討する必要があった。従来、
これらの光学バンドギャップのエネルギーは、タウ(Tau
c)プロットと呼ばれる外挿法によってグラフ上の吸収端
から測定できることが知られている(P.KOIDL, C.WILD
らによるMaterials Science Forum 52&53, 41、 1989
年、DischlerらのAppl.Phys.Lett.42、636 頁、1983年
等) 。
り水素化したアモルファス炭素膜(以下、炭化水素膜と
いう)について、紫外、可視吸収スペクトルを測定して
これらの膜の光学バンドギャップを求める研究がなされ
ている。そのうち、種々のプラズマ条件下、自己バイア
スを変化させてRFプラズマCVDにより合成された膜
の構造と光学バンドギャップとの関係について多くの文
献が知られている。Dischlerらは、かかる光学バンドギ
ャップが膜中に存在する結合水素の含有量に比例して変
化することを記載している(Appl.Phys.Lett.42、636頁、
1983年)。更に、拡張X線吸収微細構造、NMR及び赤
外スペクトル等の結果よりかなりの量の二重結合が膜中
に存在することが発表されている(J.FinkらによるSoli
d State Commun. 47,687頁、1983 年)。一方で、Robert
son らは炭化水素膜中の二重結合は膜の光学バンドギャ
ップのエネルギーを低下することを理論的に説明してい
る(Phys. Review B35, 2946頁、1987年)。これらのこ
とより、膜の化学構造を議論し、ダイヤモンド合成等の
炭素膜を用いた応用技術の開発を進めるために光学バン
ドギャップを測定することは極めて有効になる。しかし
ながら、ダイヤモンド合成に関していえば、このような
技術により結晶状のダイヤモンドや、ダイヤモンドと黒
鉛状炭素とからなる膜、グラファイトを含む膜、ダイヤ
モンドライク膜等の種々の形態の合成物が得られるた
め、それらの合成技術を検討する上で得られた膜の光学
バンドギャップを個別に検討する必要があった。従来、
これらの光学バンドギャップのエネルギーは、タウ(Tau
c)プロットと呼ばれる外挿法によってグラフ上の吸収端
から測定できることが知られている(P.KOIDL, C.WILD
らによるMaterials Science Forum 52&53, 41、 1989
年、DischlerらのAppl.Phys.Lett.42、636 頁、1983年
等) 。
【0003】しかしながら、比較的多数の試料について
種々の物性値を測定することは長時間と労力を要し、得
られたデータの整理も煩雑であった。このため、炭化水
素膜の光学バンドギャップを調査する合理的且つ系統的
な方法が要求されていた。
種々の物性値を測定することは長時間と労力を要し、得
られたデータの整理も煩雑であった。このため、炭化水
素膜の光学バンドギャップを調査する合理的且つ系統的
な方法が要求されていた。
【0004】そこで本発明の目的は、種々の炭化水素膜
の光学バンドギャップをより簡単な操作で且つ系統的に
評価できる新規な方法を提供することにある。
の光学バンドギャップをより簡単な操作で且つ系統的に
評価できる新規な方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、近年開発さ
れた低エネルギー電子分光装置を用いて種々の炭化水素
膜の光電子放出の励起エネルギーしきい値(eV)を測
定したところ、該しきい値(eV)と炭化水素膜の光学
バンドギャップとの間に一定の相関関係があることを見
出し、かかる関係を用いて種々の膜の光学バンドギャッ
プを簡単に評価できる方法を発明することに成功した。
すなわち本発明は、低エネルギー電子分光法により種々
の炭化水素膜の光電子放出を起こす励起エネルギーのし
きい値を測定し、別途測定した該種々の炭化水素膜の光
学バンドギャップと前記しきい値との相関関係を求め、
次いで炭化水素膜未知試料の光電子放出励起エネルギー
のしきい値を測定して、該しきい値と前記相関関係とを
照合することにより、未知試料の炭化水素膜の光学バン
ドギャップを測定する方法を提供するものである。
れた低エネルギー電子分光装置を用いて種々の炭化水素
膜の光電子放出の励起エネルギーしきい値(eV)を測
定したところ、該しきい値(eV)と炭化水素膜の光学
バンドギャップとの間に一定の相関関係があることを見
出し、かかる関係を用いて種々の膜の光学バンドギャッ
プを簡単に評価できる方法を発明することに成功した。
すなわち本発明は、低エネルギー電子分光法により種々
の炭化水素膜の光電子放出を起こす励起エネルギーのし
きい値を測定し、別途測定した該種々の炭化水素膜の光
学バンドギャップと前記しきい値との相関関係を求め、
次いで炭化水素膜未知試料の光電子放出励起エネルギー
のしきい値を測定して、該しきい値と前記相関関係とを
照合することにより、未知試料の炭化水素膜の光学バン
ドギャップを測定する方法を提供するものである。
【0006】本発明の方法に従えば、まず、それぞれ異
なる物性値を有する種々の炭化水素膜を用意する。かか
る炭化水素膜の一群の試料は、種々の励起エネルギーし
きい値とそれに対応する光学バンドギャップとの相関関
係を決定するための標準試料となる。このような種々の
励起エネルギーしきい値を有する炭化水素膜を調製する
には、中山、上田ら発明の「高周波数プラズマCVD法
による炭素膜の形成方法」(特願平2−14480号)
を用いるのが好都合である。すなわち、この方法による
と、プラズマCVD装置中の基板電極に印加するバイア
ス直流電圧を種々の値に変化させて膜を形成することに
より、種々の炭化水素膜を調製することができる。
なる物性値を有する種々の炭化水素膜を用意する。かか
る炭化水素膜の一群の試料は、種々の励起エネルギーし
きい値とそれに対応する光学バンドギャップとの相関関
係を決定するための標準試料となる。このような種々の
励起エネルギーしきい値を有する炭化水素膜を調製する
には、中山、上田ら発明の「高周波数プラズマCVD法
による炭素膜の形成方法」(特願平2−14480号)
を用いるのが好都合である。すなわち、この方法による
と、プラズマCVD装置中の基板電極に印加するバイア
ス直流電圧を種々の値に変化させて膜を形成することに
より、種々の炭化水素膜を調製することができる。
【0007】本発明によると、こうして用意した標準試
料である種々の炭化水素膜に関して、タウプロットを測
定してその吸収端部から光学バンドギャップを測定して
おく。本発明者らの実験によると、これらの光学バンド
ギャップは、低エネルギー分光法により測定される光電
子放出の励起エネルギーしきい値との良好な相関関係を
示すことが確認されている。タウプロットの測定におい
て、最初に、上記のようにして調製した種々の炭化水素
膜の紫外、可視スペクトル(λ=200〜800nm)
及び真空紫外スペクトル(λ=160〜240nm)を
測定する。これより測定波長と吸収係数を求めることが
できる。これらの結果からプロットを作成する方法は
「アモルファス半導体の基礎」(オーム社、第一版、菊
地誠監修)の第90頁に詳細に記載されている。こうし
て得られたタウプロットの一例を図1に示す。図中、膜
試料はプラズマCVDおいて基板にバイアス直流電圧
0、−120、−250及び−500Vをそれぞれ印加
して調製した炭化水素膜の標準試料であり、横軸に光の
エネルギー、縦軸に(光のエネルギー×吸収係数)0.5
を採用する。かかるプロットを外挿して横軸と交わる
点、すなわち吸収端が光学バンドギャップのエネルギー
を示すことになる。
料である種々の炭化水素膜に関して、タウプロットを測
定してその吸収端部から光学バンドギャップを測定して
おく。本発明者らの実験によると、これらの光学バンド
ギャップは、低エネルギー分光法により測定される光電
子放出の励起エネルギーしきい値との良好な相関関係を
示すことが確認されている。タウプロットの測定におい
て、最初に、上記のようにして調製した種々の炭化水素
膜の紫外、可視スペクトル(λ=200〜800nm)
及び真空紫外スペクトル(λ=160〜240nm)を
測定する。これより測定波長と吸収係数を求めることが
できる。これらの結果からプロットを作成する方法は
「アモルファス半導体の基礎」(オーム社、第一版、菊
地誠監修)の第90頁に詳細に記載されている。こうし
て得られたタウプロットの一例を図1に示す。図中、膜
試料はプラズマCVDおいて基板にバイアス直流電圧
0、−120、−250及び−500Vをそれぞれ印加
して調製した炭化水素膜の標準試料であり、横軸に光の
エネルギー、縦軸に(光のエネルギー×吸収係数)0.5
を採用する。かかるプロットを外挿して横軸と交わる
点、すなわち吸収端が光学バンドギャップのエネルギー
を示すことになる。
【0008】本発明に従えば、上記標準試料である種々
の炭化水素膜について低エネルギー分光法により励起エ
ネルギーしきい値を測定する。本発明に用いる低エネル
ギー電子分光法とは、光電子分光法の一種であり、常温
常圧の大気や任意のガス雰囲気中で、試料物質に紫外線
を照射して、そこから光電効果により放出される光電子
の放出率を測定することにより該物質の仕事関数、膜厚
等を測定する分光法である。この分光法は、高真空中で
のみ行われるXPS、UPS等の固体の表面分析法とは
異なり、大気雰囲気中でもサンプルを測定できるという
大きなメリットがある。また、光電子のエネルギーはX
PSの場合には数百eV、UPSの場合には数中eVで
あるに対して、本装置の場合には数eVであるので最外
核電子のみが観測対象となる。
の炭化水素膜について低エネルギー分光法により励起エ
ネルギーしきい値を測定する。本発明に用いる低エネル
ギー電子分光法とは、光電子分光法の一種であり、常温
常圧の大気や任意のガス雰囲気中で、試料物質に紫外線
を照射して、そこから光電効果により放出される光電子
の放出率を測定することにより該物質の仕事関数、膜厚
等を測定する分光法である。この分光法は、高真空中で
のみ行われるXPS、UPS等の固体の表面分析法とは
異なり、大気雰囲気中でもサンプルを測定できるという
大きなメリットがある。また、光電子のエネルギーはX
PSの場合には数百eV、UPSの場合には数中eVで
あるに対して、本装置の場合には数eVであるので最外
核電子のみが観測対象となる。
【0009】この分析方法に必要な分析装置の概要につ
いて図1により説明する。同図に示すように、本装置は
紫外線ランプ1、モノクロメータ2、低エネルギー電子
計数装置3、制御装置4、演算表示装置5及びX−Yス
テージ6より主に構成されている。上記紫外線ランプ1
から出た光をモノクロメータ2により任意の波長に分光
して、試料表面7に照射する。この光を励起エネルギー
の高い方から低い方に向かって走査すると所定のエネル
ギー(eV)で光電効果による電子放出が始まる。この
エネルギーが光電的仕事関数といわれる値である。こう
して放出された光電子を低エネルギー電子計測装置の検
出器3を用いて計数した後、バックグランド補正等の演
算処理をした後に図2に示すような光電子放出率(Coun
t Per Second:CPS) と励起エネルギーとの関係を求
めることができる。
いて図1により説明する。同図に示すように、本装置は
紫外線ランプ1、モノクロメータ2、低エネルギー電子
計数装置3、制御装置4、演算表示装置5及びX−Yス
テージ6より主に構成されている。上記紫外線ランプ1
から出た光をモノクロメータ2により任意の波長に分光
して、試料表面7に照射する。この光を励起エネルギー
の高い方から低い方に向かって走査すると所定のエネル
ギー(eV)で光電効果による電子放出が始まる。この
エネルギーが光電的仕事関数といわれる値である。こう
して放出された光電子を低エネルギー電子計測装置の検
出器3を用いて計数した後、バックグランド補正等の演
算処理をした後に図2に示すような光電子放出率(Coun
t Per Second:CPS) と励起エネルギーとの関係を求
めることができる。
【0010】本発明に従えば、上記の種々の炭化水素膜
について、低エネルギー分光法により測定された光電子
励起エネルギーのしきい値と、前記タウプロットにより
求められた光学バンドギャップとの相関関係を求める。
かかる関係はグラフにプロット等して明確化するのが好
都合である。例えば、図2に示すように、種々の炭化水
素膜についての低エネルギー分光法より得られたしきい
値と吸収端のエネルギー(光学バンドギャップ)との関
係をグラフ化することができる。このグラフは吸収端の
エネルギーが増加すると光電子励起エネルギーしきい値
も増加することを示しており、両者の間に比例関係があ
ることがわかる。
について、低エネルギー分光法により測定された光電子
励起エネルギーのしきい値と、前記タウプロットにより
求められた光学バンドギャップとの相関関係を求める。
かかる関係はグラフにプロット等して明確化するのが好
都合である。例えば、図2に示すように、種々の炭化水
素膜についての低エネルギー分光法より得られたしきい
値と吸収端のエネルギー(光学バンドギャップ)との関
係をグラフ化することができる。このグラフは吸収端の
エネルギーが増加すると光電子励起エネルギーしきい値
も増加することを示しており、両者の間に比例関係があ
ることがわかる。
【0011】次いで、本発明に従い、未知試料の炭化水
素膜に関して、前記標準試料と同一の条件にて光電子放
出の励起エネルギーのしきい値を観測する。そして、前
記標準試料について求めた相関関係から未知試料の光電
子放出のしきい値に対応する光学バンドギャップを知る
ことができる。
素膜に関して、前記標準試料と同一の条件にて光電子放
出の励起エネルギーのしきい値を観測する。そして、前
記標準試料について求めた相関関係から未知試料の光電
子放出のしきい値に対応する光学バンドギャップを知る
ことができる。
【0012】以下に、本発明を実施例により詳細に説明
するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0013】
【実施例】 A)炭化水素膜標準試料の調製及びその物性値の測定 本願出願人の特願平2−14480号に記載されたよう
な平行電極を用いたRFプラズマCVD装置により、基
板に印加するバイアス電圧を変化させて、種々の炭化水
素膜標準試料を製造した。合成石英板(信越クオーツ
製、SUPURASIL 、30mmφ×0.5mm )及びSi(100)
基板をこの装置のチャンバー及びRF電源から電気的に
隔離した電極上に配置した。チャンバーと基板間に−5
00Vまでの負の直流バイアス電圧を印加した(石英板
及びSi基板はチャンバーに対して負である)。炭化水
素膜の製造条件は以下の表まとめる。
な平行電極を用いたRFプラズマCVD装置により、基
板に印加するバイアス電圧を変化させて、種々の炭化水
素膜標準試料を製造した。合成石英板(信越クオーツ
製、SUPURASIL 、30mmφ×0.5mm )及びSi(100)
基板をこの装置のチャンバー及びRF電源から電気的に
隔離した電極上に配置した。チャンバーと基板間に−5
00Vまでの負の直流バイアス電圧を印加した(石英板
及びSi基板はチャンバーに対して負である)。炭化水
素膜の製造条件は以下の表まとめる。
【0014】
【表1】 基板温度 200℃ CH4 ガス流量 7.5cm3 /分 H2 ガス流量 5.0cm3 /分 全圧 3×10-2Torr RF電力 500W バイアス電圧 0, -120, -150, -250, -500 V 基板 Si(100)、合成石英
【0015】上記バイアス電圧にて得られた標準試料に
ついて、λ=200〜800nmの範囲で紫外、可視吸
収スペクトルを、ダブルビーム分光計(日立:U−34
00型)を用いて測定した。真空紫外スペクトルをλ=
160nm〜240nmの範囲について真空紫外分光計
(Jasco:VUV200)を用いて測定した。そし
て、それらのスペクトルから解析して、図1に示したよ
うなタウプロットが得られた。各試料のプロットを結ぶ
ことで直線が形成され、それらを外挿することで吸収端
が求められた。各試料製造の際に用いたバイアス電圧と
タウプロットから得られた吸収端のエネルギーの関係を
以下にまとめた。
ついて、λ=200〜800nmの範囲で紫外、可視吸
収スペクトルを、ダブルビーム分光計(日立:U−34
00型)を用いて測定した。真空紫外スペクトルをλ=
160nm〜240nmの範囲について真空紫外分光計
(Jasco:VUV200)を用いて測定した。そし
て、それらのスペクトルから解析して、図1に示したよ
うなタウプロットが得られた。各試料のプロットを結ぶ
ことで直線が形成され、それらを外挿することで吸収端
が求められた。各試料製造の際に用いたバイアス電圧と
タウプロットから得られた吸収端のエネルギーの関係を
以下にまとめた。
【0016】
【表2】 バイアス電圧(V) 吸収端(eV) 0 2.5 0 2.7 −120 2.2 −150 2.1 −250 1.9 −250 1.7 −500 1.2
【0017】これらの標準試料に関して、第3図に示す
ような低エネルギー電子分光装置を用いて光電子放出励
起エネルギーのしきい値を測定した。光源に重水素ラン
プを用いて、励起エネルギーをeVで換算して4〜6e
Vの範囲で走査した。
ような低エネルギー電子分光装置を用いて光電子放出励
起エネルギーのしきい値を測定した。光源に重水素ラン
プを用いて、励起エネルギーをeVで換算して4〜6e
Vの範囲で走査した。
【0018】B)光学バンドギャップとしきい値との関
係 上記の標準試料の炭化水素膜について測定した光学バン
ドギャップ(吸収端のエネルギー)と光電子放出励起エ
ネルギーのしきい値との関係を図2に示す。第2図よ
り、種々の光学バンドギャップは光電子放出のしきい値
と良好な相関関係を示すことがわかる。
係 上記の標準試料の炭化水素膜について測定した光学バン
ドギャップ(吸収端のエネルギー)と光電子放出励起エ
ネルギーのしきい値との関係を図2に示す。第2図よ
り、種々の光学バンドギャップは光電子放出のしきい値
と良好な相関関係を示すことがわかる。
【0019】C)未知試料の物性値の評価 次に、前記と同様な方法で、任意のバイアス電圧を用い
て調製した未知試料である炭化水素膜について低エネル
ギー分光法によりしきい値を測定したところ、5.4e
Vであった。この値と、図2のグラフを照合して炭化水
素膜の光学バンドギャップは約2.2eVであることが
わかる。これらの結果と本出願人らが特願平3−117
884号として出願した「低エネルギー電子分光を用い
た炭化水素膜の物性の評価方法」において得られた光電
子放出のしきい値と、膜硬度、屈折率、CH2 及びCH
3 含有量、C=C含有量との相関関係とを合わせること
によって光学バンドギャップとそれらの物性値との関係
に明らかにすることができる。
て調製した未知試料である炭化水素膜について低エネル
ギー分光法によりしきい値を測定したところ、5.4e
Vであった。この値と、図2のグラフを照合して炭化水
素膜の光学バンドギャップは約2.2eVであることが
わかる。これらの結果と本出願人らが特願平3−117
884号として出願した「低エネルギー電子分光を用い
た炭化水素膜の物性の評価方法」において得られた光電
子放出のしきい値と、膜硬度、屈折率、CH2 及びCH
3 含有量、C=C含有量との相関関係とを合わせること
によって光学バンドギャップとそれらの物性値との関係
に明らかにすることができる。
【0020】
【発明の効果】本発明の評価方法を用いると、CVD法
等の気相合成法を用いて製造した炭化水素膜について、
低エネルギー電子分光による光電子放出励起エネルギー
のしきい値を測定するだけで、未知試料についてタウプ
ロット等を使って一々光学バンドギャップを測定するこ
となく、それらの光学バンドギャップを容易に求めるこ
とができる。かかる光学バンドギャップは炭化水素膜の
構造に極めて深く関係するために、本発明の方法はダイ
ヤモンド合成等の分野において極めて有効となる。
等の気相合成法を用いて製造した炭化水素膜について、
低エネルギー電子分光による光電子放出励起エネルギー
のしきい値を測定するだけで、未知試料についてタウプ
ロット等を使って一々光学バンドギャップを測定するこ
となく、それらの光学バンドギャップを容易に求めるこ
とができる。かかる光学バンドギャップは炭化水素膜の
構造に極めて深く関係するために、本発明の方法はダイ
ヤモンド合成等の分野において極めて有効となる。
【図1】本発明の方法に用いる標準試料に関するタウプ
ロット示す。
ロット示す。
【図2】低エネルギー分光装置により得られた励起エネ
ルギーと光学バンドギャップとの関係を示すグラフであ
る。
ルギーと光学バンドギャップとの関係を示すグラフであ
る。
【図3】本発明に用いた低エネルギー分光装置の概略図
である。
である。
1 紫外線ランプ 2 モノクロメータ 3 低エネルギー電子計数装置 4 制御装置 5 演算表示装置 6 X−Yステージ 7 試料表面
フロントページの続き (72)発明者 鎌田 喜一郎 新潟県長岡市上富岡町1603番1長岡技術 科学大学内 (56)参考文献 特開 平4−41672(JP,A) 特開 昭60−262042(JP,A) 特開 平1−138450(JP,A) 特開 昭63−29241(JP,A) 特許3084301(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 23/227
Claims (1)
- 【請求項1】 低エネルギー電子分光法により種々の炭
化水素膜の光電子放出を起こす励起エネルギーのしきい
値を測定し、別途測定した該種々の炭化水素膜の光学バ
ンドギャップと前記しきい値との相関関係を求め、次い
で炭化水素膜未知試料の光電子放出励起エネルギーのし
きい値を測定して、該しきい値と前記相関関係とを照合
することにより、炭化水素膜未知試料の光学バンドギャ
ップを測定する方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04774892A JP3172567B2 (ja) | 1992-02-05 | 1992-02-05 | 低エネルギー電子分光を用いて炭化水素膜の光学バンドギャップを測定する方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04774892A JP3172567B2 (ja) | 1992-02-05 | 1992-02-05 | 低エネルギー電子分光を用いて炭化水素膜の光学バンドギャップを測定する方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05215699A JPH05215699A (ja) | 1993-08-24 |
JP3172567B2 true JP3172567B2 (ja) | 2001-06-04 |
Family
ID=12783976
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP04774892A Expired - Fee Related JP3172567B2 (ja) | 1992-02-05 | 1992-02-05 | 低エネルギー電子分光を用いて炭化水素膜の光学バンドギャップを測定する方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3172567B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109411030B (zh) * | 2018-11-02 | 2021-04-20 | 大连理工大学 | 纳米金属氧化物能隙值的预测方法 |
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1992
- 1992-02-05 JP JP04774892A patent/JP3172567B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05215699A (ja) | 1993-08-24 |
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