JP3168025B2 - プリン化合物を有効成分とする新規な薬剤組成物 - Google Patents

プリン化合物を有効成分とする新規な薬剤組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、アデノシンおよびア
デニンヌクレオチドの主に麻酔薬としての用途に関す
る。
【0002】
【従来の技術】患者は、生理的恒常状態を維持するため
の麻酔によって、手術および類似する方法によって生じ
る疼痛およびストレスから保護される。
【0003】アデノシンには種々の細胞外効果がある。
アデノシンに強力な血管拡張作用および降圧作用がある
ことは周知であるが、アデノシンに臨床用途における麻
酔活性があることはこれまで説明されたことはない。さ
らに、従来の知識では、血液中を循環するアデノシン、
およびアデニンヌクレオチドであるアデノシン三リン酸
(以下ATPと略記する)はどちらも血液脳関門を越え
ないとされてきた。従って、数種の合成アデノシン類似
化合物には鎮静活性があることが周知であるにもかかわ
らず、アデノシンおよびATPはどちらもこれまで麻酔
薬として適切であると考えられたことは一度もなかっ
た。
【0004】麻酔状態を生じさせるためには、種々の薬
剤が使用されている。グッドマン(Goodman) およびギ
ルマン(Gilman)の「ザ・ファーマコロジカル・ベーシス
・オブ・セラポイティクス(The Pharmacological Basis
of Therapeutics) 」、第7版、1985年、マクミラ
ン (MacMillan) 社、ニューヨークの第13章および第
14章には、技術に長けた人が現在理解している麻酔学
の分野の概観が明らかにされている。
【0005】アデノシンを血圧低下を生じさせるために
投与する場合には標準的な吸入麻酔薬と併用することが
できる。しかし他には誰も、アデノシンあるいはATP
が正常血圧状態下で実質的に容認できる麻酔状態を生じ
させることができるとか、あるいは吸入麻酔薬に完全に
代替して実質的に容認できる麻酔状態を達成できると報
告したことはなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】吸入麻酔薬あるいはそ
の他の麻酔薬に完全に代替すること、あるいはそれらの
用量を減少させることは幾つかの理由から有益である。
第1に、吸入麻酔薬あるいはその他の化学的合成麻酔薬
は用量が多くなると毒性があり、重度の心臓−呼吸性お
よび代謝性副作用を生じる。第2に、実際に患者に使用
する麻酔薬の量が、手術室内において当て推量で定めら
れている。
【0007】
【課題を解決するための手段】アデノシンおよびATP
は内生化合物であるために、毒性作用を生じることはま
ずない。アデノシンおよびATPはどちらも急速に代謝
されることは周知である。従って注入が停止されると、
回復は即時に始まり、急速に進行する。それゆえに、ア
デノシンあるいはATPのいずれかは吸入麻酔薬の理想
的な代替薬剤であり、同様にオピオイド(麻薬)鎮痛薬
の代替薬剤としても理想的であろう。
【0008】本出願人は、アデノシンおよびATPは正
常血圧下で静注投与すると強力な鎮痛作用があり、この
作用が、抗高血圧作用および血圧調節作用のようなスト
レス反応抑制作用および鎮静作用と一緒になってアデノ
シンおよびATPを優れた麻酔薬にしていることを発見
した。
【0009】さらに、アデノシンあるいはATPを用い
て麻酔をすると体温低下が生じるが、この体温低下には
震え、心臓血管循環抑制あるいは肺動脈循環抑制は付随
しない。この作用は少なくとも10℃から20℃の体温低下
巾は持続する。
【0010】アデノシンおよびアデニンヌクレオチドに
はまた、優れた血液酸素供給および組織酸素供給を生じ
させることを発見した。同様にアデノシンは、移植用の
臓器がドナー(臓器提供者)身体内にある期間、さらに
ドナーの身体から摘出されて移植されるまでの期間に、
その臓器をできる限り最高の状態に維持するために使用
することができる。さらに、アデノシンによって誘発さ
れる優れた血液酸素供給および組織酸素供給の作用は、
臓器およびレシピエント(臓器受容者)をできる限り最
高の状態に維持するために使用することができる。
【0011】発明の要約 この発明は、正常な血圧で、麻酔状態あるいは鎮痛の必
要のある、あるいは低体温を誘発する必要のある、また
は低体温を除去する必要のある患者に対して、麻酔状
態、低体温および鎮痛を誘発するため、さらにまたスト
レスおよび低体温を治療するためのアデノシンあるいは
アデニンヌクレオチドを有効成分とする薬剤組成物を提
供する。さらにこの発明は、ドナーの臓器にアデノシン
あるいはアデニンヌクレオチドを接触させることによっ
て生体内で保存するための、さらに移植のためにレシピ
エントを準備するための薬剤組成物を提供する。
【0012】この発明の態様の1つは、麻酔状態が必要
な期間中に、正常な血圧で、1μkg/minから5000μg/kg
/minで連続静脈内注入することからなる、哺乳動物の個
体に麻酔するためのアデノシンあるいはアデニンヌクレ
オチドを有効成分として持つ薬剤組成物である。
【0013】またこの発明の他の態様の1つは、第1に
アデノシンあるいはアデニンヌクレオチドを1μg/kg/m
inから5000μg/kg/minで連続静脈内注入することからな
り、第2に哺乳動物の身体を体温より低い周囲温度に曝
露して哺乳動物の体温を低下させることからなる、哺乳
動物の個体において正常以下体温を作り出すためのアデ
ノシンあるいはアデニンヌクレオチドを有効成分として
持つ薬剤組成物である。
【0014】さらにこの発明の他の態様の1つは、疼痛
除去が必要な期間中に、正常な血圧で、1μg/kg/minか
ら5000μg/kg/minで連続静脈内注入することからなる、
疼痛を除去するためのアデノシンあるいはアデニンヌク
レオチドを有効成分として持つ薬剤組成物である。
【0015】また、この発明の他の態様の1つは、スト
レスおよびストレス反応の除去が必要な期間中に、1μ
g/kg/minから5000μg/kg/minで連続静脈内注入すること
からなる、ストレスおよびストレス反応を除去するため
のアデノシンあるいはアデニンヌクレオチドを有効成分
として持つ薬剤組成物である。
【0016】さらにまたこの発明の他の態様の1つは、
臓器移植前後の期間中に、1μg/kg/minから5000μg/kg
/minで連続静脈内注入することからなる、患者および患
者の臓器に良好な組織酸素供給を維持することによって
臓器移植レシピエントと同様にドナー臓器の生体内保存
するためのアデノシンあるいはアデニンヌクレオチドを
有効成分として持つ薬剤組成物である。
【0017】好ましい実施態様の詳細な説明 定義 本出願書で使用した「麻酔状態」は、数種の、相互に作
用するがそれぞれ独立している作用の最終結果であると
定義した。第1の作用は鎮静または睡眠の誘発である。
第2の作用は鎮痛または疼痛除去である。第3の作用
は、手術中の血圧修正として最も頻繁に所見される、生
理学的恒常状態を保存するためのストレスおよびストレ
ス反応の抑制である。そして最後に第4の作用は、通常
は筋弛緩、特に骨格筋の弛緩であると考えられている。
現在のところ、単独でこれら4つのうちすべての作用を
適切なレベルで提供する薬剤は全くないので、手術のよ
うな場合には数種の薬剤を併用しなければならない。本
出願書に使用した麻酔薬は、これら4つの作用のうち少
なくとも2つの作用を起こす単独の薬剤に関する。
【0018】本願で使用した「アデニンヌクレオチド」
は、アデノシン一リン酸、アデノシン二リン酸、および
アデノシン三リン酸だけである。一般に、好ましいアデ
ニンヌクレオチドはアデノシン三リン酸である。
【0019】本願で使用した「手術」および「外科的方
法」は広範に、痛覚性不快を生じさせる医療方法に関す
る。「手術」および「外科的方法」には、内視鏡検査、
血管造影法、抜歯のような歯科治療、さらに例えば虫垂
切除術などのような伝統的に手術と見なされている方法
が含まれる。本願で使用した「手術」および「外科的方
法」の期間は、例えば応急処置室、麻酔後手当て室、集
中治療部(ICU)にいる期間、さらに患者が補足して
鎮痛剤の投与を必要とせずに快適に休息できるようにな
るまでなどの前外科手術期や後外科手術期を含む。
【0020】本願で使用した「連続注入」は、静脈内注
入、クモ膜下注入、および同様の長時間をかけて連続的
薬剤投与を提供する方法に関する。
【0021】本願で使用した「ストレスおよびストレス
反応」は、手術のような外傷に付随する生理学的変化に
関する。ストレスには、カテコールアミンの放出、高血
圧の誘発および血管収縮を含む。
【0022】アデノシンの血漿中半減期が短いことは周
知である。この発明のプロセスを安全に達成するために
は、アデノシンあるいはアデニンヌクレオチドの連続注
入を使用しなければならない。アデノシンをほぼ1から
5500μg/体重1kg当り/1min当り(以下はμg/kg/min
と記す)、より好ましくは5から1000μg/kg/min、さら
により好ましくは50から500 μg/kg/minで注入すること
がこの発明の薬剤組成物の作用を提供する。
【0023】この発明の薬剤組成物の麻酔作用は、最小
肺胞濃度(minimum alveolar concentration、以下MA
Cと略記する)を比較することによって標準麻酔作用に
比較する。麻酔薬の効力の測定は確認が困難であること
が証明されてきている。第1の問題は、吸入された麻酔
ガスが呼気ガスとして放出される前には、体内にはほん
の少量しか取り込まれない点である。第2の問題は、麻
酔薬の作用点は肺ではなく脳であるが、実際に脳組織に
侵入する量は不明で、脳組織内のガス濃度が不明確であ
る点である。従って、麻酔学の技術に長けた人は1大気
圧(760トリチェリー)でのガス性麻酔薬の1MACを、苦痛
を感じる刺激にさらされた患者あるいは動物の50%が不
動性を生ずる量と定義している。MACの使用は、標準
ガス麻酔薬であるハロタン、エンフルレン、メトキシフ
ルレン、イソフルレンおよび笑気ガスの作用とアデノシ
ンおよびアデニンヌクレオチドの麻酔作用を比較するた
めに便利な方法を提供する。
【0024】アデノシンおよびアデニンヌクレオチドの
麻酔特性および鎮痛特性は、オピオイド鎮痛薬の有効用
量とはより容易に比較できる。苦痛を感じる刺激に曝露
された患者あるいは動物の50%において不動性を生じさ
せるのに十分なオピオイドの用量を有効量(effective
dose、以下ED50と略記する)と定義した。
【0025】血圧は、アデノシンあるいはアデニンヌク
レオチドの投与、およびその他の例えば出血のような方
法によって低下させることができる。プリン類の投与お
よび出血による予定レベルまでの血圧低下への全体的反
応は、極めて様々である。出血の場合は全組織および臓
器内の酸素が急減するが、しかしプリン類を注入した場
合は、酸素レベルは実質的に増大する。それゆえ、アデ
ノシンおよびアデニンヌクレオチドの投与は組織の酸素
含有量を増大させることができる。
【0026】図1を説明する。種々の麻酔薬および麻酔
剤について、睡眠を引き起こし、鎮痛を誘発し、手術に
よるストレスを軽減し、さらに筋肉を弛緩させる効力を
比較した。上記の作用は、麻酔医が外科的方法の実施中
に達成しようと試みる4つの作用である。この図1か
ら、現在使用されている薬剤には4つの作用すべてに有
効なものが全くないことが確認できる。ストレスを除去
するためのすべての周知の薬剤はこの図1には含まれて
いないが、それはこの種の薬剤の大多数が、通常は麻酔
薬というよりはむしろ、主として心臓血管疾患を治療す
るための心臓血管用薬剤であると考えられているからで
ある。
【0027】図1上では、4つの作用のそれぞれに対し
て薬剤の等級を査定し、作用なしの0から最大の作用を
示す3まで等級分けをした。
【0028】睡眠は、ハロタンなどの吸入麻酔薬によっ
て最高に持続され、ペントタール・ソジウムなどのバル
ビツール酸およびプロポフォルによって最高に誘発され
ることを読み取ることができる。疼痛は、モルヒネ、フ
ェンタニルなどのオピオイド麻酔薬によって最も有効に
除去される。筋弛緩は、パンクロニウム、塩化サクシニ
ルコリンなどの麻痺剤によって誘発される。しかし各薬
剤は、図1上の0あるいは1の点数で明らかなように、
2つ以上の作用について効力が低い。それゆえ、外科的
方法において麻酔医が上首尾の麻酔状態を達成するため
には、数種の薬剤を併用しなければならない。特に、現
在使用されている麻酔薬には、手術によって誘発される
ストレスに対して大きな有効性があるものは全くない。
【0029】他方アデノシンあるいはアデニンヌクレオ
チドは、優れた鎮痛作用、ストレス除去作用、さらに良
好な鎮静の誘発および維持作用を持つと見られるが、た
だ筋弛緩作用だけは大きくない。
【0030】外科的用途での理想的な麻酔薬は、単独で
数種の効果を合わせ持っている麻酔薬だろう。理想的な
麻酔薬は、疼痛除去、鎮静および睡眠を提供しさらに筋
弛緩を誘発する。一般的には現在、麻酔医はオピオイド
あるいは他の鎮痛薬によって疼痛を除去し、ペントター
ル・ソジウムあるいは類似の催眠剤によって睡眠を誘発
し、吸入麻酔薬によって睡眠を維持し、塩化サクシニル
コリンなどの使用によって筋肉を弛緩させねばならな
い。
【0031】アデノシンおよびアデニンヌクレオチド
は、鎮静を誘発し、睡眠を維持し、手術によるストレス
を軽減し、さらに疼痛を除去する。さらに、アデノシン
は低体温を誘発し、組織灌流および酸素供給を維持する
ことができる。従って、アデノシンおよびアデニンヌク
レオチドは外科的用途での理想的麻酔薬により近づいて
いる。
【0032】アデノシンあるいはアデニンヌクレオチド
は、慢性疼痛の除去、あるいは深い睡眠は必要ではない
が疼痛除去が必要とされる小さな手術のような一定の用
途に必要とされる唯一の薬剤であろう。大きな手術で
は、何らかの吸入麻酔薬あるいは静脈内麻酔薬および何
らかの筋弛緩薬を追加使用することが可能である。
【0033】用量 他の従来の麻酔薬とは対照的に、アデノシンおよびアデ
ニンヌクレオチドは広範な用量範囲で有用である。アデ
ノシンは1 から5000μg/kg/minの範囲内で有効である。
対照的に、従来の麻酔薬、例えばイソフルレンは有効範
囲が狭い。イソフルレンの麻酔に対する致死率は3.02±
0.13である。他にはイソフルレンの安全範囲はハロタン
の約1.88倍であるとの報告がある。これらのことを非常
に単純にまとめると、もし患者に睡眠開始に必要な用量
の2〜5倍の用量を投与するとその患者が死亡すると推
定される。もちろん、麻酔医は多過ぎることを恐れてむ
しろ少ない方に配量を間違う可能性があり、その場合に
は外科的方法の実施中の患者の麻酔状態が弱過ぎること
になる。
【0034】アデノシンについて観察される大きな長所
の1つは誤差限界が広い点である。アデノシンの致死量
は鎮痛に必要な用量の約100 倍で、ATPの致死量は鎮
痛に必要な用量の150 倍より大きい。実際にはATPの
割合は不明であるが、それは非常に大量に過剰投与した
場合でさえ、実験動物が1匹も死亡しなかったからであ
る。
【0035】鎮痛作用 疼痛除去を達成するために硫酸モルヒネ1mgと等価の必
要用量は、アデノシンは約40μg 、ATPは約30μ
gである。そこでアデノシン三リン酸はわずかにより活
性が高いと見なすことができる。有効用量は約1μg/kg
/minから5000μg/kg/minの範囲内であるが、好ましくは
約50μg/kg/minから500 μg/kg/minの範囲内である。も
ちろん、この用量は患者の年齢、性別、体重、および処
置される条件に従って変更されると認識されている。こ
れはすべて、患者の生命徴候を監視し、必要に応じて用
量を変更する、麻酔医の技術の範囲内にある。
【0036】神経・心臓血管作用 アデノシンおよびATPはどちらも、神経・心臓血管系
ストレスに抑制的に作用してカテコールアミンの放出、
高血圧および血管収縮等を抑制するとともに(心臓の後
負担を軽減して)心機能を改善する。このアデノシンの
ストレスおよびストレス反応抑制作用は臨床的に常に観
察され、従来の吸入麻酔薬あるいはその他の睡眠誘発剤
を併用した麻酔状態下でもみられる。さらに、プリン類
の投与は心臓−呼吸を抑制することはない。
【0037】麻酔作用 アデノシンおよびアデニンヌクレオチドの麻酔作用は、
尾の毛を剃ったニュージーランドホワイト(New Zealan
d white )ウサギを用いて測定する。静注剤は、ウサギ
の耳に注射する。ウサギはフェイス・マスクを通してO
2 −ハロタンを吸入する。ウサギには気管内挿管し、自
発呼吸で維持し観察する。MACは、ゴム製サック付き
鉗子で尾の近位3分の1の部位を締め付けることによっ
て測定する。アデノシンの麻酔作用は、1.00MACの麻
酔状態を達成するためのレベルでアデノシンの注入速度
を上昇させながら、ハロタンの量を1.00MACから0.75
MAC、0.50MAC、0.25MAC、0MACへ減少させ
ることによって測定する。ウサギの体温は38.5℃から3
9.5℃の間に保持する。類似の技術を使用することによ
って、アデノシンの鎮痛作用をモルヒネの鎮痛作用と比
較することができる。アデノシンおよびATPの鎮痛作
用の用量反応曲線もまた、上記の方法によって得ること
ができる。
【0038】体温低下作用 ウサギは麻酔作用における実験と同様に準備する。しか
し、ウサギの体温は低下するままにする。室温が約22℃
の部屋に置くと、ウサギの体温は約3時間で39℃から32
℃へ低下する。もし氷嚢を用いてウサギを冷やすと、約
3時間で22℃の体温を達成できる。
【0039】組織酸素供給作用 酸素灌流は、脳、肝、腎、および筋肉、さらに皮下にポ
ーラログラフィー電極を用いることによって測定する。
酸素濃度は、低血圧のような重篤なストレスの大きい条
件下で種々の方法で測定し、比較することができる。
【0040】処方 アデノシンあるいはアデニンヌクレオチドは、技術上周
知である従来の方法によって、静脈注射溶液として調製
することができる。臨床的に容認できる投与形態を達成
するためには、例えば、塩、砂糖、pH調節剤、シック
ナーなどのような製薬学上容認できる賦形剤および補助
薬、さらにその他の類似する活性あるいは異なる活性を
持つ薬剤を添加することができる。これらすべての修正
は、相当に技術に長けた人の知識の十分な範囲内にあ
る。
【0041】
【実施例】
例 アデノシン三リン酸−Na2 は協和発酵(Kyowa Hakko
、日本)から入手した。200mg/ml溶液を調製するため
に、十分なATPを生理的食塩水へ溶解させた。アデノ
シン溶液の10mg/ml 溶液はアデノシン(Sigma Co.) を生
理的食塩水へ溶解させて調製し、アデノシン溶液(等浸
透マンニトール液に溶解させた5.3mg/ml溶液)は、Astr
a Co. から入手した。
【0042】例1 この例は、ウサギにおけるアデノシンおよびATPの静
脈内投与がハロタンMACへ及ぼす影響、およびアミノ
フィリンによるその拮抗作用を示す。
【0043】アデノシンがCNS(中枢神経系)におい
て鎮静、抗痙攣および抗痛覚(鎮痛)作用を含めた種々
の作用を生じることは周知である。われわれはウサギに
おいて、アデノシンおよびATPの静脈内注射がハロタ
ンMACへ及ぼす影響を実験した。
【0044】麻酔状態は、薬剤投与を受けたことがない
New Zealand white ウサギ(4.5〜5.5kg )におい
て、フェイス・マスクを用いて3〜4%ハロタン−O2
を吸入させて誘発した;ウサギの気管内には小児用気管
チューブを挿入した。しかし各実験動物は、全実験期間
を通して自発的に呼吸していた。食道体温は38.5〜39.5
℃に保った。1回換気中のハロタンおよびCO2 量を連
続的に監視した。耳静脈2本および耳中心動脈1本に
は、薬剤を注入したり、直接的に血圧や血液ガスを監視
するために、22ゲージのプラスチック製カテーテルを挿
入した。実験は4群に分けて行った。ATP投与中フェ
ニルエフリンで血圧を正常化したA群(n=7)、AT
Pだけを投与したB群(n=7)、アデノシンだけを投
与したC群(n=5)、ATPとジピリダモールを併用
投与したD群(n=4)。MACは、第1ラチェットま
で閉じたゴム製サック付き鉗子を用いて、ウサギの毛を
剃った尾の近位3分の1部位を締め付ける標準方法によ
って測定した。
【0045】図2について説明する。アデノシンあるい
はATPの鎮痛レベルは、ハロタンMACの量を1.0 か
ら0.75、0.25、0 へと減少させる間に薬剤注射速度を順
次滴定することによって判定した。全4群のハロタンM
AC値は、平均すると1.62±0.56%となり、4群の間で
有意な相違は見られなかった。両薬剤は用量に相関する
強力な鎮痛作用を生じた。この作用は、薬剤によって維
持された正常血圧群および低血圧群の両方において、ジ
ピリダモールによって増強された。ATPは5.52±0.79
mg/kg/min で、アデノシンは5.32+0.82mg/kg /minで、
ハロタンによる麻酔状態に完全に取って代わることがで
きた。この状態が30min から1hr維持されると、実験動
物は深く鎮静し、あらゆる疼痛刺激に対して完全に無感
覚となった。この麻酔反応は、1MACよりはるかに大
きかった。用量を増加するにつれて、麻酔作用はより深
くなった。
【0046】アミノフィリン(50〜100mg 静注)とナロ
キソン(0.01〜0.05mg静注)の投与は麻酔作用を急速に
拮抗し、実験動物は異常な神経行動徴候を全く示すこと
なく5分以内に再び正常に活動し始めた。
【0047】図3について説明する。ATPの注入はゆ
っくりと増加された。反応を誘発するために必要な電気
刺激の量を記録した。ATPは選択的反応を示した。2
種の容易に識別出来る閾値反応を見ることができる:第
1(A)は覚醒に対する反応、第2(B)は知覚した疼
痛に反応しての故意の逃避体動である。
【0048】ATPおよびアデノシンはとちらも、単独
で投与されたときに完全にハロタンMACに取って代わ
る強力な麻酔作用を持っていた。ATPが急速にアデノ
シンへ滅成することは周知である。従って、ATPある
いはアデノシンによって生じた深い鎮痛は主にアデノシ
ンのレセプターを仲介するために表れると推定される
が、それは両薬剤が同等に匹敵する鎮静、鎮痛および麻
酔の作用を達成したからで、これらの作用はアデノシン
摂取抑制剤であるジピリダモールによって強化され、ア
ミノフィリンおよびアデノシン拮抗剤によって逆転され
た。
【0049】例2 アデノシンは、ハロタンMAC必要量を低下させる。N
2 Oと一緒に高用量のエルフルレン(ENF)を投与す
ると有害刺激に対する反応が減少するが、その犠牲とし
て心臓−呼吸性の抑制が生じる。この例ではENFにA
TPを置き換える。ATPは心臓呼吸の抑制を生じるこ
となく、十分な麻酔状態を提供する。6匹のウサギ(4
〜5kg)について調べた。ウサギには気管内に挿管した
が、自発的に60%N2 O−O2 を呼吸していた。許容さ
れるのに従って50Vまで電圧を増大させながら電気刺激
を適用した。電気刺激は、量化できる再現可能な刺激で
あった。測定は15分毎に実施した。故意の逃避体動を最
終点とした。N2 Oへ0.5、1.0 、1.5 、2.0 、2.5%の
濃度のENFを段階的に添加した。生じた反応および血
液ガスを記録した。電気刺激に加えて、尾、耳、脚を鉗
子を用いて締め付け、さらに痛覚への反応を再確認する
ために針穿刺を適用した。刺激へのマイナスの反応が達
成されたときは、プラスの反応が示されるまでENFの
用量を0.5%ずつ段階的に減少した。その後ATP注入を
低下したENF麻酔状態に取って代わるために滴定し、
ATPは完全かつ効果的にENFに取って代わることが
できた(ATP初期投与量:5μg/kg/min)。
【0050】図4について説明する。60%N2 OではE
NFの用量を1.5 %まで増加させると疼痛閾値上昇を示
したが、しかし尾の鉗子締め付けにはプラスに反応し
た。ENFの用量を2%以上にすればこの様な反応を完
全に抑制することができよう。しかしこの用量は有意な
心臓−呼吸性の抑制を示す(表1参照)。ATPの用量
を増大する(5〜70μg/kg/min)と、疼痛耐性を低下
させることなくENFに取って代わることができた。さ
らに、全身血圧(SBP)および心拍数(HR)が対照
レベルへ回復しても、鎮痛状態は存続した。アデノシン
およびATPは血漿中半減期が非常に短く、静注ATP
はCNSにおいて内在性鎮痛活性を持っているが、それ
は注入が停止された後に選択的鎮痛作用が存続したため
である。この作用は、一度活性化すると長く継続する、
中枢のプリン性レセプター機能の活性化に起因すると思
われる。このことはATP投与の中止後に鎮痛の持続が
観察されたことによってわかったが、この作用はアミノ
フィリン静注によって部分的に拮抗された。心臓−呼吸
性の抑制を伴わずに持続する鎮痛特性は、顕著な臨床有
意性がある。
【0051】
【表1】 ──────────────────────────────────── 心臓−呼吸性データ ──────────────────────────────────── O2 のみ 対照(N2O) ENF(N2O) ATP(N2O) SBP(拡張期血圧)(mmHg) 109±11 126±15 69±22* 112±20 DBP(収縮期血圧)(mmHg) 83±5 85±4 49±18* 83±16 HR( 心拍数)(bpm) 270±13 267±15 255±33* 278±26 RR( 呼吸数)(bpm) 76±5 85±5 72±19* 81±14 PaCO2(炭酸ガス分圧) 25±4 22±2 25±1* 22±3 (mmHg) PaO2( 血液酸素分圧) 443±68 147±11 148±16 145±24 (mmHg) ──────────────────────────────────── RR:呼吸数、O2 :100%,N2 O:60% 、ENF:2.0 〜2.5%、 ATP:70±32(μg/kg/min) 、平均値±SD(標準偏差) * 対照に対してp<0.05。(n=6) ───────────────────────────────────
【0052】例3 この例では、アデノシンおよび硫酸モルヒネの鎮痛活
性、用量要件および効力率を比較する。
【0053】気管内挿管したウサギ6匹(4〜5kg)を
鑑定した。ウサギは自発的に60%N2 O−O2 を呼吸し
ていた。2種の有害刺激について鑑定した。1)ゴム製
サック付き鉗子を用いてウサギの尾および耳を締め付け
る、2)許容されるのに従って最大40Vまで電圧を増大
させながら電気的衝撃を与える;この方法は量化でき
る、再現可能な刺激である。反応は下記について査定し
た:HR(心拍数)、SBP(収縮期血圧)、RR(呼
吸数)、神経行動、および故意の逃避体動。60%N2
を吸入20min 後に、刺激への対照反応を記録した。加え
た刺激に対して有意な変化が生じるまで用量を増大しな
がらアデノシンを末梢に注射した。血圧支援をせずに正
常血圧が維持された。鎮痛の持続期間および強度は、注
射終了後15min 毎に鑑定した。鎮痛作用を逆転させるた
めに、アミノフィリンを投与した。外科的鎮痛を達成す
るために硫酸モルヒネを最大2mg/kg まで静注で滴定し
た(ED50)。重度の呼吸抑制が発生したら、これ以
上は投与しなかった。
【0054】60%N2 Oを吸入したにもかかわらず、全
実験動物が尾および耳の鉗子締め付けおよび電気刺激に
反応して故意の逃避体動を示した。アデノシンを188 ±
20μg/kg/minの用量で添加すると、両2種の刺激への反
応は完全に抑制された(ED90)。運動抑制も心臓−
呼吸性の抑制も全く発生せず、上限作用も全く認められ
なかった。アミノフィリン(5〜10mg/kg)は常にアデノ
シンの鎮痛活性を拮抗した。2mg/kg までの硫酸モルヒ
ネ投与では、すべての反応の完全な抑制を示した実験動
物は全くなかった。図5について説明する。硫酸モルヒ
ネおよびアデノシンの有効な鎮痛作用の比較を示した。
硫酸モルヒネの作用は、漸近限界に近づいていると思わ
れ、投与後に疼痛の大きな除去は生じないが(電気刺激
の電圧(V)によって測定されたように)、他方アデノ
シンははるかに大きな疼痛除去を提供する。この実験
は、アデノシン静注は低血圧を惹起するよりは少ない量
で、有意に疼痛に対する閾値を上昇させたことを示して
いる。鎮痛状態の延長は、アミノフィリンを用いての鎮
痛の拮抗によって示されたようなアデノシンA1 レセプ
ター機能によって仲介される。アデノシンには、硫酸モ
ルヒネと比較して約25:1の鎮痛効力率があると思わ
れる。強度の鎮痛を持続させるアデノシンの特性は、心
臓−呼吸性の抑制や「上限」作用はなく、さらに容易な
拮抗性があるので、臨床用麻酔薬における実質的用途が
ある。
【0055】
【表2】 ──────────────────────────────────── 心臓−呼吸性データ ──────────────────────────────────── 対照 アデノシン モルヒネ BP( 血圧)(mmHg) 97±12 101±19 105±14 HR( 心拍数)(bpm) 240±30 230±24 242±72 RR( 呼吸数)(bpm) 89±10 85±19 47±16* PaO2(mmHg) 136±15 126±81 123±14 PaCO2(mmHg) 22±4 25±4 31±3* ──────────────────────────────────── n=6、平均値±SD(標準偏差)、BP:収縮期血圧、RR:呼吸数、 * 対照に対してp<0.05。 ────────────────────────────────────
【0056】例4 この例は、イヌにおいて、出血、イソフルレン、および
アデノシン三リン酸によって誘発される低血圧によって
惹起されたストレス反応中の酸素輸送および局所的組織
酸素供給の比較を示す。
【0057】低血圧中に最も重要な問題の1つは、生体
臓器潅流および酸素供給の悪化が生じる恐れがある点で
ある。そこでわれわれは、段階的な動脈低血圧中の実質
性および非実質性臓器/組織の酸素輸送パラメータおよ
び局所的組織酸素分圧における変化を比較した。
【0058】イヌ23匹(23.1±5kg)にペントバルビタ
ール(30mg/kg 、静注)を用いて麻酔し、呼吸は気管内
に挿管し、正常体温(38℃)で正常炭酸ガス状態を保持
するために40%酸素と窒素の混合ガスを機械的に通気し
た。大腿を切開して動脈および肺動脈(スワン・ガン
ツ)カテーテルを挿入した。先端直径が3mmのクラーク
型ポーラログラフィーPO2 電極を脳硬膜下に挿入し、
バーで開けた小さな孔を通して前頭葉皮質上に配置し
た。もう1つのPO2 電極は、皮膚に開けた小さな切開
箇所を通して肝、腎、皮下および胸壁筋の表面上に置い
た。第6図について説明する。イヌは3群に分けた;
a)出血による低血圧群(n=7)、b)イソフルレン
誘発性低血圧群(n=8)、c)ATP誘発性低血圧群
(n=8)。平均動脈圧(MAP)は、それぞれ20分間
は維持させながら、対照(119±4.5mmHg)から90、70、5
0、さらに30mmHgまで段階的に下げた。下記は測定また
は算定した項目である:MAP、O2 消費量(VO
2 )、O2 導出量(DO2 )、ならびに種々の組織での
酸素分圧値:動脈PO2 (PaO2 )、脳(PbO
2 )、混合静脈(PvO2 )、肝(PlO2 )、腎(P
kO2 )、皮下(PscO2 )および胸壁筋(PmO
2 )。これらのデータは、ボンフェローニ(Bonferroni)
のt検定および無対t検定とともにANOVAを適切に
用いて分析し、p<0.05を有意と認めた。
【0059】実験成績を図6に示した。段階的な低血圧
下中、PaO2 は全く無変化だった。自己調節に起因し
て、大脳皮質PbO2 は全群でほとんど影響を受けなか
った。しかし3種の低血圧群の間で血行力学的反応およ
び組織酸素反応は顕著に異なるのが観察された。出血は
強度の末梢血管収縮を惹起した。イソフルレンはこの末
梢血管収縮性反応を鈍化した。しかし投与量が高くなる
と、イソフルレンは重大にDO2 を抑制し、O2 供給/
受容比率の低下を生じさせたが、ATPはよりバランス
の取れたO2 輸送を維持し、生体臓器に優先的に組織酸
素供給を与えて、低血圧の全段階においてプラスのO2
供給/受容比率を生じさせた。
【0060】他の例で、例1、例2、あるいは例3と同
様に、ウサギの尾に電気刺激を適用した時の血圧の変化
をみた。ATPを投与すると故意の逃避体動が減少し
た。十分な量のATPを注入すると、安定した血圧から
みても、もはや故意の逃避体動あるいはストレスは所見
されなかった。
【0061】例5 この例は、ウサギにおいてアデノシンおよびアデノシン
三リン酸が低体温へ及ぼす影響を示す。
【0062】図7について説明する。全く異なる数種の
実験について体温対時間経過を示した。実験1では、ウ
サギに6時間をかけてアデノシン500 μg/kg/minを静脈
内注入した。その後注入を中止し、ウサギの体温が回復
するにまかせた。
【0063】実験2では、ATP 500μg/kg/minを6時
間かけて静脈内注入した。その時点でウサギの体温は3
1.5℃になった。実験動物の体温は外部から4時間暖め
ると回復したが、その後外部から暖めるのを中止し(矢
印の箇所)、体温が低下するにまかせた。実験動物の体
温は再び低下した。
【0064】実験3では、ATPを静脈内に注入した。
ウサギの体温は10時間後に32.5℃で安定した。 実験
4、実験5、および実験6では、体温が一定値に達する
までアデノシンを投与した。実験4では、ウサギの体温
は5時間後に30.5℃で安定した。実験5では、体温は5
時間後に33℃で安定した。実験6では、体温は6時間後
に31.5℃で安定した。
【0065】実験7では、薬剤投与を受けていない New
Zealandウサギ5匹にフェイス・マスクを用いてO2
ハロタンで麻酔をした。耳静脈には薬剤を注入するため
に22ゲージのプラスチック製カテーテルを挿入した。ア
デノシンを500 μg/kg/minから5500μg/kg/minで静脈内
注入した。注入後の体温は、直腸体温計で監視した。体
温は実験開始時にはほぼ38.5℃であった。氷嚢を適用し
て冷却した後の体温は、ほぼ22℃の最低体温が達成され
るまで約5.5 ℃/hrで低下した。体温が低下している
間、震えあるいはその他の不快は外見上では全く観察さ
れなかった。5匹全部のウサギが体温低下にかかわらず
生存した。
【0066】氷嚢を取り除き、外部から暖めた。全部の
ウサギの体温は正常に回復し、外見上これらウサギは正
常であった。
【0067】比較を行うために、実験8ではウサギ6匹
にイソフルレンで麻酔をかけ、外部から冷却した。34℃
のときに、心室性細動のために1匹が死んだ。25℃で
は、さらに1匹が肺水腫のために死んだ。イソフルレン
だけを投与したウサギは全部が、体温低下につれて激し
く震えるのが観察された。
【0068】例6 この例では、アデノシンのクモ膜下投与が有効であるこ
とを示す。
【0069】薬剤投与を受けていないニュージーランド
ホワイト(New Zealand white) ウサギ(4〜5kg)にお
いて、フェイス・マスクを用いて3〜4%ハロタン−O
2 で麻酔状態を誘発した。気管内にNo.3,5の小児科用気
管内チューブを挿入した。実験動物は全部が実験を通し
て自発的に呼吸していたが、必要な場合は機械的に通気
した。直腸体温は38.5〜39.5℃に調節した。呼気中ハロ
タンおよび二酸化炭素濃度を継続的に監視した。耳静脈
2本および耳中心動脈1本には、薬剤注入および血液ガ
ス監視のために22ゲージのプラスチック製カテーテルを
挿入した。鼠径部を露出し、大腿動脈および静脈の上を
カテーテルを導入するために切開した。大腿動脈にカテ
ーテルを挿入し、全身の中枢性血圧を測定するために胸
部大動脈内にその先端を置いた。もう1本の中心静脈カ
テーテルを大腿静脈から挿入した。
【0070】実験動物をうつ伏せの体位に変え、背の下
方に手術部位を準備した。皮膚に2%リドカイン3〜4
ccを浸透させた。脊椎旁筋肉を通して切開した後に、椎
弓切除術(ラミネクトミー)を実施し、頑丈な針を直接
視力の下にクモ膜下間隙の中へ入れ、微小カテーテル
(22〜32ゲージ)は、その針を通じて先端が頭蓋底につ
くまで徐々に縫うように進ませた。クモ膜下の位置を確
認するために透明な脳脊髄液を吸引した。椎弓切除術の
部位を消毒し、その部位を閉じるために縫合した。カテ
ーテルはテープで固定した。
【0071】有害刺激は、神経刺激器具を通して加える
低電圧の電流刺激を行うために尾の根元に置いた電極に
よって生じさせた。他の種類の刺激には、20ゲージの針
を用いてチクチク刺す、足をつまむ、およびゴム製サッ
ク付き鉗子で尾を締め付ける形がある。
【0072】心拍数、動脈血圧、呼吸数を含めた心臓−
呼吸性パラメータの連続記録、動物の体動およびその他
すべての行動変化を記録した。動脈および混合静脈血の
試料は、肺動脈ガス交換および酸塩基状態について分析
した。
【0073】数種類のクモ膜下用量形態について鑑定し
た:リドカインは0.5mg/kgずつ増加させながら投与し
た。フェンタニルは、1μg/kgずつ増加させなら投与し
た。アデノシンは、ウサギの体重に基づいて、細分用量
および連続注入(10mg/ 時間)の両方法によって投与し
た。種々の薬剤を比較した結果、アデノシンのクモ膜下
投与は、有害刺激の反応を減少させることにおいてクモ
膜下フェンタニル投与と同様に有効であることがわかっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、異なる数種の麻酔薬の活性を比較した
図表である。
【図2】図2は、投与されたアデノシンあるいはATP
の用量に対して、ハロタンMAC(最小肺胞濃度)とし
て測定した麻酔作用の線図である。
【図3】図3は、痛覚電気刺激(V)および尾の鉗子締
め付け(ED50)に対するATPの麻酔効果の用量反応
曲線の線図である。
【図4】図4は、投与されたATPの用量に対して、エ
ンフルレンMACとして測定した麻酔作用の線図であ
る。
【図5】図5は、硫酸モルヒネおよびアデノシンについ
て観察された鎮痛作用を比較した線図である。
【図6】図6は、ストレスが血液及び組織酸素レベルへ
及ぼす影響を比較した線図である。(a)は出血の影響
を示し、(b)はイソフルレンの影響を示し、(c)は
ATPの影響を示している。
【図7】図7は、アデノシンおよびATPの種々の用量
についての、体温対時間経過の線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 31/7076 C07H 19/16 - 19/20 CA(STN) CAOLD(STN) CAPLUS(STN) JICSTファイル(JOIS) MEDLINE(STN)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アデノシン、アデノシン一リン酸、アデ
    ノシン二リン酸およびアデノシン三リン酸からなる群か
    ら選択された少なくとも1種の化合物を有効成分として
    含有することを特徴とする、麻酔薬組成物。
  2. 【請求項2】 鎮静を誘発し、疼痛を防止するための、
    請求項1記載の麻酔薬組成物。
  3. 【請求項3】 心肺機能を低下させることなく、哺乳動
    物の個体の疼痛を処置するための、請求項1記載の麻酔
    薬組成物。
  4. 【請求項4】 哺乳動物の個体の疼痛により引き起こさ
    れるストレスおよびストレス反応を抑制するための、請
    求項1記載の麻酔薬組成物。
  5. 【請求項5】 哺乳動物の個体の麻酔の際に起こる震え
    を抑制するための、請求項1記載の麻酔薬組成物。
  6. 【請求項6】 哺乳動物の個体の疼痛およびストレス等
    により引き起こされる自律反応を抑制するための、請求
    項1記載の麻酔薬組成物。
  7. 【請求項7】 哺乳動物の個体の麻酔の際に起こる低体
    温症の有害な影響を抑制するための、請求項1記載の麻
    酔薬組成物。
  8. 【請求項8】 移植臓器の提供者又は受容者の生体内臓
    器の良好な保存又は保護のための、請求項1記載の麻酔
    薬組成物。
  9. 【請求項9】 良好な組織灌流と組織酸素供給を維持す
    るための、請求項1記載の麻酔薬組成物。
  10. 【請求項10】 注射剤の形態にある、請求項1〜9の
    いずれか1項記載の麻酔薬組成物。
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